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○ハンドル形電動車椅子を使用中の事故防止に向けた対応について(通知)

(平成29年3月31日)

(老高発0331第3号)

(各都道府県・各指定都市・各中核市介護保険主管部(局)長あて厚生労働省老健局高齢者支援課長通知)

(公印省略)

日頃より、介護保険行政に御尽力いただき、厚く御礼申し上げます。

ハンドル形電動車椅子については、主に歩行補助の必要性が高い高齢者の日常的な移動手段として使用されていますが、平成20年から平成26年までにハンドル形電動車椅子を使用中の死亡・重傷事故が51件発生しています。

これを踏まえ、昨年7月に、消費者安全調査委員会において、消費者安全法(平成21年6月5日法律第50号)第33条第1項の規定に基づく消費者安全確保の見地から、厚生労働大臣、国土交通大臣、経済産業大臣及び消費者庁長官に対し、別添「消費者安全法第33条の規定に基づく意見」(平成28年7月22日付け消安委第62号)のとおり、ハンドル形電動車椅子の貸与時等に関するリスク低減策に関する意見具申がなされたところです。

つきましては、ハンドル形電動車椅子を使用中の事故防止に向けて、今般の意見内容が適切に行われるよう、下記について御了知の上、管内市町村及び福祉用具貸与事業者等に対し、周知徹底を図っていただくようお願いします。

なお、本内容については、一般社団法人日本福祉用具供給協会及び一般社団法人全国福祉用具専門相談員協会に対し、別途通知することを申し添えます。

1 「2 厚生労働大臣への意見」の(1)に係る対応について

本意見においては、「ハンドル形電動車椅子の運用に関するリスク低減策(運転者の身体の能力及び運転適性の確認強化)(中略)を試行すること。」とされています。

これを踏まえ、厚生労働省においては、「平成29年度老人保健健康増進等事業」を活用し、具体的なリスク低減策について研究事業を進めることとしています。

<参考>「消費者安全法第33条の規定に基づく意見」(平成28年7月22日 消安委第62号)(抜粋)

2 厚生労働大臣への意見

(1) ハンドル形電動車椅子の運用に関するリスク低減策(運転者の身体の能力及び運転適性の確認強化)の試行

ハンドル形電動車椅子の運用に関するリスク低減策(運転者の身体の能力及び運転適性の確認強化)として、以下を試行すること。

① 介護保険制度を利用したレンタル利用者に対し、既に行われている身体の能力及び運転適性の確認方法に、認知機能の検査手法や運転履歴情報に基づく運転適性の確認を追加し、確認結果の経時的な変化を分析することにより身体の能力及び運転適性の低下の有無について評価すること。

運転適性の確認は、経済産業省の協力を得て、有用な運転履歴情報の検討及び現在のハンドル形電動車椅子が有する運転記録機能に運転履歴情報の保存及び出力機能を付加して活用すること。

② 身体の能力(感覚機能、運動機能、認知機能など)及び運転適性の低下が認められた利用者に対しては、貸与側が使用環境に留意し、経済産業省の協力を得て、ハンドル形電動車椅子の最高速度を下方変更し、その効果を検証すること。

2 「2 厚生労働大臣への意見」(2)に係る対応について

(1) 「2 厚生労働大臣への意見」の(2)の①に係る対応について

本意見においては、「踏切のリスクの度合い(横断距離や踏切道側面の段差高さ等)を確認し、利用予定者に確実に説明することを福祉用具関係者に周知すること。」とされています。

これを踏まえ、福祉用具専門相談員等においては、ハンドル形電動車いすの貸与に当たって、要介護者等が踏切の横断で使用することが想定される場合には、

・ 充電の残量を常時確認する

・ 踏切の手前では必ず一時停止し、左右の安全確認を行う

・ 線路に対しては直角に進行する

・ 脱輪の恐れがあることから踏切の端には寄り過ぎない

・ 段差の通過は勢いをつけず安全な速度で進行する

といった安全に使用するための留意事項について、あらかじめ説明いただきますようお願いします。

なお、迂回が可能な場合には踏切の横断を避けることはもとより、やむを得ず横断する場合でも介助者が同行することが望ましいことは言うまでもありません。

<参考>「消費者安全法第33条の規定に基づく意見」(平成28年7月22日 消安委第62号)(抜粋)

2 厚生労働大臣への意見

(2) ハンドル形電動車椅子の貸与時に関するリスク低減策の実施

① ハンドル形電動車椅子貸与時の使用環境確認では、踏切のリスクの度合い(横断距離や踏切道側面の段差高さ等)を確認し、利用予定者に確実に説明することを福祉用具関係者に周知すること。

(2) 「2 厚生労働大臣への意見」の(2)の②に係る対応について

本意見においては、「ハンドル形電動車椅子の登降坂性能(傾斜角度10°以下)を超えた急坂での使用を防ぐための警告機能が備わっていない機種が存在する。(中略)登降坂性能を超える急坂がないことを確認できない限りは、前述の警告機能を有するハンドル形電動車椅子を提供するように福祉用具関係者に周知すること。」とされています。

これを踏まえ、福祉用具専門相談員等においては、ハンドル形電動車いすの貸与に当たって、要介護者等の使用環境を十分に確認いただいた上で、登降坂性能を超える急坂での使用が想定される場合には、警告機能を有するものを選定いただきますようお願いします。

<参考>「消費者安全法第33条の規定に基づく意見」(平成28年7月22日 消安委第62号)(抜粋)

2 厚生労働大臣への意見

(2) ハンドル形電動車椅子の貸与時に関するリスク低減策の実施

② ハンドル形電動車椅子の登降坂性能(傾斜角度10°以下)を超えた急坂での使用を防ぐための警告機能が備わっていない機種が存在する。使用環境にハンドル形電動車椅子の登降坂性能を超える急坂がないことを確認できない限りは、前述の警告機能を有するハンドル形電動車椅子を提供するように福祉用具関係者に周知すること。

(3) 「2 厚生労働大臣への意見」の(2)の③に係る対応について

本意見においては、「緊急事態において使用者が単独で危険を回避できない状況も予想されるため、周囲へ緊急事態を知らせる方法の検討を福祉用具関係者に促すこと。」とされています。

これを踏まえ、福祉用具専門相談員等においては、ハンドル形電動車いすの貸与に当たって、要介護者等の使用環境を十分に確認いただいた上で、

・ 踏切の横断に際し、脱輪等により動けなくなった場合には、ハンドル形電動車いすの警音器又は周囲の協力を得て非常押しボタンを使用する

・ 急坂、畦道、段差等の走行に際し、バランスを崩す等により動けなくなった場合には、ハンドル形電動車いすの警音器を使用する

といった周囲へ緊急事態を知らせる方法について、具体的な使用場面を想定しながら検討いただくとともに、必要に応じて実際にハンドル形電動車いすを使用させながら使用方法の指導を行っていただきますようお願いいたします。

<参考>「消費者安全法第33条の規定に基づく意見」(平成28年7月22日 消安委第62号)(抜粋)

2 厚生労働大臣への意見

(2) ハンドル形電動車椅子の貸与時に関するリスク低減策の実施

③ 緊急事態において使用者が単独で危険を回避できない状況も予想されるため、周囲へ緊急事態を知らせる方法の検討を福祉用具関係者に促すこと。

3 「4 厚生労働大臣、経済産業大臣及び消費者庁長官への意見」に係る対応について

本意見においては、「関係機関及び団体の協力を得て、介護保険制度を利用したレンタル利用者に対して、運転に必要な知識の教育と危険回避に必要な技能の体験型訓練の重要性を周知し、それらへの参加を促すとともに、これらの教育・訓練を地域の特徴に合わせて継続的に実施すること。」とされています。

現在でも、都道府県警察、市町村、電動車いす安全普及協会等において、ハンドル形電動車いす利用者等に対する講習会等(以下「講習会等」という。)を実施していますが、これらの取組を一層効果的なものとするため、関係省庁と連携し、必要な検討を行ってきました。

これを踏まえ、都道府県警察においては、

・ 市町村、電動車いす安全普及協会等が講習会等を実施する場合には、その求めに応じて必要な協力を行うこと

・ 都道府県警察が講習会等を実施する場合には、市町村、電動車いす安全普及協会等からの求めに応じて開催日等の情報提供を行うとともに、福祉用具貸与事業者等の求めに応じて講習会等への参加を可能とすること

などの取組を進めることとしています。

また、電動車いす安全普及協会においては、

・ 可能な限り講習会等に模擬体験等の体験型講習を取り入れること

・ 福祉用具貸与事業者等の求めに応じて講習会等への参加を可能とすること

などの取組を進めることとしています。

市町村においても、本趣旨について御理解いただくとともに、

・ 講習会等の開催に当たって、必要に応じて都道府県警察に協力を依頼すること

・ 可能な限り講習会等に模擬体験等の体験型講習を取り入れること

・ 福祉用具貸与事業者等の求めに応じて講習会等への参加を可能とすること

などの取組を進めていただきますよう御協力をお願いします。

<参考>「消費者安全法第33条の規定に基づく意見」(平成28年7月22日 消安委第62号)(抜粋)

4 厚生労働大臣、経済産業大臣及び消費者庁長官への意見

運転に必要な知識教育と危険回避に必要な技能訓練の実施

厚生労働大臣は、関係機関及び団体の協力を得て、介護保険制度を利用したレンタル利用者に対して、運転に必要な知識の教育と危険回避に必要な技能の体験型訓練の重要性を周知し、それらへの参加を促すとともに、これらの教育・訓練を地域の特徴に合わせて継続的に実施すること。

経済産業大臣は、関係機関及び団体の協力を得て、ハンドル形電動車椅子の購入使用者に対して、運転に必要な知識の教育と危険回避に必要な技能の体験型訓練の重要性を周知し、それらへの参加を促すとともに、これらの教育・訓練を地域の特徴に合わせて継続的に実施すること。

消費者庁長官は、こうした教育・訓練が、複数の行政機関の関与を必要とすることから、本施策の遂行に当たっては、効果的な運用となるよう実施計画等について十分な調整を行うこと。

4 その他

ハンドル形電動車いすの安全な使用に向けては、公益財団法人テクノエイド協会の「福祉用具ヒヤリ・ハット情報」、電動車いす安全普及協会の「電動車いす安全利用の手引き」及び「電動車いす安全運転のすすめ(動画)」がそれぞれのホームページで閲覧が可能となっていますので、これらの情報も積極的に活用していただきますようお願いします。

<参考>

○ 公益財団法人テクノエイド協会「福祉用具ヒヤリ・ハット情報」

(http://www.techno-aids.or.jp/hiyari/)

○ 電動車いす安全普及協会「電動車いす安全利用の手引き」及び「電動車いす安全運転のすすめ(動画)」

(http://www.den-ankyo.org/guidance/safety.html)