添付一覧
○国民年金・厚生年金保険障害認定基準の一部改正について〔国民年金法〕
(平成27年3月31日)
(年管発0331第1号)
(日本年金機構理事長あて厚生労働省大臣官房年金管理審議官通知)
(公印省略)
国民年金法施行令(昭和34年政令第184号)別表並びに厚生年金保険法施行令(昭和29年政令第110号)別表第1及び別表第2に規定する障害の程度の認定については、「国民年金・厚生年金保険障害認定基準の改正について」(平成14年3月15日庁保発第12号)により取り扱っているところであるが、近年の医学的知見を反映して、認定基準を見直すとともに、表現や例示の明確化を図るため、関係の専門家による審議等を踏まえ、今般、「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」の一部を別紙1から別紙8のとおり改正し、平成27年6月1日から適用することとしたので通知する。
なお、国民年金法等の一部を改正する法律(昭和60年法律第34号)により従前の例によることとされた同法の規定による改正前の国民年金法(昭和34年法律第141号)及び厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)の規定に基づく障害給付に係る障害の程度の認定については、それぞれ「国民年金障害等級認定基準」(昭和54年11月1日庁保発第31号)及び「国民年金において併合認定を行う場合の後発障害認定基準」(昭和54年11月1日庁保発第32号)並びに「厚生年金保険の障害認定要領」(昭和52年7月15日庁保発第20号)により取り扱うものであることを申し添える。
(別紙1)
(別紙2)
(別紙3)
(別紙4)
(別紙5)
(別紙6)
(別紙7)
(別紙8)
(参考)
国民年金・厚生年金保険
障害認定基準
平成27年6月1日改正
(P8・9、13~53、56~74、93~95差替え)
第2節/聴覚の障害
聴覚の障害による障害の程度は、次により認定する。
1 認定基準
聴覚の障害については、次のとおりである。
令別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
|
国年令別表 |
1級 |
両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの |
|
2級 |
両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの |
||
身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
|||
厚年令 |
別表第1 |
3級 |
両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの |
別表第2 |
障害手当金 |
一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの |
2 認定要領
聴覚の障害による障害の程度は、純音による聴力レベル値(純音聴力レベル値)及び語音による聴力検査値(語音明瞭度)により認定する。
(1) 聴力レベルは、オージオメータ(JIS規格又はこれに準ずる標準オージオメータ)によって測定するものとする。
ただし、聴覚の障害により障害年金を受給していない者に対し、1級に該当する診断を行う場合には、オージオメータによる検査に加えて、聴性脳幹反応検査等の他覚的聴力検査又はそれに相当する検査を実施する。また、その結果(実施した検査方法及び検査所見)を診断書に記載し、記録データのコピー等を提出(添付)するものとする。
(2) 聴力レベルのデシベル値は、話声域すなわち周波数500、1000、2000ヘルツにおける純音の各デシベル値をa、b、cとした場合、次式により算出する。
なお、この算式により得た値が境界値に近い場合には
画像16 (4KB)
の算式により得た値を参考とする。
a:周波数500ヘルツの音に対する純音聴力レベル値
b:周波数1000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値
c:周波数2000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値
d:周波数4000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値
(3) 最良語音明瞭度の算出は、次によるものとする。
ア 検査は、録音器又はマイク付オージオメータにより、通常の会話の強さで発声し、オージオメータの音量を適当に強めたり、弱めたりして最も適した状態で行う。
イ 検査語は、語音弁別能力測定用語音集により、2秒から3秒に1語の割合で発声し、語音明瞭度を検査する。
なお、語音聴力表は、「57s式語表」あるいは「67s式語表」とする。
ウ 語音明瞭度は、次式により算出し、語音明瞭度の最も高い値を最良語音明瞭度(語音弁別能)とする。
(4) 「身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、両耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のものをいう。
(5) 「両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
ア 両耳の平均純音聴力レベル値が70デシベル以上のもの
イ 両耳の平均純音聴力レベル値が50デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が50%以下のもの
(6) 「一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの」とは、一耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上のものをいう。
(7) 聴覚の障害により障害年金を受給していない者の障害の状態が1級に該当する場合は、オージオメータによる検査結果のほか、聴性脳幹反応検査等の他覚的聴力検査又はそれに相当する検査結果を把握して、総合的に認定する。
(8) 聴覚の障害(特に内耳の傷病による障害)と平衡機能障害とは、併存することがあるが、この場合には、併合認定の取扱いを行う。
第6節/音声又は言語機能の障害
音声又は言語機能の障害による障害の程度は、次により認定する。
1 認定基準
音声又は言語機能の障害については、次のとおりである。
令別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
|
国年令別表 |
2級 |
音声又は言語機能に著しい障害を有するもの |
|
厚年令 |
別表第1 |
3級 |
言語の機能に相当程度の障害を残すもの |
別表第2 |
障害手当金 |
言語の機能に障害を残すもの |
2 認定要領
(1) 音声又は言語機能の障害とは、発音に関わる機能又は音声言語の理解と表出に関わる機能の障害をいい、構音障害又は音声障害、失語症及び聴覚障害による障害が含まれる。
ア 構音障害又は音声障害
歯、顎、口腔(舌、口唇、口蓋等)、咽頭、喉頭、気管等の発声器官の形態異常や運動機能障害により、発音に関わる機能に障害が生じた状態のものをいう。
イ 失語症
大脳の言語野の後天性脳損傷(脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷や脳炎など)により、一旦獲得された言語機能に障害が生じた状態のものをいう。
ウ 聴覚障害による障害
先天的な聴覚障害により音声言語の表出ができないものや、中途の聴覚障害によって発音に障害が生じた状態のものをいう。
(2) 「音声又は言語機能に著しい障害を有するもの」とは、発音に関わる機能を喪失するか、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方がほとんどできないため、日常会話が誰とも成立しないものをいう。
(3) 「言語の機能に相当程度の障害を残すもの」とは、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に多くの制限があるため、日常会話が、互いに内容を推論したり、たずねたり、見当をつけることなどで部分的に成り立つものをいう。
(4) 「言語の機能に障害を残すもの」とは、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に一定の制限があるものの、日常会話が、互いに確認することなどで、ある程度成り立つものをいう。
(5) 構音障害、音声障害又は聴覚障害による障害については、発音不能な語音を評価の参考とする。発音不能な語音は、次の4種について確認するほか、語音発語明瞭度検査等が行われた場合はその結果を確認する。
ア 口唇音(ま行音、ぱ行音、ば行音等)
イ 歯音、歯茎音(さ行、た行、ら行等)
ウ 歯茎硬口蓋音(しゃ、ちゃ、じゃ等)
エ 軟口蓋音(か行音、が行音等)
(6) 失語症については、失語症の障害の程度を評価の参考とする。
失語症の障害の程度は、音声言語の表出及び理解の程度について確認するほか、標準失語症検査等が行われた場合はその結果を確認する。
(7) 失語症が、音声言語の障害の程度と比較して、文字言語(読み書き)の障害の程度が重い場合には、その症状も勘案し、総合的に認定する。
(8) 喉頭全摘出手術を施したものについては、原則として次により取り扱う。
ア 手術を施した結果、発音に関わる機能を喪失したものについては、2級と認定する。
イ 障害の程度を認定する時期は、喉頭全摘出手術を施した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。
(9) 歯のみの障害による場合は、補綴等の治療を行った結果により認定を行う。
(10) 音声又は言語機能の障害(特に構音障害)とそしゃく・嚥下機能の障害とは併存することが多いが、この場合には、併合認定の取扱いを行う。また、音声又は言語機能の障害(特に失語症)と肢体の障害又は精神の障害とは併存することが多いが、この場合についても、併合認定の取扱いを行う。
第7節/肢体の障害
肢体の障害による障害の程度は、「上肢の障害」、「下肢の障害」、「体幹・脊柱の機能の障害」及び「肢体の機能の障害」に区分し、次により認定する。
第1 上肢の障害
1 認定基準
上肢の障害については、次のとおりである。
令別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
|
国年令別表 |
1級 |
両上肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「両上肢の用を全く廃したもの」という。) |
|
両上肢のすべての指を欠くもの(以下「両上肢のすべての指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。) |
|||
両上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの(以下「両上肢のすべての指の用を全く廃したもの」という。) |
|||
2級 |
両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの(以下「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。) |
||
両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの(以下「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の用を全く廃したもの」という。) |
|||
一上肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「一上肢の用を全く廃したもの」という。) |
|||
一上肢のすべての指を欠くもの(以下「一上肢のすべての指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。) |
|||
一上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの(以下「一上肢のすべての指の用を全く廃したもの」という。) |
|||
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
|||
厚年令 |
別表第1 |
3級 |
一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの |
長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの |
|||
一上肢のおや指及びひとさし指を失ったもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ一上肢の3指以上を失ったもの(以下「一上肢のおや指及びひとさし指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ、一上肢の3指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの」という。) |
|||
おや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの |
|||
身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
|||
別表第2 |
障害手当金 |
一上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの |
|
長管状骨に著しい転位変形を残すもの |
|||
一上肢の2指以上を失ったもの(以下「一上肢の2指以上を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの」という。) |
|||
一上肢のひとさし指を失ったもの(以下「一上肢のひとさし指を近位指節間関節以上で欠くもの」という。) |
|||
一上肢の3指以上の用を廃したもの |
|||
ひとさし指を併せ一上肢の2指の用を廃したもの |
|||
一上肢のおや指の用を廃したもの |
|||
身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
2 認定要領
上肢の障害は、機能障害、欠損障害及び変形障害に区分する。
(1) 機能障害
ア 「両上肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「両上肢の用を全く廃したもの」とは、両上肢の3大関節中それぞれ2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。
(ア) 不良肢位で強直しているもの
(イ) 関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの
(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの
なお、認定に当たっては、一上肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。
イ 「一上肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「一上肢の用を全く廃したもの」とは、一上肢の3大関節中いずれか2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。
(ア) 不良肢位で強直しているもの
(イ) 関節の他動可動域が、健側の他動可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの
(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの
ウ 「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、両上肢の3大関節中それぞれ1関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの)をいう。
なお、認定に当たっては、一上肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。
エ 「関節の用を廃したもの」とは、関節の他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時(起床より就寝まで)固定装具を必要とする程度の動揺関節)をいう。
オ 「関節に著しい機能障害を残すもの」とは、関節の他動可動域が健側の他動可動域の3分の2以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時ではないが、固定装具を必要とする程度の動揺関節、習慣性脱臼)をいう。
(注) 関節に著しい機能障害がない場合であっても、関節に機能障害を残すもの(「関節の他動可動域が健側の他動可動域の5分の4以下に制限されたもの」又は「これと同程度の障害を残すもの(例えば、固定装具を必要としない程度の動揺関節、習慣性脱臼)」をいう。)に該当する場合は、第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の12号)」にも留意すること。
カ 「上肢の指の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「上肢の指の用を全く廃したもの」とは、指の著しい変形、麻痺による高度の脱力、関節の不良肢位強直、瘢痕による指の埋没又は不良肢位拘縮等により、指があってもそれがないのとほとんど同程度の機能障害があるものをいう。
キ 「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の用を全く廃したもの」とは、両上肢のおや指の用を全く廃した程度の障害があり、それに加えて、両上肢のひとさし指又は中指の用を全く廃した程度の障害があり、そのため両手とも指間に物をはさむことはできても、一指を他指に対立させて物をつまむことができない程度の障害をいう。
ク 「指の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
(ア) 指の末節骨の長さの2分の1以上を欠くもの
(イ) 中手指節関節(MP)又は近位指節間関節(PIP)(おや指にあっては、指節間関節(IP))に著しい運動障害(他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの)を残すもの
ケ 「身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは、一上肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、一上肢の3大関節中1関節が不良肢位で強直しているもの)又は両上肢に機能障害を残すもの(例えば、両上肢の3大関節中それぞれ1関節の筋力が半減しているもの)をいう。
なお、両上肢に障害がある場合の認定に当たっては、一上肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。
コ 人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものについては、次により取り扱う。
(ア) 一上肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものや両上肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは3級と認定する。
ただし、そう入置換してもなお、一上肢については「一上肢の用を全く廃したもの」程度以上に該当するとき、両上肢については「両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの」程度以上に該当するときは、さらに上位等級に認定する。
(イ) 障害の程度を認定する時期は、人工骨頭又は人工関節をそう入置換した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。
サ 「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは、一上肢に機能障害を残すもの(例えば、一上肢の3大関節中1関節の筋力が半減しているもの)をいう。
シ 前腕の他動可動域が健側の他動可動域の4分の1以下に制限されたものは、上記サと同程度の障害を残すもの(第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の10号)」)とする。
ス 日常生活における動作は、おおむね次のとおりである。
(ア) さじで食事をする
(イ) 顔を洗う(顔に手のひらをつける)
(ウ) 用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)
(エ) 用便の処置をする(尻のところに手をやる)
(オ) 上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)
(カ) 上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)
(2) 欠損障害
ア 「上肢の指を欠くもの」とは、基節骨の基部から欠き、その有効長が0のものをいう。
「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの」とは、必ず両上肢のおや指を基部から欠き、それに加えて、両上肢のひとさし指又は中指を基部から欠くものである。
イ 「指を失ったもの」とは、おや指については指節間関節(IP)、その他の指については近位指節間関節(PIP)以上で欠くものをいう。
なお、いずれも切断又は離断による障害の程度を認定する時期は、原則として、切断又は離断をした日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。
ただし、障害手当金を支給すべきときは、創面が治ゆした日とする。
(3) 変形障害
ア 「長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。(偽関節は、骨幹部又は骨幹端部に限る。)
(ア) 上腕骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
(イ) 橈骨及び尺骨の両方に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
なお、いずれも運動機能に著しい障害はないが、上腕骨、橈骨又は尺骨に偽関節を残すもの(「一上肢に偽関節を残すもの」という。)は、障害手当金(第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の8号)」)に相当するものとして認定する。
イ 「長管状骨に著しい転位変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
(ア) 上腕骨に変形を残すもの
(イ) 橈骨又は尺骨に変形を残すもの
ただし、変形とは外部から観察できる程度(15度以上わん曲して不正ゆ合したもの)以上のものをいい、長管状骨の骨折部が良方向に短縮なくゆ着している場合は、たとえその部位に肥厚が生じたとしても、長管状骨の変形としては取り扱わない。
(4) 関節可動域の測定方法、関節の運動及び関節可動域等の評価
測定方法については、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による。
ア 関節の運動に関する評価については、各関節の主要な運動を重視し、他の運動については参考とする。
なお、各関節の主要な運動は次のとおりである。
部位 |
主要な運動 |
肩関節 |
屈曲・外転 |
肘関節 |
屈曲・伸展 |
手関節 |
背屈・掌屈 |
前腕 |
回内・回外 |
手指 |
屈曲・伸展 |
イ 関節可動域の評価は、原則として、健側の関節可動域と比較して患側の障害の程度を評価する。
ただし、両側に障害を有する場合にあっては、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域を参考とする。
ウ 各関節の評価に当たっては、単に関節可動域のみでなく、次の諸点を考慮した上で評価する。
(ア) 筋力 (イ) 巧緻性 (ウ) 速さ (エ) 耐久性
なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、上記諸点を考慮し、日常生活における動作の状態から上肢の障害を総合的に認定する。
第2 下肢の障害
1 認定基準
下肢の障害については、次のとおりである。
令別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
|
国年令別表 |
1級 |
両下肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「両下肢の用を全く廃したもの」という。) |
|
両下肢を足関節以上で欠くもの |
|||
2級 |
両下肢のすべての指を欠くもの(以下「両下肢の10趾を中足趾節関節以上で欠くもの」という。) |
||
一下肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「一下肢の用を全く廃したもの」という。) |
|||
一下肢を足関節以上で欠くもの |
|||
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
|||
厚年令 |
別表第1 |
3級 |
一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの |
長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの |
|||
一下肢をリスフラン関節以上で失ったもの |
|||
両下肢の10趾の用を廃したもの |
|||
身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
|||
別表第2 |
障害手当金 |
一下肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの |
|
一下肢を3センチメートル以上短縮したもの |
|||
長管状骨に著しい転位変形を残すもの |
|||
一下肢の第1趾又は他の4趾以上を失ったもの(以下「一下肢の第1趾又は他の4趾を中足趾節関節以上で欠くもの」という。) |
|||
一下肢の5趾の用を廃したもの |
|||
身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
2 認定要領
下肢の障害は、機能障害、欠損障害、変形障害及び短縮障害に区分する。
(1) 機能障害
ア 「両下肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「両下肢の用を全く廃したもの」とは、両下肢の3大関節中それぞれ2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。
(ア) 不良肢位で強直しているもの
(イ) 関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの
(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの
ただし、両下肢それぞれの膝関節のみが100度屈曲位の強直である場合のように、両下肢の3大関節中単にそれぞれ1関節の用を全く廃するにすぎない場合であっても、その両下肢を歩行時に使用することができない場合には、「両下肢の用を全く廃したもの」と認定する。
なお、認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。
イ 「一下肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「一下肢の用を全く廃したもの」とは、一下肢の3大関節中いずれか2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。
(ア) 不良肢位で強直しているもの
(イ) 関節の他動可動域が、健側の他動可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの
(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの
ただし、膝関節のみが100度屈曲位の強直である場合のように単に1関節の用を全く廃するにすぎない場合であっても、その下肢を歩行時に使用することができない場合には、「一下肢の用を全く廃したもの」と認定する。
ウ 「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、両下肢の3大関節中それぞれ1関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの)をいう。
なお、認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。
エ 「関節の用を廃したもの」とは、関節の他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時(起床より就寝まで)固定装具を必要とする程度の動揺関節)をいう。
オ 「関節に著しい機能障害を残すもの」とは、関節の他動可動域が健側の他動可動域の3分の2以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時ではないが、固定装具を必要とする程度の動揺関節、習慣性脱臼)をいう。
(注) 関節に著しい機能障害がない場合であっても、関節に機能障害を残すもの(「関節の他動可動域が健側の他動可動域の5分の4以下に制限されたもの」又は「これと同程度の障害を残すもの(例えば、固定装具を必要としない程度の動揺関節、習慣性脱臼)」をいう。)に該当する場合は、第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の12号)」にも留意すること。
カ 「足趾の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
(ア) 第1趾は、末節骨の2分の1以上、その他の4趾は遠位趾節間関節(DIP)以上で欠くもの
(イ) 中足趾節関節(MP)又は近位趾節間関節(PIP)(第1趾にあっては、趾節間関節(IP))に著しい運動障害(他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの)を残すもの
なお、両下肢に障害がある場合の認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。
キ 「身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは、一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、一下肢の3大関節中1関節が不良肢位で強直しているもの)又は両下肢に機能障害を残すもの(例えば、両下肢の3大関節中それぞれ1関節の筋力が半減しているもの)をいう。
なお、両下肢に障害がある場合の認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。
ク 人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものについては、次により取り扱う。
(ア) 一下肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものや両下肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは3級と認定する。
ただし、そう入置換してもなお、一下肢については「一下肢の用を全く廃したもの」程度以上に該当するとき、両下肢については「両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」程度以上に該当するときは、さらに上位等級に認定する。
(イ) 障害の程度を認定する時期は、人工骨頭又は人工関節をそう入置換した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。
ケ 「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは、一下肢に機能障害を残すもの(例えば、一下肢の3大関節中1関節の筋力が半減しているもの)をいう。
コ 日常生活における動作は、おおむね次のとおりである。
(ア) 片足で立つ
(イ) 歩く(屋内)
(ウ) 歩く(屋外)
(エ) 立ち上がる
(オ) 階段を上る
(カ) 階段を下りる
(2) 欠損障害
ア 「足関節以上で欠くもの」とは、ショパール関節以上で欠くものをいう。
イ 「趾を欠くもの」とは、中足趾節関節(MP)から欠くものをいう。
なお、いずれも切断又は離断による障害の程度を認定する時期は、原則として、切断又は離断をした日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。
ただし、障害手当金を支給すべきときは、創面が治ゆした日とする。
(3) 変形障害
ア 「長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。(偽関節は、骨幹部又は骨幹端部に限る。)
(ア) 大腿骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
(イ) 脛骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
なお、いずれも運動機能に著しい障害はないが、大腿骨又は脛骨に偽関節を残すもの(「一下肢に偽関節を残すもの」という。)は、障害手当金(第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の8号)」)に相当するものとして認定する。
イ 「長管状骨に著しい転位変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
(ア) 大腿骨に変形を残すもの
(イ) 脛骨に変形を残すもの(腓骨のみに変形を残すものについても、その程度が著しい場合はこれに該当する)
ただし、変形とは外部から観察できる程度(15度以上わん曲して不正ゆ合したもの)以上のものをいい、長管状骨の骨折部が良方向に短縮なくゆ着している場合は、たとえその部位に肥厚が生じたとしても、長管状骨の変形としては取り扱わない。
(4) 短縮障害
下肢長の測定は、上前腸骨棘と脛骨内果尖端を結ぶ直線距離の計測による。
ア 一下肢が健側の長さの4分の1以上短縮した場合は、「一下肢の用を全く廃したもの」に該当するものとして認定する。
イ 一下肢が健側に比して10センチメートル以上又は健側の長さの10分の1以上短縮した場合は、「一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」に該当するものとして認定する。
(5) 関節可動域の測定方法、関節の運動及び関節可動域等の評価
測定方法については、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による。
ア 関節の運動に関する評価については、各関節の主要な運動を重視し、他の運動については参考とする。
なお、各関節の主要な運動は次のとおりである。
部位 |
主要な運動 |
股関節 |
屈曲・伸展 |
膝関節 |
屈曲・伸展 |
足関節 |
背屈・底屈 |
足指 |
屈曲・伸展 |
イ 関節可動域の評価は、原則として、健側の関節可動域と比較して患側の障害の程度を評価する。
ただし、両側に障害を有する場合には、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域を参考とする。
ウ 各関節の評価に当たっては、単に関節可動域のみでなく、次の諸点を考慮した上で評価する。
(ア) 筋力 (イ) 巧緻性 (ウ) 速さ (エ) 耐久性
なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、上記諸点を考慮し、日常生活における動作の状態から下肢の障害を総合的に認定する。
第3 体幹・脊柱の機能の障害
1 認定基準
体幹・脊柱の機能の障害については、次のとおりである。
令別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
|
国年令別表 |
1級 |
体幹の機能に座っていることができない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの |
|
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
|||
2級 |
体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの |
||
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
|||
厚年令 |
別表第1 |
3級 |
脊柱の機能に著しい障害を残すもの |
別表第2 |
障害手当金 |
脊柱の機能に障害を残すもの |