アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○第三者行為による被害に係る求償事務の取組強化について

(平成27年12月3日)

(保国発1203第1号)

(都道府県民生主管部(局)国民健康保険主管課(部)長あて厚生労働省保険局国民健康保険課長通知)

(公印省略)

国民健康保険における保険給付の対象となる疾病、負傷又は死亡の保険事故については、その発生が、第三者による不法行為(以下「第三者行為」という。)の結果生じたものである場合がある。保険者は、給付事由が第三者行為によって生じたものであるときは、国民健康保険法(昭和33年法律第192号。以下「国保法」という。)第64条第1項の規定により、保険給付を行うと同時に、その給付の価額の限度において、被保険者が第三者に対して有する損害賠償請求権を代位取得することとされている。これまで、各保険者におかれては、代位取得した損害賠償請求権(以下「求償権」という。)を行使し、保険給付の適正な執行を図り、もって医療費の適正化に取り組んでいただいているところであるが、国民健康保険事業の健全な運営を確保するためにも、求償事務について、一層の取組強化を図ることが望まれる。

今般、下記のとおり、第三者行為による被害に係る求償事務を強化するための具体的取組についてお示しするので、内容をご了知の上、貴管下保険者及び国民健康保険団体連合会(以下「連合会」という。)への周知及び指導について特段のご配慮を願いたい。

なお、公益社団法人国民健康保険中央会(以下「中央会」という。)に対しては別添1のとおり、損害保険会社等に対しては別添2のとおり、第三者行為による被害に係る求償事務の取組強化について要請しているため、その内容についてもご了知いただきたい。

第1 第三者行為による被害の把握について

(1) 第三者行為による被害の把握に向けた取組強化について

国民健康保険法施行規則(昭和33年厚生省令第53号。以下「国保法施行規則」という。)第32条の6の規定により、給付事由が第三者行為によって生じたものであるときは、世帯主又は組合員(以下「世帯主等」という。)は、第三者行為による被害の状況等を保険者へ届け出なければならないこととされている。保険者は、主としてこの届出(以下「被害届」という。)を受けることにより第三者行為による保険事故の発生等(第三者の氏名や損害保険等の加入状況を含む。)を把握することができ、これによって、第三者に対して求償権を行使することが可能となる。このため、第三者行為による被害に係る求償事務の取組強化に当たっては、まずは、その契機となる被害届の確実な届出を励行させることが重要である。

そこで、各保険者におかれては、被害届の未届出を解消する観点から、①療養費、高額療養費、葬祭費等の各種支給申請書に第三者行為の有無の記載欄を設けること、②診療報酬明細書、療養費支給申請書及び柔道整復施術療養費支給申請書(以下「レセプト等」という。)の点検により、複数の骨折や頭部打撲、外傷性の傷害又はそれらが複合している傷害等の傷病名等から、あるいは救急病院又は整形外科等の病院名等からの第三者行為が原因であることが疑われるレセプト等を抽出して被保険者に照会を行うこと、③新聞やニュース等の報道情報を活用して交通事故等の発生やその状況等を把握すること等の第三者行為による被害を発見するための手段の拡充を可能なものから速やかに図っていただくとともに、こうした取組によって第三者行為による被害が発見された場合には、直ちに世帯主等に対し被害届の届出を促していただきたい。

なお、こうした取組が確実に実施されるよう、中央会に対し、平成30年度に向けて開発を進めている、国保総合システム及び国民健康保険保険者標準事務処理システム(市町村事務処理標準システム)に備える療養費等の各種支給申請書に第三者行為の有無の記載欄を設けていただくとともに、連合会と連携して、標準的な事務処理マニュアルを作成し、保険者に提供していただく等の支援を要請している。

(2) 世帯主等による被害届の届出義務等に関する周知・広報の取組強化について

各保険者におかれては、日頃から小冊子やホームページ等を活用し、給付事由が第三者行為によって生じたものであるときは世帯主等に被害届の届出の義務があることや受診等の際に医療機関等に申し出ていただく必要等について、周知・広報に努めていただいているところである。しかしながら、不測の事態が発生した際に届出の必要が生じる性格上、届出の義務等を日常的に浸透させることが難しく、また、保険者ごとに周知方法や頻度、周知内容に差異が見られる状況にある。

そこで、保険者がホームページを開設している場合であれば、少なくとも当該ホームページに、受診等の際に医療機関等に申し出ていただくことや被害届の届出の義務及び届出先を掲載していただくとともに、被害届と合わせて関係書類(事故状況報告書等)が必要な場合については、そのことについて丁寧にお知らせし、各様式をダウンロードできるようにしていただきたい。また、医療費通知等の被保険者向けに送付する文書や広報紙等の多様な媒体を複合的に活用して、届出の義務等が浸透するよう周知・広報の取組を一層強化していただきたい。

第2 世帯主等による被害届の作成等の援助に関する取り決めについて

(1) 札幌市の取組と効果について

周知・広報の取組強化によって被害届の届出の義務等が広く世帯主等に浸透した場合であっても、被保険者(被害者)の心身の状況等によっては、やむを得ず届出が遅れる場合がある。また、被害届とともに作成する事故状況報告書等の関係書類(以下「被害届等」という。)については、その記載に時間と労力を要し、世帯主等の負担となる場合もある。

一方で、保険者が、速やかに求償権を行使するためには、その契機となる被害届等の届出までの期間の短縮を図ることが重要である。そのためには、被害届等の記載に係る世帯主等の負担軽減を図ることが効果的である。

こうした点に関し、札幌市においては、平成27年4月から一般社団法人 日本損害保険協会、一般社団法人 外国損害保険協会、全国共済農業協同組合連合会、全国自動車共済協同組合連合会、全国トラック交通共済協同組合連合会及び全国労働者共済生活協同組合連合会(以下「損害保険関係団体」という。)と暫定的に『交通事故にかかる「第三者行為による傷病届」の提出に関する取り決め』(以下「取り決め」という。)を交わし、保険業法(平成7年法律第105号)に規定される損害保険会社及びその他の法に基づき設置される共済団体(以下「保険会社等」という。)から被害届等の作成及び届出の援助を受けることにより、世帯主の負担軽減が図られるとともに、被害届等が届出されるまでの平均期間が2か月程度短縮され、第三者行為による被害の確実な把握と速やかな求償の実施という求償事務の向上が図られている。

(2) 損害保険関係団体との取り決めの締結について

当該取り決めは、自動車事故による被害に対する補償として損害保険の任意保険(以下「任意保険」という。)が使用される事案において、被保険者が治療等のために国民健康保険を利用する場合、損害保険会社等が、示談代行サービス等の一環として、被害届等の作成を無償で援助するとともに、国民健康保険の利用を開始してから約1か月以内に保険者に届出されるよう援助を行うものである。

被害届の確実な届出を促進する上で、損害保険会社等の協力を得ることは極めて有効である。このことについては中央会においても認識されており、国民健康保険においても取り決めを締結し、求償事案の掘り起こし強化に努めていく必要がある、とされたところである。そこで、国民健康保険として、全国的に取り決めの締結を進める観点から、中央会に対し、当該取り決めの内容については、札幌市等の先行事例における取組状況等を踏まえつつ、損害保険関係団体との協議により、規定等の検討・調整を要請しているところである。当該取り決めの内容に関する調整が整った後、改めて連絡を行う予定であるので、各都道府県におかれては、保険者全体の取組強化を図る観点から、当該取り決めの締結を推進していただきたい。

各保険者におかれては、第三者行為による被害に係る求償事務の一層の取組強化を図る観点から、当該取り決めを締結することについてご検討の上、都道府県に連絡をしていただきたい。

なお、当該取り決めの締結については、国民健康保険組合と比べて加入する被保険者数が多い市町村から先行実施することを考えており、国民健康保険組合におかれては、先行する市町村の実施状況を踏まえ、出来る限り早期の締結をご検討いただきたいと考えているが、この機会に締結を希望する国民健康保険組合におかれても、都道府県に連絡をしていただきたい。

また、当該取り決めに定める被害届等は、国保法施行規則に定める必要な記載内容を満たすものであるが、その各様式が、各保険者が規則等において定める様式と異なる場合においても、一般的には、規則等で定める様式の記載内容を満たしていれば、レイアウト等の多少の差異は許容されるものであると考えられるため、規則等に定める様式を改正するまでもなく、当該取り決めに定める被害届等の各様式を規則等に定める様式と同等に取扱うようにしていただきたい。

(3) 損害保険関係団体との取り決め締結の手続きについて

当該取り決めは、本来、各保険者と損害保険関係団体との間で締結していただくものであるが、損害保険関係団体より、広域的な運用によって効果を高める観点から、都道府県内全ての市町村が同時に取り決めを締結することが求められている。

そこで、取り決めの締結に係る保険者の事務負担を軽減するため、連合会に対し、保険者からの委任を受けて取り決めの事務を代行していただくよう要請しているところである。

(4) 取り決めの継続的な評価・改善について

当該取り決め締結後の運用については、厚生労働省保険局国民健康保険課の関与の下、中央会と損害保険関係団体とが各都道府県の取組状況や効果を定期的に検証し、その結果に基づき当該取り決め内容を見直すための協議の場を設けていただくこととしている。このことにより、当該取り決めによる運用の標準化を図りつつ、継続的に当該取り決め内容の評価・改善を図ることとしている。

(5) 損害保険関係団体以外の団体等の取り決めについて

任意保険に加入する方の9割超は損害保険関係団体と契約しているが、残る1割未満の方は、損害保険関係団体以外のその他の団体等が提供する任意保険に加入している状況である。これらについては、都道府県単位で統一して取り決めを締結することは予定していないことから、各保険者におかれては、地域の実情に応じ、各保険者の判断において、その他の損害保険団体等と個別に取り決めを締結することも考えられる。個別に取り決めを締結する場合において、当該取り決めの内容を参考としていただくことは差し支えない。

(6) 第三者行為による被害に係る求償事務の取組強化に係る財政支援について

世帯主等による被害届の届出の義務等の周知・広報等の取組強化分については、平成27年度において実施した、当該取組に要した費用について特別調整交付金又は特別調整補助金を交付する予定である。その詳細については別途通知する。

第3 PDCAサイクルの確立による求償事務の継続的な改善・強化について

各保険者におかれては、第1及び第2で示した取組も含め、第三者行為による被害に係る求償事務の取組の底上げを図るため、PDCA(Plan―Do―Check―Act)サイクルを循環させて、継続的に求償事務の取組強化を図っていただきたい。このため、まずは、次のような観点から現状の取組を評価し、求償事務の改善を図り、目標を定めて求償事務の計画的な取組を進めていただきたい。

なお、都道府県におかれては、各保険者においてPDCAサイクルが循環するよう各保険者における数値目標や取組計画等を把握し、求償事務の継続的な取組強化が図られるよう指導いただきたい。また、都道府県が定める広域化等支援方針又は平成30年度に向けて策定する国保運営方針により、保険者の求償事務の標準化を図るとともに、求償事務の取組の底上げに努めていただきたい。

1.国民健康保険の利用開始日から被害届の受理日までの平均日数を算出し、30日を超える場合は30日以内に短縮できるよう、又は被害届に記載された事故日から被害届の受理日までの日数が30日を超える件数の割合を算出し、その割合を低減できるよう、届出勧奨や取り決めの締結など、被害届の届出までの期間の短縮を図る具体的な改善の取組を進めていただきたい。

2.被害届が届出されているにも関わらず、求償権を行使できていない滞留事案がある場合、保険給付の都度求償できるよう事案の管理や求償に係る実施体制等の改善を図っていただきたい。

3.自動車損害賠償責任保険(以下「責任保険」という。)又は自動車損害賠償責任共済(以下「責任共済」という。)に求償する場合の収納率の実績、及び任意保険に求償する場合の収納率の実績を踏まえ、それぞれの収納率の目標を設定して、具体的に収納率向上策を講じていただきたい。

4.その他、ニュース等の報道情報の活用による交通事故の発生等の把握や、複数の骨折、外傷性の傷害等の傷病名等又は救急病院等の病院名等から第三者行為が疑われるレセプトを抽出して被保険者に照会を行うこと、地域の医療機関等との連携強化など、第三者行為による被害の発見や把握に向けた取組の拡大や具体的な改善策を講じていただきたい。

厚生労働省保険局国民健康保険課としても、毎年度の事業実施状況報告により、被害届の受付件数、求償額の調定金額及び収納金額等について調査を行うことから、各保険者におかれても、報告する数値を活用して不断に取組の評価を行った上で、具体的に改善を行い、継続的に翌年度の取組強化につなげていただきたい。

第4 連合会における求償事務の取組強化について

(1) 連合会における求償事務の取組強化について

第三者行為による被害に係る求償事務は、高い専門性を必要とする一方で、保険者におかれては人事異動等により専門性の蓄積が図りにくい場合がある。このため、保険者は、国保法第64条第3項の規定により、求償権に係る損害賠償金の徴収又は収納の事務を連合会に委託することができることとされている。また、委託可能な連合会は、国保法施行規則第32条の7の規定により、損害賠償金の徴収又は収納の事務に関し専門的知識を有する職員を配置する連合会とされており、連合会においては、専門的知識を有する職員を配置し、保険者から求償事務を受託できる体制を整備しているところであるが、次の観点から一層の取組強化を図られるようご検討いただきたい。

1.損害賠償金の徴収又は収納の事務に関し専門的知識を有する職員については、国民健康保険法の一部を改正する法律の施行に伴う国民健康保険関係法令等の改正について(平成2年6月15日保発第62号保険局長通知)により、民法(明治29年法律第89号)、自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号。以下「自賠法」という。)等の関係法令の知識等を有する者であるとされている。このため、保険会社等の業務経験を有する者を求償専門員として配置することや顧問弁護士を配置すること等の人材確保策、求償担当者向けの専門研修の実施等の専門性の向上を図る取組が望まれる。

2.連合会におかれては、効率的に求償事務を行うため、連合会ごとに事務処理マニュアルが作成されているが、マニュアルの内容に差異が見られることや、長年にわたり事務処理マニュアルが改訂されていない状況も一部見受けられる。このため、中央会に対し、連合会と連携して、連合会向けの標準的な事務処理マニュアルを作成していただくよう要請しているところである。連合会におかれては、その成果を活用し、求償事務の底上げと標準化を図っていただきたい。

3.連合会におかれては、地域の実情や需要に応じて求償事務の受託範囲を定められているが、昨今、自転車による交通事故の増加に伴い損害保険の加入件数も増加している状況が見られる。また、給付事由が第三者行為によって生じたものの中には、ペットや土地の工作物等による被害も含まれる。このため、自転車事故に係る求償事務を受託範囲としていただくなど受託範囲の一層の拡大が望まれる。

4.連合会におかれては、求償事務に係る委託費について、事例1件当たりの定額制にしているところがある一方、収納できた賠償額に対して一定割合とする定率制にしているところもある。定額制の場合、保険者にとって、低額な求償事案に係る求償事務を委託するインセンティブが働かないという課題がある。このため、このような特性を踏まえつつ、保険者における求償事務を促進する観点から適切な費用負担を設定していただくことが望まれる。

5.連合会におかれても、日頃からホームページ等を活用し、給付事由が第三者行為によって生じたものであるときは世帯主等に被害届の届出の義務があることや受診等の際に医療機関等に申し出ていただく必要等について、周知・広報に努めていただいているところであるが、連合会ごとに周知方法や頻度、周知内容に差異が見られる状況にある。このため、連合会におかれても、少なくともホームページに受診等の際に医療機関等に申し出ていただくことや被害届の届出の義務及び届出先を掲載していただくとともに、被害届と合わせて関係書類(事故状況報告書等)が必要な場合について丁寧にお知らせし、保険者から受託している場合には各様式をダウンロードできるようにしていただきたい。また、医療費通知等の被保険者向けに送付する文書の作成等を受託している場合には、当該通知等への掲載等、多様な媒体を複合的に活用して、届出の義務等が浸透するよう周知・広報の一層の取組強化を図っていただきたい。

(2) 連合会における市町村職員向け研修等の改善・強化について

第1(1)のとおり、保険者に対し、被害届の未届出を解消する観点から、療養費等の各種支給申請書に第三者行為の有無の記載欄を設けることや、レセプト等の点検により傷病名等から第三者行為が原因であることが疑われるレセプト等を抽出して被保険者に照会を行うこと等を周知しているところである。

また、高額療養費が支給された場合における求償額の計算方法等、保険者ごとに求償事務の取り扱い基準の異なる状況が見られる。このため、連合会におかれては、保険者における求償事務の底上げと標準化を支援する観点から、①保険者に対する求償事務に係る研修、②希望する保険者を連合会の求償担当職員が訪問して求償事務の基礎的内容等を教示いただく巡回相談及び③標準的な事務処理マニュアルの提供について、一層の充実強化を図っていただきたい。

なお、保険者向けの標準的な事務処理マニュアルについては、中央会に対し、連合会と連携して作成していただくよう要請している。

(3) 世帯主等による被害届の作成等の援助に関する取り決めに係る支援について

ア 取り決めの締結に係る支援について

第2のとおり、保険者に対し、求償事務の一層の取組強化を図る観点から、損害保険関係団体との取り決めを締結することについて検討いただくよう通知しているところである。

当該取り決めは、本来、各保険者と損害保険関係団体との間で締結していただくものであるが、損害保険関係団体より、広域的な運用によって効果を高める観点から、都道府県内全ての市町村が同時に取り決めを締結することが求められている。このため、連合会におかれては、保険者からの委任を受けて、取り決めの締結に係る事務を代行していただくようお願いする。

また、当該取り決めの締結を希望する保険者におかれては連合会に連絡をしていただくこととしているため、連合会におかれては、保険者から相談等があった場合には、当該取り決めを締結できるよう適切に対応していただきたい。

なお、今回の取り決めの締結に当たっては、一国民健康保険組合であっても締結可能であり、徐々に組合数が増えることも差し支えないが、徐々に組合数が増える場合には、損害保険関係団体から、半年に一度まとめて締結する等の時期を揃えた取扱いとしていただきたいとの要請があることを申し添える。

イ 取り決めの継続的な評価・改善について

第2(4)のとおり、厚生労働省保険局国民健康保険課の関与の下、中央会と損害保険関係団体とが各都道府県の取組状況や効果を定期的に検証するとともに、その結果を踏まえ、継続的に取り決めの内容を見直すための協議の場を設けることとしていることについて、ご了知いただきたい。

(4) 保険者によるPDCAサイクルの確立に向けた支援について

第3のとおり、保険者に対し、第三者行為による被害に係る求償事務の取組強化を図るに当たり、まず現状の取組を評価し、求償事務の改善を図るとともに、数値目標を定めて、計画的に求償事務の取組を進めることにより、PDCAサイクルを確立し、継続的に求償事務の取組強化を図っていただくよう周知しているところである。このため、連合会におかれては、各保険者が設定した数値目標が実現できるよう、引き続き、次の(5)に記載するような適切な対応を行っていただくことが望まれる。

(5) 被害届の届出の勧奨支援等に係る体制の整備等について

医療機関等は第三者行為による被害に係る保険給付を行ったときは、「診療報酬請求明細書等の記載要領等について」(昭和51年8月7日保険発第82号厚生省保険局医療課長、歯科医療管理官通知)により、診療報酬明細書の特記事項欄に「10.第三」を記載することとされている。また、療養費支給申請書及び柔道整復療養費支給申請書においても、同様に負傷原因等を適切に記載することとされている。

連合会が運用する電算処理システムにおいては、レセプトから第三者行為の被害に係る保険給付を受けた被保険者リストを作成する機能を有しているが、これによって作成される当該被保険者リストは、求償事務を適正に執行する上で効果的である。このため、連合会におかれては、保険者からの委託を受けた場合には、第三者行為の被害に係る保険給付を受けた被保険者リストを作成し、提供できるようにしていただきたい。また、当該リストを活用して、世帯主等に対し、被害届の届出の勧奨業務が行えるよう体制の整備をご検討いただくとともに、第三者行為の被害に係る保険給付を受けた被保険者に対して追加の保険給付が行われた場合には、当該リストを活用して、保険給付の都度保険会社等へ求償が行えるよう体制の整備についてもご検討いただきたい。

なお、保険者からの委託を受けた場合においては、療養費支給申請書及び柔道整復療養費支給申請書からも第三者行為の被害に係る保険給付を受けた被保険者リストを作成し、保険者に提供できるようにしていただくことが望まれる。

第5 その他

(1) 責任保険又は責任共済に対する損害賠償額等の照会について

保険者において、責任保険又は責任共済に対する求償を行うに当たっては、これまで「健康保険及び国民健康保険の自動車損害賠償責任保険等に対する求償事務の取扱いについて」(昭和43年10月12日付け保険発第106号保険局保険課長・国民健康保険課長通知。以下「昭和43年通知」という。)において、求償事務の方法や責任保険の管轄店又は責任共済契約の再契約先である都道府県共済農業協同組合連合会(以下「管轄店等」という。)に対する損害賠償額又は保険金等の額等の照会方法や、その際の様式について示してきたところである。

しかしながら、昭和43年通知で示した保険者から管轄店等に対する照会及び管轄店等から保険者への回答の様式については、長年の運用によって地域による差異が見られる状況にあることから、今般、最近の照会と回答の事例を参考に、保険者が求償事務に必要な情報を十分把握することができるよう、保険者から管轄店等への照会の様式として別紙1を、照会を受けた管轄店等から保険者への回答の様式として別紙2を、それぞれ作成した。

各様式については、損害保険関係団体との調整により平成28年2月から使用することができることとなったので、保険者におかれては、当該様式を活用して、求償事務の一層の取組強化に努めていただきたい。

(2) 連合会への求償事務の委託について

地域の実情に応じた求償事務の創意工夫によって高い求償実績を上げている連合会におかれては、委託料収入が増加し、その結果、更に取組の強化が図られる好循環が生まれている状況が見られる。このことから、保険者におかれては、連合会が有する専門性やスケールメリットの更なる有効活用についてご検討いただきたい。

(別紙1)

(別紙2)

別添1

○第三者行為による被害に係る求償事務の取組強化について

(平成27年12月3日)

(保国発1203第2号)

(公益社団法人国民健康保険中央会理事長あて厚生労働省保険局国民健康保険課長通知)

(公印省略)

国民健康保険における保険給付の対象である疾病、負傷又は死亡の保険事故については、その発生が、第三者による不法行為(以下「第三者行為」という。)の結果生じたものである場合があります。保険者は、給付事由が第三者行為によって生じたものであるときは、国民健康保険法(昭和33年法律第192号。以下「国保法」という。)第64条第1項の規定により、保険給付を行うと同時に、その給付の価額の限度において、被保険者が第三者に対して有する損害賠償請求権を代位取得することとされています。これまで、各都道府県の国民健康保険団体連合会(以下「連合会」という。)におかれては、損害保険等に関する専門知識を有する職員を配置し、保険者からの委託を受け、保険業法(平成7年法律第105号)に規定される損害保険会社及びその他の法に基づき設置される共済団体(以下「保険会社等」という。)に対し、求償事務を行うことにより、保険給付の適正な執行を図り、もって医療費の適正化を進めているところです。

今般、国民健康保険事業の健全な運営を確保するためにも、各保険者による求償事務について、一層の取組強化を図ることが望まれることから、貴会に対し、下記の点についてご了知の上、一層のご協力を下さいますよう要請いたします。

なお、各都道府県及び保険者に対して、別添1のとおり第三者行為による被害に係る求償事務の取組強化について周知するとともに、損害保険関係団体に対して、別添2のとおり要請しているため、その内容についてもご了知いただきますようお願いいたします。

第1 連合会における求償事務体制等の強化に係る支援について

(1) 連合会における求償事務体制の強化に係る支援について

第三者行為による被害に係る求償事務は、高い専門性を必要とする一方で、保険者におかれては定期的な人事異動等により専門性の蓄積が図りにくい場合がある。このため、保険者は、国保法第64条第3項の規定により、代位取得した損害賠償請求権(以下「求償権」という。)に係る損害賠償金の徴収又は収納の事務を連合会に委託することができることとされている。また、委託可能な連合会は、国民健康保険法施行規則(昭和33年厚生省令第53号。以下「国保法施行規則」という。)第32条の7の規定により、損害賠償金の徴収又は収納の事務に関し専門的知識を有する職員を配置する連合会に限られている。連合会におかれては、専門的知識を有する職員を配置し、保険者が当該事務を委託できる環境を整備していただいているところであるが、今般、厚生労働省保険局国民健康保険課として、「第三者行為による被害に係る求償事務の取組強化について」(平成27年12月3日付け保国発1203第1号保険局国民健康保険課長通知。以下「取組通知」という。)を発出し、取組通知第4のとおり、連合会における一層の取組強化について要請を行っているため、このことについて公益社団法人国民健康保険中央会(以下「中央会」という。)におかれてもご了知いただくとともに、中央会におかれては、連合会と協力して、第三者行為に係る求償事務のあり方全般について幅広く議論するための場を設置していただくなど、適切に連合会の取組強化に対する支援を行っていただきたい。

(2) 電算処理システムの運用等に係る支援について

取組通知第1(1)のとおり、保険者に対し、療養費等の各種支給申請書に第三者行為の有無の記載欄を設けることにより、第三者行為による被害を発見するための手段の拡充について周知していることから、中央会におかれては、平成30年度に向けて開発を進めている、国保総合システム及び国民健康保険保険者標準事務処理システム(市町村事務処理標準システム)に備える各種支給申請書の様式においても第三者行為の有無の記載欄を設けるようにしていただきたい。また、連合会と連携し、保険者における求償事務の現状と課題を把握しつつ、保険者の求償事務の底上げと標準化を図る観点から、保険者向けの標準的な事務処理マニュアルを作成し、提供していただきたい。さらに、取組通知第4(1)のとおり、現状、連合会ごとに作成されている事務処理マニュアルの内容に差異が見られるため、連合会における求償事務の底上げと標準化を図る観点からも、連合会と連携し、連合会向けの標準的な事務処理マニュアルを作成し、提供していただきたい。

第2 世帯主等による被害届の作成等の援助に関する取り決めに係る調整について

(1) 世帯主等による被害届の作成等の援助に関する取り決めの検討について

給付事由が第三者行為によって生じたものであるときは、国保法施行規則第32条の6の規定により、世帯主又は組合員(以下「世帯主等」という。)は、第三者行為による被害の状況等を保険者へ届け出なければならないこととされている。保険者は、主としてこの届出(以下「被害届」という。)を受けることにより第三者行為による保険事故の発生等(第三者の氏名や損害保険等の加入状況を含む。)を把握することができ、このことによって、第三者に対して求償権を行使することが可能となる。

保険者が、速やかに求償権を行使するためには、その契機となる被害届の届出までの期間の短縮を図ることが重要である。そのためには、世帯主等の被害届の記載に係る負担軽減を図ることが効果的である。

この点に関し、取組通知第2のとおり、保険者に対し、一般社団法人 日本損害保険協会、一般社団法人 外国損害保険協会、全国共済農業協同組合連合会、全国自動車共済協同組合連合会、全国トラック交通共済協同組合連合会及び全国労働者共済生活協同組合連合会(以下「損害保険関係団体」という。)と交通事故にかかる「第三者行為による傷病届」の提出に関する取り決め(以下「取り決め」という。)を締結することについて検討するよう通知したところである。中央会におかれては、国民健康保険における第三者行為による被害に係る求償事務の取組強化を図る観点から、連合会と連携し、当該取り決めの効果的な規定の在り方について検討の上、損害保険関係団体との協議・調整を行っていただきたい。

(2) 取り決めの締結に係る支援について

当該取り決めは、本来、各保険者と各損害保険関係団体との間で締結していただくものであるが、損害保険関係団体より、都道府県内全ての市町村が同時に取り決めを締結することが求められているため、取組通知第4(3)のとおり、連合会に対し、保険者からの委任を受けて、取り決めの締結に係る事務を代行していただくよう依頼しているところである。中央会におかれては、損害保険関係団体と連合会との調整が円滑に行われるよう支援していただきたい。

(3) 取り決めの内容に係る継続的な評価・改善について

各都道府県での当該取り決め締結後の取組状況や効果を定期的に検証し、その結果に基づき、当該取り決め内容を見直すため、中央会と損害保険関係団体による協議の場を設けていただくとともに、当該取り決めに係る取組の標準化を図りつつ、継続的に当該取り決め内容の評価・改善を行うこととしていただきたい。当該協議の場の運営については、厚生労働省保険局国民健康保険課としても関与する予定である。

別添2

○第三者行為による被害に係る求償について

(平成27年12月3日)

(保国発1203第3号)

(一般社団法人日本損害保険協会会長・一般社団法人外国損害保険協会会長・全国共済農業協同組合連合会代表理事理事長・全国自動車共済協同組合連合会会長・全国トラック交通共済協同組合連合会会長・全国労働者共済生活協同組合連合会理事長あて厚生労働省保険局国民健康保険課長通知)

国民健康保険における保険給付の対象である疾病、負傷又は死亡の保険事故については、その発生が、第三者による不法行為(以下「第三者行為」という。)の結果生じたものである場合があります。保険者は、給付事由が第三者行為によって生じたものであるときは、国民健康保険法(昭和33年法律第192号。以下「国保法」という。)第64条第1項の規定により、保険給付を行うと同時に、その給付の価額の限度において、被保険者が第三者に対して有する損害賠償請求権を代位取得することとされています。これまで、各保険者においては、代位取得した損害賠償請求権(以下「求償権」という。)に基づき、保険業法(平成7年法律第105号)に規定される損害保険会社及びその他の法に基づき設置される共済団体(以下「保険会社等」という。)に対し求償を行い、各保険会社等におかれては、これに適切に応じていただくことにより、保険給付の適正な執行を図り、もって医療費の適正化を進めているところです。

今般、国民健康保険事業の健全な運営を確保するためにも、各保険者による求償事務について、一層の取組強化を図ることが望まれることから、下記のとおり、保険会社等に対し、一層の協力を要請します。

なお、各都道府県に対し、別添1のとおり第三者行為による被害に係る求償事務の取組強化について周知するとともに、国民健康保険中央会(以下「中央会」という。)に対し、別添2のとおり要請しているため、その内容についても御了知いただきますよう御願いします。

第1 保険会社等による保険者への対応について

国民健康保険において保険給付の対象となる疾病、負傷又は死亡の保険事故については、その給付事由が第三者行為によって生じた場合、保険者は、その給付の価額の限度において、第三者(加害者)に対し、保険給付の都度求償権を行使することとしている。

一方、損害保険契約は、保険者が一定の偶然の事故によって生ずることのある負傷、死亡等による損害をてん補することを約するものであり、この損害のてん補の中には、保険者が求償権を行使した場合も含まれるものと解される。しかしながら、保険者の一部からは、保険会社等に対し、求償権を行使するために必要な情報の提供等について、専門家としてのより丁寧で分かりやすい対応を求める声も厚生労働省保険局国民健康保険課に寄せられている。

各保険者による求償事務の一層の取組強化を図るためには、引き続き、保険会社等の御協力をいただくことが不可欠となると認識しているところである。このことについて保険会社等におかれても御理解いただくとともに、各保険会社等におかれては、各保険者に対し、できる限り丁寧かつ分かりやすい対応を御願いしたい。また、保険会社等におかれては、保険者と一層の連携・協力を図っていただきたい。

第2 世帯主等による被害届の作成等の援助に係る取り決めについて

(1) 世帯主等による被害届の作成等の援助に係る取り決めの締結について

保険者が求償権を行使するためには、国民健康保険法施行規則(昭和33年厚生省令第53号)第32条の6の規定に基づき被保険者(被害者)が属する世帯の世帯主又は組合員(以下「世帯主等」という。)から第三者行為による被害の届出が確実かつ速やかに保険者に届出される必要がある。しかしながら、被害の届出及びそれとともに作成される事故状況報告書等の関係書類(以下「被害届等」という。)については、その記載に時間と労力を要するとともに、やむを得ず届出が遅れる場合もある。

被害届等の確実な届出を促進する上で、保険会社等の協力を得ることは極めて有効である。そこで、今般、厚生労働省保険局国民健康保険課として、「第三者行為による被害に係る求償事務の取組強化について」(平成27年12月3日付け保国発1203第1号保険局国民健康保険課長通知)を発出し、各保険者における第三者行為による被害の確実な把握と速やかな求償による一層の取組強化を図る観点から、各保険者に対し、一般社団法人 損害保険協会、一般社団法人 外国損害保険協会、全国共済農業協同組合連合会、全国自動車共済協同組合連合会、全国トラック交通共済協同組合連合会及び全国労働者共済生活協同組合連合会(以下「損害保険関係団体」という。)と取り決めを締結することについて検討するよう通知したところである。

また、当該取り決めは、本来、各保険者と各損害保険関係団体との間で締結されるものであるが、都道府県内全ての市町村が同時に取り決めを締結することが求められているため、各都道府県の国民健康保険団体連合会(以下「連合会」という。)に対し、保険者からの委任を受けて、当該取り決めの締結に必要な事務を代行していただくよう要請するとともに、中央会に対し、連合会と損害保険関係団体との調整に関する支援を要請しているところである。このため、当該取り決めの締結に当たっては、中央会とも連携を図っていただきたい。

(2) 取り決めの遵守及び継続的な評価・改善について

当該取り決めにおいて、国民健康保険の利用開始日から被害届等が1か月以内に保険者に届出されることが定められていることから、確実に当該取り決めが履行されるよう、損害保険関係団体におかれては、主体的な取組による遵守に努めていただきたい。また、当該取り決め締結後の運用については、損害保険関係団体と中央会が各都道府県の取組状況や効果を定期的に検証し、その結果に基づき、当該取り決め内容を見直すための協議の場を設けていただくとともに、このことにより、当該取り決めによる運用の標準化を図りつつ、継続的に当該取り決め内容の評価・改善を図ることとしていただきたい。当該協議の場の運営については、厚生労働省保険局国民健康保険課としても関与する予定である。

なお、当該取り決めは、被保険者が国民健康保険を利用する場合に運用されるものであるが、被保険者は、治療等を受けるに当たり、国民健康保険を利用するか、損害保険に直接請求するかを選択することが原則であるため、保険会社等におかれては、被保険者が適切に選択できるよう、できる限り丁寧な説明に努めていただきたい。

第3 自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済に関する保険者からの照会とその回答について

第三者行為による求償事務の大半は、自動車による交通事故が原因となっている。自動車及び原動機付き自転車(以下「自動車」という。)については、自動車損害賠償責任保険(以下「責任保険」という。)又は自動車損害賠償責任共済(以下「責任共済」という。)への加入が義務付けられており、また、自動車による保険事故については、「健康保険及び国民健康保険の自動車損害賠償責任保険等に対する求償事務の取扱いについて」(昭和43年10月12日付け保険発第106号保険局保険課長・国民健康保険課長通知。以下「昭和43年通知」という。)において、求償事務の方法や責任保険の管轄店又は責任共済契約の再契約先である都道府県共済農業組合連合会(以下「管轄店等」という。)に対する損害賠償額又は保険金等の額等の照会方法や、その際の様式について示してきたところである。

しかしながら、昭和43年通知で示した保険者から管轄店等に対する照会及び管轄店等から保険者への回答の様式については、長年の運用によって地域による差異が見られる状況にあることから、今般、最近の照会と回答の事例を参考に、保険者が求償事務に必要な情報を十分把握することができるよう、保険者に対し、保険者から管轄店等への照会の様式として統一的に別紙1を使用することとするため、これを御了知いただくとともに、照会を受けた管轄店等においては統一的に別紙2により回答することとしていただきたい。

(別紙1)

(別紙2)