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○「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部改正について〔健康保険法〕

(平成29年6月2日)

(事務連絡)

(日本年金機構事業企画部門担当理事あて厚生労働省年金局事業管理課長通知)

健康保険法及び厚生年金保険法の標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務の取扱いについては、「「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部改正について」(平成28年12月14日付け厚生労働省年金局事業管理課長事務連絡)において示しているところですが、今般、同事務連絡の別紙1(標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集)を別添のとおり改正することとしましたので、今後の事務の取扱いについて、ご留意いただきますようお願い申し上げます。

なお、本事務連絡の内容は、厚生労働省保険局保険課とも協議済みであることを申し添えます。

[別添]

(改正は傍線部分)

(別紙1)

標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集

○報酬・賞与の範囲について

問 「報酬」・「賞与」にはどのようなものが含まれるか。

(答) 「報酬」及び「賞与」(以下「報酬等」という。)は、健康保険法第3条第5項及び第6項(厚生年金保険法第3条第1項第3号及び第4号)において「労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの」と規定されており、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計に充てられるすべてのものを包含するものである(『健康保険法の解釈と運用』(法研)より)。

具体的事例

① 現実に提供された労働に対する対価に加え、給与規程等に基づいて使用者が経常的(定期的)に被用者に支払うものは、「報酬等」に該当する。労働の提供と対償の支払が時間的に一致する必要はなく、将来の労働に対するものや、病気欠勤中や休業中に支払われる手当であっても労働の対償となり、「報酬等」に該当する。また、雇用契約を前提として事業主から食事、住宅等の提供を受けている場合(現物給与)も「報酬等」に含まれる。

【例】 賃金、給料、俸給、賞与、インセンティブ、通勤手当、扶養手当、管理職手当、勤務地手当、休職手当、休業手当、待命手当

② 労働の対償として受けるものでないものは、「報酬等」に該当しない。

【例】 傷病手当金、労働者災害補償保険法に基づく休業補償、解雇予告手当、退職手当、内職収入、財産収入、適用事業所以外から受ける収入

(注) 退職手当は、毎月の給与や賞与に上乗せして前払いされる場合、被保険者の通常の生計に充てられる経常収入と扱うことが妥当であり、「報酬等」に該当する。

③ 事業主が負担すべきものを被保険者が立て替え、その実費弁償を受ける場合、労働の対償とは認められないため、「報酬等」に該当しない。

【例】 出張旅費、赴任旅費

④ 事業主が恩恵的に支給するものは労働の対償とは認められないため、原則として「報酬等」に該当しない。

【例】 見舞金、結婚祝い金、餞別金

⑤ 恩恵的に支給するものであっても、労働協約等に基づいて支給されるもので、経常的(定期的)に支払われる場合は、「報酬等」に該当する。

【例】 傷病手当金と給与の差額補填を目的とした見舞金

⑥ 労働の対償として支給されるものであっても、被保険者が常態として受ける報酬以外のものは、「報酬等」に含まれない(支給事由の発生、支給条件、支給額等が不確定で、経常的に受けるものではないものは、被保険者の通常の生計に充てられるものとは言えないため)。ただし、これに該当するものは極めて限定的である。

【例】 大入袋

※ ここで挙げた【例】は一般的な場合を想定しており、その名称だけでなく、実態に合わせて「報酬等」に該当するかどうか判断を行うものとする。

※ 在宅勤務・テレワークにおける交通費等の取扱いについては後述。

○定時決定について

問1 支払基礎日数について、例えば夜勤労働者で日をまたぐ勤務を行っている場合はどのように計算すべきか。

(答) 夜勤労働者で日をまたいで労務に就いている場合は、以下のように取り扱う。

① 夜勤勤務者が月給で給与の支払いを受けている場合

→ 各月の暦日数を支払基礎日数とする。

② 夜勤勤務者が日給で給与の支払いを受けている場合

→ 給与支払いの基礎となる出勤回数を支払基礎日数とする。ただし、変形労働時間制を導入している場合は、下記の③に準じて取り扱う。

③ 夜勤勤務者が時給で給与の支払を受けている場合

→ 各月の総労働時間をその事業所における所定労働時間で除して得られた日数を支払基礎日数とする。なお、勤務中に仮眠時間等が設けられている場合、これを労働時間に含めるか否かは、その事業所の業務の実態、契約内容、就業規則等によって仮眠時間等が給与支払いの対象となる時間に含まれているかどうかを確認することで判断されたい。

問2 給与の締め日が変更になった場合、変更月では支払基礎日数が通常の月よりも増減することになるが、定時決定の際にはどのように取り扱うべきか。

(答) 給与締め日が変更になった場合は、以下のように取扱う。

① 支払基礎日数が増加する場合

支払基礎日数が暦日を超えて増加した場合、通常受ける報酬以外の報酬を受けることとなるため、超過分の報酬を除外した上で、その他の月の報酬との平均を算出し、標準報酬月額を保険者算定する。

(例)給与締め日が20日から25日に変更された場合

締め日を変更した月のみ給与計算期間が前月21日~当月25日となるため、前月21日~前月25日の給与を除外し、締め日変更後の給与制度で計算すべき期間(前月26日~当月25日)で算出された報酬をその月の報酬とする。

② 支払基礎日数が減少した場合

給与締め日の変更によって給与支給日数が減少した場合であっても、支払基礎日数が17日以上であれば、通常の定時決定の方法によって標準報酬月額を算定する。

給与締め日の変更によって給与支給日数が減少し、支払基礎日数が17日未満となった場合には、その月を除外した上で報酬の平均を算出し、標準報酬月額を算定する。

問3 基本給や諸手当の支払月が変更となった結果、通常の月よりも給与額が増減する場合があるが、定時決定の際にはどのように取り扱うべきか。

(答) 給与や諸手当の支払い月が変更になった場合は、以下のように取扱う。

① 翌月払いの給与や諸手当が当月払いに変更された場合

翌月払いの給与もしくは諸手当が当月払いに変更された場合は、変更月に支給される給与等に重複分が発生するが、制度変更後の給与等がその月に受けるべき給与であるとみなし、変更前の給与は除外した上で4,5,6月の平均を算出し、標準報酬月額を算定する。

(例)4月支給の給与より、「25日締め翌月末払い」の給与が「25日締め当月末払い」に変更された場合

制度の変更に伴い、4月支給の給与は2月26日~3月25日分と、3月26日~4月25日分の給与となるが、制度変更後の給与が本来その月に受けるべき給与であるとみなし、2月26日~3月25日の給与を除外し、支払日変更後の給与制度で計算すべき期間(3月26日~4月25日)により算出した報酬を4月の報酬とする。

② 当月払いの諸手当が翌月払いに変更された場合

当月払いの諸手当が翌月払いに変更された場合は、変更月には諸手当が支給されないこととなるが、その月は算定の対象から除き、残りの月に支払われた報酬で定時決定を行う。

問4 4~6月の3か月のうち、遡って降給が行われた結果、差額調整によって本来受けるべき報酬より低額の報酬が支払われた月がある場合、保険者算定によって定時決定を行うことはできるか。

(答) 保険者算定の対象として差し支えない。この場合、4~6月の報酬から控除された差額調整分を計算に含まず、差額調整前の報酬額で定時決定を行う。

○被保険者資格取得時の標準報酬月額の決定について

問1 被保険者資格を取得した際の標準報酬月額の決定について、例えば残業代が当初の見込みよりも増減した場合に、標準報酬月額の訂正を行うことができるか。

(答) 被保険者資格を取得した際の標準報酬月額については、固定的賃金の算定誤り等があった場合に訂正を行うことはできるが、残業代のような非固定的賃金について、その見込みが当初の算定額より増減した場合は、訂正することはできない。

問2 一つの適用事業所に勤務している被保険者が、別の適用事業所に勤務(同時に2つの事業所に勤務)することとなって新たな適用事業所において被保険者資格を取得した場合、どの時点から標準報酬月額を改定するのか。

(答) 新たに別の適用事業所で被保険者資格を取得した場合、その事業所における報酬月額を健康保険法第42条(厚生年金保険法第22条)に従って算定し、健康保険法第44条第3項(厚生年金保険法第24条第2項)の規定に基づいて合計額としての報酬月額を算定する。その際、既に被保険者資格を取得している側の事業所においては、既に決定されている標準報酬月額の基礎となった報酬月額を用いる。

また、健康保険法施行規則第1条、第2条及び第37条(厚生年金保険法施行規則第1条及び第2条)において、同時に2以上の適用事業所に使用されることとなった日から10日以内に、管掌保険者の選択とそれに伴う届出を行うこととされており、新たに別の適用事業所に使用されることとなった月から標準報酬月額を決定する。

○随時改定について

問1 固定的賃金の変動が発生した後、3か月以内に再度固定的賃金が変動した場合には、それぞれの固定的賃金変動を随時改定の対象とするか。

(答) それぞれの固定的賃金変動を随時改定の契機として取り扱う。仮に固定的賃金変動が毎月発生した場合には、それぞれの月の賃金変動を契機として、その都度2等級以上の差が生じているかを確認し、随時改定の可否について判断する。なお、2等級以上の差を判断するに当たっては、固定的賃金のみならず、非固定的賃金を含めた報酬月額全体で比較を行う。

問1―2 (従業員から役員になるなど)身分変更が行われた結果、基本給が上がり(又は下がり)、(超過勤務)手当が廃止(又は新設)された場合で、各々の固定的賃金の変動が実際に支給される給与への反映月が異なる場合において、起算月はどのように取り扱うのか。

(答) 身分変更が行われた結果、複数の固定的賃金の変動が生じ、各々の固定的賃金の変動が実際に支給される給与へ反映する月が異なる場合は、変動後の各々の固定的賃金が給与に実績として反映された月をそれぞれ起算月とする。

(例)

役員昇格による昇給と役員昇格による残業手当の廃止(昇給月の翌月反映)

→ 昇給に係る随時改定は昇給月が起算月となり、手当廃止による随時改定は反映月(昇給月の翌月)を起算月として別の随時改定としてとらえる。

問1―3 基本給(時間給)に変更は無いが、勤務体系(契約時間)が変更になる場合、随時改定の対象となるか。

(例)

基本給:1H2,000円→2,000円(変更なし)

契約時間:1日8時間→6.5時間(変更あり)

:1月20日→20日(変更なし)

(答) 時給単価の変動はないが、契約時間が変わった場合、固定的賃金の変動に該当するため、随時改定の対象となる。

問2 超過勤務手当の支給単価(支給割合)が変更された場合は、随時改定の対象となるか。

(答) 超過勤務手当については、個々人や月々の稼働状況によって時間数が不確定であるため、単に時間の増減があった場合は随時改定の対象とはならないが、支給単価(支給割合)が変更となった場合は随時改定の対象となる。

問3 超過勤務手当等の非固定的手当が廃止された場合、随時改定の対象となるか。

(答) 非固定的手当であっても、その廃止は賃金体系の変更に当たるため、随時改定の対象となる。

問4 固定的賃金が上昇したものの、超過勤務手当等の非固定的賃金が減額したために結果的に2等級以上報酬月額が下がった場合、随時改定の対象となるか。

(答) 固定的賃金の増額・減額と、実際の平均報酬月額の増額・減額が一致しない場合、随時改定の対象とはならない。

問5 同一月に固定的賃金の増額と減額が同時に発生した場合(手当の廃止と創設等)、増額改定と減額改定のどちらの対象となるか。

(答) 同時に複数の固定的賃金の増減要因が発生した場合、それらの影響によって固定的賃金の総額が増額するのか減額するのかを確認し、増額改定・減額改定いずれの対象となるかを判断する。

例えば、定額の手当が廃止され、その手当と同額の手当が新たに創設された場合など、固定的賃金に変更が生じないケースについては、随時改定の対象とならない。

なお、変動的な手当の廃止と創設が同時に発生した場合等については、手当額の増減と報酬額の増減の関連が明確に確認できないため、3か月の平均報酬月額が増額した場合・減額した場合のどちらも随時改定の対象となる。

問6 給与計算期間の途中で昇給した場合、どの時点を起算月として随時改定の判断を行うのか。

例:当月末締め翌月末払いの給与で、当月15日以降の給与単価が上昇した場合。

(答) 昇給・降給した給与が実績として1か月分確保された月を固定的賃金変動が報酬に反映された月として扱い、それ以後3か月間に受けた報酬を計算の基礎として随時改定の判断を行う。

例示の場合であれば、給与単価が上昇した翌月支払の給与は単価上昇の実績を1か月分確保できていないため、翌々月を3か月の起算点として随時改定の可否を判断する。

問7 固定的賃金の変動の翌月に給与支払い締め日変更があった場合、随時改定はどのような取扱いとなるか。

例:9月支給分の給与から固定的賃金変動が反映されたが、10月支給の給与から、「月末締め翌月15日払い」→「15日締め翌月15日払い」に変

9月15日支給の給与(8/1日~8/31日分)

10月15日支給の給与(9/1日~9/15日分)

11月15日支給の給与(9/16日~10/15日分)

(答) 固定的賃金に変動が発生した後の3か月以内に、給与締め日の変更によって例示のように支払基礎日数が17日を下回る月がある場合には、随時改定の対象とならない。

なお、例示の場合、問6とは異なり、9月支給分の給与から固定的賃金変動が報酬に反映(1か月分確保)されているため、11月を起算月として随時改定を行うことはできない。

問7―2 非固定的賃金が新設された月に、非固定的賃金が支払われる条件が達成されなかったために初回の支払が0円となったが、次月以降は実際に支払いが生じたような場合、起算月の取扱いはどのようになるか。

(答) 新たに非固定的賃金の新設がなされたことによる賃金体系の変更を随時改定の契機とする際は、その非固定的賃金の支払の有無に係わらず、非固定的賃金が新設された月を起算月とし、以後の継続した3か月間のいずれかの月において、当該非固定的賃金の支給実績が生じていれば、随時改定対象となる。

なお、非固定的賃金の新設以後の継続した3か月間に受けた報酬のいずれにも当該非固定的賃金の支給実績が生じていなければ、報酬の変動要因としてみなすことができないため、随時改定の対象とはならない。また、その場合には当該非固定的賃金の支給実績が生じた月を起算月とすることにもならない。

問8 休職によって通常受けられる報酬よりも低額な休職給を受けることとなったが、休職中に固定的賃金の増減があった場合、随時改定の対象となるか。

(答) 随時改定では、固定的賃金の変動が報酬に反映された月を起算月として扱うこととしているが、休職に伴う低額な休職給を受けている間に固定的賃金の増減があった場合、休職給はその固定的賃金の変動を適切に反映しているとは言えないため、休職が終了して通常の給与支払いに戻った月以降3か月の平均報酬月額によって随時改定の可否を判断する。

問8―2 産休又は育休取得中の無給期間において昇給等があった場合、起算月はいつになるか。

(答) 産休等の無給期間中に固定的賃金に変動があった場合には、実際に変動後の報酬を受けた月を起算月として改定することとなる。

また、昇給等による固定的賃金の変動後に、給与計算期間の途中で休業に入ったこと、又は給与計算期間の途中で復帰したことにより、変動が反映された報酬が支払われているものの、継続した3月間のうちに支払基礎日数17日未満となる月がある場合については、随時改定の対象とはならない。

なお、これらは育児休業等を終了した際の改定を妨げるものではない。

問9 固定的賃金に変動が生じた月(起算月)の次月以降、随時改定の算定対象月内に、休職によって通常受けられる報酬よりも低額な休職給を受けることとなった場合、随時改定の対象となるか。

(答) 随時改定は固定的賃金の変動が報酬に反映された月を起算として、それ以後継続した3か月間(いずれの月も支払基礎日数が17日以上)に受けた報酬を計算の基礎とすることから、随時改定の算定対象月内に低額な休職給を受けた場合であっても、随時改定の対象とする。

問10 遡って昇給が発生した場合、保険者算定による随時改定の対象となるが、遡って降給が発生した場合も同様の取扱いが可能か。

(答) 遡って昇給が発生した場合、その変動が反映された月(差額調整が行われた月)を起算月として、それ以後継続した3か月間(いずれの月も支払基礎日数が17日以上)に受けた報酬を基礎として、保険者算定による随時改定を行うこととなるが、遡って降給が発生した場合についても、遡って昇給が発生した場合と同様に取り扱うものとする。

なお、超過支給分の報酬がその後の報酬から差額調整された場合、調整対象月の報酬は本来受けるべき報酬よりも低額となるため、調整対象月に控除された降給差額分を含まず、差額調整前の報酬額で随時改定を行う。

問11 基本給の減給制裁があった場合、随時改定はどのようになるか。また、同月に役職手当等の付与による固定的賃金の変動(増額)がある場合、随時改定の取扱いはどのようになるか。

(答) 減給制裁は固定的賃金の変動には当たらないため、随時改定の対象とはならない。

また、同月に固定的賃金の変動(増額)があった場合は、変動した固定的賃金の支給実績があった月を起算月として、減給制裁と役職手当等を併せた報酬全体で2等級以上の差が生じれば、随時改定に該当する。(起算月をずらしたり、減給が無かった場合の金額で算定したりすることはできない。)

問12 現物給与の標準価額が告示により改正された場合は、随時改定の対象になるか。

(答) 告示改正による単価の変更は、固定的賃金の変動に該当することから、随時改定の対象となる。

なお、現物給与の価額に関して規約で別段の定めをしている健康保険組合が管掌する被保険者については、当該規約の定めによる価額の変更がなければ、随時改定の対象にはならない。

問13 自動車通勤者に対してガソリン単価を設定して通勤手当を算定している事業所において、ガソリン単価の見直しが月単位で行われ、その結果、毎月ガソリン単価を変更し通勤手当を支給している場合、固定的賃金の変動に該当するか。

(答) 単価の変動が月ごとに生じる場合でも、固定的賃金の変動として取扱うこととなる。

問14 産前・産後休業期間について、基本給等は休業前と同様に支給するが、通勤手当については支給しないこととしている。この場合は、賃金体系の変更による随時改定の対象となるか。

(答) 産休等により通勤手当が不支給となっている事例において、通勤の実績がないことにより不支給となっている場合には、手当自体が廃止された訳ではないことから、賃金体系の変更にはあたらず、随時改定の対象とはならない。

○一時帰休における標準報酬月額の決定・改定について

(1) 定時決定について

問1 一時帰休による休業手当等が支払われた日は、支払基礎日数に含まれるのか。

(答) 一時帰休による休業手当等が支払われた日も、支払基礎日数に含まれる。

問2 定時決定の算定対象月に休業手当等が支払われた月があり、標準報酬月額の決定の際に一時帰休の状態が解消していない場合、休業手当等が支払われた月のみで標準報酬月額を決定するのか。

(答) 休業手当等が支払われた月のみで決定するわけではない。

例えば、定時決定の対象月である4・5・6月のうち、4・5月は通常の給与の支払を受けて6月のみ一時帰休による休業手当等が支払われた場合には、6月分は休業手当等を含めて報酬月額を算定した上で、4・5・6月の報酬月額を平均して標準報酬月額を決定する。

なお、標準報酬月額決定の際に一時帰休の状態が解消している場合の取扱いについては、問7を参照のこと。

問3 定時決定の算定対象月に休業手当等が支払われた月がある場合、標準報酬月額の決定に当たって、一時帰休の状態が解消しているかどうかを判断する必要があるが、どの時点で一時帰休解消を判断することになるのか。

(答) 7月1日時点で判断する。

問4 どのような場合が一時帰休が解消している状態にあたるのか。

(答) 7月1日の時点で、現に低額な休業手当等の支払いが行われておらず、その後も低額な休業手当等が支払われる見込みがない場合をいう。

一時帰休が解消しているか否かの判断に当たっては、算定基礎届の備考欄に一時帰休が解消した旨を記載させるとともに、公共職業安定所への休業計画の提出の有無や、労使間での一時帰休解消に関する合意の有無等を確認する。

問5 標準報酬月額の決定にあたって、一時帰休が解消していたために休業手当等を含まない報酬で定時決定を行ったが、その後、結果的に9月までの間に再び一時帰休の状態となって休業手当等が支給された場合、定時決定の内容を訂正することができるか。

(答) 標準報酬月額の決定後に再び一時帰休の状態となって休業手当等が支払われたとしても、定時決定の訂正は認められない。

なお、このようなケースについては、再び休業手当等が支払われることとなった月から起算して、随時改定に該当するか否かを判断する。

問6 標準報酬月額の決定にあたって、一時帰休が解消していなかったために休業手当等を含んだ報酬で定時決定を行ったが、その後、結果的に一時帰休が解消した場合は、どのように取り扱うべきか。

(答) 休業手当等をもって標準報酬月額の決定又は改定が行われた後、結果的に一時帰休が解消した場合は、通常の報酬の支払を受けることとなった月から起算して、随時改定に該当するか否かを判断する。

問7 「9月以降において受けるべき報酬」とは、どのように算出するのか。

(答) 7月1日の時点で一時帰休の状況が解消している場合の定時決定では、休業手当等を除いて標準報酬月額を決定する必要があることから、通常の給与を受けた月における報酬の平均により、標準報酬月額を算出する。

例えば4・5月に通常の給与を受けて6月に休業手当等を受けた場合、4・5月の報酬の平均を「9月以降において受けるべき報酬」として定時決定を行う。

同様に4月に通常の給与をうけて5・6月に休業手当を受けた場合、4月の報酬を「9月以降において受けるべき報酬」とする。

なお、4・5・6月の全てにおいて休業手当等を受けた場合は、休業手当等を含まずに決定又は改定された直近の標準報酬月額により、定時決定を行う。

(2) 随時改定について

問1 一時帰休に伴う随時改定について、1か月の全てについて休業手当等の支払を受けている場合が対象となるのか。それとも、1か月のうちの1日でも休業手当等の支払いを受けていれば対象となるのか。

(答) 1か月のうち、一時帰休に伴って固定的賃金が減額支給される日が1日でもあれば、随時改定の対象となる。

問2 一時帰休に伴う随時改定は、低額な休業手当等の支払いが継続して3か月を超える場合に行うこととなるが、いつの時点から3か月を起算するのか。

(答) 3か月は暦日ではなく、月単位で計算する。例えば、月末締め月末払いの事業所において一時帰休の開始日を2月10日とした場合は、5月1日をもって「3か月を超える場合」に該当し、2・3・4月の報酬を平均して2等級以上の差が生じていれば、5月以降の標準報酬月額から随時改定する。

なお、5月1日時点で一時帰休の状況が解消している場合には、3か月を超えないため、随時改定は行わない。

問3 一時帰休期間中に休業手当等の支給割合が変更した場合は、随時改定の対象となるのか。

(答) 随時改定の対象となる。

問4 一時帰休期間中に休業日数が変更となった場合は、随時改定の対象となるのか。

(答) 単に休業の日数が変更となった場合は、随時改定の対象とならない。

問5 「一時帰休の状況が解消したとき」とは、どのような状態をいうのか。また、どのような場合に随時改定の対象となるのか。

(答) 「一時帰休の状況が解消したとき」とは、固定的賃金が減額されず、その後も低額な休業手当等が支払われる見込みがない状態をいう。

また、低額な休業手当等が支払われないことが明確でなくても、現実に固定的賃金が減額されない状況が継続して3か月を超え、2等級以上の差を生じた場合は、一時帰休が解消したものとして随時改定の対象とする。

問6 一時帰休の状況が継続している間に固定的賃金が変動した場合は、随時改定の対象となるか。

(答) 随時改定は、固定的賃金の変動が報酬に反映された月を起算月として扱うこととしているが、一時帰休に伴う休業手当等が支払われた月に固定的賃金が変動した場合、その固定的賃金の変動が正確に報酬月額に反映されないため、一時帰休に伴う休業手当等が支払われなくなった月から起算して3か月の報酬を平均することによって、随時改定を行う。

問7 通常の給与で標準報酬月額の決定又は改定が行われている者について、固定的賃金の変動があった月の翌月に一時帰休による休業手当等が支払われた場合、随時改定の対象となるか。

(答) 随時改定は、固定的賃金の変動が報酬に反映された月を起算として、それ以後継続した3か月間(いずれの月も支払基礎日数が17日以上)に受けた報酬を計算の基礎とすることから、随時改定の算定対象月内に休業手当等を受けることとなった場合であっても、随時改定の対象とする。

○短時間労働者の標準報酬月額の決定・改定について

問1 標準報酬月額の決定・改定の算定の対象となる期間に、短時間労働者である月と短時間労働者でない月が混在している場合、各月の支払基礎日数はどのように取り扱うのか。

(答) 各月の被保険者の区分(短時間労働者であるかないか)に応じた支払基礎日数により、各月が算定の対象月となるかならないかを判断する。

問2 標準報酬月額の算定の対象となる期間に、支払基礎日数(原則17日、短時間労働者は11日)を満たす月と満たさない月が混在する場合、どのように標準報酬月額を決定するのか。

(答) 算定の対象となる期間に被保険者区分の変更があった場合は、区分の混在があっても、原則、一般の被保険者であるならば17日以上を、短時間労働者であるならば11日以上を算定の対象とし、対象となった月の平均で報酬月額を決定する。ただし、通常の労働者ではないものの、4分の3基準を満たす者(短時間就労者)については、従前のとおり、法定された支払基礎日数を満たす月がない場合、支払基礎日数が15日以上の月を算定の基礎とする。

○在宅勤務・テレワークにおける交通費及び在宅勤務手当の取扱いについて

問1 在宅勤務・テレワークを導入し、被保険者が一時的に出社する際に要する交通費を事業主が負担する場合、当該交通費は「報酬等」に含まれるのか。

(答) 基本的に、当該労働日における労働契約上の労務の提供地が自宅か事業所かに応じて、それぞれ以下のように取扱う。

① 当該労働日における労働契約上の労務の提供地が自宅の場合

労働契約上、当該労働日の労務提供地が自宅とされており、業務命令により事業所等に一時的に出社し、その移動にかかる実費を事業主が負担する場合、当該費用は原則として実費弁償と認められ、「報酬等」には含まれない。

② 当該労働日における労働契約上の労務の提供地が事業所とされている場合

当該労働日は事業所での勤務となっていることから、自宅から当該事業所に出社するために要した費用を事業主が負担する場合、当該費用は、原則として通勤手当として「報酬等」に含まれる。

なお、在宅勤務・テレワークの導入に伴い、支給されていた通勤手当が支払われなくなる、支給方法が月額から日額単位に変更される等の固定的賃金に関する変動があった場合には、随時改定の対象となる。

(参考)

当該日における労働契約上の労務の提供地

「自宅―事業所」間の移動に要する費用の取扱い

保険料の算定基礎

自宅

業務として一時的に出社する場合は実費弁償(「報酬等」に該当しない)

非対象

事業所

通勤手当(「報酬等」に該当する)

対象

問2 在宅勤務・テレワークの実施に際し、在宅勤務手当が支給される場合、当該手当は「報酬等」に含まれるのか。

(答) 在宅勤務手当の取扱いについては、当該手当の内容が事業所毎に異なることから、その支給要件や、支給実態などを踏まえて個別に判断する必要がある。基本的な考え方は以下の通り。

① 在宅勤務手当が労働の対償として支払われる性質のもの(実費弁償に当たらないもの)である場合

在宅勤務手当が、被保険者が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を事業主に返還する必要がないものであれば、「報酬等」に含まれる。

(例) 事業主が被保険者に対して毎月5,000円を渡し切りで支給するもの

② 在宅勤務手当が実費弁償に当たるようなものである場合

在宅勤務手当が、テレワークを実施するに当たり、業務に使用するパソコンの購入や通信に要する費用を事業主が被保険者に支払うようなものの場合、その手当が、業務遂行に必要な費用にかかる実費分に対応するものと認められるのであれば、当該手当は実費弁償に当たるものとして、「報酬等」に含まれない。

※ 実費弁償に当たるものの具体的な例については、別紙Q2を参照。

問3 在宅勤務・テレワークの実施に際し、在宅勤務手当が支給される場合の随時改定の取扱いはどうなるのか。

(答) 在宅勤務・テレワークの導入に伴い、新たに実費弁償に当たらない在宅勤務手当が支払われることとなった場合は、固定的賃金の変動に該当し、随時改定の対象となる。

交通費の支給がなくなった月に新たに実費弁償に当たらない在宅勤務手当が支給される等、同時に複数の固定的賃金の増減要因が発生した場合、それらの影響によって固定的賃金の総額が増額するのか減額するのかを確認し、増額改定・減額改定のいずれの対象となるかを判断する。

なお、新たに変動的な在宅勤務手当の創設と変動的な手当の廃止が同時に発生した場合等において、創設・廃止される手当額の増減と報酬額の増減の関連が明確に確認できない場合は、3か月の平均報酬月額が増額した場合・減額した場合のどちらも随時改定の対象となる。

また、一つの手当において、実費弁償分であることが明確にされている部分とそれ以外の部分がある場合には、当該実費弁償分については「報酬等」に含める必要はなく、それ以外の部分は「報酬等」に含まれる。この場合、月々の実費弁償分の算定に伴い実費弁償以外の部分の金額に変動があったとしても、固定的賃金の変動に該当しないことから、随時改定の対象とはならない。