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○麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令及び麻薬及び向精神薬取締法施行令の一部を改正する政令等の施行について(通知)

(平成29年7月26日)

(薬生発0726第1号)

(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)

(公印省略)

本日、麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令及び麻薬及び向精神薬取締法施行令の一部を改正する政令(平成29年政令第204号。以下「改正政令」という。)及び麻薬及び向精神薬取締法施行規則の一部を改正する省令(平成29年厚生労働省令第76号)が公布されましたので、貴職におかれましては、下記事項について御了知の上、関係各方面に対する周知の徹底と適切な指導をお願い申し上げます。

第1 改正の趣旨

今般、国連事務総長より1961年の麻薬に関する単一条約(昭和39年条約第22号)第3条第7項の規定に基づき下記2物質を附表Ⅰに、また向精神薬に関する条約(平成2年条約第7号)第2条第7項の規定に基づき下記6物質を附表Ⅱに、それぞれ追加すること及び麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(平成4年条約第6号)第12条第6項の規定に基づき、下記2物質を附表Ⅰに追加することが決定された旨の通告があった。

そのため、わが国でも、国内法令(麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令(平成2年政令第238号)、麻薬及び向精神薬取締法施行令(昭和28年政令第57号)、麻薬及び向精神薬取締法施行規則(昭和28年厚生省令第14号。以下「施行規則」という。))を改正し、これらの物質を麻薬又は特定麻薬向精神薬原料として規制するため必要な措置をとるものであること。

第2 改正の内容

1 麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令の一部改正

(1) 次の8物質を新たに麻薬に指定した。

①N―(アダマンタン―1―イル)―1―(5―フルオロペンチル)―1H―インダゾール―3―カルボキサミド及びその塩類

②2―(エチルアミノ)―1―(4―メチルフェニル)プロパン―1―オン及びその塩類

③3,4―ジクロロ―N―[2―(ジメチルアミノ)シクロヘキシル]―N―メチルベンズアミド及びその塩類

④2―フェニル―2―(ピペリジン―2―イル)酢酸エチルエステル及びその塩類

⑤N―(1―フェネチルピペリジン―4―イル)―N―フェニルブタンアミド及びその塩類

⑥2―(メチルアミノ)―1―フェニルペンタン―1―オン及びその塩類

⑦メチル=2―[1―(シクロヘキシルメチル)―1H―インドール―3―カルボキサミド]―3,3―ジメチルブタノアート及びその塩類

⑧N―メチル―1―(チオフェン―2―イル)プロパン―2―アミン及びその塩類

※③⑤:1961年の麻薬に関する単一条約の附表Ⅰに追加

上記以外:向精神薬に関する条約の附表Ⅱに追加

(2) 次の2物質を麻薬向精神薬原料に指定した。

①4―アニリノ―1―フェネチルピペリジン及びその塩類

②1―フェネチルピペリジン―4―オン及びその塩類

2 麻薬及び向精神薬取締法施行令の一部改正

次の2物質を特定麻薬向精神薬原料に指定した。

①4―アニリノ―1―フェネチルピペリジン及びその塩類

②1―フェネチルピペリジン―4―オン及びその塩類

3 施行規則の一部改正

今回、麻薬向精神薬原料に指定した2物質のうち、一定濃度以下のものについては、麻薬向精神薬原料に関する規制の適用を除外することとし、これらの物質として50%を超えて含有する物について、別表第三に追加指定した。

①4―アニリノ―1―フェネチルピペリジンとして50%を超えて含有する物

②1―フェネチルピペリジン―4―オンとして50%を超えて含有する物

4 施行期日

公布の日(平成29年7月26日)から起算して30日を経過した日(平成29年8月25日)から施行する。

第3 留意事項

1 麻薬関係

(1) 医薬品製造業者、研究者及びその他の者が業務又は研究のため、今般麻薬に指定される物質(以下「麻薬指定物質」という。)を継続して取り扱う場合には、改正政令の施行日以降、麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号)による規制を受けることから、施行日までにあらかじめ麻薬研究者等の免許取得等必要な手続を行わせるとともに、記録、保管、届出等の規制事項について指導し、管理不備に起因する事故が発生しないよう指導されたい。

(2) 既に麻薬研究者等の免許を取得している者が、麻薬指定物質を取り扱う場合についても、(1)と同様に記録、保管、届出等の規制事項について指導し、管理不備に起因する事故が発生しないよう指導されたい。

(3) (1)及び(2)について、同法第49条等の規定に基づく麻薬研究者等の届出書に記載する麻薬指定物質の期初在庫数量については、施行日現在の在庫数量を記載するよう指導されたい。

(4) 医薬品製造業者、研究者及びその他の者が所有している麻薬指定物質のうち、今後必要としないものについては、改正政令の施行日までに廃棄するよう指導されたい。なお、麻薬指定物質を廃棄するときは、焼却等当該物質を回収することが困難となるような方法で行うよう指導されたい。

(5) 改正政令の施行日以降に麻薬指定物質を発見した場合は、所定の調査を行い、状況に応じた措置をとられたい。

2 特定麻薬向精神薬原料関係

(1) 麻薬等原料輸入業者及び麻薬等原料輸出業者のうち、

ア 現に、今般新たに指定された4―アニリノ―1―フェネチルピペリジン及びその塩類及び1―フェネチルピペリジン―4―オン及びその塩類(以下「特定麻薬向精神薬原料指定物質」という。)以外の特定麻薬向精神薬原料(以下「他の特定麻薬向精神薬原料」という。)を取り扱う者に対しては、施行日以降、特定麻薬向精神薬原料指定物質を取り扱う場合には、他の特定麻薬向精神薬原料と同様、記録、保管、届出等を行うことについて指導されたい。

イ 新たに特定麻薬向精神薬原料を取り扱うこととなる者に対しては、施行日以降、特定麻薬向精神薬原料指定物質を輸入(輸出)する場合には、特定麻薬向精神薬原料としての規制の適用を受けることとなるので、輸入(輸出)の都度、地方厚生(支)局麻薬取締部(支所)を経由し、厚生労働大臣へ事前の届出を行うこと等について指導されたい。

(2) 麻薬等原料製造業者、麻薬等原料卸小売業者が業務のため、施行日以降、特定麻薬向精神薬原料指定物質を継続して取り扱う場合には、特定麻薬等原料製造業者及び特定麻薬等原料卸小売業者(以下「特定麻薬等原料製造業者等」という。)としての規制の適用を受けることとなるので、施行日以降であって取り扱うこととなる日までにあらかじめ(施行日と取り扱うこととなる日が同日の場合は施行日に)特定麻薬等原料製造業者等の届出等必要な手続きを行わせるとともに、記録、保管、届出等を行うことについて指導されたい。

(3) 現に、他の特定麻薬向精神薬原料を取り扱う特定麻薬等原料製造業者等に対しては、施行日以降、特定麻薬向精神薬原料指定物質を取り扱う場合には、他の特定麻薬向精神薬原料と同様、記録、保管、届出等を行うことについて指導されたい。

第4 物質の構造式等

1 麻薬

(1) 化学名:N―(アダマンタン―1―イル)―1―(5―フルオロペンチル)―1H―インダゾール―3―カルボキサミド

通称:APINACA N―(5―fluoropentyl)誘導体

構造:

(2) 化学名:2―(エチルアミノ)―1―(4―メチルフェニル)プロパン―1―オン

通称:4―MEC,4―Metylethcathinone

構造:

(3) 化学名:3,4―ジクロロ―N―[2―(ジメチルアミノ)シクロヘキシル]―N―メチルベンズアミド

通称:U―47700

構造:

(4) 化学名:2―フェニル―2―(ピペリジン―2―イル)酢酸エチルエステル

通称:Ethylphenidate

構造:

(5) 化学名:N―(1―フェネチルピペリジン―4―イル)―N―フェニルブタンアミド

通称:Butyrfentanyl

構造:

(6) 化学名:2―(メチルアミノ)―1―フェニルペンタン―1―オン

通称:Pentedrone

構造:

(7) 化学名:メチル=2―[1―(シクロヘキシルメチル)―1H―インドール―3―カルボキサミド]―3,3―ジメチルブタノアート

通称:MDMB―CHMICA

構造:

(8) 化学名:N―メチル―1―(チオフェン―2―イル)プロパン―2―アミン

通称:Methiopropamine

構造:

2 特定麻薬向精神薬原料

(1) 化学名:4―アニリノ―1―フェネチルピペリジン

通称:ANPP

構造:

(2) 化学名:1―フェネチルピペリジン―4―オン

通称:NPP

構造:

第5 その他

1 「輸入及び輸出の届出を要しない麻薬向精神薬原料の量」等について上記特定麻薬向精神薬原料指定物質は、ごく少量でも乱用のおそれがある麻薬N―(1―フェネチル―4―ピペリジル)プロピオンアニリド(別名フェンタニル)の原材料であることから、その不正製造防止のため、施行規則第45条の5で定める「輸入及び輸出の届出を要しない麻薬向精神薬原料の量」及び第45条の6で定める「事故の届出を要する数量」については定めないこととした。

よって、特定麻薬向精神薬原料指定物質については、数量に関係なく、輸出入及び事故の際には届出が必要であるため注意されたい。

2 指定薬物の指定について

上記麻薬指定物質は、現在、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条第15項に規定する指定薬物として指定しているが、改正政令の施行に伴い、指定薬物の指定から外れ、指定薬物ではなくなるので御了知いただきたい。