添付一覧
○美容師養成施設の教科課程の基準の運用について
(平成27年3月31日)
(健発0331第18号)
(各都道府県知事あて厚生労働省健康局長通知)
(公印省略)
地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(平成26年法律第51号)が平成26年6月4日に、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律の施行に伴う厚生労働省関係政令等の整備等に関する政令(平成27年政令第128号)及び地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令(平成27年厚生労働省令第55号)が平成27年3月31日に公布され、一部を除いて平成27年4月1日から施行されることとなった。
これに伴い、美容師法(昭和32年法律第163号)及び美容師養成施設指定規則(平成10年厚生労働省令第8号)の一部が改正され、美容師養成施設の指導等に係る事務については、都道府県知事が行うこととなった。
ついては、標記に関する美容師養成施設への指導等に当たっては、別紙により取り扱われたい。
【別紙】
美容師養成施設の教科課程の基準の運用
1 教科課程の編成
(1) 必修課目
ア 必修の教科課目のうち、必修課目は、関係法規・制度、衛生管理、美容保健、美容の物理・化学、美容文化論、美術技術理論、美容運営管理及び美容実習の8課目となっていること。
イ 美容師養成施設においては、必修課目について、美容師養成施設指定規則(平成10年厚生労働省令第8号。以下「指定規則」という。)別表第1及び美容師養成施設の教科課程の基準(平成20年厚生労働省告示第50号。以下「教科課程の基準」という。)に基づき、それぞれの教科課目ごとに適切に行うこと。ただし、通信課程を設ける美容師養成施設においては、美容師養成施設の通信課程における授業方法等の基準(平成20年厚生労働省告示第47号。以下「通信課程における授業方法等の基準」という。)及び美容師養成施設の通信課程における授業方法等の基準の運用について(平成27年3月31日健発0331第16号厚生労働省健康局長通知。以下「通信課程における授業方法等の基準の運用」という。)に従い、適切に行うこと。
ウ 授業の1単位時間は50分を標準とし、教科課目の特質等に応じて、授業の実施形態を工夫することができること。ただし、美容実習の授業時間については、原則として、1回当たり2単位時間を配当するものとすること。
エ 非常災害などによって、所定の時間の授業を実施できなかった場合においても、必修課目については、その所定授業時間を下ることのないよう補習授業の実施などの措置をとるものとすること。
(2) 選択必修課目
ア 美容師養成施設においては、必修の教科課目として、必修課目以外に適当な選択必修課目を設定すること。
イ 選択必修課目の内容は、日本語、芸術、エステティック技術、美容カウンセリングなど、幅広い教養を身に付けることによって、人間性豊かな人格の形成を目指すとともに、保健衛生に携わる専門的技術者としての自覚をかん養するものでなければならないこと。
ウ 選択必修課目については、「(別添)美容師養成施設における教科課目の内容の基準」第2に示す一般教養課目群及び専門教育課目群の実施方針にのっとり、課目の例を参考に、一般教養と専門教育のバランスに配意しつつ、各美容師養成施設において独自に設定すること。
エ 選択必修課目、校外実習などの実施に当たっては、生徒の負担加重とならないように、時間数、実施時期、実施回数及び実施方法を考慮しなければならないこと。この場合、これらの実施によって、必修課目の単位数又は授業時間数が所定の単位数又は授業時間数を下回ることのないように留意すること。
オ 美容師養成施設においては、選択必修課目の各教科課目について、「指定規則」別表第1及び「教科課程の基準」に基づき、その内容等に応じて適切に行うこと。
ただし、通信課程を設ける美容師養成施設においては、「通信課程における授業方法等の基準」及び「通信課程における授業方法等の基準の運用」に従い、適切に行うこと。
カ 授業の1単位時間は50分を標準とし、教科課目の特質等に応じて、授業の実施形態を工夫することができること。ただし、実習を伴う教科課目の授業時間については、原則として、1回当たり2単位時間を配当するものとすること。
2 教科課目の内容
教科課目の内容は、別添「美容師養成施設における教科課程の内容の基準」によるものとすること。なお、同基準に示す必修課目の各項目の内容及び選択必修課目の課目の例に掲げる事項は、指導の一例であって、美容師養成施設においては、各項目のまとめ方や順序などを工夫し、学習効果を高めるように努めなければならないこと。
3 学習指導上の留意事項
(1) 美容師養成施設においては、必修課目、選択必修課目、校外実習などについて、相互の連携を図り、全体として調和がとれ、発展的、系統的に指導できるように努めなければならないこと。このため、美容師養成施設においては、必ず、学期又は月ごとに総合的教育計画を作成し、具体的な指導の目標を明確にするとともに、実際に指導する事項を選定配列しなければならないこと。
(2) 各教科課目の教授に当たっては、特に美容の業務の実際と直接関係の深い事項を中心に、その関連性を強調した内容とするとともに実験や実習などを行うことによって、それらの事項を十分に理解させるように努めなければならないこと。
(3) 指導に当たっては、常にその教育目的の達成に心がけ、特に次の事項に留意すること。
ア 生徒の経験、能力や生活環境を十分に理解しておくこと。
イ 美容業務の実情や科学技術の進歩に対応して常に教育方法、事項の見直しに努めること。
ウ 学習の目標を生徒に十分理解させること。
エ 生徒の興味や関心を重んじ、自主的自発的な学習をするように導くこと。
オ 集団活動を通じて生徒の社会性と協同性をかん養するとともに、生徒の個人差に留意して指導し、それぞれの生徒の個性や力をできるだけ伸ばすようにすること。
カ 教科書その他の教材、教具などについて常に研究し、その活用に努めること。
キ 専門的職業教育の本旨にのっとり、将来、美容業に従事する者として必要な心構えを養わせること。
ク 定期試験などによって指導の成果を絶えず評価し、指導の改善に努めること。
(4) この基準において、次の各項目に掲げる用語の定義は、それぞれ当該各項目に定めるところによること。
ア 「知らせる」及び「述べる」 ある事柄を話す、見せる、読ませるなど適当な方法によって説明することをいうこと。
イ 「理解させる」 ある事柄についてよく知らせた上、生徒の全員が納得できるまで質問を受けたり、復習させたり、設問して考えさせたりすることをいうこと。
ウ 「身に付けさせる」 主として技術に関する事柄について理解させる場合について用い、知らせたことを実習させたり、見学させたり、体得させることをいうこと。
エ 「学ばせる」 ある事柄について、知らせたり理解させるばかりでなく、その事柄についての興味や関心を誘発したり、進んで研究調査するようにしむけたり、共同学習をさせたり、問題を与えてレポートを提出させるなど、いろいろな方法を講じて、学習の効果を十分に高めることをいうこと。
4 卒業の認定
(1) 美容師養成施設においては、卒業までに履修すべき教科課目及びその単位数又は授業時間数並びに数値化した成績考査等に関する事項を内容とする卒業認定の基準を定めるものとすること。このうち、各教科課目ごとの単位数又は授業時間数等については、「指定規則」別表第1及び「教科課程の基準」に定める単位数又は授業時間数を基準(通信課程にあっては「通信課程における授業方法等の基準」に定める添削指導の回数及び面接授業の単位数又は授業時間数を基準)に設定すること。
(2) 美容師養成施設においては、生徒が当該養成施設の定める教育計画に従って所定の教科課目及び所定の単位数又は授業時間数を履修し、かつ、卒業認定の基準を満たし、その成果が教科課目の教育目標からみて満足できると認められる場合には、卒業を認定しなければならないこと。
(3) 美容師養成施設においては、生徒の出席状況を確実に把握し、教科課目ごとに欠席があった場合(例えば、教科課目の3分の1(実習を伴う教科課目にあっては5分の1)以内)であっても、十分な補習等を行った上で、卒業を認めなければならないこと。なお、出席状況が不良な者(例えば、欠席が出席すべき教科課目の3分の1(実習を伴う教科課目にあっては5分の1)を超える者)については卒業を認めてはならないこと。
【別添】
美容師養成施設における教科課目の内容の基準
第1 必修課目
1 関係法規・制度
(1) 実施方針
ア 美容師の業務に関係する衛生法規・制度及び消費者保護法規・制度について、正しい知識を習得しておかなければならない必要性を理解させ、あわせて、公衆衛生を担う美容師の社会的責務、職業倫理について、自覚を促すこと。
イ 美容の業務に関する規定内容を正確に理解させるとともに、衛生法規が、美容業を行う場合の指針として有する意義を把握させること。
(2) 各項目の内容
ア 衛生行政
(ア) 社会生活のなかでの法律、政治、行政の役割、機能など衛生法規を学ぶために必要な基礎的事項について理解させること。
(イ) 我が国の行政の仕組み、国の行政と地方の行政との関係などについて理解させること。
(ウ) 衛生行政とはどのような行政か、衛生行政の目標、衛生行政の種類など衛生行政の意義について知らせること。
(エ) 衛生行政を行う行政機関について述べ、特に美容業と関係の深い保健所について、その任務や活動及び組織を理解させること。
イ 美容師法
(ア) 美容師法がどのような沿革を経て現在の姿になったかを知らせ、これらの法律の目的と意義について理解させること。
(イ) 美容に関する用語が法律でどのように定義されているかを理解させること。
(ウ) 美容師について、その意義、免許制度、免許手続、免許の欠格要件、免許の登録などを理解させること。
(エ) 美容師試験について、その意義、試験の内容及び受験の手続を理解させること。
(オ) 美容師養成施設について、その課程、教科課目などを知らせること。
(カ) 美容師の業務上の遵守事項、業務を行う場所などに関する法律の規定について理解させる。特に、美容師の講じるべき衛生措置について、その意義と内容を十分に理解させることにより、公衆衛生における美容師の職責を自覚させること。
(キ) 美容所の開設などの届出、施設の検査確認、美容所について講じなければならない衛生措置など美容所に関する規制の内容を十分に理解させること。
(ク) 美容師の免許取消、業務停止について、その内容を理解させること。
(ケ) 美容所の閉鎖命令について、その内容を理解させること。
(コ) 美容師法の罰則について、その内容を理解させること。
ウ その他の関係法規
美容師法以外に美容に関係のある法律にはどのようなものがあるかを述べ、そのうち、特に密接な関係のあるものについては、その目的と内容のあらましを知らせる。なかでも、生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律及び消費者保護関連法規については、その意義と内容とを十分に理解させるように配慮すること。
(3) 学習指導上の留意事項
ア 最寄りの保健所の活動の実例を示し、保健所がどのような活動をするところか、美容の業務とどのように関連するかを理解させること。
イ 美容所の衛生措置などについて、生徒の間で自由討論を行なわせ、討論を通じて衛生措置の意義と内容とを理解させるとともに、美容師の職責と倫理規範を学ばせること。
ウ 美容所を見学させ、実際の美容の業務内容、業務上注意すべき事項などを理解させること。
2 衛生管理
(1) 実施方針
ア 公衆衛生の意義と本質とを明らかにすることによって、美容師が公衆衛生の維持と増進とについて重大な責務を担わなければならない理由は何かを十分に理解させることが必要であること。特に、環境衛生の意義と目的について、美容師の業務と関連付けながら具体的に理解させること。
イ 美容師の業務内容と感染症予防、環境衛生の保持との具体的な関連付けを重視して、美容における衛生措置の重要性について理解させること。特に、美容器具などの消毒法は、美容業務の衛生性を担保する上で最も重要な技術であるので、その意義と原理について十分に理解させるとともに、その適正な実施方法を身に付けさせることが肝要であること。
(2) 各項目の内容
ア 公衆衛生概説
(ア) 公衆衛生の意義について理解させるとともに、公衆衛生が日常生活あるいは美容業とどのように結びつくか、公衆衛生の発展向上のために美容師として何をなすべきかを理解させること。
(イ) 公衆衛生の発展の歴史を概観し、公衆衛生の思想がどのように発展してきたかを知らせること。
(ウ) 公衆衛生は、対人的な予防医学と対物的な環境衛生とに大別されることを知らせ、さらに環境衛生が健康で文化的な生活の基盤をなすものであることを理解させること。
(エ) 保健所の機能、組織、業務などについて知らせ、保健所が地域の保健衛生行政において、中核的存在であること及び美容業と保健所とは密接な関係があることを理解させること。
イ 感染症
(ア) 美容の業務を行う上で、どのような感染症に注意すべきかを具体的に示すとともに、その予防対策について系統的に理解させること。
(イ) 美容所における衛生措置、特に消毒の意義について、感染症対策と関連付けて理解させること。
ウ 環境衛生
(ア) 環境衛生の意義と内容を理解させるとともに、美容所において特に注意しなければならない点について理解させること。
(イ) 美容所における環境衛生、特に採光、照明、換気、床などの構造設備、衣服の衛生について理解させること。
(ウ) 美容所における廃棄物処理、環境保全対策について理解させること。
エ 衛生管理技術
(ア) 美容所における衛生管理、特に消毒の意義と目的について理解させること。
(イ) 消毒方法の種類、原理、特徴について具体的に説明すること。
(ウ) 美容器具などの対象物の材質、構造などに応じた適切な消毒方法の選択と適正な実施方法について学ばせること。
(エ) 美容所において用いられている代表的な消毒方法について、正しい操作方法を確実に身に付けさせること。
(3) 学習指導上の留意事項
ア 衛生管理は美容業務の基本であるので、単に学説、理論の羅列的説明にとどまらず美容との関連に配意しつつ、その重要性を認識させ、具体的かつ実践的な知識・技術の習得に努めさせること。
イ 必要に応じて、各種の統計資料、プロジェクター(スライド、OHP等)、ビデオなどの視聴覚教材を用いたり、実験を行ったり、保健所、美容所への見学などを行ったりして学習効果を高めること。
3 美容保健
(1) 実施方針
ア 美容技術の基礎となる人体組織、特に皮膚及び毛髪などの皮膚付属器官の構造と機能に関する科学的、系統的な知識の習得を目的とすること。
イ 美容の業務を安全かつ効果的に行うためには、皮膚、毛髪などに関する正確な科学的知識が不可欠であることを理解させること。
(2) 各項目の内容
ア 人体の構造及び機能
(ア) 人体の構造と機能に関する基本的事項について理解させること。
(イ) 骨格、筋肉、各種臓器の種類、構造、機能について理解させること。
(ウ) 人体の調整機能(神経、内分泌、免疫)のしくみについて理解させること。
(エ) 人体の構造、機能と疾病との関連について理解させること。
イ 皮膚及び皮膚付属器官の構造及び機能
(ア) 皮膚、皮膚付属器官(毛髪、爪、脂せん、汗せんなど)の構造について理解させること。
(イ) 皮膚の生理的作用について理解させるとともに、これらの作用と美容との関係について学ばせること。
(ウ) 毛髪、爪の生理的意義と特性について、美容技術との関連に配意しつつ理解させること。
ウ 皮膚及び皮膚付属器官の保健衛生
(ア) 皮膚、皮膚付属器官の状態に影響を与える因子にはどのようなものがあるか知らせること。
(イ) 皮膚、皮膚付属器官を健康に保つための方法について述べ、美容の施術を安全かつ効果的に行うために注意すべき事項について学ばせること。特に、毛髪の保健衛生については、美容技術の基礎であることから、重点をおいて学ばせること。
エ 皮膚及び皮膚付属器官の疾患
(ア) 主な皮膚、皮膚付属器官の疾患の種類、原因、症状、予防・治療法について、美容の施術と関連付けながら理解させること。
(イ) 香粧品によるかぶれについて、その発生機序と予防法との概略を述べ、美容の業務において注意すべき点は何かを学ばせること。
(3) 学習指導上の留意事項
ア 必要に応じて、各種の模型、標本、プロジェクター(スライド、OHP等)、ビデオなどの視聴覚教材を用いたり、実験や観察を行って学習効果を高めること。
イ 本課目は、安全で効果的な美容技術を提供するための基礎となるものであるから、特に、皮膚、毛髪などに関する講義に当たっては、常に美容業務との関連に配意しつつ、具体的事例を挙げることによって生徒の理解を高めるようにすること。
ウ 皮膚、毛髪の保健衛生については、衛生管理と関連させながら体系的な知識、技術の習得に努めさせること。
4 美容の物理・化学
(1) 実施方針
ア 美容の業務を安全かつ効果的に行うためには、正確な科学的知識と合理的思考に裏付けれた美容器具や香粧品の適正な取り扱いが不可欠であることを理解させること。
イ 特に、物理・化学の基本原理についての理解とその応用能力とが、美容師にとって、極めて重要な意義を持つものであることを理解させ、美容器具や香粧品の合理的な取扱方法に習熟させる。あわせて、美容器具や香粧品による危害を防止するための使用上の注意を学ばせること。
ウ 特に、香粧品は、美容技術を行う上で欠くことのできないものである反面、その使用方法を誤れば重大な健康被害を起こすおそれがあるものであることから、その化学的な性質を理解させるとともに、これを正しく使用するためには正確な知識と適正な技術とを身に付けることが重要であることを認識させること。
(2) 各項目の内容
ア 美容の物理
(ア) 熱伝導、光、電磁気など物理の基本原理について、美容技術の実例に則して理解させること。
(イ) 美容で使用する主な機械器具の構造、原理、機能、操作方法について、物理の基本事項を学ばせること。
(ウ) 刃物、はさみの材料として使用される金属の物性などについて学ばせること。
(エ) 美容で使用する主な機械器具の使用上の注意、保守管理の方法について理解させること。
イ 香粧品の化学
(ア) 物質の相変化、溶液、酸アルカリ、酸化還元反応など化学の基本原理について、美容技術の実例に即して理解させること。
(イ) 化学薬品の取扱い、溶液の調製法など化学の基本操作を身に付けさせること。
(ウ) 石けん、洗剤、化粧水、ヘアシャンプー、ヘアリンス、整髪料、養毛剤、染毛剤、除毛剤、パーマ液など美容において使用される主な香粧品の種類、使用目的、成分、作用原理、使用上の注意について理解させること。
(3) 学習指導上の留意事項
ア 必要に応じて、各種の模型、プロジェクター(スライド、OHP等)、ビデオなどの視聴覚教材を用いたり、実験や観察を行って学習効果を高めること。
イ 特に、実験や観察は物理や化学の基本を理解する上で不可欠の学習方法であるから、これらの授業に当たっては、講義に片寄らず、できるだけ多くの実験や観察の機会を設け、科学的思考方法を身に付けさせることが望ましいこと。
ウ 理論や法則を羅列する講義に終始することを避け、常に美容の業務との関連性を念頭におきつつ、物理や化学に関する正確な知識と理解とが美容師の業務を全うするために重要であることを生徒に認識させることが必要であること。
5 美容文化論
(1) 実施方針
ア 美容業の使命の一人が、より優れた人間美の創造、実現にあることをよく認識させ、この使命の達成のために必要な美的感覚を身に付け、これを洗練し、芸術的な表現力と鑑賞力とを養うこと。
イ 美容の業務を全うするためには、確かな技術力を身に付けるとともに、豊かな感性に裏打ちされた優れた表現力を養うことが必要であることを自覚させること。
(2) 各項目の内容
ア 美容文化史
(ア) 我が国における美容ファッションの変遷について知らせること。
(イ) 海外における美容ファッションの変遷について知らせること。
(ウ) 流行を追う心理、流行が社会に及ぼす影響、流行が美容業において占める意義と役割について知らせること。
イ 美容デザイン
(ア) 造形の原理、造形と心理、美容における造形の意義と応用などについて学ばせること。
(イ) 色彩の原理、色彩と心理、美容における色彩の意義と応用などについて学ばせること。
ウ 服飾
(ア) 服飾の原理、美容における服飾の意義などについて理解させること。
(イ) 服飾の歴史のあらまし、衣服の種類、衣服に関するエチケットなどについて学ばせること。
(3) 学習指導上の留意事項
一方的な講義に片寄ることなく、教科内容に即した適当な課題を与えて、生徒同士に討論させ、あるいは、レポートを作成させ、さらには、適当な教材を用いてこれについて感じたことを発表させるなど生徒の自主的な判断力の向上を図るような学習方法を用いるように努めること。
6 美容技術理論
(1) 実施方針
ア 美容技術についての知識を衛生的、能率的に実践する態度と習慣とを養い、工夫と創造の能力とを身に付けさせること。
イ 美容器具の正しい取扱いの方法と美容の基礎的技術とを作業の実際に即して指導し習熟させること。
ウ 優れた美容技術は、経験によってだけ得られるものではなく、科学的合理的な方法によって把握されなければならないことを強調すること。
(2) 各項目の内容
ア 器具の取扱い
(ア) 人間の手と器具の働き、美容器具の種類と特徴などについて理解させること。
(イ) コーム、ヘアブラシ、レザー及びヘアアイロンについて、その種類、各部の名称、使用目的、形態と機能、選定法、研磨法、基本的操作法、手入れ法などを学ばせること。
(ウ) ヘアドライヤー、ヘアスチーマー、ブラシ、被布及び布片類について、その種類、使用目的、形態と機能、手入れ法などを知らせること。
(エ) 器具の材質、形態に応じた消毒法について、具体的に理解させるとともに、その正確な実施方法、注意事項を身に付けさせること。
(オ) 美容に用いられるその他の電気器具類、備品類、容器類などについて、その種類、各部の名称、使用目的、形態と機能、選定法、基本的操作法、使用上の注意などを学ばせること。
イ 基礎技術
(ア) 美容技術の意義を学ばせ、技術を行う場合の心得を知らせること。
(イ) 美容技術に必要な人体各部の名称を知らせること。
(ウ) 美容技術を行う場合の技術者の位置と姿勢、身体の機能その他美容技術を行う場合に考慮しなければならない基礎知識を知らせること。
ウ 頭部技術
スキャルプトリートメント、ヘアトリートメント、ヘアシャンプー・ヘアリンス技術、ヘアカッティング、パーマネントウェービング、ヘアセッティング、マーセル・ウェービングなどの基本的な頭部技術の目的、種類、特徴、技術上の注意などについて学ばせること。
エ 特殊技術
ヘア・カラーリング、美顔術、化粧、マニキュア、ペディキュアなどの美容の特殊技術の目的、種類、特徴、技術上の注意点などについて学ばせること。
オ 和装技術
(ア) 日本髪の基礎知識、技術の実際について学ばせる。
(イ) かつらの種類、あわせ方、かぶせ方について学ばせる。
(ウ) 和装に関する一般知識、着付け技術について学ばせる。
(3) 学習指導上の留意事項
ア 美容所の作業の実態を見学させたり、実務に携わる美容師の講話を聞かせたりするなどして、美容技術に関する具体的な知識を習得させるように努めること。
イ 必要に応じて、実物を示したり、各種の模型、見本、プロジェクター(スライド、OHP等)、ビデオなどの視聴覚教材を用いて学習効果を高めること。
ウ 本課目は、美容実習とあいまって、美容師として必要な技術を身に付けさせるための基礎となる課目であるから、常に美容実習の履修状況に配意しつつ、学習効果の向上に努めなければならないこと。
7 美容運営管理
(1) 実施方針
ア 経営管理の基本的事項を学習することによって、美容業における科学的な経営管理手法の重要性を認識させ、美容所の経営に役立たせること。
イ 美容業において、適切な接客態度がいかに重要であるかを自覚させるとともに、消費者対応の基本を学ばせ、実践する能力を身に付けさせること。
(2) 各項目の内容
ア 経営戦略
経営戦略の基本的理論について、美容業における実例を交えて理解させること。
イ 経営管理
(ア) 経営管理の基本的理論について、美容業における実例を交えて理解させること。
(イ) 美容所の経営に必要な経理事務に関する基本的事項を学ばせること。
ウ 労務管理
労務管理の基本的理論について、美容業における実例を交えて理解させること。
エ 接客法
(ア) 社会生活におけるエチケットの必要性、職場など社会生活の各部面におけるエチケットなどについて理解させること。
(イ) 美容業における接客の意義と技術について具体的事例を挙げながら学ばせること。
(ウ) 苦情処理など消費者対応の基本的事項について、美容業における実例を交えて学ばせること。
(3) 学習指導上の留意事項
ア 美容所の経営の実態を見学させ、美容の経営管理について、具体的な知識を習得させること。
イ 経営管理を単に理論として理解するだけにとどまらず、美容所の経営に実地に活用する能力を高めるため、事例研究などの学習方法を積極的に活用するように努めること。
8 美容実習
(1) 実施方針
ア 美容の業務を安全かつ効果的に実施する技術を習得するため、基本的操作を確実に身に付けさせるとともに、これらの基本的操作を適宜組み合わせて完成させる技術を習得させること。
イ 美容所における衛生管理の重要性を認識させ、器具の消毒などの適切な実施方法を身に付けさせること。
ウ 個々の客の要望に応じた美容技術を確実に提供できるよう総合的な技術の基礎を身に付けさせること。
(2) 各項目の内容
ア 器具の取扱実習
(ア) 美容器具の操作方法、消毒方法、手入れ方法を確実に身に付けさせること。
(イ) 用途に適した美容器具の選択方法について、理解させ、実践する能力を身に付けさせること。
イ 基礎技術実習
(ア) 美容技術を行う場合の位置、姿勢など美容技術を行う場合に必要な基本動作を身に付けさせること。
(イ) 施設の清掃、消毒など美容所の衛生管理のために必要な措置を確実に身に付けさせる。特に、器具の消毒については、その重要性を十分に認識させるとともに、適正な方法で実施することを習慣付けさせることが必要であること。
ウ 頭部技術実習
(ア) スキャルプトリートメント、ヘアトリートメント、ヘアシャンプー・ヘアリンス技術、ヘアカッティング、パーマネント・ウェービング、ヘアセッティング、マーセル・ウェービングなどの基本的な頭部技術を確実に身に付けさせること。
(イ) この際、使用する器具は毎回必ず消毒することを身に付けさせること。
エ 特殊技術実習
ヘア・カラーリング、美顔術、化粧、マニキュア、ペディキュアなど美容の特殊技術を身に付けさせること。
オ 和装技術実習
日本髪の結髪技術、かつらのあわせ方、かぶせ方、着付け技術を身に付けさせる。
カ 総合実習
頭部、顔面、特殊技術を適当に組み合わせて調和のとれた美容技術を完成させるため、総合的な技術を身に付けさせること。
(3) 学習指導上の留意事項
ア 生徒の技術習熟の状況を常に把握するため、生徒ごとに実習記録と評価記録を作成すること。
イ 実習の効果を生徒の間で評価させて、技能の向上のための刺激を与え、学習効果を高めるように努めること。
ウ いたずらに新しい技術を追求することなく、基本的な技術を確実に習得させるように指導すること。
エ 常に美容技術理論の学習状況に配意しつつ、理論と実習との相互の連携を図って、美容師としての専門技術を効果的に習得させるように努めること。
オ モデルを使用して行う美容実習の開始時期は、美容技術理論等必修課目である教科課目の学習状況及び生徒の習熟状況を十分に確認し、モデルを使用した実習を行うことが適当であると認めた上で開始しなければならないこと。
カ 実習は美容師養成施設内で実施することを原則とするが、生徒の技術習熟状況に応じ、当該養成施設が作成した実施計画に基づく教育課程の一環として、管理美容師を配置する美容所において、当該美容所に従事する美容師の適切な指導監督の下、美容行為及びその附随する作業(以下「実務実習」という。)を行うことが望ましいこと。
キ 美容師養成施設は、実務実習を適正かつ効果的に実施するため、あらかじめ実施計画と評価方法を作成しなければならないこと。
ク 実施計画の作成に当たっては、生徒が基本的な美容技術に習熟し、状況に応じて応用できる基礎的能力を身に付けさせることを目標に、段階的に技術の習得ができるように配慮すること。
ケ 実務実習の開始時期は、入所後おおむね6か月を経過してからとすること。
コ 実務実習は、年間60時間(通信課程の生徒のうち美容所に常勤で従事している者である生徒に対しては20時間)を超えない範囲で行うものとすること。
なお、1日当たりの時間数については、実務実習の実施計画、他の授業計画との調整及び受け入れ美容所の営業状況等を勘案して、適切な時間数とすること。
サ 実務実習を行う場合、美容師養成施設は、次の要件に適合する美容所に生徒の受け入れを依頼しなければならないこと。
(ア) 管理美容師の資格を有し、かつ、適切な指導監督のできる美容師がいること。
(イ) 当該美容所で受け入れる生徒数に応じた設備を有すること。
(ウ) 当該美容所の経営方法が適切かつ確実なものであること。
シ 実務実習の指導は、美容師養成施設が作成した実施計画に基づいて、当該美容所において十分な実務経験を有し、適切に指導監督できる美容師が行うこと。
ス 実務実習を受ける生徒は、美容師の資格を取得しておらず、独立して業務を行うことができないことから、指導にあたる美容師の十分な監督の下で実習を行わせなければならないこと。
セ 1人の美容師が同時に指導できる生徒の数は2人以下とすること。
ソ 実務実習を受ける生徒は、実務実習生であること及び氏名を記載した標識を着用しなければならないこと。
タ 指導にあたった美容師は、生徒ごとに作成した実務記録を美容師養成施設に提出し、これに基づいて当該養成施設が実務実習の評価を行うこと。
第2 選択必修課目
1 一般教養課目群
(1) 実施方針
一般教養課目は、社会生活における基本的規範やコミュニケーション技術などを学ぶことによって、社会人としての心構えを養い、さらに、専門的技術者としての自覚を促すとともに、芸術、文化など幅広い教養を身に付けることによって、人間性豊かな人格の形成を目指すものであること。
(2) 課目の例
ア 日本語
(ア) コミュニケーションの基本技術としての日本語の重要性を認識させ、読み、書き、話す表現力及び聞く力を身に付けさせること。
(イ) 優れた文学作品を鑑賞させ、日本語の表現の多様性や美しさを感得させる。
(ウ) 日本文学の歴史の概要を知らせ、その特色について学ばせること。
イ 外国語
(ア) 英語などの外国語について、基礎的会話能力を身に付けさせること。
(イ) 語学の学習を通じて外国の文化、生活習慣などに関する理解を深めること。
ウ 保健体育
(ア) 各種の運動の合理的な実践を通して、運動機能を高め、健やかな心身の形成、協調性のかん養を図ること。
(イ) 適度な運動や適切な休息が心身の健康増進のために重要であることを理解させ、生涯を通じて継続的に運動ができる能力と態度を育てること。
エ 情報技術
(ア) 情報技術の基礎理論と応用技術を学ばせること。
(イ) コンピュータなどの情報機器の操作方法、情報処理の基礎技術を身に付けさせること。
(ウ) 情報機器を活用して、日常業務の効率化、合理化を図る能力を身に付けさせること。
オ 社会福祉
(ア) 社会福祉の意義と目的とを学ばせるとともに、福祉施設や地域におけるボランティア活動などを通じてその重要性を認識させること。
(イ) 美容師の職能を活かしてどのような社会福祉活動ができるかを学ばせること。
(ウ) 我が国の社会保障制度のあらましについて知らせ、年金、医療保険などの重要性を学ばせること。
カ 芸術
(ア) 優れた芸術作品に親しみ、鑑賞する能力を身に付けさせるとともに、生涯にわたって芸術を愛好する心情を育て、豊かな情操を養うこと。
(イ) 我が国及び世界の芸術の歴史を通じて芸術が個人や社会に及ぼす影響について学ばせるとともに、現代芸術の主な潮流について知らせること。
キ 日本文化
(ア) 我が国の伝統文化の歴史と特色を学ばせ、これを保存し、伝承することの重要性を理解させること。
(イ) 茶道、華道などの代表的な我が国の伝統文化に親しませ、伝統文化が日常生活の根底に息づいていることを認識させること。
(3) 学習指導上の留意事項
ア 上記(2)に示す課目は、一般教養課目の例であって、美容師養成施設においては、一般教養課目の実施方針にのっとり、これ以外の課目を独自に設定することができること。
イ 一方的な講義に終始することなく、課外実習や視聴覚教材などを用いた授業を行うことによって、学習意欲を高める工夫が必要であること。
ウ 知識の習得よりも生徒の自由な発想を重視し、豊かな感性の発達を促すことに主眼をおいて指導すること。
2 専門教育課目群
(1) 実施方針
ア 専門教育課目は、必修課目において習得した基礎的な専門知識や技術を基に、さらに高度な専門知識や技術を身に付けさせるものであること。
イ 科学的基礎に裏付けられた高度な美容技術を確実に実施する能力を身に付けるばかりでなく、これらを応用して新たな技術を開発するための総合的能力を習得させること。
(2) 課目の例
ア エステティック技術
(ア) エステティック技術の目的が心身の健康と美の実現にあることを理解させ、科学的事実と合理的思考に裏付けられたエステティック技術の重要性を認識させること。
(イ) エステティック技術の歴史、理論、現状のほか、各種のエステティック技術の目的、種類、特徴、技術上の注意などについて学ばせること。特に、エステティック技術の効果と安全性に関する科学的基礎について十分に認識させること。
(ウ) エステティック技術において用いられる主な薬剤や機器の基本的使用方法や使用上の注意を身に付けさせること。
イ 美容カウンセリング
美容サービスの一環として行うカウンセリングの意義、目的、内容、実施上の留意点などについて、実地に即して学ばせ、美容師の業務を全うするためには、正確な技術を提供するとともに、顧客の要望に応じた適切なカウンセリングの実施が重要であることを認識させること。
ウ 食品保健・栄養理論
(ア) 食品保健・栄養の基本的概念を理解させ、食品保健の意義、食生活と健康との関係、バランスのとれた食事の重要性について認識させること。
(イ) 特に、食生活と全身状態や皮膚、毛髪の健康との関連について正しく学ばせること。
エ メイクアップ
(ア) メイクアップの歴史、理論、現状のほか、メイクアップ技術の目的、種類、技術上の注意などについて学ばせること。
(イ) メイクアップ技術において用いられる主な薬品と器具との基本的使用方法を身に付けさせること。
オ 美容モード理論
必修課目の美容文化論において学習した造形、色彩、服飾などに関する基礎的知識を基に、顧客の個性、服装、その他の環境に応じてヘアスタイルを設計し、流行を創り出す能力を身に付けさせること。
カ 美容総合技術
(ア) 必修課目において習得した基本的技術を基に、さらに発展させた高度な技術を身に付けさせるとともに、美容デザインの最新の国際的動向について学ばせること。
(イ) 常に新しい技術の吸収を怠らず、また、自らも新しい技術の開発に努める姿勢を習慣付けさせ、専門技術者としての心構えを身に付けさせること。
(3) 学習指導上の留意事項
ア 上記(2)に示す課目は、専門教育課目の例であって、美容師養成施設においては、専門教育課目の実施方針にのっとり、これ以外の課目を独自に設定することができること。
イ 生徒の学習段階に応じて、高度な技術の習得に努め、可能であれば、最先端の技術に触れる機会を与えることが望ましいこと。
ウ 生徒が進んで新しい技術を身に付け、また、常に自ら新しい技術を開発・工夫する姿勢を習慣付けることによって、美容業務においては、不断の改善と精進が重要であることを認識させること。
エ 実習や生徒間の討論などを多用し、生徒が主体的に学習できるように努めなければならないこと。
オ 校外実習を実施する美容師養成施設は、第1の8の(3)に定める実務実習を実施する上での留意事項に準じて、適正に実施しなければならないこと。
この場合において、教科課目の区分ごとに美容師養成施設が定める単位数又は授業時間数の5分の1を超えない範囲で行うものとすること。