○「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針の一部を改正する指針」の周知について
(平成28年3月31日)
(基発0331第24号)
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
(公印省略)
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第28条第3項において、厚生労働大臣は、がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのある化学物質で厚生労働大臣が定めるものを製造し、又は取り扱う事業者が当該化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針を公表することとされており、これまでに2―アミノ―4―クロロフェノール等34物質が定められ、労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針(平成24年10月10日付け健康障害を防止するための指針公示第23号。以下「がん原性指針」という。)が公表されている。
今般、日本バイオアッセイ研究センターにおいて4―ターシャリ―ブチルカテコール他2物質について哺乳動物を用いた長期毒性試験を実施し、これについて厚生労働省労働基準局長が専門家を参集して開催した「化学物質のリスク評価検討会」の「有害性評価小検討会」において検討がなされた。その結果、これらの物質について実験動物にがんを引き起こすことが確認され、ヒトに対するがん原性は現在確定していないが、労働者がこの物質に長期間ばく露された場合に、がんを生ずる可能性が否定できないことから、がん原性指針により健康障害防止措置について指導を行うことが適当との結論が得られた。このため、厚生労働省労働基準局長が開催した「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」において、この物質について健康障害を防止するための対策について検討がなされ、がん原性指針に規定した措置と同様の措置を講じることが必要であると結論された。
また、特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号)において、エチルベンゼンの塗装業務について発がん性に着目した健康障害防止措置を義務付けているところであるが、がん原性指針においても、法令により規制の対象とされなかった業務のうち、所要の措置を講じる必要がある業務について、「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針の一部を改正する指針(平成28年3月31日付け健康障害を防止するための指針公示第26号)(以下「指針公示第26号」という。)」を別添1のとおり策定し、同日付け官報に公示したところである。これによりがん原性指針が別添2の新旧対照表のとおり改正され、改正後のがん原性指針(以下「改正指針」という。)は別添3のとおりである。
ついては、下記事項に留意の上、化学物質による健康障害を防止するために、各都道府県労働局労働基準部健康主務課において指針公示第26号を閲覧に供する(指針公示第26号が厚生労働省ウェブサイトに掲載されている旨を知らせることを含む。)とともに事業者及び関係事業者団体等に対してその周知を図り、各事業場においてこれらの化学物質による健康障害の防止対策が適切に行われるよう指導されたい。
また、主要な関係事業者団体に対しては、別添4により、改正指針の周知を図るよう要請したので了知されたい。
なお、本通達はがん原性指針の改正事項のみを示しており、改正指針の全般的事項については別途通達を発出するので、併せて了知されたい。
記
第1 改正指針に追加された対象物質等及びそれらに係る改正指針に基づき講ずべき措置に関する留意事項
改正指針の対象物質は、これまでがん原性指針が定められていた2―アミノ―4―クロロフェノール等34物質に加え、法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質として追加された以下の4物質(カッコ内はCAS登録番号を示す。以下これらを「エチルベンゼンほか3物質」という。)である。
・エチルベンゼン(100―41―4)
・4―ターシャリ―ブチルカテコール(98―29―3)
・多層カーボンナノチューブ(がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものに限る。)
・メタクリル酸2,3―エポキシプロピル(106―91―2)
多層カーボンナノチューブのうち、がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものは、哺乳動物を用いた長期毒性試験で発がん性が確認された、株式会社物産ナノテク研究所、ナノカーボンテクノロジーズ株式会社又は保土谷化学工業株式会社が製造した、MWNT―7(ナノサイズ(直径で概ね100nm以下)のものに限る。以下同じ。)及びNT―7Kであること。
これにより、MWNT―7又はNT―7K及びこれらを1%を超えて含有する物(以下「MWNT―7等」という。)について改正指針に基づく措置が必要となるが、MWNT―7又はNT―7Kをナノサイズ(直径で概ね100nm以下)を超える粒径に造粒したもの又はこれらが樹脂等の固体に練り込まれている状態のもの等を取り扱う場合であって労働者がMWNT―7又はNT―7Kにばく露するおそれがないときは、改正指針に基づく措置を要しないこと。ただし、当該造粒品や固体等を粉砕する等により労働者にMWNT―7又はNT―7Kへのばく露のおそれがある業務については、改正指針に基づく措置が必要となること。
エチルベンゼンについては、ガソリン等の燃料油にも含有されているが、リスク評価の結果、給油等の業務はばく露リスクが低いとされたことから、「ガソリンスタンド等における取扱業務」については、改正指針に基づく措置の対象業務には含まれないこと。ただし、エチルベンゼンに係る危険有害性等の表示及び譲渡提供時の文書交付は、法により義務とされていることから、当該業務においても、改正指針7(1)に示した措置を講じなければならないこと。
エチルベンゼンほか3物質について適用される措置は、エチルベンゼンにあっては、改正指針3(3)、4(2)、5、6及び7(1)、4―ターシャリ―ブチルカテコール及びMWNT―7等にあっては、3(4)、4(3)、5、6及び7(3)、メタクリル酸2,3―エポキシプロピルにあっては、3(4)、5、6及び7(3)であること。
第2 参考資料
1 物理化学的性質について
エチルベンゼン及びメタクリル酸2,3―エポキシプロピルに係る物理化学的性質等の情報については、「職場のあんぜんサイト」のGHS対応モデルラベル・モデルSDS情報を参照されたい。
2 作業環境測定について
改正指針によりがん原性指針の対象に追加されたエチルベンゼン、MWNT―7等及び4―ターシャリ―ブチルカテコールに関する作業環境測定の方法及び測定結果の評価に用いる指標(管理濃度等)については、関係者の利便性の向上のため、エチルベンゼン、MWNT―7等及び4―ターシャリ―ブチルカテコールを含めたがん原性指針対象物質について取りまとめた上で、別途発出する予定のがん原性指針の全般的事項について示す通達に参考資料として示す予定であること。
第3 関係通達の改正
「屋外作業場等における作業環境管理に関するガイドラインについて(平成17年3月31日付け基発第0331017号)」の別表第2を別紙のとおり改正することとしたこと。
第4 その他
MWNT―7等を含むナノマテリアルについては、改正指針による措置に加え、「ナノマテリアルに対するばく露防止のための予防的対応について(平成21年3月31日付け基発第0331013号)」によるばく露防止対策等が必要であることに留意すること。
[別紙]
別表第2 労働者の健康障害を防止するために厚生労働大臣が指針を公表した化学物質に係る試料採取方法及び分析方法
物の種類 |
試料採取方法 |
分析方法 |
1 2―アミノ―4―クロロフェノール |
ろ過捕集方法 |
高速液体クロマトグラフ分析方法 |
2 アントラセン |
フィルター及び捕集管を組み合わせた相補型のろ過捕集方法 |
高速液体クロマトグラフ分析方法又はガスクロマトグラフ分析方法 |
3 エチルベンゼン |
固体捕集方法又は直接捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
4 2,3―エポキシ―1―プロパノール |
固体捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法又は高速液体クロマトグラフ分析方法 |
5 塩化アリル |
固体捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
6 オルト―フェニレンジアミン及びその塩 |
ろ過捕集方法 |
高速液体クロマトグラフ分析方法 |
7 キノリン及びその塩 |
固体捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
8 1―クロロ―2―ニトロベンゼン |
固体捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
9 クロロホルム |
液体捕集方法、固体捕集方法又は直接捕集方法 |
1 液体捕集方法にあっては、吸光光度分析方法 2 固体捕集方法又は直接捕集方法にあっては、ガスクロマトグラフ分析方法 |
10 酢酸ビニル |
固体捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
11 四塩化炭素 |
液体捕集方法又は固体捕集方法 |
1 液体捕集方法にあっては、吸光光度分析方法 2 固体捕集方法にあっては、ガスクロマトグラフ分析方法 |
12 1,4―ジオキサン |
固体捕集方法又は直接捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
13 1,2―ジクロロエタン(別名二塩化エチレン) |
液体捕集方法、固体捕集方法又は直接捕集方法 |
1 液体捕集方法にあっては、吸光光度分析方法 2 固体捕集方法又は直接捕集方法にあっては、ガスクロマトグラフ分析方法 |
14 1,4―ジクロロ2―ニトロベンゼン |
固体捕集方法 |
高速液体クロマトグラフ分析方法 |
15 2,4―ジクロロ1―ニトロベンゼン |
固体捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
16 1,2―ジクロロプロパン |
固体捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
17 ジクロロメタン(別名二塩化メチレン) |
固体捕集方法又は直接捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
18 N,N―ジメチルアセトアミド |
固体捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
19 ジメチル―2,2―ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP) |
固体捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
20 N,N―ジメチルホルムアミド |
固体捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
21 スチレン |
液体捕集方法、固体捕集方法又は直接捕集方法 |
1 液体捕集方法にあっては、吸光光度分析方法 2 固体捕集方法又は直接捕集方法にあっては、ガスクロマトグラフ分析方法 |
22 4―ターシャリ―ブチルカテコール |
フィルター及び捕集管を組み合わせた相補型のろ過捕集方法 |
高速液体クロマトグラフ分析方法 |
23 多層カーボンナノチューブ(がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものに限る。) |
ろ過捕集方法 |
炭素分析法又は高速液体クロマトグラフ分析方法 |
24 1,1,2,2―テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン) |
液体捕集方法又は固体捕集方法 |
1 液体捕集方法にあっては、吸光光度分析方法 2 固体捕集方法にあっては、ガスクロマトグラフ分析方法 |
25 テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン) |
固体捕集方法又は直接捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
26 1,1,1―トリクロルエタン |
液体捕集方法、固体捕集方法又は直接捕集方法 |
1 液体捕集方法にあっては、吸光光度分析方法 2 固体捕集方法又は直接捕集方法にあっては、ガスクロマトグラフ分析方法 |
27 トリクロロエチレン |
液体捕集方法、固体捕集方法又は直接捕集方法 |
1 液体捕集方法にあっては、吸光光度分析方法 2 固体捕集方法又は直接捕集方法にあっては、ガスクロマトグラフ分析方法 |
28 ノルマル―ブチル―2,3―エポキシプロピルエーテル |
固体捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
29 パラ―ジクロルベンゼン |
固体捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
30 パラ―ニトロアニソール |
固体捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
31 パラ―ニトロクロルベンゼン |
液体捕集方法又は固体捕集方法 |
1 液体捕集方法にあっては、吸光光度分析方法又はガスクロマトグラフ分析方法 2 固体捕集方法にあっては、ガスクロマトグラフ分析方法 |
32 ヒドラジン及びその塩並びに一水和物 |
固体捕集方法 |
高速液体クロマトグラフ分析方法 |
33 ビフェニル |
固体捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
34 2―ブテナール |
固体捕集方法 |
高速液体クロマトグラフ分析方法 |
35 1―ブロモ―3―クロロプロパン |
固体捕集方法 |
ガスクロマトグラフ分析方法 |
36 1―ブロモブタン |
固体捕集方法 |
ガスクロマトグラフ質量分析方法 |
37 メチルイソブチルケトン |
液体捕集方法、固体捕集方法又は直接捕集方法 |
1 液体捕集方法にあっては、吸光光度分析方法 2 固体捕集方法又は直接捕集方法にあっては、ガスクロマトグラフ分析方法 |
別添1
○労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針の一部を改正する指針
(平成28年3月31日)
(健康障害を防止するための指針公示第26号)
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第28条第3項の規定に基づき、厚生労働大臣が定める化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針(平成24年健康障害を防止するための指針公示第23号)の一部を次のように改正する。
2中「アントラセン(120―12―7)」の次に「、エチルベンゼン(100―41―4)」を、「スチレン(100―42―5)」の次に「、4―ターシャリ―ブチルカテコール(98―29―3)、多層カーボンナノチューブ(がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものに限る。)」を、「1―ブロモブタン(109―65―9)」の次に「、メタクリル酸2,3―エポキシプロピル(106―91―2)」を加える。
3中「クロロホルム、」を「エチルベンゼン、クロロホルム、」に、「クロロホルムほか11物質」を「エチルベンゼンほか12物質」に、「「クロロホルム等」」を「「エチルベンゼン等」」に改め、「クロロホルム等有機溶剤業務」の次に「、同号ロに規定するエチルベンゼン塗装業務」を加え、「クロロホルム等の」を「エチルベンゼン等の」に、「クロロホルム等を」を「エチルベンゼン等を」に改める。
4(2)中「クロロホルムほか11物質」を「エチルベンゼンほか12物質」に改める。
4(3)中「、対象物質」の次に「(メタクリル酸2,3―エポキシプロピルを除く。)」を加え、「並びに1―ブロモブタン」を「、多層カーボンナノチューブ(がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものに限る。)、1―ブロモブタン並びにメタクリル酸2,3―エポキシプロピル」に改める。
5(1)中「クロロホルム等有機溶剤業務」の次に「、同号ロに規定するエチルベンゼン塗装業務」を加える。
別添2
別添3
○労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針
(平成24年10月10日)
(健康障害を防止するための指針公示第23号)
改正 平成25年10月 1日健康障害を防止するための指針公示第24号
同 26年10月31日同 第25号
同 28年 3月31日同 第26号
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第28条第3項の規定に基づき、厚生労働大臣が定める化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針を次のとおり公表する。
1 趣旨
この指針は、労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質(以下「対象物質」という。)又は対象物質を含有する物(対象物質の含有量が重量の1パーセント以下のものを除く。以下「対象物質等」という。)を製造し、又は取り扱う業務に関し、対象物質による労働者の健康障害の防止に資するため、その製造、取扱い等に際し、事業者が講ずべき措置について定めたものである。
2 対象物質(CAS登録番号)
この指針において、対象物質(CAS登録番号)は、2―アミノ―4―クロロフェノール(95―85―2)、アントラセン(120―12―7)、エチルベンゼン(100―41―4)、2,3―エポキシ―1―プロパノール(556―52―5)、塩化アリル(107―05―1)、オルト―フェニレンジアミン及びその塩(95―54―5ほか)、キノリン及びその塩(91―22―5ほか)、1―クロロ―2―ニトロベンゼン(88―73―3)、クロロホルム(67―66―3)、酢酸ビニル(108―05―4)、四塩化炭素(56―23―5)、1,4―ジオキサン(123―91―1)、1,2―ジクロロエタン(別名二塩化エチレン)(107―06―2)、1,4―ジクロロ―2―ニトロベンゼン(89―61―2)、2,4―ジクロロ―1―ニトロベンゼン(611―06―3)、1,2―ジクロロプロパン(78―87―5)、ジクロロメタン(別名二塩化メチレン)(75―09―2)、N,N―ジメチルアセトアミド(127―19―5)、ジメチル―2,2―ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP)(62―73―7)、N,N―ジメチルホルムアミド(68―12―2)、スチレン(100―42―5)、4―ターシャリ―ブチルカテコール(98―29―3)、多層カーボンナノチューブ(がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものに限る。)、1,1,2,2―テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン)(79―34―5)、テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)(127―18―4)、1,1,1―トリクロルエタン(71―55―6)、トリクロロエチレン(79―01―6)、ノルマル―ブチル―2,3―エポキシプロピルエーテル(2426―08―6)、パラ―ジクロルベンゼン(106―46―7)、パラ―ニトロアニソール(100―17―4)、パラ―ニトロクロルベンゼン(100―00―5)、ヒドラジン及びその塩並びにヒドラジン一水和物(302―01―2、7803―57―8ほか)、ビフェニル(92―52―4)、2ブテナール(123―73―9、4170―30―3及び15798―64―8)、1―ブロモ―3―クロロプロパン(109―70―6)、1―ブロモブタン(109―65―9)、メタクリル酸2,3―エポキシプロピル(106―91―2)並びにメチルイソブチルケトン(108―10―1)をいう。
なお、CAS登録番号とは、米国化学会の一部門であるCAS(Chemical Abstracts Service)が運営・管理する化学物質登録システムから付与される固有の数値識別番号をいい、オルト―フェニレンジアミン及びその塩、キノリン及びその塩並びにヒドラジン及びその塩並びにヒドラジン一水和物については、その代表的なもののみを例示している。
3 対象物質へのばく露を低減するための措置について
(1) N,N―ジメチルホルムアミド及び1,1,1―トリクロルエタン(以下「N,N―ジメチルホルムアミドほか1物質」という。)又はこれらのいずれかをその重量の1パーセントを超えて含有するもののうち、有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号。以下「有機則」という。)第1条第1項第1号に規定する有機溶剤の含有量がその重量の5パーセントを超えるもの(以下「N,N―ジメチルホルムアミド等」という。)を製造し、又は取り扱う業務のうち、有機則第1条第1項第6号に規定する有機溶剤業務(以下「N,N―ジメチルホルムアミド等有機溶剤業務」という。)については、労働者のN,N―ジメチルホルムアミドほか1物質へのばく露の低減を図るため、設備の密閉化、局所排気装置の設置等既に有機則において定める措置のほか、次の措置を講ずること。
ア 事業場におけるN,N―ジメチルホルムアミド等の製造量、取扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様等を勘案し、必要に応じ、次に掲げる作業環境管理に係る措置、作業管理に係る措置その他必要な措置を講ずること。
(ア) 作業環境管理
① 使用条件等の変更
② 作業工程の改善
(イ) 作業管理
① 労働者がN,N―ジメチルホルムアミドほか1物質にばく露しないような作業位置、作業姿勢又は作業方法の選択
② 呼吸用保護具、不浸透性の保護衣、保護手袋等の保護具の使用
③ N,N―ジメチルホルムアミドほか1物質にばく露される時間の短縮
イ N,N―ジメチルホルムアミド等を作業場外へ排出する場合は、当該物質を含有する排気、排液等による事業場の汚染の防止を図ること。
ウ 保護具については、同時に就業する労働者の人数分以上を備え付け、常時有効かつ清潔に保持すること。また、労働者に送気マスクを使用させたときは、清浄な空気の取り入れが可能となるよう吸気口の位置を選定し、当該労働者が有害な空気を吸入しないように措置すること。
エ 次の事項に係る基準を定め、これに基づき作業させること。
(ア) 設備、装置等の操作、調整及び点検
(イ) 異常な事態が発生した場合における応急の措置
(ウ) 保護具の使用
(2) パラ―ニトロクロルベンゼン又はパラ―ニトロクロルベンゼンをその重量の5パーセントを超えて含有するもの(以下「パラ―ニトロクロルベンゼン等」という。)を製造し、又は取り扱う業務(以下「パラ―ニトロクロルベンゼン製造・取扱い業務」という。)については、労働者のパラ―ニトロクロルベンゼンへのばく露の低減を図るため、設備の密閉化、局所排気装置の設置等既に特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)において定める措置のほか、次の措置を講ずること。
ア 事業場におけるパラ―ニトロクロルベンゼン等の製造量、取扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様等を勘案し、必要に応じ、次に掲げる作業環境管理に係る措置、作業管理に係る措置その他必要な措置を講ずること。
(ア) 作業環境管理
① 使用条件等の変更
② 作業工程の改善
(イ) 作業管理
① 労働者がパラ―ニトロクロルベンゼンにばく露しないような作業位置、作業姿勢又は作業方法の選択
② 呼吸用保護具、不浸透性の保護衣、保護手袋等の保護具の使用
③ パラ―ニトロクロルベンゼンにばく露される時間の短縮
イ パラ―ニトロクロルベンゼン等を作業場外へ排出する場合は、当該物質を含有する排気、排液等による事業場の汚染の防止を図ること。
ウ 保護具については、同時に就業する労働者の人数分以上を備え付け、常時有効かつ清潔に保持すること。また、労働者に送気マスクを使用させたときは、清浄な空気の取り入れが可能となるよう吸気口の位置を選定し、当該労働者が有害な空気を吸入しないように措置すること。
エ 次の事項に係る基準を定め、これに基づき作業させること。
(ア) 設備、装置等の操作、調整及び点検
(イ) 異常な事態が発生した場合における応急の措置
(ウ) 保護具の使用
(3) エチルベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、1,4―ジオキサン、1,2―ジクロロエタン、1,2―ジクロロプロパン、ジクロロメタン、ジメチル―2,2―ジクロロビニルホスフェイト、スチレン、1,1,2,2―テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン及びメチルイソブチルケトン(以下「エチルベンゼンほか12物質」という。)又はエチルベンゼンほか12物質のいずれかをその重量の1パーセントを超えて含有するもの(以下「エチルベンゼン等」という。)を製造し、又は取り扱う業務のうち、特化則第2条の2第1号イに規定するクロロホルム等有機溶剤業務、同号ロに規定するエチルベンゼン塗装業務、同号ハに規定する1,2―ジクロロプロパン洗浄・払拭業務及びジメチル―2,2―ジクロロビニルホスフェイト又はこれをその重量の1パーセントを超えて含有する製剤その他の物を成形し、加工し、又は包装する業務のいずれにも該当しない業務(以下「クロロホルム等特化則適用除外業務」という。)については、労働者のエチルベンゼンほか12物質へのばく露の低減を図るため、次の措置を講ずること。
ア 事業場におけるエチルベンゼン等の製造量、取扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様等を勘案し、必要に応じ、危険性又は有害性等の調査等を実施し、その結果に基づいて、次に掲げる作業環境管理に係る措置、作業管理に係る措置その他必要な措置を講ずること。
(ア) 作業環境管理
① 使用条件等の変更
② 作業工程の改善
③ 設備の密閉化
④ 局所排気装置等の設置
(イ) 作業管理
① 作業を指揮する者の選任
② 労働者がエチルベンゼンほか12物質にばく露しないような作業位置、作業姿勢又は作業方法の選択
③ 呼吸用保護具、不浸透性の保護衣、保護手袋等の保護具の使用
④ エチルベンゼンほか12物質にばく露される時間の短縮
イ 上記アによりばく露を低減するための装置等の設置等を行った場合、次により当該装置等の管理を行うこと。
(ア) 局所排気装置等については、作業が行われている間、適正に稼働させること。
(イ) 局所排気装置等については、定期的に保守点検を行うこと。
(ウ) エチルベンゼン等を作業場外へ排出する場合は、当該物質を含有する排気、排液等による事業場の汚染の防止を図ること。
ウ 保護具については、同時に就業する労働者の人数分以上を備え付け、常時有効かつ清潔に保持すること。また、労働者に送気マスクを使用させたときは、清浄な空気の取り入れが可能となるよう吸気口の位置を選定し、当該労働者が有害な空気を吸入しないように措置すること。
エ 次の事項に係る基準を定め、これに基づき作業させること。
(ア) 設備、装置等の操作、調整及び点検
(イ) 異常な事態が発生した場合における応急の措置
(ウ) 保護具の使用
(4) 対象物質等(エチルベンゼン等を除く。(4)及び4(3)において同じ。)を製造し、又は取り扱う業務(N,N―ジメチルホルムアミド等有機溶剤業務及びパラ―ニトロクロルベンゼン製造・取扱い業務を除く。(4)及び4において同じ。)については、労働者の対象物質(エチルベンゼンほか12物質を除く。(4)及び4(3)において同じ。)へのばく露の低減を図るため、次の措置を講ずること。
ア 事業場における対象物質等の製造量、取扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様等を勘案し、必要に応じ、危険性又は有害性等の調査等を実施し、その結果に基づいて、次に掲げる作業環境管理に係る措置、作業管理に係る措置その他必要な措置を講ずること。
(ア) 作業環境管理
① 使用条件等の変更
② 作業工程の改善
③ 設備の密閉化
④ 局所排気装置等の設置
(イ) 作業管理
① 作業を指揮する者の選任
② 労働者が対象物質にばく露しないような作業位置、作業姿勢又は作業方法の選択
③ 呼吸用保護具、不浸透性の保護衣、保護手袋等の保護具の使用
④ 対象物質にばく露される時間の短縮
イ 上記アによりばく露を低減するための装置等の設置等を行った場合、次により当該装置等の管理を行うこと。
(ア) 局所排気装置等については、作業が行われている間、適正に稼働させること。
(イ) 局所排気装置等については、定期的に保守点検を行うこと。
(ウ) 対象物質等を作業場外へ排出する場合は、当該物質を含有する排気、排液等による事業場の汚染の防止を図ること。
ウ 保護具については、同時に就業する労働者の人数分以上を備え付け、常時有効かつ清潔に保持すること。また、労働者に送気マスクを使用させたときは、清浄な空気の取り入れが可能となるよう吸気口の位置を選定し、当該労働者が有害な空気を吸入しないように措置すること。
エ 次の事項に係る基準を定め、これに基づき作業させること。
(ア) 設備、装置等の操作、調整及び点検
(イ) 異常な事態が発生した場合における応急の措置
(ウ) 保護具の使用
4 作業環境測定について
(1) N,N―ジメチルホルムアミド等有機溶剤業務については有機則に定めるところにより、パラ―ニトロクロルベンゼン製造・取扱い業務については特化則に定めるところにより、作業環境測定及び測定の結果の評価を行うこととするほか、作業環境測定の結果及び結果の評価の記録を30年間保存するよう努めること。
(2) クロロホルム等特化則適用除外業務については、次の措置を講ずること。
ア 屋内作業場について、エチルベンゼンほか12物質の空気中における濃度を定期的に測定すること。なお、測定は作業環境測定士が実施することが望ましい。また、測定は6月以内ごとに1回実施するよう努めること。
イ 作業環境測定を行ったときは、当該測定結果の評価を行い、その結果に基づき施設、設備、作業工程及び作業方法等の点検を行うこと。これらの点検結果に基づき、必要に応じて使用条件等の変更、作業工程の改善、作業方法の改善その他作業環境改善のための措置を講ずるとともに、呼吸用保護具の着用その他労働者の健康障害を予防するため必要な措置を講ずること。
ウ 作業環境測定の結果及び結果の評価の記録を30年間保存するよう努めること。
(3) 対象物質等を製造し、又は取り扱う業務については、次の措置を講ずること。
ア 屋内作業場について、対象物質(メタクリル酸2,3―エポキシプロピルを除く。)の空気中における濃度を定期的に測定すること。なお、測定は作業環境測定士が実施することが望ましい。また、測定は6月以内ごとに1回実施するよう努めること。
イ 作業環境測定(2―アミノ―4―クロロフェノール、アントラセン、キノリン及びその塩、1,4―ジクロロ―2―ニトロベンゼン、多層カーボンナノチューブ(がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものに限る。)、1―ブロモブタン並びにメタクリル酸2,3―エポキシプロピル又はこれらをその重量の1パーセントを超えて含有するもの(以下「2―アミノ―4―クロロフェノール等」という。)を製造し、又は取り扱う業務に係る作業環境測定を除く。)を行ったときは、当該測定結果の評価を行い、その結果に基づき施設、設備、作業工程及び作業方法等の点検を行うこと。これらの点検結果に基づき、必要に応じて使用条件等の変更、作業工程の改善、作業方法の改善その他作業環境改善のための措置を講ずるとともに、呼吸用保護具の着用その他労働者の健康障害を予防するため必要な措置を講ずること。
ウ 作業環境測定の結果及び結果の評価の記録(2―アミノ―4―クロロフェノール等を製造し、又は取り扱う業務については、作業環境測定の結果の記録に限る。)を30年間保存するよう努めること。
5 労働衛生教育について
(1) 対象物質等を製造し、又は取り扱う業務(特化則第2条の2第1号イに規定するクロロホルム等有機溶剤業務、同号ロに規定するエチルベンゼン塗装業務、同号ハに規定する1,2―ジクロロプロパン洗浄・払拭業務及びジメチル―2,2―ジクロロビニルホスフェイト又はこれをその重量の1パーセントを超えて含有する製剤その他の物を成形し、加工し、又は包装する業務を除く。6において同じ。)に従事している労働者に対しては速やかに、また、当該業務に従事させることとなった労働者に対しては従事させる前に、次の事項について労働衛生教育を行うこと。
ア 対象物質の性状及び有害性
イ 対象物質等を使用する業務
ウ 対象物質による健康障害、その予防方法及び応急措置
エ 局所排気装置その他の対象物質へのばく露を低減するための設備及びそれらの保守、点検の方法
オ 作業環境の状態の把握
カ 保護具の種類、性能、使用方法及び保守管理
キ 関係法令
(2) 上記の事項に係る労働衛生教育の時間は総じて4.5時間以上とすること。
6 労働者の把握について
対象物質等を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者について、1月を超えない期間ごとに次の事項を記録すること。
(1) 労働者の氏名
(2) 従事した業務の概要及び当該業務に従事した期間
(3) 対象物質により著しく汚染される事態が生じたときは、その概要及び講じた応急措置の概要
なお、上記の事項の記録は、当該記録を行った日から30年間保存するよう努めること。
7 危険有害性等の表示及び譲渡提供時の文書交付について
(1) 対象物質等のうち、労働安全衛生法第57条及び第57条の2の規定の対象となるもの(以下「表示・通知対象物」という。)を譲渡し、又は提供する場合は、これらの規定に基づき、容器又は包装に名称等の表示を行うとともに、相手方に安全データシート(以下「SDS」という。)の交付等により名称等を通知すること。また、SDSの交付等により表示・通知対象物の名称等を通知された場合は、同法第101条第2項の規定に基づき、通知された事項を作業場に掲示する等により労働者に周知すること。さらに、労働者(表示・通知対象物を製造し、又は輸入する事業者の労働者を含む。)に表示・通知対象物を取り扱わせる場合は、化学物質等の危険性又は有害性等の表示又は通知等の促進に関する指針(平成24年厚生労働省告示第133号。以下「表示・通知促進指針」という。)第4条第1項の規定に基づき、容器又は包装に名称等の表示を行うこと。このほか、労働者(表示・通知対象物を製造し、又は輸入する事業者の労働者をいう。以下(1)において同じ。)に表示・通知対象物を取り扱わせる場合は、表示・通知促進指針第4条第5項及び第5条第1項の規定に基づき、SDSを作成するとともに、その記載事項を作業場に掲示する等により労働者に周知すること。
(2) 対象物質等のうち、労働安全衛生法第57条の2の規定の対象となるもの(同法第57条の規定の対象となるものを除く。以下「通知対象物」という。)を譲渡し、又は提供する場合は、同法第57条の2の規定に基づき、相手方にSDSの交付等により名称等を通知すること。また、SDSの交付等により通知対象物の名称等を通知された場合は、同法第101条第2項の規定に基づき、通知された事項を作業場に掲示する等により労働者に周知すること。さらに、通知対象物を譲渡し、若しくは提供する場合又は労働者(通知対象物を製造し、又は輸入する事業者の労働者を含む。)に通知対象物を取り扱わせる場合は、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第24条の14の規定又は表示・通知促進指針第4条第1項の規定に基づき、容器又は包装に名称等の表示を行うこと。このほか、労働者(通知対象物を製造し、又は輸入する事業者の労働者をいう。以下(2)において同じ。)に通知対象物を取り扱わせる場合は、表示・通知促進指針第4条第5項及び第5条第1項の規定に基づき、SDSを作成するとともに、その記載事項を作業場に掲示する等により労働者に周知すること。
(3) 対象物質等のうち、上記(1)及び(2)以外のもの(以下「表示・通知努力義務対象物」という。)を譲渡し、又は提供する場合は、労働安全衛生規則第24条の14及び第24条の15並びに表示・通知促進指針第2条第1項及び第3条第1項の規定に基づき、容器又は包装に名称等の表示を行うとともに、相手方にSDSの交付等により名称等を通知すること。また、労働者(表示・通知努力義務対象物を製造し、又は取り扱う事業者の労働者を含む。以下同じ。)に表示・通知努力義務対象物を取り扱わせる場合は、表示・通知促進指針第4条第1項及び第5条第1項の規定に基づき、容器又は包装に名称等を表示するとともに、譲渡提供者から通知された事項(表示・通知努力義務対象物を製造し、又は輸入する事業者にあっては、表示・通知促進指針第4条第5項の規定に基づき作成したSDSの記載事項)を作業場に掲示する等により労働者に周知すること。
別添4
○「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針の一部を改正する指針」の周知について(協力依頼)
(平成28年3月31日)
(基発0331第25号)
(別記の関係事業者団体の長あて厚生労働省労働基準局長通知)
(公印省略)
労働基準行政の推進につきましては、平素より御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第28条第3項において、厚生労働大臣は、がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのある化学物質で厚生労働大臣が定めるものを製造し、又は取り扱う事業者が当該化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針を公表することとされており、これまでに2―アミノ―4―クロロフェノール等34物質が定められ、労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針(平成24年10月10日付け健康障害を防止するための指針公示第23号。以下「がん原性指針」という。)が公表されております。
今般、日本バイオアッセイ研究センターにおいて4―ターシャリ―ブチルカテコール他2物質について哺乳動物を用いた長期毒性試験を実施し、これについて厚生労働省労働基準局長が専門家を参集して開催した「化学物質のリスク評価検討会」の「有害性評価小検討会」において検討されました。その結果、これらの物質について実験動物にがんを引き起こすことが確認され、ヒトに対するがん原性は現在確定していないが、労働者がこの物質に長期間ばく露された場合に、がんを生ずる可能性が否定できないことから、がん原性指針により健康障害防止措置について指導を行うことが適当との結論が得られたところです。このため、厚生労働省労働基準局長が開催した「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」において、この物質について健康障害を防止するための対策について検討がなされ、がん原性指針に規定した措置と同様の措置を講じることが必要であると結論づけられました。
また、特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号)において、エチルベンゼンの塗装業務について発がん性に着目した健康障害防止措置を義務付けているところですが、がん原性指針においても、法令により規制の対象とされなかった業務のうち、所要の措置を講じる必要がある業務について、「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針の一部を改正する指針(平成28年3月31日付け健康障害を防止するための指針公示第26号)(以下「指針公示第26号」という。)」を別添1のとおり策定し、同日付け官報に公示したところです。これによりがん原性指針が別添2の新旧対照表のとおり改正され、改正後のがん原性指針(以下「改正指針」という。)は別添3のとおりとなります。
つきましては、貴団体におかれましても、改正指針の趣旨を御理解いただき、改正指針及び下記の留意事項について傘下会員に対する周知を図られますとともに、これらの化学物質による健康障害の防止対策が適切に行われるようお願い申し上げます。
なお、従来発出した指針の施行通達においては、指針の全般的事項及び改正事項の両方を示してきたところですが、本通達以降、指針の改正に当たっては改正事項のみを示すこととし、指針の全般的事項についてはこれまでに発出した各通達の内容を取りまとめた上で別途通達を発出することとしましたので、併せて御了知ください。
記
第1 改正指針に追加された対象物質等及びそれらに係る改正指針に基づき講ずべき措置に関する留意事項
改正指針の対象物質は、これまでがん原性指針が定められていた2―アミノ―4―クロロフェノール等34物質に加え、法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質として追加された以下の4物質(カッコ内はCAS登録番号を示す。以下これらを「エチルベンゼンほか3物質」という。)である。
・エチルベンゼン(100―41―4)
・4―ターシャリ―ブチルカテコール(98―29―3)
・多層カーボンナノチューブ(がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものに限る。)
・メタクリル酸2,3―エポキシプロピル(106―91―2)
多層カーボンナノチューブのうち、がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものは、哺乳動物を用いた長期毒性試験で発がん性が確認された、株式会社物産ナノテク研究所、ナノカーボンテクノロジーズ株式会社又は保土谷化学工業株式会社が製造した、MWNT―7(ナノサイズ(直径で概ね100nm以下)のものに限る。以下同じ。)及びNT―7Kであること。
これにより、MWNT―7又はNT―7K及びこれらを1%を超えて含有する物(以下「MWNT―7等」という。)について改正指針に基づく措置が必要となるが、MWNT―7又はNT―7Kをナノサイズ(直径で概ね100nm以下)を超える粒径に造粒したもの又はこれらが樹脂等の固体に練り込まれている状態のもの等を取り扱う場合であって労働者がMWNT―7又はNT―7Kにばく露するおそれがないときは、改正指針に基づく措置を要しないこと。ただし、当該造粒品や固体等を粉砕する等により労働者にMWNT―7又はNT―7Kへのばく露のおそれがある業務については、改正指針に基づく措置が必要となること。
エチルベンゼンについては、ガソリン等の燃料油にも含有されているが、リスク評価の結果、給油等の業務はばく露リスクが低いとされたことから、「ガソリンスタンド等における取扱業務」については、改正指針に基づく措置の対象業務には含まれないこと。ただし、エチルベンゼンに係る危険有害性等の表示及び譲渡提供時の文書交付は、法により義務とされていることから、当該業務においても、改正指針7(1)に示した措置を講じなければならないこと。
エチルベンゼンほか3物質について適用される措置は、エチルベンゼンにあっては、改正指針3(3)、4(2)、5、6及び7(1)、4―ターシャリ―ブチルカテコール及びMWNT―7等にあっては、3(4)、4(3)、5、6及び7(3)、メタクリル酸2,3―エポキシプロピルにあっては、3(4)、5、6及び7(3)であること。
第2 参考資料
1 物理化学的性質について
エチルベンゼン及びメタクリル酸2,3―エポキシプロピルに係る物理化学的性質等の情報については、「職場のあんぜんサイト」のGHS対応モデルラベル・モデルSDS情報を参照されたい。
2 作業環境測定について
改正指針によりがん原性指針の対象に追加されたエチルベンゼン、MWNT―7等及び4―ターシャリ―ブチルカテコールに関する作業環境測定の方法及び測定結果の評価に用いる指標(管理濃度等)については、関係者の利便性の向上のため、エチルベンゼン、MWNT―7等及び4―ターシャリ―ブチルカテコールを含めたがん原性指針対象物質について取りまとめた上で、別途発出する予定のがん原性指針の全般的事項について示す通達に参考資料として示す予定であること。
第3 関係通達の改正
「屋外作業場等における作業環境管理に関するガイドラインについて(平成17年3月31日付け基発第0331017号)」の別表第2を別紙のとおり改正することとしたこと。
第4 その他
MWNT―7等を含むナノマテリアルについては、改正指針による措置に加え、「ナノマテリアルに対するばく露防止のための予防的対応について(平成21年3月31日付け基発第0331013号)」によるばく露防止対策等が必要であることに留意すること。
(別添1、別添2及び別添3 略)
別記
アクリル酸エステル工業会
ECP協会
板硝子協会
一般財団法人FA財団
一般財団法人エンジニアリング協会
一般財団法人化学物質評価研究機構
一般財団法人建設業振興基金
一般財団法人首都高速道路協会
一般財団法人製造科学技術センター
一般財団法人石炭エネルギーセンター
一般財団法人先端加工機械技術振興協会
一般財団法人大日本蚕糸会
一般財団法人日本カメラ財団
一般財団法人日本軸受検査協会
一般財団法人日本船舶技術研究協会
一般財団法人日本陶業連盟
一般財団法人日本皮革研究所
一般財団法人日本溶接技術センター
一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター
一般財団法人マイクロマシンセンター
一般社団法人日本在外企業協会
一般社団法人アルコール協会
一般社団法人海洋水産システム協会
一般社団法人仮設工業会
一般社団法人家庭電気文化会
一般社団法人カメラ映像機器工業会
一般社団法人火力原子力発電技術協会
一般社団法人強化プラスチック協会
一般社団法人軽仮設リース業協会
一般社団法人軽金属製品協会
一般社団法人建設産業専門団体連合会
一般社団法人合板仮設材安全技術協会
一般社団法人コンクリートポール・パイル協会
一般社団法人色材協会
一般社団法人自転車協会
一般社団法人住宅生産団体連合会
一般社団法人住宅リフォーム推進協議会
一般社団法人潤滑油協会
一般社団法人新金属協会
一般社団法人新日本スーパーマーケット協会
一般社団法人全国LPガス協会
一般社団法人全国クレーン建設業協会
一般社団法人全国警備業協会
一般社団法人全国建設業協会
一般社団法人全国建築コンクリートブロック工業会
一般社団法人全国石油協会
一般社団法人全国中小建設業協会
一般社団法人全国中小建築工事業団体連合会
一般社団法人全国中小貿易業連盟
一般社団法人全国鐵構工業協会
一般社団法人全国登録教習機関協会
一般社団法人全国防水工事業協会
一般社団法人全国木質セメント板工業会
一般社団法人全日本建築士会
一般社団法人全日本航空事業連合会
一般社団法人全日本マリンサプライヤーズ協会
一般社団法人送電線建設技術研究会
一般社団法人ソーラーシステム振興協会
一般社団法人大日本水産会
一般社団法人電気協同研究会
一般社団法人電気設備学会
一般社団法人電気通信協会
一般社団法人電子情報技術産業協会
一般社団法人電池工業会
一般社団法人電力土木技術協会
一般社団法人日本電設工業協会
一般社団法人日本アスファルト合材協会
一般社団法人日本アスファルト乳剤協会
一般社団法人日本アミューズメントマシン協会
一般社団法人日本アルミニウム協会
一般社団法人日本アルミニウム合金協会
一般社団法人日本医療機器工業会
一般社団法人日本医療機器産業連合会
一般社団法人日本医療法人協会
一般社団法人日本印刷産業機械工業会
一般社団法人日本印刷産業連合会
一般社団法人日本エアゾール協会
一般社団法人日本エルピーガスプラント協会
一般社団法人日本エレベータ協会
一般社団法人日本オーディオ協会
一般社団法人日本陸用内燃機関協会
一般社団法人日本オプトメカトロニクス協会
一般社団法人日本音響材料協会
一般社団法人日本科学機器協会
一般社団法人日本化学工業協会
一般社団法人日本化学品輸出入協会
一般社団法人日本化学物質安全・情報センター
一般社団法人日本ガス協会
一般社団法人日本画像医療システム工業会
一般社団法人日本金型工業会
一般社団法人日本火薬銃砲商組合連合会
一般社団法人日本硝子製品工業会
一般社団法人日本機械工業連合会
一般社団法人日本機械設計工業会
一般社団法人日本機械土工協会
一般社団法人日本基礎建設協会
一般社団法人日本絹人繊織物工業会
一般社団法人日本金属プレス工業協会
一般社団法人日本金属屋根協会
一般社団法人日本空調衛生工事業協会
一般社団法人日本グラフィックサービス工業会
一般社団法人日本クレーン協会
一般社団法人日本くん蒸技術協会
一般社団法人日本経済団体連合会
一般社団法人日本計量機器工業連合会
一般社団法人日本毛皮協会
一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会
一般社団法人日本建設機械工業会
一般社団法人日本建設機械施工協会
一般社団法人日本建設機械レンタル協会
一般社団法人日本建設業連合会
一般社団法人日本建築材料協会
一般社団法人日本建築士事務所協会連合会
一般社団法人日本建築板金協会
一般社団法人日本港運協会
一般社団法人日本工業炉協会
一般社団法人日本航空宇宙工業会
一般社団法人日本工作機械工業会
一般社団法人日本工作機器工業会
一般社団法人日本合成樹脂技術協会
一般社団法人日本コミュニティーガス協会
一般社団法人日本ゴム工業会
一般社団法人日本サッシ協会
一般社団法人日本産業・医療ガス協会
一般社団法人日本産業機械工業会
一般社団法人日本産業車両協会
一般社団法人日本自動車機械器具工業会
一般社団法人日本自動車機械工具協会
一般社団法人日本自動車工業会
一般社団法人日本自動車車体工業会
一般社団法人日本自動車整備振興会連合会
一般社団法人日本自動車タイヤ協会
一般社団法人日本自動車部品工業会
一般社団法人日本自動認識システム協会
一般社団法人日本自動販売機工業会
一般社団法人日本試薬協会
一般社団法人日本写真映像用品工業会
一般社団法人日本砂利協会
一般社団法人日本照明工業会
一般社団法人日本食品機械工業会
一般社団法人日本私立医科大学協会
一般社団法人日本伸銅協会
一般社団法人日本新聞協会
一般社団法人日本繊維機械協会
一般社団法人日本染色協会
一般社団法人日本船舶電装協会
一般社団法人日本倉庫協会
一般社団法人日本造船協力事業者団体連合会
一般社団法人日本造船工業会
一般社団法人日本測量機器工業会
一般社団法人日本損害保険協会
一般社団法人日本ダイカスト協会
一般社団法人日本大ダム会議
一般社団法人日本鍛圧機械工業会
一般社団法人日本鍛造協会
一般社団法人日本タンナーズ協会
一般社団法人日本チタン協会
一般社団法人日本中小型造船工業会
一般社団法人日本中小企業団体連盟
一般社団法人日本鋳造協会
一般社団法人日本鉄鋼連盟
一般社団法人日本鉄塔協会
一般社団法人日本鉄道車輌工業会
一般社団法人日本鉄リサイクル工業会
一般社団法人日本電化協会
一般社団法人日本電気協会
一般社団法人日本電気計測器工業会
一般社団法人日本電機工業会
一般社団法人日本電気制御機器工業会
一般社団法人日本電子回路工業会
一般社団法人日本電子デバイス産業協会
一般社団法人日本電力ケーブル接続技術協会
一般社団法人日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会
一般社団法人日本銅センター
一般社団法人日本動力協会
一般社団法人日本道路建設業協会
一般社団法人日本時計協会
一般社団法人日本塗装工業会
一般社団法人日本鳶工業連合会
一般社団法人日本塗料工業会
一般社団法人日本内燃力発電設備協会
一般社団法人日本ねじ工業協会
一般社団法人日本農業機械工業会
一般社団法人日本配線システム工業会
一般社団法人日本配電制御システム工業会
一般社団法人日本舶用機関整備協会