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○吸入粉末剤の後発医薬品の生物学的同等性評価に関する基本的考え方について
(平成28年3月11日)
(事務連絡)
(各都道府県衛生主管部(局)薬務主管課あて厚生労働省医薬・生活衛生局審査管理課通知)
今般、平成27年度厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業)「後発医薬品の同等性ガイドラインにおける試験条件の改正に関する研究」(研究代表者:国立医薬品食品衛生研究所薬品部客員研究員 四方田千佳子)の分担研究「後発医薬品等の生物学的同等性評価のあり方に関する研究」(研究分担者:一般社団法人日本ジェネリック医薬品学会理事 緒方宏泰)において、別添のとおり、「吸入粉末剤の後発医薬品の生物学的同等性評価に関する基本的考え方」が取りまとめられましたので、貴管下関係業者に対して周知願います。
(別添)
吸入粉末剤の後発医薬品の生物学的同等性評価に関する基本的考え方
本考え方は、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease (COPD))を対象とする吸入粉末剤の後発医薬品の開発に際して、先発医薬品との間の生物学的同等性評価を行う際に必要な試験等の基本的な考え方を整理したものである。
吸入粉末剤の生物学的同等性の評価に当たっては、原則として、臨床試験の実施が必要となる。後発医薬品の臨床試験においては、先発医薬品の投与対象となるすべての患者集団を対象とすることが困難であることを踏まえ、当該医薬品の適応患者集団が限定されていない場合で、かつ、患者の病態等によって有効成分の患部への到達量が製剤学的特性に大きく依存する場合、代表的な患者集団を対象として行った治療学的同等性評価を補完する目的で製剤学的同等性試験を実施する。そのため、上述の場合、吸入粉末剤の生物学的同等性の評価においては、製剤学的同等性試験、薬物動態試験、臨床試験等を含めた総合的な評価が必要となる。
当該評価については、品目毎に判断が必要となるため、適宜、審査当局と事前に相談し、適切な試験を計画し、実施することが望ましい。
1.評価に用いる製剤
原則として、先発医薬品の3ロットについて、in vitro試験を行い、中間の微粒子量(1吸入あたり肺内に到達すると想定される5μm以下の空気力学的粒子径を有する薬物量)(以下「微粒子量」という。)を示すロットの製剤を標準製剤とする。
試験製剤は、実生産スケールで製造されたロット(以下「実生産ロット」という。)の製剤であることが望ましいが、実生産スケールの1/10以上の大きさのロットの製剤でもよい。なお、実生産ロットと治療学的同等性試験に用いるロットの製法や処方は同じで、両者の品質、有効性及び安全性は共に同等であるものとする。
標準製剤の含量又は薬物送達量(以下「送達量」という。)はなるべく表示量に近いものを用いる。また、試験製剤と標準製剤の間の含量又は送達量の差は表示量の5%以内であることが望ましい。
2.製剤学的同等性試験、薬物動態試験及び臨床試験
標準製剤と試験製剤について、製剤学的同等性試験、薬物動態試験及び臨床試験を実施する。試験実施の基本的な考え方は以下のとおりである。なお、本考え方に従って試験をしなくても、吸入粉末剤としての生物学的同等性を示すことができる場合はこの限りではない。
(1) 製剤学的同等性試験
製剤学的同等性試験は、当該医薬品の適応患者集団が限定されていない場合で、かつ、患者の病態等によって有効成分の患部への到達量が製剤学的特性に大きく依存する場合、代表的な患者集団を対象として行った治療学的同等性評価を補完するために実施する。そのため、上述の場合、標準製剤と試験製剤について製剤学的同等性の評価を行うことは、臨床試験を行うための前提となる。
(ア) 測定項目
① 評価パラメータは、送達量、微粒子量、空気力学的サイズから少なくとも4グループに分けたグループ毎の薬物量等とする。
② 例えば、送達量はドーズユニットサンプリング(送達薬剤捕集)装置を用い、空気力学的サイズによる粒子の分画は、アンダーセンカスケードインパクター又はネクストジェネレーションインパクターを用いて測定する。
③ グループ毎の区分は、科学的妥当性に基づき決定する。
(イ) 試験流量
試験流量は患者集団で達成可能な吸気流量に基づき設定する(最小値10、中央値50、最大値90%等)(例えば、30、60、90L/min等)。
(ウ) 判定基準
科学的妥当性が示される適切な判定基準を設定する。
(2) 薬物動態試験
試験製剤が標準製剤の全身移行量と同程度又は許容される程度であることを確認する。
(ア) 実験計画
原則として、クロスオーバー法で行う。被験者の割付は無作為に行う。
(イ) 例数
個人差を考慮に入れ、適切な例数を設定する。
(ウ) 被験者
原則として、健康成人を被験者とする。
(エ) 投与条件
投与法:原則として、絶食時単回吸入投与で試験を行う。
(オ) 測定
① 採取体液:血液とする。
② 採取回数及び時間:AUCt及びCmaxを評価するのに十分な回数を設定する。
③ 測定成分:原則として、有効成分の未変化体を測定する。
④ 分析法:バリデーションを実施して、十分な信頼性を有することを保証した生体試料中薬物濃度分析法を用いる。
⑤ 評価法:標準製剤と試験製剤について、AUCt及びCmaxを評価パラメータとする。
(3) 臨床試験
標準製剤と試験製剤について、公表資料を参考に、原則として、主要評価項目(同等性評価パラメータ)及び同等性の許容域を事前に設定し、同等性を検証することを目的とした並行群間比較試験又はクロスオーバー試験を実施する。
(ア) 例数
臨床試験の同等性の許容域に基づき、信頼区間法に基づき同等性を評価する上で適切な例数を設定する。
(イ) 被験者
取得している効能・効果の中から気管支喘息又は慢性閉塞性肺疾患を対象に試験する。患者選択においては、可能な限り均一な集団での試験実施を検討すること。
(ウ) 試験条件
① 原則として、製剤間の治療学的同等性を評価する上で適切な含量を用いて試験する。
② 単回投与又は反復投与で試験を行う。
(エ) 評価項目
ベースラインからのトラフ1秒率(FEV1)変化量
ベースラインからの朝のPEF変化量
ベースラインからのFEV1―時間曲線下面積(FEV1―AUCt)変化量等
主要評価項目(同等性評価パラメータ)は対象、薬理作用、治療目的、作用持続時間等で異なるため、各医薬品の特性を踏まえ、適切な項目を選択する。
(オ) 同等性の判定
患者における先発医薬品と適切な対照との差をもとに、臨床的に許容可能な範囲を事前に設定する必要がある。
参考文献
1.FDA. Product-Specific Recommendations for Generic Drug Development. Aclidinium bromide. 2015.
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM460918.pdf
2.FDA. Product-Specific Recommendations for Generic Drug Development. Fluticasone Propionate; Salmeterol xinafoate. 2013.
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM367643.pdf
3.FDA. Product-Specific Recommendations for Generic Drug Development. Formoterol fumarate. 2015.
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM461064.pdf
4.EMA. Guideline on the requirements for clinical documentation for orallyinhaled products (OIP) including the requirements for demonstration of therapeutic equivalence between two inhaled products for use in the treatment of asthma and chronic obstructive pulmonary disease (COPD)in adults and for use in the treatment of asthma in children and adolescents. 2009.
http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Scientific_guideline/2009/09/WC500003504.pdf#search='EMA%2C+bioequivalence%2Cinhaled'
5.「医薬品開発における生体試料中薬物濃度分析法のバリデーションに関するガイドライン」について(平成25年7月11日付け薬食審査発0711第1号)