添付一覧
○「平成28年度救急業務のあり方に関する検討会報告書」を踏まえた救急業務の実施について
(平成29年3月31日)
(医政地発0331第5号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医政局地域医療計画課長通知)
(公印省略)
今般、消防庁の設置する「平成28年度救急業務のあり方に関する検討会」において、大規模災害時の救急業務の実施、一般社団法人日本蘇生協議会が作成した「JRC蘇生ガイドライン2015」(平成27年10月)に基づく救急活動プロトコルの変更点等についての検討がなされ、平成29年3月に当該検討会の報告書として「平成28年度救急業務のあり方に関する検討会報告書」(平成29年3月。以下「報告書」という。)が取りまとめられました。
これを受けて、別添1から3までのとおり、消防庁救急企画室長から各都道府県消防防災主管部長及び東京消防庁・各指定都市消防長に対し通知が発出されております。
貴職におかれましても、別添1から3までの通知の内容について御了知いただくとともに、メディカルコントロール体制を構築する関係各位に広く周知していただくようお願いします。
なお、報告書については、以下のURLにて公開されています。
○ 平成28年度救急業務のあり方に関する検討会報告書(平成29年3月)
http://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h28/kyukyu_arikata/houkoku/houkokusyo.pdf
(別添1)
「応援救急隊における救急業務の実施について」(平成29年3月30日付け消防救第47号消防庁救急企画室長通知)
(別添2)
「大規模災害時等の通信途絶における救急救命処置の実施について」(平成29年3月30日付け消防救第48号消防庁救急企画室長通知)
(別添3)
「「JRC蘇生ガイドライン2015」に基づく救急活動プロトコルについて」(平成29年3月30日付け消防救第41号消防庁救急企画室長通知)
[別添1]
○応援救急隊における救急業務の実施について
(平成29年3月30日)
(消防救第47号)
(各都道府県消防防災主管部長、東京消防庁・各指定都市消防長あて消防庁救急企画室長通知)
(公印省略)
平成28年熊本地震では、管轄消防本部所属の救急隊をはじめ、応援救急隊(応援協定に基づき出動した救急隊及び緊急消防援助隊として出動した救急隊をいう。以下同じ。)が多数出動し、被災地で救急活動を行いました。
これらの活動実態を踏まえ、「平成28年度救急業務のあり方に関する検討会」において、応援救急隊が救急活動を円滑に実施するための救急活動プロトコル及び特定行為に関する指示要請先等の在り方について、報告書が取りまとめられました。
報告書の内容を踏まえ、応援救急隊における救急業務の実施に関する留意事項について下記のとおり取りまとめましたので、貴職におかれましては、消防機関と関係機関等が事前に調整し体制を整えるよう十分御配慮いただくとともに、各都道府県にあっては、貴都道府県内の市町村(消防の事務を処理する一部組合等を含む。)に対してこの旨周知されるようお願いします。
なお、本通知は、消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条の規定に基づく技術的助言として発出するものであり、厚生労働省も事前に了知していることを申し添えます。
記
1 応援救急隊が用いる救急活動プロトコル及び特定行為に関する指示要請
(1) 応援救急隊として出動する際の救急活動については、特段の指示がなければ平時と同じメディカルコントロール体制に基づき実施することとし、そのことを各応援救急隊の派遣元メディカルコントロール関係機関及び出動応援救急隊間において共通認識としておくこと。
(2) 救急救命士法(平成3年法律第36号)第44条第1項の厚生労働省令で定める救急救命処置(以下「特定行為」という。)に関する指示要請についても、受援側から指示体制等が指定されるまでは、派遣元メディカルコントロール協議会に所属する医師に対して行うことを共通認識としておくこと。
2 救急活動記録票等の作成と保存
(1) 応援救急隊が災害発生市町村で救急活動を行った場合であっても、救急救命士法第46条第1項に規定する救急救命処置録、所属消防本部で定める救急活動記録票などの各種報告書類を作成することが求められること。
(2) 応援救急隊による救急出動件数は、救急オンライン処理システムを用いて災害発生市町村を管轄する消防本部に計上されることから、適切に入力するとともに保存しておくことが求められること。
3 情報共有のあり方
PC、タブレット等を用いて、消防庁「緊急消防援助隊支援情報共有ツール」及び厚生労働省「広域災害・救急医療情報システム(EMIS)」にアクセスし、緊急消防援助隊及び災害派遣医療チーム(DMAT)が入力している情報を効率的に収集すること。
また、ツール等の利活用にあっては、各地域で実施されている各種訓練によりログイン、閲覧などの具体的な操作に関して習熟しておくこと。
4 その他
「平成28年度救急業務のあり方に関する検討会報告書」P.138からP.145「第6章 大規模災害時等における救急業務の推進」を適宜参照すること。
http://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h28/kyukyu_arikata/houkoku/houkokusyo.pdf
【お問い合わせ先】 消防庁救急企画室救急専門官 森川博司 救急推進係長 新田幸司 TEL:03―5253―7529(直通) E-mail:kyukyusuishin@soumu.go.jp |
[別添2]
○大規模災害時等の通信途絶における救急救命処置の実施について
(平成29年3月30日)
(消防救第48号)
(各都道府県消防防災主管部長、東京消防庁・各指定都市消防長あて消防庁救急企画室長通知)
(公印省略)
平成28年熊本地震では、家屋倒壊による下敷き等でのクラッシュ症候群が疑われた事案が発生し、この際の救出活動において、医師による具体的な指示が得られない環境に陥ったものの、現場の切迫した状況を踏まえ、救急救命士法(平成3年法律第36号)第44条第1項の厚生労働省令で定める救急救命処置(以下「特定行為」という。)の1つである「心肺機能停止前の重度傷病者に対する静脈路確保及び輸液」が実施されたことが報告されています。
このことを踏まえ、「平成28年度救急業務のあり方に関する検討会」において、大規模災害時等の通信途絶時における特定行為の実施について報告書が取りまとめられました。
報告書の内容を踏まえ、通信途絶時における特定行為の実施に関する留意事項について下記のとおり取りまとめましたので、貴職におかれては、メディカルコントロール体制を構築する関係機関において、その運用に十分御配慮いただくとともに、各都道府県にあっては、貴都道府県内の市町村(消防の事務を処理する一部組合等を含む。)に対してこの旨周知されるようお願いします。
なお、本通知は、消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条の規定に基づく技術的助言として発出するものであり、厚生労働省も事前に了知していることを申し添えます。
記
1 報告書の内容
通信途絶時における特定行為の実施については、大規模自然災害以外にも、局地的な災害における停電時や、山間部、トンネルなどの環境的な要因によって、医師の具体的な指示が得られない場合も考えられる。そのような場合に備え、通信手段の強靱化・多様化を図るなどの必要な対策を行うべきである。なお、東日本大震災や熊本地震の際には、通信事情等の問題から医師の具体的指示が得られない場合についても、心肺機能停止状態の被災者等に対し、医師の具体的指示を必要とする救急救命処置を行うことは、刑法(明治40年法律第45号)第35条に規定する正当業務行為として違法性が阻却され得るとの考えを示す事務連絡が発出されている。ただし、そのような通信途絶時に傷病者の切迫性から、救急救命士が医師の具体的な指示なしに救急救命処置をやむを得ず実施する状況になった場合には、通信途絶の状況、代替手段がなかったこと、切迫性等について詳細に記録を残し、環境的要因も考慮し、メディカルコントロール体制の中で事後検証を受けることが不可欠である。
2 留意事項
(1) 通信手段の強靱化・多様化についての対策
報告書に記載されているとおり、通信手段の強靱化・多様化を図ること。このためには、例えば、病院連絡に使用する通信端末にあっては、事前に災害時優先電話の指定を受けておくこと、有線回線・無線回線・衛星回線等を活用することが考えられること。
(2) 事後検証
ア 救急救命士法第46条第1項に基づき、救急救命処置録へ救急救命処置を受けた者の状況、救急救命処置の内容等に関する詳細な記録を残すとともに、以下の事項についても記録しておくこと。
・通信途絶の状況
・通信手段の確保に関して講じた措置内容
・代替手段がなかったこと及びないと判断した根拠や理由
・傷病者の切迫性
イ アに記載された内容に基づき、通信途絶の状況等の環境的要因も考慮した上で、医療機関も含めたメディカルコントロール体制の中で事後検証を受けること。
3 その他
「平成28年度救急業務のあり方に関する検討会報告書」P.138からP.145「第6章 大規模災害時等における救急業務の推進」を適宜参照すること。
http://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h28/kyukyu_arikata/houkoku/houkokusyo.pdf
【お問い合わせ先】 消防庁救急企画室救急専門官 森川博司 救急推進係長 新田幸司 TEL:03―5253―7529(直通) E-mail:kyukyusuishin@soumu.go.jp |
[別添3]
○「JRC蘇生ガイドライン2015」に基づく救急活動プロトコルについて(通知)
(平成29年3月30日)
(消防救第41号)
(各都道府県消防防災主管部長、東京消防庁・各指定都市消防長あて消防庁救急企画室長通知)
(公印省略)
平素より、救急行政の推進につきまして御尽力いただき御礼申し上げます。
今般、消防庁では「平成28年度救急業務のあり方に関する検討会」(救急蘇生ワーキンググループ)を設置して、一般財団法人日本蘇生協議会が作成した「JRC蘇生ガイドライン2015」(平成27年10月)を踏まえ、救急活動に関して対応が必要となる部分について検討し、報告書が取りまとめられたところです。
貴職におかれましては、下記事項に留意の上、各都道府県メディカルコントロール協議会及び各地域メディカルコントロール協議会において、各地域の実情に応じて、救急活動プロトコルを検討していただくよう、各都道府県にあっては、貴都道府県内市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む。)に対しても、この旨周知されるようお願いします。
なお、本通知は、消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条の規定に基づく技術的助言として発出するものであり、厚生労働省も事前に了知していることを申し添えます。
記
1.背景
救急救命士等が行う救急活動については、「日本版救急蘇生ガイドラインに基づき救急救命士等が行う救急業務活動に関する報告書について」(平成24年8月31日付け事務連絡)を踏まえ、各都道府県メディカルコントロール協議会及び各地域メディカルコントロール協議会において救急活動プロトコルを作成されています。
平成27年10月に一般社団法人日本蘇生協議会から「JRC蘇生ガイドライン2015」が取りまとめられ、平成28年9月には、一般財団法人日本救急医療財団心肺蘇生法委員会から「救急蘇生法の指針2015(医療従事者用)」が発表されました。
2.救急活動プロトコルの検討について
「JRC蘇生ガイドライン2015」を踏まえ、救急活動に関して対応が必要となる部分について、科学的根拠及び救急隊の活動の面から検討を行いました。検討事項を別紙のとおりです。
3.その他
別紙は、平成28年度救急業務のあり方に関する検討会報告書(P116からP125)の一部抜粋であるため、こちらも参照してください。
http://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h28/kyukyu_arikata/houkoku/houkokusyo.pdf
【問い合わせ先】 消防庁救急企画室 小久江課長補佐、新田係長、山口事務官 TEL:03―5253―7529(直通) FAX:03―5253―7532 E-mail:kyukyusuishin@soumu.go.jp |
[別紙]
[救急活動プロトコルの検討について]
① 電気ショックと心肺蘇生の優先順位
ア.科学的根拠
院外心停止では、除細動器の準備ができ次第、ただちに電気ショックを行うのに比べて、電気ショックの前に長時間(90~180秒と定義)CPRをしてから電気ショックを行うことに有益性がないことをエビデンスが示唆しているため、基本的には早期除細動を優先する必要がある。
しかし、電気ショックの前に長時間のCPRを行うことについて、有害であることを示唆する研究は存在しない。
イ.救急隊の活動
救急隊が到着し除細動器による解析の準備ができるまでは、短時間であっても良質な心肺蘇生(胸骨圧迫の正しい位置、深さ、テンポ、圧迫解除、及び高濃度酸素による人工呼吸)を行い、適応があれば直ちに電気ショックを行う活動(いわゆるショックファースト)を基本とする。原則として、心電図解析の準備が完了した後に解析・電気ショックのタイミングを意図的に遅らせるプロトコル(いわゆるCPRファースト)は採用しない。
ウ.その他
地域メディカルコントロール協議会にて傷病者の状態や搬送時間等を考慮し検討された優先順位について、そのプロトコルを妨げない。
また、除細動電極パッドの貼付の際、必要に応じて着衣の裁断及び植え込み式除細動器・貼付薬等の確認を行うなどの電極貼付位置の適正化に必要な対処を省くべきではない。
② アドレナリン投与のタイミング
ア.科学的根拠
院外心停止では、様々な研究で早期アドレナリン投与についての効果が示された。しかし、対象群にアドレナリンを使用していない症例を含むなど、早期アドレナリン投与の有効性を示すエビデンスとしては十分でない。
一方、院内心停止では、ショック非適応リズムの早期アドレナリン投与についての研究報告があり、生存退院、退院時の神経学的転帰良好及びROSCP*Pにおける転帰の改善を認めている。院内心停止と院外心停止では病態生理学は異なるが、院内でのエビデンスは院外でも有効であると類推できる。
※ROSC:Return Of Spontaneous Circulation(自己心拍再開)
イ.救急隊の活動
初期心電図波形がショック非適応リズムの場合、傷病者接触後、速やかにアドレナリンを投与する活動を基本とすることが提案された。ここで言う「速やかに」とは、可能な限り現場で早期投与すると解釈することが望ましい。
しかし、救急現場の環境因子及び医療機関までの搬送時間を考慮し、現場で投与ができない場合及び搬送を優先する場合も考えられることから、アドレナリン投与のタイミングについては、地域メディカルコントロール協議会で決定してもかまわないこととする。
また、アドレナリン投与の処置の拡大を通知した「救急救命士の薬剤投与の実施に係るメディカルコントロール体制の充実強化について」(平成17年3月10日付け消防救第70号・医政指発第031003号)では、初期心電図波形が心静止の場合、アドレナリン投与の適応としては、「目撃者のある例」と記載され、この適応を参考に地域メディカルコントロール協議会において薬剤投与プロトコルを作成し、運用を図ってきたところである。しかし、ガイドライン2015では、心静止においてもアドレナリンを早期投与することによって転帰を改善する報告がある。そのため、目撃がない例でも、心停止に陥ってからの時間を考慮し、初期心電図波形が心静止の場合のアドレナリン投与の適応を拡大することで転帰を改善することが期待される。
心静止のアドレナリン投与適応範囲については、地域メディカルコントロール協議会で検討した上で、プロトコルを作成し運用してもよい。
平成26年1月31日から心肺機能停止前の重度傷病者に対する静脈路確保及び輸液等が救急救命士の行う特定行為に加わった。それにより、心停止前に静脈路確保が完了しており、その後、心停止になる場合等が想定される。その場合、ショック適応リズムであれば、電気ショック実施後にアドレナリン投与を直ちに行わず、2分後に行う。これらの手順については、ACLS及びICLSで推奨される手順を適応する。
③ 高度な気道確保について(成人)
ア.科学的根拠
心停止中の気道管理の最適な方法は明らかになっていない。使用されるエアウェイの種類は、使用者の技量及び訓練に依存している。また、デバイス挿入の適切なタイミングについては不明である。
イ.救急隊の活動
これまでどおり、最初に選択する高度な気道確保は、声門上気道デバイス又は気管チューブにより実施する。
気管挿管は、リスクの高い処置であることを再認識する。胸骨圧迫中断時間が長引くと有害となるので、気管挿管を行う場合、胸骨圧迫中断時間は可能な限り短くする。また、気管挿管実施後は、胸骨圧迫及び人工呼吸を非同期で実施する。呼気CO2モニタを有する場合は、その役割を重要視し活用するとともに、呼気CO2値の変化により、CPR中の気管チューブ先端位置の確認と連続監視を行い、食道挿管の発生に細心の注意を払う。
また、気管挿管の適応については、「救急救命士の気管内チューブによる気道確保の実施について」(平成16年3月23日付け消防救第55号)により、心臓機能停止の状態及び呼吸機能停止の患者のうち、「ラリンゲアルマスク、食道閉鎖式エアウェイで気道確保ができないもの」と記載されている。このことについて、ラリンゲアルマスク等の声門上気道デバイスを挿入した上で、実際に気道確保が困難な結果が得られなければ、気管内チューブによる気道確保が行えないということではなく、吐物等によりラリンゲアルマスク等の声門上気道デバイスでの気道確保が困難なことが、あらかじめ想定される状況であれば、気管内チューブによる気道確保の適応と解釈できる。
声門上気道デバイスについては、色々な器具が開発されている。器具の特徴及び使用上の留意点について、習熟していること及び十分なシミュレーションを行うことが重要であり、地域メディカルコントロール協議会において教育方法及びプロトコルの運用について検討した上で使用する必要がある。声門上気道デバイスによる気道確保実施後は、適切な換気が可能であれば、胸骨圧迫及び人工呼吸を非同期で実施する。非同期CPRを実施する場合は、過換気にならないように注意する。過換気は、胸腔内圧が上昇して静脈還流が減少し冠灌流圧が低下するため、生存率が低下する可能性が示唆されている。
④ 小児における人工呼吸
ア.科学的根拠
ガイドライン2015においては、ラリンゲアルマスクの有効性についての報告はあるが、いずれにしても熟練者により使用されたものである。声門上気道デバイスの使用については、小児の体格にあったものを適切に選ぶことが難しいことや、不適切な位置に移動しやすいなど、管理上の困難さも指摘されている。
また、声門上気道デバイスを使用した研究では、患者の年齢及び体格差が小さくなるにつれて合併症発生率が増加することや、初回換気までの時間が、バックバルブマスク換気の方が短いという研究報告がされている。
イ.救急隊の活動
小児の人工呼吸については、バックバルブマスクによる人工呼吸を推奨する。
声門上気道デバイスの使用については、小児における解剖学的知識の習得及び小児の訓練用人形等を使った十分な訓練がされている場合において使用する。また、十分な訓練及び事後検証が前提であり、地域メディカルコントロール協議会で小児に対する声門上気道デバイスの種類や適応年齢について、十分検討すべきである。
また、搬送時間が長い地域については、十分な訓練をすることを前提に、声門上気道デバイスを使用した気道確保の有効性もあるため、小児に対する気道デバイスの使用については地域メディカルコントロール協議会にて考慮する。
⑤ 救命処置の質に焦点を当てたデブリーフィング
デブリーフィング(振返り)については、質の高いCPRに焦点を当てて、記憶が新しいうちにデータに基づくデブリーフィングを行い、改善点を抽出することで次の活動に生かすことを目的としている。
胸骨圧迫の深さを測る器械によるデータを用いた、デブリーフィングを実施している地域もあるが、普及が進んでいない。具体的方法としては、AED等のデータを活用して、帰署後に、隊員間で胸骨圧迫の質及び中断時間を分析することが必要である。
胸骨圧迫の中断時間については、CCFP※P80%以上を目指すことが望ましい。
救急隊の活動において、車内収容後は胸骨圧迫を中断する時間も少なく、CCFは80%以上を目指すことが可能であると推測できる。しかし、胸骨圧迫を開始してから車内収容までの間は、救急救命処置及び傷病者の移動を行っている時間が大部分であるため困難を極めるが、車内収容までの活動においてもCCF80%以上を目標として、活動を分析し改善することが望ましい。
※CCF:Chest Compression Fraction(胸骨圧迫施行時間/全CPR時間)
図表 デブリーフィングのプロトコル
⑥ 機械的CPR装置
ア.科学的根拠
機械的CPR装置についての研究報告では、用手胸骨圧迫と比較して、有益性及び有害性を示さないとされており、機械あるいは救急隊員が行っても、質の高い胸骨圧迫ができることを重視している。また、機械的CPR装置使用の利点として、揺れる車内及び長時間搬送時、傷病者の移動時に質の高い胸骨圧迫が維持できることがある。
イ.救急隊の活動
機械的CPR装置の使用については、十分な訓練が前提とされ、その使用について、強い推奨はしないものの、活動地域及び活動状況について考慮し、地域メディカルコントロール協議会での裁量とする。