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○適用事業所の報酬調査の徹底について〔厚生年金保険法〕

(平成29年8月30日)

(年管管発0830第5号)

(日本年金機構事業推進部門担当理事あて厚生労働省年金局事業管理課長通知)

(公印省略)

今般、標準報酬月額の基礎となる報酬について、海外に所在する別法人の事業所(以下「海外別事業所」という。)から報酬を支払っているという形態をとることにより標準報酬月額の基礎となる報酬を著しく低額に抑えており、報酬に関する調査を徹底する必要がある事案が判明した。

当該事案を踏まえ、年金事務所が適用事業所に対する事業所調査を実施する際に、下記取扱いに基づく各種台帳等の調査を徹底するとともに、事業所からの必要書類の提出を徹底させるようお願いしたい。

1.判明した事案の特徴

・正規職員である被保険者に対し二つの事業所から報酬の支給が行われており、一方は適用事業所、他方は香港に所在する別法人の事業所(以下「香港別事業所」という。)であって、双方の事業所とも同じ者が事業主である。

・疑義の対象となる被保険者は、適用事業所に採用された後、香港別事業所に転籍し、転籍先となる香港別事業所から適用事業所に出向しているが、日本国内で、適用事業所の業務にのみ従事しており、香港別事業所において業務に従事した実績はない。

・香港別事業所の事業実態を確認することができない。

・適用事業所から被保険者に支払われる報酬は、職種や勤続年数に関わらず一律に15万円程度となっており、勤続年数が増えても報酬に変動がない。

2.事業所調査の実施について

(1) 事業所調査の徹底について

・職種、勤務形態、勤続年数等を考慮した結果、標準報酬月額が著しく低いと認められる被保険者が存在する適用事業所については、必ず事業所調査を実施すること。

・また、適用事業所の事業主に対する質問調査の結果や、通報、告発等により標準報酬月額の基礎となっていない海外別事業所からの報酬があると見込まれる場合は、源泉所得税や労働保険料の申告、納付状況を必ず確認し、源泉所得税や労働保険料について適用事業所と海外別事業所からの報酬を合算して申告している場合は、標準報酬月額の基礎となる報酬について、海外別事業所からの報酬を合算していない理由を聴取すること。

(2) 事業所臨場による調査の徹底について

事業所調査の結果、下記①の事象のいずれかに該当する被保険者を確認した場合は、必ず事業所に臨場のうえ調査を実施し、賃金台帳等、下記②に掲げる書類の全てを調査するとともに、全ての写しの提出を求めること。

①事象

被保険者に対する報酬が、適用事業所と海外別事業所の二つの事業所から支払われている場合であって、次のいずれかに該当する場合。

(イ) 職種、勤務形態、勤続年数等を考慮して比較した結果、適用事業所から支払われる被保険者に対する報酬が、適用事業所の所在する地域の同業他社に所属する被保険者に対する報酬を著しく下回る場合

(ロ) 海外別事業所について事業主に質問調査した場合に、例えば、「海外法人設立や転籍・出向等は全て経営権の範疇であり、これを指摘するのであれば民事不介入の原則に反するのではないか。経営権に指摘できる法的根拠を教えてほしい。」等の申し立てにより回答を拒否した場合、又は、書類提出に応じない場合

なお、全ての被保険者が当該取扱いとしている場合のみならず、一部の被保険者のみに当該取扱いを適用していることも想定されるので留意すること。

また、被保険者も協力している場合が想定されることから、被保険者からの回答が必ずしも参考になるものではないことに留意すること。

②提出が必要となる書類

(イ) 対象となる被保険者に係る賃金台帳、勤務時間管理簿、所得税及び労働保険料の源泉徴収状況が確認できる書類。

(ロ) 対象となる被保険者と適用事業所の間で取り交わされた雇用契約書、出向又は転籍に関する同意・取決めに関する書類。

(ハ) 対象となる被保険者と海外別事業所の間で取り交わされた雇用契約書、出向又は転籍に関する同意や取決めに関する書類。

(ニ) 適用事業所における報酬に関する規定、出向又は転籍に関する規定。

(ホ) 海外別事業所における報酬に関する規定、出向又は転籍に関する規定、海外別事業所の活動実態が確認できる資料。

(3) 事業所調査に応じない場合

今般の調査は、健康保険法第198条及び厚生年金保険法第100条に基づき行うものであるが、調査に応じない場合には、健康保険法第208条及び厚生年金保険法第102条の罰則が適用される場合があることを説明すること。

それでも調査に応じない場合は、健康保険法第198条及び厚生年金保険法第100条に基づく立入検査を実施することを事業主に宣言し、立入検査手続を開始すること。

※ 立入検査については、厚生年金保険等の適用調査対象事業所に対する立入検査にかかる事務処理手順書に基づき行うこと。

3.当課への報告

「2.事業所調査の実施について」に基づき事業所調査を実施した年金事務所は、速やかに、調査結果を日本年金機構本部(以下「機構本部」という。)に報告すること。

報告を受けた機構本部は、内容を精査した上で速やかに当課へ報告すること。

4.その他

電話等にて、被保険者の勤務時間、報酬、又は賞与等の取扱いについて照会があった場合に一般論として回答することで誤解を招く事案が生じている。

これらの照会については、個別具体的に賃金台帳、勤務時間管理簿、雇用契約書等を確認した上で相談に応じる必要があることについて照会者にご理解いただき、一般論としての回答は控える取扱いとすることとしたので、留意されたい。