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○母子保健医療対策総合支援事業の実施について

(平成17年8月23日)

(雇児発第0823001号)

(各都道府県知事・各保健所設置市市長・各特別区区長あて厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)

母子保健医療対策事業について、この度、母子保健医療対策総合支援事業実施要綱を別紙のとおり定め、平成17年4月1日から適用することとしたので、御了知の上、本事業の実施につきお願いする。

また、各都道府県知事におかれては、貴管内市町村長(保健所設置市市長及び特別区区長を除く。)に対する周知につき配慮願いたい。

なお、本通知の施行に伴い、母子保健強化推進特別事業の実施について(平成8年5月10日児発第485号厚生省児童家庭局長通知)、新生児聴覚検査の実施について(平成12年10月20日児発第834号厚生省児童家庭局長通知)、疾病により長期にわたり療養を必要とする児童に対する療育指導について(平成9年4月1日児発第250号厚生省児童家庭局長通知)、生涯を通じた女性の健康支援事業の実施について(平成8年5月10日児発第483号厚生省児童家庭局長通知)、特定不妊治療費助成事業の実施について(平成16年3月31日雇児発第0331008号厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)、周産期医療対策整備事業の実施について(平成8年5月10日児発第488号厚生省児童家庭局長通知)は、廃止する。

別紙

母子保健医療対策総合支援事業実施要綱

第1 趣旨

近年の少子化、核家族化、女性の社会進出等に伴い、子どもが健やかに生まれ育つための環境づくりの推進を図ることは重要な課題であり、その中心的役割を担う母子保健医療対策の充実強化が求められている。

母子保健医療対策総合支援事業は、このような課題に対応し、次世代育成支援対策の推進等に必要な総合的な施策を実施するものである。

第2 事業内容

1 子どもの心の診療ネットワーク事業

(1) 事業目的

様々な子どもの心の問題、被虐待児の心のケアや発達障害に対応するため、都道府県及び指定都市における拠点病院を中核とし、地域の医療機関並びに児童相談所、保健所、市町村保健センター、要保護児童対策地域協議会、発達障害者支援センター、児童福祉施設及び教育機関等(以下「保健福祉教育関係機関等」という。)と連携した支援体制の構築を図るとともに災害時に、被災した子どもの心のケアを行う体制をつくる。

(2) 実施主体

本事業の実施主体は、都道府県及び指定都市とする。

(3) 事業内容

都道府県及び指定都市は、次に掲げる事業を実施するものとする。

① 子どもの心の診療支援(連携)事業

ア 地域の医療機関から相談を受けた様々な子どもの心の問題、児童虐待や発達障害の症例に対する診療支援

イ 地域の保健福祉関係機関等から相談を受けた様々な子どもの心の問題、児童虐待や発達障害の症例に対する医学的支援

ウ 問題行動事例の発生時における医師等の派遣

エ 地域の保健福祉関係機関等との連携会議の開催

② 子どもの心の診療関係者研修・育成事業

ア 医師及び関係専門職に対する実地研修等の実施

イ 地域の医療機関及び保健福祉関係機関等の職員等に対する講習会等の開催

ウ 子どもの心の診療に専門的に携わる医師及び関係専門職の育成

③ 普及啓発・情報提供事業

子どもの心の診療に関する情報を幅広く収集し、地域の医療機関、保健福祉関係機関等及び地域住民に対して、ホームページ等により適切な情報を提供するとともに、子どもの心の問題について普及啓発を図る。

(4) その他

本事業の実施にあたっては、中央拠点病院と連携を図り、適切な運営に努めること。

2 生涯を通じた女性の健康支援事業

(1) 事業目的

女性は、妊娠、出産等固有の機能を有するだけでなく、女性特有の身体的特徴を有することにより、さまざまな支障や心身にわたる悩みを抱えている。このため、生活に密着した身近な機関において、女性がその健康状態に応じ的確に自己管理を行うことができるよう健康教育を実施し、また気軽に相談することのできる体制を確立するとともに不妊や不育症の課題に対応するための適切な体制を構築することにより、生涯を通じた女性の健康の保持増進を図ることを目的とする。

また、HTLV―1母子感染について、妊婦に対するHTLV―1抗体検査の適切な実施、相談体制の充実、関係者の資質向上、普及啓発の実施等により、HTLV―1母子感染を防ぐ体制の整備を図り、地域におけるHTLV―1母子感染対策の推進を目的とする。

(2) 実施主体

事業の実施主体は、(3)①~③については都道府県、指定都市及び中核市(以下「都道府県等」という。)とし、(3)④については都道府県とする。

なお、この事業の一部を医療法人その他の機関又は団体に委託することができる。

(3) 事業内容

都道府県等は、地域の実情に応じて次に掲げる事業の一部又は全部を実施するものとする。

① 健康教育事業

ア 対象者

思春期から更年期に至る女性を対象とする。

イ 事業内容等

健康教育事業は、次の方法により行うものとする。

(ア) 講習会等の方法による各ライフステージに応じた健康教室を、定期的に開催し、必要に応じて講演会を開催する。((3)③により実施する講演会等を除く。)

(イ) 思春期から更年期に至る女性に対し、女性の健康教育に資する小冊子等を配布することにより、その知識の普及啓発に努める。

ウ 実施担当者

本事業は、女性の健康(精神保健を含む。)に関する専門的知識を有する保健師又は助産師等により実施する。

エ 実施日時、場所

健康教室は、保健所その他受講者が利用しやすい場所及び日時を選定して行うものとする。

② 女性健康支援センター事業

ア 対象者

女性健康支援センターは、次に掲げる思春期から更年期に至る女性を対象とする。

(ア) 思春期にあって健康相談を希望する者

(イ) 妊娠、避妊について的確な判断を行うことができるよう、相談を希望し、またはこれを必要とする者

(ウ) 不妊に関する一般的な相談を希望する者

(エ) メンタルケアの必要な者

(オ) 婦人科疾患、更年期障害を有する者

(カ) その他、性感染症を含め女性の心身の健康に関する一般的な相談を希望する者

イ 事業内容

(ア) 身体的、精神的な悩みを有する女性に対する相談指導

(イ) 相談指導を行う相談員の研修養成

(ウ) 相談体制の向上に関する検討会の設置

(エ) 妊娠に悩む者に対する専任相談員の配置

(オ) 不妊や妊娠に関する正しい知識の普及啓発

(カ) 女性の健康に関する学習会の開催

(キ) その他相談の実施に必要な事項

ウ 実施担当者

本事業は、医師、保健師又は助産師等により実施する。

なお、実施担当者は、各種研修等への参加をする等により、女性の健康に関する専門性の向上に努めること。

また、実施担当者は、対象者のプライバシーの保護に努め、相談記録等の情報管理には十分配慮すること。

エ 実施日時、場所等

本事業は、保健医療施設等相談者の利用しやすい施設において実施するものとする。

なお、相談指導及び学習会の実施に当たっては、夜間又は休日等の時間帯においても実施する等、対象者の利便性を考慮すること。

オ 広報活動等

対象者(特に妊娠に悩む者)が、女性健康支援センターの所在等を容易に把握することができるよう、その所在地及び連絡先を記載したリーフレット等を作成し、対象者が訪れやすい店舗等で配布する等広報活動を積極的に行うこと。

カ その他

相談に当たっては、医学面のみならず、心理・社会・経済面など総合的な面に配慮し、適切に不妊専門相談センター等の他機関との連携を図ること。

③ 不妊専門相談センター事業

ア 不妊症に対する支援

(ア) 対象者

不妊で悩む夫婦等を対象とする。

(イ) 事業内容

a 夫婦の健康状況に的確に応じた不妊に関する相談指導

b 不妊治療と仕事の両立に関する相談対応

c 不妊治療に関する情報提供

d 不妊相談を行う専門相談員の研修

e 相談体制の向上に関する検討会の設置

f 不妊治療に関する学習会及び講演会等の開催

g その他不妊相談に必要な事項

(ウ) 実施担当者

本事業は、不妊治療に関する専門的知識を有する医師、その他社会福祉、心理に関しての知識を有する者等により実施する。

なお、実施担当者は、各種研修等への参加をする等により、不妊治療等に関する専門性の向上に努めること。

また、実施担当者は、対象者のプライバシーの保護に努め、相談記録等の情報管理には十分配慮すること。

(エ) 実施日時、場所

本事業は、不妊治療を実施している医療施設における不妊治療の内容等を勘案して、都道府県知事、指定都市の市長又は中核市の市長が適当として指定した施設において実施するものとする。この場合、地域の日本産科婦人科学会及び日本産婦人科医会等の関係者の意見を聞くことが望ましい。

なお、相談指導、学習会及び講演会等の実施に当たっては、夜間又は休日等の時間帯においても実施する等、対象者の利便性を考慮すること。

(オ) 不妊治療に関する情報提供については、都道府県域やその近隣地域における不妊治療の実施状況に関する情報提供を行うものとする。

(カ) 不妊相談を行う専門相談員の研修については、以下の内容についてこれを行うものとする。

a 不妊相談の進め方

b 不妊の原因

c 不妊の検査方法

d 不妊の治療方法

排卵誘発剤の使用法・副作用、体外受精・胚移植についてなど

e その他不妊相談について必要な事項

(キ) 周知徹底

不妊相談を希望する者が、不妊専門相談センターの所在等を容易に把握することができるよう、各種広報紙への掲載、ポスターの作成配布を通じ周知徹底を図るとともに、医療機関に対しても同センターについて周知を図るものとする。

(ク) 事業推進上の留意事項

本事業による不妊相談については、女性健康支援センター事業において実施する不妊相談や、近隣の他の都道府県等が設置する不妊専門相談センターと連携を密にし、各事業が、その内容に応じて、適切な対応を行うことができるよう配慮するとともに、専門的な相談を必要とする者が本事業の対象として紹介されるよう連携体制の整備を図るものとする。

ついては、都道府県が設置する不妊専門相談センターと、近隣の他の都道府県等が設置する不妊専門相談センター又は同一都道府県内の指定都市・中核市が設置する不妊専門相談センターとの間などにおいて、例えば専門医等による相談対応、社会福祉・心理の専門家による相談のほか、不妊の当事者によるグループ活動やピアカウンセリングの実施など、役割分担や連携を図る等の工夫を図ることが望ましい。

その他、次の事項に留意するものとする。

a 不妊治療に関する情報提供に当たっては、女性健康支援センターや保健所等の関係機関においても相談者に対し必要な情報の提供ができるよう、その内容や方法等を工夫するものとする。

b 不妊専門相談センターに、泌尿器科を有しない場合には、泌尿器科を標榜する医療施設と密接な連携を図ることが望ましい。

c 本事業による不妊相談については、医療施設における通常の診療とは別に独立して相談を受けることができるよう配慮する。

d 不妊相談については、相談者のプライバシーが十分保護されるよう、独立の室を用いるとともに、相談室であることを明示することが望ましい。

e 不妊相談については、インフォームド・コンセントに十分留意する。

(ケ) 関係機関との連携

都道府県等は、本事業の実施にあたり、医師会、医療機関、産婦人科及び泌尿器科医を担当する医師、その他関係団体等と十分に連携をとり、事業の実施について協力を求める。

イ 習慣流産等(いわゆる不育症)に対する支援

(ア) 対象者

習慣流産等(いわゆる不育症)(以下「不育症」という。)で悩む者を対象とする。

(イ) 事業内容

a 不育症に関する相談対応

b 不育症相談を行う専門相談員の研修

c 不育症治療に関する普及啓発

d 不育症に関する学習会及講演会等の開催

e その他不育症相談に必要な事項

(ウ) 実施担当者

本事業は、不育症支援に関する専門的知識を有する医師、その他保健、心理に関しての知識を有する者等により実施する。

なお、実施担当者は、各種研修等への参加をする等により、不育症支援に関する専門性の向上に努めること。

また、実施担当者は、対象者のプライバシーの保護に努め、相談記録等の情報管理には十分配慮すること。

(エ) 実施場所

本事業は、不妊専門相談センター又は都道府県知事、指定都市の市長、中核市の市長が適当として指定した場所とする。

(オ) 周知徹底

不育症相談を希望する者への相談対応が出来るよう不妊専門相談センター等の所在地及び連絡先を記載したリーフレット等を作成するとともに、医療機関に対しても周知を図るものとする。

(カ) 関係機関との連携

都道府県等は、本事業の実施にあたり、医師会、産婦人科を担当する医師、その他関係団体等と十分に連携をとり、事業の実施について協力を求める。

④ HTLV―1母子感染対策事業

ア HTLV―1母子感染対策協議会の設置

(ア) 都道府県は、HTLV―1母子感染対策の体制整備を図るため、関係行政機関、医療関係団体、有識者等をもって構成するHTLV―1母子感染対策協議会を設置するものとする。

(イ) HTLV―1母子感染対策協議会においては、次に掲げる事項に関し、地域の実情に応じて検討及び協議を行うものとする。

a 妊婦に対するHTLV―1抗体検査の適切な実施に関する事項

b HTLV―1母子感染に係る相談窓口に関する事項

c HTLV―1母子感染に関する普及啓発に関する事項

d HTLV―1母子感染対策に携わる関係者の研修及びその他保健指導の向上に関する事項

e HTLV―1母子感染対策に係る医療機関の連携に関する事項

f HTLV―1母子感染対策の評価に関する事項

g その他HTLV―1母子感染対策の体制整備に関する事項

イ HTLV―1母子感染対策関係者研修事業

(ア) 都道府県は、医療機関においてHTLV―1母子感染対策に携わる医師、助産師、看護師、市区町村の職員等に対し、HTLV―1母子感染対策に必要な基本的・専門的知識等を習得させるための研修を行うものとする。

(イ) 研修する事項は以下のとおりとする。

a HTLV―1及びHTLV―1感染が原因で発症する疾病(成人T細胞白血病等)に関する基本的事項

b HTLV―1母子感染に関する基本的事項

c HTLV―1母子感染に係る保健指導及びカウンセリングに関する事項

d その他HTLV―1母子感染対策に関して必要な事項

ウ HTLV―1母子感染普及啓発事業

都道府県は、リーフレットやポスター等を作成する等により、HTLV―1母子感染について妊婦等へ普及啓発を行うものとする。

エ その他

事業の実施にあたっては以下の通知を参考にすること。

「ヒト白血病ウイルス―1型(HTLV―1)母子感染に関する情報の提供について」(平成22年6月8日雇児母発0608第2号厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課長通知)、「妊婦健康診査におけるヒト白血病ウイルス―1型(HTLV―1)抗体検査の実施について」(平成22年11月1日雇児母発1101第2号厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課長通知)、「HTLV―1総合対策について」(平成22年12月20日健発1220第5号、雇児発1220第1号、厚生労働省健康局長、雇用均等・児童家庭局長連名通知)

3 妊娠・出産包括支援事業

(1) 事業目的

核家族化、地域のつながりの希薄化等により、地域において妊産婦やその家族を支える力が弱くなってきており、妊娠・出産、子育てに係る妊産婦等の不安や負担が増えてきている。

このため、各地域の特性に応じた妊娠期から子育て期にわたるまでの切れ目ない支援を行うための事業を実施することにより、子育て世帯の安心感を醸成することを目的とする。

(2) 実施主体

本事業の実施主体は、(3)①~④については、市町村(特別区を含む。)とし、(3)⑤については都道府県とする。

なお、本事業の趣旨を理解し、適切な実施が期待できる団体等に事業の全部又は一部を委託することができる。

(3) 事業内容

地域の実情に応じて次に掲げる事業の一部又は全部を実施するものとする。

なお、①及び②の実施に当たっては、子育て世代包括支援センターの整備等により、妊娠期から子育て期にわたるまでの切れ目ない支援の提供が行われるよう努めること。

① 産前・産後サポート事業

家庭や地域での妊産婦等の孤立感の解消を図るため、妊産婦等に対して、子育て経験者やシニア世代等の相談しやすい「話し相手」又は助産師等の専門家等による相談支援を実施する。

② 産後ケア事業

退院直後の母子に対して心身のケアや育児のサポート等のきめ細かい支援を実施する。

③ 妊娠・出産包括支援緊急整備事業

より身近な場で妊産婦等を支える仕組みに必要な体制を緊急に整備する必要があることから、①及び②に掲げる各事業の実施場所の修繕を行う。

④ 子育て世代包括支援センター開設準備事業

子育て世代包括支援センターを開設するまでの準備のため、職員の雇上げや協議会の開催等を行う。

ただし、子育て世代包括支援センターに係る施設・設備整備は本事業の対象から除外する。

⑤ 妊娠・出産包括支援推進事業

市町村が妊娠・出産包括支援事業を実施する体制を整備するため、市町村に対し、連絡調整会議、保健師等の専門職への研修、産後ケア事業等のニーズ把握調査等を行う。

(4) 事業の運営

(3)に掲げる各事業の運営は次による。

① 産前・産後サポート事業運営要綱(別添1)

② 産後ケア事業運営要綱(別添2)

③ 妊娠・出産包括支援緊急整備事業運営要綱(別添3)

④ 妊娠・出産包括支援推進事業(別添4)

(5) 留意事項

① 本事業の実施に当たっては、効果的な支援の実施のため、個人情報の適正な管理に十分配慮した上で、関係者間での個人情報の共有に努めるとともに、事業の実施に携わる職員等が業務上知り得た情報を漏らすことのないよう、個人情報の厳格な取扱いについて職員等に周知徹底を図るなどの対策を講じること。

また、原則として関係機関で情報共有を行うことについて、支援対象者から支援開始時点に同意を得ておくこと。

なお、事業を委託する場合は、その旨を委託先との契約において明確に定めること。

② 支援における子どもの事故のみならず、支援対象者及び関係者の安全性の確保にも十分配慮すること。

③ 次に掲げる事業は(3)①及び②の対象から除外する。

ア 講習会等による集団指導(両親学級、母親学級、育児学級等)

イ 新生児訪問指導及び妊産婦訪問指導

ウ 子育て経験者、ヘルパー等が実施する家事援助

エ 一方的な情報発信のみで相談対応を行わない事業

オ 全ての妊産婦等に利用券を配布する等、対象者又は実施内容が不特定の事業

4 不妊に悩む方への特定治療支援事業

(1) 事業目的

不妊治療のうち、体外受精及び顕微授精(以下「特定不妊治療」という。)については、1回の治療費が高額であり、その経済的負担が重いことから十分な治療を受けることができず、子どもを持つことを諦めざるを得ない方も少なくないことから、特定不妊治療に要する費用の一部を助成することにより、その経済的負担の軽減を図ることを目的とする。

(2) 実施主体

本事業の実施主体は、都道府県、指定都市及び中核市(以下「都道府県等」という。)とする。

(3) 対象者

① 特定不妊治療を受けた法律上の婚姻をしている夫婦であって、特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか又は極めて少ないと医師に診断されたものとする。

② 治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦とする。

(4) 対象となる治療等

特定不妊治療(医師の判断に基づき、やむを得ず治療を中止した場合についても、卵胞が発育しない等により卵子採取以前に中止した場合を除き、助成の対象とする。)

なお、以下に掲げる治療は助成の対象としない。

① 夫婦以外の第三者からの精子・卵子・胚の提供による不妊治療

② 代理母(妻が卵巣と子宮を摘出したことなどにより、妻の卵子が使用できず、かつ、妻が妊娠できない場合に、夫の精子を妻以外の第三者の子宮に医学的な方法で注入して、当該第三者が妻の代わりに妊娠・出産するもの)

③ 借り腹(夫婦の精子と卵子は使用できるが、子宮摘出等により、妻が妊娠できない場合に、夫の精子と妻の卵子を体外受精して得た胚を妻以外の第三者の子宮に注入して、当該第三者が妻の代わりに妊娠・出産するもの)

(5) 医療機関の指定等

① 事業の実施に当たり、都道府県等の長(以下「都道府県知事等」という。)は、指定基準を定め、これに基づき、特定不妊治療を実施する医療機関として適当と認められるものを指定するものとする。

なお、医療機関の指定基準を定めるに当たっては、次の諸点に留意すること。

ア 別添5「不妊に悩む方への特定治療支援事業の実施医療機関における設備・人員等の指定要件に関する指針」を踏まえること。

イ 特定不妊治療の実施につき、高い技術の下に十分な理解と倫理観をもって対処できる医療機関であること。例えば、公益社団法人日本産科婦人科学会(以下「学会」という。)が定めた以下の会告等が参考となる。

・体外受精・胚移植に関する見解(平成26年6月)

・顕微授精に関する見解(平成18年4月)

・ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する見解(平成26年6月)

・「生殖補助医療における多胎妊娠防止」に関する見解(平成20年4月)

・生殖補助医療実施医療機関の登録と報告に関する見解(平成27年4月)

・出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解(平成25年6月)

また、指定に当たっては、域外であっても管内の患者を多く受け入れている医療機関を指定する等、助成を受けようとする夫婦の利便性も考慮すること。

② 指定した医療機関についても、3年程度を目途に、指定基準に照らして再審査を行うものとする。なお、倫理的に許されない行為が行われたと判断される等の状況があれば、すみやかに再審査を行い、指定の取消を行うことができるものとする。

③ 指定医療機関及びそれを指定する都道府県知事等は、地域の周産期医療の確保を図り、また、指定医療機関と周産期医療機関の連携に十分配慮するものとする。

④ 本事業の円滑な実施を図るため、医療機関の指定その他の事務処理に当たっては、医師会等関係者と十分連絡協議の上行うものとする。

(6) 実施方法

本事業の実施は、都道府県等が、(3)に定める対象者が(5)により指定する医療機関において(4)に定める治療のために要した費用の一部を助成することにより行うものとする。

(7) 助成の額及び期間

① 特定不妊治療に要した費用に対して、1回の治療につき15万円(ただし、別添6のC及びFの治療については、7万5千円)まで、助成する。通算助成回数は、初めて助成を受けた際の治療期間の初日における妻の年齢が40歳未満であるときは、6回(40歳以上であるときは通算3回)までとする。

ただし、平成25年度以前から本事業による特定不妊治療の助成を受けている夫婦で、平成27年度までに通算5年間助成を受けている場合には、助成しない。

なお、「1回の治療」とは、採卵準備のための投薬開始から、体外受精又は顕微授精1回に至る治療の過程を指す。また、以前に行った体外受精又は顕微授精により作られた受精胚による凍結胚移植も1回とみなす。

② ①のうち初回の治療に限り30万円まで助成する。(ただし、別添6のC及びFの治療を除く)

③ 特定不妊治療のうち精子を精巣又は精巣上体から採取するための手術(以下「男性不妊治療」という。)を行った場合は、①及び②のほか、1回の治療につき15万円まで助成する。(ただし、別添6のCの治療を除く)

(8) 助成の申請及び決定

① 助成の申請

ア 助成を受けようとする者は、原則として、治療が終了した日の属する年度内に、居住地を管轄する保健所を経由して都道府県知事等に申請を行うものとする。

イ 申請には、不妊に悩む方への特定治療支援事業申請書様式(別添7を参考とすること。)及び必要書類を添付する。なお、必要書類については、前回申請時に提出したものと同じ場合は添付を省略することができる。

② 助成の決定

ア 当該年度分の助成対象か否かについては申請が行われた日を基準とする。

イ 都道府県知事等は、申請受理後、速やかに審査を行い、助成の可否及び金額について書面をもって申請者に通知すること。

(9) 支給要件等

① 所得要件

夫及び妻の前年の所得(1月から5月までの申請については前々年の所得)の合計額が730万円未満である場合に助成を行うこととする。

② 所得の範囲

①の所得の範囲については、児童手当法施行令(昭和46年政令第281号)第2条を準用する。

③ 所得の額の計算方法

①の所得の額の計算方法については、児童手当法施行令第3条を準用する。

(10) 広報活動等

① 不妊治療に携わる保健医療関係者等に対し、本事業の趣旨を周知徹底するほか、積極的な協力を求めて効率的な運営を図るものとする。

また、近年の結婚年齢の上昇等に伴い、特定不妊治療を受ける者の年齢も上昇している一方で、高年齢での妊娠・出産は、様々なリスクが高まるとともに、出産に至る確率も低くなることが医学的に明らかになっており、不妊治療を受けている者であっても、年齢と妊娠・出産のリスクの関係等について十分な知識を持っていない場合があることや、不妊治療をしても妊娠に至らない場合があることから、こうした知識について正確な情報の提供、普及啓発を行うこと。

さらに普及啓発に当たっては、不妊治療を行う夫婦のみならず、その家族や妊娠・出産等を考えている者を含む一般の者にも普及啓発を図るなど、広く広報等を行うこと。

② 助成を受けようとする夫婦が事前に本事業の趣旨、助成の条件等の情報を得られるよう、制度の周知、相談窓口の設置などに努めること。

③ 不妊に悩む方への支援は、経済的負担軽減とともに、不妊に関する相談指導や情報提供等を併せて行うことが望ましいため、本事業の実施に当たっては、2に規定する「生涯を通じた女性の健康支援事業」の(3)③の「不妊専門相談センター」を設置し、当該センター及びその他の相談機関との連携を図るなど、カウンセリング体制の充実・強化に努めること。

(11) 実績・成果の把握

① 指定医療機関の医師等及び都道府県等は、助成を受けようとする夫婦に対し、②に掲げる調査項目について、学会及び都道府県等において把握することをあらかじめ説明するものであること。

② 厚生労働省は、学会を通じて得た次の調査項目の集計結果について、都道府県等に通知するものであること。

・ 取りまとめ内容

受給人数(全数、治療方法別)、治療周期総数(全数、治療方法別)、年齢分布(全数、治療方法別)、妊娠数(全数、年齢別、治療方法別)、採卵あたり妊娠率(全数、年齢別、治療方法別)、多胎妊娠数(全数、年齢別、治療方法別)、生産分娩数(全数、年齢別、治療方法別)、採卵あたり生産率(全数、年齢別、治療方法別)、出生児数(全数、年齢別、治療方法別)、低出生体重児数(全数、年齢別、治療方法別)、妊娠後経過不明数(全数、治療方法別)

③ 都道府県等は、②をもとに、必要に応じて管内の事業実績の分析を行い、その成果を把握すること。

(12) 留意事項

① 本事業は、保険診療と保険外診療を組み合わせて行う混合診療を認めるものではなく、保険外診療である特定不妊治療を受けた場合の自己負担の一部を助成するものであること。

② 助成の状況を明確にするため、不妊に悩む方への特定治療支援事業台帳(様式は別添8を参考とすること。)を備え付け助成の状況を把握すること。なお、転居等により以前の助成状況を把握していない場合は、前住所地等へ照会するなど適宜確認を行うこと。

③ 申請等事務手続きに当たっては、助成を受けようとする夫婦の心理及びプライバシーに十分配慮すること。

5 産婦健康診査事業

(1) 事業目的

産後うつの予防や新生児への虐待予防等を図るため、産後2週間、産後1か月など出産後間もない時期の産婦に対する健康診査(母体の身体的機能の回復、授乳状況及び精神状態の把握等)(以下「産婦健康診査」という。)に係る費用を助成することにより、産後の初期段階における母子に対する支援を強化し、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援体制を整備する。

(2) 実施主体

本事業の実施主体は、市町村(特別区を含む。)とする。

なお、本事業の実施に当たっては、①~③の要件を満たすこと。

① 産婦健康診査において、母体の身体的機能の回復、授乳状況及び精神状態の把握等を行うこと。

② 産婦健康診査の結果が産婦健康診査を実施する病院、診療所及び助産所(以下「実施機関」という。)から市町村へすみやかに報告されるよう体制を整備すること。

③ 産婦健康診査の結果、支援が必要と認められる産婦に対して、3に規定する「妊娠・出産包括支援事業」の(3)②の「産後ケア事業」を実施すること。

(3) 対象者

産後2週間、産後1か月など、出産後間もない時期の産婦とする。

(4) 対象となる産婦健康診査

① 内容

ア 問診(生活環境、授乳状況、育児不安、精神疾患の既往歴、服薬歴等)

イ 診察(子宮復古状況、悪露、乳房の状態等)

ウ 体重・血圧測定

エ 尿検査(蛋白・糖)

オ エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)

② 回数

対象者1人につき2回以内とする。

(5) 産婦健康診査の実施等

① 本事業の実施に当たり、市町村は実施機関として適当と認められるものに委託するものとすること。

② 産婦健康診査の結果が速やかに市町村に報告されるよう、市町村は実施機関との連携体制の整備を図ること。

③ 産婦健康診査の結果を踏まえ、3に規定する「妊娠・出産包括支援事業」の(3)②の「産後ケア事業」による支援が必要と認められる場合には、すみやかに対象者に当該事業を実施すること。

また、必要に応じて訪問指導等を実施すること。

(6) 費用の請求

実施機関が、本事業における産婦健康診査を行った場合のこれに要した費用の請求は、産婦健康診査1回当たり5千円を上限として、市町村長に行うものとすること。

(7) 留意事項

① 本事業の対象者が居住地以外の実施機関において産婦健康診査を受診する場合等、産婦健康診査を実施機関へ委託して行うことが困難な場合については、(2)①~③を満たす場合に限り、産婦健康診査にかかる費用を対象者へ直接助成することを認める。

② 対象者が母子同伴で産婦健康診査を受診する場合には、適宜、子の発育状況や栄養状態等について把握することが望ましい。

6 新生児聴覚検査体制整備事業

(1) 事業目的

聴覚障害は早期に発見され適切な支援が行われた場合には、聴覚障害による音声言語発達等への影響が最小限に抑えられる。このため、聴覚障害の早期発見・早期療育が図られるよう、新生児聴覚検査に係る協議会の設置を行うとともに研修会の実施、普及啓発等により、都道府県における推進体制を整備する。

(2) 実施主体

本事業の実施主体は、都道府県とする。

(3) 事業内容

都道府県は、地域の実情に応じて次に掲げる事業の一部(①は必須)又は全部を実施するものとする。

① 行政機関、医療機関、教育機関、医師会・患者会等の関係機関(団体)等による協議会の設置・開催

② 医療機関従事者等に対する研修会の実施

③ 新生児聴覚検査のパンフレットの作成等による普及啓発

④ 都道府県内における新生児聴覚検査事業実施のための手引書の作成

⑤ その他新生児聴覚検査事業の体制整備に必要な事項

(4) 留意事項

都道府県は管内市町村における新生児聴覚検査実施状況(公費負担の実施、検査の受診者数・未受診者・受診率・検査結果等、受診勧奨、早期療育への支援状況等)や医療機関における検査の実施状況等を把握した上で、本事業を実施すること。

なお、協議会の設置については、名称や設置形態を問わず、既存の協議会等において協議等を行うものでも差支えない。

7 被災した妊産婦・乳幼児の相談等の母子保健支援事業

(1) 事業目的

平成28年4月14日に発生した熊本地震において被災した妊産婦及び乳幼児等の心身の健康等に関する相談支援体制の確保を目的とする。

(2) 対象者

熊本地震において被災した妊産婦及び乳幼児等

(3) 実施主体

事業の実施主体は、(4)①については熊本県内の市町村(以下「県内市町村」という。)とし、(4)②については熊本県及び熊本市とする。

なお、この事業の全部又は一部を適切な実施が期待できる団体等に委託することができる。

(4) 事業内容

熊本県、県内市町村は、地域の実情に応じて次に掲げる事業の一部又は全部を実施するものとする。

① 相談支援等事業

被災した妊産婦・乳幼児等に対して、保健師や助産師等による心身の健康に関する相談支援や乳幼児健診等の母子保健事業の体制確保に要する経費について補助を行う。

② 保健師等に対する研修の実施

乳幼児健診等において継続的に妊産婦及び乳幼児等の心身の状況を把握し、特に支援が必要な場合は医療機関等の専門機関へつなぐことができるよう、保健師等に対する研修を実施する。

第3 国の助成

母子保健医療対策総合支援事業の各事業に要する経費については、国は予算の範囲内において別に定めるところにより補助することができるものとする。

ただし、法律、政令、省令等に基づき他から国庫補助金が交付される事業は対象から除外する。

第4 事業計画

この実施要綱に基づく各事業を実施する場合には、別紙様式による事業計画を策定し、別に定める期日までに厚生労働大臣に提出すること。

別添1

産前・産後サポート事業運営要綱

1.事業目的

妊産婦等が抱える妊娠・出産や子育てに関する悩み等について、子育て経験者やシニア世代等の相談しやすい「話し相手」又は助産師等の専門家等による相談支援を行い、家庭や地域での妊産婦等の孤立感の解消を図ることを目的とする。

2.対象者

身近に相談できる者がいないなど、支援を受けることが適当と判断される妊産婦及びその家族(以下「利用者」という。)

3.事業の実施方法及び内容

次の(1)の①又は②の実施方法により、(2)の①から⑤の内容を実施する。

(1) 実施方法

① アウトリーチ(パートナー)型

実施担当者が利用者の自宅に赴く等により、個別に相談に対応すること。

② デイサービス(参加)型

公共施設等を活用し、集団形式により、同じ悩み等を有する利用者からの相談に対応すること。

(2) 内容

① 利用者の悩み相談対応やサポート

② 産前・産後の心身の不調に関する相談支援

③ 妊産婦等をサポートする者の募集

④ 子育て経験者やシニア世代の者等に対して産前・産後サポートに必要な知識を付与する講習会の開催

⑤ 母子保健関係機関、関係事業との連絡調整

4.実施担当者

次の(1)から(3)までに掲げる者を必要に応じて配置すること。ただし、3(2)②の産前・産後の心身の不調に関する相談支援は、(1)に掲げる専門職を担当者とすることが望ましい。また、利用者に直接支援を行う者に対して講習会を実施する等、利用者に対する適切な支援が行えるよう配慮すること。

(1) 助産師、保健師又は看護師

(2) 子育て経験者、シニア世代の者等

(3) その他支援、援助活動の調整等の事務を行う者

5.母子保健関係機関等との連携体制の整備

事業の円滑な実施を図るため、市町村保健センター等の関係機関との連携を図ること。

6.留意事項

(1) より多くの妊産婦等が利用できるよう、事業についての積極的な広報活動を行うこと。

(2) 利用者の要望を踏まえ、必要に応じて事業内容等の改善を図ること。

(3) 子育て経験者等の実施担当者の名簿を作成すること。

(4) 利用者ごとに支援台帳を作成すること。

(5) 個人情報の保護に十分留意すること。

(6) 事業実施中における子どもの事故等に備え、必要に応じ賠償責任保険に加入すること。

(7) (1)から(6)までの他、事業の実施に当たり必要な事項をあらかじめ取り決めておくこと。

別添2

産後ケア事業運営要綱

1.事業目的

退院直後の母子に対して心身のケアや育児のサポート等を行い、産後も安心して子育てができる支援体制の確保を目的とする。

2.対象者

家族等から十分な家事及び育児などの援助が受けられない褥婦及び産婦並びにその新生児及び乳児であって、次の(1)又は(2)の事由に該当する者(以下「利用者」という。)とする。対象者の選定に当たっては、退院直後の褥婦は、心身の回復期にあり孤立しやすく育児不安を抱えやすいことを考慮することとする。

(1) 産後に心身の不調又は育児不安等がある者

(2) (1)の他、特に支援が必要と認められる者

3.事業の実施方法及び内容

地域におけるニーズや社会資源等の状況を踏まえ、次の(1)の①、②又は③の実施方法により、原則として(2)の①及び②の事業を実施することとし、必要に応じて③から⑤の事業を実施することとする。

(1) 実施方法

① 宿泊型

病院、診療所、助産所の空きベッドを活用する等により利用者を宿泊させ、休養の機会を提供するとともに、心身のケアや育児サポート等のきめ細かい支援を実施すること。

利用期間は原則として7日間以内とすること。ただし、市町村が必要と認めた場合には、その期間を延長することができる。

利用者の家族は、本事業の実施に支障を生じない範囲で市町村が認めた場合に宿泊させることができる。

② デイサービス型

日中、実施施設において、来所した利用者に対し、個別又は集団で、心身のケアや育児のサポート等のきめ細かい支援を実施すること。

③ アウトリーチ型

実施担当者が利用者の自宅に赴き、個別に心身のケアや育児のサポート等のきめ細かい支援を実施すること。

(2) 内容

① 褥婦及び新生児に対する保健指導及び授乳指導(乳房マッサージを含む)

② 褥婦に対する療養上の世話

③ 産婦及び乳児に対する保健指導

④ 褥婦及び産婦に対する心理的ケアやカウンセリング

⑤ 育児に関する指導や育児サポート等

4.実施担当者

次のとおり、事業の内容に応じて(1)から(3)までの担当者を配置すること。また、宿泊型で実施する場合には、24時間体制で1名以上の助産師、保健師又は看護師を配置すること。なお、事業内容に必要な担当者については保健師助産師看護師法や医師法等を参考にすること。

(1) 助産師、保健師又は看護師

(2) 心理に関しての知識を有する者

(3) 育児に関する指導や育児サポート等を実施するに当たり必要な者

5.実施場所

(1) 宿泊型

利用者が宿泊する施設は、原則として次のアからオまでの設備を有する施設であること。ただし、近隣の他の施設において、当該施設の本来の事業運営に支障がないと認められる範囲で、共同で使用することができる設備がある場合は、この限りでない。

ア 利用者の居室

イ カウンセリング室

ウ 乳児保育室

エ 体操等を行う多目的室

オ アからエまでの他、事業の実施に必要な設備

(2) デイサービス型

個別又は集団で支援を行うことができる設備その他の事業の実施に必要な設備を有する施設であること。ただし、近隣の他の施設において、当該施設の本来の事業運営に支障がないと認められる範囲で、共同で使用することができる設備がある場合は、この限りでない。

(3) アウトリーチ型

利用者の自宅に赴いて支援を行うこと。その際、安全面・衛生面に十分配慮すること。

6.医療機関との連携体制の整備

(1) 事業の円滑な実施を図るため、都道府県医師会及び郡市医師会等の協力を得て、医療機関との連携体制を十分に整備すること。

(2) 事業の実施に当たり、保健医療面での助言が随時受けられるよう、相談できる医師をあらかじめ選定すること。

(3) 症状の急変等、緊急時に利用者を受け入れてもらう協力医療機関をあらかじめ選定すること。

7.利用料

本事業の実施に当たっては、利用者から利用料を徴収すること。

ただし、利用者の所得に十分配慮すること。

8.留意事項

(1) より多くの産婦等が利用できるよう、事業についての積極的な広報活動を行うこと。

(2) 利用者の要望を踏まえ、必要に応じて事業内容等の改善を図ること。

(3) 利用者ごとに支援台帳を作成すること。

(4) 個人情報の保護に十分留意すること。

(5) 事業実施中における子どもの事故等に備え、必要に応じ賠償責任保険に加入すること。

(6) (1)から(5)までの他、事業の実施に当たり必要な事項をあらかじめ取り決めておくこと。

別添3

妊娠・出産包括支援緊急整備事業運営要綱

1.事業目的

産前・産後サポート事業、産後ケア事業の実施場所の修繕を行うことにより、より身近な場で妊産婦等を支える仕組みに必要な体制を緊急に整備することを目的とする。

2.対象施設

妊娠・出産包括支援事業を実施又は実施を予定している市町村(市町村保健センター等)、委託先の医療法人又はNPO法人等が所有する施設

3.事業内容

産前・産後サポート事業、産後ケア事業を実施する場所の修繕を行う。

4.事業の対象事例

・パソコンを設置するための配線工事

・冷暖房器具(クーラー、暖房器具、床暖房等)の設置

・幼児用トイレの設置

・幼児用シンクの設置

・幼児用バス(沐浴槽)の設置

・調乳ユニットの設置

・玄関スロープ、玄関ベンチの設置

・畳替え、障子の張り替え、壁紙の張り替え

・相談室の間仕切り

・その他妊娠・出産包括支援事業に必要な修繕

5.事業の実施期限

各年度3月31日までに修繕に着手し、完了したものを対象とする。

別添4

妊娠・出産包括支援推進事業

1.事業目的

連絡調整会議、保健師等の専門職への研修、産後ケア事業等のニーズ把握調査等を行い、市町村が妊娠・出産包括支援事業を実施するための体制整備を推進することを目的としている。

2.事業内容

(1) 連絡調整会議

都道府県と市町村や、市町村間で情報を共有するため、連絡調整会議を開催する。

(2) 保健師等の専門職への研修

市町村が妊娠・出産包括支援事業を実施するに当たり、保健師等の専門職等が産前・産後サポート事業や産後ケア事業、利用者支援事業(母子保健型)を実施するために必要な専門的知識を身につけるための研修を行う。

(3) ニーズ把握調査

産後ケア事業等の実施に当たり、基礎データの把握及び利用者のニーズ把握のための調査を行う。

(4) その他

上記の他、市町村が妊娠・出産包括支援事業を実施する体制を整備するための支援を行う。

なお、必要に応じて、市町村による利用者支援事業(母子保健型)の実施にも資するような支援を行うこと。

別添5

不妊に悩む方への特定治療支援事業の実施医療機関における設備・人員等の指定要件に関する指針

1.実施医療機関の具備すべき施設・設備基準

(1) 必ず有すべき施設・設備

実施医療機関は、次の施設・設備を有するものとする。

○ 診察室・処置室

・ 不妊の患者以外の患者と併用であってもさしつかえないこと。

○ 採卵室・胚移植室

・ 採卵室の設計は、原則として手術室仕様(注1)であること。

・ 清浄度は原則として手術室レベル(注2)であること。

・ 酸素吸入器、吸引器、生体監視モニター、救急蘇生セットを備えていること。

○ 培養室

・ 清浄度は原則として手術室レベルであること。

・ 培養室においては、手術着、帽子、マスクを着用することとし、入室時は手洗いを行うこと。

・ 職員不在時には施錠すること。

○ 凍結保存設備

・ 設備を設置した室は、職員不在時には施錠すること。

(2) その他の望ましい施設

実施医療機関は、次の施設を有することが望ましい。

○ 採精室

○ カウンセリングルーム

○ 検査室(特に、精液検査、精子浮遊液の調整等、不妊治療に関する検査を行う設備を設置した室)

2.実施医療機関の配置すべき人員の基準

(1) 配置が必要な人員

実施医療機関は、次の人員を配置するものとする。

○ 実施責任者(1名)

・ 実施責任者は次の事項を全て満たすものとする。

(ア) 公益社団法人日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医(以下「産婦人科専門医」という。)である者

(イ) 産婦人科専門医取得後、不妊症診療に2年以上従事した者

(ウ) 公益社団法人日本産科婦人科学会の体外受精・胚移植に関する登録施設において1年以上勤務又は1年以上研修を受け、体外受精・胚移植の技術を習得した者

(エ) 常勤である者

・ 実施責任者の責務は次の通りとする。

(ア) 不妊治療に関する医療安全管理マニュアルの策定

(イ) 不妊治療を実施する施設・設備についての安全管理

(ウ) 不妊治療にかかる記録・情報等の管理

○ 実施医師(1名以上、実施責任者と同一人でも可)

・ 年間採卵件数が100件以上の施設については、一般社団法人日本生殖医学会認定生殖医療専門医がいることが望ましい。

○ 看護師(1名以上)

・ 不妊治療に専任(注3)している者がいることが望ましい。

・ 年間治療件数が500周期以上の施設については、公益社団法人日本看護協会認定の不妊症看護認定看護師又は母性看護専門看護師がいることが望ましい。

○ 配偶子、受精卵及び胚の操作・取扱い、並びに培養室、採精室及び移植室などの施設

・ 器具の準備・保守の一切を実際に行う、生殖補助医療に精通した技術者(いわゆる胚培養士・エンブリオロジスト(医師を含む))(1名以上、実施責任者又は実施医師と同一人でも可)

・ 年間採卵件数が100件以上の施設については、実施責任者・実施医師と同一人でないことが望ましい。

(2) 配置が望ましい要員

実施医療機関は、次の人員を有することが望ましい。

○ 泌尿器科医師

・ 特に、精巣内精子生検採取法、精巣上体内精子吸引採取法等を実施する施設では、泌尿器科医師との緊密な連携を取れるようにしておくことが重要である。

・ 一般社団法人日本生殖医学会認定生殖医療専門医であることが望ましい。

○ 患者(夫婦)が納得して不妊治療を受けることができるように、不妊治療の説明補助、不妊治療の選択の援助、不妊治療を受ける患者への継続的な看護とともに生殖医療チーム内の調整を行う者(いわゆるコーディネーター)

・ 年間治療件数が500周期以上の施設については、公益社団法人日本看護協会認定の不妊症看護認定看護師又は母性看護専門看護師がいることが望ましい。

○ 心理学・社会学等に深い造詣を有し、臨床における心理カウンセリング又は遺伝カウンセリング等の経験を持ち、患者(夫婦)を不妊に関しカウンセリングの側面から支援できる技術を持つ者(いわゆるカウンセラー)

・ 患者(夫婦)の状態等に応じて、必要な心理カウンセリング及び遺伝カウンセリングが可能となるよう、配置した者の専門でない分野の経験を持つ者との連携体制を確保しておくことが望ましい。

3.その他の要件

実施医療機関は、次の項目を満たすことが必要である。

○ 自医療機関の不妊治療の結果による妊娠に関しては、妊娠から出産に至る全ての経過の把握および公益社団法人日本産科婦人科学会に対する報告を行っていること。

○ 自医療機関で分娩を取り扱わない場合には、妊娠した患者を紹介し、妊娠から出産に至る全ての経過について報告を受ける等、分娩を取り扱う他の医療機関と適切な連携をとること。

○ 本事業の実績・成果の把握のための調査に協力する医療機関であること。

○ 公益社団法人日本産科婦人科学会における個別調査票(治療から妊娠まで及び妊娠から出産後まで)の登録に協力すること。

○ 医療安全管理体制が確保されていること。

1 医療に係る安全管理のための指針を整備し、医療機関内に掲げること。

2 医療に係る安全管理のための委員会を設置し、安全管理の現状を把握すること。

3 医療に係る安全管理のための職員研修を定期的に実施すること。

4 医療機関内における事故報告等の医療に係る安全の確保を目的とした改善のための方策を講ずること。

5 自医療機関において保存されている配偶子、受精卵の保存管理及び記録を行うこと。

6 体外での配偶子・受精卵の操作に当たっては、安全確保の観点から必ずダブルチェックを行う体制を構築すること。なお、ダブルチェックは、実施責任者の監督下に、医師・看護師・いわゆる胚培養士・エンブリオロジストのいずれかの職種の職員2名以上で行うこと(医師については、実施責任者と同一人でも可)。

次の項目については、満たすことが望ましい。

○ 倫理委員会を設置することが望ましい。その委員構成等については、公益社団法人日本産科婦人科学会の会告「生殖補助医療実施医療機関の登録と報告に関する見解」に準ずることとする。

1 倫理委員会は中立を保つため委員構成に配慮が必要であり、中立的な外部委員を複数入れることが望ましい。

2 倫理委員会委員長を実施責任者が兼ねてはならない。

3 自医療機関で十分な人員を確保できない場合には、他の医療機関・大学等に設置されている、上記会告に準じた倫理委員会に審査を委託してもよいこととする。

○ 公益財団法人日本医療機能評価機構の実施する医療事故情報収集等事業に登録・参加していることが望ましい。

○ 不妊治療にかかる記録については、保存期間を20年以上とするのが望ましい。

注1:「手術室仕様」の参考

医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)

第20条第3号 手術室は、なるべく準備室を附設しじんあいの入らないようにし、その内壁全部を不浸透質のもので覆い、適当な暖房および照明の設備を有し、清潔な手洗いの設備を附属して有しなければならない。

注2:「手術室レベルの清浄度」の参考