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○平成29年度農薬危害防止運動の実施について
(平成29年4月26日)
(/薬生発0426第1号/29消安第225号/環水大土発第1704261号/)
(各都道府県知事・各保健所設置市市長・各特別区区長あて厚生労働省医薬・生活衛生局長、農林水産省消費・安全局長、環境省水・大気環境局長通知)
農薬危害防止運動は、これまで農薬の安全かつ適正な使用及び保管管理の徹底に大きな役割を果たしてきており、その実施について従来から格別の御配慮をいただいているところである。
また、農薬の飛散低減、住宅地等を含む周辺環境への影響を防ぐための対策等を含めた農薬の適正使用に係る指導についても、御協力いただいているところである。
しかしながら、農薬の使用に当たっては、依然として、①土壌くん蒸剤施用後の作業管理が十分でなかった事例、②周辺環境への配慮が十分でなかった事例、③住宅地周辺での農薬使用に際しての周辺住民への周知の不徹底等の事例、④農薬の不適切な管理による誤飲事例及び⑤農薬ラベルの確認の不徹底等に起因する農薬使用基準の違反事例が散見されている。
また、農薬の使用が原因と疑われる蜜蜂のへい死が散見されるため、養蜂関係者と農薬使用者、農業団体等が情報交換等を通じて連携を密に行うよう、引き続き指導を行っていく必要がある。
以上のような状況を鑑み、本年度においても、国及び地方公共団体の緊密な連携の下、関係諸団体の協力を得て、別紙のとおり農薬危害防止運動実施要綱を定め、農薬危害防止運動を全国的に実施することとしたので、貴職におかれても本運動の実施について、特段の御配慮及び御協力をお願いする。
別紙
農薬危害防止運動実施要綱
第1 趣旨
農薬の安全かつ適正な使用及び保管管理の徹底は、農産物の安全確保及び農業生産の安定のみならず、国民の健康の保護及び生活環境の保全の観点からも極めて重要である。
このため、従来から、農薬取締法(昭和23年法律第82号)及び毒物及び劇物取締法(昭和25年法律第303号)に基づく取締り等を行うとともに、食品衛生法(昭和22年法律第233号)に基づく残留基準に対してきめ細やかに対応するため、農薬の飛散低減対策を含めた農薬の適正使用並びに地域及び関係部局間の連携協力体制の強化等に努めてきたところである。
しかしながら、農薬の使用に伴う使用者、周辺住民、家畜、周辺環境等に対する被害の発生事例や、農薬の不適正な使用により農作物から食品衛生法に基づく残留基準を超えて農薬成分が検出される事例が依然として散見される状況にある。
また、学校、保育所、病院、公園等の公共施設内の植物、街路樹並びに住宅地に近接する農地(市民農園や家庭菜園を含む。)及び森林等において農薬を使用するときは、農薬の飛散を原因とする住民、子供等の健康被害が生じないよう、飛散防止対策の一層の徹底を図ることが必要である。
加えて、農薬登録を受けることなく、農薬としての効能効果をうたっている資材や、成分からみて農薬に該当する資材が販売及び使用される事例も散見され、引き続きそのような資材の販売及び使用を根絶するための周知・指導の強化を図っていく必要がある。
このため、農薬取締法ほか関係法令に基づき遵守すべき事項について周知徹底するとともに、農薬及びその取扱いに関する正しい知識を広く普及させることにより、農薬の適正販売、安全かつ適正な使用及び保管管理並びに使用現場における周辺への配慮を徹底し、もって、農薬の不適切な取扱いやそれに伴う事故等を未然に防止することを目的として、農薬危害防止運動を実施する。
第2 名称
農薬危害防止運動
第3 実施期間
原則として、平成29年6月1日から同年8月31日までの3か月間とする。
なお、各地域においては、農薬の使用実態等地域の実情を考慮して、適切な時期に取り組むこととする。
第4 実施主体
国、都道府県、保健所設置市及び特別区とする。
このうち、国にあっては、地方農政局等の職員を活用し、都道府県、保健所設置市及び特別区と連携の上、地域に密着した農薬の適正使用等についての指導を行うものとする。
都道府県、保健所設置市及び特別区にあっては、地域の特性を活かした運動方針、重点事項等を掲げた実施要領を作成し、関係機関及び関係団体が一体となって協力体制を整備するとともに、農業者、防除業者等農薬を使用する者(以下「農薬使用者」という。)、毒物劇物取扱者、農薬販売者及び地域住民の意見を採り入れ、運動の活発化を図るよう努めるものとする。
第5 実施事項
1 農薬及びその取扱いに関する正しい知識の普及啓発
(1) 広報誌等による普及啓発
報道機関に記事掲載の依頼を行うとともに、広報誌、ポスター、インターネット等の多様な広報手段を用いて、本運動並びに農薬及び農薬使用に関する正しい知識の普及啓発を行うこと。
(2) 講習会等の開催を通じた普及啓発
農薬使用者のほか、毒物劇物取扱者、農薬販売者等を対象として、農薬の適正販売、安全かつ適正な使用、農薬による危害の防止対策、事故発生時の応急処置、関係法令等に関する講習会等を開催し、農薬の取扱いに関する正しい知識の普及を図ること。
その際、農薬の安全かつ適正な使用や保管管理、中毒時の応急処置、地域の医療機関情報等について解説した資料を配布し、理解の増進に努めること。
(3) 医療機関等に対する農薬中毒発生時の対応についての情報提供等
医療機関等に対して、農薬の中毒時の症状及びその応急処置等について解説した資料を配布し、万が一、事故が発生した場合の処置体制について万全を期すること。
2 農薬による事故を防止するための指導等
(1) 農薬使用時の事故防止対策の周知
農薬使用の際の不注意等に起因する事故を未然に防止するため、農薬使用者、病害虫防除の責任者及び農薬使用委託者を対象として、遵守すべき関係法令及び別記1「農薬による事故の主な原因等及びその防止のための注意事項」の周知徹底を図ること。
その際には、特に以下の事項について指導を徹底すること。
ア 農薬使用に当たっての防護装備着用の徹底
農薬の調製、散布及び防除器具の洗浄を行うときは、農薬の容器に表示された使用上の注意事項等に従い、農薬用マスク、保護メガネ等の防護装備を着用するよう指導を徹底すること。
イ 混用に関する注意事項の厳守の徹底
やむを得ず、使用の段階で農薬と他の農薬等(肥料等を含む)を混用して使用する、いわゆる現地混用を行う場合において、ラベルに他の農薬等との混用に関する注意事項が表示されているときは、当該注意事項を厳守するとともに、生産者団体が発行する「農薬混用事例集」等を参考とし、これまでに知見のない組合せで現地混用を行わないよう指導すること。
ウ 土壌くん蒸剤の使用に当たっての安全確保の徹底
土壌くん蒸剤を使用する場合は、農薬の容器に表示された使用上の注意事項等に従い、防護マスク等の防護装備の着用、施用直後のビニール等での被覆等を確実に行う等の安全確保を徹底すること。また、使用場所、周辺の状況に十分配慮して防除を行うよう指導を徹底すること。
(「クロルピクリン剤等の土壌くん蒸剤の適正使用について」(平成18年11月30日付け18消安第8846号農林水産省消費・安全局長通知)参照)
エ 住宅地等における農薬使用に当たっての必要な措置の徹底
ほ場のみならず、学校、保育所、病院、公園、保健所等の公共施設内の植物、街路樹及び住宅地に近接する場所において農薬を使用する農薬使用者等に対し、農薬の飛散が周辺住民や子供等に健康被害を及ぼすことがないよう、以下に掲げる事項を始めとする対策が示されている「住宅地等における農薬使用について」(平成25年4月26日付け25消安第175号・環水大土発第1304261号農林水産省消費・安全局長、環境省水・大気環境局長通知)を周知し、その事項の遵守を徹底すること。
① 農業生産場面
住宅地等の周辺ほ場(市民農園や家庭菜園を含む。)において農薬を散布する場合は、農薬の飛散を防止するための必要な措置を講じるとともに、事前に農薬を散布する日時、使用農薬の種類等を記した書面、看板等により周辺住民への周知を行うこと。
② 公園、街路樹等一般場面
学校、保育所、病院、公園、保健所等の公共施設内の植物、街路樹及び住宅地に近接する森林等、人が居住し、滞在し、又は頻繁に訪れる土地又は施設の植栽における病害虫防除等に当たっては、「公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル」(平成22年5月環境省水・大気環境局土壌環境課農薬環境管理室(平成26年1月改訂))も参考としつつ、病害虫の発生や被害の有無にかかわらず定期的に農薬を散布することをやめ、日常的な観測によって病害虫被害や雑草の発生を早期に発見し、被害を受けた部分のせん定や捕殺、機械除草等の物理的防除により対応するよう最大限努めること。やむを得ず農薬を使用する場合にも、散布以外の方法を十分に検討し、散布する場合でも最小限の部位及び区域にとどめ、飛散防止対策をとる等、農薬の選択及び使用方法を十分に検討し、事前に農薬使用の目的、農薬を散布する日時、使用農薬の種類及び農薬使用者等の連絡先等を記した書面、看板等により周辺住民、施設利用者等への周知を行うこと。また、立入制限範囲の設定等により、農薬散布時や散布直後に農薬使用者以外の者が散布区域内に立ち入らないよう措置を講じること。
さらに、農薬使用者等だけでなく、国及び地方自治体の施設管理部局、集合住宅の管理業者等、施設内や住宅地周辺の植栽管理のために病害虫防除を委託する可能性がある者に対しても、このことについて周知を徹底すること。
オ 航空防除における農薬散布に当たっての留意事項の徹底
有人ヘリコプターや無人ヘリコプター等の無人航空機を用いて農薬を散布する場合は、関係法令等を遵守するとともに、事前に、農薬を散布する日時、散布する農薬の種類等について、周辺住民等への周知を行うこと。また、農薬散布の際は、散布区域内及びその周辺における危害防止に万全を期すとともに、作業関係者の安全に十分留意すること。また、無人航空機を用いて農薬を散布する場合は、航空法(昭和27年法律第231号)に基づき、事前に国土交通大臣の許可・承認を受けることが必要であることに留意すること。
さらに、下記通知等を遵守徹底すること。
有人ヘリコプター:
・「農林水産航空事業の実施について」(平成13年10月25日付け13生産第4543号農林水産事務次官依命通知)
・「農林水産航空事業実施ガイドライン」(平成16年4月20日付け16消安第484号農林水産省消費・安全局長通知)
無人航空機:
・「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」(平成27年12月3日付け27消安第4545号農林水産省消費・安全局長通知。以下「指導指針」という。)
・「空中散布等を目的とした無人航空機の飛行に関する許可・承認の取扱いについて」(平成27年12月3日付け国空航第734号国空機第1007号・27消安第4546号国土交通省航空局長、農林水産省消費・安全局長通知)
特に、安全かつ適正な農薬散布の実施のため、以下の事項について留意すること。
① 無人航空機を用いて農薬を散布する場合は、架線等の危険箇所の把握、オペレーター及びナビゲーターの配置、飛行経路の選定等について、実施計画策定時において十分に検討すること。
② 散布ほ場及びその周辺の地図を作成し、オペレーターとナビゲーターが連携して散布ほ場の下見を行うことにより、危険箇所及び飛行経路を明確に地図に示す等、事前確認を強化・徹底すること。
③ さらに、農薬の散布中は散布区域内及び周辺に人が立ち入らないように常に注意すること。また、風速が3m/秒を超える場合には、農薬散布を実施しないことを徹底するとともに、超えない場合であっても、風向きを考慮した散布を行うよう努めること。
④ 特に機体の軽い小型の無人航空機(いわゆるドローン等)は、飛行させるための下降気流が小さく、風の影響を受けやすいため、これを利用して農薬散布を実施する場合には、風向きを十分考慮した散布を行うよう努めること。
⑤ 万が一、事故等が発生した場合には、農林水産省に事故発生の情報を報告する等、指導指針に基づき適切に対応すること。その際、人の死傷、第三者の物件の損傷等の特に重大な事故が発生した場合には、直ちに国土交通省にも事故発生の情報を報告すること。
(2) 農薬の保管管理及び適正処理に関する指導
農薬の誤飲・誤食による中毒事故の発生その他農薬による危害や悪用を防止するため、農薬使用者に対し、関係法令等及び別記1に基づく対策の徹底を図るよう指導すること。
その際には、特に以下の事項について指導を徹底する。
ア 農薬やその希釈液、残渣等はペットボトル、ガラス瓶等の飲食品の空容器等へ移し替えたりせず、施錠のされた場所に保管する等、保管管理を徹底すること。また、誤って移し替えてしまうことのないよう、これらの空容器等は農薬保管庫等の近くに置かないこと。万が一、容器の破損等により他の容器へ移し替えざるを得ない場合には、飲食品の容器は使用せず、内容物が農薬であることを明記した上で使用するなど、農薬の誤飲を防止するための適切な対応策を講じること。
(「農薬の誤飲を防止するための取組について」(平成23年5月16日付け23消安第1114号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長通知)参照)
イ 使用しなくなった農薬については、関係法令等を遵守し、廃棄物処理業者へ依頼すること等により適正に処理すること。
(3) 農薬使用者の健康管理
農薬使用者に対し、その健康の管理に十分留意させるとともに、特に病害虫の共同防除に従事する者に対しては、作業の前後に必要に応じて健康診断を受診するよう指導すること。
(4) 事故情報の把握
今後の事故防止対策に反映させるため、医療機関等との連携を密にし、医療機関等に対し、事故内容等の速やかな報告を依頼する等農薬による事故の状況を的確に把握すること。
3 農薬の適正使用等についての指導等
(1) 農薬使用基準の遵守の徹底
農薬による危害の防止及び農作物の安全確保のため、農薬使用者に対し、農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(平成15年農林水産省・環境省令第5号)を踏まえ、適用作物、使用量、希釈倍率、使用時期及び使用回数等の農薬使用基準、適用病害虫の範囲及び使用方法並びに使用上の注意事項の遵守を徹底するよう指導すること。
(「農薬適正使用の徹底について」(平成22年12月15日付け22消安第7478号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長通知)参照)
また、別記2「農薬の不適正使用の主な原因及びその防止対策」について、地方公共団体の関係部局、農業協同組合、農産物直売所等関係機関の職員を活用しつつ、巡回指導や集団指導等の方法により効果的に指導を行うこと。
加えて、農業者に対しては、「農業生産工程管理(GAP)の共通基盤に関するガイドライン」(平成22年4月21日付け22生産第479号農林水産省生産局長通知)等を参考として、各生産地が取り組んでいる生産工程管理の点検項目の中の農薬の適正使用に関する取組について、改めて注意喚起を行い、安全な農産物を生産できるよう、積極的に指導を行うこと。
指導の際には、特に、以下の事項について留意する。
ア 適用のない作物に誤って農薬を使用することのないよう、必ず使用前にラベルを確認すること。同じ科に属する作物であっても形状や栽培形態が異なったり、名称や形状が似ていても異なる作物であれば、使用できる農薬や使用方法が異なる場合があることに注意すること。
イ 散布した農薬がその対象の作物とは別の作物に付着・残留することのないよう、当該別の作物に農薬が飛散することを防止する対策を徹底するとともに、農薬の使用前後には防除器具を点検し、十分に洗浄されているか確認すること。特に、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(昭和25年法律第175号)に基づく有機農産物の認証を受けようとする農家の生産ほ場周辺で作業する場合には、当該生産ほ場への農薬の飛散等に十分注意すること。
(「農薬の使用基準の遵守及び飛散防止対策の徹底について」(平成23年9月5日付け23消安第3034号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長、植物防疫課長通知)及び「農薬飛散対策技術マニュアル」(平成22年3月農林水産省消費・安全局植物防疫課)参照)
ウ 最終有効年月を過ぎた農薬は、その品質が保証されないため農薬の効果が十分でないだけでなく、使用基準や残留農薬基準値が変更されている場合があり、使用した農産物が残留農薬基準値を超過する可能性もあることから、最終有効年月を過ぎた農薬を使用しないようにすること。
エ 先般、水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準の設定の審議に当たり、基準値案と水道事業者が実施した水道原水の水質調査の結果等とを照らし合わせた結果、水稲用除草剤において、基準値案を上回る濃度の農薬成分が河川から検出された事例が見られた。これは、十分な止水期間をとらずに水田内の水を排水路に流してしまったことがその一因と推察されたことから、水田において農薬を使用する場合は、注意事項に記載された止水期間を遵守し、適切な水管理や畦畔整備の措置を講じること。
(「水田において使用される農薬における止水期間の遵守の徹底等について」(平成23年10月12日付け23消安第3601号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長通知)参照)
(2) 販売及び使用が禁止されている農薬の取扱いに関する指導
農薬使用者に対し、販売及び使用が禁止されている農薬について、農林水産省のホームページ等において提供する情報を確認した上で、これらの農薬が自宅の倉庫等で発見された場合は、使用したり、他人に譲渡したりせず、関係法令を遵守して適正に処理するよう指導すること。
なお、平成22年4月1日に販売禁止農薬に追加されたケルセン又はジコホールを含む農薬及び平成24年4月1日に販売禁止農薬に追加されたベンゾエピン又はエンドスルファンを含む農薬については、農薬製造者が自主回収を行っているため、回収を受け付けている農業協同組合及び販売店に持参するよう指導すること。
(毒物及び劇物取締法、消防法(昭和23年法律第186号)、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)及び「販売禁止農薬等の回収について」(平成23年12月13日付け23消安第4597号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長通知)参照)
(3) 無登録農薬の疑いがある資材の使用に関する指導
農薬登録番号等、農薬取締法第7条に規定する表示がなく、農薬としての効能効果をうたっている又は病害虫の防除効果がある資材は、無登録農薬の疑いがあり、その資材を使用することは、農薬取締法第11条に違反する可能性があるため、農薬使用者に対し、このような資材を使用しないよう指導すること。
また、こうした資材に係る情報については、農林水産省ホームページ内の「農薬目安箱」(https://www.contact.maff.go.jp/maff/form/f841.html)に提供するよう指導すること。
(4) その他の留意事項
ア ヨウ化メチル剤を栗の収穫後のくん蒸に使用する際は、気密度等の確認を受けた施設でのみ作業を行うとともに、保護具を着用し、くん蒸終了後には十分な換気を行う等、安全なくん蒸を行うよう指導すること。
イ 不要となった農薬の水路等への投棄や、散布液の流出により、水産動植物に甚大な被害を与えることのないよう、散布液は必要な量だけを正確に調製し、不要となった農薬は関係法令を遵守して適正に処分するよう指導すること。
4 農薬の適正販売についての指導等
(1) 農薬販売者に対する指導
農薬販売者を対象として、関係法令に基づく立入検査等を実施し、無登録農薬の販売の取締り及び適正な農薬の販売に関する指導を行う。特に毒物及び劇物取締法上の毒物又は劇物(以下「毒劇物」という。)たる農薬の販売業者に対しては、別記3「毒劇物たる農薬の適正販売強化対策」を周知徹底すること。
また、農薬販売者に対する立入検査の実施に際しては、同一の販売者に対して同一年度に重複して実施されることのないよう、毒物及び劇物取締法担当部局と農薬取締法担当部局との間で連絡を密にして情報の共有化を図り、効率的な立入検査を実施すること。
(「毒物及び劇物取締法及び農薬取締法に基づく立入検査に係る技術的助言について」(平成19年3月30日付け薬食発第0330025号・18消安第14527号厚生労働省医薬食品局長、農林水産省消費・安全局長通知)参照)
(2) 農薬販売者の届出等に関する指導
農薬の販売に当たっては都道府県知事への届出が、毒劇物たる農薬の販売に当たっては都道府県知事等への登録が、それぞれ義務付けられているので、当該届出等を行うことなく、インターネットによる通信販売やオークション等を利用した販売を行わないよう指導を徹底すること。
(3) 販売禁止農薬の自主回収への協力に関する指導
農薬販売者に対し、農薬製造者が自主回収を行っている農薬(3の(2)参照)についての農薬使用者への周知に努めるとともに、農薬使用者から農薬の返品の申出があった場合は、これを受け付けて農薬製造者に送付するよう指導すること。
(4) 無登録農薬の疑いがある資材の販売に関する指導
農薬登録番号等、農薬取締法第7条に規定する表示がなく、農薬としての効能効果をうたっている又は病害虫の防除効果がある資材は、無登録農薬の疑いがあり、その資材を販売することは、農薬取締法第9条第1項に違反する可能性があるため、農薬販売者に対し、このような資材を販売しないよう指導すること。
また、こうした資材に係る情報については、農林水産省ホームページ内の「農薬目安箱」(https://www.contact.maff.go.jp/maff/form/f841.html)に提供するよう指導すること。
5 有用生物や水質への影響低減のための関係者の連携
(1) 蜜蜂の被害防止対策
農薬による蜜蜂の被害を軽減するため、都道府県の農薬指導部局は畜産部局と連携し、被害の把握及び防止に努めること。
平成25年度から平成27年度までの被害事例調査では、
・ 被害の発生は水稲のカメムシ防除時期に多く、巣箱の周辺で採取された死虫から検出された殺虫剤の多くはカメムシ防除に使用可能なものであったこと及び周辺に水稲が栽培されていない地域等でも被害事例の報告があったこと、
・ 被害を軽減させるためには、農薬使用者と養蜂家の間の情報共有、養蜂家の行う巣箱の設置場所の工夫、退避等の対策、農薬使用者の行う農薬の使用の工夫等の対策が有効であることが確認されたこと
を踏まえ、各都道府県の農薬指導部局と畜産部局は連携し、以下の取組の実施に努めること。
ア 蜜蜂の被害に関する認識の共有
畜産部局及び農薬指導部局は、その所属又は関係する普及指導員や病害虫防除所の職員、農薬使用者、養蜂家、農業団体、養蜂組合等の関係者に対し、以下の事項を周知すること。
① 被害の発生は、水稲のカメムシ防除の時期に多いこと。
② 水田に飛来した蜜蜂が、水稲のカメムシ防除に使用される殺虫剤に直接暴露すれば、被害が発生する可能性が高いこと。
③ 被害を軽減させるためには、例えば、以下の対策を実施することが有効であること。
・ 農薬使用者と養蜂家の間の情報共有
・ 巣箱の設置場所の工夫・退避
・ 農薬の使用の工夫(粒剤の使用等)
イ 情報共有の更なる徹底
畜産部局及び農薬指導部局は、農薬使用者と養蜂家間の情報共有の更なる徹底を図るため、以下の情報を得た上で、関係先に伝達すること。
① 蜂場の情報関係
1) 畜産部局は、養蜂組合等の協力を得て、蜂場の情報(蜂場の場所、巣箱の設置期間等)を農薬指導部局及び農業団体等に伝えること。
2) 農薬指導部局は、農業団体等の協力を得て、1)で得た情報を蜂場の周辺の水稲農家等に伝えること。
② 水稲の防除に係る情報関係
1) 農薬指導部局は、農業団体等の協力を得て、蜂場が設置される可能性のある場所の周辺(蜜蜂の飛翔範囲を考慮すれば、通常、蜂場から半径約2kmの範囲)の水稲のカメムシ防除の時期(*)等の情報を、畜産部局及び養蜂組合等に伝えること(当該情報は、有人ヘリコプターや無人航空機による農薬散布の事業計画や地域の農業団体が作成する防除暦等から得ること)。
* 開花期直前~開花期後2週間程度。地域ごとの防除実態、その年のカメムシの発生状況等により異なる。
2) 畜産部局は、養蜂組合等の協力を得て、1)で得た情報を養蜂家に伝えること。
③ 水稲以外の作物の防除に係る情報関係
1) 農薬指導部局は、水稲が栽培されていない地域等でも被害事例の報告があったことを踏まえ、農業団体等の協力を得て、蜂場が設置される可能性のある場所の周辺で栽培される水稲以外の作物に関する防除の時期等の情報を畜産部局及び養蜂組合等に伝えること。
2) 畜産部局は、養蜂組合等の協力を得て、1)で得た情報を養蜂家に伝えること。
ウ 被害軽減のための対策の推進
畜産部局及び農薬指導部局は、農薬による蜜蜂の被害を軽減させるために、ア及びイの取組のほか、農業団体や養蜂組合等と相談しつつ、地域の実態に合わせて協議会を設けるなどして、例えば、以下の対策を行うこと。
1) 養蜂組合等の協力を得て、養蜂家に対し、以下の指導を行うこと。
・ 蜜蜂がカメムシ防除の殺虫剤に暴露する確率が高い場所(水田で囲まれた場所や周辺に水稲以外の花粉源が少ない場所等)に巣箱を設置することは控えること。
・ 水稲のカメムシ防除の時期には、巣箱を水田の周辺から退避させること。
2) 農業団体等の協力を得て、水稲農家に対し、以下の指導を行うこと。
・ 使用する農薬のラベルに、「農薬の使用上の注意事項」や「使用回数」として記載されている事項等を遵守すること。
・ 農薬の散布は、蜜蜂の活動が最も盛んな時間帯(午前8時~12時まで)を避け、可能な限り、早朝又は夕刻に行うこと。
・ 蜜蜂が暴露しにくい形態(粒剤等)の殺虫剤を使用すること。
3) 以上のほか、巣箱の移動手段の提供、共同の退避場所の設置等、地域の実態を考慮した取組を検討し、実施すること。
(「みつばちへの危害防止に係る関係機関の連携の強化等について」(平成17年9月12日付け17消安第5679号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長、植物防疫課長、生産局畜産部畜産振興課長通知)、「花粉交配用みつばちの安定確保に向けた取組の推進について」(平成21年7月24日付け21消安第4395号農林水産省消費・安全局長、生産局長通知)、「蜜蜂の被害事例に関する調査・報告について」(平成25年5月30日付け25消安第785号農林水産省消費・安全局長通知)、「平成28年度の蜜蜂被害軽減対策の推進について」(平成28年7月7日付け28消安第1716号・28生畜第509号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長、生産局畜産部畜産振興課長連名通知)、「蜜蜂被害軽減対策の推進に向けた情報の活用について」(平成27年7月31日付け27消安第2673号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長通知)及び「農薬の空中散布等による蜜蜂被害の軽減を図るための情報の活用について」(平成27年12月3日付け27消安第4649号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長、植物防疫課長連名通知)参照)
(2) 水産動植物の被害及び水質汚濁の防止対策
水産動植物の被害の防止、河川、水道水源等の公共用水域の水質汚濁の防止等環境の保全を図るため、水道事業者等関係機関が実施する水質検査結果を踏まえて、農薬を使用する場所の周辺の公共用水域の水及び底質の調査等を必要に応じて行い、それらの結果を活用して農薬使用者等を指導すること。
また、特定の農薬を地域で集中して使用する場合、その農薬に感受性の高い生物種に著しい被害が生じるおそれが懸念されることから、できるだけ集中させず多様な農薬を組み合わせて使用するよう指導に努めること。
さらに、ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁及び水産動植物被害を未然に防止するため、関係部局間の連絡を密にし、ゴルフ場からの排出水に含まれる農薬の残留実態の把握に努めつつ、ゴルフ場関係者への指導・助言に努めること。
(「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止及び水産動植物被害の防止に係る指導指針の制定について」(平成29年3月9日付け環水大土発第1703091号環境省水・大気環境局長通知)参照)
(3) 土壌くん蒸剤による水質影響の低減対策
土壌くん蒸剤に関して、ほ場周辺の井戸水からクロルピクリンが高濃度で検出された事例があった。井戸水からクロルピクリンが高濃度で検出されたことと同剤を深層処理したこととの因果関係は必ずしも明らかではないものの、農薬指導部局は環境部局及び衛生部局から同様の情報を入手した場合には、農業現場における使用状況の把握に努めるなど、関係機関が連携して対処すること。
別記1
農薬による事故の主な原因等及びその防止のための注意事項
【人に対する事故】
1 農薬散布前
(1) 原因
① 農薬用マスク、保護メガネ等の防護装備の不備、防除器具等の点検不備によるもの(ア、イ)
② 通行人や近隣の住民への配慮が十分でなかったことによるもの(ウ、エ)
③ 強アルカリ性の農薬と酸性肥料を混用したため、有毒ガスが発生したことによるもの(オ)
④ 散布作業前日に飲酒または睡眠不足があったことによるもの、その他病中病後など体調の万全でない状態で散布作業に従事したことによるもの(カ、キ)
(2) 防止対策
ア 農薬の調製又は散布を行うときは、農薬用マスク、保護メガネ等防護装備を着用し、かつ、慎重に取り扱う。
イ 散布に当たっては、事前に防除器具等の十分な点検整備を行う。
ウ 農薬を散布するときは、散布前に周辺住民等の関係者に連絡し、必要に応じ立札を立て注意喚起を行うなど、子供や散布に関係のない者が作業現場に近づかないよう配慮する。
エ 農薬散布区域の近隣に学校、通学路等がある場合には、当該学校や子供の保護者等への周知を図り、散布の時間帯に最大限配慮する。
オ 強アルカリ性の農薬は、ラベルに記載されている「酸性肥料等との混用は絶対にしないこと」の注意事項を遵守する。
カ 散布作業前日には、飲酒を控え、十分な睡眠をとる。
キ 体調の優れない、または著しく疲労しているときは、散布作業に従事しない。
2 農薬散布中
(1) 原因
① 通行人や近隣の住民への配慮が十分でなかったことによるもの(ア)
② 強風時の散布により周辺の者が農薬に暴露したり、風上に向かっての散布等により散布作業者自身が農薬に暴露したことによるもの(イ、ウ)
③ 土壌くん蒸剤の使用に当たって、直ちに被覆をしない、十分な被覆を行わなかったなど適切な揮散防止措置を講じなかったことによるもの(エ)
④ 炎天下で長時間散布作業に従事したことによるもの(オ)
⑤ 散布の途中に農薬が付着した手で飲食・喫煙したことによるもの(カ)
(2) 防止対策
ア 居住者、通行人等に被害を及ぼさないよう、散布時の風向きに十分注意する。
イ 周辺への飛散を防ぐため、強風時における散布は控える。
ウ 風上に向かっての散布、水稲の病害虫防除の際の動力散粉機(多孔ホース噴頭)の中持ち等はやめ、農薬を浴びることのないように十分に注意する。
エ クロルピクリン剤等土壌くん蒸剤の使用に当たっては、揮散した薬剤が周辺に影響を与えないよう風向き等に十分注意するとともに、直ちに適正な厚さの資材を用いて被覆を完全に行う。
オ 炎天下での長時間の散布作業は避け、朝夕の涼しい時間を選び、2~3時間ごとに交替して行う。
カ 散布作業の合間には飲食・喫煙をしない。
3 農薬散布後
(1) 原因
① 通行人や近隣の住民への配慮が十分でなかったことによるもの(ア)
② 土壌くん蒸中のほ場管理が不適切であったことによるもの(イ)
③ 散布作業後に飲酒又は睡眠不足があったことによるもの(ウ)
(2) 防止対策
ア 公園、校庭等に農薬を散布した後は、少なくとも当日は散布区域に縄囲いや立札を立てる等により、関係者以外の者の立入りを防ぐ。
イ 土壌くん蒸中は、適正な厚さの資材による被覆状態を維持するとともに、ほ場に立て札を立てる等により、関係者以外の者の立入りを防ぐ。
ウ 散布作業後には、飲酒を控え、十分な睡眠をとる。
4 保管、廃棄
(1) 原因
① 農薬をペットボトルやガラス瓶などの飲食品の空容器等に移し替えていた、保管庫に施錠をしていなかった等、保管管理が不適切だったため、高齢者、子供等が誤飲したことによるもの(ア~エ)
② 使用残農薬を不注意に廃棄したり、不要になった農薬を放置したことによるもの(オ、カ)
③ 農薬が残っている容器が適切に処分されなかったことによるもの(オ、カ)
(2) 防止対策
ア 毒物又は劇物に該当する農薬のみならず、全ての農薬について、安全な場所に施錠して保管する等農薬の保管管理には十分注意する。また、散布や調製のため保管庫等から農薬を持ち出した際には、子供や作業に関係のない者が誤って手にすることのないよう、農薬から目を放さず、作業終了後は速やかに保管庫等に戻す。
イ 農薬やその希釈液、残渣等をペットボトルやガラス瓶などの飲食品の空容器等へ移し替えしない。
ウ 農薬やその希釈液、残渣等をペットボトルやガラス瓶などの飲食品の空容器等に誤って移し替えてしまうことのないよう、これらの空容器等は保管庫等の近くに置かない。
エ 万が一、容器の破損等により他の容器に移し替えざるを得ない場合には、飲食品の容器は使用せず、内容物が農薬であることを明記した上で使用するなど、農薬の誤飲を防止するための適切な対応を講じる。
オ 農薬は計画的に購入・使用し、使い切るよう努める。
カ 不要になった農薬や空容器、空袋は、関係法令を遵守し、廃棄物処理業者に処理を依頼する等により適正に処理する。
5 その他農薬使用者のための一般的注意事項
ア 農薬ラベルの記載をよく読み、記載されている希釈倍数等の使用基準やマスク等防護装備等に関する注意事項を遵守する。
イ 散布作業後は、手足だけでなく、全身を石けんでよく洗うとともに、洗眼し、衣服を取り替える。
ウ 農薬の散布によってめまいや頭痛が生じ、又は気分が少しでも悪くなった場合には、医師の診断を受ける。
エ 初めて使用する農薬などで、使用に関し不明な点がある場合は、病害虫防除所等に相談する。
【周囲の農作物、家畜等への被害】
(1) 被害の状況
① 周辺に飛散した除草剤により農作物が変色・枯死したもの(ア~オ)
② 農薬散布を行った地域やその周辺に置かれた巣箱で蜜蜂のへい死が発生したもの(カ~ケ)
③ 本来、害虫駆除の目的で使用する農薬を、作物を害する野生生物の駆除目的で食品に塗布して畑に置いていたため、散歩中のペットが誤食したことによるもの(コ)
(2) 防止対策
ア 飛散が少ないと考えられる剤型(粒剤、微粒剤等)を選択する。
イ 飛散低減ノズルを使用する。
ウ ほ場の外側から内側に向かって散布するなど、ノズルの向きに注意する。
エ 適正な散布圧力、散布量で散布を行う。
オ 薬剤が周囲のほ場に飛散しないよう、風速や風向きに注意する。
カ 蜜蜂に被害を及ぼさないよう、耕種農家は、巣箱の位置や設置時期に関する情報の提供を受けて、事前に農薬使用の情報提供を行い、巣箱の退避や巣門を閉じる等の対策が講じられるよう促す。
キ 使用する農薬のラベルに、「農薬の使用上の注意事項」や「使用回数」として記載されている事項等を遵守する。
ク 水稲農家は養蜂家と協力し、地域の実態に応じて、蜜蜂の活動が盛んな時間帯(午前8時~12時)における農薬の散布を避ける、蜜蜂が暴露しにくい形態(粒剤の田面散布)の殺虫剤を使用するなどの対策を実施する。
ケ 養蜂が行われている地区では、蜜蜂の巣箱及びその周辺に飛散しないよう注意する。
コ 本来の目的や使用方法以外で農薬を使用しない。
別記2
農薬の不適正使用の主な原因及びその防止対策
1 適用のない作物への使用、飛散等
(1) 原因
① 使用する農薬の適用のない作物に当該農薬と同一の有効成分を含む他の農薬が使用できるため、当該農薬についても、当該作物に使用できると誤解したもの(ア)
② 使用する農薬の適用のない作物と名前や形状の類似した適用作物があるため、当該適用のない作物にも当該農薬が使用できると誤解したもの(イ)
③ 防除器具の洗浄が不十分であったため、別の農作物に使用した農薬が混入し、適用のない作物から当該農薬が検出されることとなったもの(ウ)
④ 別の農作物の育苗箱に使用した農薬がこぼれた土壌で当該農薬の適用のない作物を栽培したため、当該適用のない作物から当該農薬が検出されることになったもの(エ)
⑤ 農薬を散布したほ場の近隣のほ場で栽培していた別の農作物から飛散により付着した農薬が検出されたもの(オ~ケ)
⑥ 複数の農作物を混植していたため、散布対象以外の農作物にも農薬が散布されたもの(コ)
⑦ 最終有効年月を過ぎた農薬を使用した結果、農薬購入時から使用するまでの間に使用基準及び残留農薬基準値が変更されていたため、残留農薬基準値を超過して農薬成分が検出されることとなったもの(サ)
(2) 防止対策
ア 農薬は製剤ごとに使用できる農作物が異なるため、農薬の使用前にラベルを確認する。
イ 名前や形状の類似した農作物に使用できる農薬であっても、対象とする農作物に使用できるとは限らないため、農薬の使用前にラベルの適用作物名を確認する。
ウ 農薬の使用前後に防除器具を点検し、十分に洗浄されているか確認する。
エ 育苗箱に農薬を使用する際は、あらかじめその下にビニールシートを敷いておくなど、農薬が周囲にこぼれ落ちないように注意する。
オ 飛散が少ないと考えられる剤型(粒剤、微粒剤等)を選択する。
カ 飛散低減ノズルを使用する。
キ ほ場の外側から内側に向かって散布するなど、ノズルの向きに注意する。
ク 適正な散布圧力、散布量で散布を行う。
ケ 農薬が周囲のほ場に飛散しないよう、風速や風向きに注意する。
コ 混植園における農薬の使用に当たっては、散布対象以外の農作物にも農薬が飛散することを考慮して、混植している全ての作物に使用できる農薬を選択する。
サ 最終有効年月を過ぎた農薬を使用しない。
2 使用時期、回数、希釈倍数等の誤り
(1) 原因
① 使用する農薬に対する慣れによる使用時期及び使用回数等使用基準の確認不足によるもの(ア)
② 農薬の効果不足に対する不安のため、規定された希釈倍数より濃い濃度で使用したことによるもの(イ)
③ 農薬を使用してから農作物を収穫するまでの日数が長く設定されている農薬について、その使用からの経過日数の確認不足によるもの(ウ、エ)
④ 同一の有効成分を含む複数の農薬の使用によるもの(オ)
(2) 防止対策
ア 日頃から使用している農薬であっても、農薬の使用前にラベルをその都度確認する。
イ 農薬の使用量や希釈倍数は、効果が確認された使用方法が定められていることを認識し、農薬の使用前にラベルにより必ず確認する。
ウ 使用時期と農作物の出荷予定日までの日数が確保されるか、農薬の使用前にラベルを逐一確認する。また、同じ農作物であっても早生や晩生など収穫時期が異なる品種を混植している場合は、それぞれの出荷予定日を確認した上で農薬を使用する。
エ 農作物を収穫する前に、農薬の使用記録により農薬を使用してから農作物を収穫するまでの日数が農薬のラベルどおり確保されているかを確認する。
オ 同一の有効成分を含む農薬の使用には注意するとともに、使用記録簿には有効成分ごとの使用回数を記載し、農薬の使用前に使用記録簿とラベルにより使用回数を確認する。
3 環境への流出
(1) 原因
使用した農薬がほ場外に流出し、又は使用した残りの農薬、若しくは農薬が残っている容器が適切に処分されなかったことにより、周囲の水産動植物に被害を与え、又は河川等に流出したもの(ア、イ)
(2) 防止対策
ア 水田において農薬を使用するときは、止水に関する注意事項を遵守し、止水期間中の農薬の流出を防止するために水管理や畦畔整備等の必要な措置を講じることにより、水田周辺の養魚池における淡水魚又は沿岸養殖魚介類の被害、河川、水道水源等の汚染の防止等環境の保全に万全を期する。
イ 不要になった農薬や空容器、空袋は、関係法令を遵守し、廃棄物処理業者に処理を依頼する等により適正に処理する。
別記3
毒劇物たる農薬の適正販売強化対策
1 毒劇物たる農薬の悪用等の不適切な使用等の要因
(1) 当該農薬の譲受人である農家等が、毒物及び劇物取締法の知識が不足している場合もあるため、毒劇物を安易に他人に譲渡してしまうことが考えられる。
(2) 購入後の保管管理が適正に行われておらず、農薬以外の用途で用いられること、譲受人以外が容易に持ち出してしまうことが考えられる。
(3) 当該農薬をペットボトルや水筒等の通常飲食に使用する容器に移し替えてしまい、誤飲・誤食事故を起こしてしまうことが考えられる。
2 毒劇物たる農薬の適正販売強化対策
(1) 特に、毒物劇物営業者以外の者に対して毒劇物たる農薬の販売をするに当たっては、登録を受けることなく毒劇物を販売し、又は授与することは毒物及び劇物取締法で禁止されていることを譲受人に伝える。
(2) 毒劇物の廃棄に当たっては、関係法令に従った廃棄を行う必要があることを譲受人に伝える。
(3) 毒劇物たる農薬は、毒劇物の指定がない農薬とは別の場所に保管し、施錠をするなど適正な保管管理が行われるよう譲受人に伝える。
(4) 毒劇物たる農薬を、飲食物の容器として通常使用される物に移し替えることは、毒物及び劇物取締法で禁止されていることを譲受人に伝える。
(5) 毒物及び劇物取締法第14条(毒物又は劇物の譲渡手続)及び第15条(毒物又は劇物の交付の制限等)の規定を遵守するとともに、身分証明書等により譲受人の身元及び使用量が適切なものであるかについて、十分確認を行う。
(6) 譲受人の言動等から安全かつ適正な取扱いに不安があると認められる者には交付しない。