添付一覧
○「リポソーム製剤の開発に関するガイドライン」について
(平成28年3月28日)
(薬生審査発0328第19号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局審査管理課長通知)
(公印省略)
ナノテクノロジーを製剤技術に応用し、標的部位への医薬品の選択的な送達や生体内安定性の向上などにより、副作用の低減及び有効性の向上を目指した革新的医薬品の開発が世界的規模で進んでおり、その一つとしてリポソーム製剤の開発が進んでいます。
このため、厚生労働省では、リポソーム製剤のより適切な開発を推進し、患者への迅速な提供を図る観点から、①品質及び非臨床評価について配慮すべき事項、②初めてヒトに投与する試験に先だって確認しておくべき事項について、「リポソーム製剤の開発に関するガイドライン」として別添のとおりまとめました。本ガイドラインをリポソーム製剤を開発する際の検討方法の手引きとして利用されるよう、また、個別の医薬品の開発に当たっては、必要に応じて独立行政法人医薬品医療機器総合機構と相談しながら進めるよう、貴管下関係業者等に対し周知方願います。
リポソーム製剤の開発に関するガイドライン
目次
1.はじめに
2.適用範囲
3.化学、製造及び品質管理
3.1.組成・性状
3.2.製剤設計及び特性解析
3.2.1 製剤開発
3.2.2 製剤の特性解析
3.2.3 in vitro放出試験
3.3.リポソーム製剤の製造工程及び品質管理
3.3.1 リポソームの形成工程
3.3.2 リポソームの有効成分の封入工程
3.3.3 サイズ調整工程
3.3.4 PEG等による表面修飾工程
3.3.5 滅菌工程
3.4.リポソーム構成成分の管理
3.4.1 品質特性
3.4.2 製造工程及び工程管理
3.4.3 規格及び試験方法
3.4.4 安定性
3.5.リポソーム製剤の管理
3.5.1 規格及び試験方法
3.5.2 確認試験
3.5.3 エンドトキシン試験
3.5.4 活性試験
3.6.安定性
3.7.製法の変更
4.非臨床試験
4.1.概論
4.2.非臨床薬物動態
4.2.1 分析法
4.2.2 薬物動態
4.3.非臨床薬力学
4.4.安全性薬理試験
4.5.毒性試験
4.5.1 トキシコキネティクス
4.5.2 追加の試験
5.ヒト初回投与試験において考慮すべき事項
6.用語集
付属文書:関連するガイドライン等
補遺(Appendix):製法変更時の同等性/同質性評価
1.はじめに
リポソームは、両親媒性脂質分子の二分子膜からなる微小胞で、通常、内部に水性画分を有しており、リポソーム製剤は有効成分をリポソームの脂質二分子膜又は内相に封入することにより作製される。リポソーム製剤は、多くの場合において有効成分の生体内安定性、組織移行性プロファイルをはじめとする薬物動態、細胞内動態などの改善を目的として設計されている。したがって、新規リポソーム製剤の有効かつ安全な用法・用量を確立するためには、組織移行性プロファイルをはじめとする薬物動態を明らかにすることが不可欠である。
リポソーム製剤では、Enhanced permeability and retention(EPR)効果やリガンド(標的素子)・抗体を利用した能動的なターゲティングにより、有効成分単独で投与した時に比べ、組織・細胞内移行性が変化していることから、血中有効成分濃度が同様であったとしても標的組織・細胞・オルガネラ内有効成分濃度が異なる可能性がある点において、薬物動態試験の解釈に注意が必要である。また、標的組織・細胞内分布は、リポソームの品質特性と関連していることから、リポソームのサイズ、表面電荷など、リポソームの物理的、化学的及び生物学的特性も含めた評価が必要となる。また、多くの場合、リポソームは生体にとって異物と認識されやすいサイズを有する粒子であることから、適切な生体内安定性を有するリポソームの設計と、機能評価が重要になる。
本文書は、リポソーム製剤の開発時に留意すべき事項を明らかにし、承認申請に必要とされる事項の例を挙げることにより、リポソーム製剤の合理的な開発と審査の効率化を図ることを目的としている。
2.適用範囲
本文書は、有効成分の生体内安定性、組織移行性プロファイルなどの薬物動態、細胞内分布などに影響するように設計され、製造されたリポソーム製剤を対象とする。有効成分の内包や可溶化、輸送促進を目的として用いられた、脂質二分子膜を形成しない脂質・有効成分混合物及び会合体は本文書の適用範囲外であるが、本文書の考え方は有益である。
本文書は、製剤開発、非臨床試験及び初期の臨床試験に関する情報を中心に提供するものであるが、製造販売後に関わる事項にも参考となるものである。なお、本文書の対象となるリポソーム製剤は、他の関連する通知やガイドラインの適用も受ける。
本文書において対象とする有効成分は、低分子化学合成品、核酸、又はペプチドやタンパク質などの生物起源若しくはバイオテクノロジーを利用して産生された成分である。
3.化学、製造及び品質管理
化学、製造及び品質管理に関する推奨事項は、リポソーム製剤に特有の情報に焦点を当てている。有効成分及び添加剤それぞれの品質に係る一般的な事項については、関連通知及びガイドラインを参考にすること。また、脂質などのリポソーム構成成分の品質がリポソーム製剤全体の品質に影響を及ぼす可能性があるため、リポソーム構成成分は、3.4項に示すような適切な方法で品質管理すること。
3.1 組成・性状
リポソームは、主として有効成分及び脂質から構成されるが、ポリエチレングリコール(PEG)やリガンド(標的素子)などで修飾された機能性脂質などが含まれる場合がある。また、リポソーム製剤には、一般的な注射剤と同様にpH調整剤、安定化剤などの添加剤が含まれる。
リポソーム製剤の特性を規定する上で、以下の特性は特に重要である。
・リポソームの構成成分
・有効成分及び各脂質の分量
・有効成分に対する脂質(機能性脂質を含む)のモル比又は重量パーセント
リポソーム製剤の品質特性、薬物動態学的特性、薬力学的特性及び安全性プロファイルは、脂質組成を含めた処方に大きく依存する場合があるため、製剤処方開発の経緯とその適切性を示すこと(3.2項参照)。
3.2 製剤設計及び特性解析
3.2.1 製剤開発
リポソーム化の目的及び用途に応じた品質・非臨床・臨床上のプロファイルについて明確にすること。その上で、剤形及び処方を含めた製剤設計、品質特性、製造方法、容器栓システム、使用方法などが、使用目的に適うことを裏付けるために実施された開発段階での検討について製剤開発の経緯として記述する。
リポソーム製剤中には、有効成分が封入されていないリポソームや脂質二分子膜上の修飾分子(例えば、PEGやリガンド(標的素子)・抗体など)が欠損又は変性したリポソームが一定の割合で存在すると考えられる。したがって、リポソーム製剤を単一リポソームから構成される集合体として捉えず、上記の点に留意した上で、非臨床試験及び臨床試験に用いたロットの当該試験成績を考慮し、製剤全体として製剤設計及び品質特性に対する評価を行い、管理範囲を設定していく必要がある。また、リポソーム製剤は製剤学的に複雑であり、必ずしも最終製品の品質試験のみでは十分に品質を管理できない場合がある。よって、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)Q8(R2)及びQ11ガイドラインに概説されているクオリティ・バイ・デザイン(QbD)の考えに基づいた製剤開発を強く推奨する。重要品質特性及び関連する特性値を踏まえ、製剤品質の一貫性を保証するための管理戦略を策定した上で、必要な規格及び試験方法を決定すること。リポソーム構成成分の選択・処方と各成分の機能については、目標製品品質プロファイル及び製剤特性(例えば、放出性、標的指向性など)への影響と関連付けて記述すること。また、製剤設計、品質特性(物理的、化学的及び生物学的特性)、製造工程などの変動が製剤特性にどのように影響するのか、開発段階で行った検討を明らかにし、必要に応じて薬物動態、有効性及び安全性に及ぼす影響についても評価・検討すること。
3.2.2 製剤の特性解析
リポソーム製剤のin vivoでの薬物動態及び薬力学的特性に影響する重要品質特性を明らかにすることは安全性と有効性を担保する上で重要である。重要品質特性に関連する物理的、化学的及び生物学的な特性項目を適切に設定することは、リポソーム製剤の品質を確保する上で重要であることから、複数ロットに対し詳細な特性解析を行い、評価すること。凍結乾燥注射剤及び粉末注射剤として供給されるリポソーム製剤については、再調製後の薬液に対しても評価すること。
物理的、化学的及び生物学的な特性の詳細な解析は、製造条件が変更された場合の影響を評価する際にも有用である(3.7項参照)。有効成分や修飾分子などとして、タンパク質やアプタマーなどの高次構造が当該分子の機能に強く影響する分子などを含む製剤では、当該成分及び/又は製剤全体に対し、生物薬品に準じた生物活性、免疫学的特性などの特定・評価を行うこと。
リポソーム製剤において特に考慮すべき品質特性としては、以下のようなものがあげられる。
・粒度分布:平均値又は中央値とともに、分布を図及び多分散指数などの定量的な指標で示すこと。試験法としては、動的光散乱測定が主として用いられるが、粒子径が大きい製剤ではレーザー回折測定も用いられる。動的光散乱測定を行う場合、解析に用いた分布表示(個数基準分布や体積基準分布など)を明記することが重要である。
・リポソームの形態・構造:リポソームの凝集状態やラメラ構造を確認すること。画像解析手法として透過型電子顕微鏡、低温電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、小角X線散乱測定などを用いることができる。
・表面電荷(ゼータ電位):リポソームの表面電荷は、in vivoでのクリアランス、組織分布、細胞内への取り込みに影響を及ぼすため重要な特性である。水溶液中の対イオンによってリポソーム表面に形成される電気二重層の影響で、表面電荷を直接測定することはできないことから、一般的にはゼータ電位として評価検討される。試験法としては、電気泳動光散乱(レーザードップラー法)が主として用いられる。なお、測定に使用する溶媒の種類、pH、電気伝導度などによってゼータ電位は変動することから、試験条件を特定すること。
・リポソーム膜の熱力学的特性:示差走査熱量測定や脂質膜挿入型蛍光プローブの蛍光スペクトル特性における温度依存性などにより評価する。コレステロールや脂溶性の高い有効成分などの含有によって明確な相転移温度が定まらないリポソームにおいても、発熱や吸熱プロファイルなどの熱力学的特性は脂質二分子膜の流動性と均一性を表す指標として有用である。
・リポソーム製剤からの有効成分のin vitro放出特性:3.2.3項を参照のこと。
・浸透圧:リポソーム構造の破裂や収縮を防ぐために、調製後の薬液は等張(約280mOsm/kg)であることが望ましい。
・pH:分散液(外相液)のpHを特定すること。また、pH変動によりリポソームの特性・機能に変化が想定される場合には、指標とすべき品質特性を特定し、その影響評価を行うこと。
・凝集:リポソーム凝集物や沈殿物はインフュージョンリアクション(輸注反応)の頻度を上昇させる可能性があること1)から、適切な試験(濁度試験など)により評価すること。
・有効成分の封入率:リポソームに封入された有効成分と遊離有効成分を、固相抽出、サイズ排除クロマトグラフィー、超遠心法、ゲル濾過法、透析法などにより分離した後、各分画の有効成分量を高速液体クロマトグラフィーや分光光度計により定量する手法が用いられる。
・不純物:有効成分及び製剤の不純物に関する既存のガイドライン(ICHQ3A,Q3B,Q3C,Q3D,M7ガイドライン)を参考とする。特にリポソーム製剤については、原料に由来する不純物、製造工程に由来する不純物、目的物質由来不純物(リポソーム凝集物や変化物など)及び経時的分解物について留意し、プロファイルを特定すること。重要な不純物については、構造又は分子種を特定すること。なお、構造決定ができなかった不純物については、不成功に終わった研究の要約を添付資料に記載すること。
リポソーム製剤の特徴によっては、以下の特性解析についても考慮すべきである。
・封入有効成分の状態:電子顕微鏡や小角X線散乱測定などを用いて評価する。有効成分の封入方法として硫酸アンモニウム法を用いることにより、封入された有効成分がゲル化している場合など、封入有効成分の状態が有効成分の保持能(有効成分の漏出性)に重要と考えられる場合に評価すること。
・リポソームの表面にリガンドなどを修飾した製剤では、標的細胞への親和性などに影響することがあるため、修飾分子の(高次)構造、修飾比率、標的細胞への結合能などについても検討すること。これらの検討が困難である場合には、活性試験をもって代替とすることも可能である。
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1) Szebeni J, et al. Adv Drug Deliv Rev. 2011;63:1020-1030.
3.2.3 in vitro放出試験
リポソーム製剤が一貫した生体内安定性及び有効成分の放出特性を有していることを保証するために、生理的条件を適切に反映した試験液中でリポソームからの有効成分の放出特性を測定するin vitro放出試験法を確立すること。リポソームの特徴及び製剤設計・使用目的によっては、複数の放出試験条件を設定すること。生理的及び/又は臨床的に適切な溶媒(例えば、緩衝液やヒト血漿など)を用い、必要に応じて撹拌しながらリポソームからの有効成分の放出を測定すべきである。in vitroでの有効成分放出特性が十分に生体内での有効成分放出特性を反映しない場合であっても、以下の項目を必要に応じて考慮し、識別性を有するin vitro放出試験法を開発し、その適切性が示されるべきである。
・血中や標的組織におけるリポソームからの有効成分の放出プロファイル
・標的組織又はエンドソームでの環境変化(pH変化など)に応答して有効成分を放出するリポソームにおいては、生理的環境を反映したリポソームからの有効成分の放出プロファイル
・温度変化や外部刺激によって有効成分を放出するリポソームにおいては、想定した温度変化や外部刺激によるリポソームからの有効成分の放出プロファイル
3.3 リポソーム製剤の製造工程及び工程管理
リポソーム製剤の品質確保のためには、単に製造工程における中間体及び工程管理、最終製品の品質試験を実施するだけでなく、製造工程を理解して適切な管理戦略を策定することが重要である。また、3.2.1項において前述したように、リポソーム製剤は製造パラメータの変動の影響を受けやすいことから、開発の過程を通じて製造工程に係る知識を集積し、変動要因(例えば、工程パラメータや原料の変動)を十分に把握しておく必要がある。
リポソーム製剤の製造方法は、封入する有効成分や脂質成分の種類・物性、リポソーム製剤の機能や物性により異なるが、その多くでは、製造において以下の特徴的な工程を経ると考えられる。管理戦略に基づき、工程条件、製剤特性、工程管理試験などを必要に応じて設定し管理する。
3.3.1 リポソームの形成工程
均質なリポソームが、製造ロット毎に頑健に製造されるよう、工程を設計すること。ロット間でリポソームの脂質組成が同程度になるよう管理する。また、リポソームの構造に影響するプロセスパラメーターを特定し、適切な管理範囲を設定すること。
脂質薄膜や脂質混合液を製造中間体としてリポソームを形成する工程においては、当該製造中間体の均一性、一貫性を保証することが重要である。また、水和の工程における、水和時間や混合速度、温度が重要な管理項目となりうる。
なお、タンパク質のような巨大分子を内包するリポソームでは、リポソームの形成と同時に有効成分の内包が行われる。このようなリポソームの形成工程では、有効成分の封入効率が一定の範囲内に収まるように、管理することも重要である。また混合工程における溶媒の種類とイオン強度、混合速度、混合温度などが重要な管理項目となりうる。
3.3.2 リポソームへの有効成分の封入工程
ロット間で、有効成分の封入効率が同程度となるよう工程設計を行い、管理を行う。pH勾配や溶解度の違いを利用して有効成分を封入する場合には、リポソーム内部の水相と外部の水相の液性と組成、操作条件(温度、時間など)などが、封入効率に影響する重要な管理項目となる。
リポソームに封入されていない有効成分の除去工程がある場合には工程能力を評価し、遊離している有効成分量を管理すること。
3.3.3 サイズ調整工程
リポソーム製剤は、粒子径の違いによって体内動態に大きな影響が生じるため、製造されるリポソーム粒子の粒度分布が大きい場合には、サイズ調整が行われる。
サイズ排除クロマトグラフィーを利用した精製操作が行われる場合には、クロマトグラフィー樹脂の種類及びカラムスケール、リポソーム負荷量、クロマトグラム条件、分取方法などについて、分離能力などの観点から最適化した際の検討内容を示すこと。
また、メンブレンフィルターを用いたエクストルーダーによる粒子径調整を行う場合には、脂質濃度、温度、圧力、フィルターの孔サイズなどのパラメータが重要である。また、エクストルージョンを繰り返し行う場合や、数種のフィルターを用いて段階的に行う場合には、エクストルージョン操作の回数や、フィルターの組み合わせ、順番などに関する条件検討の内容を示すこと。
3.3.4 PEG等による表面修飾工程
リポソーム製剤では、生体内での安定化を目的として表面がPEG鎖で修飾されるほか、標的指向性の向上を企図して、リガンド(標的素子)・抗体を用いて修飾される場合がある。表面修飾の目的及び機能発現に必要な修飾分子数などを考慮した上で、ロット間でリポソームの修飾状態が同程度となるよう工程設計を行い、管理をすること。最終製品の品質試験だけでは十分に品質を管理できない可能性があるため、3.4項で述べるように修飾脂質の品質及び製造プロセスの管理が重要である。
3.3.5 滅菌工程
リポソームは一般的な乾熱滅菌、高圧蒸気滅菌に使用される操作条件下において不安定であることから、滅菌操作にはろ過滅菌が広く用いられる。ろ過滅菌工程については、バクテリアチャレンジ試験などによって工程能力を評価し、フィルター選択の適切性を示すこと。
3.4 リポソーム構成成分の管理
リポソーム製剤においては、脂質二分子膜を構成する脂質分子、その表面を修飾するPEG鎖、リガンド(標的素子)、抗体などが有効成分の生体内安定性、薬物動態、細胞内動態などの改善に寄与している。このため、リポソーム構成成分、とりわけ製剤の機能に大きな影響を及ぼすリガンド(標的素子)、抗体などの構成成分については、一般的な添加剤と異なり、より目的とする特性が保証されるように評価・管理される必要がある。
3.4.1 品質特性
脂質については、構造式が単一で表される合成脂質である場合には、一般的には、標準的な分光学的方法で構造を明らかにする。天然脂質混合物(大豆レシチンや卵黄レシチンなど)又は半合成脂質(例えば、水素添加大豆ホスファチジルコリンなど)の場合は、脂質組成の変動によってリポソーム製剤の特性は変動しうることから、脂質組成(すなわち、各脂質成分の百分率)及び脂質を構成する脂肪酸組成(各脂肪酸の百分率)を明らかにする。
PEGなどの高分子や標的指向性付与を目的とした分子(リガンド(標的素子)など)を結合した修飾脂質などでは、リンカーを含めたその構造解析を行うこと。特に、PEGの分子量分布は、生体内安定性だけでなくリポソームの粒子サイズや有効成分の放出にも影響を及ぼす可能性があるので重要である。
3.4.2 製造工程及び工程管理
合成脂質及び半合成脂質については、出発物質及び製造方法が特定され、適切に管理されているものを用いること。半合成脂質の合成に使用される生物起源成分については、生物学的起源(卵黄など)、供給業者を示すこと。合成脂質及び半合成脂質を開発者又は製造委託先にて製造する場合には、出発物質の規格、重要工程及び中間体の管理方法を特定し、品質に影響する工程パラメータを示すこと。
生物由来成分又は組換えDNA技術を応用したタンパク質を出発物質又は原料として若しくは直接用いる場合には、生物薬品に関連する他の通知やガイドラインの要件に準じた管理・検討を行うこと。
3.4.3 規格及び試験方法
脂質二分子膜を構成する脂質分子、リガンド(標的素子)などが製剤品質に及ぼす影響に関する検討結果を踏まえ、十分な試験項目を設定し、規格及び試験方法を詳細に記述すること。添加剤は使用目的に適った特性を有している必要があることから、公定書収載品であっても、製剤品質に影響を及ぼす特性が公定書に規定されていない場合、又は公定書に定められる管理基準により、目的とする製剤品質を確保できない場合には、別途、必要な規格値と試験方法を追加設定し、管理すること。分析法はバリデートされたものを使用し、規格には少なくとも含量(又は力価)、確認試験、純度試験及び定量法を含めること。標準品又は標準物質を設定する場合は、設定した標準品又は標準物質の調製法、規格及び試験方法並びに保存条件及び有効期間を記載すること。
タンパク質のような生物起源又はバイオテクノロジーを利用して産生された成分を使用する場合には、ICH Q6Bガイドラインを参考に、適切に規格設定を行うこと。
3.4.4 安定性
リガンド(標的素子)で修飾された脂質などは、一般的な添加剤の使用状況と比較して製剤中で高度な機能発現が求められていることから、十分な安定性を有していることが確認される必要がある。ICH Q1A(R2)ガイドライン及び/又はICH Q5Cガイドラインの考え方に従って適切に安定性評価を行い、リテスト期間又は有効期間を設定すること。
3.5 リポソーム製剤の管理
3.5.1 規格及び試験方法
規格及び試験方法については、日本薬局方及びICH Q6A又はQ6Bガイドラインを参照すると共に、リポソーム特異的な評価項目(有効成分の封入率、有効成分の放出性、脂質の定量、分解物など)については、必要に応じて適切に設定すべきである。また経時的に変化する品質特性については、薬物動態、有効性及び安全性への影響の観点から、設定された規格値の適切性を示すこと。リポソーム製剤に適用するバリデートされた試験方法を定める必要があり、その試験項目及び試験方法などは、適宜3.2.2項に例示したものを含め、製剤を特徴づける特性に基づいたものとすること。なお、リポソーム製剤における規格及び試験方法の設定については、特に以下の点に留意すること。
3.5.2 確認試験
脂質、修飾分子などが目的とするリポソームを構成していることを、他の規格試験と併せて複合的に判断できるよう、規格及び試験方法を設定すること。
3.5.3 エンドトキシン試験
リポソーム製剤においてエンドトキシン試験を行った場合、脂質とライセート試薬が交差反応を起こし正しく測定できない場合があるため2)、適切にバリデーションを実施すること。エンドトキシン試験を適切に実施できない場合には、発熱性物質試験として管理すること。
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2) Dobrovolskaia MA, et al. Nanomedicine(London). 2010;5:555-562.
3.5.4 活性試験
有効成分や修飾分子などとして、タンパク質やアプタマーなどの高次構造が当該分子の機能に強く影響する分子などを含む製剤では、必要に応じて、当該成分及び/又は製剤全体に対し、生物活性の評価を行う。
リポソーム製剤において生物活性試験などを実施する場合には、リポソーム製剤の標準物質の設定が必要となる場合がある。リポソーム製剤の標準物質を設定する場合には、製造方法並びに規格及び試験方法を示すこと。また、標準物質の安定性については、適切な特性解析項目を選択して評価し、有効期間内で品質特性が一貫していることを確認・保証すること。
3.6 安定性
リポソーム製剤の安定性試験は、ICH Q1A(R2)ガイドラインに則って実施すること。特に有効成分やリポソーム構成成分に生物薬品(生物起源成分又は組換えDNA技術を応用したタンパク質)が用いられている場合には、ICH Q5Cガイドラインの考え方も適用される。なお、リポソーム製剤の安定性に関する現時点での知識には限界があるため、長期保存試験において安定性が確認された期間を越えて、有効期間を設定することは原則できない。
リポソーム製剤は製剤学的に複雑であることから、安定性試験において品質特性の経時変化を十分に把握するために、必要に応じて、規格及び試験方法に設定された試験項目に加えて、特性解析項目からも試験項目を選択して設定すること。特に重要な試験項目の一例として、以下の特性が挙げられる。
・リポソーム製剤中での各種脂質の安定性:
不飽和アシル基を含む脂質は酸化的分解を受けやすく、それが相転移温度などの変化を引き起こし、リポソームの安定性に影響する。また、飽和及び不飽和アシル基を含む脂質ともに加水分解を受けやすく、リゾ脂質及び遊離脂肪酸が生成される。脂質の分解が進行することで、リポソーム製剤は本来の機能を失う、又は脂質二分子膜構造の崩壊に至ることから、脂質の分解の程度とリポソーム製剤の品質特性への影響を明確にすること。
・修飾分子の付加状況、構造安定性:
修飾分子の結合様式によっては、リポソームから修飾分子が徐々に解離し、修飾分子数が低下する。また、リポソーム外部の水相の種類や保存条件によっては、修飾分子の高次構造が長期保存により変化する場合がある。修飾分子数の低下や高次構造の変化が認められた場合には、リポソーム製剤の品質特性への影響を明確にすること。
・粒子径分布、凝集:
リポソームは、長期保存中に融合や凝集を起こすことがある。例えば、小さい単層小胞では、小胞の融合により粒子径の増大が認められやすい。濁度や粒子径分布などを試験項目として設定し、経時変化とリポソーム製剤の品質特性への影響を評価すること。
・封入率:
リポソームの脂質二分子膜構造の崩壊の有無にかかわらず、内包された有効成分の漏出が認められる場合があるので、経時変化とリポソーム製剤の品質特性への影響を評価すること。
3.7 製法の変更
リポソーム製剤は一般的な低分子化学合成医薬品とは異なることから、製法の変更がリポソーム製剤の品質に影響を及ぼさないことを証明するための一般的なデータセットを提示することは困難である。
製剤に設定された規格及び試験方法に加えて、製剤特性、管理戦略、製造方法の変更内容を考慮して、当該変更により影響する可能性が否定できない物理的、化学的及び生物学的特性に関する試験項目を特定して評価を行い、変更前後で製剤品質が同等/同質(comparable)であることを確認すること。製法の変更前後における製剤間の同等性/同質性(comparability)評価の考え方については、ICH Q5E(生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)の製造工程の変更に伴う同等性/同質性評価について)ガイドラインに示された考え方を参考にすること。変更の程度が大きく、品質の観点のみでは同等性/同質性の評価が不十分と考えられる場合や、物理的、化学的及び生物学的特性などから製剤品質が同等/同質であることを説明できない場合には、補遺に記載した内容に留意し、薬物動態、有効性及び安全性に及ぼす影響についても評価・検討すること。
リポソーム製剤では、スケールアップ時に特性が変化するリスクが通常の低分子医薬品などと比較して高いと考えられることから、スケール依存性に関する評価についても慎重に行うこと。例えば、リポソームのサイズ調整のエクストルージョン工程においては、スケールアップに際して加圧方法や使用されるフィルターの種類などの変更を伴う場合がある。また、サイズ排除クロマトグラフィーを利用した精製操作においては、カラムスケールの変更に伴う分取条件(流量、処理量など)の変更が必要である。これらの工程変更の内容とリポソーム製剤の品質特性の関係について精査し、変更前後で製剤品質が同等/同質であることを確認する必要がある。
なお、リポソーム製剤において、リポソームの形成に関連する製造原理、リポソームへの有効成分の封入方法、脂質量と有効成分量の比、脂質二分子膜の組成に係る変更及びリポソームへの表面修飾工程などの変更は、有効性及び安全性への影響を否定できない場合があるので留意すること。
検証的試験実施後における製法変更では、承認後に製法変更を行う場合と同様に、広範かつ詳細に製法変更前後の製品の同等性/同質性を評価する必要がある。
4.非臨床試験
4.1 概論
有効成分をリポソーム製剤として投与することにより、有効成分単独で投与した時に比べ薬物動態学的特性が著しく変化することがある。すなわち、分布容積とクリアランスが変化し、半減期が延長し、体内分布が変化することがある。このような薬物動態学的特性の変化に伴い、有効性及び安全性も著しく異なることがある。リポソームが組織へ到達後、有効成分を放出し薬効を発揮するには、リポソームが細胞内に取り込まれた後に有効成分が放出される場合や、細胞外でリポソームから放出された有効成分が細胞に取り込まれ効力を発揮する場合がある。
一般にリポソーム製剤に封入された有効成分の薬物動態学的特性は、以下の要因により変化し得る。
・有効成分を封入したリポソームのクリアランス
・封入された有効成分のリポソームからの放出速度
・リポソームの体内分布(分布する臓器や組織、有効成分量の変化)
・リポソーム及び有効成分と血漿、血清タンパク質又は血液細胞や血管内皮との相互作用
in vivoにおける有効成分の放出速度と放出部位は、多くの場合、薬効や安全性に影響する重要な特性であり、有効成分の放出の状態を推測するための手法の開発を試みるべきである。
非臨床試験は、品質特性プロファイルが明確にされた臨床使用製品と同等のリポソーム製剤を用いて行うべきであり、選択した試験条件における有効成分のリポソームからの放出速度及び製剤の安定性について情報を得ておくべきである。
4.2 非臨床薬物動態
4.2.1 分析法
血液、血漿又は血清中に存在する有効成分(総量、遊離有効成分、必要に応じて封入有効成分)、並びに臓器や組織中の有効成分(総量)を測定できる分析手法を開発することが必要である。リポソーム製剤の特性(血中での有効成分の放出性など)によっては、リポソームに封入された有効成分濃度を測定することも重要である。なお、リポソーム構成成分が安全性に影響を与えると予測される場合は、構成成分を測定可能な分析法を確立することも必要である。
投与後の各測定時点の血液、血漿又は血清試料において、封入及び遊離有効成分を分離しない値を「総量」として、遊離有効成分とともに定量すべきである。血液、血漿又は血清中の遊離有効成分及び総量を測定することは可能であるが、臓器や組織中では、組織の処理過程でリポソームが破壊されてしまう可能性があるため、各臓器組織中での遊離有効成分の測定が困難である場合が多い。得られた生体分析結果の適切性と解釈の正当性を保証するため、分析手法を開発する際には、試料の処理過程が適切に管理されていることに注意を払う必要がある。
血液、血漿又は血清中における有効成分(総量、遊離有効成分、必要に応じて封入有効成分)、臓器や組織における有効成分(総量)、及び代謝物を定量するために用いた分析手法は、その手法のバリデーションに関する記述が必要である。バリデーションに関しては、「医薬品開発における生体試料中薬物濃度分析法のバリデーションに関するガイドライン」薬食審査発0711第1号(平成25年7月11日)、及び「医薬品開発における生体試料中薬物濃度分析法(リガンド結合法)のバリデーションに関するガイドライン」薬食審査発0401第1号(平成26年4月1日)が参考となる。
4.2.2 薬物動態
リポソーム製剤の体内動態は、リポソーム化せずに投与された有効成分の体内動態とは大きく異なることがあり、このことが有効性と安全性に著しく影響することがある。このため、有効成分単体とリポソーム化した製剤でin vivoでの薬物動態を比較評価することが重要である。in vivoでの薬物動態及び有効成分の放出を検討する際には、リポソーム製剤の予定される臨床使用法及びリポソームの組成のほか、有効成分の特性、リポソーム及び有効成分の標的臓器や標的組織における蓄積・滞留性、血中濃度及び組織分布などに特に留意し、用いる動物種及びモデルの選択の妥当性を示すべきである。標的性付与を目的としてリポソーム表面にリガンド(標的素子)・抗体などを結合した場合、動物種及びモデルの選択に当たっては、受容体やエピトープなどの発現・分布などの種差を考慮する必要がある。
リポソームのサイズ、表面電荷、形態、リガンド(標的素子)・抗体などによる表面修飾などの品質特性は、リポソーム製剤の体内分布に影響することがあるので、その特性の変動が体内分布に及ぼす影響を考察すべきである。品質特性と体内分布に関する考察は将来、製品規格を設定する際に、その妥当性を説明するために有用である。ICH S3(S3A及びS3B)、S6(R1)並びにM3(R2)で推奨している情報に加えて、リポソーム製剤を評価する上で重要なポイントを以下に述べる。
・リポソーム製剤と単独投与された有効成分について、薬物動態を比較することにより、リポソーム化することの目的や意義を説明することは有益である。
・血液、血漿又は血清中の有効成分の総量及び遊離有効成分について、Cmax、AUC及び半減期など、適切な薬物動態パラメータを算出する。また、解析結果に基づき、リポソーム化することによる有効成分の薬物動態の変化について考察する。
・薬物動態パラメータは、複数の用量で、適切な時点で採取された試料を用いて算出する。
・予定される臨床使用法及び投与経路に関連する臓器や組織中におけるリポソーム製剤の体内分布を評価する。具体的には、臓器や組織中の有効成分の総量について、時間経過に応じて有効成分の変化を正確に評価できるよう採取期間と試料採取時点を設定した上で、体内分布の経時的変化を観察する。
・試料採取時点、採取期間など、試料採取スケジュールの決定に際しては、投与後のリポソームの安定性や、特定の臓器や組織への局在プロファイルなどの要素を考慮すべきである。特に最初の分布相(例えば<15分)において採取した試料は、その測定値から分布容積を計算し循環血中におけるリポソームの安定性(バースト現象に関わる安定性)を評価することができるため、有益である。
・有効性や安全性に関わる臓器や組織中の遊離有効成分の測定は、各臓器や組織中でのリポソームの安定性や有効成分の放出特性を評価する上で有益であるが、測定が困難である場合は、代謝物の測定を試みることも有益である。
・試料採取方法や時期など試験デザインは薬物動態パラメータの算出値の精度に影響を与える。適切な投与量、必要な試料採取計画、動物数を慎重に決定する。
・リポソームの主要な代謝や排泄に関わる臓器や組織とともに、安全性や有効性に関与すると思われる臓器や組織はリポソーム製剤の体内分布を評価する対象に加えられることが望ましい。安全性の観点から懸念される臓器の例としては、肝臓、脾臓、腎臓、骨髄、肺、心臓などの細網内皮系やクリアランスと関連する重要な臓器、蓄積しやすい臓器、脳や精巣など血液組織関門により保護されている臓器が挙げられる。
・有効成分の代謝物が主要な活性本体であることが知られている場合は、血液、血漿又は血清中の活性代謝物、可能な場合には臓器や組織中における活性代謝物を測定することは特に重要である。一つ又はそれ以上の代謝物が実質的な臨床効果を有している場合は、それぞれの代謝物に対して薬物動態を解析し比較することが望ましく、場合によっては、反復投与による蓄積性を評価するためにトキシコキネティクスを比較することも必要となる。
・リポソーム製剤の体内分布や、安定性及び安全性に影響する可能性があるため、静脈内に投与したリポソームとタンパク質及び細胞との相互作用について考察することも重要であるだろう。
・適切な動物モデルを用いたイメージング手法により、リポソーム製剤の体内動態を把握しておくことも有益である。
・リポソーム表面へのリガンド(標的素子)・抗体などの導入は、リポソームの組織・細胞内移行性に大きな影響を及ぼしうるため、標的臓器や標的組織とともにそれ以外の臓器や組織への集積性の変化にも留意する必要がある。
・リポソーム製剤の有効成分の代謝及び排泄経路の評価は、製剤の安全性、有効性の評価に重要である。リポソーム構成成分が安全性に影響を与えると予測されるのであれば、構成成分の分布、代謝及び排泄経路についても必要に応じて評価する。
4.3 非臨床薬力学
非臨床薬力学試験は、適切な裏付けのあるin vitro(可能であれば)及びin vivoのモデルを用いて薬力学反応を実証する。適切な投与経路及び予定される臨床使用に応じた投与量・投与計画によりin vivo評価を行うべきである。その薬力学的モデルが適切であるかどうかについては、リポソーム製剤の体内動態並びに有効成分の単独投与での薬物動態及び薬力学を考慮し評価するべきである。
リポソーム製剤の化学的組成及び物理的化学的性質(サイズ、表面電荷及び有効成分の放出速度を含む)は、薬力学特性に影響する。作用機構を考察するための試験をデザインする際に考慮すべき要素には、次のようなものがある。
・in vivoにおける有効成分の放出部位と放出速度
・リポソーム表面にリガンド(標的素子)・抗体などを結合させた場合は、標的分子や標的細胞への結合
・細胞内における有効成分の放出が薬効発現に重要である製剤においては、エンドサイトーシスなどによる細胞内への取り込み後のリポソーム(脂質又は他の成分を含む)の細胞内動態
リポソーム製剤の薬力学については、in vitro(可能であれば)及びin vivoの薬力学モデルを用いて評価する必要がある。リポソームと標的細胞との相互作用の特性を示すin vitro試験の実施を推奨する。リポソーム表面にリガンド(標的素子)・抗体などを結合させた場合は、標的細胞などを用いた親和性の評価とともに、必要に応じてリガンド(標的素子)・抗体などに由来する薬理作用についても明確にしておく必要がある。In vitro及びin vivoの両モデルを用いてリポソームの薬力学を評価できない場合は、開発者は評価方法と評価結果の妥当性を論理的に十分に示すべきである。
4.4 安全性薬理試験
例えば、ICH S9適用範囲外のリポソーム製剤のように、安全性薬理評価が必要な場合には、4.5項を考慮して、ICH M3(R2)、並びにICH S7A及びICH S7Bに準じて安全性薬理試験を実施する。
4.5 毒性試験
リポソーム製剤の安全性を非臨床試験により評価するためには、基本的に新有効成分含有医薬品に準じた評価が必要であり、毒性プロファイル及び曝露―反応関係について評価するために、以下の点に留意しつつICH安全性ガイドライン及びM3(R2)ガイドラインに基づいて、毒性試験を実施すべきである。
・有効成分単独での毒性評価が終了している薬物を有効成分とする同一の臨床投与経路によるリポソーム製剤の毒性評価では、1種の動物を用いた臨床投与経路による短期反復投与毒性試験を行い、その毒性プロファイル及び曝露を有効成分単独投与の場合と比較し、その結果を考慮して、新有効成分含有医薬品の安全性評価のために通常実施される毒性試験のうち、当該リポソーム製剤の毒性評価に必要と考えられる試験を実施する。
・有効成分に新規性があり、毒性及びトキシコキネティクスデータが得られていない場合には、ICH安全性ガイドラインに準拠して当該リポソーム製剤の毒性/曝露評価を行う。有効成分が遊離の状態で循環血中に存在する可能性がある場合は、適切な動物種を用いて有効成分単独での臨床投与経路による反復投与毒性試験を実施して、その毒性発現及び曝露をリポソーム製剤と比較することが必要な場合がある。
・添加剤としてのリポソーム構成成分の安全性評価は、当該製剤に限定した承認とする前提で、製剤(リポソーム全体)で評価を行うことでよい。ただし、リポソーム構成成分の毒性に関する既知データがなく、脂質構造や蓄積などによる新たな毒性が予測されるなどの理由により、リポソーム製剤の毒性試験のみでは脂質成分などが関与する安全性が適切に評価できない場合には、リポソーム製剤から有効成分を除いた構成成分の安全性評価が求められる場合がある。
4.5.1 トキシコキネティクス
血液、血漿又は血清中の有効成分に加えて、標的臓器や標的組織、及び毒性上懸念される臓器や組織中においても有効成分を測定することは、毒性評価の上で有用である。
4.5.2 追加の試験
リポソーム製剤やその製造に用いる脂質の物理的化学的性質や薬物動態学的特性に応じて、標的臓器の組織的機能的変化について評価が必要となることがある。
急性の輸注反応は、リポソーム製剤では比較的一般的に起こり得る。in vitroとin vivoの試験、例えば、補体活性化の測定(及び/又はマクロファージや好塩基球の活性化測定)や、適切な動物モデルを用いた試験などが、有害事象発現の可能性を評価するために考慮されるべきである。その他の血液毒性、抗原性又は免疫毒性(ICH S8)については、リポソームの特性や、有効成分の薬理学的特性など、リポソーム製剤の特性に応じて試験の実施を考慮する必要がある。
5.ヒト初回投与試験において考慮すべき事項
リポソーム製剤は、有効成分の生体内安定性、組織移行性プロファイルなどの薬物動態、細胞内分布などに影響するように設計されることが多い。したがって、ICH S3(S3AとS3B)、S6(R1)、S9、M3(R2)及び「医薬品開発におけるヒト初回投与試験の安全性を確保するためのガイダンス」薬食審査発0402第1号(平成24年4月2日)で推奨している情報に加えて、ヒト初回投与試験を検討する際は、リポソーム製剤及び有効成分の非臨床薬物動態データ、予定される臨床使用法及び投与経路など、リポソーム製剤に特有の情報を考慮することが重要となる。
非臨床薬物動態試験においては、具体的には以下のように、薬物動態パラメータ、試料採取時点及び期間を適切に選択し、総量としての有効成分及び遊離有効成分並びに代謝物、またリポソーム製剤の特性によっては封入有効成分の経時的推移を把握しておく。
・血液、血漿又は血清中の総量としての有効成分及び遊離有効成分について、Cmax、AUC及び半減期などの薬物動態パラメータ
・血漿濃度―時間プロファイルを適切に記述するために十分な試料数を採取するべきである。試料採取スケジュールには、投与直後の分布過程について的確な情報が得られるように、特に投与初期の試料採取間隔については短くすることも有益であると考えられる。一般的に、有効成分の曝露が十分評価可能となる時点まで、試料を経時的に採取するよう留意すべきである。
・標的病変部位及び主要臓器におけるリポソーム製剤の分布。評価の際には、標的病変部位及び主要臓器における有効成分の総量を、適切な期間にわたる経時的な薬物濃度推移の把握が可能な採取頻度で測定する。
ヒト初回投与試験における初回投与量の選択にあたっては、ICH M3(R2)及び「医薬品開発におけるヒト初回投与試験の安全性を確保するためのガイダンス」に準拠すべきである。また、上記3章(化学、製造及び品質管理)及び4章(非臨床試験)で述べたような重要な製品特性、薬理学的な用量反応性、薬物動態及び薬理学的/毒性プロファイルなど、すべての関連する非臨床データを考慮すべきである。
ヒトにおける用量制限毒性は、通常の医薬品と同様な判断が可能であるが、過敏症反応は必ずしも用量依存的でないため注意を要する。
各リポソーム製剤の重要品質特性の候補を特定し、当該重要品質特性により3章で述べたように恒常性を評価するべきである。品質特性の恒常性は、ヒト初回投与試験で用いる製品と非臨床試験で用いた製品との間で確認するべきである。また、その試験手順は、ヒト初回投与試験を開始する前に確立しておくべきである。ヒト初回投与試験の前に非臨床試験用リポソーム製剤製造時の製造工程(スケールアップを含む)が変更された場合は、同等性/同質性を確認するべきである。
リポソーム製剤が、ヒト初回投与試験の期間中、安定性試験により安定であることを確認することが必要である。
6.用語集
この用語集は、以下の用語が本文書でどのように用いられているかを説明するためのものである。
1) Enhanced permeability and retention(EPR)効果:正常血管から、通常、容易に漏出しないとされているナノ粒子あるいは高分子タンパク質が、網内系に捕獲されず安定的に血中を循環する場合、固形腫瘍においては、腫瘍血管透過性亢進機構とリンパ回収系の未発達ゆえに、固形腫瘍内に選択的に漏出し、長く留まる現象。
2) リポソーム:両親媒性脂質分子の二分子膜からなる微小胞で、内相を有する。リポソーム製剤は、有効成分をリポソームの脂質二分子膜又は内相に封入することにより作製される。
3) 有効成分の封入率:(リポソームに封入された有効成分量/製剤全体の有効成分量)×100(%)
4) 遊離有効成分:リポソームの脂質二重膜又は内相に取り込まれていないが、その製剤の中に存在している有効成分。本文書で、「遊離」という用語は、血漿又は血清タンパク質から有効成分が解離することを意味するものではない。また、「総量」とは、脂質二重膜又は内相に取り込まれている「封入」有効成分と「遊離」の有効成分とを分離・分画せずに得られる有効成分量である。
5) バースト現象:リポソーム製剤を静脈内に投与後、標的臓器や標的組織に到達以前に速やかに封入有効成分が放出される現象。
付属文書
関連するガイドライン等
・ 平成15年6月3日 医薬審発第0603001号 安定性試験ガイドラインの改定について(ICH Q1A(R2)ガイドライン)
・ 平成14年12月16日 医薬審発第1216001号 新有効成分含有医薬品のうち原薬の不純物に関するガイドラインの改定について(ICH Q3A(R2)ガイドライン)
・ 平成15年6月24日 医薬審発第0624001号 新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドラインの改定について(ICH Q3B(R2)ガイドライン)
・ 平成10年3月30日 医薬審第307号 医薬品の残留溶媒ガイドラインについて(ICH Q3C(R3)ガイドライン)
・ 平成27年9月30日 薬食審査発0930第4号 医薬品の金属不純物ガイドライン(ICH Q3Dガイドライン)
・ 平成10年1月6日 医薬審第6号 生物薬品(バイオテクノロジー応用製品/生物起源由来製品)の安定性試験について(ICHQ5Cガイドライン)
・ 平成17年4月26日 薬食審査発第0426001号 生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)の製造工程の変更にともなう同等性/同質性評価について(ICHQ5Eガイドライン)
・ その他 生物薬品の品質に関するICHガイドライン[平成12年2月22日 医薬審第329号(ICHQ5A(R1)ガイドライン)、平成10年1月6日 医薬審第3号(ICHQ5Bガイドライン)、平成12年7月14日 医薬審第873号(ICHQ5Dガイドライン)]
・ 平成13年5月1日 医薬審発568号 新医薬品の規格及び試験方法の設定について(ICHQ6Aガイドライン)
・ 平成13年5月1日 医薬審発第571号 生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)の規格及び試験方法の設定について(ICHQ6Bガイドライン)
・ 平成22年6月28日 薬食審査発第0628第1号 製剤開発に関するガイドラインの改定について(ICH Q8(R2)ガイドライン)
・ 平成26年7月10日 薬食審査発0710第9号 原薬の開発と製造(化学薬品とバイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)ガイドラインについて(ICH Q11ガイドライン)
・ 平成8年7月2日 薬審第443号 トキシコキネティクス(毒性試験における全身的暴露の評価)に関するガイダンスについて(ICH S3Aガイダンス)
・ 平成8年7月2日 薬審第442号 反復投与組織分布試験ガイダンスについて(ICH S3Bガイダンス)
・ 平成11年4月5日 医薬審第655号 反復投与毒性試験に係るガイドラインの一部改正ついて(ICHS4ガイドライン)
・ 平成24年3月23日 薬食審査発0323第1号 バイオテクノロジー応用医薬品の非臨床における安全性評価について(ICHS6(R1)ガイドライン)
・ 平成13年6月21日 医薬審発第902号 安全性薬理試験ガイドラインについて(ICHS7Aガイドライン)
・ 平成21年10月23日 薬食審査発1023第4号 ヒト用医薬品の心室再分極遅延(QT間隔延長)の潜在的可能性に関する非臨床的評価について(ICHS7Bガイドライン)
・ 平成18年4月18日 薬食審査発第0418001号 医薬品の免疫毒性試験に関するガイドラインについて(ICHS8ガイドライン)
・ 平成22年6月4日 薬食審査発0604第1号 抗悪性腫瘍薬の非臨床評価に関するガイドラインについて(ICHS9ガイドライン)
・ その他、安全性に関するICHガイドライン[平成9年4月14日 薬審第315号(ICH S1Aガイドライン)、平成10年7月9日 医薬審第548号(ICHS1Bガイドライン)、平成20年11月27日 薬食審査発第1127001号(ICHS1C(R2)ガイドライン)、平成24年9月20日 薬食審査発0920第2号(ICHS2(R1)ガイドライン)、平成5年8月10日 薬新薬第88号(ICHS4ガイドライン)、平成11年4月5日 医薬審第655号(ICHS4Aガイドライン)、平成9年4月14日 薬審第316号(ICHS5A,S5Bガイドライン)、平成12年12月27日 医薬審第1834号(ICHS5B(M)ガイドライン)、平成26年5月21日 薬食審査発0521第1号(ICHS10ガイドライン)]
・ 平成17年9月16日 薬食審査発第0916001号、薬食安発第0916001号医薬品安全性監視の計画について(ICHE2Eガイドライン)
・ 平成22年2月19日 薬食審査発0219第4号 医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施についてのガイダンスについて(ICH M3(R2)ガイダンス)
・ 平成27年11月10日 薬生審査発1110第3号 潜在的発がんリスクを低減するための医薬品中DNA反応性(変異原性)不純物の評価及び管理(ICH M7ガイドライン)
・ 平成10年6月26日 医薬審第496号 非臨床薬物動態試験ガイドラインについて
・ 平成13年6月1日 医薬審発第796号 医薬品の臨床薬物動態試験について
・ 平成24年4月2日 薬食審査発0402第1号 医薬品開発におけるヒト初回投与試験の安全性を確保するためのガイダンス
・ 平成25年7月11日 薬食審査発0711第1号 医薬品開発における生体試料中薬物濃度分析法のバリデーションに関するガイドライン
・ 平成26年1月10日 薬食審査発0110第1号 ブロック共重合体ミセル医薬品の開発に関する厚生労働省/欧州医薬品庁の共同リフレクションペーパーの公表について
・ 平成26年4月1日 薬食審査発0401第1号 医薬品開発における生体試料中薬物濃度分析法(リガンド結合法)のバリデーションに関するガイドライン
補遺 (Appendix)
製法変更時の同等性/同質性評価
リポソーム製剤の製法変更に際し、3章(化学、製造及び品質管理)に概説した品質に関する検討により、製法変更前後の製品について認められた品質特性の差異が有効性及び安全性に影響を及ぼさないことを十分保証できるのであれば、当該検討のみに基づいて製法変更前後の製品の同等性/同質性を確定できる。品質に関するデータにより同等性/同質性が確定できない場合、非臨床あるいは臨床試験を追加することにより立証する。
A1.非臨床試験
非臨床試験の詳細については、4章(非臨床試験)を参照すること。製法変更時の同等性/同質性評価にあたり実施すべき非臨床試験については、製法変更の程度、当該リポソーム製剤の複雑さ、薬力学的特性、開発段階などに応じて、必要な試験の組み合わせなどをケースバイケースで判断する。
A1.1 非臨床薬物動態
ヒトにおけるリポソーム製剤のいくつかの薬物動態学的特性は、動物モデル、更には細胞を用いたin vitroモデルなども併せて利用することで予想可能な場合がある。適切な動物種と動物モデルについては、製法変更の目的・内容・程度と品質特性・薬物動態学的特性への影響の観点から、そのモデルの選択の妥当性について示すべきである。また、製法変更の内容や品質特性・薬物動態学的特性への影響を評価する上で、適切な投与量や投与スケジュール、測定項目(総量及び遊離有効成分、必要に応じて封入有効成分の動態)などを選択する。
例えば、脂質の水和、混合、サイズ調整などの製法や工程が変更された場合は、リポソーム製剤の粒度や粒度分布、形態(凝集も含む)又はin vitro放出性、表面にリガンド(標的素子)・抗体を結合させている場合はそれらの修飾率などに影響を及ぼし得る。したがって、これらの変更前後のリポソーム製剤について品質特性を詳細に比較した結果、類似性はあるが分析方法の限界などにより安全性、有効性への影響の有無に結論が下せない場合は、臓器や組織分布に影響を及ぼすことが懸念される。そのため、血中濃度と薬物動態パラメータの比較に加え、臓器分布や組織分布、排泄の比較を含む非臨床薬物動態の比較試験が考慮されるべきである。
A1.2 非臨床薬力学試験
可能であれば、リポソームと標的細胞、さらに毒性学上懸念される他の細胞との相互作用を検討するためのin vitro試験の実施についても考慮する。ただし、現時点ではin vitro試験による検討には限界があると考えられていることから、モデルの感度を考慮に入れた適切なin vivo試験により、薬力学的反応の類似性を総合的に判断する。
例えば、脂質の水和や混合工程、脂質のグレードなどに変更があった場合は、薬物の放出、有効成分の封入率に影響をもたらす脂質の流動性や脂質組成の均一性に影響を与えうるため、類似性はあるがこれらの品質特性に変化が見られ、有効性への影響が不明な場合は、薬力学試験による比較が考慮されるべきである。また、製法変更の前後で、リポソームの粒度、粒度分布、形態(凝集も含む)、in vitro放出性、表面にリガンド(標的素子)・抗体が結合した際はその修飾率などに変化がみられた場合は、リポソームと標的細胞との相互作用が薬力学に影響を及ぼすことが懸念されるため、薬力学試験による比較が考慮されるべきである。
A1.3 非臨床毒性試験
一般的に、品質特性解析により品質上の類似性が認められた場合は、通常、新たな毒性試験を実施する必要はないが、以下の場合については、解析結果によっては試験の実施が必要となる場合もあるであろう。例えば、製法変更により新たな不純物が生じた場合は、その種類や量により毒性試験による安全性評価が必要な場合もある。また、製法変更に伴い、リポソームの粒度や粒度分布、形態(凝集も含む)が変化する場合や、表面にリガンド(標的素子)・抗体などを修飾した場合に、臓器や組織分布に影響を及ぼす懸念がある。これらに影響を及ぼす工程(例えば、脂質の水和、混合、サイズ調製など)が変更され、変更前後のリポソーム製剤について品質特性を詳細に比較した結果、当該変更による安全性への影響が不明な場合は、毒性試験を実施し、製法変更前後の品質特性の差異が臨床へ影響を与える可能性について評価すべきである。
リポソーム製剤投与での輸注反応の多くは、リポソーム脂質組成に依存するため、脂質組成に差異が生じない場合は大きな問題とならないであろう。ただし、工程変更やリポソーム外水相の液性・組成の変化などにより、凝集物の増加、リポソームの粒度や粒度分布の変化、封入率などに差異が認められた場合は、有害事象の可能性の程度を評価するための毒性試験(4.5項参照)が考慮されるべきである3)。
――――――――――
3) Szebeni J. Eur J Nanomed. 2012;4:33-53.
A2 臨床試験
品質試験、非臨床試験で、リポソーム製剤の同等性/同質性が確定できない場合には、臨床試験を実施する。
A2.1 臨床薬物動態試験
原則的に、製法変更前後のリポソーム製剤における薬物動態の同等性/同質性を評価するよう適切にデザインされたクロスオーバー試験により確認する必要があるが、消失半減期が長い場合などにおいては必ずしもクロスオーバー試験が適切でないこともあるので、特性を考慮した試験デザインを検討する。その際、リポソーム製剤や対象疾患によって、健康被験者を対象とすることが適切な場合と患者を対象とする方が適切な場合がある。また、通常の臨床試験は単回投与で行うが、反復投与により適切な評価が得られると考えられるリポソーム製剤については、反復投与での臨床試験も考慮する。投与量は、予定される臨床用量の範囲内で、薬物動態学的特性も踏まえて科学的に妥当な用量を選択する。採取する試料は原則として血液とする。適切にバリデーションを実施した生体分析法により、遊離有効成分及び総量、またリポソーム製剤の特性によっては封入有効成分を定量する。
製法変更前後のリポソーム製剤における薬物動態の同等性/同質性は、遊離有効成分及び総量の濃度について示す必要がある。主要な薬物動態パラメータとしてはCmax、AUCなどが考えられるが、リポソーム製剤の薬物動態学的特性によっては、他の薬物動態パラメータによる評価が必要となる場合もある。同等性許容域については事前に規定しておく必要がある。設定した許容域の妥当性については、有効性及び安全性に与える影響の観点から科学的に十分な説明が必要である。
A2.2 その他の臨床試験
品質、非臨床、臨床薬物動態試験の結果を以てしても、製法変更前後における製剤の同等性/同質性を判断できない場合は、薬理効果又は臨床効果(効力を裏付ける薬理作用又は効能に対する治療効果)を指標とした臨床試験が必要となる。
A2.3 安全性事項
リポソーム製剤投与では、急性の輸注反応は比較的一般的に起こり得ることが知られている。製法変更により、このような反応のリスクが上昇する懸念がある場合は、その原因を明らかにし、場合によっては製剤設計を見直すことも必要である。また、急性の輸注反応に限らず、リポソーム製剤の安全性は、限られた非臨床、臨床試験成績で比較検討できる範囲は限られる。したがって、必要に応じて、製造販売後も引き続きリスク管理を行っていくことが重要である。
[参考(ガイドライン英訳)]