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○就労移行支援及び就労継続支援(A型・B型)における適切なサービス提供の推進について

(平成28年3月30日)

(障障発0330第1号)

(各都道府県・各指定都市・各中核市障害保健福祉主管部(局)長あて厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長通知)

(公印省略)

日頃より障害保健福祉行政にご協力いただき、感謝申し上げる。

さて、就労移行支援及び就労継続支援(A型・B型)(以下「就労系障害福祉サービス」という。)については、平成27年度障害福祉サービス等報酬改定において、それぞれのサービスで提供される支援の実績に着目したメリハリのある報酬改定を行ったところである。

また、平成27年12月には、社会保障審議会障害者部会の報告書として、「障害者総合支援法施行3年後の見直しについて」が取りまとめられ、障害者の就労支援に係る今後の取組の基本的な考え方として、「どの就労系障害福祉サービスを利用する場合であっても、障害者がその適性に応じて能力を十分に発揮し、自立した生活を実現することができるよう、工賃・賃金向上や一般就労への移行をさらに促進させるための取組を進めるべきである。」とされたところであり、今後、就労系障害福祉サービスにおいては、同報告書を踏まえて、より適切なサービス提供が求められるところである。

ついては、就労系障害福祉サービスにおける適切なサービス提供を推進するため、下記のとおり、重点的な指導をお願いするものであり、各都道府県におかれては、貴管内市町村に対する周知方よろしくお願いする。

なお、この通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言である。

1 就労継続支援(A型・B型)を利用する際の留意点について

(1) 就労継続支援A型の利用に係る支給決定手続き

就労継続支援A型の利用に当たっては、当該サービスが一定期間の訓練を行うサービスであることを踏まえ、就労継続支援A型の利用が適切か否かの客観的な判断を行うため、原則として、暫定支給決定を行うこととされていることから、利用者に対して適切なサービスを提供するという観点からも、適正な支給決定手続きをお願いする。

また、本支給決定の判断にあたっては、就労継続支援事業の対象者がA型及びB型ともに「通常の事業所に雇用されることが困難な障害者」とされていることから、これまでの利用実績、サービス管理責任者による評価等を踏まえ、一般就労や就労移行支援などの他の事業の利用の可能性を検討するようお願いする。

なお、暫定支給決定については、既に暫定支給決定期間中に行うアセスメントと同等と認められるアセスメントが行われており、改めて暫定支給決定によるアセスメントを要しないものと市町村が認めるときは、暫定支給決定は行わなくても差し支えないものとされている。

ただし、暫定支給決定の要否を検討することなく、一律に暫定支給決定を行わない市町村があるとの指摘もあるため、公平公正な支給決定手続きを行う観点から、市町村が、例外的に暫定支給決定によるアセスメントを行わなくても差し支えないとする取扱いを行う場合は、地域の実情に応じて、以下のような場合に限定した運用とするなど、手続きの明確化・透明化を図ることが必要である。その際、管内の市町村で著しい違いが生じることは適切ではないため、都道府県が積極的に関与することが重要である。

・ 現在、就労継続支援A型を利用している障害者が、他の市町村に転居する場合であって、転居後の市町村においても引き続き就労継続支援A型の利用を希望する場合に、転居前に利用していた事業所から転居後に利用する予定の事業所にアセスメント情報が引き継がれており、かつ、当該アセスメント情報の内容から、改めて暫定支給決定を要しないと市町村が判断できる場合

・ 就労移行支援を利用していたが、一般企業への就職がかなわず、就労継続支援A型の利用を希望する場合に、当該就労移行支援事業所から利用予定の就労継続支援A型事業所にアセスメント情報が引き継がれており、かつ、当該アセスメント情報の内容から、改めて暫定支給決定を要しないと市町村が判断できる場合

(2) 就労継続支援B型の利用に係る支給決定手続き

就労継続支援B型については、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日障発1031001号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知。以下「留意事項通知」という。)において、サービスの利用対象者を定めているところであり、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった障害者など、留意事項通知に定める要件に該当しない障害者については、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面の課題等を把握した上で就労継続支援B型を利用することとしているところである。

当該アセスメントは、約6割の特別支援学校卒業生が卒業後に障害福祉サービスの利用に至っていることや就労継続支援B型事業所から一般就労へ移行する利用者が2%にも満たないことなどを踏まえ、就労継続支援B型の新規利用者に対する長期的な支援を行っていく上で、一般就労への移行の可能性も視野に入れた障害者のニーズを把握するために実施するものである。

その一方で、障害者のこうした可能性を考慮せず、就労継続支援B型の利用を前提として形式的なアセスメントを実施している事例や、アセスメントを実施したにもかかわらず、アセスメントの結果が利用する事業所に引き継がれていない事例など、アセスメントの趣旨が理解されていない取扱いがみられるところである。

ついては、就労継続支援B型の利用を希望する障害者に対して、当該障害者のニーズや能力、可能性を踏まえた支援が提供されるよう、適切にアセスメントを実施するようお願いする。

なお、当該アセスメントについては、一般就労に関する支援ノウハウを有している就労移行支援事業所等において実施することとされているが、就労移行支援事業所でアセスメントを行うことが障害者の負担となる場合は、アセスメントを円滑に実施するため、施設外支援を利用することにより、アセスメント対象者が通所しやすい場所(利用者が在籍している特別支援学校内など)で実施することが可能である。

2 事業所における適切なサービス提供に向けた指導について

(1) 就労移行支援

① 就労移行支援の現状

就労移行支援は、就労を希望する障害者であって、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる障害者に対し、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、障害者の適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な支援を提供するものであり、利用者の一般就労への移行を実現することを目的としたサービスである。

こうした目的があるにもかかわらず、4割弱の事業所において、1年間で1人も一般就労に移行させることができていない状況(平成26年4月時点)にある。

② 適切なサービス提供に向けた指導

一般就労への移行実績の低い事業所については、一般就労への移行に向けた支援が適切に行われていない事例や、一般就労への移行に際し、障害者の適性を踏まえた企業とのマッチングが行われていないため、一般就労への移行後の就労定着が図られていない事例など、就労移行支援の趣旨に沿ったサービス提供が行われていない事例がみられるところである。

このような事業所については、指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年9月29日厚生労働省令第171号。以下「運営基準」という。)に定める就労移行支援の基本方針や運営に関する基準の各規定の趣旨に反していることから、重点的に指導を実施するようお願いする。また、指導後も改善の見込みがない場合には、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号。以下「法」という。)に基づいた勧告、命令等の措置を講ずることが必要である。

(2) 就労継続支援A型

① 就労継続支援A型の現状

就労継続支援A型は、通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である障害者に対し、就労の機会を提供するとともに、生産活動の機会の提供や就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他必要な支援を提供するものである。

また、就労継続支援A型事業者には、就労機会の提供にあたり、地域の実情や製品及びサービスの需給状況等を考慮して行うとともに、利用者が自立した日常生活または社会生活を営むことを支援するため、賃金水準を高めていくことが求められている。

その一方で、法の趣旨に反し、運営基準の規定に抵触すると考えられる不適切な事業運営を行っている就労継続支援A型事業所があることが指摘されている。

② 適切なサービス提供に向けた指導

不適切な事業運営を行っている事業所については、本来の利用者である障害者の利用を正当な理由なく短時間に限り、健常者である従業員がフルタイムで就労している事例、利用者も従業者も短時間の利用とすることによって、浮いた自立支援給付費を障害者の賃金に充当している事例、就労機会の提供にあたって収益の上がらない仕事しか提供しない事例、一定期間経過後に利用者の意向等にかかわらず、就労継続支援B型事業所に移行させるなど不当に退所させている事例など、様々な事例が指摘されている。

このような事業所については、運営基準に定める就労継続支援A型の基本方針や運営に関する基準の各規定の趣旨に反していることから、重点的に指導監査を実施するようお願いする。また、指導後も改善の見込みがない場合には、法に基づいた勧告、命令等の措置を講ずることが必要である。

なお、「指定就労継続支援A型における適正な事業運営に向けた指導について」(平成27年9月8日障障発0908第1号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長通知)において、指導の際の確認点や根拠を整理しているので、指導監査の際に活用されたい。

(3) 就労継続支援B型

① 就労継続支援B型の現状

就労継続支援B型は、通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である障害者に対し、就労の機会を提供するとともに、生産活動の機会の提供や就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他必要な支援を提供するものである。

就労継続支援B型事業者は、利用者に対し、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した金額を工賃として支払うこととなっており、利用者が自立した日常生活または社会生活を営むことを支援するため、工賃水準を高めていくことが求められている。

その一方で、1割強の事業所において、平均工賃が5千円を下回っている状況(平成25年度)にあり、なかには運営基準で定める工賃の最低水準である3千円を下回っている事業所も見受けられるところである。

② 適切なサービス提供に向けた指導

工賃の平均額が3千円を下回る事業所については、運営基準が遵守されていないことが明確であることから、重点的に指導監査を実施するようお願いする。また、指導後も改善の見込みがない場合には、地域活動支援センターへの移行や、法に基づいた勧告、命令等の措置を講ずることが必要である。

なお、工賃水準が低い事業所に対しては、工賃向上計画支援事業を活用するなど、工賃水準の向上に向けた積極的な対応を行うようお願いする。