添付一覧
○指定保育士養成施設の保育実習における麻しん及び風しんの予防接種の実施について
(平成27年4月17日)
(雇児保発0417第1号)
(各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長あて厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課長通知)
(公印省略)
保育施策の推進については、日頃より格別のご尽力を賜り厚く御礼申し上げます。
指定保育士養成施設の保育士養成課程として行われる保育実習の実施に当たっては、学生を受け入れる保育所等に入所する乳幼児等が、感染症に感染しないよう配慮することが重要です。
特に、感染力が強く罹患すると重症化するおそれのある麻しんや、抗体を保有していない妊娠20週頃までの妊婦が感染すると、先天性風しん症候群の児が生まれる可能性がある風しんへの対策として最も有効なのは、その発生の予防であり、未罹患で、かつ、麻しん及び風しんの予防接種を接種していない学生に対しては、予防接種の推奨を行うことが有効です。
麻しんに関しては、「麻しんに関する特定感染症予防指針」(平成19年厚生労働省告示第442号。別紙1参照。)第三の四の4において、「医療・福祉・教育に係る大学及び専修学校の学生及び生徒に対し麻しんに罹患すると重症化しやすい者と接する可能性がある実習があることを説明し、当該学生及び生徒の罹患歴及び予防接種歴の確認並びに未罹患であり、かつ、麻しんの予防接種を必要回数である2回接種していない者に対する予防接種を推奨する」こととしています。
また、風しんに関しても、「風しんに関する特定感染症予防指針」(平成26年厚生労働省告示第122号。別紙2参照。)第三の四の9において、「医療・福祉・教育に係る大学及び専修学校の学生及び生徒に対し、幼児、児童、体力の弱い者等の風しんに罹患すると重症化しやすい者や妊婦と接する機会が多いことを説明し、当該学生及び生徒の罹患歴及び予防接種歴を確認し、いずれも確認できない者に対して、風しんの抗体検査や予防接種を推奨する」こととしています。
ついては、麻しん及び風しんの予防接種について、下記を踏まえ、適切にご対応いただくよう、管内の指定保育士養成施設に周知願います。
なお、本通知は地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項に規定する技術的助言として発出するものであることを申し添えます。
記
1 麻しんの予防接種について
(1) 指定保育士養成施設における学生に対する麻しんの罹患歴及び予防接種歴の確認等
指定保育士養成施設に在学し、保育実習を受けようとする学生(以下「実習生」という。)について、実習生の過去の麻しん罹患歴及び予防接種歴を確認した結果、過去に罹患したことがない者であって、麻しんの予防接種が未接種(接種歴及び罹患歴が不明なものも含む。以下同じ。)又は1回のみ接種した者(以下「麻しん抗体要確認者」という。)であった場合、当該者に対し、麻しんの性質等を十分に説明し、以下の(2)及び(3)のとおり抗体検査又は予防接種を受けさせることが望ましいこと。
(2) 麻しん抗体要確認者が抗体検査を受けた場合の取扱いについて
① 麻しん抗体要確認者が抗体検査を受けた結果、抗体が確認できなかった場合は、当該者に対し、予防接種を受けさせることが望ましいこと。
② 麻しん抗体要確認者のうち過去の予防接種歴が未接種であった者については、上記①の予防接種後、再度抗体検査を受けるか又は予防接種を再度受けさせることが望ましいこと。
③ 上記②の場合において、抗体検査の結果、抗体が確認できなかった場合は、再度予防接種を受けさせることが望ましいこと。
④ 抗体検査の結果、抗体が確認できた者及び上記①から③を行った者については、保育実習を履修しても差し支えないものであること。
(3) 麻しん抗体要確認者が抗体検査を受けずに予防接種を受けた場合の取扱いについて
① 抗体検査を受けずに予防接種を受けた麻しん抗体要確認者のうち、予防接種歴が今回接種分を除いて1回受けている場合(計2回受けている場合)は、保育実習を履修して差し支えないものであること。
② 抗体検査を受けずに予防接種を受けた麻しん抗体要確認者のうち、予防接種歴が今回接種分を除いて未接種の者については、上記(2)の②及び③による取扱いを行うことを推奨する。なお、当該取扱いを行った者については、保育実習を履修して差し支えないものであること。
2 風しんの予防接種について
(1) 指定保育士養成施設における学生に対する風しんの罹患歴及び予防接種歴の確認等
実習生について、風しん罹患歴及び予防接種歴を確認し、過去に罹患したことがない者であって、風しんの予防接種が未接種(接種歴及び罹患歴が不明なものも含む。以下同じ。)の者(以下「風しん抗体要確認者」という。)であった場合、当該者に対し、風しんの性質等を十分に説明し、以下の(2)及び(3)のとおり抗体検査又は予防接種を受けさせることが望ましいこと。
(2) 風しん抗体要確認者が抗体検査を受けた場合の取扱いについて
① 風しん抗体要確認者が抗体検査を受けた結果、抗体が確認できなかった場合は、当該者に対し、予防接種を受けさせることが望ましいこと。
② 上記①の予防接種後、再度抗体検査を受けるか又は予防接種を再度受けさせることが望ましいこと。
③ 上記②の場合において、抗体検査の結果、抗体が確認できなかった場合は、再度予防接種を受けさせることが望ましいこと。
④ 抗体検査の結果、抗体が確認できた者及び上記①を行った者については、保育実習を履修しても差し支えないと考えるが、上記②及び③による取扱いを行うことを推奨する。
(3) 風しん抗体要確認者が抗体検査を受けずに予防接種を受けた場合の取扱いについて
抗体検査を受けずに予防接種を受けた風しん抗体要確認者については、保育実習を履修して差し支えないと考えるが、上記(2)の②及び③による取扱いを行うことを推奨する。
3 留意事項
(1) 上記1及び2のいずれにおいても、予防接種後、抗体検査により抗体の有無を確認する場合は、予防接種後から抗体検査を受けるまで2~4週間以上の間隔をあけることが望ましいこと。
(2) 予防接種に当たっては、原則、MRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)を接種すること。
(3) 予防接種を2回受ける場合は、1回目の予防接種後、2回目の予防接種までに少なくとも27日以上間隔をあけること。
(4) 市町村によっては、保健所等において抗体検査を無料で受けられる場合があるので、実習生に対し住所地の自治体に確認するよう周知願いたい。
厚生労働省 雇用均等児童家庭局 保育課 保育士対策係 TEL:03-5253-1111(内線7958) FAX:03-3595-2674 |
[別紙1]
麻しんに関する特定感染症予防指針
平成19年12月28日
(平成24年12月14日一部改正・平成25年4月1日適用)
厚生労働省
麻しんは、「はしか」とも呼ばれ、高熱と耳後部から始まり体の下方へと広がる赤い発疹を特徴とする全身性ウイルス感染疾患である。感染力が非常に強い上、罹患すると、まれに急性脳炎を発症し、精神発達遅滞等の重篤な後遺症が残る、又は、死亡することがある。さらに、よりまれではあるが、亜急性硬化性全脳炎という特殊な脳炎を発症することがあり、この脳炎を発症した場合には、多くは知能障害や運動障害等が進行した後、数年以内に死亡する。こうした麻しんの感染力及び重篤性並びに流行した場合に社会に与える影響等に鑑みると、行政関係者や医療関係者はもちろんのこと、国民一人一人が、その予防に積極的に取り組んでいくことが極めて重要である。
我が国においては、昭和51年6月から予防接種法(昭和23年法律第68号)に基づく予防接種の対象疾病に麻しんを位置づけ、積極的に接種勧奨等を行うことにより、麻しんの発生の予防及びまん延の防止に努めてきた。また、平成18年4月からは、麻しんの患者数が減少し、自然感染による免疫増強効果が得づらくなってきた状況を踏まえ、それまでの1回の接種から2回の接種へと移行し、より確実な免疫の獲得を図ってきた。しかし、平成19年に10代及び20代を中心とした年齢層で麻しんが大流行し、国は、麻しん対策を更に強化するため、平成20年に麻しんに関する特定感染症予防指針(平成19年厚生労働省告示第442号)を策定し、時限的に予防接種法第5条第1項の規定による予防接種(以下「定期の予防接種」という。)の対象者を拡大するなどの施策を推進してきた。こうした取組の結果、平成20年には11,013件あった麻しんの報告数も、平成23年には442件と着実に減少し、高等学校や大学等における大規模な集団発生は見られなくなってきたところである。
一方、麻しんを取り巻く世界の状況に目を向けると、世界保健機関西太平洋地域事務局は、平成24年(2012年)までに麻しんの排除を達成するという目標を掲げ、我が国を含め、世界保健機関西太平洋地域事務局管内の各国は、目標の達成に向けた対策が求められてきたところである。麻しん排除の定義は、平成20年には「国外で感染した者が国内で発症する場合を除き、麻しんの診断例が1年間に人口100万人当たり1例未満であり、かつ、ウイルスの伝播が継続しない状態にあること」とされていたが、遺伝子検査技術の普及により土着株と輸入株との鑑別が可能となったこと等を踏まえ、平成24年に世界保健機関西太平洋地域事務局より新たな定義として「適切なサーベイランス制度の下、土着株による感染が1年以上確認されないこと」が示され、また、麻しん排除達成の認定基準として「適切なサーベイランス制度の下、土着株による感染が3年間確認されず、また遺伝子型解析により、そのことが示唆されること」が示された。世界保健機関は、平成24年9月に、西太平洋地域の37の国及び地域のうち、我が国を含め既に32の国及び地域で土着株の流行が無くなっている可能性があることを表明しており、同機関による排除認定作業が行われている。
本指針はこのような状況を受け、平成27年度までに麻しんの排除を達成し、世界保健機関による麻しん排除達成の認定を受け、かつ、その後も排除状態を維持することを目標とし、そのために、国、地方公共団体、医療関係者、教育関係者等が連携して取り組んでいくべき施策についての新たな方向性を示したものである。
本指針については、麻しんの発生動向、麻しんの治療等に関する科学的知見、本指針の進捗状況に関する評価等を勘案して、少なくとも5年ごとに再検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更していくものである。
第1 目標
平成27年度までに麻しんの排除を達成し、世界保健機関による麻しんの排除の認定を受け、かつ、その後も麻しんの排除の状態を維持することを目標とする。
第2 原因の究明
一 基本的考え方
国並びに都道府県、保健所を設置する市及び特別区(以下「都道府県等」という。)においては、麻しんについての情報の収集及び分析を進めていくとともに、発生原因の特定のため、正確かつ迅速な発生動向の調査を行っていくことが重要である。
二 麻しんの発生動向の調査及び対策の実施
麻しんの発生動向の調査については、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「法」という。)第12条に基づく医師の届出により、国内で発生したすべての症例を把握するものとする。
三 麻しんの届出基準
麻しんを診断した医師の届出については、法第12条に基づき、診断後7日以内に行うこととされているが、迅速な行政対応を行う必要性に鑑み、可能な限り24時間以内に届出を行うことを求めるものとする。また、我が国における麻しん患者の発生数が大幅に減少したことを踏まえ、風しん等の類似の症状を呈する疾病と正確に見分けるためには、病原体を確認することが不可欠であることから、原則として全例に検査の実施を求めるものとする。しかしながら、迅速な行政対応を行うため、臨床診断をした時点でまず臨床診断例として届出を行うとともに、血清IgM抗体検査等の血清抗体価の測定の実施と、都道府県等が設置する地方衛生研究所でのウイルス遺伝子検査等の実施のための検体の提出を求めるものとする。臨床症状とこれらの検査結果を総合的に勘案した結果、麻しんと判断された場合は、麻しん(検査診断例)への届出の変更を求めることとし、麻しんではないと判断された場合は、届出を取り下げることを求めることとする。また、都道府県等は、届出が取り下げられた場合は、その旨を記録し、国に報告するものとする。
四 日本医師会との協力
国は、日本医師会を通じて、医師に対し、麻しんを臨床で診断した場合には、「三 麻しんの届出基準」に即した対応を行うよう依頼するものとする。また、麻しんの診断例の届出に際して、患者の予防接種歴も併せて報告するよう依頼するものとする。
五 麻しん発生時の迅速な対応
都道府県等は、麻しんの患者が1例でも発生した場合に法第15条に規定する感染経路の把握等の調査を迅速に実施するよう努めることが必要であり、普段から医療機関等の関係機関とのネットワーク構築に努めるものとする。
また、国は、国立感染症研究所において、当該調査の実務上の手順等を示した手引きの作成や職員の派遣要請に応えられる人材の養成を行うものとする。
六 ウイルス遺伝子検査等の実施
都道府県等は、医師から検体が提出された場合は、都道府県等が設置する地方衛生研究所において、原則として全例にウイルス遺伝子検査等を実施するとともに、その結果の記録を保存することとする。検査の結果、麻しんウイルスが検出された場合は、可能な限り、地方衛生研究所において麻しんウイルスの遺伝子配列の解析を実施する、又は国立感染症研究所に検体を送付し、同研究所が遺伝子配列の解析を実施することとする。国立感染症研究所は、解析されたウイルスの遺伝子情報を適切に管理し、流行状況の把握や感染伝播の制御等に役立てることとする。
第3 発生の予防及びまん延の防止
一 5年間実施した時限措置の終了と総括
平成19年に、10代及び20代の年齢層を中心として麻しんが流行した主な原因は、当該年齢層の者が、麻しんの予防接種を1回も受けていなかった、又は1回は受けたものの免疫を獲得できなかった若しくは免疫が減衰した者が一定程度いたからであると考えられている。このため、国は、平成20年度からの5年間を麻しんの排除のための対策期間と定め、定期の予防接種の対象者に、中学1年生と高校3年生に相当する年齢の者(麻しん及び風しんに既に罹患したことが確実な者及びそれぞれの予防接種を2回接種した者を除く。)を時限的に追加する措置(以下「時限措置」という。)を実施した。
その結果、麻しんの予防接種を2回接種した者の割合が大きく上昇し、当該年齢層の麻しん発生数の大幅な減少と大規模な集団発生の消失、抗体保有率の上昇を認めたことから、時限措置を行った当初の目的はほぼ達成することができたと考えられる。一定程度の未接種の者の存在が課題として残るが、時限措置を延長することで得られる効果が限定的と予想されることや、海外からの麻しんの輸入例が中心となりつつある現状及び特定の年齢層に限らず全ての年齢層に感受性者が薄く広く存在することが示唆されていること等を踏まえ、時限措置は当初の予定どおり平成24年度をもって終了し、今後は、麻しん患者が1例でも発生した場合に、積極的疫学調査の実施や、周囲の感受性者に対して予防接種を推奨することも含めた対応を強化することが必要である。
二 基本的考え方
感染力が非常に強い麻しんの対策として、最も有効なのは、その発生の予防である。そのため、定期の予防接種により対象者の95パーセント以上が2回の接種を完了することが重要であり、また、これまで、未接種の者や1回しか接種していない者に対しては、引き続き、幅広く麻しんの性質等を伝え、必要に応じ、予防接種を受けるよう働きかけることが必要である。
三 予防接種法に基づく予防接種の一層の充実
1 国は、引き続き、定期の予防接種を生後12月から生後24月に至るまでの間にある者及び小学校就学の始期に達する日の1年前の日から当該始期に達する日の前日までの間にある5歳以上7歳未満の者に対し行うものとし、それぞれの接種率が95パーセント以上となることを目標とする。また、少しでも早い免疫の獲得を図るとともに、複数回の接種勧奨を行う時間的な余裕を残すため、定期の予防接種の対象者となってからの初めの3月の間に、特に積極的な勧奨を行うものとする。
2 国は、定期の予防接種の実施主体である市町村に対し、確実に予防接種が行われるよう、積極的に協力を求めていく必要がある。具体的には、市町村に対し、母子保健法(昭和40年法律第141号)第12条第1項第1号に規定する健康診査及び学校保健安全法(昭和33年法律第56号)第11条に規定する健康診断(以下「就学時健診」という。)の機会を利用して、当該健康診査及び就学時健診の受診者の罹患歴及び予防接種歴を確認し、未罹患であり、かつ、麻しんの予防接種を必要回数である2回接種していない者に接種勧奨を行うよう依頼するものとする。また、定期の予防接種の受け忘れ等がないよう、定期の予防接種の対象者について、未接種の者を把握し、再度の接種勧奨を行うよう依頼するものとする。
3 厚生労働省は、文部科学省に協力を求め、就学時健診の機会を利用し、定期の予防接種の対象者の罹患歴及び予防接種歴を、原則として母子健康手帳や予防接種済証をもって確認し、未罹患であり、かつ、麻しんの予防接種を必要回数である2回接種していない者に接種勧奨を行うものとする。また、当該接種勧奨後に、定期の予防接種を受けたかどうかの確認を行い、必要があれば、再度の接種勧奨を行うものとする。
4 国は、右記以外にも、定期の予防接種を受けやすい環境づくりを徹底しなくてはならない。そのため、日本医師会並びに日本小児科学会、日本小児科医会及び日本小児保健協会等に対し、定期の予防接種が円滑に行われるように協力を求めるものとする。
5 国は、平成19年の麻しん流行時にワクチンや検査キットの確保が困難となった事例に鑑み、定期の予防接種に必要となるワクチン及び試薬類の生産について、製造販売業者と引き続き連携を図るものとする。なお、麻しんの接種に用いるワクチンは、風しん対策の観点も考慮し、原則として、麻しん風しん混合ワクチンとするものとする。
四 予防接種法に基づかない予防接種の推奨
1 医療関係者、児童福祉施設等の職員、学校等(幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学、高等専門学校、専修学校及び各種学校をいう。以下同じ。)の職員等は、幼児、児童、体力の弱い者等の麻しんに罹患すると重症化しやすい者と接する機会が多いことから、本人が麻しんを発症すると、多数の者に感染を引き起こしてしまう可能性が高い。このため、麻しんの排除を達成するためには、医療関係者、児童福祉施設等の職員、学校等の職員等に対し、予防接種の推奨を行う必要がある。
2 厚生労働省は、日本医師会等の関係団体に協力を求め、医療関係者の罹患歴及び予防接種歴の確認並びに未罹患であり、かつ、麻しんの予防接種を必要回数である2回接種していない者に対する予防接種を推奨するものとする。
3 厚生労働省は、児童福祉施設等において行われる労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第66条に規定する健康診断の機会を利用して、当該施設等の職員の罹患歴及び予防接種歴の確認並びに未罹患であり、かつ、麻しんの予防接種を必要回数である2回接種していない者に対する予防接種を推奨するものとする。
4 厚生労働省は、文部科学省に協力を求め、母子保健法第12条第1項第2号に規定する健康診査並びに学校保健安全法第13条第1項に規定する児童生徒等の健康診断及び同法第15条第1項に規定する職員の健康診断等の機会を利用して、学校の児童生徒等や職員の罹患歴及び予防接種歴の確認並びに未罹患であり、かつ、麻しんの予防接種を必要回数である2回接種していない者に対する予防接種を推奨し、学校の管理者に対し、推奨を依頼するものとする。また、医療・福祉・教育に係る大学及び専修学校の学生及び生徒に対し麻しんに罹患すると重症化しやすい者と接する可能性がある実習があることを説明し、当該学生及び生徒の罹患歴及び予防接種歴の確認並びに未罹患であり、かつ、麻しんの予防接種を必要回数である2回接種していない者に対する予防接種を推奨するものとする。
5 国は、麻しん患者が1例でも発生した場合に、国立感染症研究所において周囲の感受性者に対して予防接種を推奨することも含めた対応について検討し、具体的な実施方法等を示した手引きの作成を行うものとする。また、国立感染症研究所は、都道府県等から要請があった場合に、適宜技術的支援を行うものとする。
五 その他必要な措置
1 厚生労働省は、関係機関と連携し、予防接種の重要性並びに副反応を防止するために注意すべき事項及びワクチンを使用する予防接種という行為上避けられない起こりうる副反応、特に妊娠中の接種による胎児への影響等に関し、積極的な情報提供を行うものとする。また、国民に対する情報提供としては、リーフレット等の作成や報道機関を活用した広報等を積極的に行う必要がある。
2 厚生労働省は、保育所等の児童福祉施設等や職業訓練施設等の管理者に対し、入所及び入学の機会を利用して、保育所等の児童福祉施設等において集団生活を行う者及び職業訓練施設等における訓練生の罹患歴及び予防接種歴を確認し、未罹患であり、かつ、麻しんの予防接種を必要回数である2回接種していない場合、麻しんの疾病としての特性や麻しんの予防接種についての情報提供を行うよう依頼するものとする。
3 厚生労働省は、日本医師会並びに日本小児科学会、日本小児科医会、日本内科学会及び日本小児保健協会等の学会等に対し、初診の患者の罹患歴及び予防接種歴を確認し、未罹患であり、かつ、麻しんの予防接種を必要回数である2回接種していない場合、疾病としての麻しんについての情報及び麻しんの予防接種についての情報提供を行うよう依頼するものとする。
4 厚生労働省は、本省、国立感染症研究所又は検疫所のホームページ等を通じ、国内外の麻しんの発生状況や予防接種についての情報提供を行うとともに、国土交通省に協力を求め、旅行会社等に対し、外国へ渡航する者に、これらの情報提供を行うよう依頼するものとする。また、文部科学省に協力を求め、学校で外国へ修学旅行する際に、麻しんの疾病としての特性や麻しんの予防接種についての情報提供を行うよう依頼するものとする。
5 厚生労働省は、定期の予防接種を積極的に勧奨するとともに、予防接種の際の医療事故や避け得る副反応を徹底して避けるため、地方公共団体や医療機関等の各関係団体に対し、安全対策を十分行うよう協力を依頼するものとする。
第4 医療の提供
一 基本的な考え方
麻しんのような感染力が極めて強く、重症化のおそれのある感染症については、早期発見及び早期治療が、特に重要である。このため、国は、麻しんの患者を適切に診断できるよう、医師に必要な情報提供を行うとともに、国民にも当該疾病に感染した際の初期症状や早期にとるべき対応等について周知していくことが望ましい。
二 医療関係者に対する普及啓発
国は、麻しんの患者を医師が適切に診断できるよう、医師に対し、麻しんの流行状況等について積極的に情報提供するものとし、特に、流行が懸念される地域においては、日本医師会等の関係団体と連携し、医療関係者に対して注意喚起を行う必要がある。さらに、麻しんの患者数が減少し、自然感染による免疫増強効果が得づらくなってきたことに伴って、麻しんが小児特有の疾患でなくなったことに鑑み、小児科医のみではなく、すべての医師が麻しん患者を診断できるよう、積極的に普及啓発を行うことが重要である。
第5 研究開発の推進
一 基本的考え方
麻しんの特性に応じた発生の予防及びまん延の防止のための対策を実施し、良質かつ適切な医療を提供するためには、麻しんに対する最新の知見を集積し、ワクチン、治療薬等の研究開発を促進していくことが重要である。また、麻しんの定期の予防接種を円滑に実施するため、定期の予防接種歴の確認を容易にするシステムの整備を推進していく必要がある。
二 臨床における研究開発の推進
より免疫獲得の効果が高く、かつ、より副反応の少ないワクチンを開発することは、国民の予防接種に対する信頼を確保するために最も重要なことである。現行の麻しんのワクチンは効果の高いワクチンの一つであるとされているが、国は、今後の使用状況等を考慮し、必要に応じて研究開発を推進していくものとし、その際には、迅速な研究成果の反映のため、当該研究の成果を的確に評価する体制をつくるとともに、国民や医療関係者に対して、情報公開を積極的に行うことが重要である。
第6 国際的な連携
一 基本的考え方
国は、世界保健機関をはじめ、その他の国際機関との連携を強化し、情報交換等を積極的に行うことにより、世界的な麻しんの発生動向の把握、麻しんの排除の達成国の施策の研究等に努め、我が国の麻しん対策の充実を図っていくことが重要である。
二 国際機関で定める目標の設定
世界保健機関においては、2回の予防接種において、それぞれの接種率が95パーセント以上となることの達成を目標に掲げているほか、平成24年(2012年)には西太平洋地域から麻しんの排除を達成することを目標に掲げ各国に対策の実施を求めており、同機関において、麻しんの排除の認定作業が実施されている。我が国も本指針に基づき、麻しん対策の充実を図ることにより、その目標の達成及び維持に向けて取り組むものとする。
三 国際機関への協力
国際機関と協力し、麻しんの流行国の麻しん対策を推進することは、国際保健水準の向上に貢献するのみならず、海外で感染し、国内で発症する患者の発生を予防することにも寄与する。そのため、国は、世界保健機関等と連携しながら、国際的な麻しん対策の取組に積極的に関与する必要がある。
第七 評価及び推進体制と普及啓発の充実
一 基本的考え方
麻しんの排除を達成するためには、当該施策が有効に機能しているかの確認を行う評価体制の確立が不可欠である。国は、定期の予防接種の実施主体である市町村等と連携し、予防接種の実施状況についての情報収集を行い、その情報を基にして関係機関へ協力を要請し、当該施策の進捗状況によっては、本指針に定める施策の見直しも含めた積極的な対応を講じる必要がある。また、市町村等は、予防接種台帳のデータ管理のあり方について、個人情報保護の観点を考慮しつつ、電子媒体での管理を積極的に検討する。
二 麻しん対策推進会議及び排除認定会議の設置
国は、平成19年度より、感染症の専門家、医療関係者、保護者、地方公共団体の担当者、ワクチン製造業者及び学校関係者からなる「麻しん対策推進会議」を設置している。同会議は、毎年度、本指針に定める施策の実施状況に関する評価を行うとともに、その結果を公表し、必要に応じて当該施策の見直しについて提言を行うこととする。また、国は、麻しんが排除・維持されているかを判定し、世界保健機関に報告する排除認定会議も設置することとする。
三 都道府県等における麻しん対策の会議とアドバイザー制度の整備
1 都道府県は、感染症の専門家、医療関係者、保護者、学校関係者等と協働して、麻しん対策の会議を設置し、関係機関の協力を得ながら、定期的に麻しんの発生動向、定期の予防接種の接種率及び副反応の発生事例等を把握し、地域における施策の進捗状況を評価するものとする。また、都道府県等は、必要に応じ、医師会等の関係団体と連携して、麻しんの診断等に関する助言を行うアドバイザー制度の整備を検討する。
2 厚生労働省は、麻しん対策の会議が定期の予防接種の実施状況を評価するため、文部科学省に対し、学校が把握する幼児及び児童の定期の予防接種の接種率に関する情報を麻しん対策の会議に提供するよう協力を依頼するものとする。
四 関係機関との連携
1 厚生労働省は、迅速に麻しんの定期の予防接種の接種率を把握するため、都道府県知事に対し、情報提供を依頼するものとする。また、学校保健安全法第20条に基づく学校の臨時休業の情報を随時把握するため、文部科学省に対し、情報提供を依頼するものとする。
2 厚生労働省は、予防接種により副反応が生じた際に行われている報告体制を充実させ、重篤な副反応の事例は、速やかに国及び麻しん対策の会議等に報告される仕組みを構築するものとする。
五 普及啓発の充実
麻しん対策に関する普及啓発については、麻しんに関する正しい知識に加え、医療機関受診の際の検査や積極的疫学調査への協力の必要性等を周知することが重要である。厚生労働省は、文部科学省や報道機関等の関係機関との連携を強化し、国民に対し、麻しんとその予防に関する適切な情報提供を行うよう努めるものとする。
[別紙2]
風しんに関する特定感染症予防指針
(平成二十六年三月二十八日)
(厚生労働省告示第百二十二号)
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第十一条第一項及び予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)第四条第一項の規定に基づき、風しんに関する特定感染症予防指針を次のように策定したので、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第十一条第一項及び予防接種法第四条第四項の規定により告示し、平成二十六年四月一日から適用する。
風しんに関する特定感染症予防指針
風しんは、発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とする風しんウイルスによる感染性疾患である。一般的に症状は軽症で予後良好であるが、罹患者の五千人から六千人に一人程度が脳炎や血小板減少性紫斑病を発症し、また、妊婦が妊娠二十週頃までに感染すると、白内障、先天性心疾患、難聴等を特徴とする先天性風しん症候群の児が生まれる可能性がある。
我が国においては、平成の初め頃までは毎年推計数十万人の患者が発生し、また、ほぼ五年ごとに推計数百万人規模の全国的な大流行を繰り返し、国民の多くが自然に感染していたが、予防接種の進展により、流行の規模は縮小し、その間隔も拡大してきた。
我が国の風しんの定期の予防接種(予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)第二条第四項に規定する定期の予防接種をいう。以下同じ。)は、昭和五十一年六月に予防接種法に基づく予防接種の対象疾病に風しんを位置付け、昭和五十二年八月から先天性風しん症候群の予防を主な目的として中学生女子を対象に行ったことに始まる。平成元年には、麻しんの定期の予防接種として、男女幼児の希望者に対して風しんを含有する麻しん・おたふくかぜ・風しん混合(MMR)ワクチンの使用が可能となったが、おたふくかぜ成分による無菌性髄膜炎の発生頻度等の問題から平成五年に当該ワクチンの使用が見合わせとなった。その後、先天性風しん症候群の予防に加え、風しんの発生の予防及びまん延の防止を目的に、平成七年四月に接種対象者が男女幼児へと変更されるとともに、時限措置として中学生男女も対象に接種が行われた。しかしながら、当該時限措置対象者の接種率が低かったことから、平成十三年十一月から平成十五年九月にかけて経過措置として再度の接種の機会が設けられた。さらに、平成十八年四月から、麻しん風しん混合(MR)ワクチンの使用を開始し、同年六月からは、麻しん対策の変更を踏まえ、それまでの一回の接種から二回の接種へと必要な接種回数を変更するとともに、平成二十年四月から平成二十五年三月にかけて、中学一年生及び高校三年生相当の年齢の者を対象に二回目の接種の機会が設けられた。
風しんの発生動向調査については、昭和五十七年から平成十九年までは全国約二千四百から三千か所の小児科の医療機関からの定点報告であったが、風しんの報告数の減少に伴い、平成二十年一月に全ての医師に診断した患者の報告を求める全数報告疾患に位置付けられた。
こうした取組の結果、平成十六年における推計約三万九千人の患者の発生以降、患者報告数は着実に減少し、大規模な流行は見られていなかったところである。
しかし、平成二十四年から、関東地方、関西地方等の都市部において、二十代から四十代の成人男性を中心に患者数が増加し、平成二十五年には一万四千人を超える患者及び三十二人の先天性風しん症候群の児の出生が報告された。
平成二十四年から平成二十五年にかけての風しんの流行は、かつての流行と異なり、患者の多くは主に定期の予防接種の機会がなかった成人男性又は定期の予防接種の接種率が低かった成人男女であり、患者報告はこれらの風しんに対する免疫を持たない者(以下「感受性者」という。)が多く生活する大都市を中心に見られた。患者の中心が生産年齢層及び子育て世代であることから、職場等での感染事例が相次ぎ、先天性風しん症候群が増加する等、社会的に与える影響が大きかった。また、風しん含有ワクチンの接種者数が急増したことで地域によってはワクチンの需給状況が不安定になったことや、風しん抗体価の検査に用いるガチョウ血球が不足し検査の実施が一時的に困難になったこと等、予防接種及び検査の実施に関しても混乱が生じた。
海外では、世界保健機関によると、平成二十四年時点で風しんの予防接種を公的に実施している国は百三十二の国であり、風しん患者数は不明であるが、毎年約十一万人の先天性風しん症候群の児が出生しているとされている。我が国が属する西太平洋地域では、いまだ風しんの予防接種を公的に実施していない国が存在し、周期的に大規模な流行が見られている。一方で、アメリカ大陸では平成二十一年を最後に土着株による風しんの流行は見られておらず、同地域では排除を達成したと考えられている。現在、風しんの排除に関し、西太平洋地域では、排除の明確な目標を掲げていないものの、平成二十四年に開催された世界保健機関の加盟国が会する世界保健総会において、平成三十二年までに世界六地域のうち五地域において風しんの排除を達成することを目標に掲げた。
本指針は、このような国内及び国際的な状況を踏まえ、風しんの発生の予防及びまん延の防止並びに先天性風しん症候群の発生の予防及び先天性風しん症候群の児への適切な医療等の提供等を目的に、国、地方公共団体、医療関係者、教育関係者、保育関係者、事業者等が連携して取り組むべき施策の方向性を示したものである。
本指針については、風しんの発生動向、風しんの予防等に関する科学的知見、本指針の進捗状況に関する評価等を勘案して、少なくとも五年ごとに再検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更していくものである。
第一 目標
早期に先天性風しん症候群の発生をなくすとともに、平成三十二年度までに風しんの排除を達成することを目標とする。なお、本指針における風しんの排除の定義は、麻しんの排除の定義に準じて、「適切なサーベイランス制度の下、土着株による感染が一年以上確認されないこと」とする。
第二 原因の究明
一 基本的考え方
国並びに都道府県、保健所を設置する市及び特別区(以下「都道府県等」という。)においては、風しんについての情報の収集及び分析を進めていくとともに、発生原因の特定のため、正確かつ迅速な発生動向の調査を行っていくことが重要である。
二 風しん及び先天性風しん症候群の発生動向の調査及び対策の実施
風しん及び先天性風しん症候群の発生動向の調査については、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号。以下「法」という。)第十二条に基づく医師の届出により、国内で発生した全ての症例を把握するものとする。
三 風しん及び先天性風しん症候群の届出
風しんを診断した医師の届出については、法第十二条に基づき、診断後七日以内に行うこととされているが、迅速な行政対応を行う必要性に鑑み、可能な限り二十四時間以内に届出を行うことを求めるものとする。また、臨床での診断をもって届出を求めるが、可能な限り検査診断を実施した上で、その結果についても報告を求めるものとする。さらに、地域で風しんの流行がない状態において、風しん患者が集団発生した場合等の感染対策の必要性に応じて、都道府県等が設置する地方衛生研究所でのウイルス遺伝子検査等の実施のための検体の提出を求めるものとする。
なお、我が国における風しん患者の発生数が一定数以下になった場合には、類似の症状の疾病から風しんを正確に見分けるためには、病原体を確認することが不可欠であることから、原則として全例にウイルス遺伝子検査の実施を求めるものとする。しかしながら、その場合においても、迅速な行政対応を行うため、臨床診断をした時点でまず臨床診断例として届出を行うとともに、血清IgM抗体検査等の血清抗体価の測定の実施と、都道府県等が設置する地方衛生研究所でのウイルス遺伝子検査等の実施のための検体の提出を求めるものとする。臨床症状とこれらの検査結果を総合的に勘案した結果、風しんではないと診断された場合は、届出を取り下げることを求めることとする。また、都道府県は、届出が取り下げられた場合は、その旨を記録し、国に報告するものとする。
また、先天性風しん症候群については、風しん発生地域において、妊娠初期の感染が疑われる妊婦又は妊娠初期検査で風しん抗体陰性又は低抗体価の妊婦から出生した新生児に対し、先天性風しん症候群を念頭に置き注意深い対応を行うとともに、可能な限り早期に診断する必要がある。このため、国は、国立感染症研究所において、風しん及び先天性風しん症候群の届出の手順等を示した手引きの作成を行うものとする。
四 日本医師会との協力
国は、日本医師会を通じて、医師に対し、風しんを臨床で診断した場合や先天性風しん症候群を診断した場合には、三に即した対応を行うよう依頼するものとする。また、風しんの診断例の届出に際しては、患者の予防接種歴を、先天性風しん症候群の診断例の届出に際しては、母親の予防接種歴、罹患歴及び年齢をあわせて報告するよう依頼するものとする。
五 風しん及び先天性風しん症候群の発生時の対応
都道府県等は、地域で風しんの流行がない状態において、風しん患者が同一施設で集団発生した場合等に法第十五条に規定する感染経路の把握等の調査を迅速に実施するよう努めることが必要であり、普段から医療機関等の関係機関とのネットワーク構築に努めるものとする。このため、国は、国立感染症研究所において、当該調査の実務上の手順等を示した手引きの作成や職員の派遣要請に応えられる人材の養成を行うとともに、医療機関内で風しんが発生した場合の対応の手順等を示した手引きを作成するものとする。
国及び地方公共団体は、先天性風しん症候群の患者が発生した場合に医療関係者が保護者に対し適切な対応ができるよう必要な情報提供を行う。先天性風しん症候群の児から一定期間ウイルスの排出が認められることから、地方衛生研究所及び国立感染症研究所は、必要に応じてPCR検査により先天性風しん症候群と診断された児のウイルス排出の有無について評価を行う。
六 ウイルス遺伝子検査等の実施
都道府県等は、医師から検体が提出された場合は、都道府県等が設置する地方衛生研究所において、可能な限りウイルス遺伝子検査等を実施するとともに、その結果の記録を保存することとする。検査の結果、風しんウイルスが検出された場合は、可能な限り、地方衛生研究所において風しんウイルスの遺伝子配列の解析を実施する、又は国立感染症研究所に検体を送付し、同研究所が遺伝子配列の解析を実施することとする。地方衛生研究所が遺伝子配列の解析を実施した場合は、可能な限り、その結果を速やかに国立感染症研究所に報告する、又は一般に公表することとする。国立感染症研究所は、全国で解析されたウイルスの遺伝子情報を収集するとともに、適切に管理した上で、流行状況の把握や感染伝播の制御等に役立てることとする。
第三 発生の予防及びまん延の防止
一 平成二十四年から平成二十五年にかけての流行の原因分析
流行の原因となった風しんウイルスの遺伝子型の解析結果によると、平成二十三年以前と平成二十四年以降では、遺伝子配列の系統が異なることから、渡航者等を通じ海外の流行地域から風しんウイルスが我が国に流入したことが流行のきっかけとなったと考えられる。平成二十五年に、二十代から四十代の年齢層の男性を中心に風しんが流行した主な原因は、国が実施する感染症流行予測調査の結果において、多くの世代では九割以上が抗体を保有しているものの、当該年齢層の男性における抗体保有率が八割程度となっており、当該年齢層に、幼少期に自然感染しておらず、かつ、風しんの定期の予防接種を受ける機会がなかった者や接種を受けていなかった者が一定程度いたためであると考えられる。また、多くの風しん患者が大都市を中心に報告されており、一定の感受性者が地域に蓄積することで感染の循環が生じたと考えられる。
二 基本的考え方
感染力が強い風しんの対策として最も有効なのは、その発生の予防である。また、感染者は発症前からウイルスを排出し、無症状や軽症の者も一定程度存在することから、発生の予防に最も有効な対策は、予防接種により感受性者が風しんへの免疫を獲得することである。そのためには、風しんの罹患歴(過去に検査診断で確定したものに限る。以下同じ。)又は予防接種歴(母子健康手帳や予防接種済証等の記録に基づくものに限る。以下同じ。)を確認できない者に対して、幅広く風しんの性質等を伝え、風しんの予防接種を早期に受けるよう働きかけることが必要である。一方で、風しんに未罹患と認識している者においても、一定の割合で風しんの免疫を保有していると考えられており、国民の八割から九割程度が既に抗体を保有している状況を踏まえると、必要があると認められる場合には積極的に抗体検査を実施することで、より効果的かつ効率的な予防接種の実施が期待される。
また、本指針の目標をより効果的かつ効率的に達成するには、特に平成二十五年の流行時に伝播が多く見られた職場等における感染及び予防対策や先天性風しん症候群の予防の観点から妊娠を希望する女性等に焦点を当てた予防対策が重要になると考えられる。
なお、風しん含有ワクチンの一回の接種による抗体の獲得率は約九十五パーセント、二回の接種による抗体の獲得率は約九十九パーセントとされていることから、妊娠を希望する女性等においては、二回の接種を完了することで、より確実な予防が可能となる。また、風しんに対する抗体を保有していない者は、少なくとも一回の接種を受ける必要があると考えられる。
三 予防接種法に基づく予防接種の一層の充実
1 国は、定期の予防接種を生後十二月から生後二十四月に至るまでの間にある者及び小学校就学の始期に達する日の一年前の日から当該始期に達する日の前日までの間にある五歳以上七歳未満の者に対し行うものとし、それぞれの接種率が九十五パーセント以上となることを目標とする。また、少しでも早い免疫の獲得を図るとともに、複数回の接種勧奨を行う時間的な余裕を残すため、定期の予防接種の対象者となってからの初めの三月の間に、特に積極的な勧奨を行うものとする。
2 国は、定期の予防接種の実施主体である市町村(特別区を含む。以下同じ。)に対し、確実に予防接種が行われるよう、積極的に働きかけていく必要がある。具体的には、市町村に対し、母子保健法(昭和四十年法律第百四十一号)第十二条第一項第一号に規定する健康診査及び学校保健安全法(昭和三十三年法律第五十六号)第十一条に規定する健康診断(以下「就学時健診」という。)の機会を利用して、当該健康診査及び就学時健診の受診者の罹患歴及び予防接種歴を確認し、未罹患であり、かつ、年齢に応じて必要とされる風しんの定期の予防接種を受けていない者に接種勧奨を行うよう依頼するものとする。また、定期の予防接種の受け忘れ等がないよう、定期の予防接種の対象者について、未接種の者を把握し、再度の接種勧奨を行うよう依頼するものとする。
3 厚生労働省は、文部科学省に協力を求め、就学時健診の機会を利用し、定期の予防接種の対象者の罹患歴及び予防接種歴を確認し、未罹患であり、かつ、風しん含有ワクチンの予防接種を二回接種していない者に接種勧奨を行うものとする。また、当該接種勧奨後に、定期の予防接種を受けたかどうかの確認を行い、必要があれば、再度の接種勧奨を行うものとする。
4 国は、右記以外にも、定期の予防接種を受けやすい環境作りを徹底しなくてはならない。そのため、日本医師会並びに日本小児科学会、日本小児科医会及び日本小児保健協会等に対し、定期の予防接種が円滑に行われるように、協力を求めるものとする。
四 予防接種法に基づかない予防接種の推奨
1 妊娠を希望する女性は、将来、妊娠中に風しんに罹患する可能性がある。また、妊婦が抗体を保有しない場合、妊婦と接する機会が多いその家族等が風しんを発症すると、妊婦の感染等の問題を引き起こす可能性がある。このため、本指針の目標を達成するためには、妊娠を希望する女性及び抗体を保有しない妊婦の家族等のうち、罹患歴又は予防接種歴が明らかでない者に対し、風しんの抗体検査や予防接種の推奨を行う必要がある。
2 昭和三十七年度から平成元年度に出生した男性及び昭和五十四年度から平成元年度に出生した女性は、幼少期に自然感染しておらず、かつ、風しんの定期の予防接種を受ける機会がなかった者や接種を受けていなかった者の割合が他の年齢層に比べて高いことから、風しんの罹患者と接することで感染する可能性が比較的高い。このため、本指針の目標を達成するためには、昭和三十七年度から平成元年度に出生した男性及び昭和五十四年度から平成元年度に出生した女性のうち、罹患歴又は予防接種歴が明らかでない者に対し、風しんの抗体検査や予防接種の推奨を行う必要がある。
3 医療関係者、児童福祉施設等の職員、学校等(幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学、高等専門学校、専修学校及び各種学校をいう。以下同じ。)の職員等は、幼児、児童、体力の弱い者等の風しんに罹患すると重症化しやすい者や妊婦と接する機会が多いことから、本人が風しんを発症すると、集団感染や感染者の重症化、妊婦の感染等の問題を引き起こす可能性がある。このため、本指針の目標を達成するためには、医療関係者、児童福祉施設等の職員、学校等の職員等のうち、罹患歴又は予防接種歴が明らかでない者に対し、風しんの抗体検査や予防接種の推奨を行う必要がある。
4 海外に渡航する者は、海外の風しん流行地域で罹患者と接する機会があることから、本人が風しんに感染すると、我が国に風しんウイルスを流入させる可能性がある。このため、本指針の目標を達成するためには、海外に渡航する者等のうち、罹患歴又は予防接種歴が明らかでない者に対し、風しんの抗体検査や予防接種の推奨を行う必要がある。
5 厚生労働省は、先天性風しん症候群の発生の防止を目的として、日本医師会及び日本産科婦人科学会等に協力を求め、受診の機会等を利用して、妊娠を希望する女性及び抗体を保有しない妊婦の家族等の罹患歴及び予防接種歴を確認し、いずれも確認できない者に対して、風しんの抗体検査や予防接種の推奨を行うものとする。また、昭和六十二年度から平成元年度に出生した女性については、風しんに対する抗体を保有していない割合が他の年齢層に比べ特に高いことから、積極的に風しんの抗体検査や予防接種を推奨するものとする。さらに、妊娠中の妊婦健康診査において風しんの抗体検査の結果が陰性又は低抗体価と確認された者に対して、産じょく早期の風しんの予防接種を推奨するものとする。
6 厚生労働省は、今後の大規模な流行を防止する観点から、関係省庁及び事業者団体に協力を求め、雇入れ時等の様々な機会を利用して、主として、業務により海外に渡航する者、昭和三十七年度から平成元年度に出生した男性の従業員及び昭和五十四年度から平成元年度に出生した女性の従業員等が罹患歴及び予防接種歴を確認するようにするとともに、いずれも確認できない者に対して、風しんの抗体検査や予防接種を推奨するものとする。
7 厚生労働省は、日本医師会等の関係団体に協力を求め、医療関係者の罹患歴及び予防接種歴を確認し、いずれも確認できない者に対して、風しんの抗体検査や予防接種を推奨するものとする。
8 厚生労働省は、児童福祉施設等において行われる労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第六十六条に規定する健康診断の機会等を利用して、当該施設等の職員の罹患歴及び予防接種歴を確認し、いずれも確認できない者に対して、風しんの抗体検査や予防接種を推奨するものとする。
9 厚生労働省は、文部科学省に協力を求め、母子保健法第十二条第一項第二号に規定する健康診査並びに学校保健安全法第十三条第一項に規定する児童生徒等の健康診断及び同法第十五条第一項に規定する職員の健康診断等の機会を利用して、学校の児童生徒等や学校等の職員の罹患歴及び予防接種歴を確認し、いずれも確認できない者に対して、風しんの抗体検査や予防接種を推奨し、学校の管理者に対し、推奨を依頼するものとする。また、医療・福祉・教育に係る大学及び専修学校の学生及び生徒に対し、幼児、児童、体力の弱い者等の風しんに罹患すると重症化しやすい者や妊婦と接する機会が多いことを説明し、当該学生及び生徒の罹患歴及び予防接種歴を確認し、いずれも確認できない者に対して、風しんの抗体検査や予防接種を推奨するものとする。
五 その他必要な措置
1 厚生労働省は、関係機関と連携し、疾病としての風しんの特性、予防接種の重要性並びに副反応を防止するために注意すべき事項及びワクチンを使用する予防接種という行為上避けられない副反応、特に妊娠中の接種による胎児への影響等の情報(以下「風しんに関する情報」という。)を整理し、国民に対する積極的な提供を行うものとする。また、情報提供に当たっては、リーフレット等の作成や報道機関と連携した広報等を積極的に行う必要がある。
2 厚生労働省は、保育所等の児童福祉施設等や職業訓練施設等の管理者に対し、入所及び入学の機会を利用して、保育所等の児童福祉施設等において集団生活を行う者及び職業訓練施設等における訓練生の罹患歴及び予防接種歴を確認し、いずれも確認できない場合、風しんに関する情報の提供を行うよう依頼するものとする。
3 厚生労働省は、文部科学省に協力を求め、学校の管理者に対し、母子保健法第十二条第一項第二号に規定する健康診査並びに学校保健安全法第十三条第一項に規定する児童生徒等の健康診断の機会を利用して、学校の児童生徒等の罹患歴及び予防接種歴を確認し、いずれも確認できない場合、風しんに関する情報の提供を行うよう依頼するものとする。
4 厚生労働省は、日本医師会並びに日本小児科学会、日本小児科医会及び日本小児保健協会等の学会等に対し、初診の患者の罹患歴及び予防接種歴を確認し、いずれも確認できない場合、風しんに関する情報の提供を行うよう依頼するものとする。
5 厚生労働省は、関係省庁及び事業者団体に協力を求め、事業者等に対し、風しんに関する情報の提供等を依頼するものとする。また、雇入れ時等の様々な機会を利用して、主として、業務により海外に渡航する者、昭和三十七年度から平成元年度に出生した男性の従業員等及び昭和五十四年度から平成元年度に出生した女性の従業員等の罹患歴及び予防接種歴のいずれも確認できない者に対する風しんの抗体検査や予防接種を受けやすい環境の整備及び風しんに罹患した際の適切な休業等の対応等の措置を依頼するものとする。また、国立感染症研究所において、関係団体と協力の上で、当該措置に関する職場における風しんの感染及び予防対策の手引きを作成し、必要となる具体的な対策について示すものとする。
6 厚生労働省は、本省、国立感染症研究所及び検疫所のホームページ等を通じ、国内外の風しんの発生状況、海外で風しんを発症した場合の影響及び風しんに関する情報の提供を行うとともに、外務省に協力を求め、海外へ渡航する者に、これらの情報提供を行うよう依頼するものとする。また、国土交通省に協力を求め、旅行会社等に対し、海外へ渡航する者に、国内外の風しんの発生状況や風しんに関する情報の提供を行うよう依頼するとともに、文部科学省に協力を求め、学校で海外へ修学旅行等をする際に、これらの情報提供を行うよう依頼するものとする。
7 厚生労働省は、定期の予防接種を積極的に勧奨するとともに、地方公共団体や日本医師会に対し、抗体検査や予防接種を実施できる医療機関に関する情報提供を行うよう協力を依頼するものとする。また、予防接種の際の接種事故や副反応を徹底して避けるため、地方公共団体や医療機関等に対し、安全対策を十分行うよう協力を依頼するものとする。
8 国は、平成二十五年の風しん流行時に風しん含有ワクチンや検査キットの確保が困難となった事例に鑑み、定期の予防接種に必要となる風しん含有ワクチン及び試薬類の生産について、製造販売業者と引き続き連携を図るものとする。また、ワクチンの流通についても、日本医師会、卸売販売業者及び地方公共団体の間の連携を促進するものとする。なお、風しんの予防接種に用いるワクチンは、原則として、麻しん風しん混合(MR)ワクチンを用いるものとする。
第四 医療等の提供
一 基本的考え方
先天性風しん症候群のような出生児が障害を有するおそれのある感染症については、妊婦への情報提供が特に重要である。このため、国は、風しんの患者を適切に診断できるよう、医師に必要な情報提供を行うとともに、国民にも当該疾病に感染した際の初期症状や早期にとるべき対応等について周知していくことが望ましい。
二 医療関係者に対する普及啓発
国は、風しんの患者を医師が適切に診断できるよう、医師に対し、風しんの流行状況等について積極的に情報提供するものとし、特に流行が懸念される地域においては、日本医師会等の関係団体と連携し、医療関係者に対して注意喚起を行う必要がある。さらに、風しんが小児特有の疾患でなくなったことに鑑み、小児科医のみではなく、全ての医師が風しん患者を診断し、療養等の適切な対応を講じられるよう、積極的に普及啓発を行うことが重要である。
三 先天性風しん症候群の児への医療等の提供
国は、日本医師会、日本産科婦人科学会、日本耳鼻咽喉科学会、日本眼科学会、日本小児科学会、日本小児科医会及び日本小児保健協会等の学会等に対し、先天性風しん症候群と診断された児の症状に応じ、適切な医療を受けることができるよう、専門医療機関の紹介等の対応を依頼するものとする。また、地方公共団体に対して、先天性風しん症候群と診断された児に対し必要に応じ行われるウイルス排出の有無の評価に基づき、その児に対する医療及び保育等が適切に行われるよう、必要な情報提供を行うものとする。さらに、先天性風しん症候群と診断された児が、症状に応じた支援制度を利用できるよう、積極的な情報提供及び制度のより適切な運用を依頼するものとする。
第五 研究開発の推進
一 基本的考え方
風しんの特性に応じた発生の予防及びまん延の防止のための対策を実施し、良質かつ適切な医療を提供するためには、風しんに関する最新の知見を集積し、ワクチン、治療薬等の研究開発を促進していくことが重要である。また、風しんの定期の予防接種を円滑に実施するため、定期の予防接種歴の確認を容易にするシステムの整備を推進していく必要がある。
二 臨床における研究開発の推進
より免疫獲得の効果が高く、かつ、より副反応の少ないワクチンを開発することは、国民の予防接種に対する信頼を確保するために最も重要なことである。現行の風しん含有ワクチンは効果及び安全性の高いワクチンの一つであるが、国は、今後の使用状況等を考慮し、必要に応じて研究開発を推進していくものとし、その際には、迅速な研究成果の反映のため、当該研究の成果を的確に評価する体制を整備するとともに、国民や医療関係者に対して、情報公開を積極的に行うことが重要である。
第六 国際的な連携
一 基本的考え方
国は、世界保健機関をはじめ、その他の国際機関との連携を強化し、情報交換等を積極的に行うことにより、世界的な風しんの発生動向の把握、風しんの排除の達成国の施策の研究等に努め、我が国の風しん対策の充実を図っていくことが重要である。
二 国際機関で定める目標の達成
世界保健機関においては、二の予防接種において、それぞれの接種率が九十五パーセント以上となることの達成を目標に掲げているほか、平成二十四年に開催された世界保健総会では、平成三十二年までに世界六地域のうち五地域において風しんの排除を達成することを目標に掲げ、各国に対策の実施を求めている。我が国も、本指針に基づき風しん対策の充実を図るとともに、我が国が所属する西太平洋地域において風しんの排除の達成が目標に掲げられた際には、その目標の達成に向けても取り組むものとする。また、これらの取組により、国内で感染し、海外で発症する患者の発生を予防することにも寄与する。
三 国際機関への協力
国際機関と協力し、風しんの流行国の風しん対策を推進することは、国際保健水準の向上に貢献するのみならず、海外で感染し、国内で発症する患者の発生を予防することにも寄与する。そのため、国は、世界保健機関等と連携しながら、国際的な風しん対策の取組に積極的に関与する必要がある。
第七 評価及び推進体制と普及啓発の充実
一 基本的考え方
本指針の目標を達成するためには、本指針に基づく施策が有効に機能しているかの確認を行う評価体制の確立が不可欠である。国は、定期の予防接種の実施主体である市町村と連携し、予防接種の実施状況についての情報収集を行い、その情報に基づき関係機関へ協力を要請し、当該施策の進捗状況によっては、本指針に定める施策の見直しも含めた積極的な対応を講じる必要がある。また、市町村は、予防接種台帳のデータ管理の在り方について、個人情報保護の観点を考慮しつつ、電子媒体での管理を積極的に検討する。
二 風しん対策推進会議の設置
国は、感染症の専門家、医療関係者、保護者、地方公共団体の担当者、ワクチン製造業者、学校関係者及び事業者団体の関係者からなる「風しん対策推進会議」を設置するものとする。同会議は、対策をより効果的かつ効率的に実施するため、「麻しん対策推進会議」と合同で開催し、毎年度、本指針に定める施策の実施状況に関する評価を行うとともに、その結果を公表し、必要に応じて当該施策の見直しについて提言を行うこととする。
三 都道府県における風しん対策の会議
1 都道府県は、感染症の専門家、医療関係者、保護者、市町村の担当者、学校関係者及び事業者団体の関係者等と協働して、風しん対策の会議を設置し、関係機関の協力を得ながら、定期的に風しんの発生動向、定期の予防接種の接種率及び副反応の発生事例等を把握し、地域における施策の進捗状況を評価するものとする。なお、同会議は麻しん対策の会議と合同で開催することも可能であるものとする。また、国は、国立感染症研究所において、同会議の活動内容や役割等を示した手引きの作成を行うものとする。
2 厚生労働省は、風しん対策の会議が予防接種の実施状況を評価するため、文部科学省に対し、学校が把握する幼児及び児童の予防接種の接種率に関する情報を風しん対策の会議に提供するよう協力を依頼するものとする。
四 関係機関との連携
1 厚生労働省は、迅速に風しんの定期の予防接種の接種率を把握するため、都道府県知事に対し、情報提供を依頼するものとする。また、学校保健安全法第二十条に基づく学校の臨時休業の情報を随時把握するため、文部科学省に対し、情報提供を依頼するものとする。
2 厚生労働省は、予防接種により副反応が生じた際に行われている報告体制を充実させ、重篤な副反応の事例は、速やかに国及び風しん対策の会議等に報告される仕組みを構築するものとする。
五 普及啓発の充実
風しん対策に関する普及啓発については、風しん及び先天性風しん症候群に関する正しい知識に加え、医療機関受診の際の検査や積極的疫学調査への協力の必要性等を周知することが重要である。厚生労働省は、文部科学省や報道機関等の関係機関との連携を強化し、国民に対し、風しん及び先天性風しん症候群とその予防に関する適切な情報提供を行うよう努めるものとする。