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○乳に含まれるアフラトキシンM1の試験法について

(平成27年7月23日)

(食安発0723第5号)

(各都道府県知事・各保健所設置市市長・各特別区区長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)

(公印省略)

乳に含まれるアフラトキシンM1については、「乳に含まれるアフラトキシンM1の取扱いについて」(平成27年7月23日付け食安発0723第1号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)により通知したところである。

ついては、上記通知中2 試験方法は、別添のとおりとするので遺漏のないように取り扱われたい。

[別添]

乳に含まれるアフラトキシンM1の試験法について

乳中のアフラトキシンM1(以下「AFM1」という。)の検査は、以下のⅠに示す試験法により実施することとし、また、スクリーニングのための分析法をⅡに示す。

Ⅰ AFM1試験法

1.装置

蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC―FL)

液体クロマトグラフ・質量分析計(LC―MS)又は液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計(LC―MS/MS)

2.試薬、試液等

次に示すもの以外は、食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)第2 添加物の部C 試薬・試液等の項に掲げるものを用いる。

AFM1標準品1),2):AFM1を98%以上含むもの。

アセトニトリル:高速液体クロマトグラフ用に製造されたもの。

水:超純水又は高速液体クロマトグラフ用に製造されたもの。

生理的リン酸緩衝液(PBS)3):塩化カリウム0.20g、リン酸二水素カリウム0.20g、リン酸二水素ナトリウム(無水)1.16g(又はリン酸二水素ナトリウム12水和物2.92g)、塩化ナトリウム8.0gを900mLの水に溶解し、0.1mol/L塩酸又は水酸化ナトリウム溶液でpH7.4に調整し、1Lに定容する。

イムノアフィニティカラム4):アフラトキシン特異抗体を結合させた樹脂を充填したもの。

ガラス繊維ろ紙:粒子保持能1~1.5μmのホウケイ酸ガラス繊維のもの。

3.試験溶液の調製

(1) 試料の調製

37℃に加温した乳をガラス繊維ろ紙を用いてろ過し、試料とする。生乳などの均質化処理されていない乳については、遠心処理(2000×g、15分)を行った後、上層の脂肪層を除去する。残った下層の液体部分をガラス繊維ろ紙でろ過し、試料とする。

(2) 精製

試料20.0gをイムノアフィニティカラムに注入した後、毎秒約1~2滴の流速で流出し、流出液は捨てる5)。次いで、水約15mLを注入し、流出液を捨てた後6)、アセトニトリル3mLを注入し、溶出液を採る7)

(3) 試験溶液の調製

溶出液を45℃以下で窒素気流を用いて濃縮し、溶媒を除去する8)。この残留物にアセトニトリル及び水(1:4)の混液1.0mLを加えよく混合したものを試験溶液とする9,10)

4.検量線の作成

AFM1標準品をアセトニトリルで希釈し、1.0~20.0μg/Lの濃度範囲の溶液を数点調製する。それぞれ1.0mLを採り、45℃以下で窒素気流を用いて溶媒を除去する。残留物にアセトニトリル及び水(1:4)の混液を加えてよく混合する10)。それぞれ100μL11)をHPLCに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

5.定量

試験溶液100μL12)をHPLCに注入し、4.で得られた検量線により小数第2位までAFM1の分析値を求める。分析値を20で除し、小数第3位を四捨五入して乳中のAFM1の定量値とする。

6.確認試験

3.(3)で得られた試験溶液をLC―MS又はLC―MS/MSに注入して確認する13)

7.測定条件例

検出器:FL(励起波長365nm、蛍光波長435nm)

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル 内径4.6mm、長さ150~250mm、粒径3~5μm

カラム温度:40℃

移動相:アセトニトリル及び水(1:3)混液

流速:1.0mL/分

8.定量限界

0.05μg/kg

―――――――――――――――

<注解>

1) AFM1は強い発がん性を有する物質であるため、取扱いに注意すること。なお、試験に用いた器具、前処理用カラム、検体等は、廃棄又は洗浄する前に、0.5~1.0%(v/v)濃度の次亜塩素酸ナトリウムに2時間以上浸漬すること。

2) 正確に濃度調製された市販標準溶液が使用可能である。

3) 市販の錠剤が使用可能である。

4) 市販のカラムが使用可能である。なお、使用前にカラム中のゲルに亀裂や気泡が生じていないことを確認し、亀裂や気泡が生じている場合には、カラム上部から注射器等で圧力を加えて除去すること。

5) イムノアフィニティカラムの下部にストップコックを取り付け、これをバキュームマニホールド等に連結し、カラム内の溶液を全部流出させた後、カラム内にPBSを満たし全量を流出させ、カラムのコンディショニングを行う。その後、カラム内にPBSを満たし、カラム容量の約半分の量のPBSを流出させた後、ストップコックを閉め、リザーバー又は注射筒をコネクターを用いてカラムと連結する。

6) 洗浄する時にはストップコックで流速を調節する必要はない。また洗浄する際には、リザーバーをカラムから取り外した後、カラム内をピペット等を用いて水で満たし、その全量を排出させる操作を5回ほど繰り返すことが有効である。

7) 注射器にリザーバーコネクターを取り付けたものを用意し、これをカラム上部に連結し、空気を押し出すことによりカラム内に残った水分を除去する。その後アセトニトリル1mLをカラムに注入し、自然落下で溶出させた後5分間放置する。さらにアセトニトリル1mLをカラムに注入し溶出する。この操作をもう一度繰り返した後、注射器で空気を押し出すことによりカラム中ゲル内のアセトニトリルを溶出する。

8) 溶出液から溶媒を除去する際にAFM1が容器に吸着することがある。この場合、シラン処理した容器(使用前に20~30%アセトニトリル水等で洗浄し、乾燥させたもの)を用いることが望ましい。

9) 必要に応じて、遠心処理等で不溶物を除去後、HPLC用試験溶液とする。

10) HPLC注入用の容器として、ガラス製品を用いるとシラン処理を行った容器においてもAFM1が吸着することがあるため、ポリプロピレン製等の樹脂製の容器を用いるとよい。

11) 検出器の性能により、注入量を変更してもよい。

12) 標準溶液の注入量と同じにする。

13) LC―MS又はLC―MS/MSの測定条件の例を以下に示す。

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(内径2.1mm、長さ150mm、粒径3~5μm)

カラム温度:40℃

移動相:A溶媒 10mmol/L酢酸アンモニウム、B溶媒 アセトニトリル

分離条件:B液:30%→8分→80%→1分→80%

流速:0.2mL/分

注入量:10μL

イオン化モード:ESI(+)

検出イオン(m/z):

<LC―MS>

329[M+H]

<LC―MS/MS>

プリカーサーイオン329[M+H]、プロダクトイオン273、229

保持時間の目安:5.1分

Ⅱ AFM1スクリーニング法

乳中のAFM1のスクリーニングにはイムノクロマト法を原理とした分析キットを用いる。スクリーニング法により、陰性と判断された場合を除き、上述の「Ⅰ AFM1試験法」による陽性か否かの判断を行う。

1.使用可能なキットの基準

(1)真度

以下に示すAFM1確認用溶液を用いて少なくとも6回の試験を行い、定量キットにおいては回収率が常に70%を上回ること、定性キットにおいては常に陽性と判定されることを確認する。

AFM1濃度が0.05μg/kg以下であることをⅠに定める試験法により確認された乳(以下「ブランク乳」という。)を用いて少なくとも6回の試験を行い、定量キットにおいては常に100pptを下回ること、定性キットにおいては常に陰性と判定されることを確認する。

<AFM1確認用溶液の調製法>

正確に濃度調製された市販標準溶液をアセトニトリルによって希釈し、標準品原液0.5mg/Lを調製する。標準品原液1.0mLを取り、ブランク乳で10mLとし、さらにこの溶液を1.0mL採り、ブランク乳で10mLとする。さらにこの溶液を1.0mL採り、ブランク乳で10mLとしたものを確認用溶液(AFM1濃度0.5μg/L)とする。

(2)検出限界

100ppt以下であること。

(3)結果の評価方法

キット付属のリーダーにより、判定が可能であること。定量キットでは300ppt未満の場合を、定性キットでは陰性と表示された場合、陰性と判断する。

2.分析にあたっての留意事項

・使用期限及び保存温度を確認し、遵守すること。

・キット及び試薬類は使用前に室温に戻しておくこと。

・各キットを販売する販売者又は輸入代理店から詳細な取り扱い説明書を入手し、技術的な習得を行うこと。