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○がん対策基本法の一部を改正する法律の公布について

(平成28年12月16日)

(健発1216第16号)

(都道府県知事・保健所設置市市長・特別区区長あて厚生労働省健康局長通知)

(公印省略)

がん対策基本法の一部を改正する法律については、本年11月15日に第192回臨時国会に提出され、同年12月9日に可決成立し、本日、平成28年法律第107号として公布されました。

この法律は、公布日から施行されます。

厚生労働省をはじめ政府は、平成18年に成立したがん対策基本法(平成18年法律第98号。以下「法」という。)に基づき、がん対策を着実に実施してきました。法に基づき策定する第2期がん対策推進基本計画(平成24年6月8日閣議決定)では「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」「がんと診断されたときからの緩和ケアの推進」「働く世代や小児へのがん対策」「がんの教育・普及啓発」「がん患者の就労を含めた社会的な問題」などを盛り込み、総合的な対策を進めております。また、がん対策をさらに加速するため、平成27年12月に「予防」「治療・研究」「がんとの共生」の3つの柱とするがん対策加速プランを策定したほか、本年1月には、がん登録等の推進に関する法律(平成25年法律第111号)を施行するなど、がん対策は大きく進んできました。

今般、法が成立してから10年の節目を迎え、こうしたがん対策をめぐる状況の変化等に鑑み、がん対策を更に推進するために、法の一部が改正されました。

改正の趣旨及び概要は下記のとおりであるので、貴職におかれては、その趣旨及び概要について十分御了知の上、管内市町村を始め、管内のがん診療連携拠点病院、都道府県医師会等の関係団体等に対して周知いただき、特段の御配慮をお願いいたします。

第1 改正の趣旨

今回の改正は、法の成立から10年が経過し、その間に、がん医療のみならず、がん患者に係る就労・就学支援等の社会的問題等に対処していく必要が明らかになったことを踏まえ、がん患者が尊厳を保持しつつ安心して暮らすことのできる社会の構築を目指し、がん患者が、その置かれている状況に応じ、福祉的支援・教育的支援も含む必要な支援を受けることができるようにすること等を基本理念に明記するとともに、事業主の責務について定めるほか、がん患者の療養生活の質の維持向上に係る規定の改正、がん患者の雇用の継続等に係る規定及びがんに関する教育の推進のための規定の新設等、基本的施策の拡充を図ることを主な内容とするものである。

第2 改正の概要

1 目的規定の改正

目的規定に、がん対策においてがん患者(がん患者であった者を含む。以下同じ。)がその状況に応じて必要な支援を総合的に受けられるようにすることが課題となっていることに鑑み、がん対策を推進する旨を加えること。(第1条関係)

2 基本理念の追加

基本理念として次の事項を加えること。(第2条第4号から第8号まで関係)

(1) がん患者が尊厳を保持しつつ安心して暮らすことのできる社会の構築を目指し、がん患者が、その置かれている状況に応じ、適切ながん医療のみならず、福祉的支援、教育的支援その他の必要な支援を受けることができるようにするとともに、がん患者に関する国民の理解が深められ、がん患者が円滑な社会生活を営むことができる社会環境の整備が図られること。

(2) それぞれのがんの特性に配慮したものとなるようにすること。

(3) 保健、福祉、雇用、教育その他の関連施策との有機的な連携に配慮しつつ、総合的に実施されること。

(4) 国、地方公共団体、医療保険者、医師、事業主、学校、がん対策に係る活動を行う民間の団体その他の関係者の相互の密接な連携の下に実施されること。

(5) がん患者の個人情報(個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。)の保護について適正な配慮がなされるようにすること。

3 医療保険者の責務に係る規定の改正

医療保険者が協力するよう努めなければならない施策の例示として、がん検診の結果に基づく必要な対応に関する普及啓発等を規定すること。(第5条関係)

4 国民の責務に係る規定の改正

国民の責務につき、がんに関する正しい知識の例示として「がんの原因となるおそれのある感染症」を規定するとともに、がん患者に関する理解を深めるよう努めなければならない旨を加えること。(第6条関係)

5 事業主の責務

事業主は、がん患者の雇用の継続等に配慮するよう努めるとともに、国及び地方公共団体が講ずるがん対策に協力するよう努めるものとすること。(第8条関係)

6 がん対策推進基本計画等の見直し期間に関する改正

がん対策推進基本計画及び都道府県がん対策推進計画の見直し期間について「少なくとも5年ごと」とされているところを「少なくとも6年ごと」に改めること。(第10条第7項及び第12条第3項関係)

7 がんの予防の推進に係る規定の改正

がんの予防の推進のために必要な施策の例示として、次の事項を規定すること。(第13条関係)

(1) がんの原因となるおそれのある感染症に関する啓発及び知識の普及

(2) 性別、年齢等に係る特定のがん及びその予防等に関する啓発及び知識の普及

8 がん検診によりがんの疑いがあると判定された者等が必要な診療を受けることの促進等

(1) 国及び地方公共団体は、がん検診によってがんに罹患している疑いがあり、又は罹患していると判定された者が必要かつ適切な診療を受けることを促進するため、必要な環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとすること。(第14条第2項関係)

(2) 国及び地方公共団体は、がん検診の質の向上等に関する施策を効果的に実施するため、がん検診の実態の把握のために必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。(第14条第3項関係)

9 緩和ケアのうち医療として提供されるものに携わる専門性を有する医療従事者の育成

がん医療に携わる専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の育成を図るために必要な施策の例示として、緩和ケア(がんその他の特定の疾病に罹患した者に係る身体的若しくは精神的な苦痛又は社会生活上の不安を緩和することによりその療養生活の質の維持向上を図ることを主たる目的とする治療、看護その他の行為をいう。10において同じ。)のうち医療として提供されるものに携わる医療従事者の育成を図るための施策を規定すること。(第15条関係)

10 がん患者の療養生活の質の維持向上に係る規定の改正

(1) がん患者の療養生活の質の維持向上のために必要な施策の例示として、次の事項を規定すること。(第17条関係)

① がん患者の状況に応じて緩和ケアが診断の時から適切に提供されるようにすること。

② がん患者の状況に応じた良質なリハビリテーションの提供が確保されるようにすること。

(2) 国及び地方公共団体は、がん患者の療養生活の質の維持向上のために必要な施策のほか、がん患者の家族の生活の質の維持向上のために必要な施策を講ずるものとすること。(第17条関係)

11 がん登録等の取組の推進に関する改正

国及び地方公共団体は、がんに係る調査研究の促進のため、がん登録等の推進に関する法律第2条第2項に規定するがん登録(その他のがんの罹患、診療、転帰等の状況の把握、分析等のための取組を含む。以下11において同じ。)、当該がん登録により得られた情報の活用等を推進するものとすること。(第18条第2項関係)

12 研究の推進等に係る規定の改正

(1) 国及び地方公共団体が研究の促進等を行う事項として、「がんの治療に伴う副作用、合併症及び後遺症の予防及び軽減に関する方法の開発その他のがん患者の療養生活の質の維持向上に資する事項」を加えること。(第19条第1項関係)

(2) 国及び地方公共団体が研究の促進等のために必要な施策を講ずるに当たっては、罹患している者の少ないがん及び治癒が特に困難であるがんに係る研究の促進について必要な配慮がなされるものとすること。(第19条第2項関係)

(3) 国及び地方公共団体は、がん医療に係る有効な治療方法の開発に係る臨床研究等が円滑に行われる環境の整備のために必要な施策を講ずるものとすること。(第19条第3項関係)

13 がん患者の雇用の継続等

国及び地方公共団体は、がん患者(その家族を含む。以下13及び15において同じ。)の雇用の継続又は円滑な就職に資するよう、事業主に対するがん患者の就労に関する啓発及び知識の普及その他の必要な施策を講ずるものとすること。(第20条関係)

14 がん患者における学習と治療との両立

国及び地方公共団体は、小児がんの患者その他のがん患者が必要な教育と適切な治療とのいずれをも継続的かつ円滑に受けることができるよう、必要な環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとすること。(第21条関係)

15 民間団体の活動に対する支援

国及び地方公共団体は、民間の団体が行うがん患者の支援に関する活動、がん患者の団体が行う情報交換等の活動等を支援するため、情報提供その他の必要な施策を講ずるものとすること。(第22条関係)

16 がんに関する教育の推進

国及び地方公共団体は、国民が、がんに関する知識及びがん患者に関する理解を深めることができるよう、学校教育及び社会教育におけるがんに関する教育の推進のために必要な施策を講ずるものとすること。(第23条関係)

17 施行期日等

(1) この法律は、公布の日から施行すること。(附則第1項関係)

(2) その他所要の規定の整備を行うこと。