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○平成28年熊本地震の復旧工事における土砂崩壊災害防止対策等の徹底について

(平成28年6月1日)

(基安安発0601第1号)

(愛媛労働局労働基準部長・福岡労働局労働基準部長・佐賀労働局労働基準部長・長崎労働局労働基準部長・熊本労働局労働基準部長・大分労働局労働基準部長・宮崎労働局労働基準部長・鹿児島労働局労働基準部長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長通知)

(契印省略)

本年4月14日以降、熊本県を中心に断続的に発生した地震に係る復旧工事等については、平成28年4月21日付け0421基安安発第1号、0421基安労発第2号により指示したところです。

被災地においては6月、7月の降水量が年間を通じて最も多く、土砂崩壊現場において地山に緩みが生じ、斜面が再度崩壊する等のおそれが高まることから、建設工事等に関わる労働者の土砂崩壊災害防止対策等の徹底を図る必要があります。

ついては、復旧工事における土砂崩壊災害防止対策等の徹底を図るため、別添のとおり建設関係団体あて要請を行ったので了知するとともに、地方公共団体、国土交通省九州地方整備局、農林水産省九州農政局等の関係機関と連携し復旧工事に係る情報を入手の上、管内事業場等に対し指導を徹底されるようお願いいたします。

(別添)

○平成28年熊本地震の復旧工事における土砂崩壊災害防止対策等の徹底について

(平成28年6月1日)

(基安安発0601第2号)

(建設業労働災害防止協会会長・(一社)全国建設業協会会長・(一社)日本建設業連合会会長・(一社)全国中小建設業協会会長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長通知)

(契印省略)

本年4月14日以降、熊本県を中心に断続的に発生した地震に係る復旧工事等については、平成28年4月21日付け0421基安安発第2号、0421基安労発第3号により労働災害防止対策に十分留意した施工が行われるよう、周知を依頼したところです。

被災地においては6月、7月の降水量が年間を通じて最も多く、土砂崩壊現場において地山に緩みが生じ、斜面が再度崩壊する等のおそれが高まること等から、建設工事等に関わる労働者の土砂崩壊災害防止対策等の徹底を図る必要があります。

ついては、下記の事項を踏まえ、土砂崩壊災害防止対策等に十分留意した施工が行われるよう、貴団体会員等に対して周知いただきますよう、よろしくお願いいたします。

おって、平成27年6月29日付け基安安発0629第1号「『斜面崩壊による労働災害の防止対策に関するガイドライン』の策定について」を別添1、平成10年3月23日付け基発第120号「土石流による労働災害防止のためのガイドラインの策定について」を別添2として添付するので、参考にしてください。

1 土砂崩壊災害防止対策

(1) 地山の掘削を伴う工事の施工に当たっては、降雨の影響により地山に緩みが生じている可能性があることに十分に留意の上、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)(以下「安衛則」という。)第355条に基づき、作業箇所及びその周辺の地山について、形状、地質及び地層の状態、含水及び湧水の状態等をあらかじめ十分に調査すること。

(2) 上記(1)の調査結果を踏まえ、作業計画を定め、又は作業計画を変更し、これに基づき作業を行うこと。

(3) 土砂崩壊による災害の防止には、亀裂の進展、連続した小石の落石等の崩壊の兆候を感知することが重要であるので、「斜面崩壊による労働災害の防止対策に関するガイドライン」の「変状時点検表」(別添1の別紙3)を活用し、斜面の状態を適切に点検すること。

(4) 掘削の作業に当たっては、安衛則第358条に基づき点検者を指名し、作業箇所及びその周辺の地山について、通常の場合よりも頻度を高めて点検を行うことにより、地山の異常をできるだけ早期に発見するよう努めること。また、必要に応じ、地山の状況を監視する者を配置すること。

(5) 土砂崩壊のおそれがある場合には、安衛則第361条に基づき、あらかじめ、堅固な構造の土止め支保工を設ける等土砂崩壊による災害を防止するための措置を講ずること。また、土止め支保工を設ける等の作業中における災害の防止にも留意すること。

(6) 復旧工事のうち、地山の掘削を伴わない工事についても、斜面の近傍で工事を実施する場合には、上記(1)から(5)に準じ、事前調査及び点検、土砂崩壊のおそれがある場合における措置の徹底を図ること。

2 土石流災害防止対策

(1) 土石流危険河川における工事の施工に当たっては、安衛則第575条の9に基づき、作業場所から上流の河川の形状、その周辺における崩壊地の状況等をあらかじめ十分に調査すること。

(2) 土石流の早期把握等の措置を講ずるための警戒降雨量基準、作業を中止して労働者を退避させるための作業中止降雨量基準等を設定し、必要に応じ見直すこと。また、降雨量が警戒降雨量基準に達していなくても、危険が予想される場合には、作業場所から上流の状況を監視する等の措置を講ずること。

(3) 土石流等の発生を検知するため、土石流検知機器をその特性、地形条件、管理操作性等に十分留意し選定すること。また、必要に応じ監視カメラを併用すること。検知機器の設置場所の選定に当たっては、以下の点に留意すること。

ア 河川の状況に応じ支川において発生・流下してくる土石流を監視できること。

イ 検知機器の設置場所から作業場所まで土石流が到達するまでに全ての労働者が退避できること。

ウ 検知機器の点検を適切に実施すること。

(4) 土石流の前兆として小石の落石、河川の水量の増加が発生することがあるので、これに留意すること。また、土砂災害警戒情報を常時確認するとともに、降雨量を把握し、土石流災害が発生するおそれが高まった場合には直ちに作業を中止し、速やかに安全な場所に退避すること。

なお、一般に土石流は表層崩壊によるものが多いが、深層崩壊による土石流は斜面が森林であっても発生することがあることから、上流が森林であっても十分に警戒すること。

(5) 安衛則第575条の14及び安衛則第575条の15に基づき、警報用設備及び避難用設備の点検を実施するとともに、警報及び避難の方法等を労働者に十分周知すること。

(参考)

別添1及び別添2のインターネット掲載アドレス

「斜面崩壊による労働災害の防止対策に関するガイドライン」の策定について

https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-56/hor1-56-39-1-0.htm

土石流による労働災害防止のためのガイドラインの策定について

https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-39/hor1-39-4-1-0.htm

(別添1)

○「斜面崩壊による労働災害の防止対策に関するガイドライン」の策定について

(平成27年6月29日)

(基安安発0629第1号)

(都道府県労働局労働基準部長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長通知)

(契印省略)

土砂崩壊による労働災害は、溝掘削時の溝崩壊、斜面の切り取り工事中の斜面崩壊によるものがほとんどを占めている状況にある。溝掘削時の溝崩壊については、「土止め先行工法に関するガイドラインの策定について」(平成15年12月27日付け基発第1217001号)により「土止め先行工法」が普及することにより労働災害の防止に一定の効果が現れており、今後は斜面崩壊による労働災害防止対策の強化を図ることが必要である。

独立行政法人労働安全衛生総合研究所は、平成21年度に「斜面崩壊による労働災害の防止対策に関する調査研究会」を設置し、地山の点検については発注者、設計者及び施工者が同じ点検表を用いて斜面に関する情報を共有し、対策を講ずることが労働災害の防止上効果的である旨の報告を取りまとめた。

この報告を受け、建設業労働災害防止協会は、平成22年度から23年度にかけて実態調査を実施し、斜面掘削工事での土砂崩壊による労働災害を防止するために発注者、設計者及び施工者の三者が行う点検、協力、共有すべき情報等に係る具体的方法を検討した。

厚生労働省では、これらの検討結果等を受け、今般、労働安全衛生規則第355条の調査及び第358条の点検のより適切な実施方法、施工者が発注者及び設計者と協力して斜面崩壊の危険性に関する情報を共有するために実施することが望ましい方法及びそれらの留意事項を「斜面崩壊による労働災害の防止対策に関するガイドライン」(別添1)としてとりまとめたので、関係事業者にその普及・定着を図り、建設業における斜面崩壊による労働災害防止対策の一層の推進を図られたい。

なお、関係団体に対し、本ガイドラインに基づく措置の適切な実施のため、会員に対して周知啓発に努めるよう、別添2により要請し、また、国土交通省、農林水産省及び林野庁に対し、本ガイドラインに基づく措置が直轄工事で適切に実施されるよう、別添3により要請しているので了知されたい。

[別添1]

斜面崩壊による労働災害の防止対策に関するガイドライン

第1 趣旨・目的

道路工事、砂防工事等に伴う大規模な地山の掘削作業においては、斜面の安定性の観点から、通常は事前に詳細な地質調査が行われ、当該調査により把握した地質の状況と掘削高さによって事前に掘削勾配が決定される。しかし、各種工事の実施に伴う中小規模の地山の掘削作業では、十分な地質調査が事前になされておらず、施工開始後に設計図書が地質の状況を適切に反映していないことが判明する場合もある。また、掘削中の斜面は、降雨、湧水等により日々変化し、それらの変化が斜面崩壊につながり、労働災害が発生する場合がある。

このような労働災害を防止するため、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)第355条では、地山の掘削の作業を行う場合において、地山の崩壊等により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、あらかじめ、作業箇所等について調査することが事業者に義務付けられており、また、第358条では、明かり掘削の作業を行う場合には、点検者を指名し、日々の地山の点検を実施すること等が事業者に義務付けられている。そして、斜面崩壊による労働災害の防止を図るためには、点検により地山の状況を的確に把握すること及び工事関係者が点検結果に基づいた斜面崩壊の危険性に関する情報を共有することが必要不可欠である。

このため、本ガイドラインは、主に、事業者(施工者)が発注者から請け負って行う明り掘削のうち斜面掘削を伴う工事(以下「斜面掘削工事」という。)に関して、安衛則第355条の調査及び第358条の点検のより適切な実施方法、施工者が発注者及び設計者と協力して斜面崩壊の危険性に関する情報を共有するために実施することが望ましい方法及びそれらの留意事項を示すこととする。

本ガイドラインにより、工事関係者が斜面崩壊による災害防止のために必要な対策を適切に実施することを促進し、もって斜面崩壊による労働災害の防止に資することとする。

第2 適用対象

本ガイドラインは、次の1の工事に伴う2の作業に適用する。

1 適用する工事

主に中小規模の斜面掘削工事を対象とする。ただし、大規模な掘削工事に本ガイドラインを適用することも差支えない。(土止め先行工法によるものを除く。)

2 適用する作業

(1) 設計者の作業

斜面の設計

(2) 施工者の作業

手掘り又は機械掘りによる斜面の掘削作業、擁壁工事等に伴う床掘り、型枠の組立・解体、床均し、丁張り、ブロック積み、コンクリート打設の作業等及びその施工管理

第3 用語の定義

本ガイドラインで使用する主な用語の定義は、労働安全衛生関係法令で規定されているもののほか、次によるものとする。

1 斜面等に関する定義

(1) 「斜面」とは、自然又は人工的に形成された傾斜している地山の面をいう。

(2) 「切土部」とは、工事の対象となる斜面のうち、掘削し、地山の土砂を取り去る部分をいう。

(3) 「残斜面」とは、工事の対象となる斜面のうち、掘削せずに傾斜を残しておく部分をいう。

(4) 「斜面崩壊」とは、斜面を形成する地山が安定性を失い崩壊することをいう。

(5) 中小規模の斜面掘削作業とは、切土部の掘削高さが概ね1.5メートル以上10メートル以下の斜面の掘削作業をいい、大規模な斜面掘削作業とは、切土部の掘削高さが概ね10メートルを超える斜面の掘削の作業をいう。

ただし、土止め先行工法による作業の場合はこの限りではない。

(6) 「ハード対策」とは、斜面崩壊の前兆である斜面の変状の進行を防止するための対策のうち、斜面を補強する等の工事計画の変更を伴うものをいう。

なお、「変状」とは、普通とは異なる状態のことであり、ここでは斜面崩壊の前兆現象として、斜面自体に亀裂、はらみ等が発生している状態をいう。

2 設計業務・工事関係者等に関する定義

(1) 「発注者」とは、仕事を他の者から請け負わずに注文する者をいい、公的機関、民間機関及び個人のいずれも含むものとする。

(2) 「調査者」とは、発注者が調査業務を外注した場合における当該調査業務を行う建設関連業者(測量業者、地質調査業者、建設コンサルタント等)をいう。

(3) 「設計者」とは、発注者が設計業務を外注した場合における当該設計業務を行う建設関連業者(建設コンサルタント等)をいう。

(4) 「施工者」とは、斜面掘削工事を実際に行う者のことといい、労働安全衛生法(昭和47年法律第57条。以下「安衛法」という。)第15条に規定する元方事業者及び関係請負人がいる場合には双方を含むものとする。

なお、発注者が施工業務を外注せず、当該発注者の施工担当部署が施工する場合には、本ガイドラインにおいては発注者と施工者の両方に該当するものとして取り扱う。

(5) 「点検者」とは、下記3の点検表による点検を行う者をいう。安衛則第358条に基づいて施工者が選任する点検者に加え、調査者及び設計者が点検を実施する場合における当該点検を行う者も含むものである。

(6) 「確認者」とは、点検者が行った点検内容に不備等が無いかを確認し、対応について判断する者をいう。点検者とは異なり、法令上、その選任が義務付けられているものではないが、調査者、設計者又は施工者が選任する確認者のいずれも含むものである。なお、確認者の選任に当たっては、点検者とは異なる者を選任するものとする。

(7) 「安全性検討関係者会議」とは、施工者が、変状の進行を確認した際に、斜面の状況を共有し、ハード対策等の実施の必要性を検討するために施工者が発注者に参加を要請して行う会議をいう。

3 点検表等に関する定義等

(1) 「点検表」とは、掘削する地山の状況を把握するため、設計者又は施工者が、目視等により点検を実施する場合の点検項目を一覧表にしたものをいい、以下の3種類がある。

・設計・施工段階別点検表(別紙1)

・日常点検表(別紙2)

・変状時点検表(別紙3)

3つの点検表の目的、点検時期は以下の①から③までのとおりであり、これらの点検表の使用単位は、地層ごととする。ただし、斜面の幅が長く、1枚の点検表を当該地層に適用することが困難な場合には、幅20メートル単位を目安として点検表を使用するものとする。

なお、日常点検表(②のア、ウ及びエの点検時期に限る。)は、安衛則第358条第1号において施工者に義務付けられている点検に係る事項であり、その他は、点検の実施が望ましいものとして点検表を示すものである。

① 設計・施工段階別点検表

設計及び施工工程の各段階において、地形、地質状況等の斜面崩壊に関する地盤リスクの有無を確認し、安全に作業ができる掘削勾配であるかを確認するために使用するもの。

点検時期は、次のとおりである。

ア 設計時、イ 施工計画時、ウ 丁張設置時、エ 掘削作業前

オ 掘削作業終了時

② 日常点検表

施工段階において、斜面崩壊の前兆である斜面の変状を発見するために使用するもの。

点検時期は、次のとおりである。

ア 毎日の作業開始前、イ 毎日の作業終了時、ウ 大雨時

エ 中震(震度4)以上の地震の後 等

③ 変状時点検表

日常点検表で変状を確認した場合、変状の推移を観察し、斜面崩壊の危険性の有無を確認するために使用するもの。

点検は、変状の状況に応じて、必要な頻度で実施する。

(2) 「異常時対応シート」とは、施工者が、変状時点検表により変状の進行を確認した場合に、発注者に当該斜面の異常、安全措置の状況等を元請事業者、発注者等に報告するため作成するシート(別紙4)をいう。

第4 発注者、設計者及び施工者の協力等の必要性

斜面掘削工事は、多様な工法により実施され、関連作業も数多いことから、斜面掘削工事を安全に実施するためには、事前に斜面を形成する地山の状況を的確に把握し、その結果を設計・施工工程に反映することが必要である。

しかしながら、あらかじめ掘削箇所の全ての地質を把握することは困難であり、実際に掘削して初めて地山の状況が明らかになることも少なからずある。

このため、施工者は、施工途中で新たな地盤リスクが判明した場合には、その情報を速やかに発注者及び、設計者と情報を共有した上で、必要な対策について検討を行い、適切な措置を講じることが重要である。このとき、必要に応じ情報共有の対象に調査者を含めるものとする。

これらについては、安衛法第31条の4により発注者は、「その請負人に対し、当該仕事に関し、その指示に従って当該請負人の労働者を労働させたならば、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反することとなる指示をしてはならない」とされていること及び公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針において「設計図書に示された施工条件と実際の工事現場の状態が一致しない場合、設計図書に示されていない施工条件について予期することができない特別な状態が生じた場合その他の場合において必要があると認められるときは、適切に設計図書の変更を行うものとする。さらに、工事内容の変更等が必要となり、工事費用や工期に変動が生じた場合には、施工に必要な費用や工期が適切に確保されるよう、公共工事標準請負契約約款(昭和25年2月21日中央建設業審議会決定・勧告)に沿った契約約款に基づき、必要な変更契約を適切に締結するものとする。」とされていることに留意すること。

設計者、施工者等は、それぞれ、安衛則の規定、当該ガイドライン等に基づき、それぞれが第5及び第6に示す事項を確実に実施するとともに、平素より相互にコミュニケーションを円滑にし、適切に情報共有できるよう特に留意する必要がある。

第5 設計者が設計を実施するに当たっての留意事項等

(1) 的確な事前調査及び点検の実施

設計者は、工事の対象となる斜面の地山の地質の状況(土・岩質区分)、地盤条件(斜面の安定性)等を適切に把握するため、調査者に実施させることも含め、必要に応じて文献調査、地表地質踏査、ボーリング等による地質調査等により事前調査を実施すること。

また、点検の実施に当たっては、設計者(点検を調査者に実施させる場合は調査者も含む)は、点検者を選任し、設計・施工段階別点検表により斜面の状態を点検させるとともに、確認者を選任して点検者が行った点検内容に不備等が無いかを確認すること。設計者は、設計・施工段階別点検表を発注者に提出するとともに、必要な対応を取ること。

(2) 適切な詳細設計の実施

設計者は、事前調査及び点検の結果を踏まえ、工事数量算出要領及び各種設計基準・指針に照らして工法、掘削勾配等の詳細設計を検討すること。詳細設計の検討に当たっては、安衛法第31条の4の規定に留意し、安衛則に規定された勾配での掘削とする等、安衛法又はこれに基づく命令の規定を遵守した設計とすること。

(3) 安全性検討関係者会議への参加

施工者から発注者に異常時対応シートが提出され、発注者から安全性検討関係者会議への参加を要請された場合は、同会議に出席すること。

第6 施工者の実施事項

1 元方事業者が実施すべき事項

(1) 統括安全衛生管理体制の確立及び適切な統括安全衛生管理の実施

元方事業者は、現場の規模に応じて統括安全衛生責任者を選任する等により、安衛法に基づく統括安全衛生管理体制を確立するとともに、特に安衛法第30条第1項第1号から第3号までに規定する次の事項に重点を置き、斜面掘削工事現場での統括安全衛生管理を徹底しなければならない。

① 協議組織を設置し、その会議を定期的に開催して、斜面に関する情報を共有する。

② 毎作業日に、関係請負人が行う作業の連絡・調整を随時行う。

③ 毎作業日に少なくとも1回、作業場所を巡視する。

(2) 作業主任者の選任

元方事業者が自ら2m以上の高さの斜面を掘削する作業を行うときには、安衛則第359条の規定に基づき、地山の掘削作業主任者を選任し、その者の指揮により、当該作業を行わなければならない。

(3) 関係請負人に対する技術上の指導等

元方事業者は、安衛法第29条の2の規定に基づき、工事を実施する関係請負人がその場所に係る危険を防止するための措置を適正に講ずるとともに、第30条第1項第4号の規定に基づき、関係請負人が、点検者に対して適切に知識を付与できるよう、技術上の指導、必要な資材、場所等の提供等を実施しなければならない。

(4) 掘削作業を行う箇所の調査

施工者は、安衛則第355条の規定に基づき、地山の掘削作業を行う箇所の調査を行わなければならない。

なお、発注者、調査者又は設計者が同条に規定する「適当な方法」によって行った調査結果を調べることも同条に規定する「適当な方法」による調査に含まれることとされている。

(5) 点検の実施

元方事業者が自ら掘削の作業を行う場合には、安衛則第358条の規定に基づき、点検者を指名して、作業を開始する前、大雨の後及び中震以上の地震の後に斜面の状況を点検させなければならない。点検に当たっては、日常点検表を使用すること。

(6) 点検結果を踏まえた危険防止のための措置の実施

元方事業者は、点検者による点検結果を踏まえ、地山の崩壊又は土石の落下により労働者に危険を及ぼすおそれのある場合は、安衛則第361条の規定に基づき、当該危険を防止するための措置を講じなければならない。

2 元方事業者が実施することが望ましい事項

(1) 適切な施工計画書の作成

元方事業者は、発注者から示された仕様書、発注者から得られた斜面の地盤条件の情報等や設計者による設計・施工段階別点検表等の点検結果、自ら実施した現地踏査時の点検結果、必要に応じて自ら実施する地質調査、過去に周辺で行われた類似工事の施工情報及び施工の安全性を十分考慮し、安衛法第28条の2の規定に基づくリスクアセスメントを実施した上で、(2)から(5)の事項を含んだ施工計画書を作成し、発注者に提出すること。

(2) 適切な施工費等の計上

当該変更工事の一部を関係請負人に請け負わせるに当たっては、安全対策に要する経費を含む適切な経費を計上すること。

(3) 斜面の点検及び確認の適切な実施、点検結果に基づく措置等

元方事業者は、点検者を選任し、第3の3の(1)の①のイからオの各段階においては設計・施工段階別点検表により、②のアからエの時期においては日常点検表により、日常点検表で変状を確認した場合は変状時点検表により、斜面の状態を点検させるとともに、確認者を選任して点検者が行った点検内容に不備等がないかを確認し、斜面の状況に応じて適切な措置(関係請負人に対する必要な指示を含む。)を講ずること。

点検者の選任に当たっては、各種点検が適切に実施されるよう、必要な知識を有する適切な点検者を選任すること。今後、点検者に選任する可能性のある自らの労働者に対しては、あらかじめ必要な知識を付与した上で、十分に点検の補助等の実務経験を積ませるよう留意すること。

また、確認者については、統括安全衛生責任者又はこれに準ずる者を確認者に選任すること。

(4) 異常時対応シートの作成及び発注者への報告

変状時点検で変状の進行を確認した場合、異常時対応シートを作成し、当該斜面の異常、安全措置の状況等を発注者に報告すること。

(5) 安全性検討関係者会議の開催及びその結果を受けた工事の変更

元方事業者は、異常時対応シートを作成し、発注者に報告した場合、安全性検討関係者会議を開催し、発注者に参加を要請して、異常時対応シート記載事項により報告した斜面の状況に対応するためのハード対策等の労働災害防止のための措置を検討すること。労働災害防止のための措置が決定された場合には、施工計画書を変更し、当該変更された施工計画書に基づき工事を実施すること。

3 関係請負人が実施すべき事項

(1) 安全衛生管理体制の確立

元方事業者の構築する上記1(1)の統括安全衛生管理体制に対応し、安全衛生責任者等を選任するとともに、安衛法第32条第1項の規定に基づき、上記1(1)①から③までの措置に応じて、統括安全衛生責任者と必要な連絡調整を行い、特に斜面に関する情報を適切に把握する等、必要な措置を講じなければならない。

(2) 掘削作業を行う箇所の調査

施工者は、安衛則第355条の規定に基づき、地山の掘削作業を行う箇所の調査を行わなければならない。

なお、発注者、調査者又は設計者が同条に規定する「適当な方法」によって行った調査結果を調べることも同条に規定する「適当な方法」による調査に含まれることとされている。

(3) 作業主任者の選任

2m以上の高さの斜面を掘削する作業を行うときには、安衛則第359条の規定に基づき、地山の掘削作業主任者を選任し、その者の指揮により、当該作業を行わなければならない。

(4) 斜面の点検、確認のための報告、点検結果に基づく措置の実施等

関係請負人は、安衛則第358条の規定により、点検者を指名して、作業を開始する前、大雨の後及び中心以上の地震の後には斜面の状況を点検させなければならない。点検に当たっては、日常点検表を使用すること。

4 関係請負人が実施することが望ましい事項

関係請負人は、2の(1)から(5)の事項を、元方事業者とも連携して実施すること。

5 元方事業者及び関係請負人が実施すべき事項

(1) 安全衛生教育の確実な実施

元方事業者及び関係請負人は、発注者や関係団体の協力を得て、作業に従事する労働者に対して計画的な安全衛生教育を実施する。また、新規入場者に対する教育を確実に実施しなければならない。

(2) 緊急時の退避

元方事業者及び関係請負人は、変状が極めて早く進行し、斜面崩壊による労働災害発生の急迫した危険があるときは、直ちに作業を中止し、労働者を安全な場所に退避させなければならない。

6 元方事業者及び関係請負人が実施することが望ましい事項

(1) リスクアセスメントの実施

元方事業者及び関係請負人は、リスクアセスメントを実施した上で、元方事業者の作成する施工計画書及び元方事業者が作成する作業箇所の状況に応じた作業計画を作成し、その作業計画に基づき作業を行うこと。なお、関係請負人が作業計画を作成するに当たって活用できるよう、元方事業者は自ら行ったリスクアセスメントの結果や、必要に応じて発注者の実施した事前調査及び点検の結果、施工計画書において安全確保上留意した事項に関する情報等を提供すること。

(2) 避難訓練の実施

元方事業者及び関係請負人は、斜面崩壊による労働災害を防止するため、工事の各作業(上記第2の2の(2)の各作業をいう。)を行うに当たり、関係請負人を含めた避難訓練を1回以上実施すること。避難訓練においては、斜面崩壊が発生した際にすべての労働者が安全に避難できることを確認するとともに、避難訓練の結果を検討し、必要に応じて避難の方法を改善すること。

別紙1

別紙2

別紙3

別紙4

[別添2]

○「斜面崩壊による労働災害の防止対策に関するガイドライン」の策定について

(平成27年6月29日)

(基安安発0629第2号)

(一般社団法人日本建設業連合会専務理事・一般社団法人全国建設業協会専務理事・一般社団法人日本機械土工協会専務理事・一般社団法人建設コンサルタンツ協会専務理事・一般社団法人全国地質調査業協会連合会専務理事・建設業労働災害防止協会専務理事あて厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長通知)

(契印省略)

土砂崩壊による労働災害は、溝掘削時の溝崩壊、斜面の切り取り工事中の斜面崩壊によるものがほとんどを占めている状況にあります。溝掘削時の溝崩壊については、「土止め先行工法に関するガイドラインの策定について」(平成15年12月27日付け基発第1217001号)により「土止め先行工法」が普及することにより労働災害の防止に一定の効果が現れており、今後は斜面崩壊による労働災害防止対策の強化を図ることが必要です。

独立行政法人労働安全衛生総合研究所は、平成21年度に「斜面崩壊による労働災害の防止対策に関する調査研究会」を設置し、地山の点検については発注者、設計者及び施工者が同じ点検表を用いて斜面に関する情報を共有し、対策を講ずることが労働災害の防止上効果的である旨の報告を取りまとめました。

この報告を受け、建設業労働災害防止協会は、平成22年度から23年度にかけて実態調査を実施し、斜面掘削工事での土砂崩壊による労働災害を防止するために発注者、設計者及び施工者の三者が行う点検、協力、共有すべき情報等に係る具体的方法を検討しました。

厚生労働省では、これらの検討結果等を受け、今般、労働安全衛生規則第355条の調査及び第358条の点検のより適切な実施方法、施工者が発注者及び設計者と協力して斜面崩壊の危険性に関する情報を共有するために実施することが望ましい方法及びそれらの留意事項を「斜面崩壊による労働災害の防止対策に関するガイドライン」として別添のとおりとりまとめたので、会員にその普及・定着を図り、建設業における斜面崩壊による労働災害防止対策の一層の推進を図られるようお願いします。

[別添3]

○斜面崩壊による労働災害の防止対策について

(平成27年6月29日)

(基安安発0629第3号)

(国土交通省大臣官房技術調査課長・農林水産省農村振興局整備部設計課長・林野庁林政部経営課長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長通知)

(契印省略)

土砂崩壊等による労働災害は中長期的には減少傾向にあり、特に上下水道等の建設工事に伴う溝掘削作業での労働災害は平成15年の「土止め先行工法に関するガイドライン」の策定以来減少したところですが、減少が見られなかった各種工事に伴う斜面の掘削作業等における土砂崩壊等による労働災害を防止するため、独立行政法人労働安全衛生総合研究所は、平成21年度に「斜面崩壊による労働災害の防止対策に関する調査研究会」を設置し、地山の点検については発注者、設計者及び施工者が同じ点検表を用いて斜面に関する情報を共有し、対策を講ずることが労働災害の防止上効果的である旨の報告を取りまとめました。

この報告を受け、建設業労働災害防止協会は、平成22年度から23年度にかけて実態調査を実施し、斜面掘削工事での土砂崩壊による労働災害を防止するために発注者、設計者及び施工者の三者が行う点検、協力、共有すべき情報等に係る具体的方法を検討しました。

厚生労働省では、これらの検討結果等を受け、今般、労働安全衛生規則第355条の調査及び第358条の点検のより適切な実施方法、施工者が発注者及び設計者と協力して斜面崩壊の危険性に関する情報を共有するために実施することが望ましい方法及びそれらの留意事項を「斜面崩壊による労働災害の防止対策に関するガイドライン」として別添のとおり策定したところです。

つきましては、貴職におかれましては、直轄工事における関係法令の遵守の更なる徹底及び本ガイドラインに基づく措置の実施について、特段の御高配を賜りますようお願いいたします。

また、貴省の関係部署に対して、本ガイドラインを周知くださいますよう併せてお願いいたします。

(別添2)

○土石流による労働災害防止のためのガイドラインの策定について

(平成10年3月23日)

(基発第120号)

(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通知)

土石流による労働災害の防止については、労働安全衛生規則の一部を改正する省令(平成10年労働省令第1号)が、本年2月16日に公布され、同年6月1日から施行されることとされたところであり、その施行については、平成10年2月16日付け基発第49号「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について」により示したところである。

今般、改正労働安全衛生規則と相まって、土石流による労働災害の防止対策のより一層的確な推進を図るため、改正労働安全衛生規則において規定された事項のほか、事業者が講ずることが望ましい事項及び従来の労働安全衛生関係法令において規定されている事項のうち土石流による労働災害防止のために重要なものを一体的に示した「土石流による労働災害防止のためのガイドライン」を別添のとおり策定したところである。

ついては、貴職においても、関係事業者等に対して本ガイドラインの周知徹底を図り、土石流による労働災害の防止に万全を期されたい。

なお、土石流による労働災害防止の推進に当たっては、発注機関との連携が重要であることから、この点について特に配慮するよう申し添える。

おって、別紙のとおり関係団体に対し、本ガイドラインの周知徹底を図るよう要請したので了知されたい。

別添

土石流による労働災害防止のためのガイドライン

第1 趣旨

平成8年12月に長野県と新潟県の県境をなす蒲原沢で発生した土石流災害により、23人が死傷するという重大災害が発生した。労働省では、本災害の重大性にかんがみ設置された「労働省12.6蒲原沢土石流災害調査団」による提言を踏まえ、労働安全衛生規則の改正を行ったところである(平成10年労働省令第1号)。

本ガイドラインは、改正労働安全衛生規則と相まって、土石流による労働災害の防止対策のより一層的確な推進を図るため、改正労働安全衛生規則において規定された事項のほか、事業者が講ずることが望ましい事項及び従来の労働安全衛生関係法令において規定されている事項のうち土石流による労働災害防止のために重要なものを一体的に示すことを目的とするものである。

事業者は、本ガイドラインに記載された事項を的確に実施することに加え、より現場の実態に即した土石流に対する安全対策を講ずるよう努めるものとする。

第2 適用等

1 用語の定義

本ガイドラインにおける用語の定義は以下のとおりである。

(1) 土石流

土砂又は巨れきが水を含み、一体となって流下する現象をいう。

(2) 河川

河道及び河岸をいう。

(3) 24時間雨量

ある時点の24時間前から当該時点までの降雨量をいう。

(4) 時間雨量

ある時点の1時間前から当該時点までの降雨量をいう。

2 適用

本ガイドラインは、以下のいずれかに該当する河川(以下「土石流危険河川」という。)において、建設工事の作業を行う場合に適用する。ただし、臨時の作業には適用しない。

(1) 作業場所の上流側(支川を含む。以下同じ。)の流域面積が0.2Km2以上であって、上流側の0.2kmにおける平均河床勾配3°以上の河川

(2) 市町村が「土石流危険渓流」として公表している河川

(3) 都道府県又は市町村が「崩壊土砂流出危険地区」として公表している地区内の河川

第3 事業者の実施する事項

1 作業着手前の調査事項

事業者は、次に掲げるところにより、作業に着手する前にあらかじめ調査を実施すること。

(1) 地形等の調査

事業者は、作業場所から上流の河川(支川を含む。以下同じ。)及びその周辺に関して次に掲げる事項を調査すること。

イ 河川の形状、流域面積及び河床勾配

ロ 河川の周辺における崩壊地の状況

ハ 河川の周辺における積雪の状況

ニ 河川及びその周辺における砂防施設、道路施設等の状況

ホ 河川の周辺における各地方気象台の定める大雨注意報基準等

(2) 過去の土石流の発生状況

事業者は、必要に応じ、作業場所から上流の河川の周辺における過去の土石流の発生の有無を調査し、土石流の発生が認められた場合には、次に掲げる事項を調査すること。

イ 土石流の発生原因、流下・堆積状況、推定流下速度等

ロ 土石流発生推定時点での雨量等の状況

2 土石流による労働災害防止のための規程の策定

事業者は、土石流による労働災害を防止するため、あらかじめ、1の調査結果を踏まえ、次に掲げる事項についての規程を定めること。

(1) 降雨量等の把握の方法

(2) 降雨又は融雪があった場合に講ずる措置

(3) 地震が発生した場合に講ずる措置

(4) 土石流の発生の前兆となる現象を把握した場合に講ずる措置

(5) 土石流が発生した場合の警報及び避難の方法

(6) 避難の訓練の内容及び時期

3 降雨量等の把握の方法

事業者は、次に掲げる事項について、それぞれその定めるところにより把握すること。

(1) 降雨量

イ 事業者は、降雨量が土石流の早期把握等の措置を講ずるための降雨量基準(以下「警戒降雨量基準」という。)に達していないことを確認するため、作業の開始又は再開の時に24時間雨量を、その後1時間ごとに時間雨量を雨量計による測定等適切な方法により把握すること。

ロ 事業者は、雨量計を設置して降雨量を把握する場合には、雨量計の選択及びその設置場所の選定を適切に行うこと。

(2) 気温の把握

事業者は、積雪のあるときは、必要に応じ、温度計による測定等適切な方法により気温を把握すること。

4 降雨の場合に講ずる措置

事業者は、降雨に関して次に掲げる事項を実施すること。

(1) 警戒降雨量基準の設定

事業者は、土石流の発生に備えるため、次に掲げるところにより、警戒降雨量基準を定めること。

イ 24時間雨量に係る警戒降雨量基準を定めること。この場合、同基準は各地方気象台の定める24時間雨量に係る大雨注意報基準を上回ってはならないこと。

ロ 必要に応じ、イの24時間雨量に係る警戒降雨量基準に加え、その他の降雨量に関する基準等により警戒降雨量基準を定めること。

(2) 警戒降雨量基準に達した場合に講ずる措置

事業者は、降雨量が(1)の警戒降雨量基準に達した場合は、次のイからハのいずれかに掲げる措置を講ずること。

イ 作業中止及び退避

作業を中止し、速やかに労働者を安全な場所に退避させること。

ロ 監視人の配置による土石流発生の検知

(イ) 監視人の配置場所

監視人の配置場所の選定に当たっては、以下の点に留意すること。

a 河川の状況に応じ、支川において発生・流下してくる土石流も監視できること

b 監視人が土石流を発見できる位置から作業場所までの距離を地質・河床勾配等に応じて想定される土石流の流下速度(5~20m/s、以下同じ。)で除して得られる時間内にすべての労働者を避難させることができること

(ロ) 警報用の設備の作動

監視人が土石流を発見したときに直ちに警報用の設備を作動させることのできる措置を講ずること。

(ハ) 監視人の安全確保

監視人の安全を確保するための措置を講ずること。

ハ 土石流検知機器による土石流発生の検知

(イ) 検知機器の選定

検知機器の選定に当たっては、各検知機器の種類ごとの特性、地形条件、管理・操作性等に十分留意すること。また、誤作動に配慮し、警報装置が作動した際に、実際に土石流が発生したかどうかを確認するため、監視カメラの併用等についても検討すること。

(ロ) 検知機器の設置場所

検知機器場所の選定に当たっては、以下の点に留意すること。

a 河川の状況に応じ、支川において発生・流下してくる土石流を監視できること

b 土石流を検知できる位置から作業場所までの距離を地質・河床勾配等に応じて想定される土石流の流下速度で除して得られる時間内にすべての労働者を避難させることができること

(ハ) 警報用の設備の作動

検知機器は、土石流を検知した場合に自動的に警報用の設備を作動させる機能を備えたものとすること。

(ニ) 検知機器の点検

検知機器については、正常に作動することを確認するため、機器ごとの点検仕様等に定めるところにより点検を実施すること。

(3) (2)に掲げる措置の解除の条件

事業者は、降雨量が(1)に定める警戒降雨量基準に達した後において、(2)に掲げる措置を解除する場合にあっては、次のイ及びロのいずれにも該当すること。

イ 降雨量が(1)で定める警戒降雨量基準に達していないこと。

ロ 降雨量が警戒降雨量基準に達してから連続12時間以上の降雨の中断があること。

5 融雪又は地震の場合に講ずる措置

事業者は、融雪又は地震の場合に次に掲げる事項を実施すること。

(1) 融雪時に講ずる措置

事業者は、作業場所から上流の河川の周辺に積雪がある場合で、積雪深、気温の変化等により融雪を把握した際には、その把握結果に基づき、降雨に融雪が加わることを考慮して、積雪の比重を積雪深の減少量に乗じて降水量に換算し降雨量に加算する等適切な措置を講ずること。

(2) 地震を把握したときに講ずる措置

事業者は、作業場所において中震以上の地震を把握した際には、いったん作業を中止し、土石流の前兆となる現象の有無を確認する等適切な措置を講ずること。

6 土石流の発生の前兆となる現象を把握した場合に講ずる措置

事業者は、河川の流水の急激な減少、濁りの発生等の土石流の発生の前兆となる現象を把握した際には、いったん作業を中止し、その現象の継続の有無を監視する等適切な措置を講ずること。

7 警報及び避難の方法等

事業者は、警報及び避難に関し、次に掲げる事項を実施すること。

(1) 警報用の設備の設置等

イ 警報用の設備の設置

事業者は、土石流の発生による労働災害の発生の危険があることを把握した際に、これを関係労働者に速やかに知らせるため、サイレン、非常ベル、一斉通報の可能な放送設備、携帯用拡声器、回転灯等の警報用の設備を適切な場所に設置すること。

ロ 関係労働者への周知

事業者は、関係労働者に対して、警報用の設備の設置場所、使用方法及び警報の種類を周知させること。

ハ 警報用の設備の有効性の保持

事業者は、警報用の設備を常時有効に作動するように保持しておくこと。

(2) 避難用の設備の設置等

イ 避難場所の設定

事業者は、土石流発生時における安全な避難場所を定め、関係労働者に周知させること。

ロ 避難用の設備の設置

事業者は、土石流の発生により労働災害の発生の危険があることを実際に把握した際に、労働者を速やかに安全な場所に避難させるために、登り桟橋、はしご等の避難用の設備を設けること。

ハ 関係労働者への周知

事業者は、避難用の設備の設置場所及び使用方法を関係労働者に周知させること。

ニ 避難用の設備の有効性の保持

事業者は、避難用の設備を常時有効に保持すること。

8 土石流による労働災害発生の急迫した危険がある際の退避

事業者は、土石流の発生を把握したとき、土砂崩壊により天然ダムが形成されていることを把握したとき等、土石流による労働災害発生の急迫した危険があるときは、直ちに作業を中止し、労働者を安全な場所に退避させること。

9 避難訓練の内容及び時期

事業者は、避難訓練に関し、以下に掲げる事項を実施すること。

(1) 避難訓練の時期及び内容

事業者は、すべての関係労働者を対象に、次に掲げるところにより避難訓練を実施すること。

イ 事業者は、避難訓練を工事開始後遅滞なく1回、その後6月以内ごとに1回実施すること。避難訓練においては、土石流が発生した際にすべての労働者が安全に避難できることを確認すること。

ロ 事業者は、工事の進捗に伴い避難設備等の変更を行った場合には必要に応じて避難訓練を実施すること。

(2) 避難訓練の結果の記録及び検討

イ 事業者は、避難訓練を行ったときは、次に掲げる事項を記録し、これを3年間保存すること。

(イ) 実施年月日

(ロ) 訓練を受けた者の氏名

(ハ) 訓練の内容

ロ 事業者は、避難訓練の結果を検討し、土石流が発生した際に労働者を安全に避難させるため必要な改善を行うこと。

10 安全衛生教育

事業者は、次に掲げるところにより安全衛生教育を実施すること。

(1) 施工計画を作成する者に対する教育

事業者は、施工計画を作成する者に対し、あらかじめ、次に掲げる事項について教育を行うこと。

イ 土石流に関する基礎知識

ロ 事前調査結果の評価方法

ハ 土石流による労働災害防止のための具体的手法

ニ 監視人の配置並びに土石流検知機器、警報用の設備及び避難用の設備の種類及び設置場所の選定

ホ 土石流による災害事例

(2) 現場の安全管理を行う責任者に対する教育

事業者は、現場の安全管理を行う責任者に対し、あらかじめ、次に掲げる事項について教育を実施すること。

イ 土石流に関する基礎知識

ロ 警戒降雨量基準の設定及び降雨量等の評価

ハ 土石流による労働災害防止のための具体的措置

ニ 監視人の配置並びに土石流検知機器、警報用の設備及び避難用の設備の種類及び設置場所の選定

ホ 土石流による災害事例

(3) 現場で作業を行う労働者に対する教育

事業者は、現場で作業を行う労働者に対し、新規入場時及びその他必要な時期に次に掲げる事項について教育を行うこと。

イ 土石流に関する基礎知識

ロ 土石流による労働災害防止のための具体的措置

ハ 警報用の設備及び避難用の設備の設置場所及び使用方法

ニ 土石流による災害事例

第4 元方事業者等の実施する事項

1 元方事業者の講ずる措置

元方事業者は、以下に掲げる事項を実施すること。

(1) 協議会等の設置

元方事業者は、すべての関係請負人が参加する労働災害防止のための協議会等を設置し、次に掲げる事項を協議すること。

イ 降雨量等の把握方法

ロ 警戒降雨量基準の設定及びその基準に達した場合に講ずる措置

ハ 融雪又は地震の場合に講ずる措置

ニ 土石流の前兆となる現象を把握した場合に講ずる措置

ホ 避難及び警報に関する事項

ヘ 避難訓練の内容及び時期

(2) 警報の統一

イ 元方事業者は、土石流が発生したとき又は発生するおそれがあるときに行う警報を統一的に定め、これを関係請負人に周知させること。

ロ 元方事業者及び関係請負人は、土石流が発生したとき又は発生するおそれがあるときには、イで統一的に定められた警報を行うこと。

(3) 避難訓練の統一等

イ 元方事業者は、関係請負人が実施する避難訓練について、その実施時期及び実施方法を統一的に定め、これを関係請負人に周知すること。

ロ 元方事業者及び関係請負人は、イで統一的に定められた実施時期及び実施方法により避難訓練を行うこと。

ハ 元方事業者は、関係請負人が行う避難訓練に対して、必要な指導及び資料の提供等の援助を行うこと。

(4) 関係請負人に対する技術上の指導等

元方事業者は、関係請負人が講ずべき措置が適切に実施されるように、技術上の指導その他必要な措置を講ずること。

2 異なる元方事業者が近接して作業を行う際に講ずる措置

元方事業者は、土石流危険河川において、他の元方事業者と近接して作業を行う場合には、以下に掲げる事項を実施すること。

(1) 複数の元方事業場が同一の土石流により被害の発生するおそれのある場所で同時に工事を施工している場合には、すべての元方事業者が参加する労働災害防止のための協議会等を設置して統一的な安全管理を行うこと。

この場合、複数の発注機関が近接して工事を発注しているときにあっては、必要に応じ、発注機関間の協議結果を反映した統一的な安全管理を行うこと。

(2) 各元方事業者は協議会で決定された事項を関係請負人に連絡する体制を確立すること。

(3) 協議会等においては、以下の事項を協議すること。

イ 降雨量等の把握方法

ロ 警戒降雨量基準の設定及びその基準に達した場合に講ずる措置

ハ 融雪又は地震の場合に講ずる措置

ニ 土石流の前兆となる現象を把握した場合に講ずる措置

ホ 避難及び警報に関する事項

ヘ 避難訓練の内容及び時期

(別紙略)