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○ベキサロテン製剤の使用に当たっての留意事項について

(平成28年1月22日)

(薬生審査発0122第3号)

(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局審査管理課長通知)

(公印省略)

ベキサロテン製剤(販売名:タルグレチンカプセル75mg。以下「本剤」という。)については、本日、「皮膚T細胞性リンパ腫」を効能又は効果として承認したところですが、脂質異常症、膵炎、内分泌障害(下垂体性甲状腺機能低下症、低血糖)等の重篤な副作用があらわれること及び、国内での治験症例も極めて限られていることから、その使用に当たっては、特に下記の点について留意されるよう、貴管下の医療機関及び薬局に対する周知をお願いします。

1.本剤の適正使用について

(1) 本剤については、承認に際し、製造販売業者による全症例を対象とした使用成績調査、適正な流通管理の実施等をその条件として付したこと。

【承認条件】

1.医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。

2.国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。

(2) 本剤の警告、効能又は効果、並びに用法及び用量は以下のとおりであるので、特段の留意をお願いすること。なお、その他の使用上の注意については、添付文書を参照されたいこと。

【警告】

(1) 本剤には催奇形性があるので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。また、妊娠する可能性のある婦人には投与しないことを原則とするが、やむを得ず投与する場合には使用上の注意を厳守すること。[「重要な基本的注意」、「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照]

(2) 本剤の投与にあたっては、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ実施すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。

【効能・効果】

皮膚T細胞性リンパ腫

<効能・効果に関連する使用上の注意>

(1) 本剤投与の適応となる疾患の診断は、病理診断に十分な経験を持つ医師又は施設により行うこと。

(2) 未治療の皮膚T細胞性リンパ腫に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない。

(3) 本剤の皮膚以外の病変(内臓等)に対する有効性及び安全性は確立していない。

(4) 臨床試験に組み入れられた患者の組織型、病期等について、「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分理解した上で、本剤以外の治療の実施についても慎重に検討し、適応患者の選択を行うこと。

【用法・用量】

通常、成人にはベキサロテンとして1日1回300mg/m2(体表面積)を食後経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

<用法・用量に関連する使用上の注意>

(1) 全身投与による他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。

(2) 体表面積から換算した本剤(1カプセルあたりベキサロテンとして75mgを含有する)の服用量は、以下の表のとおりである。

300mg/m2(初回投与量)投与時における体表面積換算によるカプセル数

体表面積(m2)

カプセル数

0.88-1.12

4

1.13-1.37

5

1.38-1.62

6

1.63-1.87

7

1.88-2.12

8

2.13-2.37

9

2.38-2.62

10

200mg/m2(減量時用量)投与時における体表面積換算によるカプセル数

体表面積(m2)

カプセル数

0.88-0.93

2

0.94-1.31

3

1.32-1.68

4

1.69-2.06

5

2.07-2.43

6

2.44-2.62

7

100mg/m2(減量時用量)投与時における体表面積換算によるカプセル数

体表面積(m2)

カプセル数

0.88-1.12

1

1.13-1.87

2

1.88-2.62

3

(3) 下垂体性甲状腺機能低下症があらわれることがあるので、投与開始前及び投与期間中は定期的に甲状腺機能検査(甲状腺刺激ホルモン、遊離トリヨードサイロニン、遊離サイロキシン等の測定)を実施し、遊離サイロキシンが基準値から25%以上低下した場合には、レボチロキシンナトリウムの投与を行うこと。

(4) Grade3以上の副作用及び高トリグリセリド血症が発現した場合には、以下の基準を目安として、本剤を休薬、減量又は中止すること。

用量調節の目安

Grade3以上の副作用が発現した場合(高トリグリセリド血症が発現した場合は以下の<高トリグリセリド血症への対応>に従うこと。)

発現時の1日投与量が300mg/m2(体表面積)の場合には、副作用が消失又はGrade1以下に改善するまで休薬し、200mg/m2(体表面積)で投与を再開する。4週間休薬しても、副作用が消失、又はGrade1以下に回復しない場合には、投与を中止する。

発現時の1日投与量が200mg/m2(体表面積)の場合には、副作用が消失又はGrade1以下に改善するまで休薬し、100mg/m2(体表面積)で投与を再開する。4週間休薬しても、副作用が消失、又はGrade1以下に回復しない場合には、投与を中止する。

発現時の1日投与量が100mg/m2(体表面積)の場合には、副作用が消失又はGrade1以下に改善するまで休薬し、100mg/m2(体表面積)で投与を再開する。4週間休薬しても、副作用が消失、又はGrade1以下に回復しない場合には、投与を中止する。

<高トリグリセリド血症への対応>

血清トリグリセリド値が200mg/dLを超えた場合には、脂質異常症治療薬の処方を考慮する。脂質異常症治療薬による治療を行っても血清トリグリセリド値が400mg/dLを超えている場合には、脂質異常症治療薬の処方を調整する。脂質異常症治療薬の処方を調整しても、血清トリグリセリド値が500mg/dLを超えている場合には投与量を減量する(1日投与量が300mg/m2(体表面積)の場合、順次200mg/m2(体表面積)、100mg/m2(体表面積)へと減量する)。また、血清トリグリセリド値が1,000mg/dLを超えた場合には、本剤を休薬する。休薬後、血清トリグリセリド値が400mg/dL未満で安定した場合には、休薬前より1段階低用量で投与を再開する。4週間休薬しても回復しない場合には、投与を中止する。

GradeはNCI-CTCAE version4.0による。

2.医療機関における適正使用に関する周知事項について

本剤については、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第79条に基づき、承認取得者である製造販売業者に対し、「製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施する」よう義務付けたので、その調査の実施にご協力願いたいこと。