○ポナチニブ塩酸塩製剤の使用に当たっての留意事項について
(平成28年9月28日)
(薬生薬審発0928第1号)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)
(公印省略)
ポナチニブ塩酸塩製剤(販売名:アイクルシグ錠15mg。以下「本剤」という。)については、本日、「前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病」及び「再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病」を効能又は効果として承認したところですが、血管閉塞性事象、肝毒性等の重篤な副作用があらわれること及び、国内での治験症例も極めて限られていることから、その使用に当たっては、特に下記の点について留意されるよう、貴管下の医療機関及び薬局に対する周知をお願いします。
記
1.本剤の適正使用について
(1) 本剤については、承認に際し、製造販売業者による全症例を対象とした使用成績調査をその条件として付したこと。
【承認条件】
1.医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
2.国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
(2) 本剤の警告、効能又は効果、並びに用法及び用量は以下のとおりであるので、特段の留意をお願いすること。なお、その他の使用上の注意については、添付文書を参照されたいこと。
【警告】
(1) 本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、本剤による治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分に説明し、同意を得てから投与を開始すること。
(2) 心筋梗塞、脳梗塞、網膜動脈閉塞症、末梢動脈閉塞性疾患、静脈血栓塞栓症等の重篤な血管閉塞性事象があらわれることがあり、死亡に至った例も報告されている。本剤の投与開始前に、虚血性疾患(心筋梗塞、末梢動脈閉塞性疾患等)、静脈血栓塞栓症等の既往歴の有無、心血管系疾患の危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症等)の有無等を確認した上で、投与の可否を慎重に判断すること。また、本剤投与中は患者の状態を十分に観察し、胸痛、腹痛、四肢痛、片麻痺、視力低下、息切れ、しびれ等の血管閉塞性事象が疑われる徴候や症状の発現に注意すること。(「2.重要な基本的注意(1)」の項及び「4.副作用(1)重大な副作用」の項参照)
(3) 重篤な肝機能障害があらわれることがあり、肝不全により死亡に至った例も報告されているので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。(「2.重要な基本的注意(2)」の項及び「4.副作用(1)重大な副作用」の項参照)
【効能・効果】
● 前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病
● 再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病
<効能・効果に関連する使用上の注意>
(1) 染色体検査又は遺伝子検査により慢性骨髄性白血病又はフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病と診断された患者に使用すること。
(2) 臨床試験に組み入れられた患者の前治療歴等について、〔臨床成績〕の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、本剤以外の治療の実施についても慎重に検討し、適応患者の選択を行うこと。
(3) 前治療に不耐容の患者に本剤を使用する際には、慎重に経過観察を行い、副作用の発現に注意すること。
【用法・用量】
通常、成人にはポナチニブとして45mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
<用法・用量に関連する使用上の注意>
(1) 本剤を漫然と投与しないよう、定期的に血液検査、骨髄検査、染色体検査等を行い、本剤の投与継続の要否を検討すること。
(2) 他の抗悪性腫瘍薬との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
(3) 血管閉塞性事象又はGrade3以上の心不全が発現した場合は、直ちに本剤を投与中止すること。なお、副作用が消失し、治療継続が患者にとって望ましいと判断された場合は、本剤投与を再開できるが、再開する際には、本剤の減量を考慮すること。
(4) 血管閉塞性事象及びGrade3以上の心不全以外の副作用が発現した場合には、以下の基準を参考に、本剤を休薬、減量又は投与中止すること。
1) 血液系の副作用と投与量調節基準
副作用 |
好中球数/血小板数 |
投与量調節 |
骨髄抑制(好中球減少症、血小板減少症) |
好中球絶対数(ANC)<1.0×109/L又は血小板数<50×109/L |
45mg投与時の最初の発現: ● ANC≧1.5×109/L及び血小板数≧75×109/Lに回復するまで本剤を休薬し、回復後は45mgで再開する。 45mg投与時の再発: ● ANC≧1.5×109/L及び血小板数≧75×109/Lに回復するまで本剤を休薬し、回復後は30mgで再開する。 発現時の用量が30mg: ● ANC≧1.5×109/L及び血小板数≧75×109/Lに回復するまで本剤を休薬し、回復後は15mgで再開する。 発現時の用量が15mg: ● 本剤を投与中止する。 |
2) 非血液系の副作用と投与量調節基準
副作用 |
好中球数/血小板数 |
投与量調節 |
肝機能障害 |
肝トランスアミナーゼ値>3×基準値上限(ULN)(Grade2以上) |
発現時の用量が45mg: ● Grade1以下(<3×ULN)に回復するまで本剤を休薬し、回復後は30mgで再開する。 発現時の用量が30mg: ● Grade1以下(<3×ULN)に回復するまで本剤を休薬し、回復後は15mgで再開する。 発現時の用量が15mg: ● 本剤を投与中止する。 |
以下の3つを満たす場合 ● 肝トランスアミナーゼ値≧3×ULN ● ビリルビン値>2×ULN ● アルカリホスファターゼ値<2×ULN |
本剤を投与中止する。 |
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膵炎/リパーゼ及びアミラーゼの増加 |
無症候性のGrade3又は4のリパーゼ又はアミラーゼ増加(>2×ULN)のみ |
発現時の用量が45mg: ● Grade1以下(≦1.5×ULN)に回復するまで本剤を休薬し、回復後は30mgで再開する。 発現時の用量が30mg: ● Grade1以下(≦1.5×ULN)に回復するまで本剤を休薬し、回復後は15mgで再開する。 発現時の用量が15mg: ● 本剤を投与中止する。 |
Grade3の膵炎 |
発現時の用量が45mg: ● Grade1以下に回復するまで本剤を休薬し、回復後は30mgで再開する。 発現時の用量が30mg: ● Grade1以下に回復するまで本剤を休薬し、回復後は15mgで再開する。 発現時の用量が15mg: ● 本剤を投与中止する。 |
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Grade4の膵炎 |
本剤を投与中止する。 |
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心不全 |
Grade2 |
45mg投与時の最初の発現: ● Grade1以下に回復するまで本剤を休薬し、回復後は45mgで再開する。 45mg投与時の再発: ● Grade1以下に回復するまで本剤を休薬し、回復後は30mgで再開する。 発現時の用量が30mg: ● Grade1以下に回復するまで本剤を休薬し、回復後は15mgで再開する。 発現時の用量が15mg: ● 本剤を投与中止する。 |
その他非血液系の副作用 |
7日間を超えて持続するGrade2 |
45mg投与時の最初の発現: ● Grade1以下に回復するまで本剤を休薬し、回復後は45mgで再開する。 45mg投与時の再発: ● Grade1以下に回復するまで本剤を休薬し、回復後は30mgで再開する。 発現時の用量が30mg: ● Grade1以下に回復するまで本剤を休薬し、回復後は15mgで再開する。 発現時の用量が15mg: ● 本剤を投与中止する。 |
Grade3又は4 |
発現時の用量が45mg: ● Grade1以下に回復するまで本剤を休薬し、回復後は30mgで再開する。 発現時の用量が30mg: ● Grade1以下に回復するまで本剤を休薬し、回復後は15mgで再開する。 発現時の用量が15mg: ● 本剤を投与中止する。 |
2.医療機関における適正使用に関する周知事項について
本剤については、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第79条に基づき、承認取得者である製造販売業者に対し、「製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施する」よう義務付けたので、その調査の実施にご協力願いたいこと。
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