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○広域火葬計画の策定の推進について(通知)

(平成27年3月6日)

(健衛発0306第2号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局生活衛生課長通知)

(公印省略)

広域的な火葬に関する計画(以下「広域火葬計画」という。)については、平成7年の阪神・淡路大震災を踏まえ、「広域火葬計画の策定について」(平成9年11月13日付け衛企第162号厚生省生活衛生局長通知)において、各都道府県に対し、広域火葬計画を策定し、広域的な火葬体制を整備いただくよう、特段の御配慮をお願いしているところである。

さらに、平成23年の東日本大震災を踏まえ、平成26年7月には、関係省庁において、防災対策実行会議(座長:内閣官房長官)の了承を得た上で、「大規模災害時における御遺体の埋火葬等の実施のための基本的指針」を策定したところであり、その中でも、都道府県における広域火葬計画の策定など広域的な火葬体制の整備のための地方公共団体の取組の促進を図ることとしたところである(「大規模災害時における御遺体の埋火葬等の実施のための基本的指針の策定について」(平成26年7月30日付け健衛発0730第1号厚生労働省健康局生活衛生課長通知))。

しかしながら、各都道府県における広域火葬計画の策定は、平成26年11月現在で、47都道府県中29都道府県(地域防災計画の一環として策定している11都道府県を含む。)にとどまっている。

東日本大震災のような多数の死亡者が発生する大規模災害は、今後、全国いずれの地域においても発生する可能性があり、被災地の火葬能力をはるかに超える死亡者が発生し、又は、火葬場の建物等の倒壊やライフラインの復旧の遅れ等によりそもそも火葬自体が行えない事態も想定される。

このような大規模災害が発生した場合、火葬の円滑な実施における都道府県の役割は非常に大きい。都道府県においてあらかじめ必要な業務の手順が定められ、かつ、関係部署、管下市町村、関係事業者間で共有されていなければ、大きな混乱が発生することが想定され、さらに、国において必要な広域調整や支援を行う上でも、著しい支障が生じることとなる。

ついては、現時点で広域火葬計画が未策定の都道府県においては、本年8月末を目途に広域火葬計画を策定していただくとともに、すでに策定済みの都道府県においても、再度、必要事項が定められているかの点検を行っていただきたいと考えており、各都道府県においても、下記の点にも御留意いただき、特段の取組方よろしくお取り計らい願いたい。

1 広域火葬計画の必要性

広域火葬は、大規模災害により、被災市町村が平常時に使用している火葬場の火葬能力だけでは、当該市町村内の御遺体の火葬を行うことが不可能となった場合において、被災地の周辺の火葬場を活用して広域的に火葬を行うものである。

すなわち、大規模災害が発生した場合には、極めて多数の死亡者が発生する可能性があるが、他方、火葬場の火葬能力には限りがあるとともに、火葬場の施設そのものが災害により稼働ができなくなったり、火葬要員が不足したりする可能性もある。その場合には、被災地の周辺の火葬場の応援を受けることが必要となる。広域火葬計画は、これを円滑に行うためにあらかじめ必要な事項を定めるものである。

また、被災都道府県内の火葬能力を超えた対応が必要な場合には、都道府県を超えた広域的な火葬の実施が必要となる場合があり、同様に、被災都道府県の火葬要員が不足した場合には、他都道府県からの応援態勢を組む必要がある。棺、(御遺体保存用の)ドライアイス、火葬に必要な燃料、御遺体搬送用の霊柩車等の確保も重要な課題となる。

実際に、東日本大震災においては、必要な業務の手順を定めた広域火葬計画が策定されていなかったことから、都道府県が火葬場の被災状況を把握するのに時間を要したり、御遺体を火葬する火葬場の割り振りの仕組みや関係資材の調達の仕組み等を発災後に構築しなければならなかったため、火葬の実施体制の構築に時間を要するなどの混乱が発生した。

また、御遺体の搬送や埋火葬の体制の構築が遅れたことから、これらを自衛隊に依頼する事例が発生し、自衛隊が本来行うべき行方不明者の捜索の業務に支障を来しかねない事態も招来した。

火葬場の経営の許可等に係る事務は、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(平成23年法律第105号。第2次地方分権一括法)により、すべての市長又は特別区の区長が有することとされたが、都道府県は、広域的な観点から墓地埋葬行政を担当しており、このような立場から、広域火葬体制の構築や大規模災害時の広域火葬の実施の責務を有している。

さらに、

(1) 各都道府県内の市町村間、近隣都道府県、葬祭業等の関係団体との協定が締結されている場合であっても、それを広域火葬計画の中で実際の業務手順として定めていなければ、大規模災害発生時に予想される状況の中では、混乱する可能性が高いこと

(2) 各種の被害想定で被害が比較的少ないと想定されている場合や、都道府県の行政区域が広大で通常の想定では区域内の大部分の火葬場が稼働できない事態が想定されない場合であっても、想定を超える大規模災害が発生しないとは限らないこと

等の事情にも留意する必要がある。

以上のことから、全ての都道府県において、広域火葬計画を策定していただく必要があると考えている。

2 広域火葬計画の内容

広域火葬計画は、独立した計画であることが望ましいが、地域防災計画の中で必要な内容を定めるものでも差し支えない。

他方、前記「広域火葬計画の策定について」においては、広域火葬計画には、

① 基本方針

② 広域火葬の実施のための体制

③ 被災状況の把握

④ 広域火葬の応援・協力の要請

⑤ 火葬場の選定

⑥ 火葬要員の派遣要請及び受入

⑦ 遺体保存対策

⑧ 遺体搬送手段の確保

⑨ 相談窓口の設置

⑩ 災害以外の事由による御遺体の火葬

⑪ 火葬状況の報告

⑫ 火葬許可の特例的取扱

⑬ 引取者のない焼骨の保管

を定めることとしている。

このうち、特に、③から⑧までの事項は、都道府県、市町村、火葬場、関係事業者や関係団体及び国の相互間における情報伝達や各種要請の手順を定めるものであり、広域火葬計画において特に重要な意味を有するものである。ここでは、情報伝達(要請)の主体、伝達先(送付先の部署名)、時期、様式(伝達事項)などを具体的に定めておく必要がある。

しかしながら、特に、各都道府県が、広域火葬計画として独立した計画の形ではなく、地域防災計画の中でその一部として規定した広域火葬に係る記載の中には、上記の事項が具体的に定まっていないものが散見される。上記の事項を具体的に定めない場合、大規模災害により多数の死亡者が発生し、被災地の火葬場の火葬能力が不足した場合に、円滑に広域火葬を行うことが困難となることもあり得るので、独立の広域火葬計画を策定する場合だけでなく、各都道府県が地域防災計画の中で必要な事項を定める場合にも、その中でこれらの事項を具体的に定めていただく必要がある。

また、都道府県によっては、多くの離島を有するなど、特有の地理的な条件を考慮する必要があると承知している。その場合、特に課題となる遺体搬送手段や資材搬送手段の確保については、ヘリコプター、船舶等必要な遺体搬送手段をあらかじめ関係機関や関係事業者の協力を得て確保いただきたいが、さらに、関係機関等との連携体制など御遺体の搬送方法を含め広域火葬計画に定めるなど、実効性のある広域火葬計画となるようにしていただきたい。

なお、既に策定されている広域火葬計画のうち、必要事項が網羅されている事例として、別添を示すので、広域火葬計画を策定する場合に参考とされたい。

3 広域火葬計画の策定の手続

広域火葬計画の策定手順の一例として、以下の手続を行うことが考えられる。

① 前記「広域火葬計画の策定について」の内容や他都道府県の事例を参照しつつ、既存の他の地方公共団体や関係事業者、関係団体との協定内容等を踏まえ、墓地埋葬行政の所管部署で計画の案文を作成

② 都道府県内関係部局等(総務部局、防災部局、商工部局、警察等)に案文を送付・調整

③ 市町村や関係事業者、関係団体に案文を送付・調整

④ 担当部局内の決裁を経て計画を決定

これらのうち、②については、関係部局が広範囲にわたることから、必要に応じ、庁内で関係部局が一同に会する策定委員会を設置し、策定を進めることが考えられる。また、③については、市町村の火葬場担当部局及び火葬場との間で情報交換を行う既存の枠組み(「協議会」「打合会」など)があれば、その枠組みを活用することが考えられる。

また、都道府県内の火葬能力を超えた場合に火葬の依頼を行うことが想定される近隣の都道府県との間でも、事前に案文の調整を行っておくことが望ましい。

なお、厚生労働省においても、各都道府県における広域火葬計画の策定について、積極的に助言等を行っていきたいと考えているので、策定に際して必要がある場合には、以下まで御連絡願いたい。

連絡先

厚生労働省健康局生活衛生課

Tel.03―5253―1111 内線 2414