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○労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第47条の2から第47条の4までの規定の運用について〔育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律〕

(平成28年8月2日)

(雇児発0802第2号)

(各都道府県労働局長あて厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)

(公印省略)

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「派遣法」という。)第47条の2(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の適用に関する特例)の規定については、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律第47条の2の規定の施行について」(平成11年11月17日女発第324号)においてその具体的な取扱いを示してきた。

平成28年3月31日、雇用保険法等の一部を改正する法律(平成28年法律第17号)の成立により、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号。以下「均等法」という。)に職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置の規定が、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育介法」という。)に職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置の規定が新設されるとともに、派遣法第47条の2の規定の改正、同法第47条の3(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の適用に関する特例)の規定の新設が行われ、これらの規定は、平成29年1月1日から施行されている。

今般、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第24号。以下「改正法」という。)が成立し、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号。以下「労推法」という。)に職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置の規定が新設されるとともに、均等法、育介法及び労推法にそれぞれ職場における性的な言動に起因する問題、妊娠、出産等に関する言動に起因する問題、育児休業等に関する言動に起因する問題及び優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関する事業主の責務に関する規定が新設され、これらの規定の適用に関する特例の規定が派遣法に新設され、令和2年6月1日から施行することとされたところである。

改正法による改正後の派遣法第47条の2から第47条の4までの規定についての具体的な取扱いは下記のとおりであるので、その円滑な実施を図るよう配慮されたい。

1 労働者派遣の定義

労働者派遣とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まない」ものであること(派遣法第2条第1号)

したがって、労働者派遣における派遣元、派遣先及び派遣労働者の三者間の関係は、①派遣元と派遣労働者との間に雇用関係があり、②派遣元と派遣先との間に労働者派遣契約が締結され、この契約に基づき派遣元が派遣先に労働者を派遣し、③派遣先は、派遣元から委託された指揮命令権により派遣労働者を指揮命令するというものであること。

2 特例の適用を受ける労働者派遣の役務の提供を受ける者の範囲

派遣法第47条の2から第47条の4までの特例に基づき、均等法第9条第3項、第11条第1項、第11条の2第2項、第11条の3第1項、第11条の4第2項、第12条及び第13条第1項の規定、育介法第10条(同法第16条、第16条の4及び第16条の7において準用する場合を含む。)、第16条の10、第18条の2、第20条の2、第23条の2、第25条第1項及び第25条の2第2項の規定並びに労推法第30条の2第1項及び第30条の3第2項の規定が、労働者派遣契約に基づき労働者派遣の役務の提供を受ける者(以下「派遣先の事業主」という。)もまた当該派遣労働者を雇用する事業主とみなして適用されるものであること。

なお、均等法第32条により、国家公務員及び地方公務員については均等法第2章第1節、第13条の2、同章第3節、第3章、第29条及び第30条の規定は適用されず、また、一般職の国家公務員等については均等法第2章第2節(第13条の2を除く。)の規定は適用されないが、国に労働者派遣されている派遣労働者については派遣法が適用されることから、当該労働者派遣の役務の提供を受ける国についても当該派遣労働者を雇用する事業主とみなして、均等法第9条第3項、第11条第1項、第11条の2第2項、第11条の3第1項、第11条の4第2項、第12条及び第13条第1項の適用があること。

また、育介法第61条第1項により、国家公務員及び地方公務員については育介法第2章から第9章まで、第30条、第11章、第53条、第54条、第56条、第56条の2、第60条、第62条から第64条まで及び第66条の規定は適用されないが、国に労働者派遣されている派遣労働者については派遣法が適用されることから、当該労働者派遣の役務の提供を受ける国についても当該派遣労働者を雇用する事業主とみなして、育介法第10条(同法第16条、第16条の4及び第16条の7において準用する場合を含む。)、第16条の10、第18条の2、第20条の2、第23条の2、第25条第1項及び第25条の2第2項の適用があること。

また、労推法第38条の2により、国家公務員及び地方公務員については労推法第6条から第9条まで、第6章(第27条を除く。)、第30条の4から第30条の8まで、第33条第1項(第8章の規定の施行に関するものに限る。)及び第2項並びに第36条第1項の規定は適用されず、また、一般職の国家公務員等については労推法第30条の2及び第30条の3の規定は適用されないが、国に労働者派遣されている派遣労働者については派遣法が適用されることから、当該労働者派遣の役務の提供を受ける国についても当該派遣労働者を雇用する事業主とみなして、労推法第30条の2第1項及び第30条の3第2項の規定の適用があること。

3 適用に関する特例

(1) 派遣法第47条の2の規定の概要

イ 派遣先の事業主の指揮命令の下に労働させる派遣労働者の当該労働者派遣に係る就業に関しては、派遣先の事業主もまた当該派遣労働者を雇用する事業主とみなして、均等法第9条第3項、第11条第1項、第11条の2第2項、第11条の3第1項、第11条の4第2項、第12条及び第13条第1項の規定が適用され、その結果派遣先の事業主についても均等法第9条第3項に基づく不利益取扱いの禁止、第11条第1項、第11条の3第1項、第12条及び第13条第1項の規定に基づく措置義務並びに第11条の2第2項及び第11条の4第2項の規定に基づく責務が課されるものであること。

ロ 均等法第9条第3項、第11条第1項、第11条の2第2項、第11条の3第1項、第11条の4第2項、第12条及び第13条第1項の規定については派遣法第47条の2に規定する特例に基づき、派遣元の事業主と派遣先の事業主の双方が当該規定に基づく義務を負うが、この義務は、派遣元の事業主においては派遣労働者を雇用し当該労働者を派遣先の事業主に派遣するという立場から、派遣先の事業主においては派遣労働者の指揮命令を行うという立場から、それぞれが派遣労働者について不利益取扱いの禁止、措置義務及び責務を別個に負うものであること。

なお、均等法第11条第2項、第11条の3第2項、第17条第2項及び第18条第2項の労働者に対する不利益な取扱いの禁止については、派遣労働者も対象に含まれるものであり、派遣元の事業主のみならず、派遣先の事業主もまた、当該者に派遣労働者が職場におけるセクシュアルハラスメント又は妊娠、出産等に関するハラスメントの相談を行ったこと等を理由として、当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒む等、当該派遣労働者に対する不利益な取扱いを行ってはならないものであること。

(2) 均等法上の具体的な責務

イ 妊娠・出産等を理由とする解雇その他不利益取扱いの禁止(均等法第9条第3項関係)

妊娠・出産等を理由とする解雇その他不利益な取扱いについては、「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針(平成18年厚生労働省告示第614号)」第4の3において示しているので、これに則って適切に対処しなければならないこと。

ロ 職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置(均等法第11条第1項関係)

(イ) 職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置の内容については、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号。以下「セクハラ防止指針」という。)」4において示しているので、これに則って適切に措置を講じなければならないこと。

(ロ) セクハラ防止指針4の(1)の「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」については、実際に労働者派遣が行われた場合においては、派遣労働者が実際に労務提供を行うのは派遣先事業所においてであり、作業の指揮命令及びそれに伴う管理を行っているのも派遣先の事業主であることから、派遣元の事業主は、派遣先事業所におけるセクシュアルハラスメントに関する事業主の方針、相談体制等派遣先の事業主が雇用管理上講じている措置内容を事前に派遣労働者に周知等しておくことが望ましいこと。

(ハ) セクハラ防止指針4の(2)の「相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」については、派遣元の事業主が必要な措置を講じていると認められる例としては、例えば、派遣先事業所に派遣した派遣労働者等からの相談についても対応することができる体制を整えておく等の措置を講ずることが挙げられること。

(ニ) セクハラ防止指針4の(3)の「職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」については、派遣元の事業主が必要な措置を講じていると認められる例としては、例えば、次に掲げる措置を講ずることが挙げられること。

① 派遣労働者から派遣先事業所においてセクシュアルハラスメントを受けた旨の相談又は苦情を受けた場合には、派遣先の事業主等に対して当該事案に関する事実関係の調査や再発防止のための措置等の適正な対処を申し入れる等派遣先事業所における担当部門と連携等をとりつつ円滑な対応を図ること。

② 派遣労働者が派遣先事業所においてセクシュアルハラスメントを行った場合において、派遣先の事業主等から相談又は苦情を受けた場合には、事案の内容や状況に応じ、他の労働者を派遣する等の雇用管理上の措置や就業規則等に基づく措置を講ずること。

(ホ) セクハラ防止指針4の(4)の「(1)から(3)までの措置と併せて講ずべき措置」については、労働者のプライバシーを保護すること及び当該労働者が不利益取扱いを受けないようにすること等については、労働者派遣が行われる場合においては、派遣先の事業主においても措置しなければならないこと。

ハ 職場における性的な言動に起因する問題に関する事業主の責務(均等法第11条の2第2項関係)

職場における性的な言動に起因する問題に関する事業主の責務については、セクハラ防止指針3の(1)において示しているので、これに則って適切に必要な配慮を行うよう努めなければならないこと。

ニ 職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置(均等法第11条の3第1項関係)

(イ) 職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置の内容については、「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成28年厚生労働省告示第312号。以下「妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針」という。)4において示したところであるので、これに則って適切に措置を講じなければならないこと。

(ロ) 妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4の(1)の「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」については、実際に労働者派遣が行われた場合においては、派遣労働者が実際に労務提供を行うのは派遣先事業所においてであり、作業の指揮命令及びそれに伴う管理を行っているのも派遣先の事業主であることから、派遣元の事業主は、派遣先事業所における妊娠、出産等に関するハラスメントに関する事業主の方針、相談体制等派遣先の事業主が雇用管理上講じている措置内容を事前に派遣労働者に周知等しておくことが望ましいこと。

(ハ) 妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4の(2)の「相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」については、派遣元の事業主が必要な措置を講じていると認められる例としては、例えば、派遣先事業所に派遣した派遣労働者等からの相談についても対応することができる体制を整えておく等の措置を講ずることが挙げられること。

(ニ) 妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4の(3)の「職場における妊娠、出産等に関するハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」については、派遣元の事業主が必要な措置を講じていると認められる例としては、例えば、次に掲げる措置を講ずることが挙げられること。

① 派遣労働者から派遣先事業所において妊娠、出産等に関するハラスメントを受けた旨の相談又は苦情を受けた場合には、派遣先の事業主等に対して当該事案に関する事実関係の調査や再発防止のための措置等の適正な対処を申し入れる等派遣先事業所における担当部門と連携等をとりつつ円滑な対応を図ること。

② 派遣労働者が派遣先事業所において妊娠、出産等に関するハラスメントを行った場合において、派遣先の事業主等から相談又は苦情を受けた場合には、事案の内容や状況に応じ、他の労働者を派遣する等の雇用管理上の措置や就業規則等に基づく措置を講ずること。

(ホ) 妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4の(4)の「職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置」については、派遣元の事業主が必要な措置を講じていると認められる例としては、例えば、派遣労働者が妊娠等した場合において、派遣元の事業主が、当該派遣労働者の労働能率の低下や休業を補い、派遣契約に定められた役務の提供ができるよう代替要員を追加して派遣することが挙げられること。

(ヘ) 妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4の(5)の「(1)から(4)までの措置と併せて講ずべき措置」については、労働者のプライバシーを保護すること及び当該労働者が不利益取扱いを受けないようにすること等については、労働者派遣が行われる場合においては、派遣先の事業主においても措置しなければならないこと。

(ト) 妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針5の(2)の「妊娠等した労働者への周知・啓発の例」としては、例えば、派遣元の事業主が、派遣労働者が妊娠等した場合において、当該者に対し、制度等の利用ができるという知識を持つことや、周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら自身の体調等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つこと等を周知・啓発することが挙げられること。

ホ 職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する事業主の責務(均等法第11条の4第2項関係)

職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する事業主の責務については、妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針3の(1)において示しているので、これに則って適切に必要な配慮を行うよう努めなければならないこと。

ヘ 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(均等法第12条及び第13条第1項関係)

(イ) 母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるための時間の確保

母子保健法(昭和40年法律第141号)第10条及び第13条に規定する保健指導及び健康診査については、女性労働者の場合には受診の時間を確保することが困難な場合があることから、事業主は必要な時間を確保することができるようにしなければならないとされたことは「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律の一部施行(第2次施行分)について(平成9年11月4日付け基発第695号女発第36号。以下「第2次施行分通達」という。)」第1の1において示したとおりであるが、労働者派遣が行われる場合においては、派遣先の事業主においても措置しなければならないものであること。

なお、保健指導又は健康診査を受けるための必要な時間の確保については、妊産婦を労働者派遣した場合はもとより、派遣後に当該派遣労働者が妊娠した場合においても措置しなければならないことは当然のことであること。

おって、労働者派遣が行われた場合においても、労働基準法第65条に基づく産前産後休業の付与については派遣元の事業主の義務であること。また、派遣元の事業主が、派遣労働者が妊娠又は出産することを退職理由として予定すること及び派遣労働者が妊娠又は出産したこと等を理由に解雇その他不利益な取扱いをすることは、均等法第9条に違反するものであること。

(ロ) 保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために講ずべき措置

妊娠中及び出産後の女性労働者が均等法第12条の保健指導又は健康診査を受け、医師等から母体又は胎児の健康保持等について指導を受けた場合は、事業主が、当該女性労働者がその指導事項を守ることができるようにするために勤務時間の変更や勤務の軽減等の措置を講じなければならないことは第2次施行分通達第1の2において示したとおりであるが、労働者派遣が行われる場合においては、派遣先の事業主においても措置しなければならないものであること。

したがって、派遣先の事業主は、「妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(平成9年労働省告示第105号)」に則って、派遣労働者についても必要な措置を講じなければならないこと。

(3) 派遣法第47条の3の規定の概要

イ 派遣先の事業主の指揮命令の下に労働させる派遣労働者の当該労働者派遣に係る就業に関しては、派遣先の事業主もまた当該派遣労働者を雇用する事業主とみなして、育介法第10条(同法第16条、第16条の4及び第16条の7において準用する場合を含む。)、第16条の10、第18条の2、第20条の2、第23条の2、第25条第1項及び第25条の2第2項の規定が適用され、その結果派遣先の事業主についても育介法第10条(同法第16条、第16条の4及び第16条の7において準用する場合を含む。)、第16条の10、第18条の2、第20条の2及び第23条の2に基づく不利益取扱いの禁止、第25条第1項の規定に基づく措置義務並びに第25条の2第2項の規定に基づく責務が課されるものであること。

ロ 育介法第10条(同法第16条、第16条の4及び第16条の7において準用する場合を含む。)、第16条の10、第18条の2、第20条の2、第23条の2、第25条第1項及び第25条の2第2項の規定については、派遣法第47条の3に規定する特例に基づき、派遣元の事業主と派遣先の事業主の双方が当該規定に基づく義務を負うが、この義務は、派遣元の事業主においては派遣労働者を雇用し当該労働者を派遣先の事業主に派遣するという立場から、派遣先の事業主においては派遣労働者の指揮命令を行うという立場から、それぞれが派遣労働者について不利益取扱いの禁止、措置義務及び責務を別個に負うものであること。

なお、法第25条第2項、第52条の4第2項及び第52条の5第2項の労働者に対する不利益な取扱いの禁止については、派遣労働者も対象に含まれるものであり、派遣元の事業主のみならず、派遣先の事業主もまた、当該者に派遣労働者が職場における育児休業等に関するハラスメントの相談を行ったこと等を理由として、当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒む等、当該派遣労働者に対する不利益な取扱いを行ってはならないものであること。

(4) 育介法上の具体的な責務

イ 育児休業等を理由とする解雇その他不利益取扱いの禁止(育介法第10条等関係)

育児休業等を理由とする解雇その他不利益な取扱いについては、「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成21年厚生労働省告示第509号。以下「育介指針」という。)第2の11において示しているので、これに則って適切に対処しなければならないこと。

ロ 職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置(育介法第25条第1項関係)

(イ) 職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置の内容については、育介指針第2の14の(3)において示したところであるので、これに則って適切に措置を講じなければならないこと。

(ロ) 育介指針第2の14の(3)のイの「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」については、実際に労働者派遣が行われた場合においては、派遣労働者が実際に労務提供を行うのは派遣先事業所においてであり、作業の指揮命令及びそれに伴う管理を行っているのも派遣先の事業主であることから、派遣元の事業主は、派遣先事業所における育児休業等に関するハラスメントに関する事業主の方針、相談体制等派遣先の事業主が雇用管理上講じている措置内容を事前に派遣労働者に周知等しておくことが望ましいこと。

(ハ) 育介指針第2の14の(3)のロの「相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」については、派遣元の事業主が必要な措置を講じていると認められる例としては、例えば、派遣先事業所に派遣した派遣労働者等からの相談についても対応することができる体制を整えておく等の措置を講ずることが挙げられること。

(ニ) 育介指針第2の14の(3)のハの「職場における育児休業等に関するハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」については、派遣元の事業主が必要な措置を講じていると認められる例としては、例えば、次に掲げる措置を講ずることが挙げられること。

① 派遣労働者から派遣先事業所において育児休業等に関するハラスメントを受けた旨の相談又は苦情を受けた場合には、派遣先の事業主等に対して当該事案に関する事実関係の調査や再発防止のための措置等の適正な対処を申し入れる等派遣先事業所における担当部門と連携等をとりつつ円滑な対応を図ること。

② 派遣労働者が派遣先事業所において育児休業等に関するハラスメントを行った場合において、派遣先の事業主等から相談又は苦情を受けた場合には、事案の内容や状況に応じ、他の労働者を派遣する等の雇用管理上の措置や就業規則等に基づく措置を講ずること。

(ホ) 育介指針第2の14の(3)のニの「職場における育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置」については、派遣元の事業主が必要な措置を講じていると認められる例としては、例えば、派遣労働者が子の看護休暇等を取得した場合において、派遣元の事業主が、当該派遣労働者の不在等を補い、派遣契約に定められた役務の提供ができるよう代替要員を追加して派遣することが挙げられること。

(ヘ) 育介指針第2の14の(3)のホの「イからニまでの措置と併せて講ずべき措置」については、労働者のプライバシーを保護すること及び当該労働者が不利益取扱いを受けないようにすること等については、労働者派遣が行われる場合においては、派遣先の事業主においても措置しなければならないこと。

(ト) 育介指針第2の14の(4)のロの「制度等の利用の対象となる労働者への周知・啓発の例」としては、例えば、派遣元の事業主が、派遣労働者に対し、制度等の利用ができるという知識を持つことや、周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら自身の制度の利用状況等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つこと等を周知・啓発することが挙げられること。

ハ 職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関する事業主の責務(育介法第25条の2第2項関係)

職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関する事業主の責務については、育介指針第2の14の(2)のイにおいて示しているので、これに則って適切に必要な配慮を行うよう努めなければならないこと。

(5) 派遣法第47条の4の規定の概要

イ 派遣先の事業主の指揮命令の下に労働させる派遣労働者の当該労働者派遣に係る就業に関しては、派遣先の事業主もまた当該派遣労働者を雇用する事業主とみなして、労推法第30条の2第1項及び第30条の3第2項の規定が適用され、その結果派遣先の事業主についても労推法第30条の2第1項の規定に基づく措置義務及び労推法第30条の3第2項の規定に基づく責務が課されるものであること。

ロ 労推法第30条の2第1項及び第30条の3第2項の規定については派遣法第47条の4に規定する特例に基づき、派遣元の事業主と派遣先の事業主の双方が当該規定に基づく義務を負うが、この義務は、派遣元の事業主においては派遣労働者を雇用し当該労働者を派遣先の事業主に派遣するという立場から、派遣先の事業主においては派遣労働者の指揮命令を行うという立場から、それぞれが派遣労働者について措置義務及び責務を別個に負うものであること。

なお、労推法第30条の2第2項、第30条の5第2項及び第30条の6第2項の労働者に対する不利益な取扱いの禁止については、派遣労働者も対象に含まれるものであり、派遣元の事業主のみならず、派遣先の事業主もまた、当該者に派遣労働者が職場におけるパワーハラスメントの相談を行ったこと等を理由として、当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒む等、当該派遣労働者に対する不利益な取扱いを行ってはならないこと。

(6) 労推法上の具体的な責務

イ 職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置(労推法第30条の2第1項関係)

(イ) 職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置の内容については、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号。以下「パワハラ防止指針」という。)」4において示しているので、これに則って適切に措置を講じなければならないこと。

(ロ) パワハラ防止指針4の(1)の「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」については、実際に労働者派遣が行われた場合においては、派遣労働者が実際に労務提供を行うのは派遣先事業所においてであり、作業の指揮命令及びそれに伴う管理を行っているのも派遣先の事業主であることから、派遣元の事業主は、派遣先事業所におけるパワーハラスメントに関する事業主の方針、相談体制等派遣先の事業主が雇用管理上講じている措置内容を事前に派遣労働者に周知等しておくことが望ましいこと。

(ハ) パワハラ防止指針4の(2)の「相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」については、派遣元の事業主が必要な措置を講じていると認められる例としては、例えば、派遣先事業所に派遣した派遣労働者等からの相談についても対応することができる体制を整えておく等の措置を講ずることが挙げられること。

(ニ) パワハラ防止指針4の(3)の「職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」については、派遣元の事業主が必要な措置を講じていると認められる例としては、例えば、次に掲げる措置を講ずることが挙げられること。

① 派遣労働者から派遣先事業所においてパワーハラスメントを受けた旨の相談又は苦情を受けた場合には、派遣先の事業主等に対して当該事案に関する事実関係の調査や再発防止のための措置等の適正な対処を申し入れる等派遣先事業所における担当部門と連携等をとりつつ円滑な対応を図ること。

② 派遣労働者が派遣先事業所においてパワーハラスメントを行った場合において、派遣先の事業主等から相談又は苦情を受けた場合には、事案の内容や状況に応じ、他の労働者を派遣する等の雇用管理上の措置や就業規則等に基づく措置を講ずること。

(ホ) パワハラ防止指針4の(4)の「(1)から(3)までの措置と併せて講ずべき措置」については、労働者のプライバシーを保護すること及び当該労働者が不利益取扱いを受けないようにすること等については、労働者派遣が行われる場合においては、派遣先の事業主においても措置しなければならないこと。

ロ 職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関する事業主の責務(労推法第30条の3第2項関係)

職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関する事業主の責務については、パワハラ防止指針3の(1)において示しているので、これに則って適切に必要な配慮を行うよう努めなければならないこと。