添付一覧
○医療機器の「臨床試験の試験成績に関する資料」の提出が必要な範囲等に係る取扱い(市販前・市販後を通じた取組みを踏まえた対応)について
(平成29年11月17日)
(/薬生機審発1117第1号/薬生安発1117第1号/)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知)
(公印省略)
医療機器の製造販売承認申請において、臨床試験の試験成績に関する資料の提出が必要な範囲等については、「医療機器に関する臨床試験データの必要な範囲等について」(平成20年8月4日付け薬食機発第0804001号厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知)、「希少疾病用医療機器等に関する臨床試験データの取扱いの明確化について」(平成25年3月29日付け薬食機発0329第1号厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知)等により示してきたところです。
医療機器は、改良、改善が頻繁かつ多様な内容で行われる等の特性があるため、それらの特性を活かしつつ、開発をより効率的に行う観点から、「医療機器の迅速かつ的確な承認及び開発に必要な治験ガイダンスのあり方に関する研究」(研究代表者:中野壮陛(公益財団法人医療機器センター専務理事)、平成28年度日本医療研究開発機構委託研究費(医薬品等規制調和・評価研究事業))において治験に関するガイダンスの検討を行いました。今般、その検討を踏まえて、市販前から市販後まで一貫した安全性及び有効性の確保策を実施することにより、市販前の新たな治験実施の有無によらず、承認申請を行い得ると考えられるケースの取扱いを以下のとおり整理し、運用の明確化を図ることとしましたので、御了知の上、貴管内各関係事業者、関係団体等に周知方よろしくお願いします。
なお、本通知の写しを一般社団法人日本医療機器産業連合会会長、一般社団法人米国医療機器・IVD工業会会長、欧州ビジネス協会医療機器・IVD委員会委員長、独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事長宛て送付することを申し添えます。
記
1.国内医療環境への適合性を評価するための治験の取扱い
(1) 概要
外国で実施されたピボタル臨床試験の成績がある場合は、日本人と外国人の人種的な差並びに日本と外国の環境因子及び医療実態の差等(民族的要因)を考慮して、本邦における有効性および安全性を評価することになる。外国において開発され、手技の新規性が非常に高い医療機器において、本邦における手技(合併症への対処等を含む)の普及の度合いなどの外的要因が主な論点となる場合、本邦の医療環境下において外国ピボタル試験と同様の有効性および安全性が示されるかどうかなどを市販前の追加的な治験により評価することが行われている。
こういったケースの中には、医療環境の差異がもたらすリスクや留意点を推定し、市販後に限定された施設において慎重に医療機器を使用するとともに、データ収集や安全対策をより適切に実施することで、市販前の治験を通じた評価によらずとも当該機器の安全かつ適切な使用を確保できる可能性が考えられる。
この場合、開発の初期の段階から、治験の要否や市販後の適正使用対策について、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「総合機構」という。)と十分に協議し、適切な開発計画を立案することが望ましい。
(2) 具体的な対応
① 医療機器開発前相談での開発の方向性の検討
外国で実施されたピボタル臨床試験の成績があり、関連する手技の普及の度合い等の国内外の医療環境の差異のみが論点となる場合、総合機構の医療機器開発前相談を活用し、少数例の国内治験を実施することに代わり、適正使用基準の作成及び遵守、市販後のデータ収集とそれに基づく必要な措置の実施等を通じて安全性及び有効性の確保を図ること等の開発の方向性が考えられる。
相談に当たっては、外国臨床試験データ、非臨床試験データ、文献情報等を踏まえて、当該医療機器の概要、医療環境の差異がもたらすリスクやベネフィットに影響しうる留意点とその対応案を提示すること。また、適正使用基準の作成やトレーニングの実施等に当たっては、実際に当該医療機器を使用することになる関連の学会と連携することが重要になるので、関連学会との連携の状況についても説明できるようにしておくこと。
② 医療機器臨床要否相談の活用
医療機器開発前相談の結果を踏まえ、改めて既存の情報を踏まえたリスクや留意点の詳細な分析、適正使用基準の遵守、市販後のデータ収集等の具体的な対応案の検討を行い、医療機器臨床要否相談を活用してその内容について総合機構と相談すること。具体的な対応案の検討に当たっては、医療機器製造販売後リスク管理指針(「医療機器製造販売後リスク管理指針について」(平成29年7月31日付け薬生機審発0731第1号・薬生安発0731第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長・医薬安全対策課長連名通知)の別添)などを参考にすること。
適正使用基準の中で、施設基準を設定する際は、当該基準を満たす施設がどの程度あるか、施設基準の変更等により実施施設を拡大する際に満たすべき要件等についても検討しておくこと。
また、適正使用基準の遵守の状況、市販後のデータ収集等の結果、データ収集を踏まえて実施した措置等を取りまとめて総合機構に報告する予定時期を、総合機構とも相談の上で、あらかじめ定めておくこと(使用成績調査の定期報告等の定められた報告とは別に報告を行う必要がある場合。)。市販後にそれらの結果がまとまり次第、速やかに総合機構に報告すること。
2.追加的な臨床的付加価値が比較的小さく、重大なリスクが想定されない改良医療機器の治験の取扱い
(1) 概要
改良医療機器(臨床あり)区分に相当する医療機器の開発では、改良による既存品目との差分が重大なリスクを及ぼさないと想定され、非臨床試験又は蓄積された臨床エビデンスなどから有効性と安全性が既存の医療機器とほぼ同等であることが説明できるものの、少数例の治験を実施し、実際に臨床的に使用した実績を示すことで安全性、有効性の確認を行うケースがある。
十分な臨床使用実績のある種類の医療機器の改良品目で、既存品目との比較等により安全性、有効性を評価でき、既存品目との差分が重大なリスクを及ぼさないことが高い蓋然性をもって想定される品目は、人での使用経験がまったくない場合であっても、リスク・ベネフィットのバランスが損なわれるほどの安全性上の問題が生じる可能性は低い。一方、医療機器は導入の初期段階に少なからず様々な問題が生じる可能性があること、人での使用経験がまったくない場合においては特に、製品特有の課題をいち早く発見し対策を講じるべきこと、への留意が肝要である。
このため、これらの製品では、市販前の少数例の治験を通じた評価によらず、非臨床試験、文献情報、類似医療機器での使用経験などから徹底的なリスク分析を行い、臨床的な安全性と有効性を評価することに加え、市販後早期段階の一定数の症例について、きめ細かに各症例の状況の把握・情報収集を行うことにより、当該医療機器の安全かつ適切な使用が確保できる場合もあると考えられる。
このような場合、開発早期の段階から、リスク分析の内容、治験の要否、市販後早期の安全性情報の収集等について総合機構と十分に協議し、適切な開発計画の立案と申請区分(臨床あり、臨床なし)の確定を行うことが望ましい。
(2) 具体的な対応
① 開発前相談での開発の方向性の検討
改良医療機器(臨床あり)に相当する医療機器であって、非臨床試験データ、文献情報、当該医療機器の原理、術式、類似医療機器での経験などからその臨床的な安全性及び有効性について高い蓋然性の説明が可能で、既存品目と比較し重大なリスクが想定されない場合は、医療機器開発前相談を活用して、臨床での使用経験という点においてデータが不足していることによる審査上の論点について相談すること。
② 医療機器臨床要否相談の活用
(ア) 医療機器開発前相談の結果を踏まえ、企業側において、追加の非臨床試験の実施、類似品目の情報や文献情報等の追加的な分析を行い、改めて臨床上発生しうるリスクの推定などのリスク分析を実施すること。その上で、残留リスクの評価や全体的なリスクの受容の評価を行い、市販前から市販後まで一貫して安全性・有効性の確保を行うための手法として、市販後早期の段階での一定数の症例について、医療機器情報担当者が頻度高く実施医療機関を訪問し、きめ細かに各症例の状況の把握・情報収集を行った上で、必要に応じ得られた情報に基づいて速やかに対応を行うほか、それらの結果等をとりまとめて報告を行うこと(以下、「製造販売後早期安全性情報収集」という。)の計画を立案すること。
当該計画には、臨床における実態調査として、製造販売後に重点的に確認が必要な事象、重点的に情報収集する期間と対象医療機関、情報収集の方法、情報収集等の結果を総合機構に報告する予定時期、収集した情報の評価結果に基づく対応予定(例えば、添付文書への反映や情報収集の結果の情報提供など)等を規定すること。(別紙1に参考様式を示す。)
なお、上述の製造販売後早期安全性情報収集は、主として新医療機器を対象に中長期の使用成績を収集する使用成績評価と異なり、追加的な臨床的付加価値が比較的小さく、重大なリスクが想定されない改良医療機器を対象として、比較的短期のデータを収集し、市販後早期の使用状況を確認することを主眼としているものであることに留意すること。
(イ) この上で、医療機器臨床試験要否相談を活用し、実施したリスク分析を踏まえて、製造販売後早期安全性情報収集の計画の内容について相談すること。当該相談において、製造販売後早期安全性情報収集の適切な実施を前提として、申請区分を「改良医療機器(臨床なし)」とすることが適当であるとされた場合は、当該品目の承認申請の際、製造販売後早期安全情報収集計画を総合機構宛て二部提出すること。(全体の流れは別紙2を参照。)
(ウ) 市販後は、製造販売後早期安全性情報収集の計画に基づいて、販売開始時に対象医療機関に対し、特に重点的に確認が必要な事象について情報提供依頼を行い、積極的に情報収集を行うこと。また、当該計画に従って、製造販売後早期安全情報収集の結果及び当該情報収集を踏まえて実施した安全確保措置等を取りまとめ、総合機構に報告すること。
3.診断の参考情報となり得る生理学的パラメータを測定する診断機器に関する相談
(1) 概要
生理学的パラメータもしくはそれを演算処理して得られた数値等の中には、診断の参考情報となり得ると考えられるものの、臨床症状や病態との関連付けが広く認知されるには至っておらず、現時点では広く医療現場において用いられると想定されていないもので、その臨床的意義や医学的判断基準が十分確立しているとは言い難いものがある。
そのような生理学的パラメータ等を測定・提示する装置を医療機器として開発する場合は、最終的に目標とする臨床的意義がまだ確立されていなくても、これまでの臨床実績や機械的な性能(測定性能)に関する試験成績等により示すことのできる使用目的又は効果の範囲に限定して承認申請を行うことが考えられる。加えて、承認後には臨床現場で使用された経験を踏まえながら、臨床的エビデンスが確立されたのちに、必要に応じて一部変更申請を行っていくような開発の戦略が想定される。この場合、あらかじめ総合機構の医療機器開発前相談を活用した審査側との意見交換を進めることが有用と考えられる。
(2) 具体的な対応
生体の生理的な機能を測定する機器(検体検査に係るものを除く。)で、以下に該当するものを、診断支援を行う医療機器として開発する場合は、あらかじめ総合機構の医療機器開発前相談を活用して、上述の対応の可否等について審査側との意見交換を進めること。
(対象となる機器)
1) 生体信号として示される生理学的指標の非侵襲的な測定を行う能動的なモニタリング医療機器(いわゆる生体物理現象検査用機器、生体電気現象検査用機器、生体現象監視用機器等)で、測定原理の明らかな既存センサ等から得られる情報に対し演算処理して得られる新たな指標を提供するもの。
2) 最終的に目標とする臨床的意義がまだ確立されていないものの、別途、診断の参考情報として、いくつかの判断基準の一つを提供する医療機器と位置づけられるもの。
3) 誤った検査結果が得られた場合に、ヒトの生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものではないもの。
別紙1:様式例
別紙2
注意:非臨床試験、リスク分析の情報量、内容等によって、相談プロセスが異なることがある。