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○有料老人ホームを対象とした指導の強化について

(平成27年3月30日)

(老高発0330第1号)

(各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長あて厚生労働省老健局高齢者支援課長通知)

(公印省略)

「有料老人ホームの定期実態調査の実施について」(平成26年10月22日付け厚生労働省老健局高齢者支援課事務連絡)について、別添のとおりとりまとめたので情報提供する。

単身又は夫婦のみの高齢者世帯が大幅に増加する中で、高齢者が安心して暮らせる住まいと生活に係る福祉サービス等の一体的な供給が必要とされているなかで、高齢者向け住まいの適切な確保に当たっては、有料老人ホームの適確な把握や指導が必須であると考えるが、今回の調査結果を踏まえると、一層の指導の強化が必要であると考えられるため、下記について、適切な取組の実施をお願いする。

なお、今後、有料老人ホームに関する指導の徹底を図るため、各地方公共団体の担当者を対象とした全国会議の開催を検討しているところであり、詳細な議題や日程については今後、改めて通知する予定であることを申し添える。

1.フォローアップ調査(第6回)の結果について

(1) 有料老人ホームの届出状況、指導状況について

これまで累次にわたり有料老人ホームの届出促進、適切な指導監督を求めてきたところであるが、今回の調査結果でも昨年に引き続き、有料老人ホームの届出手続が進んでいない実態が見受けられた。一方で、未届件数の増加は、各地方公共団体における実態把握が進展している結果でもあるため、「有料老人ホームの届出促進等に関する総合的な取り組みの徹底について」(平成19年3月20日付け厚生労働省老健局計画課長、振興課長通知)等を踏まえ、関係機関と連携して、更なる届出促進のための取組の徹底をお願いしたい。

今後の未届施設の届出や指導等の状況については、本年7月1日時点の状況について、第7回フォローアップを行う予定としている。様式等については別途通知する予定である。これまで本調査は10月に実施していたが、今後は、有料老人ホームの重要事項説明書の提出を受ける時期と合わせることとする。

関係部局や市区町村との連携体制を構築し、一体となって取り組んでいただくようお願いする。

(2) 有料老人ホームの前払金の保全措置の状況について

今回の調査結果では、老人福祉法(昭和38年法律第133号)第29条第7項の規定に基づく前払金の保全措置が義務付けられている施設のうち、保全措置が講じられていない施設が多数存在し、法令遵守が図られていない実態が確認された。調査開始以降、違反物件の割合が1割を初めて下回り、一定程度の改善傾向は見られた。しかしながら、こうした違法な有料老人ホームが依然として多数存在している都道府県等があることは大変遺憾であり、有料老人ホームの市場全体の信頼を揺るがしかねない事態である。

有料老人ホームの入居者を保護する観点から、貴団体においては、有料老人ホームの事業者に対して、以下の①及び②に係る指導を徹底していただきたい。

① 前払金の保全措置を講じていないことは、法令に違反する行為であることをから、前払金の徴収を行う場合には、所要の措置を講ずる必要があることを、貴団体管内の有料老人ホーム事業者に対して周知徹底を図ること。

② 前払金の保全措置を講じていない有料老人ホームの事業者に対して、老人福祉法第29条第9項に基づく検査、同条第11項に基づく改善命令等、速やかに改善に向けた取組を実施すること。なお、検査の拒否や改善命令に対する違反等を行った事業者に対しては、同法第39条及び第40条に基づく罰則を適用すること。

特に②に関しては、今回の調査結果においても、保全措置を講じていない施設に対し、指導を行った件数が違法な有料老人ホーム件数の約半数に留まっていることから、指導を実施していない団体においては、取組の徹底をお願いしたい。違反物件がない自治体においても、新規入居者に対しても引き続き保全措置を講じるよう、引き続き、事業者に対する適切な対応をお願いしたい。

また、保全措置を講じる意思はあるものの、取引条件等で銀行保証等を利用することが困難な有料老人ホーム事業者に対しては、必ずしも担保を必要としない「公益社団法人全国有料老人ホーム協会」による「入居者生活保証制度」を活用することなどが考えられるので、適確な指導をお願いしたい。

なお、介護保険法に基づく「特定施設入居者生活介護」、「地域密着型特定施設入居者生活介護」、「介護予防特定施設入居者生活介護」の事業所としての指定を受けている有料老人ホームに対しては、適正な事業の運営ができているかどうか、これらの指定権者と密接に連携して精査し、必要な指導を厳正に行っていただきたい。

2.有料老人ホーム設置運営標準指導指針の改正について

既存建築物や小規模建築物を活用する有料老人ホームにおいては、有料老人ホーム設置運営標準指導指針(以下「標準指導指針」という。)への適合を義務と解釈し、廊下幅等の適合が困難であることを理由に、本来の義務である有料老人ホームとしての届出を行わないなどの指摘があることを踏まえ、今般、「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について(平成14年7月18日付け老発第0718003号、最終改正・平成27年3月30日付け老発0330第3号)」により、標準指導指針の改正を行ったところである。

今後、今回の標準指導指針の改正内容を踏まえて、届出の促進に向けた以下の取り組みを実施することについてもご配慮願いたい。

① 標準指導指針の改正内容に配慮し、各地方公共団体としての指導指針(以下「指導指針」という。)を速やかに整備すること。

② 既存建築物や小規模建築物を活用して有料老人ホームを運営している場合については、代替措置や将来の改善計画の策定など特性に応じた配慮を行うなど、事業者が届出をしやすい環境を構築すること。

③ 指導指針を届出基準として扱うことなく、有料老人ホームとしての実態がある場合には、適切に届出を受理すること。

④ 届出を行っていない有料老人ホームの設置者に対しては、老人福祉法上は届出の有無にかかわらず有料老人ホームとして扱われることを丁寧に説明し、適切に届出を行うように指導すること。

3.権利金等の受領禁止規定に係る経過措置の終了について

平成24年4月1日に施行した改正老人福祉法により、有料老人ホームにおいては権利金その他の金品の受領が禁止となっているが、平成24年3月31日までに届出がなされている有料老人ホームについては、経過措置が設けられていた(平成23年法律第72号附則第10条第3項)。

しかしながら、平成27年4月1日以降は当該経過措置が適用されず、以後は全ての有料老人ホームにおいて、権利金その他の金品を受領することができないため、今後の指導ではご留意願いたい。

4.有料老人ホームに対するスプリンクラー設置の促進

消防法施行令(昭和36年政令第37号)の改正により、平成27年4月1日以降、火災発生時に自力で避難することが困難な者が入所する社会福祉施設(同令別表第一(6)項ロに掲げる施設)において、現行制度では延べ面積275m2以上のものに設置が義務付けられているスプリンクラー設備について、原則として延べ面積にかかわらず設置することが義務付けられることとされている(既存施設については、平成30年3月31日まで経過措置が設けられている)。

有料老人ホームについては、避難が困難な要介護者を主として入居させるものが、同令別表第一(6)項ロに掲げる施設に該当することとされていることから、特に既存の有料老人ホームのうち、スプリンクラー設備を設置していないものを運営している事業者に対しては、同令の改正内容を周知し、消防部局への相談などを踏まえた適切な改修の実施を求める指導などを適切に実施していただきたい。

また、スプリンクラー設備の設置にあたっては、「地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金」を活用できることとなっていることから、事業者に対するスプリンクラーの設置を指導する場合には、当該助成制度を併せて周知することにより、既存の有料老人ホームのスプリンクラー設置が着実に実施されるよう促していただきたい。

【既存施設のスプリンクラー設備等整備事業】

① 1,000m2以上の場合 17,500円/m2

② 1,000m2未満の場合 9,260円/m2

③ ②かつ消火ポンプユニット等を設置する場合 9,260円/m2+232万円まで

以上

参照条文

1.有料老人ホームに対する指導

○老人福祉法(昭和38年法律第133号)

(届出等)

第29条 有料老人ホーム(老人を入居させ、入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供又はその他の日常生活上必要な便宜であつて厚生労働省令で定めるもの(以下「介護等」という。)の供与(他に委託して供与をする場合及び将来において供与をすることを約する場合を含む。)をする事業を行う施設であつて、老人福祉施設、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居その他厚生労働省令で定める施設でないものをいう。以下同じ。)を設置しようとする者は、あらかじめ、その施設を設置しようとする地の都道府県知事に、次の各号に掲げる事項を届け出なければならない。

一~七 (略)

2 前項の規定による届出をした者は、同項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、変更の日から一月以内に、その旨を当該都道府県知事に届け出なければならない。

3 第一項の規定による届出をした者は、その事業を廃止し、又は休止しようとするときは、その廃止又は休止の日の一月前までに、その旨を当該都道府県知事に届け出なければならない。

4~5 (略)

6 有料老人ホームの設置者は、家賃、敷金及び介護等その他の日常生活上必要な便宜の供与の対価として受領する費用を除くほか、権利金その他の金品を受領してはならない。

7 有料老人ホームの設置者のうち、終身にわたつて受領すべき家賃その他厚生労働省令で定めるものの全部又は一部を前払金として一括して受領するものは、当該前払金の算定の基礎を書面で明示し、かつ、当該前払金について返還債務を負うこととなる場合に備えて厚生労働省令で定めるところにより必要な保全措置を講じなければならない。

8 (略)

9 都道府県知事は、この法律の目的を達成するため、有料老人ホームの設置者若しくは管理者若しくは設置者から介護等の供与を委託された者(以下「介護等受託者」という。)に対して、その運営の状況に関する事項その他必要と認める事項の報告を求め、又は当該職員に、関係者に対して質問させ、若しくは当該有料老人ホーム若しくは当該介護等受託者の事務所若しくは事業所に立ち入り、設備、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

10 (略)

11 都道府県知事は、有料老人ホームの設置者が第4項から第8項までの規定に違反したと認めるとき、入居者の処遇に関し不当な行為をし、又はその運営に関し入居者の利益を害する行為をしたと認めるとき、その他入居者の保護のため必要があると認めるときは、当該設置者に対して、その改善に必要な措置を採るべきことを命ずることができる。

12 (略)

(有料老人ホーム協会)

第30条 その名称中に有料老人ホーム協会という文字を用いる一般社団法人は、有料老人ホームの入居者の保護を図るとともに、有料老人ホームの健全な発展に資することを目的とし、かつ、有料老人ホームの設置者を社員(以下この章において「会員」という。)とする旨の定款の定めがあるものに限り、設立することができる。

2 前項に規定する定款の定めは、これを変更することができない。

3 第1項に規定する一般社団法人(以下「協会」という。)は、成立したときは、成立の日から2週間以内に、登記事項照明書及び定款の写しを添えて、その旨を、厚生労働大臣に届け出なければならない。

4 協会は、会員の名簿を公衆の縦覧に供しなければならない。

(名称の使用制限)

第31条 協会でない者は、その名称中に有料老人ホーム協会という文字を用いてはならない。

2 協会に加入していない者は、その名称中に有料老人ホーム協会会員という文字を用いてはならない。

第39条 第18条の2第1項又は第29条第11項の規定による命令に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

第40条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした者は、30万円以下の罰金に処する。

一 第29条第9項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又はこれらの規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくはこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。

二 第29条第1項から第3項までの規定による届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。

三・四 (略)

○老人福祉法附則(平成23年法律第72号)

(施行期日)

第1条 この法律は、平成24年4月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

1・2 (略)

(老人福祉法の一部改正に伴う経過措置)

第10条

1・2 (略)

3 新老人福祉法第29条第6項の規定は、施行日の前日までに旧老人福祉法第29条第1項の規定による届出がされた同項に規定する有料老人ホームについては、平成27年4月1日以降に受領する金品から適用する。

4 (略)

2.特定施設入居者生活介護等の事業所に対する指導

○介護保険法(平成9年法律第123号)

(指定の取消し等)

第77条 都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該指定居宅サービス事業者に係る第41条第1項本文の指定を取り消し、又は期間を定めてその指定の全部若しくは一部の効力を停止することができる。

一~三 (略)

四 指定居宅サービス事業者が、第74条第2項に規定する指定居宅サービスの事業の設備及び運営に関する基準に従って適正な指定居宅サービスの事業の運営をすることができなくなったとき。

五~九 (略)

十 前各号に掲げる場合のほか、指定居宅サービス事業者が、この法律その他国民の保健医療若しくは福祉に関する法律で政令で定めるもの又はこれらの法律に基づく命令若しくは処分に違反したとき。

十一~十三 (略)

2 (略)

(指定の取消し等)

第78条の10 市町村長は、次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該指定地域密着型サービス事業者に係る第42条の2第1項本文の指定を取り消し、又は期間を定めてその指定の全部若しくは一部の効力を停止することができる。

一~四 (略)

五 指定地域密着型サービス事業者が、第78条の4第2項又は第5項に規定する指定地域密着型サービスの事業の設備及び運営に関する基準に従って適正な指定地域密着型サービスの事業の運営をすることができなくなったとき。

六~十一 (略)

十二 前各号に掲げる場合のほか、指定地域密着型サービス事業者が、この法律その他国民の保健医療若しくは福祉に関する法律で政令で定めるもの又はこれらの法律に基づく命令若しくは処分に違反したとき。

十三~十五 (略)

(指定の取消し等)

第115条の9 都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該指定介護予防サービス事業者に係る第53条第1項本文の指定を取り消し、又は期間を定めてその指定の全部若しくは一部の効力を停止することができる。

一・二 (略)

三 指定介護予防サービス事業者が、第115条の4第2項に規定する指定介護予防サービスに係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準又は指定介護予防サービスの事業の設備及び運営に関する基準に従って適正な介護予防サービスの事業の運営をすることができなくなったとき。

四~八 (略)

九 前各号に掲げる場合のほか、指定介護予防サービス事業者が、この法律その他国民の保健医療若しくは福祉に関する法律で政令で定めるもの又はこれらの法律に基づく命令若しくは処分に違反したとき。

十~十二 (略)

2 (略)

○介護保険法施行令(平成10年政令第412号)

(指定の取消し等に係る法律)

第35条の5 法第77条第1項第10号、第78条の10第12号、第84条第1項第10号、第92条第1項第10号、第104条第1項第9号、第115条の9第1項第9号、第115条の19第11号及び第115条の29第9号の政令で定める法律は、次のとおりとする。

一~十四 (略)

十五 老人福祉法

十六~二十四 (略)

[別添]

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