アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○生活保護法による進学準備給付金の支給について

(平成30年6月8日)

(社援発0608第6号)

(各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長あて厚生労働省社会・援護局長通知)

(公印省略)

生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)は、生活に困窮する国民に対し、最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としている。

この度、生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律(平成30年法律第44号。以下「改正法」という。)の一部が、平成30年6月8日から施行されたことに伴い、改正法による改正後の法第55条の5第1項に基づき、生活保護世帯の子どもの大学等への進学の支援を図ることを目的として、大学等に進学した者に対して、進学準備給付金(以下「給付金」という。)を支給する制度が創設されることとなったので、本制度の適正かつ有効な実施を図られたく通知する。

なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の9第1項及び第3項の規定による処理基準としたので申し添える。

1 趣旨

生活保護世帯の子どもの大学等進学率は、全世帯の進学率と比較して低い状況にある。貧困の連鎖を断ち切り、生活保護世帯の子どもの自立を助長するためには、大学等への進学を支援していくことが有効であると考えられる。平成29年12月15日の「社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会 報告書」においても、生活保護世帯の子どもの大学等への進学支援について、「生活保護費の中から大学等への進学後の費用を貯蓄することは認められておらず、進学直後に必要となる様々な費用を進学前からあらかじめ用意することが困難であるという生活保護世帯特有の事情もある」、「生活保護制度特有の事情が障壁になることがないよう、制度を見直すべき」とされたところである。

このため、大学等に進学する者に対して進学の際の新生活立ち上げの費用として給付金を支給する制度を創設するものであること。

2 支給要件

(1)の支給対象者が(2)の特定教育訓練施設に確実に入学すると見込まれることを要件として、当該支給対象者の申請に基づき支給するものとすること。

(1) 支給対象者

給付金は、ア又はイに該当する被保護者を対象とする。

ア 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者(法第55条の5第1項関係)

イ 18歳に達する日以後の最初の3月31日を経過した者であって、次のいずれかに該当するもの(生活保護法施行規則(昭和25年厚生省令第21号。以下「則」という。)第18条の7関係)

(ア) 保護の実施機関が、高等学校等(学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する高等学校(以下「高等学校」という。)、中等教育学校(同法第66条に規定する後期課程に限る。)若しくは特別支援学校(同法第76条第2項に規定する高等部に限る。)(いずれも同法第58条第1項(同法第70条第1項及び第82条において準用する場合を含む。)に規定する専攻科及び別科を除く。)又は同法第124条に規定する専修学校若しくは同法第134条第1項に規定する各種学校(高等学校に準ずると認められるものに限る。)をいう。以下同じ。)に就学することが支給対象者の自立を助長することに効果的であるとして、就学しながら保護を受けることができると認めた者(以下「高等学校等就学者」という。)であって当該高等学校等を卒業し又は修了した後直ちに特定教育訓練施設(法第55条の5第1項に規定する特定教育訓練施設をいう。以下同じ。)に入学しようとするもの(則第18条の7第1号関係)

(イ) 高等学校等就学者であった者(災害その他やむを得ない事由により、高等学校等を卒業し又は修了した後直ちに特定教育訓練施設に入学することができなかった者に限る。)であって、当該高等学校等を卒業し又は修了した後一年を経過するまでの間に特定教育訓練施設に入学しようとするもの(則第18条の7第2号関係)

なお、「やむを得ない事由」については、災害のほか本人の傷病や親の看護や介護等、真にやむを得ないと認められる場合をいうものであること。

(2) 特定教育訓練施設

支給対象となる進学先の特定教育訓練施設は、アからクまでの施設とする。(則第18条の8関係)

ア 学校教育法第1条に規定する大学(短期大学を含む。)

イ 学校教育法第124条に規定する専修学校(同法第125条第1項に規定する専門課程に限る。)

ウ 職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)に規定する職業能力開発総合大学校の総合課程、職業能力開発大学校及び職業能力開発短期大学校の専門課程

エ 国立研究開発法人水産研究・教育機構法(平成11年法律第199号)第12条第1項第5号に規定する業務に係る国立研究開発法人水産研究・教育機構の施設(水産大学校)

オ 独立行政法人海技教育機構法(平成11年法律第214号)第11条第1項第1号に規定する業務に係る独立行政法人海技教育機構の施設(海上技術短期大学校及び海技大学校)

カ 高度専門医療に関する研究等を行う国立研究開発法人に関する法律(平成20年法律第93号)第16条第6号に規定する国立高度専門医療研究センターの職員の養成及び研修を目的として看護に関する学理及び技術の教授及び研究並びに研修を行う施設(国立看護大学校)

キ 高等学校及び学校教育法第1条に規定する中等教育学校(同法第66条に規定する後期課程に限る。)(いずれも同法第58条第1項(同法第70条第1項において準用する場合を含む。)に規定する専攻科に限る。)、同法第124条に規定する専修学校(同法第125条第1項に規定する一般課程に限る。)並びに同法第134条第1項に規定する各種学校のうち、支給対象者がこれらを卒業し若しくは修了し、又はこれらにおいて教育を受けることによりその者の収入を増加させ、若しくはその自立を助長することができる見込みがあると認められるもの

なお、「支給対象者がこれらを卒業し若しくは修了し、又はこれらにおいて教育を受けることによりその者の収入を増加させ、若しくはその自立を助長することのできる見込みがあると認められるもの」は次のすべての要件を満たすものとする。

(ア) 修業年限が1年以上であること。

(イ) 就学によって生業に就くために必要な技能(例えば、工業、医療、栄養士、調理師、理容師、美容師、保育士、商業経理、和洋裁等)を修得することができる学校であること。

(ウ) いわゆる予備校等、大学等の入学試験の準備を目的として通学する学校でないこと。

(エ) 趣味や日常生活、社会生活に必要な技能習得を目的とする学校(例えば自動車学校、珠算学校等)でないことが明らかなこと。

ク アからキまでに掲げるもののほか、支給対象者が卒業し若しくは修了し、又は教育を受けることによりその者の収入を増加させ、若しくはその自立を助長することのできる見込みがあると認められる教育訓練施設

なお、「支給対象者がこれらを卒業し若しくは修了し、又はこれらにおいて教育を受けることによりその者の収入を増加させ、又はその自立を助長することのできる見込みがあると認められる教育訓練施設」については次のすべての要件を満たすものとする。

(ア) 修業年限が1年以上であること。

(イ) 授業時数が年680時間以上であること。

(ウ) 就学によって生業に就くために必要な技能を修得することができる教育訓練施設であること。

(エ) 大学等の入学試験の準備を目的として通学する教育訓練施設でないこと。

(オ) 趣味や日常生活、社会生活に必要な技能習得を目的とする教育訓練施設でないことが明らかなこと。

(3) 確実に入学すると見込まれるもの

法第55条の5第1項に規定する「確実に入学すると見込まれるもの」とは、進学を予定する(2)の特定教育訓練施設に合格し、その特定教育訓練施設の入学手続を開始しているかどうかにより判断すること。

(4) その他

給付金は、特定教育訓練施設への進学に伴い、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日付け社発第246号厚生省社会局長通知)の第1の5に基づき世帯分離となり、又は生活保護世帯と同一の住居に居住しなくなること等により、被保護者ではなくなる者に対して支給するものであること。

3 申請による支給の決定

(1) 給付金の支給を受けようとする支給対象者については、特定教育訓練施設へ進学する者の氏名及び住所又は居所、特定教育訓練施設の名称等を記載した申請書に次に掲げる書類を添付して給付金を支給する者(以下「支給機関」という。)に提出するものとすること。(則第18条の9関係)

ア 確実に入学すると見込まれるものであることを確認できるものとして、以下のいずれかの書類

・入学金を納付したことを証明する書類の写し

・入学金延納(進学後に納付すること)を申請した書類の写し

・進学先の特待生制度等により入学金等の納付が不要な場合、進学先に提出する誓約書や進学先が発行する入学手続が完了したことを証明する書類等の写し

イ 進学に伴い転居する場合は、新たに居住する住居の賃貸借契約書の写し等

ウ その他、進学先の特定教育訓練施設の概要等が分かる資料等、支給機関が支給決定にあたり必要な書類

ただし、上記の書類について、申請時に準備できない場合については、進学する特定教育訓練施設の合格通知書や賃貸借契約時の見積書の写し等を添付した上で、後日、特定教育訓練施設に入学するまでの間にこれらの書類の提出を求めること。

なお、当該申請書を作成することができない特別の事情があるときは、申請者の口頭による陳述を聴取し、書面に記載した上でその内容を本人に説明し記名を求め、後日学生証の写しや在学証明書を求めるなど、必要な措置を講ずることで、申請書の提出及び受理に代えることとすること。

(2) 支給機関は、高等学校等を卒業する被保護者について、卒業後の進路について事前に聴取し、特定教育訓練施設へ進学する場合は、給付金の申請等について助言するなど、支給対象者からの申請が確実に行われるよう支援すること。

(3) 申請は、原則として進学する者が生活保護世帯に属している間に行うものとし、その支給は申請受理後速やかに行うものとすること。ただし、確実に入学すると見込まれる時期が保護の変更・廃止の直前であるなど、やむを得ない事由がある場合は、進学後(保護からの脱却後)の申請を認めること。

(4) 支給機関は、被保護者から支給の申請があったときは、支給要件に該当するかどうかを判断した上で、支給の金額及び方法を決定し、書面をもって通知すること。各種書面の様式の標準は、「生活保護法施行細則準則について」(平成12年3月31日付け社援第871号厚生省社会・援護局長通知)を参考とされたい。

(5) 支給の決定の通知は、速やかに行うものとし、標準処理期間は、申請のあった日から14日以内とすること。ただし、進学先等の調査に時間を要する等特別な事由がある場合には、これを30日以内に行うこととすること。

なお、この場合には、決定を通知する書面にその理由を明示すること。

4 給付金の支給額

給付金の支給額は、「生活保護法施行規則第十八条の十の規定に基づき厚生労働大臣が定める額」(平成30年6月厚生労働省告示第244号)に基づき、特定教育訓練施設への入学に伴い、転居する者は30万円、その他の者は10万円とすること。

5 給付金の性格等

(1) 給付金は、生活保護世帯の子どもの特定教育訓練施設への進学に伴う新生活立ち上げ費用として支給するものであり、法第6条第3項の保護金品とは異なるものであること。

(2) 給付金は、租税その他の公課を課せられることがないこと。(法第57条関係)

(3) 既に支給された給付金や給付金を受ける権利は、差し押さえられることがないこと。(法第58条関係)

(4) 給付金は、特定教育訓練施設に進学する者の新生活の準備に役立てられるべきものであることから、支給を受ける権利は進学する当事者以外の者に譲り渡すことができないものであって、生活保護世帯に対する保護費とは別に当該進学する者に対して支給すべきものであること。(法第59条関係)

(5) 給付金の支給を受ける権利は、2年を経過したときは、時効によって消滅するものであること。(法第76条の3関係)

(6) 給付金は、法第78条の2第2項の規定の対象とはならないことから、同項に基づく法第77条の2又は第78条の徴収金の納入に充てることができないものであること。

(7) 給付金の支給を受けた被保護者については、給付金を再支給しないこと。(則第18条の11関係)

6 支給機関

給付金の支給機関は、支給対象者に対して保護を実施していた保護の実施機関と同一の都道府県知事、市長及び福祉事務所を設置する町村長とすること。

7 報告

支給機関は、給付金の適切な支給決定等(11において不正受給の徴収金を徴収する場合を含む。)のために必要があるときは、特定教育訓練施設の長その他の関係人に、報告を求めることができること。(法第55条の6関係)

8 給付金の周知について

保護の実施機関は、高校生等の子どものいる世帯を中心に早期から進路の把握に努め、大学等への進学を希望している高校生等に対する給付金の周知を行い、大学等への進学を希望する者が、経済的な理由で進学を断念することがないようにすること。

あわせて、独立行政法人日本学生支援機構法(平成15年法律第94号)による貸与金又は給付金、母子及び父子並びに寡婦福祉法(昭和39年法律第129号)による福祉資金の貸付け、生活福祉資金(教育支援資金)等、生活保護受給世帯の子どもが大学等に進学した際に利用可能な支援制度についても、教育担当部局及び社会福祉協議会その他の関係機関と協力して周知を図ること。

9 不服申立て

(1) 市町村長がした給付金の支給に関する処分(市町村長が給付金の支給に関する事務の全部又は一部を福祉事務所長等その管理に属する行政庁に委任した場合の当該事務に関する処分を含む。)についての審査請求は、都道府県知事に対して行われるものであること。

また、都道府県知事が給付金の支給に関する事務の全部又は一部を福祉事務所等その管理に属する行政庁に委任した場合の当該事務に関する処分についての審査請求は都道府県知事に、都道府県知事の給付金の支給に関する処分についての審査請求は厚生労働大臣に対して行われるものであること。(法第64条関係)

(2) 都道府県知事は、審査請求があったときは、50日以内(行政不服審査法(平成26年法律第68号)第43条第1項の規定による諮問をする場合は70日以内)に当該審査請求に対する裁決をしなければならないこと。

また、都道府県知事の裁決に不服のある者は、厚生労働大臣に対して再審査請求をすることができること。この場合においては、70日以内に当該再審査請求に対する裁決をすること。

なお、支給機関が実施した処分の取消しの訴えは、当該処分に関する審査請求に対する裁決を経た後でなければ提起できないものであること。(法第65条、第66条及び第69条関係)

10 費用負担

(1) 都道府県及び市町村は給付金の支給(支給の委託を受けて行うものを含む。)に要する費用(以下「進学準備給付金費」という。)を支弁するものであること。

(2) 都道府県は、次の場合において市町村が支弁した進学準備給付金費の4分の1を負担するものであること。

ア 居住地がないか、又は明らかでない被保護者に支弁したとき。

イ 宿所提供施設又は児童福祉法(昭和22年法律第164号)第38条に規定する母子生活支援施設にある被保護者につきこれらの施設の所在する市町村が支弁したとき。

(3) 国は、市町村及び都道府県が支弁した進学準備給付金費の4分の3を負担するものであること。(法第70条第5号、第71条第5号、第73条第3号及び第4号並びに第75条第1項第2号関係)

11 不正受給への対応について

不正受給に対しては、不正受給額の確定、特に悪質な不正受給に対する徴収金の加算、国税徴収の例による費用徴収等、必要な対応をされたい。

なお、これらの具体的な対応にあたっては、「生活保護行政を適正に運営するための手引きについて」(平成18年3月30日付け社援保発第0330001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)のⅣの4費用徴収方法を参考とされたい。(法第78条第3項関係)

12 罰則

(1) 偽りその他不正な手段により給付金の支給を受け、又は他人をして受けさせた者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処するものであること。ただし、刑法(明治40年法律第45号)に正条があるときには、刑法によるものであること。(法第85条第2項関係)

(2) 7の報告を怠り、又は虚偽の報告をした者は、30万円以下の罰金に処するものであること。(法第86条関係)

13 附則

(1) 給付金の支給に関する規定は、平成30年1月1日から適用するものであること。(改正法附則第2条関係)