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○「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」について
(平成30年1月23日)
(/医政発0123第9号/保発0123第3号/)
((別記)あて厚生労働省医政局長・厚生労働省保険局長通知)
医療用医薬品の流通改善については、一次売差マイナスの解消、未妥結・仮納入の改善、単品単価取引の推進といった課題の改善に向け、「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」での提言に沿った取組について関係団体に要請する等の取組を行ってきたところです。
このような中、平成29年12月20日の中央社会保険医療協議会において了承された「薬価制度の抜本改革について 骨子」では、毎年薬価調査、毎年薬価改定の対象品目の範囲について、「平成33年度(2021年度)に向けて、安定的な医薬品流通が確保されるよう、国が主導し、単品単価契約、早期妥結、一次売差マイナスの是正等を積極的に推進し、流通改善に取り組むことにより、薬価調査が適切に実施される環境整備を図りつつ、国民負担の軽減から、できる限り広くすることが適当である。」とされました。
また、流通改善に向けた改革の方向性として、「流通改善の取組を加速するため、まずは、医薬品メーカー、卸売業者、医療機関、保険薬局が取り組むべきガイドラインを作成し、遵守を求めていく」とされました。
これまで流通改善については流通当事者間の取組として進めていましたが、今後は国が主導し、流通改善の取組を加速するため、別添のとおり「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」を作成し、遵守を求めていくこととしましたので、貴団体会員等に対し周知の上、遵守されるようお願いいたします。
(別記)
公益社団法人 日本医師会長
公益社団法人 日本歯科医師会 会長
公益社団法人 日本薬剤師会 会長
一般社団法人 日本病院薬剤師会 会長
一般社団法人 日本保険薬局協会 会長
公益社団法人 日本看護協会 会長
公益社団法人 日本助産師会 会長
公益社団法人 日本臨床工学技士会 会長
一般社団法人 日本医療法人協会 会長
公益社団法人 全日本病院協会 会長
公益社団法人 全国自治体病院協議会 会長
公益社団法人 日本精神科病院協会 会長
一般社団法人 日本病院会 会長
一般社団法人 日本私立医科大学協会 会長
一般社団法人 日本私立歯科大学協会 会長
独立行政法人 国立病院機構 理事長
独立行政法人 労働者健康安全機構 理事長
公益社団法人 全国国民健康保険診療施設協議会 会長
一般社団法人 全国公私病院連盟 会長
社会福祉法人 恩賜財団済生会 会長
日本赤十字社 社長
国家公務員共済組合連合会 理事長
社会福祉法人 北海道社会事業協会 会長
全国厚生農業協同組合連合会 会長
健康保険組合連合会 会長
独立行政法人地域医療機能推進機構 理事長
宮内庁長官官房秘書課長
法務省矯正局長
文部科学省高等教育局長
総務省自治行政局公務員部長
防衛省人事教育局長
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 理事長
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 理事長
国立研究開発法人 国立がん研究センター 理事長
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 理事長
国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 理事長
国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 理事長
日本製薬団体連合会 会長
一般社団法人 日本医薬品卸売業連合会 会長
一般社団法人 日本ジェネリック医薬品販社協会 会長
一般社団法人 日本歯科商工協会 会長
(別添)
医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン
第1 基本的考え方
1 目的
○ 薬価調査における適切な市場実勢価の把握を行うに当たっては、流通関係者1が、公的医療保険制度における薬価基準で定められた公定価格を踏まえつつ、透明な市場実勢価の形成に努めることが必要である。この原則の下、厚生省(当時)は昭和58年3月に「医療用医薬品流通近代化協議会」を設置し、昭和62年には流通関係者間の文書契約促進のためのモデル契約書の策定等を、平成2年には「医療用医薬品の流通近代化と薬価について」のとりまとめを行い、継続した流通改善を求めてきた。
○ 平成16年6月には医療用医薬品流通近代化協議会を引き継ぐ形で「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」(流改懇)を発足させ、同年12月に「中間とりまとめ」が行われた。平成19年9月には「医療用医薬品の流通改善について(緊急提言)」において、一次売差マイナス等の改善、長期にわたる未妥結・仮納入の改善、総価契約の改善が要請された。
あわせて流改懇の下に流通関係者から構成されるワーキングチームを発足させ、これらの要請に対して流通改善のための取組を厚生労働省も行ってきたところである。
○ 平成27年9月に「医療用医薬品の流通改善の促進について(提言)」において、医薬品の価値に基づく単品単価交渉の更なる促進といった今後引き続き取り組むべき事項が示されるなど、様々な取組を進めてきたところであるが、単品単価取引の状況等を見ると原則に沿った状況にあるとは言い難い現状にある。
○ さらに、2年に1回行われる薬価調査の間の年に薬価調査・薬価改定を行うことを考慮すれば、これまで以上の流通改善の推進、薬価調査のための環境整備が必要である。
○ これまで流通改善については流通当事者間の取組として進めてきたが、今後は国が主導し、流通改善の取組を加速するため、「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」(以下「流通改善ガイドライン」という。)を作成し、遵守を求めていくこととする。加えて、流通改善ガイドラインの趣旨・内容を「未妥結減算制度」に取り入れるなど、診療報酬等における対応を検討することを含め、保険制度上の施策をはじめとする総合的な取組を実施する。
○ 流通改善の取組は、流通関係者が一体となって将来にわたる流通機能の安定性を確保するため進めるべきものであり、当事者間での流通経費等の負担の公平性の確保、適正な流通コストを念頭に置いた取組が必要である。
○ 厚生労働省としても、特別な管理が必要な医薬品2の増加、長期収載品から後発医薬品への転換、ICTの発達により変化するそれぞれの流通のあり方について流改懇等で議論を行い、流通改善ガイドラインの改訂等の必要な取組を進めていく。
2 メーカーと卸売業者との関係において留意する事項
(1) 仕切価交渉のあり方
○ 一次売差マイナス3の解消に向け、医薬品の価値に基づく早期妥結・単品単価契約を進めるため、卸売業者と保険医療機関・保険薬局との川下取引の妥結価格(市場実勢価)水準を踏まえた適切な一次仕切価の提示に基づく適切な最終原価を設定すること。
○ 割戻し(リベート)については流通経費を考慮した卸機能の適切な評価、アローアンスのうち仕切価を修正するようなものについては仕切価への反映による整理を行うとともに、契約により運用基準を明確化すること。4
(2) 変動情報を含んだ新バーコード表示
○ 医療安全(取り違え防止)、トレーサビリティ確保(回収等)、流通効率化、さらに偽造品流通防止の観点から、平成33年(2021年)4月より変動情報を含んだ新バーコード表示を必須化し取組を進めることとしているが、可能な限り流通量の多い製品から表示を前倒して進めることが望ましい。
3 卸売業者と保険医療機関・保険薬局との関係において留意する事項
(1) 早期妥結と単品単価契約の推進
○ 未妥結減算制度の趣旨を踏まえ、原則として全ての品目について単品単価契約とすることが望ましいが、少なくとも前年度より単品単価契約の割合を高めること。また、契約に当たっては、商品の受け渡しに関する覚書を利用する等により行うこと。
○ 価格交渉の段階から個々の医薬品の価値を踏まえた交渉を進めること。
(2) 頻繁な価格交渉の改善
○ 頻繁な価格交渉は卸売業者の使命である安定供給に支障を来すとともに、購入側にも負担増となるため、期中で医薬品の価値に変動があるような場合を除き、未妥結減算制度の趣旨を踏まえ、交渉回数を増やさず安定供給などの本来業務に注力できる年間契約等のより長期の契約を基本とすることが望ましい。
(3) 医薬品の価値を無視した過大な値引き交渉
○ 取引条件等を考慮せずにベンチマークを用いた値引き交渉を行うなど、医薬品の価値を無視した過大な値引き交渉は、個々の医薬品の価値を反映した銘柄別の薬価収載を行う現行の薬価制度とは相容れない行為である。
○ この観点から、個々の医薬品の価値を無視した値引き交渉、医薬品の安定供給や卸売業者の経営に影響を及ぼすような流通コストを全く考慮しない値引き交渉5を慎むこと。
なお、以上に示した医薬品の価値に基づいた納入価の設定については、仕切価の設定により影響を受けるものであることから、2(1)に示す仕切価交渉と一体となった価格交渉を進めること。
4 流通当事者間で共通して留意する事項
(1) 返品の扱い
○ 品質の確保された医薬品の安定供給、不動在庫・廃棄コスト増による経営への影響、さらに偽造品流通防止の観点から、返品条件を流通当事者間で事前に取り決めるよう、流改懇の中間とりまとめ(平成16年)で提言された返品の取扱いを含むモデル契約書を参考に契約を締結すること。
(2) 公正競争規約の遵守
○ 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)に基づく「医療用医薬品製造販売業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」及び「医療用医薬品卸売業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」を遵守し、公正かつ適正な取引に努めること。
(3) カテゴリー毎の流通のあり方
○ 流通当事者は、特別な管理が必要な医薬品、長期収載品、後発医薬品など、カテゴリー毎の特徴を踏まえた流通改善の取組を進めることが望ましい。
5 流通の効率化と安全性確保
○ 頻回配送・急配の回数やコスト負担等について、安定供給に支障を来す場合は当事者間で契約を締結すること。
○ 卸売業者においては、輸液製剤等、薬価に対して流通コストが比較的高い医薬品等の配送やへき地における配送について共同配送など流通効率化を進めることが望ましい。
○ 「医療用医薬品の偽造品流通防止のための施策のあり方に関する検討会」最終とりまとめを踏まえ、医薬品の流通過程において、高額な医薬品の増加などに伴う偽造品の混入防止のため、我が国の医薬品取引における返品、不動在庫や回収コスト等に係る課題についても解決を図っていく必要があることから、一連のサプライチェーンの下で、流通関係者間において更なる取組を進める。
――――――――――
1 医療用医薬品製造販売業者(メーカー)、医薬品卸売販売業者(卸売業者)、保険医療機関及び保険薬局
2 いわゆる「スペシャリティ医薬品」。
3 納入価が仕切価よりも低い(逆ざや)状況。
4 「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(平成3年7月11日公正取引委員会事務局)においても、「リベートの供与自体が直ちに独占禁止法上問題となるものではない」としつつも、「リベートの供与の方法によっては、取引先事業者の事業活動を制限することとなり、独占禁止法上問題となる場合がある」とし、「リベートの供与の基準を明確にし、これを取引の相手方に示すことが望ましい」としている。
5 流通コストを無視した値引き交渉とは、薬価に含まれている流通経費や、薬価改定において考慮されている安定的な医薬品流通のための調整幅(改定前薬価の2%)を踏まえた価格設定を無視した交渉をいう。(数量に応じた値引き等の特別な事情を除く。)
なお、原価計算方式には医薬品産業実態調査の直近3か年分の平均率の流通経費を盛り込んでいる。
第2 厚生労働省による関与
(1) 厚生労働省への相談
○ 流通改善ガイドラインに沿って、平成30年度から薬価改定後の新薬価の下で価格交渉を行うこととなるが、流通当事者間で交渉が行き詰まり、改善の見込みがない場合、厚生労働省医政局経済課に設置した窓口に相談することができる。
○ 厚生労働省では相談内容を流通改善ガイドラインの事項毎にまとめ、流改懇等や厚生労働省のウェブサイトで公表し、まずは、事案の見える化を通じて流通改善ガイドラインの遵守を促す。
○ 公表後に同様の事案を長期的、かつ広範囲に繰り返すなど、安定的な医薬品流通に影響を及ぼすような事案については、ヒアリングや指導を行い、流改懇に報告するなど必要な措置をとる。
(2) 流通改善ガイドラインの遵守状況の確認
○ 単品単価契約の状況等については、流改懇とともに中央社会保険医療協議会にも報告する。
(3) 流通改善の推進に向けた取組の実施
○ 厚生労働省は、モデル契約書の見直しや、流通改善の推進のために必要なデータを収集・分析し流改懇等に報告を行う等の必要な取組を行う。
第3 流通改善ガイドラインの適用日等
○ この流通改善ガイドラインは平成30年4月1日から適用する。
○ 流改懇等における流通改善ガイドラインの遵守状況の確認にあわせて、必要に応じて流通改善ガイドラインを見直す。
[参考資料]
[参考資料]
○「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」について
(平成30年1月23日)
(/医政発0123第10号/保発0123第4号/)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医政局長・厚生労働省保険局長通知)
(公印省略)
今般、標記について別添のとおり公益社団法人日本医師会長等に通知いたしましたので、ご了知願います。