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○障害福祉サービスの利用等にあたっての意思決定支援ガイドラインについて

(平成29年3月31日)

(障発0331第15号)

(各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長あて厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)

(公印省略)

地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律(平成24年法律第51号)の附則第3条においては、法施行後3年を目途として障害福祉サービスの在り方等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとされており、「障害者の意思決定支援の在り方」が見直し事項の一つに挙げられています。

これを踏まえ、社会保障審議会障害者部会では、平成27年4月から見直しに向けた検討を行い、平成27年12月に今後の取組について報告書を取りまとめ、同報告書では、意思決定支援の定義や意義、標準的なプロセス、留意点を取りまとめた「意思決定支援ガイドライン(仮称)」を作成し、事業者や成年後見の担い手を含めた関係者間で共有し、普及を図るべき旨が盛り込まれたところです。

今般、これまでの障害者総合福祉推進事業による研究報告書を踏まえ、「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」を作成したので通知します。

各都道府県、指定都市及び中核市におかれては、障害者の意思決定の支援がより一層適切に図られるよう、管内市区町村、指定事業者及び指定相談支援事業者に対して周知いただくとともに、研修など様々な機会を通じて本ガイドラインの普及に努めていただきますようお願いします。

なお、この通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言であることを申し添えます。

障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン

Ⅰ.はじめに

1.ガイドライン策定の背景

「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」の附則第3条においては、法施行後3年を目途として障害福祉サービスの在り方等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとされており、「障害者の意思決定支援の在り方」が見直し事項の一つに挙げられている。

社会保障審議会障害者部会では、平成27年4月から見直しに向けた検討を行い、平成27年12月に今後の取組について報告書を取りまとめた。

同報告書では、障害者の意思決定支援の今後の取組について以下の記載が盛り込まれており、「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)は、これらの内容を踏まえて作成されたものである。

※ 「障害者総合支援法施行3年後の見直しについて」(平成27年12月14日社会保障審議会障害者部会報告書)より抜粋

5.障害者の意思決定支援・成年後見制度の利用促進の在り方について

(2) 今後の取組

(基本的な考え方)

○ 日常生活や社会生活等において障害者の意思が適切に反映された生活が送れるよう、障害福祉サービスの提供に関わる主体等が、障害者の意思決定の重要性を認識した上で、必要な対応を実施できるようにするとともに、成年後見制度の適切な利用を促進するため、以下のような取組を進めるべきである。

(意思決定支援ガイドライン)

○ 意思決定支援の定義や意義、標準的なプロセス(サービス等利用計画や個別支援計画の作成と一体的に実施等)、留意点(意思決定の前提となる情報等の伝達等)を取りまとめた「意思決定支援ガイドライン(仮称)」を作成し、事業者や成年後見の担い手を含めた関係者間で共有し、普及を図るべきである。あわせて、意思決定支援の質の向上を図るため、このようなガイドラインを活用した研修を実施するとともに、相談支援専門員やサービス管理責任者等の研修のカリキュラムの中にも位置付けるべきである。

なお、ガイドラインの普及に当たっては、その形式的な適用にとらわれるあまり、実質的な自己決定権が阻害されることのないよう留意する必要がある。

(障害福祉サービスにおける意思決定支援)

○ また、障害福祉サービスの具体的なサービス内容の要素として「意思決定支援」が含まれる旨を明確化すべきである。

2.ガイドラインの趣旨

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「障害者総合支援法」という。)第1条の2(基本理念)においては、障害者本人(以下「本人」という。)が「どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保」される旨を規定し、指定相談支援事業者及び指定障害福祉サービス事業者等(以下「事業者」という。)に対し、障害者等の意思決定の支援に配慮するよう努める旨を規定する(第42条、第51条の22)など、「意思決定支援」を重要な取組として位置づけている。

また、障害者基本法においては、国及び地方公共団体は、障害者の意思決定の支援に配慮しつつ、障害者及びその家族その他の関係者に対する相談業務、成年後見制度その他の障害者の権利利益の保護等のための施策又は制度が、適切に行われ又は広く利用されるようにしなければならないと定めている(第23条)。

ノーマライゼーション理念の浸透や障害者の権利擁護が求められるなかで、障害者の自己決定の尊重に基づいて支援することの重要性は誰もが認識するところである。しかし、自己決定が困難な障害者に対する支援の枠組みや方法等については必ずしも標準的なプロセスが示されていない。ガイドラインは、事業者がサービス等利用計画や個別支援計画を作成してサービスを提供する際の障害者の意思決定支援についての考え方を整理し、相談支援や、施設入所支援等の障害福祉サービス(以下「サービス」という。)の現場において意思決定支援がより具体的に行われるための基本的考え方や姿勢、方法、配慮されるべき事項等を整理し、事業者がサービスを提供する際に必要とされる意思決定支援の枠組みを示し、もって障害者の意思を尊重した質の高いサービスの提供に資することを目的とするものである。

ガイドラインは、事業者がサービスを提供する際に行う障害者の意思決定支援の枠組みを示すものであるが、本人、事業者、家族や成年後見人等(保佐人及び補助人並びに任意後見人を含む。以下同じ。)の他に、必要に応じて教育関係者や医療関係者、福祉事務所、市区町村の虐待対応窓口や保健所等の行政関係機関、障害者就業・生活支援センター等の就労関係機関、ピアサポーター等の障害当事者による支援者、本人の知人等の関係者、関係機関等(以下「関係者等」という。)、障害者に関わる多くの人々にも意思決定支援への参加を促すものである。

障害者の意思決定支援については、それぞれの障害の状態等において個別性が高く、その支援方法も多様なものである。事業者は、ガイドラインの内容を踏まえ、各事業者の実情や個々の障害者の態様に応じて不断に意思決定支援に関する創意工夫を図り、質の向上に努めなければならない。

また、事業者の意思決定支援に関する取組の蓄積を踏まえ、ガイドラインの内容も見直していくことが必要である。

Ⅱ.総論

1.意思決定支援の定義

本ガイドラインにおける意思決定支援は、障害者への支援の原則は自己決定の尊重であることを前提として、自ら意思を決定することが困難な障害者に対する支援を意思決定支援として次のように定義する。

意思決定支援とは、自ら意思を決定することに困難を抱える障害者が、日常生活や社会生活に関して自らの意思が反映された生活を送ることができるように、可能な限り本人が自ら意思決定できるよう支援し、本人の意思の確認や意思及び選好を推定し、支援を尽くしても本人の意思及び選好の推定が困難な場合には、最後の手段として本人の最善の利益を検討するために事業者の職員が行う支援の行為及び仕組みをいう。

2.意思決定を構成する要素

障害者の意思決定を構成する要素としては、次の三つが考えられる。

(1) 本人の判断能力

本人の障害による判断能力の程度は、意思決定に大きな影響を与える。

例えば、何を食べるか、何を着るかといった日常生活における意思決定は可能だが、施設から地域生活への移行等住まいの場の選択については意思決定に支援が必要であるといった事例が考えられる。意思決定を進める上で、本人の判断能力の程度についての慎重なアセスメントが重要となる。

(2) 意思決定支援が必要な場面

意思決定支援は、次のような場面で必要とされることが考えられる。

① 日常生活における場面

日常生活における意思決定支援の場面としては、例えば、食事、衣服の選択、外出、排せつ、整容、入浴等基本的生活習慣に関する場面の他、複数用意された余暇活動プログラムへの参加を選ぶ等の場面が考えられる。日頃から本人の生活に関わる事業者の職員が場面に応じて即応的に行う直接支援の全てに意思決定支援の要素が含まれている。

日常生活における場面で意思決定支援を継続的に行うことにより、意思が尊重された生活体験を積み重ねることになり、本人が自らの意思を他者に伝えようとする意欲を育てることにつながる。

日常生活における支援場面の中で、継続的に意思決定支援を行うことが重要である。

② 社会生活における場面

障害者総合支援法の基本理念には、全ての障害者がどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられない旨が定められていることに鑑みると、自宅からグループホームや入所施設等に住まいの場を移す場面や、入所施設から地域移行してグループホームに住まいを替えたり、グループホームの生活から一人暮らしを選ぶ場面等が、意思決定支援の重要な場面として考えられる。

体験の機会の活用を含め、本人の意思確認を最大限の努力で行うことを前提に、事業者、家族や、成年後見人等の他、必要に応じて関係者等が集まり、判断の根拠を明確にしながら、より制限の少ない生活への移行を原則として、意思決定支援を進める必要がある。

(3) 人的・物理的環境による影響

意思決定支援は、本人に関わる職員や関係者による人的な影響や環境による影響、本人の経験の影響等を受ける。

例えば、意思決定支援に関わる職員が、本人の意思を尊重しようとする態度で接しているかどうかや、本人との信頼関係ができているかどうかが影響することが考えられる。また、意思決定の場面に立ち会う家族等の関係者との関係性も影響を与える可能性がある。

環境に関しては、初めての慣れない場所で意思決定支援が行われた場合、本人が過度に緊張してしまい、普段通りの意思表示ができないことも考えられる。また、サービスの利用の選択については、体験利用を活用し経験に基づいて選択ができる方法の活用など経験の有無によっても影響されることが考えられる。

3.意思決定支援の基本的原則

意思決定支援の基本的原則を次のように整理する。

(1) 本人への支援は、自己決定の尊重に基づき行うことが原則である。本人の自己決定にとって必要な情報の説明は、本人が理解できるよう工夫して行うことが重要である。また、幅広い選択肢から選ぶことが難しい場合は、選択肢を絞った中から選べるようにしたり、絵カードや具体物を手がかりに選べるようにしたりするなど、本人の意思確認ができるようなあらゆる工夫を行い、本人が安心して自信を持ち自由に意思表示できるよう支援することが必要である。

(2) 職員等の価値観においては不合理と思われる決定でも、他者への権利を侵害しないのであれば、その選択を尊重するよう努める姿勢が求められる。

また、本人が意思決定した結果、本人に不利益が及ぶことが考えられる場合は、意思決定した結果については最大限尊重しつつも、それに対して生ずるリスクについて、どのようなことが予測できるか考え、対応について検討しておくことが必要である。例えば、疾病による食事制限があるのに制限されている物が食べたい、生活費がなくなるのも構わず大きな買い物がしたい、一人で外出することは困難と思われるが、一人で外出がしたい等の場合が考えられる。

それらに対しては、食事制限されている食べ物は、どれぐらいなら食べても疾病に影響がないのか、あるいは疾病に影響がない同種の食べ物が用意できないか、お金を積み立ててから大きな買い物をすることができないか、外出の練習をしてから出かけ、さらに危険が予測される場合は後ろから離れて見守ることで対応することができないか等、様々な工夫が考えられる。

リスク管理のためには、事業所全体で取り組む体制を構築することが重要である。また、リスク管理を強調するあまり、本人の意思決定に対して制約的になり過ぎないよう注意することが必要である。

(3) 本人の自己決定や意思確認がどうしても困難な場合は、本人をよく知る関係者が集まって、本人の日常生活の場面や事業者のサービス提供場面における表情や感情、行動に関する記録などの情報に加え、これまでの生活史、人間関係等様々な情報を把握し、根拠を明確にしながら障害者の意思及び選好を推定する。

本人のこれまでの生活史を家族関係も含めて理解することは、職員が本人の意思を推定するための手がかりとなる。

4.最善の利益の判断

本人の意思を推定することがどうしても困難な場合は、関係者が協議し、本人にとっての最善の利益を判断せざるを得ない場合がある。最善の利益の判断は最後の手段であり、次のような点に留意することが必要である。

(1) メリット・デメリットの検討

最善の利益は、複数の選択肢について、本人の立場に立って考えられるメリットとデメリットを可能な限り挙げた上で、比較検討することにより導く。

(2) 相反する選択肢の両立

二者択一の選択が求められる場合においても、一見相反する選択肢を両立させることができないか考え、本人の最善の利益を追求する。

例えば、健康上の理由で食事制限が課せられている人も、運動や食材、調理方法、盛り付け等の工夫や見直しにより、可能な限り本人の好みの食事をすることができ、健康上リスクの少ない生活を送ることができないか考える場合などがある。

(3) 自由の制限の最小化

住まいの場を選択する場合、選択可能な中から、障害者にとって自由の制限がより少ない方を選択する。

また、本人の生命または身体の安全を守るために、本人の最善の利益の観点からやむを得ず行動の自由を制限しなくてはならない場合は、行動の自由を制限するより他に選択肢がないか、制限せざるを得ない場合でも、その程度がより少なくてすむような方法が他にないか慎重に検討し、自由の制限を最小化する。

その場合、本人が理解できるように説明し、本人の納得と同意が得られるように、最大限の努力をすることが求められる。

5.事業者以外の視点からの検討

意思決定支援を進める上で必要となる本人に関する多くの情報は、本人にサービス提供している事業者が蓄積している。しかし、事業者はサービスを提供する上で、制度や組織体制による制約もあるため、それらが意思決定支援に影響を与える場合も考えられることから、そのような制約を受けない事業者以外の関係者も交えて意思決定支援を進めることが望ましい。本人の家族や知人、成年後見人等の他、ピアサポーターや基幹相談支援センターの相談員等が、本人に直接サービスを提供する立場とは別の第三者として意見を述べることにより、様々な関係者が本人の立場に立ち、多様な視点から本人の意思決定支援を進めることができる。

6.成年後見人等の権限との関係

法的な権限を持つ成年後見人等には、法令により財産管理権とともに身上配慮義務が課されている。一方、事業者が行う意思決定支援においても、自宅からグループホームや入所施設等への住まいの場の選択や、入所施設からの地域移行等、成年後見人等が担う身上配慮義務と重複する場面が含まれている。意思決定支援の結果と成年後見人等の身上配慮義務に基づく方針が齟齬をきたさないよう、意思決定支援のプロセスに成年後見人等の参画を促し、検討を進めることが望ましい。

なお、保佐人及び補助人並びに任意後見人についても、基本的な考え方としては、成年後見人についてと同様に考えることが望まれる。

Ⅲ.各論

1.意思決定支援の枠組み

意思決定支援の枠組みは、意思決定支援責任者の配置、意思決定支援会議の開催、意思決定の結果を反映したサービス等利用計画・個別支援計画(意思決定支援計画)の作成とサービスの提供、モニタリングと評価・見直しの5つの要素から構成される。このようにして作成されたサービス等利用計画・個別支援計画(意思決定支援計画)に基づき、日頃から本人の生活に関わる事業者の職員が、全ての生活場面の中で意思決定に配慮しながらサービス提供を行うこととなる。

(1) 意思決定支援責任者の役割

意思決定支援を適切に進めるため、事業者は意思決定支援責任者を配置することが望ましい。意思決定支援責任者は、意思決定支援計画作成に中心的に関わり、意思決定支援会議を企画・運営するなど、意思決定支援の枠組みを作る役割を担う。

具体的には、意思決定支援責任者は、本人の希望するサービスを提供するためのサービス等利用計画や個別支援計画を作成する前提として、意思決定支援を適切に進めるため、本人の意思の確認・推定や本人の最善の利益の検討の手順や方法について計画する。

また、本人の意思決定支援に参考となる情報や記録を誰から収集するか、意思決定支援会議の参加者の構成、意思を表出しやすい日時や場所の設定、絵カードの活用等本人とのコミュニケーション手段の工夫等、意思決定支援を進める上で必要となる事項について検討する。

さらに、意思決定支援責任者は、意思決定を必要とする事項について本人から直接話しを聞いたり、日常生活の様子を観察したり、体験の機会を通じて本人の意思を確認したり、関係者から情報を収集したりすることを通じて、本人の意思及び選好、判断能力、自己理解、心理的状況、これまでの生活史等本人の情報、人的・物理的環境等を適切にアセスメントする。

上記のような役割を担う意思決定支援責任者については、相談支援専門員又はサービス管理責任者とその役割が重複するものであり、これらの者が兼務することが考えられる。

(2) 意思決定支援会議の開催

意思決定支援会議は、本人参加の下で、アセスメントで得られた意思決定が必要な事項に関する情報や意思決定支援会議の参加者が得ている情報を持ち寄り、本人の意思を確認したり、意思及び選好を推定したり、最善の利益を検討する仕組みである。意思決定支援会議は、本人の意思を事業者だけで検討するのではなく、家族や、成年後見人等の他、必要に応じて関係者等の参加を得ることが望ましい。

意思決定支援会議については、相談支援専門員が行う「サービス担当者会議」やサービス管理責任者が行う「個別支援会議」と一体的に実施することが考えられる。

また、障害者総合支援法第89条の3第1項に規定する協議会((以下「協議会」という。)においては、地域の事業者における意思決定支援会議の開催状況等を把握し、取組を促進することが望まれる。

(3) 意思決定が反映されたサービス等利用計画や個別支援計画(意思決定支援計画)の作成とサービスの提供

意思決定支援によって確認又は推定された本人の意思や、本人の最善の利益と判断された内容を反映したサービス等利用計画や個別支援計画(意思決定支援計画)を作成し、本人の意思決定に基づくサービスの提供を行うことが重要である。

体験を通じて本人が選択できたり、体験中の様子から本人の意思の推定が可能となったりするような場合は、そのようなアセスメント方法を意思決定支援計画の中に位置付けることも必要である。例えば、長期間、施設や病院に入所・入院しており、施設や病院以外で生活したいと思っていても、何らかの理由でそれをあきらめて選択に消極的になっていたり、施設や病院以外で生活する経験がなくて選びようがなかったりしている障害者に対し、必要に応じて地域移行支援の利用やグループホーム等の体験利用を通じて、実際の経験等を通じた意思決定支援を行うような場合が考えられる。

(4) モニタリングと評価及び見直し

意思決定支援を反映したサービス提供の結果をモニタリングし、評価を適切に行い、次の支援でさらに意思決定が促進されるよう見直すことが重要である。モニタリングと評価及び見直しについては、意思決定の結果を反映したサービス等利用計画や個別支援計画に基づくサービス提供を開始した後の本人の様子や生活の変化について把握するとともに、その結果、本人の生活の満足度を高めたか等について評価を行うことが必要である。それらのモニタリング及び評価の情報を記録に残すことで、次に意思決定支援を行う際の有効な情報となり、見直しにつながる。

意思決定支援は、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)で構成されるいわゆるPDCAサイクルを繰り返すことによって、より丁寧に行うことができる。

2.意思決定支援における意思疎通と合理的配慮

意思決定支援を行うにあたっては、意思決定に必要だと考えられる情報を本人が十分理解し、保持し、比較し、実際の決定に活用できるよう配慮をもって説明し、決定したことの結果起こり得ること等を含めた情報を可能な限り本人が理解できるよう、意思疎通における合理的配慮を行うことが重要である。

本人との意思疎通を丁寧に行うことによって、本人と支援者とのコミュニケーションが促進され、本人が意思を伝えようとする意欲が高まり、本人が意思決定を行いやすい状態をつくることができる。

3.意思決定支援の根拠となる記録の作成

意思決定支援を進めるためには、本人のこれまでの生活環境や生活史、家族関係、人間関係、嗜好等の情報を把握しておくことが必要である。家族も含めた本人のこれまでの生活の全体像を理解することは、本人の意思を推定するための手がかりとなる。

また、本人の日常生活における意思表示の方法や表情、感情、行動から読み取れる意思について記録・蓄積し、本人の意思を読み取ったり推定したりする際に根拠を持って行うことが重要である。本人が意思決定することが難しい場合でも、「このときのエピソードには、障害者の意思を読み取る上で重要な『様子』が含まれている」という場合がある。そういった、客観的に整理や説明ができないような「様子」を記録に残し、積み上げていくことは、障害者の意思決定を支援する上で重要な参考資料になる。

また、意思決定支援の内容と結果における判断の根拠やそれに基づく支援を行った結果がどうだったかについて記録しておくことが、今後の意思決定支援に役立つため、記録の方法や内容について検討することが有用である。

4.職員の知識・技術の向上

職員の知識・技術等の向上は、意思決定支援の質の向上に直結するものであるため、意思決定支援の意義や知識の理解及び技術等の向上への取組みを促進させることが重要である。

そのためには、ガイドラインを活用した研修を実施するとともに、意思決定支援に関する事例検討を積み重ねることが重要である。また、書籍による文献学習、内部の勉強会、実地研修(OJT)、外部研修の受講等、具体的な研修計画を立案し、進めることが効果的である。

5.関係者、関係機関との連携

意思決定支援責任者は、事業者、家族や成年後見人等の他、関係者等と連携して意思決定支援を進めることが重要である。

関係者等と連携した意思決定支援の枠組みの構築には、協議会を活用する等、地域における連携の仕組みづくりを行い、意思決定支援会議に関係者等が参加するための体制整備を進めることが必要である。

意思決定支援の結果、社会資源の不足が明らかとなった場合等は、協議会で共有し、その開発に向けた検討を行ったり、自治体の障害福祉計画に反映し、計画的な整備を進めたりするなど、本人が自らの意思を反映した生活を送ることができるよう取り組みを進めることが求められる。

6.本人と家族等に対する説明責任等

本人と家族等に対して、意思決定支援計画、意思決定支援会議の内容についての丁寧な説明を行う。また、苦情解決の手順等の重要事項についても説明する。事業者においては、本人や家族等からの苦情について、迅速かつ適切に対応するために、苦情解決規程を定めた上で苦情を受け付けるための窓口の設置や第三者委員の配置等の必要な措置を講じているところである。意思決定支援に関する苦情についても、苦情解決規程に従った対応を行い、意思決定支援責任者は、苦情受付担当者、苦情解決責任者、第三者委員と協働して対応に当たることが必要である。

意思決定支援に関わった事業者、成年後見人等や関係者等は、職を辞した後も含めて、業務上知り得た本人やその家族の秘密を保持しなければならない。

(図1)意思決定支援の流れ

Ⅳ.意思決定支援の具体例

1.日中活動プログラムの選択に関する意思決定支援

重度の知的障害があり、言葉で意思を伝えることが難しいAさんが、生活介護事業所を利用することになった。生活介護事業所のサービス管理責任者は、Aさんの日中活動プログラムをどのように考えたら良いか悩んでいた。そこで、Aさんの日中活動を決めるために、意思決定支援会議を開くことにした。意思決定支援会議には、Aさんと家族、Aさんをよく知る学校の先生、移動支援事業所の支援員、生活介護事業所の担当職員、Aさんを担当する相談支援専門員が参加し、サービス管理責任者が意思決定支援責任者となって会議を進めることになった。

意思決定支援責任者は、会議の参加者にAさんの日頃の様子から読み取ることができる意思や好み、それらを判断するための手がかり等の情報を報告してもらった。Aさんは、家族や顔見知りの人がいるため、安心しているように感じられた。家族からは、Aさんが祖母にかわいがられて育ち、祖母が得意だった饅頭作りをうれしそうに一緒にしていたことや、沢山作った饅頭を近所に配ることにも付いていき、人から喜ばれるとうれしそうだったこと等が話された。学校の先生からは、Aさんは友だちと関わることが好きだったことや、静かな音楽を好んで聴いていたこと、紙に絵の具で色を塗ることが好きで、机に向かって集中して取り組んでいたが、ペットボトルキャップの分類のような作業的なことはすぐに飽きてイスから立ち上がってしまったことが話された。移動支援事業所の支援員からは、Aさんは森の中を散歩して、鳥のさえずりを聞くと耳を澄ましてうれしそうにしているが、人混み等雑音が多い場所は苦手なようで表情が険しくなったり、イライラした感じになったりしてしまうことが話された。

意思決定支援責任者は、これらの情報を整理し、日中活動のプログラムを検討した。その結果、まずはAさんにとって生活介護事業所が居心地の良い場所であることを知ってもらうため、Aさんの日中活動を、静かな音楽が流れる部屋でパンやクッキー、饅頭を作る活動や、紙と絵の具でペインティングする活動、森の中の散歩道を鳥のさえずりを聞きながら数人で歩く活動等から始めることとし、また、そうした日中活動の中でのAさんの表情に注目し、Aさんの意思表示の手がかりを記録に残し、今後の意思決定支援のための情報を蓄積することとなり、意思決定支援計画と個別支援計画を一体的に作成した。また、これらの取組を行ってから3ヶ月後に、見直しのための会議を開くこととした。

2.施設での生活を継続するかどうかの意思決定支援

施設入所支援を利用して15年になるBさんは、知的障害と自閉症があり、言葉によるコミュニケーションが難しい状態であった。また、家族が亡くなり、成年後見人が選任されていた。担当の相談支援専門員は、継続サービス利用支援によるモニタリングで、今後も引き続き施設入所支援を利用するのか、グループホーム等に生活の場を移行するのか、Bさんの意思決定支援が必要であると考えていた。

そこで、担当の相談支援専門員が意思決定支援責任者となり、Bさんと成年後見人、施設入所支援のサービス管理責任者とBさんの担当職員、グループホームのサービス管理責任者の参加により、Bさんの意思決定支援会議を開くこととなった。Bさんは、いつものスケジュールとは違う会議への参加となり、落ち着きがなく不安そうにしていた。その様子を見ていた成年後見人は、Bさんが施設に慣れて落ち着いた生活を送れているのに、生活の場を変えることでBさんが不安定な状態にならないか不安であると話した。意思決定支援責任者が、自宅でのBさんの様子について成年後見人に尋ねると、帰省した時は、自分でお湯を沸かしてカップラーメンを作って食べていること等が話された。施設入所支援のサービス管理責任者と担当職員はその話を聞いて、施設では自分でお湯を沸かしたり、カップラーメンを作って食べたりする場面がなかったため、施設の環境がBさんの本来できることを狭めてしまっているのではないか、Bさんにとってよりよい生活の場について考えることが必要ではないかと思った、と話した。

Bさんは、目の前にある洋服や食べ物の中から自分が気に入った物を選んだり、絵カードや写真カードを見て、その日に行う活動を選んだりはできるが、経験したことがないグループホームの生活と今の施設の生活を比べて選ぶことは難しかった。そこで、グループホームのサービス管理責任者は、空き部屋のあるグループホームがあるので、体験利用をしてみて、その様子からBさんの意思を確認してはどうかと提案した。成年後見人も、「体験してみた結果がBさんのためになるなら」という意見であった。

意思決定支援責任者である相談支援専門員は、意思決定支援会議の結果を踏まえてサービス等利用計画を変更し、地域移行支援に基づくグループホームの体験利用を行う内容に見直した。また、1ヶ月後に再度意思決定支援会議を開き、Bさんの体験利用の様子を共有し、Bさんが今後の生活の場について施設の利用を継続したいのか、グループホームで生活したいのかについて確認することになった。Bさんがグループホームで混乱しないように、施設で使っていた絵カードやスケジュールをグループホームでも使うことにした。人数の少ないグループホームの環境は、Bさんにとって落ち着けるようだった。近くのコンビニエンス・ストアに買い物に行ったり、カップラーメンを作ったり、冷凍食品を電子レンジで温めて食べたりと、Bさんは生活を主体的に広げていった。

1ヶ月後に、意思決定支援会議が開かれ、グループホームでの体験利用の様子が報告された。その内容から、Bさんの意思がどこにあるのか、成年後見人も含めた誰にとっても明らかであった。

3.精神科病院からの退院に関する意思決定支援

65才の女性Cさんは統合失調症で、引きこもりがちで軽度の知的障害がある32才の息子Dさんと二人暮らしをしていた。自宅は持ち家で、Cさんの老齢年金と遺族年金で生計を立てていたが、生活は苦しかった。Cさんは、数年前に交通事故に遭ってから家事が難しくなり、Dさんが買い物や掃除、洗濯、調理を行っていた。ところが、1年前にDさんが家出をしてから不穏になり、近隣宅に上がり込む等の行為が度々起こるようになり、医療保護入院となった。家出していたDさんは、Cさんが入院した後、自宅に戻ってきた。Dさんの家出の原因は、病状が不安定なCさんの面倒をみることに疲れてしまったためであったが、Cさんが退院した後は、一緒に生活することを希望していた。

Cさんは、入院して3か月で病状が安定した。しかし、自発的な意思の表明が乏しく、意欲の低下もあり「もう自宅へは帰れない」と退院をあきらめてしまっているようだった。

病院のソーシャルワーカーが「退院後生活環境相談員1」となり、熱心に退院に向けた働きかけを行ったが、Cさんは黙り込んでしまうだけだった。退院支援委員会は、入院中の障害者や家族からの相談に応じ、必要な情報提供等を行う地域援助事業者として、委託相談支援事業所に参加してもらうことにした。

委託相談支援事業所の相談員は、地域移行支援の利用を念頭に、意思決定支援責任者として意思決定支援会議を開いた。参加者は、病院の主治医と退院後生活環境相談員、病棟受け持ち看護師、役所の障害福祉担当職員、保健所の保健師、息子のDさんであった。Cさんは、参加したくないとのことだった。

役所の障害福祉担当職員とDさんによれば、Cさんは、一家を支えるしっかり者だったが、発病後、金銭をだまし取られる等の苦労をしてから不安が強くなり、同じことの確認を何回もすることもあったが、丁寧な説明があれば理解できる力をもっていること、入院前には、服薬の中断や減薬により怒りやすく命令口調となり、近隣住民への被害妄想もあったことが話された。病院の主治医と退院後生活環境相談員からは、入院中のCさんは、陰性症状のため自発的な意思の表明が乏しく、人に対する警戒心もあってほとんど話しをすることがないという状況が報告された。意思決定支援会議では、Cさんが「もう自宅へは帰れない」と言った背景を理解し、Cさんの意思を確認する手がかりを得るために、意思決定支援責任者である相談員がCさんを伴って自宅に行ってみることになった。

自宅は老朽化が進んでおり、Dさんが家出をしていた1年間でゴミ屋敷のような状態になっていた。自宅に戻ったDさんも交えて、Cさんの話しを聴いた。Cさんは、家事全般をしてくれていたDさんが家出をしたことはショックだったこと等を話し始めた。Cさんは、趣味だった手芸品や書道作品、賞状等を見せてくれた。昔の写真には、流行の服を着て笑顔でポーズをとる姿が写っていた。実家は立派な透かし彫りの小壁がある自慢の家だったという。Cさんは、自宅に帰りたい気持ちはあるが建物が老朽化してゴミ屋敷の状態であり、入院生活での足腰の筋力の低下により自宅の和式トイレを使うことができないため生活できないと考えていたこと、引っ越すとしても、お金をだまし取られたため資金がないこと、生活費が苦しいこと等問題が山積みで、「もう自宅へは帰れない」とあきらめていたと話した。

相談員は、Cさんの所得状況だと生活保護の申請ができること、そのための手続やアパート探しの仕方等をわかりやすく説明し、自宅以外の暮らしもできることを丁寧に伝えた。息子のDさんは、それにできる限り協力することをCさんに伝えた。

相談員は、再度意思決定支援会議を開いた。今回はCさんも参加し、生活保護を受けてアパートを借り、息子と生活したいという意思を伝えることができた。Cさんは、退院後も、日常生活の様々な場面で意思決定支援を受けながら、本人らしい生活を送っている。

――――――――――

1 精神保健福祉法では、病院は個々の医療保護入院者が早期に退院できるよう支援するための取組において中心的役割を果たす退院後生活環境相談員を選任することが義務づけられています。退院後生活環境相談員になれるのは、精神保健福祉士、保健師等であって、精神障害者に関する業務の経験がある方、もしくは上記職種以外であって厚生労働大臣が定める研修を修了した方です。

(参考)Aさんの意思決定支援のためのアセスメント表

意思決定支援のためのアセスメント表

<意思決定支援が必要な項目>

Aさんが取り組みたい日中活動プログラムは?

<これまでの生活史>

○Aさんは1歳6ヶ月の検診で知的な発達の遅れが指摘され、知的障害があることが分かりました。両親と3歳年上の姉、そして父方の祖母との5人暮らしでした。穏やかで人なつこい性格であったAさんは特に祖母にかわいがられて育ちました。祖母が得意であった饅頭作りをうれしそうに手伝ったり、祖母と一緒に近所に配って歩いたりしました。そのときに人から喜んでもらえるとAさんもとてもうれしそうな表情を見せていたそうです。

○学校は小学校から特別支援学校に通いました。学校では友人と関わることが好きで、いつも仲間と一緒に過ごしていました。でもたくさんの人で行動に集まったり、運動会などで大きな音がする場面などでは少しいらいらする様子が見られました。

○言葉では意思を伝えることが難しいAさんでしたが好きな物には自ら積極的に取り組む姿や、豊かな表情で周囲に気持ちを伝えることができました。

○休日は家族と一緒に出かけることもありましたが、お父さんとお母さんが自営業をされていたこともあり、Aさんのお出かけをしたいという気持ちに応えられない日も多くなってきたことから移動支援を利用して、ヘルパーと出かけるようになりました。

○特別支援学校卒業後の進路は、就労継続支援B型事業所や生活介護事業所など3回の実習を重ねた結果、生活介護事業所を利用することになりました。

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意思決定支援会議のまとめ

<関係者から提供されたAさんの意思を判断するための手がかりとなる情報>

<手がかりとなる情報から推定される本人意思>

(家族)

 

○Aさんは、祖母にかわいがられて育った。

・かわいがってくれる祖母のような人が好きなようだ。

○祖母が得意だった饅頭作りをうれしそうに一緒にしていた。

・祖母のような人と一緒に饅頭などをつくることが好きなようだ。

○饅頭を近所に配ることについて行き、人から喜ばれるとうれしそうだった。

・作った饅頭などを配り、人から喜ばれることがうれしいようだ。

(学校の教員)

 

○友だちと関わることは好きだった。

・友だちと関わることは好きなようだ。

○静かな音楽を好んで聴いていた。

・静かな音楽を好むようだ。

○紙に絵の具で色を塗ることは好きで、集中して取り組んでいた。

・紙に絵の具を塗るなど、創作的な活動は好きなようだ。

○ペットボトルのキャップの分類のような作業的なことはすぐ飽きてイスから立ち上がってしまった。

・ペットボトルのキャップの分類のような作業的なことはすぐ飽きてしまうようだ。

(移動支援ヘルパー)

 

○森の中を散歩して、鳥のさえずりを聞くと耳を澄ましてうれしそうにしていた。

・森の中を散歩して、鳥のさえずりを聞くとうれしいようだ。

○人混みなど雑音の多い場所は苦手なようで表情が険しくなったりイライラした感じになってしまう。

・人混みなど雑音が多い場所は、イライラして苦手なようだ。

(参考)Aさんの意思決定支援を反映した個別支援計画(意思決定支援計画)の作成例

(参考)Bさんの意思決定支援のためのアセスメント表

意思決定支援のためのアセスメント表

<意思決定支援が必要な項目>

Bさんがこれからどのような場所でどのような生活をしていきたいのか?

<これまでの生活史>

○Bさんは会社員のお父さん(当時35歳)と専業主婦のお母さん(当時30歳)との間に昭和○年に生まれました。また、Bさんには5歳年下の弟がいます。特に重い病気にかかることなく育ちましたが、2歳になっても言葉を話しませんでした。そして3歳児健診で知的な発達に障害があること、自閉症であることがわかりました。その後、Bさんはお母さんと一緒に地域の障害児通園施設に通って、言葉を出やすくするような療育活動に参加したりしましたが、自分のやりたいことができなかったりするときにパニックになって大きな声をだしたり、周囲の人に噛みついてしまったりすることが増えていきました。その後、小学生になりましたが、地域の学校ではなく特別支援学校にバスに乗って通うようになりました。特別支援学校でも次にすることがよくわからなかったり、自分のしたいことができないときにはよくパニックになっていました。その時は先生と一緒に校庭を散歩すると気持ちが落ち着きました。学校では先生が工夫して次の行動がわかりやすいように絵などで説明してくれるようになりました。それで、次に何をすればいいのかが少しずつ分かるようになりました。パニックになることも少しずつ減ってきました。中学校と高校も特別支援学校に通いました。小さい頃から身の回りのことはお母さんが手伝ってくれました。服などはお母さんが表裏がわかりやすいようにおいてくれるので、間違えないように着ることができました。食事などはすべてお母さんが準備してくれましたが、中学生ぐらいになると好きなカップラーメンは自分でお湯を沸かして作ることもありました。休みの日はお父さんがドライブに連れて行ってくれたり、デパートに買い物に行ったりしました。でも大きな音がしたり、人が多すぎるとパニックになることがあったので、ドライブに行くことがだんだん多くなりました。ドライブもいつも同じコースでないと不安になりました。ドライブの途中でコンビニエンスストアによって好きなお菓子を買うのが楽しみでした。Bさんが18歳になった時お父さんが病気で亡くなりました。そのため、お母さんが働かなくてはならなくなりました。Bさんは特別支援学校の高等部を卒業する時、お母さんの介護負担を心配した進路指導の先生から入所施設利用を勧められました。お母さんはなんとかBさんと一緒に暮らせるように色々と考えましたが、年少の弟の世話や仕事をしながら私の身の回りの世話までできないので、Bさんは入所施設を利用することになりました。

意思決定支援会議のまとめ

<関係者からの情報>

<推定される本人意思>

○日常的なスケジュールが変わると落ち着きがなく不安そうにしていた。(家族)

○生活場面が変わると不安定な状態になる恐れがあるので、このままの生活を続けたいのではないか。

○自宅では自分でお湯を沸かしてカップラーメンを作って食べる事がある。(家族)

○自分で食べたいものを調理して作れるような暮らしがしたいのではないか。

○施設では自分でお湯を沸かしたりカップラーメンを作る場面がなかった。(入所施設職員)

 

○目の前にある洋服や食べ物の中から自分が気に入った物を選んだり、絵カードや写真カードを見て、その日に行う活動を選べる。(入所施設職員)

○今は入所施設での生活しか経験がないので、他にどのような暮らしがあるか知らないので決められないのではないか。

(参考)Bさんの意思決定支援を反映したサービス等利用計画(意思決定支援計画)の作成例