添付一覧
○労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について
(平成30年2月22日)
(労災発0222第1号)
(都道府県労働局長あて厚生労働省大臣官房審議官(労災、賃金担当)通知)
(公印省略)
平成30年度における労災補償業務の運営に当たっては、特に下記に示したところに留意の上、実効ある行政の展開に遺憾なきを期されたい。
記
第1 労災補償行政を巡る状況への対応
労災補償行政を巡る状況をみると、ここ数年の過労死等に係る労災請求件数は2,400件以上に上り、石綿関連疾患に係る労災請求件数も1,100件以上に上るなど、多くの複雑困難事案の処理を求められている状況にある。
過労死等を巡る国民の関心は高く、とりわけ過労死等の発生を防止するための取組強化に対する社会的要請が強まっており、長時間労働の是正を大きな柱として、政府を挙げて推進する「働き方改革」に労働基準行政として的確に対応することが求められている中、労災補償行政においては、過労死等の労災請求事案に引き続き適切に対応していくことが必要である。
その一方で、厳しい定員事情や行政経費に係る予算事情など、行政を取り巻く環境は厳しさを増しており、このような中で、労災補償行政に対する国民の期待に応え、労災請求事案に的確に対応するためには、厚生労働本省、都道府県労働局(以下「局」という。)及び労働基準監督署(以下「署」という。)が、より一層連携して効率的な業務運営に取り組み、的確な事務処理の実施に必要な人材育成を行うことが重要となっている。
このため、平成30年度においては、特に次の事項を重点的に推進することとする。
① 過労死等事案などの的確な労災認定
② 迅速かつ公正な保険給付を行うための事務処理の徹底
③ 労災補償業務の効率化と人材育成
第2 過労死等事案に係る的確な労災認定
1 的確な労災認定に向けた調査上の留意点
(1) 労働時間の的確な把握
脳・心臓疾患及び精神障害の労災認定基準における業務の過重負荷の要因である労働時間については、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであることに留意の上、被災労働者の労働時間の把握に当たっては、使用者の指揮命令下にあることが認められる時間を的確に把握すること。そのためには、タイムカード、事業場への入退場記録、パソコンの使用時間の記録等の客観的な資料を可能な限り収集するとともに、上司・同僚等事業場関係者からの聴取等を踏まえて、事実関係を整理・確認し、始業・終業時刻及び休憩時間を詳細に特定した上で、被災労働者が実際に労働していると合理的に認められる時間を的確に把握すること。その際、事業場において休憩時間とされている時間であっても、使用者の黙示も含む指揮命令に基づき労働者が業務に従事している、又は手待時間と同様の実態が認められるなど労働からの解放が保障されていない場合には、労働時間として算入すべきことに留意すること。
(2) 労災認定基準の適切な運用
ア 脳・心臓疾患
脳・心臓疾患の労災認定基準においては、対象疾病が定められており、対象疾病以外の疾病については、当該認定基準に基づいて業務上外の判断をすることはできないことから、請求があった場合には、専門医等に対象疾病であるか否かを確認し、対象疾病に該当しない場合には、本省に相談の上、個別に業務と発症との因果関係を判断すること。
イ 精神障害
(ア) 医学意見の適切な収集
精神障害の労災認定基準においては、認定要件を満たすか否かについて、主治医意見により判断すべき事案、専門医意見により判断すべき事案及び専門部会意見により判断すべき事案を示しているところであり、局においては、当該認定基準に基づく適正な医学意見の収集方法について、署への周知を図るとともに、適切な指示を行うこと。
(イ) 精神障害の既往歴のある事案
調査の過程において、請求人に精神障害の既往歴があることを把握した場合には、疾病名、発病の時期及び療養の経過等の調査を行った上で、当該精神障害が治ゆ(症状固定)の状態にあるか否かについて、専門医等の意見により適切な判断を行うこと。
その結果、当該精神障害が治ゆの状態にあると判断される場合には、労災請求の対象となった精神障害を新たな発病として、業務上外を判断すること。
また、当該精神障害が治ゆの状態に至っていない場合には、悪化の時期、悪化後の疾病名、悪化前の特別な出来事の有無及び悪化前後の療養の経過等の調査を行い、当該悪化の業務起因性について判断を行うこと。
(ウ) 嫌がらせ、いじめやセクシュアルハラスメントの事案について
精神障害事案については、上司、同僚等からの聴取等の調査を尽くした上で、業務上外の判断を行っているところであり、特に、嫌がらせ、いじめやセクシュアルハラスメントの事案については、関係者が相反する主張をする場合があるが、請求人が主張する行為者を含む関係者からの聴取等を省略することなく必要な調査の実施を徹底すること。
2 過労死等事案に係る関係部署との連携
過労死等事案については、上記第1のとおり、その発生を防止するための対策が労働基準行政における喫緊の課題となっていることを踏まえ、局及び署においては、引き続き労災担当部署と監督・安全衛生担当部署の緊密な連携を図るとともに、本省とも情報の共有を図る必要がある。
このため、署管理者は、労災担当部署と監督・安全衛生担当部署における情報共有を徹底すること。局管理者は、過労死等事案に係る調査の進捗及び労災担当部署と監督・安全衛生担当部署における情報共有等の状況について的確に把握し、労災担当部署において把握した情報が監督・安全衛生担当部署に共有されるよう、また、必要に応じ、監督担当部署と協議を行うよう、署管理者に対し必要な指示を行うとともに、社会的に注目を集める可能性の高い事案については、所要の報告を確実に行うこと。
具体的には、監督担当部署との連携は平成29年1月20日付け基監発0120第2号・基補発0120第2号「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表に当たり今後の過労死等の労災請求事案の対応において留意すべき事項について」において指示しているところであるが、今後は、監督担当部署との一層の連携を図ることとしているので、別途通知するところにより対応すること。
また、安全衛生担当部署との連携は平成29年3月31日付け基監発0331第1号・基補発0331第6号・基勤発0331第1号・基安労発0331第1号「『過労死等ゼロ』緊急対策を踏まえたメンタルヘルス対策の推進に当たっての具体的手法について」において指示しているところであり、今後も監督・安全衛生担当部署と密接に連携すること。
第3 石綿関連疾患に係る的確な労災認定
1 的確な労災認定に向けた調査上の留意点
(1) 石綿関連疾患に係る医学意見の的確な徴取
石綿関連疾患においては、認定基準に定められた疾病に該当するか否か、胸膜プラーク等の所見が認められるか否か等の医学的所見が労災認定の重要な要件であることから、その判断に当たっては、主治医の意見だけでなく、地方労災医員等の意見を徴するとともに、平成24年5月22日付け基労補発0522第1号「石綿確定診断等事業について」に基づき、確定診断の依頼を行うこと。また、良性石綿胸水の事案については、全数確定診断の依頼が必要であることから、地方労災医員等の意見を徴することなく、速やかに確定診断の依頼を行うこと。
なお、確定診断がなされなかった事案や死亡原因などの医学的判断に疑義が生じたもの等については、必ず本省に協議又は相談すること。
また、傷病年月日については、現実に療養が必要となった日であり、主治医から石綿関連疾患の診断がなされる前から自覚症状を訴え、別の医療機関で治療している場合には、主治医や地方労災医員等に対して、当該疾患の症状の経過等を確認し判断すること。
(2) 石綿ばく露作業の的確な把握
石綿ばく露作業従事歴は、労災認定を行う上で重要な調査事項であるとともに、その的確な把握は、迅速な認定にも資するものである。このため、石綿ばく露作業の調査に当たっては、平成17年7月27日付け基労補発第0727001号「石綿による疾病に係る事務処理の迅速化等について」及び平成24年9月20日付け基労補発0920第2号「石綿による疾病の業務上外の認定のための調査実施要領について」に基づき、効率的な調査を実施すること。その際、石綿ばく露作業に最後に従事した事業場は公表の対象となることを踏まえ、最終石綿ばく露事業場の確認は慎重に行うこと。
なお、石綿ばく露作業の有無や期間、最終ばく露事業場の判断等に疑義が生じたもの等については、必ず本省に協議又は相談すること。
2 石綿関連疾患に関する労災補償制度等の周知
(1) 石綿労災認定等事業場の公表
石綿労災認定事業場の公表に当たっては、公表データを管理するシステムへの入力等を確実に実施することが、効率的な公表作業に資するものである。このため、例えば、石綿関連疾患にり患して労災保険により療養している者が死亡し、当該死亡について遺族補償給付の支給決定を行った場合には、該当する保険給付の種別ごとに請求・決定年月日を入力するとともに、死亡年月日も漏れなく入力するなど、局において日頃から適正なデータ入力・管理を徹底すること。
また、平成30年度の石綿労災認定事業場の公表についても、引き続き、複数名での確認体制を整備した上で、システムに入力したデータは調査結果復命書により確認し、誤入力、入力漏れがないようにすること。
なお、公表対象事業場には、業務上外の調査又は支給決定後、公表の趣旨について丁寧に説明すること。
(2) 労災保険指定医療機関等への周知
石綿関連疾患については、がん診療連携拠点病院をはじめとした労災保険指定医療機関に対して、平成29年12月に労災補償制度等に関するパンフレットや石綿ばく露歴などのチェック表(以下「周知用資料」という。)を配布し、医療機関を通じた制度の周知を行ったところである。引き続き、新規の労災保険指定医療機関に対しては周知用資料等を活用することにより、制度周知を確実に実施すること。また、石綿労災認定等事業場に対しては、引き続き、退職労働者等への労災補償制度の周知を実施するよう依頼すること。
第4 その他の職業性疾病事案に係る的確な労災認定
1 電離放射線障害事案に係る調査上の留意点
認定基準において本省にりん伺することとされている事案については、認定基準別添の調査実施要領に基づき調査することとされているところであるが、調査に当たっては、被災労働者のすべての業務経歴において、作業内容や放射線業務従事の有無、被ばく線量、安全防護の状況等が具体的に分かるよう、可能な限り把握すること。
2 その他の職業性疾病事案に係る関係部署との連携
職業性疾病事案のうち、特に、職業がんや有害物質による中毒による疾病の労災認定に当たっては、発がん性物質の特定、当該物質のばく露状況等を詳細に把握する必要があるが、より一層効率的な調査を行うため、監督・安全衛生担当部署と情報共有するなど緊密な連携を図ること。
また、新しい疾病に関する請求事案については、従前より、補504による本省報告や監督・安全衛生担当部署との情報共有の徹底を指示しているところであり、引き続き、安全衛生担当部署と調査結果を共有するなど緊密に連携し、ばく露状況の詳細な把握に努めること。
なお、調査結果復命書の作成に当たっては、調査で得た情報を活用し、労災認定に必要な情報を過不足なく記載することに留意されたい。
第5 迅速かつ公正な保険給付を行うための事務処理の徹底
労災保険制度は、被災労働者及びその遺族等に対し、必要な保険給付を行うことにより、迅速かつ公正な保護を図ることを目的としている(労働者災害補償保険法第1条)。この目的を実現するため、遵守すべき事務処理手順を定め全国斉一的な運用を行っているところであるが、平成30年度における事務処理については、特に次の事項に留意して取り組むこと。
1 迅速処理に向けた的確な進行管理の徹底
長期未決事案については、署長管理事案、局管理事案による管理等、長期未決事案の発生防止のために取り組んでいるところであるが、今後の取組については、別途通知するところにより、的確な進行管理の徹底を図ること。
なお、当該通知に基づき、第三者行為災害に係る長期未決事案のうち、請求人が労災保険給付に先行して保険会社等からの支払を希望している事案については、今後、未決解消のための事案管理及び対応は不要とすることを予定しているが、引き続き進行管理については適切に実施されたい。
2 請求人等への懇切・丁寧な対応
被災労働者及びその遺族等の請求人等に対する丁寧で分かりやすい説明の実施については、平成23年3月25日付け基労発0325第2号「今後における労災保険の窓口業務等の改善の取組について」(以下「窓口改善通達」という。)により指示しているところであるが、引き続き、これを徹底するとともに、相談等の段階で、調査が困難であることや業務上外の見込み等について言及することは厳に慎むこと。また、請求人等に対しては、窓口改善通達に基づき定期的な処理状況の説明を徹底し、懇切・丁寧に対応すること。
3 報道機関に対する的確な対応
過労死等事案など労災認定された個別の事案について社会的関心が高まっていることを背景に、局署において報道機関等から個別事案について取材を受ける機会が増えていることから、対応に当たっては、被災労働者及びその遺族等の個人情報保護の観点に十分留意すること。
なお、取材等を受けた場合は、必ず当日中に取材応答記録を作成し、速やかに本省へ報告すること。
4 不正受給防止に対する的確な対応
労災保険に係る不正受給事件が社会に与える影響は大きく、労災保険制度に対する不信を招来し、制度の適正な運営を大きく阻害することにもなりかねないことから、「労災保険給付事務取扱手引」に基づき、請求書審査等の事務処理を行うこと。
なお、特別加入者に係る不正受給事案が散見されることから、平成29年12月7日付け基補発1207第1号「労災保険の特別加入者に係る不正受給防止対策の徹底について」に基づき、対応の徹底を図ること。
5 労災かくしの排除に係る対策の一層の推進
全国健康保険協会(協会けんぽ)の各都道府県支部から健康保険法の保険給付について不支給(返還)決定を受けた者の情報を得た場合において、被災労働者に対して、労災請求の勧奨を行うとともに、①労災かくしが疑われる場合、②新規の休業補償給付支給請求書の受付に際し、労働者死傷病報告の提出年月日の記載がない場合には、速やかに監督・安全衛生担当部署に対して情報の提供を行うこと。
6 外国人技能実習生に対する労災保険制度の周知及び請求勧奨の取組
外国人技能実習生に対する労災保険制度の周知については、平成29年10月27日付け基補発1027第2号「今後の技能実習生の死亡災害に関する労災保険給付の請求勧奨等について」に基づき、外国人技能実習機構等から情報提供を受けた際には、引き続き請求勧奨に努めること。
7 障害(補償)年金を受ける者の再発に係る取扱
障害(補償)年金を受ける者が再発した場合の事務処理の留意点については、平成27年12月22日付け基補発1222第1号「障害(補償)年金を受ける者が再発により傷病(補償)年金又は休業(補償)給付を受給する場合の事務処理上の留意点について」により指示しているところであるが、未だ適切でない状況がみられる。障害(補償)年金を受ける者が再発した場合、障害の状態によっては、再発により療養する期間について傷病(補償)年金の支給要件を満たす可能性があることから、改めて、本通達に基づき適切に事務処理を行うこと。
また、再発が多いと考えられるせき髄損傷を発症した者の相談対応に当たっては、リーフレット「せき髄損傷に併発した疾病の取扱いについて」を使用する等により、懇切・丁寧な説明に務めること。
8 労働者性の判断に当たっての留意点
労働者性の判断のうち、一般的に問題になることが多い法人の役員、請負制の大工、委託契約の外務員等判断が困難な事案については、適宜、監督担当部署に協議しつつ必要な調査を行い、的確に労働者性を判断すること。
9 給付基礎日額の算定に当たっての留意点
給付基礎日額の算定に当たっては、これまでも指示しているとおり、割増賃金の算定基礎に算入すべき手当が含まれているかどうかについて、就業規則等により確認することに加え、事業場に対して手当の算定根拠について詳細な確認を行うこと。
また、被災労働者の勤務実態等を踏まえ、適用される労働時間制度について疑義が生じる場合には、適宜、監督部署に協議しつつ必要な調査を行い、的確に給付基礎日額を算定すること。
なお、定年退職後同一企業に再雇用された労働者が再雇用後に石綿関連疾患等の遅発性疾病を発症した場合の給付基礎日額の算定に当たっては、平成29年6月26日付け基補発0626第1号「定年退職後同一企業に再雇用された労働者が再雇用後に石綿関連疾患等の遅発性疾病を発症した場合の給付基礎日額の算定について」に基づき、本省報告としていることから、報告漏れ等ないよう留意すること。また、本報告については、審査請求中の事案についても対象となることに留意すること。
10 一時金等の外国送金による支払手続の留意点
一時金等(前払一時金、葬祭料、定額の特別支給金等)の外国送金については、平成25年5月24日付け地発0524第1号、基発0524第7号「労災保険給付費等の支払事務の都道府県労働局への集中化及び労働基準監督署資金前渡官吏の廃止について」により、局官署支出官による支払となっているので、支払手続に漏れがないよう再度周知徹底を図ること。
11 第三者行為災害に係る事務処理の留意点
求償事案については、納入告知を行わずに当該債権を時効により消滅させることがないよう、災害発生から3年以内に納入告知を行うことを従前より指示してきたところであり、引き続きその事務処理の徹底を図ること。
また、納入督励及び債権回収に係る外部委託事業については、局の資料作成等の事務負担を軽減させるとともに、債権回収業務の対象債権額の下限を引き下げるなど、事業内容に係る各局要望等を踏まえて仕様の一部見直しを行った上で、平成30年度においても弁護士又は弁護士法人を受託者として、6月より実施する予定であるので、より一層積極的に活用すること。
12 特別加入制度の改正及び周知・広報等の積極的かつ効果的な実施
(1) 制度改正関係
平成30年4月1日より、①家事支援従事者の特別加入対象への追加(労働者災害補償保険法施行規則第46条の18第5号の改正)、②特定農作業従事者及び指定農業機械作業従事者に係る補償範囲の拡大(昭和40年12月6日付け基発第1591号の改正)の2点の制度改正が行われる。当該改正の詳細については、別途通知する施行通達等にて示すので、これらを確認の上、事務処理について遺漏なきを期されたい。
また、当該改正については、平成30年度用の特別加入のしおり等のパンフレットにおいても、改正内容を反映したものを後日配布するので、窓口での説明等に活用されたい。
(2) 周知・広報等の積極的かつ効果的な実施
平成29年度より、本省において、新規作成したリーフレットを関係行政機関や関係団体等を通じて送付する等により、特別加入制度の積極的な周知・広報を実施しているところであり、平成30年度もこれを継続する予定である。このため、関係省庁の出先機関や業界団体から労災保険制度の照会等が行われた場合は、適切に対応すること。
また、平成30年4月1日以降は、厚生労働省ホームページ上の特別加入制度関係の紹介ページにおいて、全国の特別加入団体や加入時健康診断実施医療機関の一覧を示すなど、利便性の向上を図る予定である。
13 日本年金機構との情報連携
労災年金ではマイナンバー制度を活用し、日本年金機構へ厚生年金の金額等の情報照会を行うことにより、労災年金の請求書等への改定通知書等の添付を省略することを予定しているところである。
なお、この対応の詳細については別途通達等により指示する予定である。
14 労災診療費に係る事務処理
(1) 労災診療費算定基準の改定に伴う的確な審査の実施等
労災診療費算定基準の改定については、平成30年度に予定されており、本年4月中に改定内容等の伝達に係る会議の開催を予定している。
ついては、労災保険指定医療機関等に対して、関係団体と連携しあらゆる機会を活用するなどにより、速やかに改定内容の周知の徹底を図るとともに、改定後の算定基準に基づく的確な審査を実施すること。
また、労災保険柔道整復師施術料金算定基準及び労災保険あん摩マッサージ指圧師・はり師きゅう師施術料金算定基準についても、平成30年度に改定が予定されていることから、改定された後には、診療費と同様、算定基準について関係団体等を通じた周知及び的確な審査を実施すること。
(2) 地方厚生局等から提供された情報に基づく労災診療費の調査
平成25年4月8日付け基労発0408第1号「地方厚生局等から提供された診療報酬返還等に関する情報提供の労災診療費審査業務への活用等について」及び平成25年4月8日付け基労補発0408第1号「地方厚生局等から提供された診療報酬返還等に関する情報の労災診療費審査業務への活用等における留意事項について」に基づき、提供を受けた情報を労災診療費審査業務に活用しているところであるが、情報の取扱いについて、守秘義務や個人情報保護の観点から誤解を招く事例が散見されていることから、改めて配意すること。
(3) 労災レセプト電算処理システムの普及促進について
労災レセプト電算処理システム(以下「本システム」という。)の普及促進については、平成29年5月12日付け労災発0512第1号「労災レセプト電算処理システムの普及促進に向けた取組について」に基づき、平成29年5月から平成32年3月末までの間を普及促進強化期間(第2期)として実施しているが、現時点において各局の普及率に大きな差異が認められるところである。
本システムの普及促進は、迅速かつ公正な保険給付を行うための事務処理に資することに鑑み、また、平成30年度が診療報酬改定の時期であり、労災保険指定医療機関等においてシステムの更改が見込まれることから、労働基準部長、労災補償課長をはじめ労働局幹部が労災レセプト請求件数の多い労災保険指定医療機関等に対して重点的な利用勧奨の実施とフォローアップを確実に行い、普及促進に努めること。
なお、本システムの普及促進を目的として、平成30年度においても引き続き労災保険指定医療機関(病院、診療所)及び労災保険指定薬局を対象として、委託事業を実施する予定である。
15 行政上の争訟に当たっての的確な対応
(1) 行政事件訴訟の的確な追行
平成29年度の訴訟追行状況をみると、医学的証拠の収集が十分に行われなかったため、適切な主張ができずに敗訴した事例が認められた。
このため、訴訟追行に当たっては、平成22年8月4日付け事務連絡(最終改正平成29年3月29日)「労災保険に係る訴訟に関する対応の強化について」に基づく的確な訟務の追行の徹底を図ることとし、新件協議結果等に基づく指示を踏まえ、国側の主張を補強するための医学意見書の依頼等を確実に実施することにより、客観的な証拠に基づく裁判所を説得し得る主張・立証を的確に行うこと。
(2) 審査請求事案の公正・迅速な処理審査
請求受理後6か月以上経過した長期未決事案が増加傾向にあることから、局管理者は、「労災保険審査請求事務取扱手引」第3部のⅢ「局管理者における取組み」に基づき、毎月、審理状況を事案ごとに把握するなど、進行管理を的確に行うこと。
また、労働者災害補償保険審査官は、的確に争点整理を行った上で審理に必要な資料の収集等を確実に実施することにより、公正・迅速な審査決定を行うこと。
(3) 不服申立て及び訴訟における取消事案の情報共有
局管理者は、訴訟等行政争訟における取消事案に係る原処分との判断が異なった事項等について、各種会議や職員研修において、署管理者をはじめとする職員に対して説明し、情報共有を図ること。
16 地方監察の的確な実施等
地方監察は、関係法令、通達等に基づく事務処理の実態等を的確に把握し、迅速・適正かつ効率的な事務の運営とその水準の維持・向上を図るとともに、公正妥当な基準に基づき客観的に検査、評価することにより行政の斉一性を確保することに留意し、地方労災補償監察官監察指針を踏まえ効果的に実施すること。
特に、地方監察結果と併せ、平成29年度中央労災補償業務監察結果報告書の内容と局署の事務処理とを照らし合わせて自局の取組状況、問題点等について検証の上、適正な事務処理が定着するよう努めること
17 個人情報等の厳正な管理
(1) 特定個人情報の適切な取扱いの徹底
労災年金たる保険給付に関する事務における特定個人情報等の取扱いについては、平成29年4月25日付け基発0425第3号「労災保険給付個人番号利用事務処理手引の改定について」(以下「個人番号事務処理手引」という。)において指示しているところである。
個人番号事務処理手引においては、個人情報保護委員会の検査結果を踏まえ、管理者による特定個人情報ファイルのアクセス記録の確認を毎月1回定期的に行うよう指示しているところであり、定期的に通知している「個人番号関係機械処理件数一覧」を活用し、アクセス記録の確認の実施を徹底すること。
(2) 個人情報の漏えい防止
個人情報の漏えい防止については、平成28年3月28日付け地発0328第5号「都道府県労働局における保有個人情報漏えい防止及び発生時の対応について」により指示されているところであるが、平成29年度においても、多くの情報漏えい事案が生じており、いずれの事案も、これらが徹底されていないことによるものであったことから、改めて基本的事務処理を確認し、個人情報の管理を徹底すること。
また、石綿関連文書の保存については、平成27年12月18日付け地発1218第4号・基総発1218第1号「石綿関連文書の保存について」に基づく保存がなされるよう、引き続き管理を徹底すること。
第6 労災補償業務の効率化と人材育成
上記第1のとおり、厳しい定員事情や行政経費に係る予算事情など、行政を取り巻く環境は厳しさを増している中で、労災補償行政に対する国民の期待に応え、労災請求事案に的確に対応するためには、業務の効率化を行いつつ、非常勤職員の活用、人材育成のための研修・業務支援の充実、外部委託化等様々な手法を用いながら業務運営を行う必要がある。
平成30年度においては、特に次の労災補償業務の見直し等を行うこととしているので、各局の実情に応じ効率的な業務運営を行うこと。
1 平成30年度における労災補償業務の見直し
(1) 局署における活用事項
ア 非常勤職員等の積極的活用
平成30年度においては、主に休業(補償)給付(2回目以降)に係る調査に関する業務を担当している労災保険給付専門調査員について拡充するとともに、労災保険給付等の請求事案に係る調査その他の事務の補助等を担当する労災保険給付補助員(仮称)を新設することを予定している。また、これらの非常勤職員については、局の実情に応じ、局又は署に配置することを可能とする予定である。
当該調査員・補助員をはじめ既存の非常勤職員を積極的に活用するとともに、労災補償業務を熟知した再任用職員を有効に配置し、職員と一体的に事務処理を行うこと。
イ 労災保険給付事務に係る研修・業務支援の活用
労災保険給付専門調査員の拡充に伴い、相当数の新規非常勤職員が見込まれるため、第1四半期に本省において研修を実施する予定であることから、局署の管理者は新規に採用した相談員に研修を受講させること。
また、本省における研修の実施以外にも、労災業務OJTマニュアルや労災補償業務担当者コースの初任者ブロック研修資料といった既存の資料を活用することに加え、業務に必要な研修資料を本省において作成・配布するので、これらを活用し、業務に必要な知識を付与し更なる活用を図ること。
さらに、局から支援の要望があった場合には、要望内容に応じ、非常勤職員を含めた職員の能力向上のための研修の実施や、事務処理の習熟に効果的な資料やノウハウの提供等必要な支援を行うこととしている。
ウ テレビ会議機能等を有するWEB端末の活用
局署間、署署間の会議や打合せや来庁者の相談対応に活用できるテレビ電話やテレビ会議機能がついたWEB端末の導入を予定しているので、各種会議や研修等に活用すること。
エ 労災保険給付事務における効率的な事務処理方法の活用
労災保険給付事務処理については、労災保険給付事務取扱手引に規定しているところであるが、調査について効率的な事務処理を示す予定としているので活用すること。
(2) 本省における実施事項
ア 電話相談業務の外部委託の拡充
現在、東京局と大阪局の31の監督署に導入しているコールセンターについては、対象を全国の81監督署に拡充し、より一層、職員の電話対応等の効率化を図ることとしている。
イ 訴訟対応件数が少ない局に対するサポート対応の拡充
訴訟対応件数が少ない局については、本省において準備書面の作成等を行い局の訴訟事務のサポートを実施することとしている。
ウ 石綿関連疾患「良性石綿胸水」に係る本省協議の簡略化
平成24年3月29日付け基発0329第2号「石綿による疾病の認定基準について」の記の第3の5(3)において、良性石綿胸水については、本省協議することとされているが、その協議様式の定型化及び添付書類のスリム化を図ることとしている。
エ 本省報告の見直し
(ア) 本省報告を要しないこととするもの
これまで局に報告を求めていた本省報告のうち、次に掲げるものについては、事例の定型化又は該当報告実績がないため本省報告を要しないこととする。
なお、下記に関し、事案の事務処理に疑義がある場合には本省に相談されたい。
i 労働者災害補償保険法第31条第1項第3号に基づく徴収決定前報告
(平成27年2月13日付け労災発0213第2号「労災補償業務の運営に当たっての留意すべき事項について」)
ii 労災保険関係書類等のリスク評価に基づく対策の実施状況及び情報漏えい等の報告
(平成22年12月27日付け基労発1227第1号「労災保険関係書類等のリスク評価に基づく対策の導入について」)
iii 除染等作業に従事する特別加入者からの請求事案に係る不支給決定前報告
(平成24年2月23日付け基労発0223第1号「労災補償業務の運営に当たっての留意すべき事項について」)
(イ) 本省報告の時期及び回数を変更するもの
これまで局に求めていた本省報告のうち、次に掲げるものについては、該当事案の減少のため、本省報告の時期を請求・決定件数に動きがあった時のみに変更する。
i 熊本県熊本地方を震源とする地震に伴う請求・決定報告
(平成28年4月15日付け基補発0415第1号「熊本県熊本地方を震源とする地震に伴う労災保険給付の請求に係る事務処理について」)
オ 義肢等補装具費支給における本省協議事例の取りまとめ
平成18年6月1日付け基発第0601001号「義肢等補装具の支給について」の別添「義肢等補装具費支給要綱」5の基準外支給の本省協議について、過去の基準外支給の事例をとりまとめた上で示すこととしている。
カ 第三者行為災害に係る事務処理の見直し
第三者行為災害事務については、平成31年度から外部委託化することを予定しているが、円滑な移行が可能となるよう、平成30年度において、長期未決に係る管理の見直し(第5の1参照)や、各種様式の改正を行うこととしている。
2 労災補償業務の効率的な事務処理の検討
業務効率化の観点から、調査計画書等の作成や医療機関等への照会依頼文書の作成等を可能とする労災保険認定業務支援ツールを活用したモデル事業を実施することとしており、平成30年度に3労働局を試行局として行うこととしている。
このほか、本省においては、療養の給付請求書の審査、複雑困難事案の事務処理、適正給付管理の事務処理、障害等級の認定業務について、各局での取り組み状況を検証し、各局が自主的に取り組めるような効率的な事務処理を検討することとしている。
