添付一覧
○ミカトリオ配合錠の保険適用に係る留意事項について
(平成28年12月26日)
(保医発1226第8号)
(地方厚生(支)局医療課長・都道府県民生主管部(局)国民健康保険主管課(部)長・都道府県後期高齢者医療主管部(局)後期高齢者医療主管課(部)長あて厚生労働省保険局医療課長通知)
(公印省略)
ミカトリオ配合錠については、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)の規定に基づき製造販売承認され、使用薬剤の薬価(薬価基準)(平成20年厚生労働省告示第60号)の別表に収載されているところです。
今般、当該医薬品について、ミカトリオ配合錠の適正な使用についての指針の発出について(平成28年11月25日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課事務連絡)が発出されたことに伴い、当該医薬品に係る留意事項を下記のとおりとし、平成29年1月1日から適用するので、貴管下の保険医療機関、審査支払機関等に対して周知徹底をお願いいたします。
記
1 ミカトリオ配合錠については、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課において適正使用の指針が定められ、今般、別添のとおり連絡されているところであるので、使用に当たっては十分留意すること。
2 原則として、テルミサルタン80mg、アムロジピン5mg及びヒドロクロロチアジド12.5mgを一定の期間、同一用法・用量で継続して併用し、安定した血圧コントロールが得られている場合に、本製剤への切り替えを検討すること。
3 本製剤への切り替えに当たっては、次の事項を切り替えた月の診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
(1) テルミサルタン80mg、アムロジピン5mg及びヒドロクロロチアジド12.5mgの併用療法として使用していた品名及び使用期間
(2) テルミサルタン80mg、アムロジピン5mg及びヒドロクロロチアジド12.5mgの併用療法において、安定した血圧コントロールが得られていると判断した際に参照した血圧測定値及び当該血圧測定の実施年月日
4 本製剤の継続使用に当たっては、本製剤へ切り替えた月の翌月以降の診療報酬明細書の摘要欄に、本製剤へ切り替えた診療年月を記載すること。
[別添]
○ミカトリオ配合錠の適正な使用についての指針の発出について
(平成28年11月25日)
(事務連絡)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)あて厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課通知)
今般、平成28年9月7日の薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品第一部会における議論を踏まえて、ミカトリオ配合錠が薬事承認されました。本剤は、高血圧用治療薬として初めての三剤配合剤であることから、販売にあたり、本剤の適正な使用について、関係学会の御協力を得て別紙のとおり適正使用の指針を定めました。つきましては、貴管下の医療機関及び薬局に対する周知方をお願いします。
ミカトリオ配合錠の適正な使用について
【はじめに】
ミカトリオ配合錠は、テルミサルタン80mg、アムロジピン5mg及びヒドロクロロチアジド12.5mgの配合剤であり、本邦で初めて承認された3剤配合降圧薬である。
降圧目標を達成するためには、多くの場合2、3剤の降圧薬併用が必要となる。
異なる機序の降圧薬の併用は、お互いの降圧効果を増強しあうことにより降圧効果が大きくなり、降圧目標を達成するために有用である。さらに、配合剤に期待される利点は、服用錠数の減少による服薬アドヒアランスの改善と維持である。服薬アドヒアランスは血圧コントロールの良否とともに心血管病の発症・予後に関係することが報告されており、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2014においても、その重要性が示されている。
その一方で、配合剤は用量が固定されており、初期投与により過剰な血圧低下の恐れがある、投薬の調整をすることが難しい、副作用が生じた際に原因となる薬剤の特定が困難である等の懸念点がある。そこで、本剤が臨床現場で安全に適正に使用されることを目的とし、本邦における適正使用の指針として本ガイドラインを策定した。
なお、本ガイドラインは、厚生労働省の依頼により、一般社団法人日本循環器学会及び特定非営利活動法人日本高血圧学会(50音順)の協力のもとに策定された。
【目的】
本ガイドラインは、医師(特に、一般臨床医)、薬剤師などの医療従事者に対し、3剤配合降圧薬であるミカトリオ配合錠に関する情報提供を行うとともに、本剤の適正で効果的な使用を促すことを目的とする。
【ミカトリオ配合錠について】
ミカトリオ配合錠は、テルミサルタン80mg、アムロジピン5mg及びヒドロクロロチアジド12.5mgの配合剤である。本剤の配合成分であるアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)および利尿薬の組み合わせは、2剤併用で降圧目標が達成されない、コントロール不良高血圧患者に用いられる併用成分として国内外のガイドラインで推奨されている組み合わせの一つである。
本剤の配合成分の特徴として、テルミサルタンは、アンジオテンシンⅡタイプ1(AT1)受容体に選択的に結合し、アンジオテンシンⅡの生成経路に影響を与えることなくAT1受容体を介した血管収縮及びナトリウム貯留ホルモンであるアルドステロンの分泌を抑制し、降圧作用を発現する。アムロジピンは、作用時間の持続を目的として開発されたCa拮抗薬で、ジヒドロピリジン受容体と高い親和性を示し,細胞内へのカルシウムの流入を減少させることにより,末梢血管の平滑筋を弛緩させることで降圧作用を発現する。ヒドロクロロチアジドは、腎でのナトリウムの再吸収を抑制し、体内のナトリウムと水分の排泄を促進することで循環血漿量を減少させ、長期的には末梢血管抵抗が低下し、降圧作用を示すと考えられている。
【適正な使用について】
―添付文書より抜粋― 【効能・効果】 高血圧症 <効能・効果に関連する使用上の注意> 過度な血圧低下のおそれ等があり、本剤を高血圧治療の第一選択薬としないこと。 【用法・用量】 成人には1日1回1錠(テルミサルタン/アムロジピン/ヒドロクロロチアジドとして80mg/5mg/12.5mg)を経口投与する。本剤は高血圧治療の第一選択薬として用いない。 <用法・用量に関連する使用上の注意> 原則として、テルミサルタン80mg、アムロジピン5mg及びヒドロクロロチアジド12.5mgを一定の期間、同一用法・用量で継続して併用し、安定した血圧コントロールが得られている場合に、本剤への切り替えを検討すること。 |
原則として、以下の併用療法を「8週間以上」継続して有効性と安全性の観点から継続が妥当と主治医が判断した場合に、本剤への切り替えを検討する:①テルミサルタン80mg、アムロジピン5mg及びヒドロクロロチアジド12.5mgの単剤併用、②テルミサルタン80mg/アムロジピン5mg配合剤とヒドロクロロチアジド12.5mgの併用、③テルミサルタン80mg/ヒドロクロロチアジド12.5mg配合剤とアムロジピン5mgの併用。 |
高血圧治療において、配合剤は第一選択薬とはならない。まずは単剤、2剤の併用から治療を開始し、原則として、本配合剤の同一用法・用量(降圧薬単剤の併用や2剤配合剤の併用)の組み合わせにより安定した血圧コントロールが得られている場合に本剤へ切り替える。
本剤に変更後に、副作用の出現や過降圧等が見られた場合には速やかに中止して、変更前の治療薬に戻したり、その際に一部の成分を減量したり、他の薬剤による降圧療法に変更したりするなど、適切な高血圧管理を行うこと。 |
本剤の使用時には、降圧効果の判定や過降圧の早期発見などに朝夕の家庭血圧による評価が有用である。また、過降圧に関連して、過度の発汗、嘔吐、下痢などによる脱水がみられた場合等の注意点(血圧測定、服薬中止、速やかな医療機関の受診)を十分に情報提供することが重要である。
<補足:適切な高血圧管理>
高血圧治療における降圧目標は140/90mmHg未満とする。ただし、糖尿病や蛋白尿陽性の慢性腎臓病では降圧目標は130/80mmHg未満とする。後期高齢者は150/90mmHg未満を降圧目標とし、忍容性があれば140/90mmHg未満を目指す。
降圧薬治療は、Ca拮抗薬、ARB/ACE阻害薬、少量利尿薬、β遮断薬を主要降圧薬とし、積極的な適応や禁忌もしくは慎重使用となる病態や合併症の有無に応じて適切な降圧薬を選択する。積極的な適応がない場合の高血圧に対しては、最初に投与する降圧薬は第一選択薬となるCa拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、利尿薬の中から選択する。異なる種類の降圧薬の併用は、降圧効果が大きく降圧目標を達成するために有用である。
血圧の日内変動や季節変動の異常、仮面高血圧、血圧の不安定性(動揺性)には降圧薬の薬効や作用時間、生活習慣、精神的ストレス、高度の動脈硬化など様々な原因がある。その詳細と対策は日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン2014を参照にされたい。
本剤のようなCa拮抗薬、ARB/ACE阻害薬および利尿薬の3成分(配合剤、併用療法を問わない)により降圧目標に達しない治療抵抗性の高血圧患者の管理においては、高血圧患者の診療に必要な総合的な知識と技量を有する医師への紹介が推奨される。
以上