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○子育て世代包括支援センターの設置運営について(通知)

(平成29年3月31日)

(雇児発0331第5号)

(各都道府県知事・各保健所設置市市長・各特別区区長あて厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)

(公印省略)

今般、「児童福祉法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第63号)において、母子保健法(昭和40年法律第141号)第22条の改正が行われ、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を行う「子育て世代包括支援センター」(法律上の名称は「母子健康包括支援センター」という。)が新たに規定され、市町村は同センターを設置するように努めなければならないこととされた。また、政府としては、「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月2日閣議決定)に基づき、子育て世代包括支援センターについては、平成32年度末までの全国展開を目指し取り組むこととされている。

今般、児童福祉法等の一部を改正する法律が本年4月1日から施行されることに伴い、子育て世代包括支援センターの設置運営要領について下記のとおりとし、同日より適用することとしたので、その適正かつ円滑な実施を図られたく通知する。また、各都道府県知事におかれては、貴管内市町村長(保健所設置市市長及び特別区区長を除く。)に対する周知につき配慮願いたい。

これに伴い、昭和49年12月11日発児第212号厚生事務次官通知「母子健康センターの設置について」及び昭和42年11月2日児発第677号厚生省児童家庭局長通知「母子健康センターの設置運営について」は、廃止する。

なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言である。

また、現在、子ども・子育て支援推進調査研究事業により、子育て世代包括支援センターの業務ガイドラインについて検討を行っているところであり、この結果が取りまとめられた後、パブリックコメント等の所要の手続きを経た後、送付する予定であることを申し添える。

1.目的

子育て世代包括支援センター(以下「センター」という。)は、主に妊産婦及び乳幼児の実情を把握し、妊娠・出産・子育てに関する各種の相談に応じ、必要に応じて支援プランの策定や、地域の保健医療又は福祉に関する機関との連絡調整を行い、母子保健施策と子育て支援施策との一体的な提供を通じて、妊産婦及び乳幼児の健康の保持及び増進に関する包括的な支援を行うことにより、もって地域の特性に応じた妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を提供する体制を構築することを目的とすること。

2.実施主体

市町村(特別区及び一部事務組合を含む。以下同じ。)とすること。ただし、市町村が認めた者へ委託等を行うことができる。

3.対象者

主として、妊産婦及び乳幼児並びにその保護者を対象とするが、地域の実情に応じて、18歳までの子どもとその保護者についても対象とする等、柔軟に運用することができることとすること。

4.実施場所

母子保健分野と子育て支援分野の両面からの支援が一体的に提供されるようにするため、母子保健に関する専門的な支援機能及び子育て支援に関する当事者目線での支援機能を有する施設・場所で実施すること。

ただし、必ずしも1つの施設・場所において2つの支援機能を有している必要はなく、それぞれの機能ごとに複数の施設・場所で、役割分担をしつつ必要な情報を共有しながら一体的に支援を行うことができることとする。なお、その場合は、それぞれの施設・場所をセンターと位置づけることができることとする。

5.事業内容

センターでは、以下の(1)から(4)までの支援を行うこととすること。また、これらに加えて、地域の実情に応じて、(5)の母子保健事業や(6)の子育て支援事業を行うことや、地域において不足している母子保健事業や子育て支援事業を実施するための体制づくりを行うことができること。

(1) 妊産婦及び乳幼児等の実情を把握すること

妊娠・出産・産後・子育ての期間を通じて、妊産婦及び乳幼児等(以下「妊産婦等」という。)の母子保健や子育てに関する支援に必要となる実情の把握を継続的に実施すること。以下のアからウまでの支援は主として妊娠・出産・産後の期間において、エの支援は主として子育て期において行われることが想定される。

ア 母子保健に関する専門知識を有する保健師、助産師、看護師及びソーシャルワーカー(社会福祉士等)(以下「保健師等」という。)が、妊娠の届出等の機会を通して得た情報を基に、面接や電話等により妊産婦等と定期的に連絡をとることにより、対象地域の妊産婦等の母子保健事業の利用状況、身体的・精神的状態、生活習慣、生活環境、家庭の養育力、転出入の状況、その他困りごと等を継続的に把握すること。

イ 妊産婦等の支援台帳を作成する。支援台帳には、氏名、分娩予定日、状況等の項目を定め、必要となる情報をすぐに活用できる体制を整えること。

ウ 保健医療又は福祉の関係機関に出向き、積極的に情報の収集に努めること。

エ 利用者支援専門員(一定の実務経験を有し、子育て支援員研修を受講した者をいう。)、地域子育て支援拠点の専任職員等(以下「利用者支援専門員等」という。)又は保健師等が、相談を通じて、妊産婦等のみならず子育て家庭の個別のニーズを把握し、相談や支援等に係る記録を蓄積すること。

(2) 妊娠・出産・子育てに関する各種の相談に応じ、必要な情報提供・助言・保健指導を行うこと

センターは、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援のため、妊産婦等からの各種の相談に応じることとする。複数の施設・場所で役割分担をして実施する場合においても、相談を受けた施設・場所において、担当外の相談内容も含めて聞き取り、センター間で必要な情報を共有し、(3)及び(4)の支援を行うこと。

以下のア及びイの支援は主として妊娠・出産・産後の期間において、ウ及びエの支援は主として子育て期において行われることが想定される。

ア 保健師等が、妊娠・出産・子育て等の母子保健に関する相談に応じ、必要な助言・保健指導を行うこと。

イ 保健師等が、(1)で把握した情報に基づき、利用可能な母子保健サービス等を選定し情報提供すること。

ウ 利用者支援専門員等又は保健師等が、子育て支援に関する相談に応じ、必要な助言を行うこと。

エ 利用者支援専門員等又は保健師等が、(1)で把握した情報に基づき、利用可能な子育て支援サービスを選定し情報提供すること。

(3) 支援プランを策定すること

保健師等が、妊娠・出産・産後・子育ての期間を通じて、必要に応じ、個別の妊産婦等を対象とした支援プランを策定すること。なお、支援プランの策定は、主として妊娠・出産・産後の期間において行われることが想定される。

ア 保健師等が、心身の不調や育児不安があること等から手厚い支援を要する者に対する支援の方法や、対応方針について検討等を実施する協議会又はケース検討会議等を設け、関係機関と協力して支援プランを策定すること。

イ 保健師等が、支援プランの効果を評価・確認しながら、必要に応じて見直しを行い、妊産婦等を包括的・継続的に支えていくように努めること。

(4) 保健医療又は福祉の関係機関との連絡調整を行うこと

妊娠・出産・産後・子育ての期間を通じて、保健医療又は福祉の関係機関との連絡調整を行うこと。なお、以下のア及びイの支援は主として妊娠・出産・産後の期間において行われることが想定され、ウの支援は主として子育て期において行われることが想定される。

ア 保健師等が、(1)で把握した情報に基づき、必要な支援を選択し、速やかに保健所、児童相談所、医療機関、児童福祉施設その他の関係機関の担当者につなぐとともに、担当者間で定期的に連絡をとり必要な情報を共有すること。

イ 妊産婦等に対する支援が包括的に提供されるよう、保健師等が中心となって、関係機関との協議の場を設けるとともに、ネットワークづくりを行うこと。

ウ 利用者支援専門員等又は保健師等が、(1)で把握した情報に基づき、保育所等や地域の子育て支援事業等から必要な支援を選択し、速やかに関係機関につなぐとともに、担当者間で定期的に連絡をとり必要な情報を共有すること。

(5) 母子保健事業

地域の実情に応じて、妊娠に関する普及啓発、妊娠の届出・母子健康手帳の交付、母親学級・両親学級、妊産婦健康診査、妊産婦訪問指導、低体重児の届出、新生児訪問指導、未熟児訪問指導、乳幼児健康診査、予防接種、産前・産後サポート事業、産後ケア事業等の母子保健事業を実施すること。

(6) 子育て支援事業

地域の実情に応じて、乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業、子育て短期支援事業、地域子育て支援拠点事業、一時預かり事業、病児保育事業、子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポート・センター事業)等の子育て支援事業を実施すること。

(7) 留意事項

① 母子保健に関する支援と子育て支援に関する支援を役割分担して実施する場合には、例として、(1)のアからウまで、(2)のア及びイ、(3)、(4)のア及びイの母子保健に関する支援と、(1)のエ、(2)のウ及びエ、(4)のウの子育て支援に関する支援を分担して実施することが考えられる。

② 一つの施設・場所で実施する場合でも、複数の施設・場所で実施する場合でも、業務を分担する場合には、個人情報の取扱いについて本人の同意を得る等個人情報の保護に十分留意の上、情報の集約・共有、記録の作成について適切に行い、できる限り情報を一元化する等、関係者で情報を共有しつつ、切れ目のない支援に当たること。

③ センターの実施に際して活用できる事業

センターの目的や基本的な事業内容等に照らせば、例えば、子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)に基づく利用者支援事業、児童福祉法(昭和22年法律第164号)に基づく子育て支援事業、市町村保健センターで実施されている母子保健事業等を活用して実施することが考えられる。

センターは、地域の実情に応じた様々な事業展開が想定され、各種事業をどのように組み合わせて実施するかは、各市町村において適切に選択すること。

また、センターの実施に際しては、地域の民間団体等と協力して取り組むことも重要である。

④ 市区町村子ども家庭総合支援拠点との関係

児童福祉法第10条の2の規定に基づく市区町村子ども家庭総合支援拠点(以下「支援拠点」という。)は、管内に所在するすべての子どもとその家庭及び妊産婦等を対象とし、その福祉に関し、必要な支援に係る業務を行い、特に要支援児童及び要保護児童等への支援業務の強化を図るものとされている。支援拠点は、特定妊婦等を対象とした相談支援等を行う役割も担っているため、センターが行う母子保健施策及び子育て支援施策との連携、調整を図るものとされており、より効果的な支援につなげるために、同一の主担当機関が、センターと支援拠点の2つの機能を担い、一体的に支援を実施することが求められる。

また、センターと支援拠点をそれぞれ別の主担当機関が機能を担う場合には、適切に情報を共有するとともに、子どもの発達段階や家庭の状況等に応じて連携して対応し、継続した支援が行えるような体制を整備(それぞれ別の主担当機関が機能を担うことによる漏れを防止するため、担うべき機能を所掌事務等で明確化するなど)することが必要である。

6.担当職員

(1) 必要職員体制

① 保健師等を1名以上配置すること。なお、担当職員としてソーシャルワーカー(社会福祉士等)のみを配置する場合には、近隣の市町村保健センター等の保健師、助産師又は看護師との連携体制を確保すること。

② 上記に加え、利用者支援専門員を1名以上配置すること。

ただし、地域の実情、センターの規模や職員構成等に鑑み、保健師等が利用者支援専門員が行う業務についても対応できると判断できる場合は、この限りでない。

③ 複数の施設・場所で、5(7)①のように、母子保健に関する支援と子育て支援に関する支援を役割分担して実施する場合には、以下のア及びイのとおりとすること。

ア 母子保健に関する支援を実施する施設・場所には、母子保健に関する専門知識を有する保健師等を1名以上配置すること。

なお、担当職員としてソーシャルワーカー(社会福祉士等)のみを配置する場合には、近隣の市町村保健センター等の保健師、助産師又は看護師との連携体制を確保すること。

イ 子育て支援に関する支援を実施する施設・場所には、利用者支援専門員を1名以上配置すること。

また、母子保健に関する支援を実施するセンターや近隣の市町村保健センター等の保健師、助産師又は看護師との連携体制を確保すること。

④ 必要に応じて、業務を補助する者を配置すること。

(2) 留意事項

① センターの実施に当たり利用者支援事業を活用する場合は、当該事業の要件に従うこと。

② 担当職員は専任が望ましく、担当職員を各種研修会、セミナー等に積極的に参加させる等、担当職員の資質の向上に努めること。