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(9) 前記(7)のいずれか2つ以上の異常検査所見があり、かつ、一般状態区分表のウに該当するもの、又は乳児で著しい体重増加の障害(標準体重の80%以下のもの)を1級と、(7)のいずれか1つの異常検査所見があり、かつ、一般状態区分表のイ又はアに該当するものを2級と認定する。

(10) 各疾患によって用いられる検査が異なっており、また、特殊検査も多いため、診断書上に適切に症状をあらわしていると思われる検査成績が記載されているときは、その検査成績も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

第11節/腎疾患

腎疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

腎疾患については、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

腎疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び病状の経過、人工透析療法の実施状況、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) 腎疾患による障害の認定の対象はそのほとんどが、慢性腎不全に対する認定である。

慢性腎不全とは、慢性腎疾患によって腎機能障害が持続的に徐々に進行し、生体が正常に維持できなくなった状態をいう。

すべての腎疾患は、長期に経過すれば腎不全に至る可能性がある。その原因となる腎疾患の中で最も多いものは、先天性腎尿路奇形、遺伝性腎障害であるが、他にも巣状糸球体硬化症、先天性ネフローゼ症候群、多発性嚢胞腎、慢性腎炎、糖尿病性腎症、膠原病、急性腎障害後の慢性腎不全等がある。

(2) 腎疾患の主要症状としては、悪心、嘔吐、食欲不振、頭痛等の自覚症状、浮腫、貧血、アシドーシス、発育障害等の他覚所見がある。

(3) 検査としては、尿検査、血球算定検査、血液生化学検査(血清尿素窒素、血清クレアチニン、血清電解質、血清シスタチンC等)、血液ガス分析、推算糸球体濾過値(eGFR)、腎生検等がある。

(4) 病態別に検査項目及び異常値の一部を示すと次のとおりである。

① 慢性腎不全

区分

検査項目

単位

中等度異常

高度異常

内因性クレアチニンクリアランス

ml/分

15以上30未満

15未満

eGFR

ml/分

15以上30未満

15未満

(注) 小児において血清クレアチニン基準値が低く、年齢や性別でも基準値が異なることから、日本小児腎臓病学会による日本人小児のeGFR計算法を用いてeGFRを算出すること。

内因性クレアチニンクリアランスは、最も正確な測定法であるイヌリンクリアランスによる糸球体濾過値(GFR)よりも高値に出てしまう傾向があるため、イが30未満の時には中等度異常と取り扱うことも可能とする。

② ネフローゼ症候群

区分

検査項目

単位

異常

血清アルブミン

g/dl

2.5以下

早朝尿蛋白/クレアチニン比

g/gクレアチニン

2.0以上

夜間尿蓄尿蛋白量

mg/hr/m2

40以上

(5) 腎疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助のいることもあり、軽い運動はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としており、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(6) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

1 前記(4)①の検査成績が高度異常を1つ以上示すもので、かつ一般状態区分表のウに該当するもの

2 前記(4)②の検査成績のうちアが異常を示し、かつ、イ又はウのいずれかが異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のウに該当するもの

2級

1 前記(4)①の検査成績が中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のイ又はアに該当するもの

2 前記(4)②の検査成績のうちアが異常を示し、かつ、イ又はウのいずれかが異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のイ又はアに該当するもの

3 人工透析療法施行中のもの

(7) 人工透析療法施行中のものについては、原則として2級と認定する。

なお、主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、長期透析による合併症の有無とその程度、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

(8) 検査成績は、その性質上変動しやすいものであるので、腎疾患の経過中において最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて認定を行うものとする。

(9) 糸球体腎炎(ネフローゼ症候群を含む。)、多発性嚢胞腎、腎盂腎炎、先天性腎尿路奇形、遺伝性腎障害、巣状糸球体硬化症、先天性ネフローゼ症候群、急性腎障害等に罹患し、その後慢性腎不全を生じたものは、両者の期間が長いものであっても、相当因果関係があるものと認められる。

(10) 腎疾患は、その原因疾患が多岐にわたり、それによって生じる臨床所見、検査所見も、また様々なので、前記(4)の検査成績によるほか、合併症の有無とその程度、他の一般検査及び特殊検査の検査成績、治療及び病状の経過等も参考として、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して総合的に認定する。

(11) 腎臓移植の取扱い

ア 腎臓移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定する。

イ 特別児童扶養手当を支給されている児童が腎臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする。

第12節/肝疾患

肝疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

肝疾患については、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

肝疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) 肝疾患による障害の認定の対象は、慢性肝炎と慢性かつびまん性の肝疾患の結果生じた肝硬変症及びそれに付随する病態(食道・胃などの静脈瘤、特発性細菌性腹膜炎、肝がんを含む。)である。

肝硬変では、一般に肝は萎縮し肝全体が高度の線維化のため硬化してくる。

肝硬変の原因として、B型肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルスによるウイルス性慢性肝炎やその他自己免疫性肝炎による肝硬変、胆道閉鎖症及びその手術後が原因となった胆汁うっ滞型肝硬変、代謝性肝硬変(ウイルソン病、ヘモクロマトーシス)等がある。

(2) 肝疾患の主要症状としては、易疲労感、全身倦怠感、腹部膨満感、発熱、食欲不振、悪心、嘔吐、皮膚そう痒感、吐血、下血、有痛性筋痙攣等の自覚症状、肝萎縮、脾腫大、浮腫、腹水、黄疸、腹壁静脈怒張、食道・胃静脈瘤、肝性脳症、出血傾向等の他覚所見がある。

(3) 検査成績としては、まず、血球算定検査、血液生化学検査が行われるが、さらに、血液凝固系検査、免疫学的検査、超音波検査、CT・MRI検査、腹腔鏡検査、肝生検、上部消化管内視鏡検査等が行われる。

(4) 肝疾患での重症度判定の検査項目及び臨床所見並びに異常値の一部を示すと次のとおりである。

検査項目/臨床所見

基準値

中等度の異常

高度異常

血清総ビリルビン(mg/dl)

0.3~1.2

2.0以上3.0以下

3.0超

血清アルブミン(g/dl)

(BCG法)

4.2~5.1

3.0以上3.5以下

3.0未満

血小板数(万/μl)

13~35

5以上10未満

5未満

プロトロンビン時間(PT)(%)

70超~130

40以上70以下

40未満

腹水

腹水あり

難治性腹水あり

脳症(表1)

Ⅰ度

Ⅱ度以上

表1 昏睡度分類

昏睡度

精神症状

参考事項

睡眠―覚醒リズムの逆転

多幸気分ときに抑うつ状態

だらしなく、気にとめない態度

あとでふり返ってみて判定できる

指南力(時、場所)障害、物をとり違える(confusion)

異常行動

ときに傾眠状態(普通のよびかけで開眼し会話ができる)

無礼な言動があったりするが、他人の指示に従う態度をみせる

興奮状態がない

尿便失禁がない

羽ばたき振戦あり

しばしば興奮状態またはせん妄状態を伴い、反抗的態度をみせる

嗜眠状態(ほとんど眠っている)

外的刺激で開眼しうるが、他人の指示に従わない、または従えない(簡単な命令には応じえる)

羽ばたき振戦あり

(患者の協力がえられる場合)

指南力は高度に障害

昏睡(完全な意識の消失)

痛み刺激に反応する

刺激に対して、払いのける動作、顔をしかめるなどがみられる

深昏睡

痛み刺激にも全く反応しない

 

(5) 肝疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり軽い運動はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(6) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

前記(4)の検査成績及び臨床所見のうち高度異常を3つ以上示すもの又は高度異常を2つ及び中等度の異常を2つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のウに該当するもの

2級

前記(4)の検査成績及び臨床所見のうち中等度又は高度の異常を3つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のイ又はアに該当するもの

なお、障害の程度の判定に当たっては、前記(4)の検査成績及び臨床所見によるほか、他覚所見他の一般検査及び特殊検査の検査成績、治療及び病状の経過等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

(7) 検査成績は、その性質上変動しやすいので、肝疾患の経過中において、最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて認定を行うものとする。

(8) 食道・胃などの静脈瘤については、吐血・下血の既往、治療歴の有無及びその頻度、治療効果を参考とし、(4)に掲げる検査項目及び臨床所見の異常に加えて、総合的に認定する。特発性細菌性腹膜炎についても、同様とする。

(9) 肝がんについては、(4)に掲げる検査項目及び臨床所見の異常に加えて肝がんによる障害を考慮し、本節及び「第15節/悪性新生物」の認定要領により認定する。ただし、(4)に掲げる検査項目及び臨床所見の異常がない場合は、第15節の認定要領により認定する。

(10) 肝臓移植の取扱い

ア 肝臓移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定する。

イ 特別児童扶養手当を支給されていた児童が、肝臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする。

第13節/血液・造血器疾患

血液・造血器疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

血液・造血器疾患については、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

血液・造血器疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び症状の経過等(薬物療法による症状の消長の他、薬物療法に伴う合併症等)、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) 血液・造血器疾患は、臨床像から血液・造血器疾患を次のように大別する。

ア 赤血球系・造血不全疾患(再生不良性貧血、溶血性貧血等)

イ 血栓・止血疾患(血小板減少性紫斑病、凝固因子欠乏症等)

ウ 白血球系・造血器腫瘍疾患(白血病、悪性リンパ腫、組織球症等)

(2) 血液・造血器疾患の主要症状としては、顔面蒼白、易疲労感、動悸、息切れ、発熱、頭痛、めまい、知覚異常、紫斑、月経過多、骨痛、関節痛等の自覚症状、黄疸、心雑音、舌の異常、易感染性、出血傾向、血栓傾向、リンパ節腫脹、肝腫、脾腫、成長・発達の障害等の他覚所見がある。

(3) 検査としては、血球算定検査、血液生化学検査、免疫学的検査、鉄代謝検査、骨髄穿刺、血液ガス分析、超音波検査、リンパ節生検、骨髄生検、凝固系検査、染色体検査、遺伝子検査、細胞表面抗原検査、画像検査(CT検査・超音波検査、MRI検査など)等がある。

(4) 血液・造血器疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助のいることもあり軽い運動はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としており、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(5) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

A表I欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表I欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のウに該当するもの

2級

A表Ⅱ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅱ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のイ又はアに該当するもの

ア 赤血球系・造血不全疾患(再生不良性貧血、溶血性貧血等)

A表

区分

臨床所見

1 高度の貧血、出血傾向、易感染性を示すもの

2 輸血をひんぱんに必要とするもの

1 中度の貧血、出血傾向、易感染性を示すもの

2 輸血を時々必要とするもの

B表

区分

検査所見

1 末梢血液中の赤血球像で、次のいずれかに該当するもの

(1)ヘモグロビン濃度が7.0g/dL未満のもの

(2)網赤血球数が2万/μL未満のもの

2 末梢血液中の白血球像で、次のいずれかに該当するもの

(1)白血球数が1,000/μL未満のもの

(2)好中球数が500/μL未満のもの

3 末梢血液中の血小板数が2万/μL未満のもの

1 末梢血液中の赤血球像で、次のいずれかに該当するもの

(1)ヘモグロビン濃度が7.0g/dL以上9.0g/dL未満のもの

(2)網赤血球数が2万/μL以上6万/μL未満のもの

2 末梢血液中の白血球像で、次のいずれかに該当するもの

(1)白血球数が1,000/μL以上3,000/μL未満のもの

(2)好中球数が500/μL以上1,000/μL未満のもの

3 末梢血液中の血小板数が2万/μL以上5万/μL未満のもの

イ 血栓・止血疾患(血小板減少性紫斑病、凝固因子欠乏症等)

A表

区分

臨床所見

1 高度の出血傾向、血栓傾向又は関節症状のあるもの

2 補充療法をひんぱんに行っているもの

1 中度の出血傾向、血栓傾向又は関節症状のあるもの

2 補充療法を時々行っているもの

(注) 補充療法は、凝固因子製剤(代替医薬品やインヒビター治療薬の投与を含む。)の輸注、血小板の輸血、新鮮凍結血漿の投与などを対象にする。

B表

区分

検査所見

1 APTT又はPTが基準値の3倍以上のもの

2 血小板数が2万/μL未満のもの

3 凝固因子活性が1%未満のもの

1 APTT又はPTが基準値の2倍以上3倍未満のもの

2 血小板数が2万/μL以上5万/μL未満のもの

3 凝固因子活性が1%以上5%未満のもの

(注1) 凝固因子活性は、凝固第〔Ⅱ・Ⅴ・Ⅶ・Ⅷ・Ⅸ・Ⅹ・XI・XⅢ〕因子とフォンヴィレブランド因子のうち、最も数値の低い一因子を対象にする。

(注2) 血栓疾患、凝固因子欠乏症でインヒビターが出現している状態及び凝固第Ⅰ因子(フィブリノゲン)が欠乏している状態の場合は、B表(検査所見)によらず、A表(臨床所見)、治療及び病状の経過、具体的な日常生活状況等を十分考慮し、総合的に認定する。

ウ 白血球系・造血器腫瘍疾患(白血病、悪性リンパ腫、組織球症等)

A表

区分

臨床所見

1 発熱、骨・関節痛、るい痩、貧血、出血傾向、リンパ節腫脹、易感染性、肝脾腫等の著しいもの

2 輸血をひんぱんに必要とするもの

3 治療に反応せず進行するもの

1 発熱、骨・関節痛、るい痩、貧血、出血傾向、リンパ節腫脹、易感染性、肝脾腫等のあるもの

2 輸血を時々必要とするもの

3 継続的な治療が必要なもの

(注1) A表に掲げる治療とは、疾病に対する治療であり、輸血などの主要な症状を軽減するための治療(対症療法)は含まない。

(注2) A表に掲げる治療に伴う副作用による障害がある場合は、その程度に応じて、A表の区分を判断すること。

B表

区分

検査所見

1 末梢血液中のヘモグロビン濃度が7.0g/dL未満のもの

2 末梢血液中の血小板数が2万/μL未満のもの

3 末梢血液中の正常好中球数が500/μL未満のもの

4 末梢血液中の正常リンパ球数が300/μL未満のもの

1 末梢血液中のヘモグロビン濃度が7.0g/dL以上9.0g/dL未満のもの

2 末梢血液中の血小板数が2万/μL以上5万/μL未満のもの

3 末梢血液中の正常好中球数が500/μL以上1,000/μL未満のもの

4 末梢血液中の正常リンパ球数が300/μL以上600/μL未満のもの

(6) 検査成績は、その性質上変動しやすいものであるので、血液・造血器疾患による障害の程度の判定に当たっては、最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて行うものとする。

特に、輸血や補充療法により検査数値が一時的に改善する場合は、治療前の検査成績に基づいて行うものとする。

(7) 血液・造血器疾患の病態は、各疾患による差異に加え、個人差も大きく現れ、病態によって生じる臨床所見、検査所見も、また様々なので、認定に当たっては前記(5)のA表及びB表によるほか、他の一般検査、特殊検査及び画像診断等の検査成績、病理組織及び細胞所見、合併症の有無とその程度、治療及び病状の経過等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

(8) 造血幹細胞移植の取扱い

ア 造血幹細胞移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、移植片対宿主病(GVHD)の有無及びその程度、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定する。

イ 慢性GVHDについては、日本造血細胞移植学会(ガイドライン委員会)において作成された「造血細胞移植ガイドライン」における慢性GVHDの臓器別スコア及び重症度分類を参考にして、認定時の具体的な日常生活状況を把握し、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に認定する。

ウ 特別児童扶養手当の支給対象となっている障害児が造血幹細胞移植を受けた場合は、移植片が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする。

<参考>「造血細胞移植ガイドライン」より抜粋

表6 慢性GVHDの臓器別スコア

 

スコア0

スコア1

スコア2

スコア3

皮膚

無症状

<18%BSA,硬化病変なし

19~50%BSAあるいは浅在性硬化病変(つまみあげられる)

>50%BSAあるいは深在性硬化病変(つまみあげれない)

口腔

無症状

軽症,経口摂取に影響なし

中等症,経口摂取が軽度障害される

高度障害,経口摂取が高度に障害される

無症状

軽度dryeye。日常生活に支障なし(点眼1日3回まで),無症状の角結膜炎

中等度dryeye。日常生活に軽度支障あり(点眼1日4回以上),視力障害なし

高度dryeye。日常生活に高度支障あり,眼症状のため労働不可,視力障害

消化管

無症状

嚥下困難,食欲低下,嘔気,嘔吐,腹痛,下痢,5%以上の体重減少を伴わない。

5~15%の体重減少を伴う消化器症状

15%以上の体重減少を伴う消化器症状あるいは食道拡張

無症状

Bil,ALP,AST,ALTの正常上限の2倍以内の上昇

Bil>3mg/dLあるいはBil,他の酵素の正常上限の2~5倍の上昇

Bil,他の酵素の正常上限の5倍以上の上昇

無症状

FEV1*1>80%orLFS*2=2

階段昇降時息切れ

FEV1:60~79%or LFS:3~5

歩行時息切れ

FEV1:40~59%or LFS:6~9

安静時息切れ

FEV1<39%or LFS:10~12

関節・筋膜

無症状

日常生活に影響しない軽度の拘縮,可動制限

日常生活に支障のある拘縮,可動制限,筋膜炎による紅斑

日常生活に高度支障をきたす拘縮,可動制限(靴紐結び,ボタンがけ,着衣など不能)

性器

無症状

内診で軽度異常あるが軽度不快程度で性交痛なし

内診で中等度異常あり,不快あり

内診で高度異常あり,内診不応,性交痛あり