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○抗IL―4受容体αサブユニット抗体製剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項について

(平成30年4月17日)

(保医発0417第5号)

(地方厚生(支)局医療課長・都道府県民生主管部(局)国民健康保険主管課(部)長・都道府県後期高齢者医療主管部(局)後期高齢者医療主管課(部)長あて厚生労働省保険局医療課長通知)

(公印省略)

抗IL―4受容体αサブユニット抗体製剤「デュピクセント皮下注」については、デュピルマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドライン(アトピー性皮膚炎)について(別添:平成30年4月17日付け薬生薬審発0417第5号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)のとおり、最適使用推進ガイドラインが策定されたところですが、これに伴う当該製剤の保険適用上の留意事項を下記のとおりとするので、貴管下の保険医療機関、審査支払機関等に対して周知徹底をお願いします。

(1) デュピクセント皮下注300mgシリンジ、同皮下注300mgペン及び同皮下注200mgシリンジについては、最適使用推進ガイドラインに従い、有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間、本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに、副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件を満たす医療機関で使用するよう十分留意すること。

(2) アトピー性皮膚炎

本製剤の投与開始に当たっては、次の事項を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。なお、本製剤の継続投与に当たっては、投与開始時の情報を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。

1) 次に掲げる医師の要件のうち、本製剤に関する治療の責任者として配置されている者が該当する施設(「施設要件ア」から「施設要件ウ」までのうち該当するものを記載)

ア 成人アトピー性皮膚炎患者又は小児アトピー性皮膚炎患者に投与する場合であって、医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に、5年以上の皮膚科診療の臨床研修を行っていること。

イ 成人アトピー性皮膚炎患者に投与する場合であって、医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に6年以上の臨床経験を有していること。うち、3年以上は、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー診療の臨床研修を行っていること。

ウ 小児アトピー性皮膚炎患者に投与する場合であって、医師免許取得後2年の初期研修を修了した後に、3年以上の小児科診療の臨床研修及び3年以上のアトピー性皮膚炎を含むアレルギー診療の臨床研修を含む6年以上の臨床経験を有していること。

2) 本剤投与前の抗炎症外用薬による治療の状況(「前治療要件ア」から「前治療要件ウ」までのうち該当するものを記載)

ア 成人アトピー性皮膚炎患者であって、アトピー性皮膚炎診療ガイドラインで重症度に応じて推奨されるステロイド外用薬(ストロングクラス以上)やカルシニューリン阻害外用薬による適切な治療を直近の6か月以上行っている。

イ 小児アトピー性皮膚炎患者であって、アトピー性皮膚炎診療ガイドラインで重症度に応じて推奨されるステロイド外用薬(ミディアムクラス以上)やカルシニューリン阻害外用薬による適切な治療を直近の6か月以上行っている。

なお、ミディアムクラスのステロイド外用薬で効果不十分の患者に対しては、本剤の投与を開始する前にストロングクラスのステロイド外用薬での治療も考慮すること。

ウ 成人アトピー性皮膚炎又は小児アトピー性皮膚炎患者であって、ステロイド外用薬やカルシニューリン阻害外用薬に対する過敏症、顕著な局所性副作用若しくは全身性副作用により、これらの抗炎症外用薬のみによる治療の継続が困難。

3) 疾患活動性の状況として、次に掲げるすべての項目の数値

ア IGAスコア

イ 全身又は頭頸部のEASIスコア

ウ 体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合(%)

4) 小児アトピー性皮膚炎患者に投与する場合、次に掲げる数値

ア 体重(kg)

(3) 気管支喘息

本製剤の投与開始に当たっては、次の事項を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。

1) 次に掲げる医師の要件のうち、本製剤に関する治療の責任者として配置されている者が該当する施設(「施設要件ア」から「施設要件ウ」までのうち該当するものを記載)

ア 医師免許取得後2年の初期研修を修了した後に、3年以上の気管支喘息に関する呼吸器科診療の臨床研修を含む4年以上の臨床経験を有していること。

イ 医師免許取得後2年の初期研修を修了した後に、3年以上の気管支喘息に関するアレルギー診療の臨床研修を含む4年以上の臨床経験を有していること。

ウ 医師免許取得後2年の初期研修を修了した後に、3年以上の小児科診療の臨床研修かつ3年以上の気管支喘息に関するアレルギー診療の臨床研修を含む4年以上の臨床経験を有していること。

2) 本製剤投与前の長期管理薬による治療の状況及び投与理由(「患者要件ア」又は「患者要件イ」と記載)

ア 高用量吸入ステロイド薬(ICS)とその他の長期管理薬(長時間作用性β2刺激薬、長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬(成人のみ)、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤)を併用してもコントロール不良で、かつ全身性ステロイド薬の投与等が必要な喘息増悪を年に1回以上きたしている。

イ 中用量ICSとその他の長期管理薬(長時間作用性β2刺激薬、長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬(成人のみ)、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤)を併用してもコントロール不良で、かつ全身性ステロイド薬の投与等が必要な喘息増悪を年に1回以上きたしている。

3) 2)で「患者要件イ」に該当する場合は、ICSを当該用量以上に増量することが不適切であると判断した理由

(4) 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎

① 本製剤の投与開始に当たっては、次の事項を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。

1) 本製剤に関する治療の責任者として、次に掲げる要件を満たす医師が配置されている施設である旨(「施設要件ア」と記載)

ア 医師免許取得後2年の初期研修を修了した後に、4年以上の耳鼻咽喉科診療の臨床研修を行っていること。

2) 次に掲げる患者の要件アからウのすべてに該当する旨

ア 慢性副鼻腔炎の確定診断がなされている。

イ 「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対して、手術による治療歴がある。」又は「既存の治療を行ってもコントロール不十分であって、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対する手術が適応とならない。」

ウ 既存の治療によっても以下のすべての症状が認められる。

・ 内視鏡検査による鼻茸スコアが各鼻腔とも2点以上かつ両側の合計が5点以上

・ 鼻閉重症度スコアが2(中等症)以上(8週間以上持続していること)

・ 嗅覚障害、鼻汁(前鼻漏/後鼻漏)等(8週間以上持続していること)

3) 2)でイのうち「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対して、手術による治療歴がある。」に該当する場合は、慢性副鼻腔炎に対する手術を行った実施年月日。「既存の治療を行ってもコントロール不十分であって、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対する手術が適応とならない。」に該当する場合は、手術が適応とならないと判断した理由

4) 本製剤投与前における各鼻腔の鼻茸スコア、鼻閉重症度スコア及び嗅覚障害、鼻汁(前鼻漏/後鼻漏)等が継続している期間

② 本製剤の継続投与に当たっては、次の事項を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。

1) 次に掲げる医師の要件のうち、本製剤に関する治療の責任者として配置されている者が該当する施設(「医師要件ア」又は「医師要件イ」と記載)

ア 医師免許取得後2年の初期研修を修了した後に、4年以上の耳鼻咽喉科診療の臨床研修を行っていること。

イ 医師免許取得後2年の初期研修を修了した後に、4年以上の臨床経験を有し、そのうち3年以上は鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎を含むアレルギー診療の臨床研修を行っていること。

2) 1)でイに該当する場合は、アの要件を満たす医師が配置されている施設と連携して本剤の効果判定を行った旨

3) 本製剤の継続投与前における各鼻腔の鼻茸スコア及び鼻閉重症度スコア

4) 24週間を超えて本製剤を投与する場合は、継続して投与することが必要かつ適切と判断した理由

[別添]

○デュピルマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドライン(アトピー性皮膚炎)について

(平成30年4月17日)

(薬生薬審発0417第5号)

(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)

(公印省略)

経済財政運営と改革の基本方針2016(平成28年6月2日閣議決定)において、革新的医薬品の使用の最適化推進を図ることが盛り込まれたことを受けて、革新的医薬品を真に必要な患者に提供するために最適使用推進ガイドラインを作成することとしています。

今般、デュピルマブ(遺伝子組換え)製剤(販売名:デュピクセント皮下注300mgシリンジ)について、既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎に対して使用する際の留意事項を別添のとおり最適使用推進ガイドラインとして取りまとめましたので、その使用に当たっては、本ガイドラインについて留意されるよう、貴管内の医療機関に対する周知をお願いします。

別添

最適使用推進ガイドライン

デュピルマブ(遺伝子組換え)

(販売名:デュピクセント皮下注300mgシリンジ)

~アトピー性皮膚炎~

平成30年4月

厚生労働省

目次

1.はじめに

2.本剤の特徴、作用機序

3.臨床成績

4.施設について

5.投与対象となる患者

6.投与に際して留意すべき事項

1.はじめに

医薬品の有効性・安全性の確保のためには、添付文書等に基づいた適正な使用が求められる。さらに、近年の科学技術の進歩により、抗体医薬品等の革新的な新規作用機序を有する医薬品が承認される中で、これらの医薬品を真に必要とする患者に適切に提供することが喫緊の課題となっており、経済財政運営と改革の基本方針2016(平成28年6月2日閣議決定)においても、革新的医薬品等の使用の最適化推進を図ることとされている。

新規作用機序を有する医薬品は、薬理作用や安全性プロファイルが既存の医薬品と明らかに異なることがある。このため、有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積されるまでの間、当該医薬品の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに、副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件を満たす医療機関で使用することが重要である。

したがって、本ガイドラインでは、開発段階やこれまでに得られている医学薬学的・科学的見地に基づき、以下の医薬品の最適な使用を推進する観点から必要な要件、考え方及び留意事項を示す。

なお、本ガイドラインは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構、公益社団法人日本皮膚科学会、一般社団法人日本アレルギー学会及び日本臨床皮膚科医会の協力のもと作成した。

対象となる医薬品:デュピクセント皮下注300mgシリンジ(一般名:デュピルマブ(遺伝子組換え))

対象となる効能又は効果:既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎

対象となる用法及び用量:通常、成人にはデュピルマブ(遺伝子組換え)として初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与する。

2.本剤の特徴、作用機序

デュピクセント皮下注300mgシリンジ(一般名:デュピルマブ(遺伝子組換え)、以下「本剤」)は、Regeneron Pharmaceuticals, Inc.が創製した、Interleukin(IL)―4受容体及びIL―13受容体を構成しているIL―4受容体アルファ(IL―4Rα)サブユニットに結合し、リガンドであるIL―4及びIL―13を介したシグナル伝達を阻害する遺伝子組換えヒトIgG4モノクローナル抗体である。

IL―4及びIL―13を介したシグナル伝達経路は、2型炎症反応(2型ヘルパーT〔Th2〕反応を含む)及びTh2細胞の活性化等に寄与し、アトピー性皮膚炎及び他の関連するアトピー性/アレルギー性疾患の病態に重要な役割を果たすと考えられている1)。また、Th2細胞が産生するサイトカインは正常表皮分化過程を障害し、表皮最終分化タンパク質の発現を阻害することから、アトピー性皮膚炎では皮膚バリア欠損を引き起こしたり、増大させたりすると考えられている。以上より、本剤は、IL―4及びIL―13のシグナル伝達を阻害することにより、アトピー性皮膚炎に対して治療効果を示すことが期待される。

3.臨床成績

製造販売承認時に評価を行った主な臨床試験の成績を示す。

 (1) ステロイド外用薬併用国際共同第Ⅲ相試験 (R668―AD―1224試験)

【試験の概要】

Medium potency(日本の分類ではストロングクラスに相当する)以上のステロイド外用薬(以下、「TCS」)で効果不十分なアトピー性皮膚炎患者(目標例数700例)を対象に、TCS併用下での本剤の有効性及び安全性を検討するため、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が日本、米国等の14カ国で実施された。

本試験は、投与期(52週)及び追跡調査期(12週)より構成され、用法・用量は、本剤300mg(初回のみ600mg)を2週若しくは1週間隔又はプラセボを52週間皮下投与することと設定された。ベースライン時の7日以上前から一定用量の保湿外用薬を併用することと設定され、ベースライン時よりTCS治療を開始し、その後、病勢が収束した場合には中止することとされた1)。2週目以降に耐え難い症状が出現した場合には、救済治療2)が可能とされた。

投与16週後の医師による全般評価スコア(以下、「IGA」)が1以下かつベースラインから2以上減少した被験者の割合(以下、「IGA≦1達成率」)及びEczema area and severity index(以下、「EASI」)スコアがベースラインから75%以上改善した被験者の割合(以下、「EASI―75達成率」)がco-primary endpointとされた。

対象となる患者は、18歳以上のアトピー性皮膚炎患者で、スクリーニング時に以下の基準を満たすこととされた。

(主な選択基準)

・ 米国皮膚科学会統一診断基準で3年以上前に診断

・ IGAスコア3以上、EASIスコア16以上、体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合10%以上、及びそう痒数値評価スケール(以下、「NRS」)スコアの最高値の平均値3以上

・ 6カ月以内に、TCSで効果不十分である旨の記録がある:効果不十分とは、Medium potency以上のTCS(必要に応じてカルシニューリン阻害外用薬(以下、「TCI」)を追加)を少なくとも28日間又は添付文書で推奨される最長期間のいずれか短い方の期間、連日投与しても寛解又は疾患活動性が低い状態(IGAスコア0~2)を維持できないことと定義された。過去6カ月間にアトピー性皮膚炎に対する全身性治療の記録がある患者もTCSで効果不十分とみなされた。

――――――――――

1)皮膚炎の活動性が高い部位に対してMedium potencyのTCSを1日1回外用し、病勢が収束した後にLow potency(日本の分類ではウィーク~ミディアムクラスに相当する)のTCSに切り替え1日1回7日間外用後、中止することとされた。再燃した場合は、Medium potencyのTCSから再開することとされた。Medium potencyのTCSでも軽快しない場合は、安全性を考慮の上、High potency(日本の分類ではベリーストロングクラスに相当する)以上のTCSを使用することとされた。

2)救済治療は、High potency以上のTCS、経口ステロイド薬及び非ステロイド性免疫抑制薬が医師の裁量で使用可能とされた。救済治療として経口ステロイド薬若しくは非ステロイド性免疫抑制薬の投与又は光線治療が行われた場合、治験薬の投与は中止され、当該救済治療薬の最終投与から半減期の約5倍以上又は光線治療の実施から1カ月以上経過した後に治験薬投与を再開することが可能とされた。

【結果】

有効性の解析対象集団は、2週間隔投与群(Q2W群)106例、1週間隔投与群(QW群)319例及びプラセボ群315例の計740例であった。また、安全性の解析対象集団は、Q2W群110例、QW群315例及びプラセボ群315例であった。

(有効性)

有効性のco-primary endpointである投与16週後のIGA≦1達成率及びEASI―75達成率は表1のとおりであり、プラセボ群と各本剤群との対比較において、いずれの評価項目においても統計学的に有意な差が認められ、プラセボに対する本剤300mgの1週間隔投与及び2週間隔投与の優越性が検証された。

表1 投与16週後のIGA≦1達成率及びEASI―75達成率(FAS、NRI)

 

Q2W群

QW群

プラセボ群

IGA≦1達成率

38.7(41/106)

39.2(125/319)

12.4(39/315)

プラセボ群との差[95%信頼区間]

26.3[16.3,36.3]

26.8[20.3,33.3]

 

p値a)b)

<0.0001

<0.0001

EASI―75達成率

68.9(73/106)

63.9(204/319)

23.2(73/315)

プラセボ群との差[95%信頼区間]

45.7[35.7,55.7]

40.8[33.7,47.8]

 

p値a)b)

<0.0001

<0.0001

%(例数)

中止例又は救済治療例はNon-responderとした。

a)地域及びベースライン時の重症度(IGAスコア3又は4)を層としたCochran-Mantel-Haenszel検定

b)プラセボ群と各本剤群の比較における有意水準をそれぞれ両側2.5%と設定することで、検定の多重性を調整

また、主な有効性評価項目の推移は表2のとおりであり、いずれの評価項目においても本剤群がプラセボ群を上回る傾向が認められ、投与16週後以降、投与52週後まで大きな変動は認められず、本剤投与継続により有効性は概ね維持するものと考えられた。

表2 主な有効性評価項目の推移(FAS、NRI)

評価項目

評価時期

Q2W群

QW群

プラセボ群

IGA≦1達成率

4週

15.1(16/106)

15.0(48/319)

7.0(22/315)

8週

26.4(28/106)

29.8(95/319)

11.7(37/315)

16週

38.7(41/106)

39.2(125/319)

12.4(39/315)

52週

34.9(37/106)

37.3(119/319)

12.4(39/315)

EASI―75達成率

4週

37.7(40/106)

37.0(118/319)

17.1(54/315)

8週

53.8(57/106)

57.7(184/319)

24.1(76/315)

16週

68.9(73/106)

63.6(203/319)

23.5(74/315)

52週

62.3(66/106)

63.9(204/319)

21.9(69/315)

EASI―90達成率a)

4週

11.3(12/106)

13.2(42/319)

5.1(16/315)

8週

25.5(27/106)

32.0(102/319)

10.2(32/315)

16週

39.6(42/106)

43.3(138/319)

11.4(36/315)

52週

48.1(51/106)

47.6(152/319)

14.3(45/315)

そう痒NRSスコア改善を認めた被験者の割合b)

4週

37.3(38/102)

27.1(80/295)

16.4(49/299)

8週

46.1(47/102)

45.8(135/295)

18.7(56/299)

16週

58.8(60/102)

50.5(149/295)

19.7(59/299)

52週

48.0(49/102)

38.6(114/295)

13.4(40/299)

%(例数)

中止例又は救済治療例はNon-responderとした。

a)EASIスコアがベースラインから90%以上改善した被験者の割合

b)そう痒NRSスコアの日内最高値の週平均がベースラインから4点以上低下した被験者の割合

(安全性)

有害事象は、Q2W群91.8%(101/110例)、QW群88.3%(278/315例)、プラセボ群88.3%(278/315例)に認められ、主な事象は表3のとおりであった。

死亡は、QW群1例(交通事故)に認められたが、治験薬との因果関係は否定された。重篤な有害事象は、Q2W群3.6%(4/110例)、QW群3.8%(12/315例)、プラセボ群6.3%(20/315例)に認められ、主な事象はアトピー性皮膚炎(Q2W群1例、QW群1例、プラセボ群1例)であった。

中止に至った有害事象は、Q2W群2.7%(3/110例)、QW群2.9%(9/315例)、プラセボ群8.3%(26/315例)に認められた。

副作用は、Q2W群33.6%(37/110例)、QW群35.2%(111/315例)、プラセボ群30.2%(95/315例)に認められた。

表3 いずれかの群で5%以上に発現が認められた有害事象(安全性解析対象集団)

 

Q2W群

(110例)

QW群

(315例)

プラセボ群

(315例)

アトピー性皮膚炎

51(46.4)

111(35.2)

179(56.8)

鼻咽頭炎

26(23.6)

66(21.0)

64(20.3)

注射部位反応

16(14.5)

61(19.4)

25(7.9)

アレルギー性結膜炎

12(10.9)

48(15.2)

17(5.4)

上気道感染

11(10.0)

49(15.6)

35(11.1)

眼瞼炎

7(6.4)

12(3.8)

3(1.0)

喘息

6(5.5)

7(2.2)

19(6.0)

頭痛

5(4.5)

26(8.3)

19(6.0)

口腔ヘルペス

4(3.6)

17(5.4)

10(3.2)

インフルエンザ

4(3.6)

9(2.9)

16(5.1)

副鼻腔炎

2(1.8)

19(6.0)

9(2.9)

例数(%)

 (2)本剤単独投与国際共同第Ⅲ相試験(R668―AD―1334試験)

Medium potency(日本の分類ではストロングクラスに相当する)以上のTCSで効果不十分又は安全性上の理由等からTCSが推奨されないアトピー性皮膚炎患者を対象に、本剤の有効性及び安全性を検討するため、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が日本、米国等の10カ国で実施された。

本試験は、投与期(16週)及び追跡調査期(12週)より構成され、用法・用量は、本剤300mg(初回のみ600mg)を2週若しくは1週間隔又はプラセボを16週間皮下投与することと設定された。ベースライン時の7日以上前から一定用量の保湿外用薬を併用することと設定され、耐え難い症状が出現した際には救済治療3)が可能とされた。

投与16週後のIGA≦1達成率及びEASI―75達成率がco-primary endpointとされた。対象となる患者は、18歳以上のアトピー性皮膚炎患者で、スクリーニング時に以下の基準を満たすこととされた。

(主な選択基準)

・ 米国皮膚科学会統一診断基準で3年以上前に診断

・ IGAスコア3以上、EASIスコア16以上、体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合10%以上、及びNRSスコアの最高値の平均値3以上

・ 6カ月以内に、TCSで効果不十分又は安全性上の理由等からTCSが推奨されない旨の記録がある:効果不十分とは、Medium potency以上のTCS(必要に応じてTCIを追加)を少なくとも28日間又は添付文書で推奨される最長期間のいずれか短い方の期間、連日投与しても寛解又は疾患活動性が低い状態(IGAスコア0~2)を維持できないことと定義された。過去6カ月間にアトピー性皮膚炎に対する全身性治療の記録がある患者もTCSで効果不十分とみなされた。安全性上の理由とは、治療によるベネフィットを上回るリスク(治療不耐容、過敏症反応、顕著な皮膚萎縮、全身性の影響等)と定義された。

――――――――――

3)救済治療は、外用薬より開始し、7日間以上継続しても十分に反応しない場合にのみ全身性治療薬を投与する段階的救済治療が推奨された。重症度又は他の健康上の理由により段階的救済治療が許容できない場合は、High potency(日本の分類ではベリーストロングクラスに相当する)以上のTCS又は全身性治療薬による救済治療を可能とした。救済治療として経口ステロイド薬又は全身性非ステロイド性免疫抑制薬が投与された場合、治験薬の投与は中止され、当該救済治療薬の最終投与から半減期の約5倍以上経過した後に治験薬を再開することが可能とされた。

【結果】

有効性の解析対象集団は、Q2W群224例、QW群223例及びプラセボ群224例の計671例であった。安全性の解析対象集団は、Q2W群229例、QW群218例及びプラセボ群222例の669例であった。

(有効性)

有効性のco-primary endpointである投与16週後のIGA≦1達成率及びEASI―75達成率は表4のとおりであり、プラセボ群と各本剤群との対比較において、いずれの評価項目においても統計学的に有意な差が認められ、プラセボに対する本剤300mgの1週間隔投与及び2週間隔投与の優越性が検証された。

表4 投与16週後のIGA≦1達成率及びEASI―75達成率(FAS、NRI)

 

Q2W群

QW群

プラセボ群

IGA≦1達成率

37.9(85/224)

37.2(83/223)

10.3(23/224)

プラセボ群との差[95%信頼区間]

27.7[20.2,35.2]

27.0[19.5,34.4]

 

p値a)b)

<0.0001

<0.0001

EASI―75達成率

51.3(115/224)

52.5(117/223)

14.7(33/224)

プラセボ群との差[95%信頼区間]

36.6[28.6,44.6]

37.7[29.7,45.8]

 

p値a)b)

<0.0001

<0.0001

%(例数)

中止例又は救済治療例はNon-responderとした。

a)地域及びベースライン時の重症度(IGAスコア3又は4)を層としたCochran-Mantel-Haenszel検定

b)プラセボ群と各本剤群の比較における有意水準をそれぞれ両側2.5%と設定することで、検定の多重性を調整

また、主な有効性評価項目の推移は表25のとおりであり、いずれの評価項目においても本剤群がプラセボ群を上回る傾向が認められた。

表5 主な有効性評価項目の推移(FAS、NRI)

評価項目

評価時期

Q2W群

QW群

プラセボ群

IGA≦1達成率

4週

12.9(29/224)

12.1(27/223)

2.7(6/224)

8週

24.1(54/224)

23.3(52/223)

3.1(7/224)

16週

37.9(85/224)

37.2(83/223)

10.3(23/224)

EASI―75達成率

4週

27.2(61/224)

28.7(64/223)

6.3(14/224)

8週

45.1(101/224)

48.0(107/223)

10.7(24/224)

16週

51.3(115/224)

52.5(117/223)

14.7(33/224)

EASI―90達成率a)

4週

10.7(24/224)

9.0(20/223)

2.7(6/224)

8週

20.5(46/224)

27.8(62/223)

4.0(9/224)

16週

35.7(80/224)

33.2(74/223)

7.6(17/224)

そう痒NRSスコア改善を認めた被験者の割合b)

4週

16.0(34/213)

23.4(47/201)

6.1(13/212)

8週

33.3(71/213)

33.8(68/201)

8.5(18/212)

16週

40.8(87/213)

40.3(81/201)

12.3(26/212)