添付一覧
○「リポソーム製剤の開発に関するガイドライン質疑応答集(Q&A)」について
(平成28年3月28日)
(事務連絡)
(各都道府県衛生主管部(局)あて厚生労働省医薬・生活衛生局審査管理課通知)
標記について、別添のとおり取りまとめましたので、貴管下関係業者に対して周知方お願いします。
リポソーム製剤の開発に関するガイドライン 質疑応答集
≪化学、製造及び品質管理≫
Q1.生体内もしくは細胞内の環境をin vitroの試験法で再現することが難しい場合、in vitro試験法を設定することが困難なケースが想定される。その場合、放出試験を設定できない理由を記載することでよいか。
A1.In vitroでの有効成分放出特性が十分に生体内での有効成分放出特性を反映しない場合であっても、リポソーム製剤の品質確保の観点から、識別性を有する適切なin vitro放出試験法を開発し、評価を行う必要がある。
≪非臨床薬物動態≫
Q2.リポソーム製剤の体内分布の評価における標識体の適切な使用法は何か。
A2.低分子化学合成医薬品等と同様、リポソーム製剤の標識体は、体内分布のみならず、代謝・排泄を含む薬物動態の全般の評価で利用されると考えられる。リポソームに直接標識する場合や、有効成分に標識する場合があり、標識位置に関しては目的に応じ適切な方法を選択する。
Q3.薬物動態の測定項目として総量、遊離有効成分の測定が必要な理由は何か。また、in vivoでの遊離有効成分の測定が困難な場合は、in vitro試験を用いて、有効成分の放出特性を測定することで、リポソーム化することによる薬物動態変化を考察することは可能か。
A3.遊離有効成分濃度はin vivoにおけるリポソームの安定性に関わる情報を与えること、また遊離有効成分は薬理作用を有し、有効性・安全性に影響することから、測定することが重要である。一方、リポソームに封入された有効成分濃度は体内分布(細胞内取り込みを含む)に関する情報を与えるが、技術的な問題より遊離有効成分と封入有効成分の分離を完全に行うことができない場合もある。したがって、両者を分離しない「総量」の測定によってリポソーム製剤の体内分布を評価することが重要である。なお、in vivoでの遊離有効成分の測定が困難な場合に、やむを得ずin vitro試験(有効成分の放出特性)の結果を利用し、薬物動態学的特性を考察することは可能であるが、当該試験結果を考察に利用する妥当性を十分に説明する必要がある。
Q4.血液、血漿又は血清中の遊離有効成分と封入有効成分の分離方法にはどのようなものがあるのか。また、血液、血漿又は血清中において遊離有効成分が封入有効成分と分離できない場合は有効成分の総量のみで評価することでよいか。
A4.遊離有効成分と封入有効成分との分離方法には、固相抽出法、サイズ排除クロマトグラフィー法、超遠心分離法、限外ろ過法、透析法等が報告されている。それぞれの試験法に特徴があるため、リポソーム製剤の特性により最適な試験を選択することが重要になる。また、血液、血漿又は血清中において、これらの方法により分離を検討した結果、技術的な問題により、血液、血漿又は血清中の遊離有効成分を封入有効成分から分離することが困難な場合は、その科学的妥当性及び検討結果を示した上で、有効成分の総量での評価を行うことが可能な場合もある。その場合は、PMDAに相談すること。
Q5.標的臓器や標的組織において遊離有効成分が測定できない場合に、標的臓器や標的組織における代謝物の測定を試みることが有益であるのはなぜか。
A5.有効成分の代謝は、リポソームから遊離した状態においてのみ起こることより、遊離有効成分の測定が困難である標的臓器や標的組織において、有効成分の代謝物の測定が有益な場合もあると考えられる。
Q6.リポソーム構成成分が安全性に影響を与えると予測されるとは、どのようなケースが該当するのか。また、有効成分未封入のリポソームについて、代謝・排泄経路の評価は必要か。
A6.既存情報から安全性に懸念が予測される場合、あるいは有効成分単独の安全性試験から想定されない毒性所見がリポソーム製剤で認められた場合などが想定される。その場合、毒性本体と想定される分子の曝露及び代謝・排泄経路の評価が必要と考えられるため、有効成分未封入のリポソームを用いた評価が必要となる場合もあると考えられる。
≪非臨床安全性薬理試験・毒性試験について≫
Q7.ICH S7Bに準じて、in vitro IKr測定を実施する場合、リポソーム製剤のみの評価で有効成分単独の評価は不要か。
A7.個別品目毎の検討が必要であるが、in vitro評価において有効成分単独の評価が必要な場合もあると考えられる。
Q8.リポソーム製剤の安全性を非臨床試験により評価するためには、基本的に新有効成分含有医薬品に準じた毒性試験が必要とされているが、既存有効成分と既存リポソーム成分を組み合わせたリポソーム製剤についても同様に毒性試験を実施する必要はあるか。
A8.リポソーム化により有効成分の薬物動態学的特性が変わること、また、封入する有効成分の違いによりリポソームの薬物の漏出性や放出特性が異なる可能性があることから、既存有効成分と既存リポソーム成分を組み合わせたリポソーム製剤についても、新有効成分含有医薬品に準じた毒性試験を実施し、安全性を評価する必要がある。
Q9.リポソーム製剤の毒性は、リポソーム製剤を用いた非臨床毒性試験で初めて明らかになるものであり、有効成分単独での非臨床毒性試験の意義は低いのではないか。
A9.すべての項目において、有効成分単独の試験を求めているわけではありません。しかし、新規な有効成分で、有効成分の生体内安定性が高い場合や、投与後比較的速やかにリポソームから有効成分が循環血中に放出される製剤など、in vitro放出特性や非臨床薬物動態試験の結果から、有効成分の総量に対し遊離有効成分が循環血中に高い割合で存在すると判断される場合には、有効成分単独の毒性評価が有益なケースはあるものと考えられる。
Q10.有効成分単独の毒性試験は一般毒性試験のみの実施で十分か。
A10.リポソーム製剤と有効成分単独での一般毒性試験の結果において、生殖関連を含む内分泌系の異常や炎症、増殖性病変など前がん病変等、特殊毒性の評価に関連する変化が認められた場合には、有効成分単独による特殊毒性に関する検討が必要となる。
Q11.薬理作用を有する既存の標的素子・抗体をリポソーム構成成分に付加する場合も、添加剤としてのリポソーム構成成分の安全性評価と同様の扱いとなるのか。
A11.同様の扱いとなる。
Q12.脂質成分の毒性に関する既存データがない場合、当該リポソームのみを投与する群を加え、製剤の安全性と並行評価することは可能と思われるが、リポソームのみの安全性評価は、リポソーム製剤の最長評価期間と同一の期間で実施する必要はあるか。
A12.ガイドライン中にも記載したとおり、リポソームは当該製剤に限定した添加剤として承認することを基本とすることから、リポソームの安全性評価期間はリポソーム製剤の最長評価期間と同一で良い。ただし、リポソームに起因する安全性の懸念が認められない等の理由により、当該リポソームを一般的な添加剤として承認することが妥当と考えられるような場合には、長期の試験が必要となる場合がある。
Q13.抗原性について、ヒトに外挿性のある非臨床評価法はないと考えられているが、動物実験によるリポソーム製剤の免疫原性に関する情報は必要か。
A13.動物実験からのリポソーム製剤の免疫原性に関する情報はヒトへの直接的な外挿はできないが、非臨床試験結果における評価に役立つと考えられる。