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○事業場における労働者の健康保持増進のための指針の一部を改正する指針等について

(平成27年11月30日)

(基発1130第1号)

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

(公印省略)

平成26年6月に公布された労働安全衛生法の一部を改正する法律(平成26年法律第82号。)による労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)の改正により、平成27年12月1日から労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導の結果に基づく事後措置の実施が事業者の義務とされたところであり、同法の規定に基づき公表されている労働者の健康管理等に関する下記の4指針について、本日付けで所要の改正が行われ、平成27年12月1日から適用されることとなった。

改正点は別紙1~4の新旧対照表のとおりであり、改正後の指針は別紙5~8のとおりであり、別添のとおり関係事業者団体等に対して周知したので了知するとともに、貴局においても関係者に対して周知されたい。

1 事業場における労働者の健康保持増進のための指針(昭和63年健康保持増進のための指針公示第1号)

2 健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(平成8年健康診断結果措置指針公示第1号)

3 労働者の心の健康の保持増進のための指針(平成18年健康保持増進のための指針公示第3号)

4 労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導の結果に基づく事後措置の実施に関する指針(平成27年心理的な負担の程度を把握するための検査等指針公示第1号)

[別紙1]

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[別紙3]

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[別紙4]

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[別紙5]

事業場における労働者の健康保持増進のための指針

昭和63年 9月 1日 健康保持増進のための指針公示第1号

改正 平成 9年 2月 3日 健康保持増進のための指針公示第2号

改正 平成19年11月30日 健康保持増進のための指針公示第4号

改正 平成27年11月30日 健康保持増進のための指針公示第5号

1 趣旨

近年の高年齢労働者の増加、急速な技術革新の進展等の社会経済情勢の変化、労働者の就業意識や働き方の変化、業務の質的変化等に伴い、定期健康診断の有所見率が増加傾向にあるとともに、日本人の三大死因の2つを占める心臓病及び脳卒中の誘因となるメタボリックシンドロームが強く疑われる者とその予備軍は、2千万人近くに上ると推計されている。また、仕事に関して強い不安やストレスを感じている労働者の割合が高い水準で推移している。

このような労働者の心身の健康問題に対処するためには、早い段階から心身の両面について健康教育等の予防対策に取り組むことが重要であることから、事業場において、全ての労働者を対象として心身両面の総合的な健康の保持増進を図ることが必要である。なお、労働者健康の保持増進を図ることは、労働生産性向上の観点からも重要である。

また、事業場において健康教育等の労働者の健康の保持増進のための措置が適切かつ有効に実施されるためには、その具体的な実施方法が、事業場において確立していることが必要である。

本指針は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第70条の2第1項に基づき、同法第69条第1項の事業場において事業者が講ずるよう努めるべき労働者の健康の保持増進のための措置(以下「健康保持増進措置」という。)が適切かつ有効に実施されるため、当該措置の原則的な実施方法について定めたものである。事業者は、健康保持増進措置の実施に当たっては、本指針に基づくとともに、全ての措置の実施が困難な場合には、可能なものから実施するなど、各事業場の実態に即した形で取り組むことが望ましい。

2 健康保持増進対策の基本的考え方

近年における医学の進歩に伴い、心疾患、高血圧、糖尿病などの生活習慣病及びメタボリックシンドロームについては、若年期から継続した適切な運動を行い、健全な食生活を維持し、ストレスをコントロールすることにより、予防できることが明らかにされてきた。また、健康管理やメンタルヘルスケア等心身両面にわたる健康指導技術の開発も進み、多くの労働者を対象とした健康の保持増進活動が行えるようになってきた。

また、労働者の健康の保持増進には、労働者自らが自主的、自発的に取り組むことが重要である。しかし、労働者の働く職場には労働者自身の力だけでは取り除くことができない疾病増悪要因、ストレス要因などが存在しているので、労働者の健康を保持増進していくためには、労働者の自助努力に加えて、事業者の行う健康管理の積極的推進が必要である。その健康管理も単に健康障害を防止するという観点のみならず、更に一歩進んで、労働生活の全期間を通じて継続的かつ計画的に心身両面にわたる積極的な健康保持増進を目指したものでなければならない。

労働者の健康の保持増進のための具体的措置としては、健康測定(健康度測定すなわち健康保持増進のための健康測定をいう。以下同じ。)とその結果に基づく運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導、保健指導等があり、これらの事項は、それぞれに対応したスタッフの緊密な連携により推進されなければならない。

3 健康保持増進計画等

(1) 健康保持増進計画の策定

イ 健康測定、運動指導等の健康保持増進措置は、中長期的視点に立って、継続的かつ計画的に行われるようにする必要がある。このため、事業者は、労働者の健康の保持増進を図るための基本的な計画(以下「健康保持増進計画」という。)を策定するように努めることが必要である。

健康保持増進計画の策定に当たっては、事業者自らが事業場における健康保持増進を積極的に支援することを表明するとともに、衛生委員会等の活用等も含め、その実施体制を確立する必要がある。

健康保持増進計画の実施においては、実施状況等を適切に評価し、評価結果に基づき必要な改善を行うことにより、健康保持増進の一層の充実・向上に努めることが必要である。

健康保持増進計画で定める事項は、次のとおりである。

① 事業者が健康保持増進を積極的に推進する旨の表明に関すること。

② 健康保持増進計画の目標の設定に関すること。

③ 事業場内健康保持増進体制の整備に関すること。

④ 労働者に対する健康測定、運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導、保健指導等健康保持増進措置の実施に関すること。

⑤ 健康保持増進措置を講ずるために必要な人材の確保並びに施設及び設備の整備に関すること。

⑥ 健康保持増進計画の実施状況の評価及び計画の見直しに関すること。

⑦ その他労働者の健康の保持増進に必要な措置に関すること。

ロ 事業者は、健康保持増進計画の策定に当たっては、衛生委員会等に付議するとともに、事業場内の健康保持増進計画の策定等、労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策(以下「健康保持増進対策」という。)を推進するためのスタッフ(3(2)を参照)の意見を聴くための機会を設けるよう努めることが望ましい。

(2) 事業場内健康保持増進対策の推進体制の確立

事業者は、事業場内の健康保持増進対策を推進する体制を確立するため、次に掲げる組織、スタッフ等を活用、整備するように努めることが必要である。

なお、本指針においては、望ましい体制を示したものであり、事業場の状況に応じて対応困難な部分がある場合には、事業者は、対応可能な部分から体制の整備に努めることが重要である。

イ 衛生委員会等

(イ) 事業場において、衛生管理者、衛生推進者等から健康保持増進計画の総括的推進担当者(以下「推進担当者」という。)を選任し、健康保持増進計画の継続的な推進を行わせること。

(ロ) 常時50人以上の労働者を使用する事業場においては、衛生委員会又は安全衛生委員会において、健康保持増進対策を積極的に調査審議すること。

その際、産業医等健康保持増進措置を実施するスタッフの意見を十分取り入れる体制を整備すること。

(ハ) 常時50人未満の労働者を使用する事業場においても、衛生に関する事項について関係労働者の意見を聴く際には、健康保持増進対策に関しても意見を求めるように努めること。

ロ 健康保持増進措置を実施するスタッフ

(イ) 事業場における健康保持増進措置を実施するに当たっての必要なスタッフの種類とその役割は、次のとおりである。

① 産業医

健康測定を実施し、その結果に基づいて個人ごとの指導票を作成する。さらに、当該個人指導票により、健康保持増進措置を実施する他のスタッフに対して指導を行う。

② 運動指導担当者

健康測定の結果に基づき、個々の労働者に対して具体的な運動プログラムを作成し、運動実践を行うに当たっての指導を行う。また、自ら又は運動実践担当者に指示し、当該プログラムに基づく運動実践の指導援助を行う。

③ 運動実践担当者

運動プログラムに基づき、運動指導担当者の指示のもとに個々の労働者に対する運動実践の指導援助を行う。

④ 心理相談担当者

健康測定の結果に基づき、メンタルヘルスケアが必要と判断された場合又は問診の際に労働者自身が希望する場合に、産業医の指示のもとにメンタルヘルスケアを行う。

⑤ 産業栄養指導担当者

健康測定の結果に基づき、必要に応じて栄養指導を行う。

⑥ 産業保健指導担当者

健康測定の結果に基づき、必要な保健指導を行う。

(ロ) これらのスタッフは、それぞれの専門分野における十分な知識・技能を有していることが必要であると同時に、労働衛生、労働生理などについての知識を有していることが不可欠である。このため、事業者は、別表に定める研修を受講させこれらのスタッフの養成に努める必要があるが、これらのスタッフは、一定の要件の下、兼任することも可能である。

また、これらのスタッフすべてを養成することが困難な事業者にあっても、計画的・段階的に養成を行うことが望ましい。

なお、事業者は、これらのスタッフに対して、上記研修修了後においても、それぞれの専門分野に適した資質の向上のための研修に参加させるように努めることが望ましい。

ハ 健康保持増進専門委員会

(イ) 上記ロの健康保持増進措置を実施するスタッフを選任している事業場は、当該スタッフ及び推進担当者を構成員として、産業医を長とする「健康保持増進専門委員会」を設置することが望ましい。

(ロ) 「健康保持増進専門委員会」では、個々の労働者に対する健康保持増進措置に関して専門技術的立場から検討及び評価を行い、個々の労働者に対する各種指導の具体的かつ適切な実施に役立てるものとする。

ニ 事業場における健康保持増進対策の実施体制

(イ) 衛生委員会等で策定された健康保持増進計画を実行していくために、事業場における健康保持増進対策の実施担当部門を明確にし、推進担当者、衛生委員会等との緊密な連携のもとに、各職場を含めた健康保持増進対策の実施体制を確立することが重要である。

(ロ) 各職場においては、小集団活動体制の活用等労働者の健康保持増進対策の実効ある普及、定着が図られるよう創意工夫を行い、協力体制を整えることが望ましい。

(3) 労働者健康保持増進サービス機関等の利用

イ 3(2)ロで記した健康保持増進措置を実施するためのスタッフは原則的には事業場内に配置されるべきものである。しかし、事業者がこれらのスタッフすべてを確保することが困難な場合には、事業者が行うべき健康測定、運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導及び保健指導について、①健康測定、②運動プログラム作成及び指導、③運動実践指導、④メンタルヘルスケア、⑤栄養指導、⑥保健指導のすべてを実施することが可能である労働者健康保持増進サービス機関(事業者の委託を受けて、労働者の健康の保持増進のための業務を行う機関をいう。以下同じ。)などに委託して実施することが適当である。

ロ 事業場内に3(2)ロで記した健康保持増進措置を実施するスタッフのうち運動指導に関するスタッフのみが不足していること等により、運動指導を行うことが困難なときは、当該事業場の産業医と連携を取りながら運動指導を行うことが可能である企業外の運動指導専門機関に委託して実施することが適当である。

ハ 労働者健康保持増進サービス機関又は運動指導専門機関(以下「労働者健康保持増進サービス機関等」という。)を利用する場合、健康保持増進計画の策定に当たっては、事業者は当該労働者健康保持増進サービス機関等の各専門スタッフの意見を聴くための機会を設けるよう努めることが望ましい。

また、この場合、事業者は、3(2)ハに記した健康保持増進専門委員会を開催する際には、事前に調整した上、労働者健康保持増進サービス機関等の各専門スタッフの出席を求めること、又は産業医若しくは推進担当者が労働者健康保持増進サービス機関等と十分な連携をとることで健康保持増進専門委員会の機能を代替させることが望ましい。

(4) 健康保持増進対策の実施結果の評価

事業者は、事業場における健康保持増進対策を、継続的かつ計画的に推進していくためには、当該対策の実施結果を定期的に、総合的かつ個別的に評価するとともに、当該評価のための各種資料を作成し、新たな健康保持増進計画に反映させる等健康保持増進対策の内容を充実するように努めることが必要である。

(5) その他

イ 秘密の保持

健康保持増進措置の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の心身の健康に関する情報その他の秘密を他に漏らしてはならない。

ロ 記録の保存

事業者は、事業場における健康保持増進対策を継続的かつ計画的に推進していくために、健康保持増進措置の実施の事務に従事した者の中から、担当者を指名し、当該担当者に健康測定の結果、運動指導の内容等健康保持増進措置に関する記録を保存させることが必要である。

4 健康保持増進措置の内容

健康保持増進措置には健康教育、健康相談等があり、これらの中には労働者に対する集団指導や個々の労働者に対する健康指導が含まれる。

事業者は、次に掲げる健康保持増進措置の具体的項目について実施し、その結果に基づき健康教育や個々の労働者に応じたきめ細かな対策を実施するとともに、労働者の個別の要請に応じて健康相談等を行うように努めることが必要である。

(1) 健康測定

労働者の健康保持増進対策を推進していくためには、各個人が自己の健康状態について正確な知識をもち、産業医を中心とするスタッフの指導を受けながら健康管理を継続していくことが必要である。

「健康測定」とは、それぞれの労働者の健康状態を把握し、その結果に基づいた運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導、保健指導等の健康指導を行うために実施される生活状況調査や医学的検査等のことをいい、疾病の早期発見に重点をおいた健康診断とはその目的が異なるものである。なお、健康測定は、原則として産業医が中心となって行い、その結果に基づき各労働者の健康状態に応じた指導票を作成し、その指導票に基づいて、運動指導、保健指導等が行われるものであるが、第一段階として産業医が中心となって労働者自身の健康認識に応じた健康づくりに関する全般的な指導を行い、これをもとに必要があれば第二段階として運動指導、保健指導等必要な健康指導を実施することも可能である。

なお、健康指導の実施に当たっては、事業場の状況に応じ、必要な指導のみを実施することも可能である。

また、指導内容が複数の労働者に共通する場合は、当該共通部分について個別指導ではなく複数の労働者に対し斉一に指導することも可能である。

イ 健康測定の実施及びその項目

各種の健康指導を継続的かつ計画的に行うため、各労働者に対し定期的に健康測定を実施する。

健康測定の項目は、問診、生活状況調査、診察及び医学的検査であり、必要に応じて運動機能検査も行うものとする。また、問診、診察及び医学的検査の一部について、労働安全衛生法第66条第1項の規定に基づく健康診断をもって代替することや問診の一部について、労働安全衛生法第66条の10の規定に基づく心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」という。)の結果を利用することも可能であるが、これらを利用する場合には労働者本人の同意が必要である。

なお、メンタルヘルスケアにつなげるために健康測定として労働者のストレスを調査する場合は、ストレスの有無について二者択一により調べる方法等簡易な方法によるものとし、調査票を用いて、ストレスの原因、自覚症状及び他の労働者による支援に関する項目により検査を行い、ストレスの程度を点数化して評価を行うストレスチェックを行うものではないことに特に留意すること。

ロ 指導票の作成

産業医は、健康測定の実施結果を評価し、運動指導等の健康指導を行うための指導票を作成し、健康保持増進措置を実施する他のスタッフに対して指導を行う。

(2) 運動指導

健康測定の結果及び産業医の指導票に基づいて、運動指導担当者が労働者個人個人について、実行可能な運動プログラムを作成し、運動実践を行うに当たっての指導を行う。また、運動指導担当者及び運動実践担当者が、当該プログラムに基づく運動実践の指導援助を行う。

その際、労働者個人個人が自主的、積極的に取り組むよう配慮することが必要である。

イ 運動プログラムの作成

運動プログラムの作成に当たっては、個人の生活状況、趣味、希望等が十分に考慮され、運動の種類及び内容が安全に楽しくかつ効果的に実践できるものであるよう配慮することが重要である。

ロ 運動実践の指導援助

運動実践の指導援助に当たっては、個人の健康状態に合った適切な運動を職場生活を通して定着させ、健康的な生活習慣を確立することができるよう配慮することが重要である。

(3) メンタルヘルスケア

健康測定の結果、メンタルヘルスケアが必要と判断された場合又は問診の際労働者自身が希望する場合には、心理相談担当者が産業医の指示のもとにメンタルヘルスケアを行う。

なお、本指針の「メンタルヘルスケア」とは、積極的な健康づくりを目指す人を対象にしたものであって、その内容は、ストレスに対する気付きへの援助、リラクセーションの指導等である。このため、ストレスチェック結果に基づき事業者が講ずべき措置とは趣旨及び内容が異なるものであることに特に留意すること。

(4) 栄養指導

健康測定の結果、食生活上問題が認められた労働者に対して、産業栄養指導担当者が、健康測定の結果及び産業医の指導票に基づいて、栄養の摂取量にとどまらず、労働者個人個人の食習慣や食行動の評価とその改善に向けて指導を行う。

(5) 保健指導

勤務形態や生活習慣からくる健康上の問題を解決するために、産業保健指導担当者が、健康測定の結果及び産業医の指導票に基づいて、睡眠、喫煙、飲酒、口腔保健等の健康的な生活への指導及び教育を、職場生活を通して行う。

5 個人情報の保護への配慮

健康情報を含む労働者の個人情報の保護に関しては、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)及び関連する指針等が定められており、個人情報を事業の用に供する個人情報取扱事業者に対して、個人情報の利用目的の公表や通知、目的外の取扱いの制限、安全管理措置、第三者提供の制限などを義務づけている。また、個人情報取扱事業者以外の事業者であって健康情報を取り扱う者は、健康情報が特に適正な取扱いの厳格な実施を確保すべきものであることに十分留意し、その適正な取扱いの確保に努めることとされている。事業者は、これらの法令等を遵守し、労働者の健康情報の適正な取扱いを図るものとする。

また、健康測定等健康保持増進の取組において、その実施の事務に従事した者が、労働者から取得した健康情報を利用するに当たっては、当該労働者の健康保持増進のために必要な範囲を超えて利用してはならないことに留意すること。事業者を含む第三者が、労働者本人の同意を得て健康情報を取得した場合であっても、これと同様であること。

別表(健康保持増進措置を実施するスタッフ養成専門研修)

1 健康測定専門研修(スタッフの種類:産業医)

分野

範囲

時間

1 健康確保総論

(1) 労働衛生と労働衛生行政

(2) 健康確保施策の基本的考え方

(3) 健康保持増進措置の具体的内容

3.0

2 健康測定

(1) 運動負荷試験の実施方法

(2) 健康測定に基づく個人指導票の作成

4.5

3 運動の基礎科学

運動による身体の生理的変化

3.0

4 メンタルヘルスケア

ストレスとその関連疾患及びストレスの気づきへの援助

1.5

5 栄養指導

栄養・食生活の基礎知識及び今日的課題と対策

1.5

6 安全対策・救急処置

運動負荷試験実施時の安全対策

1.5

7 健康教育

(1) 健康教育の理念と方法

(2) 睡眠、喫煙、飲酒等

3.0

 

18.0

2 運動指導専門研修(スタッフの種類:運動指導担当者)

分野

範囲

時間

1 健康確保総論

(1) 労働衛生と労働衛生行政

(2) 健康確保施策の基本的考え方

(3) 健康保持増進措置の具体的内容

(4) 労働生活と健康

4.5

2 健康測定

(1) 運動負荷試験の基礎知識

(2) 血液生化学検査の基礎知識

(3) 運動機能検査の基礎知識と方法

4.5

3 運動の基礎科学

(1) 運動による身体の生理的変化

(2) 加齢による身体と運動効果の変化

(3) トレーニングの基礎知識と方法

(4) 運動の動機づけ及び継続の心理

(5) 現代人の健康問題

19.5

4 メンタルヘルスケア

(1) ストレスと関連疾患及びストレスコントロールの基礎知識

(2) 集団へのアプローチ法

(3) 面接相談の基礎知識と方法

6.0

5 栄養指導

(1) 栄養・食生活の基礎知識及び今日的課題と対策

(2) 健康づくりのための栄養と運動のかかわり

3.0

6 安全対策・救急処置

(1) 運動負荷試験実施時の安全対策

(2) 運動指導時の安全対策

(3) 代表的なスポーツ障害とその対策

(4) 運動時の救急処置

12.0

7 運動指導

(1) 健康づくりのための具体的な運動方法

(2) 運動プログラムの基礎知識と作成方法

(3) 運動指導の評価

58.5

8 健康教育

健康教育の理念と方法

3.0

9 研究討議

(1) 健康づくりの企画と運営

(2) 意見交換

6.0

 

117.0

3 運動実践専門研修(スタッフの種類:運動実践担当者)

分野

範囲

時間

1 健康確保総論

(1) 労働衛生と労働衛生行政

(2) 健康確保施策の基本的考え方

(3) 健康保持増進措置の具体的内容

3.0

2 健康測定

運動機能検査の基礎知識と方法

1.5

3 運動の基礎科学

運動による身体の生理的変化

1.5

4 メンタルヘルスケア

集団へのアプローチ法

1.5

5 栄養指導

栄養・食生活の基礎知識

1.0

6 安全対策・救急処置

運動時の救急処置

3.0

7 運動指導

(1) 健康づくりのための具体的な運動方法

(2) 運動プログラムの考え方

10.0

8 健康教育

健康教育の理念と方法

1.5

9 研究討議

意見交換

3.0

 

26.0

4 心理相談専門研修(スタッフの種類:心理相談担当者)

分野

範囲

時間

1 健康確保総論

(1) 労働衛生と労働衛生行政

(2) 健康確保施策の基本的考え方

(3) 健康保持増進措置の具体的内容

3.0

2 メンタルヘルスケア

(1) ストレスとその関連疾患及びストレスの気づきへの援助

(2) 心身医学及び産業精神医学

(3) メンタルヘルスケアの基礎知識と方法

9.0

8 健康教育

健康教育の理念と方法

1.5

9 研究討議

意見交換

4.5

 

18.0

5 産業栄養指導専門研修(スタッフの種類:産業栄養指導担当者)

分野

範囲

時間

1 健康確保総論

(1) 労働衛生と労働衛生行政

(2) 健康確保施策の基本的考え方

(3) 健康保持増進措置の具体的内容

3.0

2 メンタルヘルスケア

(1) 集団へのアプローチ法

(2) 面接相談の基礎知識と方法

4.0

3 栄養指導

(1) 栄養指導の基礎知識と方法

(2) 健康づくりのための栄養と運動のかかわり

5.0

4 健康教育

(1) 健康教育の理念と方法

(2) 食生活と口腔保健

3.0

9 研究討議

意見交換

3.0

 

18.0

6 産業保健指導専門研修(スタッフの種類:産業保健指導担当者)

分野

範囲

時間

1 健康確保総論

(1) 労働衛生と労働衛生行政

(2) 健康確保施策の基本的考え方

(3) 健康保持増進措置の具体的内容

3.0

2 運動の基礎科学

運動と健康のかかわり

1.5

3 メンタルヘルスケア

(1) ストレスとその関連疾患及びストレスの気づきへの援助

(2) 集団へのアプローチ法

(3) 面接相談の基礎知識と方法

4.5

4 栄養指導

栄養・食生活の基礎知識及び今日的課題と対策

1.5

4 健康教育

(1) 健康教育の理念と方法

(2) 健康生活への指導プログラムの基礎知識と方法

(3) 口腔保健

6.0

9 研究討議

意見交換

1.5

 

18.0

[別紙6]

健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針

平成 8年10月 1日 健康診断結果措置指針公示第1号

改正 平成12年 3月31日 健康診断結果措置指針公示第2号

改正 平成13年 3月30日 健康診断結果措置指針公示第3号

改正 平成14年 2月25日 健康診断結果措置指針公示第4号

改正 平成17年 3月31日 健康診断結果措置指針公示第5号

改正 平成18年 3月31日 健康診断結果措置指針公示第6号

改正 平成20年 1月31日 健康診断結果措置指針公示第7号

改正 平成27年11月30日 健康診断結果措置指針公示第8号

1 趣旨

産業構造の変化、働き方の多様化を背景とした労働時間分布の長短二極化、高齢化の進展等労働者を取り巻く環境は大きく変化してきている。その中で、脳・心臓疾患につながる所見を始めとして何らかの異常の所見があると認められる労働者が年々増加し、5割を超えている。さらに、労働者が業務上の事由によって脳・心臓疾患を発症し突然死等の重大な事態に至る「過労死」等の事案が多発し、社会的にも大きな問題となっている。

このような状況の中で、労働者が職業生活の全期間を通して健康で働くことができるようにするためには、事業者が労働者の健康状態を的確に把握し、その結果に基づき、医学的知見を踏まえて、労働者の健康管理を適切に講ずることが不可欠である。そのためには、事業者は、健康診断(労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第66条の2の規定に基づく深夜業に従事する労働者が自ら受けた健康診断(以下「自発的健診」という。)及び労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)第26条第2項第1号の規定に基づく二次健康診断(以下「二次健康診断」という。)を含む。)の結果、異常の所見があると診断された労働者について、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について聴取した医師又は歯科医師(以下「医師等」という。)の意見を十分勘案し、必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少、昼間勤務への転換等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、当該医師等の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会(以下「衛生委員会等」という。)又は労働時間等設定改善委員会(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)第7条第1項に規定する労働時間等設定改善委員会をいう。以下同じ。)への報告その他の適切な措置を講ずる必要がある(以下、事業者が講ずる必要があるこれらの措置を「就業上の措置」という。)。

また、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)の趣旨を踏まえ、健康診断の結果等の個々の労働者の健康に関する個人情報(以下「健康情報」という。)については、特にその適正な取扱いの確保を図る必要がある。

この指針は、健康診断の結果に基づく就業上の措置が、適切かつ有効に実施されるため、就業上の措置の決定・実施の手順に従って、健康診断の実施、健康診断の結果についての医師等からの意見の聴取、就業上の措置の決定、健康情報の適正な取扱い等についての留意事項を定めたものである。

2 就業上の措置の決定・実施の手順と留意事項

(1) 健康診断の実施

事業者は、労働安全衛生法第66条第1項から第4項までの規定に定めるところにより、労働者に対し医師等による健康診断を実施し、当該労働者ごとに診断区分(異常なし、要観察、要医療等の区分をいう。以下同じ。)に関する医師等の判定を受けるものとする。

なお、健康診断の実施に当たっては、事業者は受診率が向上するよう労働者に対する周知及び指導に努める必要がある。

また、産業医の選任義務のある事業場においては、事業者は、当該事業場の労働者の健康管理を担当する産業医に対して、健康診断の計画や実施上の注意等について助言を求めることが必要である。

(2) 二次健康診断の受診勧奨等

事業者は、労働安全衛生法第66条第1項の規定による健康診断又は当該健康診断に係る同条第5項ただし書の規定による健康診断(以下「一次健康診断」という。)における医師の診断の結果に基づき、二次健康診断の対象となる労働者を把握し、当該労働者に対して、二次健康診断の受診を勧奨するとともに、診断区分に関する医師の判定を受けた当該二次健康診断の結果を事業者に提出するよう働きかけることが適当である。

(3) 健康診断の結果についての医師等からの意見の聴取

事業者は、労働安全衛生法第66条の4の規定に基づき、健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)について、医師等の意見を聴かなければならない。

イ 意見を聴く医師等

事業者は、産業医の選任義務のある事業場においては、産業医が労働者個人ごとの健康状態や作業内容、作業環境についてより詳細に把握しうる立場にあることから、産業医から意見を聴くことが適当である。

なお、産業医の選任義務のない事業場においては、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師等から意見を聴くことが適当であり、こうした医師が労働者の健康管理等に関する相談等に応じる地域産業保健センターの活用を図ること等が適当である。

ロ 医師等に対する情報の提供

事業者は、適切に意見を聴くため、必要に応じ、意見を聴く医師等に対し、労働者に係る作業環境、労働時間、労働密度、深夜業の回数及び時間数、作業態様、作業負荷の状況、過去の健康診断の結果等に関する情報及び職場巡視の機会を提供し、また、健康診断の結果のみでは労働者の身体的又は精神的状態を判断するための情報が十分でない場合は、労働者との面接の機会を提供することが適当である。また、過去に実施された労働安全衛生法第66条の8、第66条の9及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導等の結果又は労働者から同意を得て事業者に提供された法第66条の10第1項の規定に基づく心理的な負担の程度を把握するための検査の結果に関する情報を提供することも考えられる。

また、二次健康診断の結果について医師等の意見を聴取するに当たっては、意見を聴く医師等に対し、当該二次健康診断の前提となった一次健康診断の結果に関する情報を提供することが適当である。

ハ 意見の内容

事業者は、就業上の措置に関し、その必要性の有無、講ずべき措置の内容等に係る意見を医師等から聴く必要がある。

(イ) 就業区分及びその内容についての意見

当該労働者に係る就業区分及びその内容に関する医師等の判断を下記の区分(例)によって求めるものとする。