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○プレス機械の安全装置管理指針の改正について
(平成27年9月30日)
(基発0930第11号)
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
(公印省略)
プレス機械の安全装置の適正な管理については、平成5年7月9日付け基発第446号の2「プレス機械の安全装置管理指針について」(以下「446号の2通達」という。)により推進してきたところであるが、近年のプレス機械に係る法令改正等の状況を踏まえ、今般、別添のとおり「プレス機械の安全装置管理指針」を改正した。
ついては、関係事業者に対し、様々な機会を通じて広く本指針の周知徹底を図り、プレス機械の安全装置の適正な管理の徹底を図られたい。
また、関係団体に対しては、別紙1のとおり本指針の周知等について協力を要請したので了知されたい。
なお、446号の2通達は、本通達の発出をもって廃止する。
ただし、平成23年1月12日において、現に労働安全衛生法第44条の2第1項又は同法第44条の3第2項の規定による型式検定に合格している型式のプレスの安全装置(当該型式に係る型式検定合格証の有効期間内に製造し、又は輸入するものに限る。)の作業開始前点検及び定期検査について、本指針による作業開始前点検及び定期検査を実施することが困難な場合は、従前の446号の2通達における指針「第4 安全装置の作業開始前点検及び定期検査」によることができる。
[別添]
プレス機械の安全装置管理指針
第1 趣旨
この指針は、プレス機械の安全対策を進めるために、安全囲いや安全装置等の適正な選択、使用並びに作業開始前点検及び定期検査の実施に関する目安を定めたものである。
第2 安全対策の進め方
プレス災害を防止するため、次の①から⑦の手順で保護方策を検討する。安全装置の取付けの前に行うべき措置があることに留意すること。
①労働安全衛生規則第131条第1項本文の安全囲いの設置等により身体の一部が危険限界に入らない「ノー・ハンド・イン・ダイ」の措置を検討する。
②プレス機械の側面や後面についても身体の一部が危険限界に入らないよう囲い等の措置を講じること。
③自動プレスにあっては、プレス作業者等を危険限界に立ち入らせない等の措置を検討する。
④「ハンド・イン・ダイ」作業の場合は、危険防止機構を備える安全プレス(労働安全衛生規則第131条第1項ただし書)の使用を検討する。
⑤①から④の措置が困難な場合には、労働安全衛生規則第131条第2項の安全装置の取付け等による災害防止措置を講じること。
⑥それぞれの安全対策については、切替スイッチが切替えられたいかなる状態においても安全が確保されていなければならない。
⑦タレットパンチプレス等のストローク端を有するプレスにおいては、労働安全衛生規則第108条の2に基づきテーブルのストローク端が労働者に危険を及ぼさないよう柵などの措置を講ずること。
なお、機械的摩擦を利用したブレーキ(制動機構)が装着されていない機械式サーボプレスについては、サーボシステムの機能に故障があった場合にスライドが停止しないことから、安全囲い等の「ノー・ハンド・イン・ダイ」の措置を講じること。
第3 安全装置等の選択
安全装置の選定に当たっては、次に示すところにより、当該プレス機械に適応する安全装置の型式を選択し、「安全装置の検定合格品一覧」又は安全装置に表示される「検定合格標章」により毎分ストローク数、ストローク長さ、停止時間、防護高さ等を検討の上、適切な安全装置を選択すること。
また、自動プレスや大型プレスなどにあっては、作業者を危険限界に立ち入らせない等の措置として、マットスイッチ、エリアセンサー、レーザースキャナー等の設置を講じること。
1 安全装置の選択
安全装置は、次に掲げる操作方法及び急停止機構の有無に応じて、それぞれに掲げる型式の順に適切なものを選択すること。
(1) 両手操作の場合
① 急停止機構を備えないプレス機械
イ インターロックガード式(停止確認型)
ロ 手引き式
② 急停止機構を備えるプレス機械
イ インターロックガード式
ロ 安全一行程式
ハ 光線式
i ブランキング機構付き光線式(プレス機械又はシャーの安全装置構造規格第20条の2の安全装置をいう。以下、同じ。)の場合
(i) 固定ブランキング式
(ii) 複数光軸遮断式
ニ 制御機能付き光線式
ホ プレスブレーキ用レーザー式
ヘ 手引き式
(2) 足踏み操作又は片手操作の場合
足踏み操作又は片手操作が必要か確認し、足踏み操作又は片手操作を要しない場合には、両手操作に変更することを検討すること。
① 急停止機構を備えないプレス機械
イ インターロックガード式
ロ 手引き式
② 急停止機構を備えるプレス機械
イ インターロックガード式
ロ 光線式
ハ 制御機能付き光線式
ニ プレスブレーキ用レーザー式
ホ 手引き式
2 安全装置の選択に当たっての留意事項
安全装置は、プレス機械の急停止機構の有無に応じ、型式ごとに次の点に留意して、適切なものを選択すること。
① 急停止機構を備えないプレス機械の場合
イ インターロックガード式
(イ) プレス作動中は開かないこと。
(ロ) 足踏み操作式による起動についても有効である。
(ハ) プレス機械のダイハイト、ストローク長さ、作業に用いる金型の大きさ(金型の前面の幅)に応じてガードの大きさ、ガードのストローク長さを選定する。
(ニ) ガードの作動方向により、下降式、上昇式、横開き式、縦開き式の別があるので、作業に適したものを選定する。
(ホ) スライドの上死点停止を確認した後にガードを開放する停止確認型のインターロックガード式は、プレス機械の故障による二度落ち防護に有効である。
ロ 手引き式
(イ) ストローク長さに応じて手を引く場合の引き量が決まることから、ストローク長さが40mm以上のプレス機械に使用することができる。
(ロ) ボルスターの奥行きの1/2以上の引き量を確保する。
(ハ) 小物製品の二次加工には適しているが、大物製品や一次加工には不向きである。
(ニ) プレス機械の故障による二度落ち防護に有効である。
ハ 足踏み操作式から両手操作式に切り換える場合の取扱い
プレス機械の起動方式を足踏み操作式のものから、両手操作式のものへ切り換える場合には、一の操作部と他の操作部の間隔が300mm以上である埋頭型の操作部を両手で同時に押さなければ起動しない起動装置または操作部の双方を片手で同時に操作できないように当該操作部に覆い等を設け、かつ操作部間が200mm以上離れているものを使用するものとする。
この場合においては、手引き式の安全装置をプレス機械に設置するものとし、両手操作式の起動装置は安全装置として取り扱わず、したがって、安全距離については考慮しなくてもよいものとする。
② 急停止機構を備えるプレス機械の場合
イ インターロックガード式
(イ) 足踏み操作式による起動についても有効である。
(ロ) プレス機械のダイハイト、ストローク長さ及び作業に用いる金型の大きさ(金型の前面の幅)に応じてガードの大きさ、ガードのストローク長さを選定する。
(ハ) ガードの作動方向により、下降式、上昇式、横開き式、縦開き式の別があるので、作業に適したものを選定する。
(ニ) プレス機械の故障による二度落ち防護に有効である。
(ホ) 早期開放型のインターロックガード式を使用する場合は、オーバーラン監視装置を具備しなければならない。
(ヘ) 開放停止型のインターロックガード式は、必要な安全距離を確保すること。
ロ 安全一行程式
(イ) 安全距離の算定を次式によって行い、作業可能な距離が得られる場合に使用することができる。
算定にあたっては、停止性能測定装置により最大停止時間(Tl+Ts)を測定し、メーカー指定値以内であることを確認し、メーカー指定値に基づき算定した安全距離以上の実測距離を確保する。
D=1.6(Tl+Ts)
D:安全距離(単位mm)
Tl:遅動時間(単位ms)
Ts:急停止時間(単位ms)
(ロ) 操作ステーションが複数あるものは、操作ステーションごとにプレス機械又はシャーの安全装置構造規格第16条、第17条及び第18条の規定を満足するものとする。
(ハ) 共同作業を行う場合等作業面がプレス機械の前後に及ぶ場合は、その両面に安全一行程式安全装置を使用する。
(ニ) プレス機械の故障による二度落ち防護には無効である。
ハ 光線式
(イ) 方式により、直射式(透過式)、ブランキング機構付き光線式(固定ブランキング式)、複数光軸遮断式(浮動(フローティング)ブランキング式)、制御機能付き光線式の別があるので、作業に適したものを選定する。
(ロ) 安全距離の算定を次式によって行い、作業可能な距離が得られる場合に使用することができる。
算定にあたっては停止性能測定装置により最大停止時間(Tl+Ts)を測定し、メーカー指定値以内であることを確認し、メーカー指定値に基づき算定した安全距離以上の実測距離を確保する。
また、連続遮光幅による追加距離を加算しなくてはならない。
D=1.6(Tl+Ts)+C
D:安全距離(単位mm)
Tl:遅動時間(単位ms)
Ts:急停止時間(単位ms)
C:追加距離(単位mm)
連続遮光幅(mm) |
追加距離C(mm) |
30以下 |
0 |
30を超え35以下 |
200以上 |
35を超え45以下 |
300以上 |
45を超え50以下 |
400以上 |
(ハ) 上下方向の防護範囲(長さ)は、機械プレスではストローク長さにダイハイトを加えた長さ以上の長さ、液圧プレスではデーライトの長さ以上の長さであって、作業者の身体の一部が最上光軸の上、又は最下光軸の下から危険限界に到達するおそれのないように余裕のある防護範囲とすること。このため、設置状況に応じ、スライドが下降する方式のものであって、スライドの下面の最上位置の高さが作業床面から1,400mm以下のときは1,400mmとする。
また、スライドの下面の最上位置の高さ(固定ガードも含める)が作業床面から1,700mmを超えるときは1,700mmとしても差し支えない。
なお、最下光軸の高さは、ボルスター同一面とする。ただし、作業者の身体の一部が最下光軸又は最上光軸から危険限界に到達するおそれのない場合はこの限りでない。
(ニ) 光軸とボルスターの前端との間に身体の一部が入り込む隙間がある場合は、当該隙間に安全囲い、光線式安全装置等を設けなければならない。光線式安全装置の光軸間隔は75mm以下の間隔とすることが適当である。
(ホ) プレス機械の故障による二度落ち防護には無効である。
i ブランキング機構付き光線式
材料の送給装置等を備えたプレスの場合や、材料を手で保持しなければならない作業を行うとき及びボルスターからはみ出るような大きな物を加工する場合で、足踏み操作のときにはブランキング機構付き光線式安全装置を用いることができる。ブランキング機構付き光線式安全装置を用いるときは、次に掲げる事項を必要とする。
① 検出を無効とするための切替はキースイッチにより1光軸ごとに設定を行うものであること。
② 検出を無効にする送給装置等に変更があったときには、再び①の設定を行わなければスライドを作動させることができない構造のものであること。
③ 検出を無効にする送給装置等が取り外されたときには、スライドの作動による危険を防止するために投光器及び受光器が必要な長さにわたり有効に作動するものであること。
(i) 固定ブランキング式
送給装置等で光軸を遮断する部分に対して光軸を固定して無効にするものである。送給装置の大きさにより、無効にする光軸数を決めて設定する。固定して無効にする部分の両側面以外の空間は固定ガードなどを設置して手などが入らないようにしなければならない。ブランキングの有効・無効は管理者がキースイッチで行わなければならない。安全距離の設定は、固定したブランキング部分の両側面に固定ガード等を設置するのでブランキング機構とは無関係で一般の光線式と同様である。
(ii) 複数光軸遮断式(浮動(フローティング)ブランキング式)
スライドの作動中に、材料が光軸の一部を遮光してしまう場合には、その部分の光軸の一部を移動して無効にする機能のことである。無効にする部分を移動することができる。プレスブレーキなどで曲げ加工をする場合に曲げられた材料が光軸の一部を遮光してしまう場合などに使われる。無効にする光軸は、材料の大きさにより決めなければならない。ブランキングの有効・無効はキースイッチで行わなければならない。
光線式安全装置については1光軸遮断検出方式に対し、隣接2光軸遮断検出方式、隣接3光軸遮断検出方式、隣接4光軸遮断検出方式等の複数光軸遮断検出方式がある。各方式は示された光軸数を遮断した時に装置の出力がブレーク(オフ)する。
したがって、1つの光線式安全装置を上記の各方式に設定切替えした場合、その設定により連続遮光幅は異なる。この様に各方式の連続遮光幅の違いにより追加距離が変わることに注意しなければならない。なお、光線式安全装置には上記方式を設定切替えできる機種と設定切替えできない一定の複数光軸遮断検出方式のみとなる機種がある。
光線式安全装置には型式検定合格標章表示銘板が貼付され、その銘板には連続遮光幅と追加距離が表示されているので、これを確認すること。
ニ 制御機能付き光線式
(イ) 制御機能付き光線式は、スライドの作動中に遮光するとスライドが停止する停止機能とスライドが停止していて一定の条件を満たした場合に遮光するとスライドが起動する機能を併せ持った光線式であるが、使用できるプレス機械には次に掲げる制限が設けられている。
①ボルスターの高さが750mm以上またはそれ以下の場合は安全囲いでその高さまで覆う。
②ボルスターの奥行きが1,000mm以下またはそれ以上の場合にはボルスターの内部を検知できる装置を設ける。
③ストローク長さが600mm以下またはそれ以上の場合には安全囲いで覆う。
④オーバーラン監視装置の設定角度が15度以下のもの。
(ロ) 光線式の防護高さや安全距離の設定はハの光線式と同様であるが、連続遮光幅は30mm以下であり、14mm以上の連続遮光幅の場合は追加距離を加算しなくてはならない。
連続遮光幅(mm) |
追加距離C(mm) |
14以下 |
0 |
14を超え20以下 |
80以上 |
20を超え30以下 |
130以上 |
(ハ) 側面や後面などの検出機構の検知範囲以外の全周囲に対して、安全囲等の防護策が必須である。
ホ プレスブレーキ用レーザー式
レーザー式は、スライドの閉じ行程の作動中に危険限界内にある身体の一部に危険を及ぼすおそれがある時にスライドの作動を停止できるものである。
(イ) レーザー光線が指先を検知した後に急停止させるので、使用できるプレスブレーキには次に掲げる制限が設けられている。
①急停止性能が良く、急停止距離が確保できるもの。
②低閉じ速度機構(毎秒10mm以下)をもつもの。
③低閉じ速度状態の時に、保持式制御機構をもつもの。
(ロ) プレスブレーキの停止性能に応じてセンサーの取付位置を調整しなくてはならない。
下降式のプレスブレーキでは、取付位置は上型に対して慣性下降値を勘案したメーカー指定値以上離れていなければならない。
ヘ 手引き式
(イ) ストローク長さに応じて手を引く場合の引き量が決まることから、ストローク長さが40mm以上のプレス機械に使用することができる。
(ロ) ボルスターの奥行きの1/2以上の引き量を確保する。
(ハ) 小物製品の二次加工には適しているが、大物製品や一次加工には不向きである。
(ニ) プレス機械の故障による二度落ち防護に有効である。
第4 安全装置の適正な使用
安全装置は、検定合格の時期と検定要件を勘案して、次に示すところにより適正に使用すること。
1 インターロックガード式
(1) 手の通過する位置をガードが防護するようにガードの位置を調整する。
(2) ガードの復帰位置を確認する。
(3) プレスとインターロックガードの作動状態を確認する。
(4) 開放停止型の場合は、安全距離を確保する。
2 両手操作式(両手起動式及び安全一行程式)
(1) 両手起動式については所要最大時間、安全一行程式については最大停止時間に応じて、それぞれ安全距離を確保する。
(2) 両手で同時(平成23年度以降の検定合格品の場合、時間差が0.5秒以下)に操作部を押したときのみスライドが作動することを確認する。
(3) 一行程ごとに両手を操作部から離さなければスライドが作動しないことを確認する。
(4) 安全一行程式については、スライドが閉じ工程中に操作部から手を離したときスライドが急停止することを確認する。
(5) 操作部の間隔は300mm以上であること。ただし、片手によらない操作を防止する措置がある場合は、200mm以上でも良い。
(6) 操作部はガードリングなどに覆われ上部からの落下物があっても起動しないこと。
(7) スライドの開き行程の作動中に無効回路を使用するときは、開き行程のときのみ無効であること。
3 光線式(制御機能付き光線式を含む。)
(1) プレス機械の最大停止時間に応じて安全距離を確保する。(平成23年度以降の検定合格品の場合は、連続遮光幅に応じた追加距離を加算する。)。
(2) プレス機械を起動させ、光線を光軸ごとに遮断したとき、スライドが停止することを確認する。また、連続遮光幅については、遮光棒を使用して作動状態を確認する。
(3) 有効・無効の切替えスイッチの状態を確認する。
(4) スライドの開き行程の作動中に光線を遮断してもスライドが急停止しない機能を使用する場合には、スライドの閉じ行程の作動中には安全装置が有効に作動し、開き行程のときのみ無効であることを確認する。
(5) 作業内容、作業姿勢等により最上光軸の上又は最下光軸の下から身体の一部が危険限界に入らないように投光器、受光器を調整する。
(6) チェック回路の作動状況を確認する。
(7) チェックボタンのある場合は、チェック回路の作動状態を確認する。
(8) ブランキングを行う場合、キースイッチを使用し、必要最小限の部分に対して行うこと。また、銘板に指定されている連続遮光幅に応じた追加距離を確保すること。
(9) 制御機能付き光線式の場合、セットアップタイマーが30秒で作動しPSDIモードがオフになること。
(10) 制御機能付き光線式の場合、設定された遮光回数(1ブレイク、2ブレイク)によりプレスが起動することを確認する。
(11) 側面や後面の安全囲いの設置状態を確認する。
4 プレスブレーキ用レーザー式
(1) プレスブレーキの慣性下降値を勘案してセンサーを設置すること。
(2) プレスブレーキのスライドの低閉じ速度を毎秒10mm以下にすることができ、かつ、当該速度でスライドを作動させるときはスライドを作動させるための操作部を操作している間のみスライドを作動させる性能を有するものであること。
(3) 専用のテストピースを使用して光軸位置、低閉じ速度切替え位置などを調整する。
5 手引き式
(1) 引き量は、作業内容に応じて調整する。
(2) 紐は、作業者ごとに作業内容に応じて調整する。
6 手払い式
(1) プレス機械のストローク長さに応じて、手払い棒の振幅が金型の前面の幅以上であることを確認する。
(2) 手を払う位置及び方向は、作業内容に応じて調整する。
(3) 当分の間、両手操作式起動装置と併用した場合のみ使用することができる。単独では使用できないこと。
第5 安全装置の作業開始前点検及び定期検査
プレス機械作業主任者の選任を要する事業場においては、プレス機械作業主任者により、プレス機械作業主任者の選任を要しない事業場においては、労働安全衛生規則第134条第1号、第2号及び第4号に掲げる事項を担当する者により作業開始前点検及び定期検査を行うこと。
1 作業開始前点検
プレス機械作業主任者等は、作業を開始する前に、安全装置に係る次の事項について点検を行い、その結果を記録し、保存すること。
(1) インターロックガード式
点検項目 |
点検事項 |
ガード板 |
取付けの確実さ損傷の有無 作動の円滑さ クラッチの掛かる位置との調整状態の異常の有無 |
操作装置 |
押しボタン及びフートスイッチ等の取付けの確実さ 損傷の有無 |
制御盤 |
外部配線、表示ランプ、電源スイッチ、切替えスイッチ等の作動の異常の有無 取付けの確実さ |
空圧機器 |
オイラー、フィルター、圧力調整弁及び電磁弁の取付けの確実さ 作動の円滑さ 損傷の有無 オイラーの油の有無 |
(2) 両手操作式(安全一行程式)
点検項目 |
点検事項 |
両手ボタン |
安全距離の適正さ 取付けの確実さ ボタン及び保護リングの損傷の有無作動の円滑さ 変形の有無 ごみ及び付着物の有無 |
本体 |
取付けの確実さ 損傷の有無 一行程一停止作動の円滑さ |
制御盤 |
外部配線、表示ランプ、電源スイッチ、切替えスイッチ等の作動の異常の有無取付けの確実さ |
空圧機器 |
オイラー、フィルター、圧力調整弁及び電磁弁の取付けの確実さ 作動の円滑さ 損傷の有無 オイラーの油の有無 |
(3) 光線式(制御機能付き光線式を含む。)
点検項目 |
点検事項 |
投光器(又は投受光器) |
取付けの確実さ 取付け位置の適正さ(安全距離及び上下位置)損傷の有無 外部配線の異常の有無 投光部の汚れの有無 感応状態の確実さ |
受光器(又は反射板) |
取付けの確実さ 取付け位置の適正さ(安全距離及び上下位置)損傷の有無 外部配線の異常の有無 受光器(又は反射板)の汚れの有無 感応状態の確実さ |
制御盤 |
外部配線、表示ランプ、電源スイッチ、切替えスイッチ等の作動の異常の有無取付けの確実さ |
開き行程作動中の無効装置等 |
作動状態の確実さ 取付けの確実さ 急停止後の再起動の有無 |
(4) プレスブレーキ用レーザー式
点検項目 |
点検事項 |
投光器(又は投受光器) |
取付けの確実さ 取付け位置の適正さ(安全距離及びメーカー指定値)損傷の有無 外部配線の異常の有無 投光部の汚れの有無 感応状態の確実さ |
受光器(又は反射板) |
取付けの確実さ 取付け位置の適正さ(安全距離及びメーカー指定値) 損傷の有無 外部配線の異常の有無 受光部(又は反射板)の汚れの有無 感応状態の確実さ |
制御盤 |
外部配線、表示ランプ、電源スイッチ、切替えスイッチ等の作動の異常の有無 取付けの確実さ |
開き行程作動中の無効装置等 |
作動状態の確実さ 取付けの確実さ 急停止後の再起動の有無 速度切替え位置の適正さ 低閉じ速度での保持式制御装置の作動の確実さ |
(5) 手引式
点検項目 |
点検事項 |
本体 |
取付けの確実さ 損傷の有無 ワイヤーの摩耗の有無 |
アーム |
取付けの確実さ ひも及びリストバンドの損傷の有無 作動の異常の有無 |
接続部分 |
取付けの確実さ 作動の円滑さ |
(6) 両手起動式
点検項目 |
点検事項 |
両手ボタン |
安全距離の適正さ 取付けの確実さ ボタン及び保護リングの損傷の有無作動の円滑さ 変形の有無 ごみ及び付着物の有無 |
本体 |
取付けの確実さ 損傷の有無 一行程一停止作動の円滑さ |
制御盤 |
外部配線、表示ランプ、電源スイッチ、切替えスイッチ等の作動の異常の有無取付けの確実さ |
空圧機器 |
オイラー、フィルター、圧力調整弁及び電磁弁の取付けの確実さ 作動の円滑さ 損傷の有無 オイラーの油の有無 |
(7) 手払い式
点検項目 |
点検事項 |
本体 |
取付けの確実さ 損傷の有無 ワイヤーの摩耗の有無 |
防護板 |
取付けの確実さ 損傷の有無 作動の異常の有無 |
接続部分 |
取付けの確実さ 作動の円滑さ |
2 定期検査
動力プレスに係る定期自主検査を実施する際、次に示す安全装置の型式別の検査項目について検査を行い、その結果を記録し、保存すること。特に、安全一行程式及び光線式のものについては、遅動時間又は最大停止時間を測定し、その測定値と安全装置に表示されている遅動時間及びプレス機械に表示される最大停止時間とをそれぞれ比較し、その測定値が表示の値を超えていないことを確認すること。
(1) インターロックガード式安全装置
分類 |
番号 |
検査項目 |
検査内容 |
検査方法 |
判定基準 |
検査結果 |
判定 |
|
1 |
インターロックガード及びその駆動部 |
1.取り付け状態を調べる。 |
簡単に取り外しできる覆い類を取り外し、外見上の異常の有無を調べる。 |
損傷又は変形がなく、かつ両側面の囲いの取り付けが確実であること。 |
|
|
2.損傷又は摩耗の有無を調べる。 |
摺動部分及び回転部分の損傷及び摩耗の有無を調べる。 |
損傷又は摩耗がないこと。 |
|
|
|||
3.異常の有無を調べる。 |
機械を運転して、ガードの開閉を行い、異常の有無を調べる。 |
ガードを閉じなければスライドが作動せず、かつスライドの作動中はガードを開くことができないこと。 |
|
|
|||
4.設置距離を調べる。(解放停止型) |
危険限界とガードの設置距離を調べる。(開放停止型) |
ガードを開けてから、身体の一部が危険限界に達するまでの間に、スライドが停止すること。 |
|
|
|||
機械本体 |
1 |
ガード本体 |
外表面の異常の有無を調べる。 |
目視 |
き裂、損傷、変形等がないこと。 |
|
|
2 |
各部ボルトおよびナット |
本体各部・取付ボルト等 |
スパナ ドライバー |
適正に締め付けられていること。 |
|
|
|
3 |
ガード板 |
1.外表面および取付け状態を調べる。 |
目視スパナ |
き裂損傷等がないこと円滑に作業すること。 |
|
|
|
2.作動状態を数回調べる。 |
|||||||
4 |
緩衝部分 |
各部の作動状態を調べる。 |
作動目視 |
作業時に十分な効果があること。 |
|
|
|
制御および電気系統 |
1 |
制御ボックス |
外表面・取付け状態を調べる。 |
目視スパナ |
損傷、ガタ、ゆるみのないこと。 |
|
|
2 |
表示ランプ |
ランプの損傷・作動状態を調べる。 |
目視 |
正常な状態であること。 |
|
|
|
3 |
切替えキーススイッチ |
キーススイッチの異常の有無を調べる。各切替え位置での作動状態を調べる。 |
作動 |
ガタまたはセリがないこと。 |
|
|
|
各切替位置で正しい動作をすること。 |
|
|
|||||
4 |
電源スイッチ |
異常の有無を調べる。 |
作動 |
確実に入・切されること。 |
|
|
|
5 |
出力リレーおよび各リレー |
作動状態、劣化状態を調べる。 |
作動目視 |
接点、コイルに異常のないこと。 |
|
|
|
6 |
ヒューズおよびヒューズホルダー |
劣化状態、取付け状態を調べる。 |
作動 |
メーカーの指定する定格であること。 |
|
|
|
7 |
トランスおよび内部配線 |
損傷、電圧の測定 |
目視テスター |
メーカーの指定する定格であること。 |
|
|
|
8 |
操作スイッチ |
取付け状態、作動状態を調べる。 |
目視作動 |
接触不良、破損等のないこと。 |
|
|
|
9 |
リミットスイッチ |
取付け状態、作動状態を調べる。 |
目視 |
各リミットスイッチが確実に取り付けられており、正常であること。 |
|
|
|
10 |
回転カムスイッチ |
カムローラーの接触状態を調べる。 |
目視 |
正常な状態であること。 |
|
|
|
11 |
外部配線 |
外見上の異常の有無を調べる。 |
目視 |
劣化または損傷がないこと。 |
|
|
|
12 |
絶縁抵抗 |
絶縁抵抗を調べる。 |
メガー |
5MΩ以上であること。 |
|
|
|
空圧系統 |
1 |
電磁弁 |
作動状態を数回調べる。 |
作動 |
外観および給排気の異常がないこと。 |
|
|
2 |
圧力調整弁および圧力計 |
圧力変化を調べる。 |
圧力計 |
メーカー指定の圧力にて使用すること。 |
|
|
|
3 |
オイラー |
外見および油量、滴下量を調べる。 |
作動 |
正常な状態であること。 |
|
|
|
4 |
フィルタ |
異常の有無を調べる。 |
目視 |
損傷がなく機能が確実なこと。 |
|
|
|
5 |
操作シリンダー |
外見の異常、作動状態を調べる。 |
目視 |
正常な状態であること。 |
|
|
|
6 |
各部の連結部分 |
異常の有無、エアもれのないこと。 |
作動 |
ガタ・損傷等がないこと。 |
|
|
|
7 |
エアライン |
エアもれ等のないこと。 |
作動 |
正常な状態であること。 |
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その他 |
1 |
チェック回路 |
作動状態を数回調べる。 |
作動 |
円滑に作動すること。 |
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2 |
リセットボタン |
作動状態を数回調べる。 |
作動 |
円滑に作動すること。 |
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3 |
オーバーラン作動試験 |
作動状態を数回調べる。 |
作動 |
汚れや破損がないこと。 |
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4 |
仕様銘板 |
汚れ、破損 |
目視 |
汚れや破損がないこと。 |
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