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○革新的医療機器条件付早期承認制度の実施について

(平成29年7月31日)

(薬生発0731第1号)

(各都道府県知事あて厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)

(公印省略)

革新的な医療機器がベンチャー企業等によって開発されつつあるが、治験症例の収集に長期間を要するなどの理由で、強固なエビデンスを得ようとすると開発期間が長くなり患者のアクセスが遅延するジレンマが生じることがある。特に、生命に重大な影響がある疾患で、既存の治療法に有効なものが存在しない場合は、開発の長期化の影響は大きく、安全性、有効性等を確保しつつ、当該疾患に対処できる可能性のある医療機器へのアクセスを可能な限り早くするための方策が求められている。

「医療のイノベーションを担うベンチャー企業の振興に関する懇談会」においても同様の指摘がなされ、市販前の臨床試験実施に係る負担を最小化し、市販後の調査をより充実させることにより、革新的な医療機器の早期承認を行う制度の構築が提言された。

こうした状況を受け、これまで希少疾病用医療機器等について、個々の状況を勘案の上で限られた臨床データを基に安全性、有効性等の評価を行ってきた実績と、製造販売後のリスク管理の拡充、制度化を通じ、医療機器の特性及びそのライフサイクルマネジメントに適した形で、早期の承認申請を可能とする制度を構築することとした。

今般、一定程度の臨床データが入手可能な、医療上の必要性の高い医療機器について、使用条件の設定、市販後のデータ収集などの製造販売後のリスク管理を適切に行う事を前提に、限られた臨床データを基に承認申請を可能とする「革新的医療機器条件付早期承認制度」を下記のとおり実施することとしたので、貴管下関係事業者への周知をお願いする。

なお、「「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」、「医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の製造販売後安全管理の基準に関する省令の一部を改正する省令」及び「医療機器の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令の一部を改正する省令」の施行について」」(平成29年7月31日付け薬生発0731第4号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)、「医療機器製造販売後リスク管理計画の策定について」(平成29年7月31日付け薬生機審発0731第3号・薬生安発0731第3号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長・医薬安全対策課長連名通知。以下「手続通知」という。)、「医療機器製造販売後リスク管理指針について」(平成29年7月31日付け薬生機審発0731第1号・薬生安発0731第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長・医薬安全対策課長連名通知。以下「指針通知」という。)についても併せて周知をお願いする。

1.制度の趣旨

臨床試験によって得られる臨床的な有効性や安全性に関するデータは、特に既存の医療機器と構造、使用方法、効果等が明らかに異なる革新的な医療機器においては、その評価を行う上で非常に重要であり、それらを踏まえて承認審査を行うことが原則である。

この一方で、患者数が少なく治験症例の組入れに相当な時間を要する等の理由により臨床開発が長期化するなど、承認申請に必要な臨床データの収集に著しい困難を伴うことがある。生命に重大な影響があり、かつ既存の治療法等に有効なものがない疾患の患者にとって、効果が期待される医療機器の開発長期化は致命的な影響を及ぼす。

このような現実を踏まえ、生命に重大な影響があり、かつ既存の治療法等に有効なものがない疾患を対象とする革新的な医療機器について、その臨床開発に著しい困難を伴うと認められる場合に、使用条件の設定、市販後のデータ収集などの製造販売後のリスク管理を開発段階から計画し、申請前に得られる限られた臨床データでは明らかにならないリスクへの対応を厳重に行うことを前提として、医療機器のリスクとベネフィットのバランスを図りつつ、早期の実用化を促進する「革新的医療機器条件付早期承認制度」を実施する。

具体的には、申請に係る医療機器の適正使用基準(使用施設、使用者等)の設定、市販後のデータ収集とそれに基づく対応などの製造販売後のリスク管理を、関連の学会との緊密な連携の下であらかじめ作成した「医療機器製造販売後リスク管理計画」を承認申請書の添付資料として受け入れることとする。承認審査においては、当該リスク管理が適切に実施されることを前提として、市販前に入手しうる臨床データを基に当該医療機器の有効性、安全性等を確認する。また、承認に当たっては、当該リスク管理の内容を医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「法」という。)第79条に基づく承認条件とすることでその実施を担保し、市販前の臨床データが限定的であることに鑑みて、実施症例が増えるまでの間、慎重かつ適切に当該医療機器が使用されるようにする。

2.本制度の対象品目

(1) 以下のいずれにも合致する新医療機器相当の品目を対象とする。

ア.生命に重大な影響がある疾患又は病気の進行が不可逆的で日常生活に著しい影響を及ぼす疾患を対象とすること。

イ.既存の治療法、予防法若しくは診断法がないこと、又は既存の治療法等と比較して著しく高い有効性又は安全性が期待されること。

ウ.一定の評価を行うための適切な臨床データを提示できること。

エ.関連学会と緊密な連携の下で、適正使用基準を作成することができ、また、市販後のデータ収集及びその評価の計画を具体的に提示できること。

オ.新たな治験の実施に相当の困難があることを合理的に説明できること。

(2) 本制度によって承認申請を行うことを希望する場合は、別紙に示す「革新的医療機器条件付早期承認制度の要件該当性に関する概要」(以下「該当性概要」という。)を作成の上、(独)医薬品医療機器総合機構(以下「総合機構」という。)の医療機器開発前相談を申し込むこと。この相談の中で、相談者と厚生労働省及び総合機構が、申請予定の品目が本制度の対象になるかどうかについて意見交換を行う。

(3) 相談者との意見交換を踏まえ、厚生労働省及び総合機構は、上記(1)の5つの要件を総合的に勘案して、申請予定の品目が本制度の対象になるかどうかを検討する。この際、判断に必要な情報、資料の提供を追加で求めることがある。また、必要に応じ、厚生労働省は、疾患の重篤性及び代替法の有無について、「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」に評価を依頼し、その結果を踏まえて検討を行う。

本制度の対象になると判断される場合は、医療機器開発前相談の相談記録にその旨記載する。相談記録の作成まで(対面助言よりおよそ30勤務日以内)に、本制度の対象とすることの適否の判断がつかない場合は、別途厚生労働省及び総合機構から相談者に連絡する。

(4) なお、申請予定の品目が希少疾病用医療機器の指定又は医療ニーズの高い医療機器としての選定を受けている場合は、上記(2)の医療機器開発前相談を経ることなく本制度の対象になると判断できる場合もあることから、医療機器開発前相談の申込み前に、該当性概要を作成の上、厚生労働省医療機器審査管理課に相談すること。

(5) 各要件及び該当性概要の記載に係る留意点は以下のとおり。

① 要件アについて

対象疾患の概要、患者背景、申請予定品目の対象患者数等を端的に記載し、それらの情報の出典、根拠資料を示すこと。

② 要件イについて

対象疾患に対する既存の治療方法等の有無、治療方法等がある場合はその内容(手技の内容、使用されている医療機器、臨床成績等)及び問題点を示し、申請予定品目が既存の医療機器と比較してどのような点で優れているか記載すること。記載内容の根拠となる論文、国内外の診療ガイドライン、医学書等を出典として記載し、当該資料の写しを添付すること。

国内で開発中の類似品目があれば、可能な範囲でその概要を説明すること。

③ 要件ウについて

入手可能な臨床試験成績等の要旨を記載し、臨床的な有効性等が認められること、想定されるリスクが許容可能であること等を説明すること。探索的な治験や海外の臨床試験等の成績が想定されるが、先進医療や臨床研究などのデータ、文献情報等も活用できる。原則として、個々の症例のデータが入手可能であること。記載内容の根拠となる論文等があれば出典として記載し、当該資料の写しを添付すること。試験の実施に当たって参照した基準や倫理指針、データの信頼性確保のために行われた対策等があれば説明すること。

また、実施中の臨床試験等がある場合はその概要を説明すること。

④ 要件エについて

関連学会の協力が得られ、関連学会と連携して申請予定品目の適正使用基準を作成することができること。該当性概要には極力、適正使用基準の素案の内容、作成の進捗、市販後のデータ収集とその評価の計画等を簡潔に記載すること。

適正使用基準案には、実施医、実施施設等の要件を規定するほか、使用に当たって特に注意が必要な症例や合併症への対応方法、講習、トレーニング、プロクタリング等の実施計画、実施施設を拡大する場合の考え方等が含まれうる。関連学会としては、日本医学会又は日本歯科医学会の分科会(以下「分科会」という。)が考えられ、申請予定品目の使用及び当該品目の使用に当たって発生しうる合併症の治療に関連の深い学会が関与することを基本とする。分科会以外の学会が主体となる場合は、分科会との関係及び適正使用基準の作成等に当たり、必要に応じ、分科会の協力が得られることを説明すること。また、学会の担当者の連絡先等を付記すること。

市販後のデータ収集及び評価の計画案には、データ収集の目的、方法、データの評価の方法とタイミング、適正使用基準案を踏まえた実施施設を拡大する場合の検討方法、収集した使用成績や不具合等の最新の情報を当該医療機器を使用する医師等に情報提供するための方法等を記載すること。

また、可能であれば、別途示す医療機器製造販売後リスク管理計画の案(適正使用基準の案、使用成績調査の計画等を含む。)を添付すること。

⑤ 要件オについて

これまでの開発状況及び臨床試験の実施が困難な理由を具体的に記載すること。関連学会からの意見等があれば添付すること。また、新たに臨床試験を実施することを想定した場合に、その実施に要すると考えられる期間等を説明すること。

⑥ その他

開発品目が希少疾病用医療機器の指定又は医療ニーズの高い医療機器としての選定を受けている場合は備考欄にその旨記載すること。

3.事前相談、承認申請の手続き

(1) 医療機器臨床試験要否相談

本制度の対象品目について、新たな臨床試験を実施せずに承認申請を行う場合は、申請前に、入手可能な臨床データの評価、医療機器製造販売後リスク管理計画(案)の内容が適切かどうか等を相談するため、総合機構の「医療機器臨床試験要否相談」を申し込むこと。当該相談では、具体的には、必要に応じ医学専門家を交えて、対象疾患の重篤性等に鑑み、臨床的な安全性、有効性のリスクベネフィットバランスを、既存の臨床データ、適正使用基準案等を基に適切に評価できるかどうか、適切な使用を確保するために必要となる製造販売後のリスク管理やデータ収集等の内容について助言する。

なお、相談の申込みの際は、申込書の備考欄に革新的医療機器条件付早期承認制度の対象品目である旨を記載し、2.(3)の相談記録を添付すること。(2.(4)の医療機器開発前相談を経ていない場合は厚生労働省より個別に連絡する。)

(2) 承認申請、審査

① 承認申請に当たっては、臨床試験の試験成績に関する資料の一部として、医療機器製造販売後リスク管理計画の案を添付するとともに、申請書の備考欄に革新的医療機器条件付早期承認制度の対象品目である旨、2.(3)及び3.(1)の相談日時(記号)を記載すること。なお、承認申請後速やかにQMS適合性調査申請を行うことができるよう、必要な体制の整備等に留意すること。

② 医療機器製造販売後リスク管理計画の記載方法等は手続通知、指針通知を参照すること。

③ 承認審査では、医療機器製造販売後リスク管理計画の妥当性について確認し、確認された内容が適切に実施されることを前提として、安全性、有効性等の確認を行う。本制度の対象品目は原則として使用成績評価の対象とするとともに、適正使用基準などの製造販売後リスク管理を、法第79条に基づく承認条件とすることでその実施を担保する。

4.承認後の手続

(1) 原則として、販売開始予定時期の1か月前までに、医療機器製造販売後リスク管理計画を総合機構に提出する。これに基づき、市販後の情報収集、医療関係者や患者への情報提供、その他必要な対策を講ずることにより、医療機器の適正な使用を担保し、保健衛生上の危害防止を図ることとする。

(2) 使用成績調査に係るデータ収集を、関連学会の症例登録の情報(レジストリ)等を通じて実施する場合は、厚生労働省及び総合機構の要請に応じて必要なデータの確認ができるようにするほか、データの管理や利用に係る責任関係等をあらかじめ明確にしておくこと。

(3) 使用成績調査の期間中は、法第23条の2の9第6項の規定による使用の成績に関する調査の報告を1年ごとに行うこと(定期報告)。定期報告に当たっては、医療機器を使用する医師等と最新の情報を共有することも考慮すること。その他使用成績調査については、「医療機器及び体外診断用医薬品の製造販売承認に係る使用成績評価の取扱いについて」(平成26年11月21日付け薬食機参発1121第44号厚生労働省大臣官房参事官(医療機器・再生医療等製品審査管理担当)通知)などの関連通知を参照すること。

(4) 使用成績の評価、市販後の不具合の発生の動向、製造販売後のデータの蓄積等を踏まえ、適正使用基準を含む製造販売後リスク管理計画の内容を変更する場合や実施施設の拡大等を行う場合は、事前に総合機構に相談すること。

(5) なお、本制度の対象となる医療機器の使用成績調査、市販後臨床試験、レジストリ等によって市販後に収集されるデータが、製造販売後リスク管理の内容の見直しだけでなく、今後の医療機器の改善や将来の承認申請にも役立つものとなるよう、必要に応じ、総合機構の相談を活用し、市販後のデータ収集の計画と収集されたデータの活用方法を十分に検討しておくことが望ましい。

5.留意事項

(1) 「適応外使用に係る医家向け医療機器の取扱について」(平成18年5月22日付け医政研発第0522001号・薬食審査発第0522001号、厚生労働省医政局研究開発振興課長・医薬食品局審査管理課長連名通知)に示す場合は、本制度によらずに承認申請を行うことが適切なことがあるので、個別に厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課に相談すること。

(2) 「希少疾病用医療機器等に関する臨床試験データの取扱いの明確化について」(平成25年3月29日付け薬食機発0329第1号、厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知)に示す場合及び開発品目の臨床的な有効性および安全性を、性能試験、動物試験等の非臨床試験成績又は既存の文献等によって評価できると考えられる場合は、まず総合機構の対面助言を活用することを考慮すること。その上で必要に応じて、本制度の利用を検討すること。

(別紙)