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○遺伝子検査システムに用いるDNAシークエンサー等を製造販売する際の取扱いについて
(平成28年4月28日)
(/薬生機発0428第1号/薬生監麻発0428第1号/)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省大臣官房参事官(医療機器・再生医療等製品審査管理担当)、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知)
(公印省略)
生体由来の試料から抽出した核酸又はこれから特定の領域のDNAを増幅若しくは濃縮したものに対して、DNAシークエンサーによりその塩基配列を決定し、その配列情報を解析することにより疾病の診断等に用いる製品については、医薬品の投与可否等を判定するコンパニオン診断システムをはじめとして、医療現場での実用化が期待されているところです。今般、そのような遺伝子検査システムに用いるDNAシークエンサー等について、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「医薬品医療機器法」という。)における取扱いを下記のとおり定めたので、御了知の上、貴管内関係事業者及び医療機関宛て周知願います。
なお、本通知の内容は、DNAシークエンサー等に関する現時点での知見に基づき示したものであり、今後の更なる技術革新や知見の集積等を踏まえ改訂されるものであることに留意願います。
記
1 基本的考え方
この通知は、疾病の診断、治療又は予防に用いることを目的として製造販売されるDNAシークエンサー等についての、医薬品医療機器法における取扱いを示すものである。
2 用語の定義
(1) DNAシークエンサー
生体由来の試料から抽出した核酸又はこれを増幅若しくは濃縮したDNAの塩基配列を決定し出力する装置及びこれを作動するプログラムをいう。
(2) シークエンシングサンプル調製試薬
DNAシークエンサーにより遺伝子等の塩基配列を決定する際に、検査対象とする遺伝子等の項目にかかわらず必要になる試薬をいう。シークエンサー解析用ライブラリーを調製するための試薬も含まれる。
(3) テンプレートDNA調製試薬
疾病の診断等を目的として、生体由来の試料から抽出した核酸から特定の領域のDNAを増幅又は濃縮するために使用されるプライマーセット及び関連試薬(シークエンシングサンプル調製試薬を除く。)をいう。
(4) 解析プログラム
遺伝子等の配列情報に対して内部又は外部のデータベースを参照し、比較するなどにより、臨床的に意義のある遺伝子変異等(融合遺伝子、挿入、欠失、遺伝子多型等を含む。)の判定を行うものをいう。
(5) DNAシークエンサー診断システム
DNAシークエンサー、シークエンシングサンプル調製試薬、テンプレートDNA調製試薬及び解析プログラムを組み合わせて使用することにより疾病の診断等を行うシステムをいう。
3 DNAシークエンサー診断システムの医薬品医療機器法上の取扱い
疾病の診断、治療又は予防に用いることを目的として製造販売されるDNAシークエンサー等は、医薬品医療機器法上の医療機器又は体外診断用医薬品に該当するものであり、それぞれの取扱いは次に掲げる各項目のとおりである。
医療機器等への該当性については、その検査項目並びに製品の表示、添付文書及び広告における標榜等から、総合的かつ個別具体的に判断されるものであり、例えば、病因遺伝子や医薬品の適用可否に関連する遺伝子を検査するもの、将来の罹患リスクも含め具体的な疾患名を標榜するものは、原則として医療機器又は体外診断用医薬品に該当する。
なお、疾病の診断等に用いることを標榜していない場合であっても、疾病の診断等を目的としていると認められる場合には、医療機器等に該当する。
(1) DNAシークエンサーは、医療機器に該当するものであること。なお、解析プログラム等と組み合わせて使用する場合は、臨床的意義のある遺伝子変異等を特定することを意図した能動型機器であることから、一般医療機器である「遺伝子解析装置」には該当しないため、製造販売をしようとする場合は承認の申請を行うこと。なお、その際、新たな一般的名称の追加を厚生労働省において検討する。
(2) シークエンシングサンプル調製試薬は、DNAシークエンサーを使用するにあたって、検査対象とする遺伝子等にかかわらず必要になる試薬であることから、DNAシークエンサーの構成品として差し支えないこと。
(3) テンプレートDNA調製試薬は、DNAシークエンサー及び解析プログラムを併用することにより疾病の診断等を目的として使用される試薬であることから、体外診断用医薬品に該当するものであること。
(4) 解析プログラムは、疾病の診断等を目的として使用されるプログラムであることから、医療機器プログラムに該当するものであること。
(5) DNAシークエンサー、シークエンシングサンプル調製試薬、テンプレートDNA調製試薬及び解析プログラムを一の製造販売業者が製造販売する場合は、それらを組合せで一のコンビネーション医療機器として承認申請して差し支えないこと。
4 研究用DNAシークエンサーの取扱い
医療機関等においてDNAシークエンサー診断システムを利用して疾病の診断等を行おうとする場合は、承認されたDNAシークエンサー(以下「承認DNAシークエンサー」という。)、テンプレートDNA調製試薬及び解析プログラムが使用されることが望ましい。
しかし、新規にDNAシークエンサー診断システムに係るDNAシークエンサー、テンプレートDNA調製試薬及び解析プログラムが承認された際に、医療機関等において既に保有している、研究用として販売されたDNAシークエンサー(以下「研究用DNAシークエンサー」という。)をやむを得ず引き続き使用し、承認されたテンプレートDNA調製試薬及び解析プログラムを用いたDNAシークエンサー診断システムを構築しようとする場合は、使用しようとする研究用DNAシークエンサーが、テンプレートDNA調製試薬及び解析プログラムとともに使用できるものであるかどうかを、医療機関等の責任において確認するよう留意されたい。
なお、研究用DNAシークエンサーの保守管理のため、消耗品若しくは構成部品を販売し、又は修理を行うことは、医療機器の販売又は修理には該当しないものであること。
5 臨床的意義が未知な検査項目の取扱い
DNAシークエンサー診断システムにおいては、通常、複数の検査項目を同時に測定することが可能であることから、臨床的意義を有し、承認を受けた検査項目の他にも、臨床的意義が未知な検査項目が検出可能である場合がある。臨床的意義が未知な検査項目については、承認の対象とはならないが、医師が必要と判断した場合に限り、参考情報として検査結果を出力することは差し支えない。その場合、承認を受けていない当該検査項目に対する臨床的意義及び分析的妥当性は未知であることが医師に適切に伝わるよう、十分配慮すること。
なお、承認を受けていない検査項目の臨床的意義等について製品への表示、添付文書への記載、広告等を行うことは、医薬品医療機器法第64条において準用する同法第54条又は同法第66条に抵触するものであるため、十分留意すること。