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○国民年金・厚生年金保険障害認定基準の一部改正について〔国民年金法〕

(平成27年3月31日)

(年管発0331第1号)

(日本年金機構理事長あて厚生労働省大臣官房年金管理審議官通知)

(公印省略)

国民年金法施行令(昭和34年政令第184号)別表並びに厚生年金保険法施行令(昭和29年政令第110号)別表第1及び別表第2に規定する障害の程度の認定については、「国民年金・厚生年金保険障害認定基準の改正について」(平成14年3月15日庁保発第12号)により取り扱っているところであるが、近年の医学的知見を反映して、認定基準を見直すとともに、表現や例示の明確化を図るため、関係の専門家による審議等を踏まえ、今般、「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」の一部を別紙1から別紙8のとおり改正し、平成27年6月1日から適用することとしたので通知する。

なお、国民年金法等の一部を改正する法律(昭和60年法律第34号)により従前の例によることとされた同法の規定による改正前の国民年金法(昭和34年法律第141号)及び厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)の規定に基づく障害給付に係る障害の程度の認定については、それぞれ「国民年金障害等級認定基準」(昭和54年11月1日庁保発第31号)及び「国民年金において併合認定を行う場合の後発障害認定基準」(昭和54年11月1日庁保発第32号)並びに「厚生年金保険の障害認定要領」(昭和52年7月15日庁保発第20号)により取り扱うものであることを申し添える。

(別紙1)

(別紙2)

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(別紙3)

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(別紙4)

(別紙5)

(別紙6)

(別紙7)

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(別紙8)

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(参考)

国民年金・厚生年金保険

障害認定基準

平成27年6月1日改正

(P8・9、13~53、56~74、93~95差替え)

第2節/聴覚の障害

聴覚の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

聴覚の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの

2級

両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの

身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令

別表第1

3級

両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの

別表第2

障害手当金

一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの

2 認定要領

聴覚の障害による障害の程度は、純音による聴力レベル値(純音聴力レベル値)及び語音による聴力検査値(語音明瞭度)により認定する。

(1) 聴力レベルは、オージオメータ(JIS規格又はこれに準ずる標準オージオメータ)によって測定するものとする。

ただし、聴覚の障害により障害年金を受給していない者に対し、1級に該当する診断を行う場合には、オージオメータによる検査に加えて、聴性脳幹反応検査等の他覚的聴力検査又はそれに相当する検査を実施する。また、その結果(実施した検査方法及び検査所見)を診断書に記載し、記録データのコピー等を提出(添付)するものとする。

(2) 聴力レベルのデシベル値は、話声域すなわち周波数500、1000、2000ヘルツにおける純音の各デシベル値をa、b、cとした場合、次式により算出する。

なお、この算式により得た値が境界値に近い場合には

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の算式により得た値を参考とする。

a:周波数500ヘルツの音に対する純音聴力レベル値

b:周波数1000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値

c:周波数2000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値

d:周波数4000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値

(3) 最良語音明瞭度の算出は、次によるものとする。

ア 検査は、録音器又はマイク付オージオメータにより、通常の会話の強さで発声し、オージオメータの音量を適当に強めたり、弱めたりして最も適した状態で行う。

イ 検査語は、語音弁別能力測定用語音集により、2秒から3秒に1語の割合で発声し、語音明瞭度を検査する。

なお、語音聴力表は、「57s式語表」あるいは「67s式語表」とする。

ウ 語音明瞭度は、次式により算出し、語音明瞭度の最も高い値を最良語音明瞭度(語音弁別能)とする。

(4) 「身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、両耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のものをいう。

(5) 「両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。

ア 両耳の平均純音聴力レベル値が70デシベル以上のもの

イ 両耳の平均純音聴力レベル値が50デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が50%以下のもの

(6) 「一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの」とは、一耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上のものをいう。

(7) 聴覚の障害により障害年金を受給していない者の障害の状態が1級に該当する場合は、オージオメータによる検査結果のほか、聴性脳幹反応検査等の他覚的聴力検査又はそれに相当する検査結果を把握して、総合的に認定する。

(8) 聴覚の障害(特に内耳の傷病による障害)と平衡機能障害とは、併存することがあるが、この場合には、併合認定の取扱いを行う。

第6節/音声又は言語機能の障害

音声又は言語機能の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

音声又は言語機能の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

2級

音声又は言語機能に著しい障害を有するもの

厚年令

別表第1

3級

言語の機能に相当程度の障害を残すもの

別表第2

障害手当金

言語の機能に障害を残すもの

2 認定要領

(1) 音声又は言語機能の障害とは、発音に関わる機能又は音声言語の理解と表出に関わる機能の障害をいい、構音障害又は音声障害、失語症及び聴覚障害による障害が含まれる。

ア 構音障害又は音声障害

歯、顎、口腔(舌、口唇、口蓋等)、咽頭、喉頭、気管等の発声器官の形態異常や運動機能障害により、発音に関わる機能に障害が生じた状態のものをいう。

イ 失語症

大脳の言語野の後天性脳損傷(脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷や脳炎など)により、一旦獲得された言語機能に障害が生じた状態のものをいう。

ウ 聴覚障害による障害

先天的な聴覚障害により音声言語の表出ができないものや、中途の聴覚障害によって発音に障害が生じた状態のものをいう。

(2) 「音声又は言語機能に著しい障害を有するもの」とは、発音に関わる機能を喪失するか、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方がほとんどできないため、日常会話が誰とも成立しないものをいう。

(3) 「言語の機能に相当程度の障害を残すもの」とは、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に多くの制限があるため、日常会話が、互いに内容を推論したり、たずねたり、見当をつけることなどで部分的に成り立つものをいう。

(4) 「言語の機能に障害を残すもの」とは、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に一定の制限があるものの、日常会話が、互いに確認することなどで、ある程度成り立つものをいう。

(5) 構音障害、音声障害又は聴覚障害による障害については、発音不能な語音を評価の参考とする。発音不能な語音は、次の4種について確認するほか、語音発語明瞭度検査等が行われた場合はその結果を確認する。

ア 口唇音(ま行音、ぱ行音、ば行音等)

イ 歯音、歯茎音(さ行、た行、ら行等)

ウ 歯茎硬口蓋音(しゃ、ちゃ、じゃ等)

エ 軟口蓋音(か行音、が行音等)

(6) 失語症については、失語症の障害の程度を評価の参考とする。

失語症の障害の程度は、音声言語の表出及び理解の程度について確認するほか、標準失語症検査等が行われた場合はその結果を確認する。

(7) 失語症が、音声言語の障害の程度と比較して、文字言語(読み書き)の障害の程度が重い場合には、その症状も勘案し、総合的に認定する。

(8) 喉頭全摘出手術を施したものについては、原則として次により取り扱う。

ア 手術を施した結果、発音に関わる機能を喪失したものについては、2級と認定する。

イ 障害の程度を認定する時期は、喉頭全摘出手術を施した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

(9) 歯のみの障害による場合は、補綴等の治療を行った結果により認定を行う。

(10) 音声又は言語機能の障害(特に構音障害)とそしゃく・嚥下機能の障害とは併存することが多いが、この場合には、併合認定の取扱いを行う。また、音声又は言語機能の障害(特に失語症)と肢体の障害又は精神の障害とは併存することが多いが、この場合についても、併合認定の取扱いを行う。

第7節/肢体の障害

肢体の障害による障害の程度は、「上肢の障害」、「下肢の障害」、「体幹・脊柱の機能の障害」及び「肢体の機能の障害」に区分し、次により認定する。

第1 上肢の障害

1 認定基準

上肢の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

両上肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「両上肢の用を全く廃したもの」という。)

両上肢のすべての指を欠くもの(以下「両上肢のすべての指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。)

両上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの(以下「両上肢のすべての指の用を全く廃したもの」という。)

2級

両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの(以下「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。)

両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの(以下「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の用を全く廃したもの」という。)

一上肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「一上肢の用を全く廃したもの」という。)

一上肢のすべての指を欠くもの(以下「一上肢のすべての指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。)

一上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの(以下「一上肢のすべての指の用を全く廃したもの」という。)

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令

別表第1

3級

一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの

長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの

一上肢のおや指及びひとさし指を失ったもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ一上肢の3指以上を失ったもの(以下「一上肢のおや指及びひとさし指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ、一上肢の3指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの」という。)

おや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの

身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

別表第2

障害手当金

一上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの

長管状骨に著しい転位変形を残すもの

一上肢の2指以上を失ったもの(以下「一上肢の2指以上を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの」という。)

一上肢のひとさし指を失ったもの(以下「一上肢のひとさし指を近位指節間関節以上で欠くもの」という。)

一上肢の3指以上の用を廃したもの

ひとさし指を併せ一上肢の2指の用を廃したもの

一上肢のおや指の用を廃したもの

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

2 認定要領

上肢の障害は、機能障害、欠損障害及び変形障害に区分する。

(1) 機能障害

ア 「両上肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「両上肢の用を全く廃したもの」とは、両上肢の3大関節中それぞれ2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。

(ア) 不良肢位で強直しているもの

(イ) 関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの

(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの

なお、認定に当たっては、一上肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

イ 「一上肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「一上肢の用を全く廃したもの」とは、一上肢の3大関節中いずれか2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。

(ア) 不良肢位で強直しているもの

(イ) 関節の他動可動域が、健側の他動可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの

(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの

ウ 「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、両上肢の3大関節中それぞれ1関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの)をいう。

なお、認定に当たっては、一上肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

エ 「関節の用を廃したもの」とは、関節の他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時(起床より就寝まで)固定装具を必要とする程度の動揺関節)をいう。

オ 「関節に著しい機能障害を残すもの」とは、関節の他動可動域が健側の他動可動域の3分の2以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時ではないが、固定装具を必要とする程度の動揺関節、習慣性脱臼)をいう。

(注) 関節に著しい機能障害がない場合であっても、関節に機能障害を残すもの(「関節の他動可動域が健側の他動可動域の5分の4以下に制限されたもの」又は「これと同程度の障害を残すもの(例えば、固定装具を必要としない程度の動揺関節、習慣性脱臼)」をいう。)に該当する場合は、第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の12号)」にも留意すること。

カ 「上肢の指の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「上肢の指の用を全く廃したもの」とは、指の著しい変形、麻痺による高度の脱力、関節の不良肢位強直、瘢痕による指の埋没又は不良肢位拘縮等により、指があってもそれがないのとほとんど同程度の機能障害があるものをいう。

キ 「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の用を全く廃したもの」とは、両上肢のおや指の用を全く廃した程度の障害があり、それに加えて、両上肢のひとさし指又は中指の用を全く廃した程度の障害があり、そのため両手とも指間に物をはさむことはできても、一指を他指に対立させて物をつまむことができない程度の障害をいう。

ク 「指の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。

(ア) 指の末節骨の長さの2分の1以上を欠くもの

(イ) 中手指節関節(MP)又は近位指節間関節(PIP)(おや指にあっては、指節間関節(IP))に著しい運動障害(他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの)を残すもの

ケ 「身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは、一上肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、一上肢の3大関節中1関節が不良肢位で強直しているもの)又は両上肢に機能障害を残すもの(例えば、両上肢の3大関節中それぞれ1関節の筋力が半減しているもの)をいう。

なお、両上肢に障害がある場合の認定に当たっては、一上肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

コ 人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものについては、次により取り扱う。

(ア) 一上肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものや両上肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは3級と認定する。

ただし、そう入置換してもなお、一上肢については「一上肢の用を全く廃したもの」程度以上に該当するとき、両上肢については「両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの」程度以上に該当するときは、さらに上位等級に認定する。

(イ) 障害の程度を認定する時期は、人工骨頭又は人工関節をそう入置換した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

サ 「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは、一上肢に機能障害を残すもの(例えば、一上肢の3大関節中1関節の筋力が半減しているもの)をいう。

シ 前腕の他動可動域が健側の他動可動域の4分の1以下に制限されたものは、上記サと同程度の障害を残すもの(第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の10号)」)とする。

ス 日常生活における動作は、おおむね次のとおりである。

(ア) さじで食事をする

(イ) 顔を洗う(顔に手のひらをつける)

(ウ) 用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)

(エ) 用便の処置をする(尻のところに手をやる)

(オ) 上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)

(カ) 上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)

(2) 欠損障害

ア 「上肢の指を欠くもの」とは、基節骨の基部から欠き、その有効長が0のものをいう。

「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの」とは、必ず両上肢のおや指を基部から欠き、それに加えて、両上肢のひとさし指又は中指を基部から欠くものである。

イ 「指を失ったもの」とは、おや指については指節間関節(IP)、その他の指については近位指節間関節(PIP)以上で欠くものをいう。

なお、いずれも切断又は離断による障害の程度を認定する時期は、原則として、切断又は離断をした日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

ただし、障害手当金を支給すべきときは、創面が治ゆした日とする。

(3) 変形障害

ア 「長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。(偽関節は、骨幹部又は骨幹端部に限る。)

(ア) 上腕骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの

(イ) 橈骨及び尺骨の両方に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの

なお、いずれも運動機能に著しい障害はないが、上腕骨、橈骨又は尺骨に偽関節を残すもの(「一上肢に偽関節を残すもの」という。)は、障害手当金(第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の8号)」)に相当するものとして認定する。

イ 「長管状骨に著しい転位変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。

(ア) 上腕骨に変形を残すもの

(イ) 橈骨又は尺骨に変形を残すもの

ただし、変形とは外部から観察できる程度(15度以上わん曲して不正ゆ合したもの)以上のものをいい、長管状骨の骨折部が良方向に短縮なくゆ着している場合は、たとえその部位に肥厚が生じたとしても、長管状骨の変形としては取り扱わない。

(4) 関節可動域の測定方法、関節の運動及び関節可動域等の評価

測定方法については、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による。

ア 関節の運動に関する評価については、各関節の主要な運動を重視し、他の運動については参考とする。

なお、各関節の主要な運動は次のとおりである。

部位

主要な運動

肩関節

屈曲・外転

肘関節

屈曲・伸展

手関節

背屈・掌屈

前腕

回内・回外

手指

屈曲・伸展

イ 関節可動域の評価は、原則として、健側の関節可動域と比較して患側の障害の程度を評価する。

ただし、両側に障害を有する場合にあっては、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域を参考とする。

ウ 各関節の評価に当たっては、単に関節可動域のみでなく、次の諸点を考慮した上で評価する。

(ア) 筋力 (イ) 巧緻性 (ウ) 速さ (エ) 耐久性

なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、上記諸点を考慮し、日常生活における動作の状態から上肢の障害を総合的に認定する。

第2 下肢の障害

1 認定基準

下肢の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

両下肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「両下肢の用を全く廃したもの」という。)

両下肢を足関節以上で欠くもの

2級

両下肢のすべての指を欠くもの(以下「両下肢の10趾を中足趾節関節以上で欠くもの」という。)

一下肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「一下肢の用を全く廃したもの」という。)

一下肢を足関節以上で欠くもの

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令

別表第1

3級

一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの

長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの

一下肢をリスフラン関節以上で失ったもの

両下肢の10趾の用を廃したもの

身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

別表第2

障害手当金

一下肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの

一下肢を3センチメートル以上短縮したもの

長管状骨に著しい転位変形を残すもの

一下肢の第1趾又は他の4趾以上を失ったもの(以下「一下肢の第1趾又は他の4趾を中足趾節関節以上で欠くもの」という。)

一下肢の5趾の用を廃したもの

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

2 認定要領

下肢の障害は、機能障害、欠損障害、変形障害及び短縮障害に区分する。

(1) 機能障害

ア 「両下肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「両下肢の用を全く廃したもの」とは、両下肢の3大関節中それぞれ2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。

(ア) 不良肢位で強直しているもの

(イ) 関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの

(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの

ただし、両下肢それぞれの膝関節のみが100度屈曲位の強直である場合のように、両下肢の3大関節中単にそれぞれ1関節の用を全く廃するにすぎない場合であっても、その両下肢を歩行時に使用することができない場合には、「両下肢の用を全く廃したもの」と認定する。

なお、認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

イ 「一下肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「一下肢の用を全く廃したもの」とは、一下肢の3大関節中いずれか2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。

(ア) 不良肢位で強直しているもの

(イ) 関節の他動可動域が、健側の他動可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの

(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの

ただし、膝関節のみが100度屈曲位の強直である場合のように単に1関節の用を全く廃するにすぎない場合であっても、その下肢を歩行時に使用することができない場合には、「一下肢の用を全く廃したもの」と認定する。

ウ 「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、両下肢の3大関節中それぞれ1関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの)をいう。

なお、認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

エ 「関節の用を廃したもの」とは、関節の他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時(起床より就寝まで)固定装具を必要とする程度の動揺関節)をいう。

オ 「関節に著しい機能障害を残すもの」とは、関節の他動可動域が健側の他動可動域の3分の2以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時ではないが、固定装具を必要とする程度の動揺関節、習慣性脱臼)をいう。

(注) 関節に著しい機能障害がない場合であっても、関節に機能障害を残すもの(「関節の他動可動域が健側の他動可動域の5分の4以下に制限されたもの」又は「これと同程度の障害を残すもの(例えば、固定装具を必要としない程度の動揺関節、習慣性脱臼)」をいう。)に該当する場合は、第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の12号)」にも留意すること。

カ 「足趾の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。

(ア) 第1趾は、末節骨の2分の1以上、その他の4趾は遠位趾節間関節(DIP)以上で欠くもの

(イ) 中足趾節関節(MP)又は近位趾節間関節(PIP)(第1趾にあっては、趾節間関節(IP))に著しい運動障害(他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの)を残すもの

なお、両下肢に障害がある場合の認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

キ 「身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは、一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、一下肢の3大関節中1関節が不良肢位で強直しているもの)又は両下肢に機能障害を残すもの(例えば、両下肢の3大関節中それぞれ1関節の筋力が半減しているもの)をいう。

なお、両下肢に障害がある場合の認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

ク 人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものについては、次により取り扱う。

(ア) 一下肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものや両下肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは3級と認定する。

ただし、そう入置換してもなお、一下肢については「一下肢の用を全く廃したもの」程度以上に該当するとき、両下肢については「両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」程度以上に該当するときは、さらに上位等級に認定する。

(イ) 障害の程度を認定する時期は、人工骨頭又は人工関節をそう入置換した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

ケ 「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは、一下肢に機能障害を残すもの(例えば、一下肢の3大関節中1関節の筋力が半減しているもの)をいう。

コ 日常生活における動作は、おおむね次のとおりである。

(ア) 片足で立つ

(イ) 歩く(屋内)

(ウ) 歩く(屋外)

(エ) 立ち上がる

(オ) 階段を上る

(カ) 階段を下りる

(2) 欠損障害

ア 「足関節以上で欠くもの」とは、ショパール関節以上で欠くものをいう。

イ 「趾を欠くもの」とは、中足趾節関節(MP)から欠くものをいう。

なお、いずれも切断又は離断による障害の程度を認定する時期は、原則として、切断又は離断をした日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

ただし、障害手当金を支給すべきときは、創面が治ゆした日とする。

(3) 変形障害

ア 「長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。(偽関節は、骨幹部又は骨幹端部に限る。)

(ア) 大腿骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの

(イ) 脛骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの

なお、いずれも運動機能に著しい障害はないが、大腿骨又は脛骨に偽関節を残すもの(「一下肢に偽関節を残すもの」という。)は、障害手当金(第2章「併合等認定基準(併合判定参考表の8号)」)に相当するものとして認定する。

イ 「長管状骨に著しい転位変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。

(ア) 大腿骨に変形を残すもの

(イ) 脛骨に変形を残すもの(腓骨のみに変形を残すものについても、その程度が著しい場合はこれに該当する)

ただし、変形とは外部から観察できる程度(15度以上わん曲して不正ゆ合したもの)以上のものをいい、長管状骨の骨折部が良方向に短縮なくゆ着している場合は、たとえその部位に肥厚が生じたとしても、長管状骨の変形としては取り扱わない。

(4) 短縮障害

下肢長の測定は、上前腸骨棘と脛骨内果尖端を結ぶ直線距離の計測による。

ア 一下肢が健側の長さの4分の1以上短縮した場合は、「一下肢の用を全く廃したもの」に該当するものとして認定する。

イ 一下肢が健側に比して10センチメートル以上又は健側の長さの10分の1以上短縮した場合は、「一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」に該当するものとして認定する。

(5) 関節可動域の測定方法、関節の運動及び関節可動域等の評価

測定方法については、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による。

ア 関節の運動に関する評価については、各関節の主要な運動を重視し、他の運動については参考とする。

なお、各関節の主要な運動は次のとおりである。

部位

主要な運動

股関節

屈曲・伸展

膝関節

屈曲・伸展

足関節

背屈・底屈

足指

屈曲・伸展

イ 関節可動域の評価は、原則として、健側の関節可動域と比較して患側の障害の程度を評価する。

ただし、両側に障害を有する場合には、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域を参考とする。

ウ 各関節の評価に当たっては、単に関節可動域のみでなく、次の諸点を考慮した上で評価する。

(ア) 筋力 (イ) 巧緻性 (ウ) 速さ (エ) 耐久性

なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、上記諸点を考慮し、日常生活における動作の状態から下肢の障害を総合的に認定する。

第3 体幹・脊柱の機能の障害

1 認定基準

体幹・脊柱の機能の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

体幹の機能に座っていることができない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令

別表第1

3級

脊柱の機能に著しい障害を残すもの

別表第2

障害手当金

脊柱の機能に障害を残すもの

2 認定要領

(1) 体幹の機能の障害

体幹の機能障害は、高度体幹麻痺を後遺した脊髄性小児麻痺、脳性麻痺等によって生じるものである。

ア 「体幹の機能に座っていることができない程度の障害を有するもの」とは、腰掛、正座、あぐら、横すわりのいずれもができないものをいい、「体幹の機能に立ち上がることができない程度の障害を有するもの」とは、臥位又は坐位から自力のみで立ち上れず、他人、柱、杖、その他の器物の介護又は補助によりはじめて立ち上ることができる程度の障害をいう。

イ 「体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの」とは、室内においては、杖、松葉杖、その他の補助用具を必要とせず、起立移動が可能であるが、野外ではこれらの補助用具の助けをかりる必要がある程度の障害をいう。

(2) 脊柱の機能の障害

脊柱の機能障害は、脊柱の脱臼骨折又は強直性脊椎炎等によって生じるもので、荷重機能障害と運動機能障害がある。

ア 荷重機能障害は、脊柱の支持機能の障害で、日常生活及び労働に及ぼす影響が大きいので重視する必要がある。

なお、「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、日常生活における動作が一人でできるが非常に不自由な場合又はこれに近い状態をいう。

イ 日常生活における動作は、おおむね次のとおりである。

(ア) ズボンの着脱(どのような姿勢でもよい)

(イ) 靴下を履く(どのような姿勢でもよい)

(ウ) 座る(正座、横すわり、あぐら、脚なげ出し)

(エ) 深くおじぎ(最敬礼)をする

(オ) 立ち上がる

ウ 運動機能障害は、基本的には、前屈・後屈運動のみの測定で可とするが、脊柱全体の運動機能をみる必要がある場合は回旋・側屈を測定し認定する。

(ア) 「脊柱の機能に著しい障害を残すもの」とは、脊柱又は背部・軟部組織の明らかな器質的変化のため、脊柱の他動可動域が参考可動域の2分の1以下に制限されたものをいう。

(イ) 「脊柱の機能に障害を残すもの」とは、脊柱又は背部・軟部組織の明らかな器質的変化のため、脊柱の他動可動域が参考可動域の4分の3以下に制限されている程度のものや頭蓋・上位頸椎間の著しい異常可動性が生じたものをいう。

しかし、傷病の部位がゆ合してその部位のみについてみると運動不能であっても、他の部位が代償して脊柱に運動障害は軽度あるいはほとんど認められない場合が多いので、脊柱全体の運動機能、すなわち、前記イのような日常生活における動作を考慮し認定する。

エ 脊柱可動域の測定方法については、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による。

オ 神経機能障害との関係

認定に当たっては、単に脊柱の運動障害のみでなく、随伴する神経系統の障害を含め、総合的に認定する。

第4 肢体の機能の障害

1 認定基準

肢体の機能の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令

別表第1

3級

身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

2 認定要領

(1) 肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる障害(脳血管障害、脊髄損傷等の脊髄の器質障害、進行性筋ジストロフィー等)の場合には、本節「第1 上肢の障害」、「第2 下肢の障害」及び「第3 体幹・脊柱の機能の障害」に示したそれぞれの認定基準と認定要領によらず、「第4 肢体の機能の障害」として認定する。

(2) 肢体の機能の障害の程度は、関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定する。

なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定する。

(3) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

1.一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの

2.四肢の機能に相当程度の障害を残すもの

2級

1.一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの

2.四肢に機能障害を残すもの

3級

一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの

(注) 肢体の機能の障害が両上肢、一上肢、両下肢、一下肢、体幹及び脊柱の範囲内に限られている場合には、それぞれの認定基準と認定要領によって認定すること。

なお、肢体の機能の障害が上肢及び下肢の広範囲にわたる場合であって、上肢と下肢の障害の状態が相違する場合には、障害の重い肢で障害の程度を判断し、認定すること。

(4) 日常生活における動作と身体機能との関連は、厳密に区別することができないが、おおむね次のとおりである。

ア 手指の機能

(ア) つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)

(イ) 握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)

(ウ) タオルを絞る(水をきれる程度)

(エ) ひもを結ぶ

イ 上肢の機能

(ア) さじで食事をする

(イ) 顔を洗う(顔に手のひらをつける)

(ウ) 用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)

(エ) 用便の処置をする(尻のところに手をやる)

(オ) 上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)

(カ) 上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)

ウ 下肢の機能

(ア) 片足で立つ

(イ) 歩く(屋内)

(ウ) 歩く(屋外)

(エ) 立ち上がる

(オ) 階段を上る

(カ) 階段を下りる

なお、手指の機能と上肢の機能とは、切り離して評価することなく、手指の機能は、上肢の機能の一部として取り扱う。

(5) 身体機能の障害の程度と日常生活における動作の障害との関係を参考として示すと、次のとおりである。

ア 「用を全く廃したもの」とは、日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」又はこれに近い状態をいう。

イ 「機能に相当程度の障害を残すもの」とは、日常生活における動作の多くが「一人で全くできない場合」又は日常生活における動作のほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」をいう。

ウ 「機能障害を残すもの」とは、日常生活における動作の一部が「一人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」をいう。

(別紙)肢体の障害関係の測定方法

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第8節/精神の障害

精神の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

精神の障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの

2級

精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの

厚年令

別表第1

3級

精神に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

別表第2

障害手当金

精神に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

精神の障害の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの、及び労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものを3級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すものを障害手当金に該当するものと認定する。

精神の障害は、多種であり、かつ、その症状は同一原因であっても多様である。

したがって、認定に当たっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断するとともに、その原因及び経過を考慮する。

2 認定要領

精神の障害は、「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」、「気分(感情)障害」、「症状性を含む器質性精神障害」、「てんかん」、「知的障害」、「発達障害」に区分する。

症状性を含む器質性精神障害、てんかんであって、妄想、幻覚等のあるものについては、「A 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害」に準じて取り扱う。

A 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害

(1) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

1 統合失調症によるものにあっては、高度の残遺状態又は高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験が著明なため、常時の援助が必要なもの

2 気分(感情)障害によるものにあっては、高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの

2級

1 統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの

2 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級

1 統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があり、人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があり、労働が制限を受けるもの

2 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの

(2) 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害の認定に当たっては、次の点を考慮のうえ慎重に行う。

ア 統合失調症は、予後不良の場合もあり、国年令別表・厚年令別表第1に定める障害の状態に該当すると認められるものが多い。しかし、罹病後数年ないし十数年の経過中に症状の好転を見ることもあり、また、その反面急激に増悪し、その状態を持続することもある。したがって、統合失調症として認定を行うものに対しては、発病時からの療養及び症状の経過を十分考慮する。

イ 気分(感情)障害は、本来、症状の著明な時期と症状の消失する時期を繰り返すものである。したがって、現症のみによって認定することは不十分であり、症状の経過及びそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮する。

また、統合失調症等とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(3) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。

(4) 人格障害は、原則として認定の対象とならない。

(5) 神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う。

なお、認定に当たっては、精神病の病態がICD―10による病態区分のどの区分に属す病態であるかを考慮し判断すること。

B 症状性を含む器質性精神障害

(1) 症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む。)とは、先天異常、頭部外傷、変性疾患、新生物、中枢神経等の器質障害を原因として生じる精神障害に、膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる症状性の精神障害を含むものである。

なお、アルコール、薬物等の精神作用物質の使用による精神及び行動の障害(以下「精神作用物質使用による精神障害」という。)についてもこの項に含める。

また、症状性を含む器質性精神障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(2) 各等級等に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時の援助が必要なもの

2級

認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級

1 認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの

2 認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの

障害手当金

認知障害のため、労働が制限を受けるもの

(3) 脳の器質障害については、精神障害と神経障害を区分して考えることは、その多岐にわたる臨床症状から不能であり、原則としてそれらの諸症状を総合して、全体像から総合的に判断して認定する。

(4) 精神作用物質使用による精神障害

ア アルコール、薬物等の精神作用物質の使用により生じる精神障害について認定するものであって、精神病性障害を示さない急性中毒及び明らかな身体依存の見られないものは、認定の対象とならない。

イ 精神作用物質使用による精神障害は、その原因に留意し、発病時からの療養及び症状の経過を十分考慮する。

(5) 高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、日常生活又は社会生活に制約があるものが認定の対象となる。その障害の主な症状としては、失語、失行、失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがある。

なお、障害の状態は、代償機能やリハビリテーションにより好転も見られることから療養及び症状の経過を十分考慮する。

また、失語の障害については、本章「第6節 音声又は言語機能の障害」の認定要領により認定する。

(6) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。

C てんかん

(1) てんかん発作は、部分発作、全般発作、未分類てんかん発作などに分類されるが、具体的に出現する臨床症状は多彩である。

また、発作頻度に関しても、薬物療法によって完全に消失するものから、難治性てんかんと呼ばれる発作の抑制できないものまで様々である。

さらに、てんかん発作は、その重症度や発作頻度以外に、発作間欠期においても、それに起因する様々な程度の精神神経症状や認知障害などが、稀ならず出現することに留意する必要がある。

(2) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが月に1回以上あり、かつ、常時の援助が必要なもの

2級

十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回以上、もしくは、C又はDが月に1回以上あり、かつ、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級

十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回未満、もしくは、C又はDが月に1回未満あり、かつ、労働が制限を受けるもの

(注1) 発作のタイプは以下の通り

A:意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作

B:意識障害の有無を問わず、転倒する発作

C:意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作

D:意識障害はないが、随意運動が失われる発作

(注2) てんかんは、発作と精神神経症状及び認知障害が相まって出現することに留意が必要。また、精神神経症状及び認知障害については、前記「B 症状性を含む器質性精神障害」に準じて認定すること。

(3) てんかんの認定に当たっては、その発作の重症度(意識障害の有無、生命の危険性や社会生活での危険性の有無など)や発作頻度に加え、発作間欠期の精神神経症状や認知障害の結果、日常生活動作がどの程度損なわれ、そのためにどのような社会的不利益を被っているのかという、社会的活動能力の損減を重視した観点から認定する。

様々なタイプのてんかん発作が出現し、発作間欠期に精神神経症状や認知障害を有する場合には、治療及び病状の経過、日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

また、てんかんとその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(4) てんかん発作については、抗てんかん薬の服用や、外科的治療によって抑制される場合にあっては、原則として認定の対象にならない。

D 知的障害

(1) 知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものをいう。

(2) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの

2級

知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの

3級

知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの

(3) 知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する。

また、知的障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(4) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。

(5) 就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。

したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。

E 発達障害

(1) 発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものをいう。

(2) 発達障害については、たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行う。

また、発達障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(3) 発達障害は、通常低年齢で発症する疾患であるが、知的障害を伴わない者が発達障害の症状により、初めて受診した日が20歳以降であった場合は、当該受診日を初診日とする。

(4) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの

2級

発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの

3級

発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの

(5) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。

(6) 就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。

したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。

第10節/呼吸器疾患による障害

呼吸器疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

呼吸器疾患による障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令別表第1

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

呼吸器疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績(胸部X線所見、動脈血ガス分析値等)、一般状態、治療及び病状の経過、年齢、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたり安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。

また、呼吸器疾患による障害の認定の対象は、そのほとんどが慢性呼吸不全によるものであり、特別な取扱いを要する呼吸器疾患として肺結核・じん肺・気管支喘息があげられる。

2 認定要領

呼吸器疾患は、肺結核、じん肺及び呼吸不全に区分する。

A 肺結核

(1) 肺結核による障害の程度は、病状判定及び機能判定により認定する。

(2) 肺結核の病状による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績(胸部X線所見、動脈血ガス分析値等)、排菌状態(喀痰等の塗抹、培養検査等)、一般状態、治療及び病状の経過、年齢、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定する。

(3) 病状判定により各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

認定の時期前6月以内に常時排菌があり、胸部X線所見が日本結核病学会病型分類(以下「学会分類」という。)のⅠ型(広汎空洞型)又はⅡ型(非広汎空洞型)、Ⅲ型(不安定非空洞型)で病巣の拡がりが3(大)であるもので、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの

2級

1 認定の時期前6月以内に排菌がなく、学会分類のⅠ型若しくはⅡ型又はⅢ型で病巣の拡がりが3(大)であるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの

2 認定の時期前6月以内に排菌があり、学会分類のⅢ型で病巣の拡がりが1(小)又は2(中)であるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの

3級

1 認定の時期前6月以内に排菌がなく、学会分類のⅠ型若しくはⅡ型又はⅢ型で、積極的な抗結核薬による化学療法を施行しているもので、かつ、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とするもの

2 認定の時期前6月以内に排菌があり、学会分類Ⅳ型であるもので、かつ、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とするもの

(4) 肺結核に他の結核又は他の疾病が合併している場合は、その合併症の軽重、治療法、従来の経過等を勘案した上、具体的な日常生活状況等を考慮するとともに、第2「1 障害の程度」及び本節「1 認定基準」を踏まえて、総合的に認定する。

(5) 肺結核及び肺結核後遺症の機能判定による障害の程度は、「C 呼吸不全」の認定要領によって認定する。

(6) 加療による胸郭変形は、それ自体は認定の対象とならないが、肩関節の運動障害を伴う場合には、本章「第7節 第1 上肢の障害」として、その程度に応じて併合認定の取扱いを行う。

(7) 「抗結核剤による化学療法を施行しているもの」とは、少なくとも2剤以上の抗結核剤により、積極的な化学療法を施行しているものをいう。

B じん肺

(1) じん肺による障害の程度は、病状判定及び機能判定により認定する。

(2) じん肺の病状による障害の程度は、胸部X線所見、呼吸不全の程度、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定する。

(3) 病状判定により各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

胸部X線所見がじん肺法の分類の第4型であり、大陰影の大きさが1側の肺野の1/3以上のもので、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの

2級

胸部X線所見がじん肺法の分類の第4型であり、大陰影の大きさが1側の肺野の1/3以上のもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの

3級

胸部X線所見がじん肺法の分類の第3型のもので、かつ、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とするもの

(4) じん肺の機能判定による障害の程度は、「C 呼吸不全」の認定要領によって認定する。

C 呼吸不全

(1) 呼吸不全とは、原因のいかんを問わず、動脈血ガス分析値、特に動脈血O2分圧と動脈血CO2分圧が異常で、そのために生体が正常な機能を営み得なくなった状態をいう。

認定の対象となる病態は、主に慢性呼吸不全である。

慢性呼吸不全を生じる疾患は、閉塞性換気障害(肺気腫、気管支喘息、慢性気管支炎等)、拘束性換気障害(間質性肺炎、肺結核後遺症、じん肺等)、心血管系異常、神経・筋疾患、中枢神経系異常等多岐にわたり、肺疾患のみが対象疾患ではない。

(2) 呼吸不全の主要症状としては、咳、痰、喘鳴、胸痛、労作時の息切れ等の自覚症状、チアノーゼ、呼吸促迫、低酸素血症等の他覚所見がある。

(3) 検査成績としては、動脈血ガス分析値、予測肺活量1秒率及び必要に応じて行う運動負荷肺機能検査等がある。

(4) 動脈血ガス分析値及び予測肺活量1秒率の異常の程度を参考として示すと次のとおりである。

なお、動脈血ガス分析値の測定は、安静時に行うものとする。

A表 動脈血ガス分析値

区分

検査項目

単位

軽度異常

中等度異常

高度異常

1

動脈血O2分圧

Torr

70~61

60~56

55以下

2

動脈血CO2分圧

Torr

46~50

51~59

60以上

(注) 病状判定に際しては、動脈血O2分圧値を重視する。

B表 予測肺活量1秒率

検査項目

単位

軽度異常

中等度異常

高度異常

予測肺活量1秒率

40~31

30~21

20以下

(5) 呼吸不全による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(6) 呼吸不全による各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

前記(4)のA表及びB表の検査成績が高度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

前記(4)のA表及びB表の検査成績が中等度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの

3級

前記(4)のA表及びB表の検査成績が軽度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

なお、呼吸不全の障害の程度の判定は、A表の動脈血ガス分析値を優先するが、その他の検査成績等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

(7) 慢性気管支喘息については、症状が安定している時期においての症状の程度、使用する薬剤、酸素療法の有無、検査所見、具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定することとし、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

最大限の薬物療法を行っても発作強度が大発作となり、無症状の期間がなく一般状態区分表のオに該当する場合であって、予測肺活量1秒率が高度異常(測定不能を含む)、かつ、動脈血ガス分析値が高度異常で常に在宅酸素療法を必要とするもの

2級

呼吸困難を常に認める。常時とは限らないが、酸素療法を必要とし、一般状態区分表のエ又はウに該当する場合であって、プレドニゾロンに換算して1日10mg相当以上の連用、又は5mg相当以上の連用と吸入ステロイド高用量の連用を必要とするもの

3級

喘鳴や呼吸困難を週1回以上認める。非継続的なステロイド薬の使用を必要とする場合があり、一般状態区分表のウ又はイに該当する場合であって、吸入ステロイド中用量以上及び長期管理薬を追加薬として2剤以上の連用を必要とし、かつ、短時間作用性吸入β2刺激薬頓用を少なくとも週に1回以上必要とするもの

(注1) 上記表中の症状は、的確な喘息治療を行い、なおも、その症状を示すものであること。

また、全国的に見て、喘息の治療が必ずしも専門医(呼吸器内科等)が行っているとは限らず、また、必ずしも「喘息予防・管理ガイドライン2009(JGL2009)」に基づく治療を受けているとは限らないことに留意が必要。

(注2) 喘息は疾患の性質上、肺機能や血液ガスだけで重症度を弁別することには無理がある。このため、臨床症状、治療内容を含めて総合的に判定する必要がある。

(注3) 「喘息+肺気腫(COPD)」あるいは、「喘息+肺線維症」については、呼吸不全の基準で認定する。

(8) 在宅酸素療法を施行中のものについては、原則として次により取り扱う。

ア 常時(24時間)の在宅酸素療法を施行中のもので、かつ、軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のものは3級と認定する。

なお、臨床症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

イ 障害の程度を認定する時期は、在宅酸素療法を開始した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

(9) 原発性肺高血圧症や慢性肺血栓塞栓症等の肺血管疾患については、前記(4)のA表及び認定時の具体的な日常生活状況等によって、総合的に認定する。

(10) 慢性肺疾患により非代償性の肺性心を生じているものは3級と認定する。

なお、治療及び病状の経過、検査成績、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

(11) 慢性肺疾患では、それぞれ個人の順応や代償という現象があり、また他方では、多臓器不全の病状も呈してくることから、呼吸機能検査成績が必ずしも障害の程度を示すものとは言えない。

(12) 肺疾患に罹患し手術を行い、その後、呼吸不全を生じたものは、肺手術と呼吸不全発生までの期間が長いものであっても、相当因果関係があるものと認められる。

<参考> 「喘息予防・管理ガイドライン2009(JGL2009)」より抜粋

1 喘息治療のステップ

 

治療ステップ1

治療ステップ2

治療ステップ3

治療ステップ4

長期管理薬

基本治療

吸入ステロイド薬(低用量)

吸入ステロイド薬(低~中用量)

吸入ステロイド薬(中~高用量)

吸入ステロイド薬(高用量)

上記が使用できない場合以下のいずれかを用いる

LTRA

テオフィリン徐放製剤(症状が稀であれば必要なし)

上記で不十分な場合に以下いずれか一剤を併用

LABA

(配合剤の使用可)

LTRA

テオフィリン徐放製剤

上記に下記のいずれか1剤、あるいは複数を併用

LABA

(配合剤の使用可)

LTRA

テオフィリン徐放製剤

上記に下記の複数を併用

LABA

(配合剤の使用可)

LTRA

テオフィリン徐放製剤上記のすべてでも管理不良の場合は下記のいずれかあるいは両方を追加

抗IgE抗体2)

経口ステロイド薬3)

追加治療

LTRA以外の抗アレルギー薬1)

LTRA以外の抗アレルギー薬1)

LTRA以外の抗アレルギー薬1)

LTRA以外の抗アレルギー薬1)

発作治療4)

吸入SABA

吸入SABA

吸入SABA

吸入SABA

未治療の状態で対象となる症状

(軽症間欠型相当)

・症状が週1回未満

・症状は軽度で短い

・夜間症状は月に2回未満

(軽症持続型相当)

・症状が週1回以上、しかし毎日ではない

・月1回以上日常生活や睡眠が妨げられる

・夜間症状は月2回以上

(中等症持続型相当)

・症状が毎日ある

・短時間作用性吸入β2刺激薬がほぼ毎日必要

・週1回以上日常生活や睡眠が妨げられる

・夜間症状が週1回以上

(重症持続型相当)

・治療下でもしばしば増悪

・症状が毎日ある

・日常生活が制限される

・夜間症状がしばしば

LTRA:ロイコトリエン受容体拮抗薬

LABA:長時間作用性β2刺激薬

SABA:短時間作用性β2刺激薬

1) 抗アレルギー薬とは、メディエーター遊離抑制薬、ヒスタミンH1拮抗薬、トロンボキサンA2阻害薬、Th2サイトカイン阻害薬を指す。

2) 通年性吸入抗原に対して陽性かつ血清総IgE値が30~700IU/mLの場合に適用となる。

3) 経口ステロイド薬は短時間の間欠的投与を原則とする。他の薬剤で治療内容を強化し、かつ短時間の間欠投与でもコントロールが得られない場合は、必要最小量を維持量とする。

4) 軽度の発作までの対応を示し、それ以上の発作については喘息予防・管理ガイドライン2009 7―2「急性増悪(発作)への対応(成人)」を参照

※ 予防・管理に用いる薬剤には、長期管理薬(コントローラー)と急性発作の治療に用いる(リリーバー)があり、これらの薬剤をそれぞれのステップに応じて使用する。コントローラーは抗炎症薬と長時間作用性気管支拡張薬であり、リリーバーは短時間作用性気管支拡張薬と全身性ステロイド薬である

2 コントロール状態の評価

 

コントロール良好

(すべての項目が該当)

コントロール不十分

(いずれかの項目が該当)

コントロール不良

喘息症状(日中および夜間)

なし

週1回以上

コントロール不十分の項目が3つ以上当てはまる

発作治療薬の使用

なし

週1回以上

運動を含む活動制限

なし

あり

呼吸機能(FEV1およびPEF)

正常範囲内

予測値あるいは自己最高値の80%未満

PEFの日(週)内変動

20%未満

20%以上

増悪

なし

年に1回以上

月に1回以上*

*増悪が月に1回以上あれば他の項目が該当しなくてもコントロール不良と評価する。

3 各吸入ステロイド薬の吸入器の種類

 

pMDI

(加圧噴霧式定量吸入器)

DPI

(ドライパウダー吸入器)

BDP(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)

BDP―HFA

(キュバール)

なし

FP(フルチカゾンプロピオン酸エステル)

FP―HFA

(フルタイドエアー)

FP―DPI(フルタイドディスカス、フルタイドディスクヘラー)

SM(サルメテロールキシナホ酸塩)との配合剤

FP/SM HFA

(アドエアエアー)

FP/SM DPI(アドエアディスカス)

BUD(ブデソニド)

なし

BUD―DPI(パルミコートタービュヘイラー)

FM(ホルモテロールフマル酸塩水和物)との配合剤

なし

BUD/FM(シムビコートタービュヘイラー)

CIC(シクレソニド)

CIC―HFA

(オルベスコ)

なし

MF(モメタゾンフランカルボン酸エステル)

なし

MF―DPI(アズマネックスツイストヘラー)

4 各吸入ステロイド薬の治療ステップ別推奨量

薬剤名

治療ステップ1~2

低用量

治療ステップ3

中用量

治療ステップ4

高用量

BDP―HFA

100~200μg/日

200~400μg/日

400~800μg/日

FP―HFA

100~200μg/日

200~400μg/日

400~800μg/日

CIC―HFA

100~200μg/日

200~400μg/日

400~800μg/日

FP―DPI

100~200μg/日

200~400μg/日

400~800μg/日

BUD―DPI

200~400μg/日

400~800μg/日

800~1,600μg/日

MF―DPI

100~200μg/日

200~400μg/日

400~800μg/日

第11節/心疾患による障害

心疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

心疾患による障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令別表第1

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

心疾患による障害の程度は、呼吸困難、心悸亢進、尿量減少、夜間多尿、チアノーゼ、浮腫等の臨床症状、X線、心電図等の検査成績、一般状態、治療及び病状の経過等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) この節に述べる心疾患とは、心臓だけではなく、血管を含む循環器疾患を指すものである。(ただし、血圧については、本章「第17節 高血圧症による障害」で述べるので除く。)

心疾患による障害は、弁疾患、心筋疾患、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、難治性不整脈、大動脈疾患、先天性心疾患に区分する。

(2) 心疾患の障害等級の認定は、最終的には心臓機能が慢性的に障害された慢性心不全の状態を評価することである。この状態は虚血性心疾患や弁疾患、心筋疾患などのあらゆる心疾患の終末像である。

慢性心不全とは、心臓のポンプ機能の障害により、体の末梢組織への血液供給が不十分となった状態を意味し、一般的には左心室系の機能障害が主体をなすが、右心室系の障害も考慮に入れなければならない。左心室系の障害により、動悸や息切れ、肺うっ血による呼吸困難、咳・痰、チアノーゼなどが、右心室系の障害により、全身倦怠感や浮腫、尿量減少、頚静脈怒張などの症状が出現する。

(3) 心疾患の主要症状としては、胸痛、動悸、呼吸困難、失神等の自覚症状、浮腫、チアノーゼ等の他覚所見がある。

臨床所見には、自覚症状(心不全に基づく)と他覚所見があるが、後者は医師の診察により得られた客観的症状なので常に自覚症状と連動しているか否かに留意する必要がある(以下、各心疾患に同じ)。重症度は、心電図、心エコー図・カテーテル検査、動脈血ガス分析値も参考とする。

(4) 検査成績としては、血液検査(BNP値)、心電図、心エコー図、胸部X線、X線CT、MRI等、核医学検査、循環動態検査、心カテーテル検査(心カテーテル法、心血管造影法、冠動脈造影法等)等がある。

(5) 肺血栓塞栓症、肺動脈性肺高血圧症は、心疾患による障害として認定する。

(6) 心血管疾患が重複している場合には、客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を十分考慮して総合的に認定する。

(7) 心疾患の検査での異常検査所見を一部示すと、次のとおりである。

区分

異常検査所見

A

安静時の心電図において、0.2mV以上のSTの低下もしくは0.5mV以上の深い陰性T波(aVR誘導を除く。)の所見のあるもの

B

負荷心電図(6Mets未満相当)等で明らかな心筋虚血所見があるもの

C

胸部X線上で心胸郭係数60%以上又は明らかな肺静脈性うっ血所見や間質性肺水腫のあるもの

D

心エコー図で中等度以上の左室肥大と心拡大、弁膜症、収縮能の低下、拡張能の制限、先天性異常のあるもの

E

心電図で、重症な頻脈性又は徐脈性不整脈所見のあるもの

F

左室駆出率(EF)40%以下のもの

G

BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が200pg/ml相当を超えるもの

H

重症冠動脈狭窄病変で左主幹部に50%以上の狭窄、あるいは、3本の主要冠動脈に75%以上の狭窄を認めるもの

I

心電図で陳旧性心筋梗塞所見があり、かつ、今日まで狭心症状を有するもの

(注1) 原則として、異常検査所見があるもの全てについて、それに該当する心電図等を提出(添付)させること。

(注2) 「F」についての補足

心不全の原因には、収縮機能不全と拡張機能不全とがある。

近年、心不全症例の約40%はEF値が保持されており、このような例での心不全は左室拡張不全機能障害によるものとされている。しかしながら、現時点において拡張機能不全を簡便に判断する検査法は確立されていない。左室拡張末期圧基準値(5-12mmHg)をかなり超える場合、パルスドプラ法による左室流入血流速度波形を用いる方法が一般的である。この血流速度波形は急速流入期血流速度波形(E波)と心房収縮期血流速度波形(A波)からなり、E/A比が1.5以上の場合は、重度の拡張機能障害といえる。

(注3) 「G」についての補足

心不全の進行に伴い、神経体液性因子が血液中に増加することが確認され、心不全の程度を評価する上で有用であることが知られている。中でも、BNP値(心室で生合成され、心不全により分泌が亢進)は、心不全の重症度を評価する上でよく使用されるNYHA分類の重症度と良好な相関性を持つことが知られている。この値が常に100pg/ml以上の場合は、NYHA心機能分類でⅡ度以上と考えられ、200pg/ml以上では心不全状態が進行していると判断される。

(注4) 「H」についての補足

すでに冠動脈血行再建が完了している場合を除く。

(8) 心疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(参考) 上記区分を身体活動能力にあてはめると概ね次のとおりとなる。

区分

身体活動能力

6Mets以上

4Mets以上6Mets未満

3Mets以上4Mets未満

2Mets以上3Mets未満

2Mets未満

(注) Metsとは、代謝当量をいい、安静時の酸素摂取量(3.5ml/kg体重/分)を1Metsとして活動時の酸素摂取量が安静時の何倍かを示すものである。

(9) 疾患別に各等級に相当すると認められるものを一部例示すると、次のとおりである。

① 弁疾患

障害の程度

障害の状態

1級

病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

1 人工弁を装着術後、6ヶ月以上経過しているが、なお病状をあわらす臨床所見が5つ以上、かつ、異常検査所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち2つ以上の所見、かつ、病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

1 人工弁を装着したもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち1つ以上の所見、かつ、病状をあらわす臨床所見が2つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

(注1) 複数の人工弁置換術を受けている者にあっても、原則3級相当とする。

(注2) 抗凝固薬使用による出血傾向については、重度のものを除き認定の対象とはしない。

② 心筋疾患

障害の程度

障害の状態

1級

病状(障害)が重篤で安静時においても、心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

1 異常検査所見のFに加えて、病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち2つ以上の所見及び心不全の病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

1 EF値が50%以下を示し、病状をあらわす臨床所見が2つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち1つ以上の所見及び心不全の病状をあらわす臨床所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

(注) 肥大型心筋症は、心室の収縮は良好に保たれるが、心筋肥大による心室拡張機能障害や左室流出路狭窄に伴う左室流出路圧較差などが病態の基本となっている。したがってEF値が障害認定にあたり、参考とならないことが多く、臨床所見や心電図所見、胸部X線検査、心臓エコー検査所見なども参考として総合的に障害等級を判断する。

③ 虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)

障害の程度

障害の状態

1級

病状(障害)が重篤で安静時においても、常時心不全あるいは狭心症状を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

異常検査所見が2つ以上、かつ、軽労作で心不全あるいは狭心症などの症状をあらわし、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

異常検査所見が1つ以上、かつ、心不全あるいは狭心症などの症状が1つ以上あるもので、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

(注) 冠動脈疾患とは、主要冠動脈に少なくとも1ヶ所の有意狭窄をもつ。あるいは、冠攣縮が証明されたものを言い、冠動脈造影が施行されていなくとも心電図、心エコー図、核医学検査等で明らかに冠動脈疾患と考えられるものも含む。

④ 難治性不整脈

障害の程度

障害の状態

1級

病状(障害)が重篤で安静時においても、常時心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

1 異常検査所見のEがあり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、F、Gのうち2つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

1 ペースメーカー、ICDを装着したもの

2 異常検査所見のA、B、C、D、F、Gのうち1つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

(注1) 難治性不整脈とは、放置すると心不全や突然死を引き起こす危険性の高い不整脈で、適切な治療を受けているにも拘わらず、それが改善しないものを言う。

(注2) 心房細動は、一般に加齢とともに漸増する不整脈であり、それのみでは認定の対象とはならないが、心不全を合併したり、ペースメーカーの装着を要する場合には認定の対象となる。

⑤ 大動脈疾患

障害の程度

障害の状態

3級

1 胸部大動脈解離(Stanford分類A型・B型)や胸部大動脈瘤により、人工血管を挿入し、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

2 胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤に、難治性の高血圧を合併したもの

(注1)

Stanford分類A型:上行大動脈に解離がある。

Stanford分類B型:上行大動脈まで解離が及んでいないもの。

(注2) 大動脈瘤とは、大動脈の一部がのう状又は紡錘状に拡張した状態で、先天性大動脈疾患や動脈硬化(アテローム硬化)、膠原病などが原因となる。これのみでは認定の対象とはならないが、原疾患の活動性や手術による合併症が見られる場合には、総合的に判断する。

(注3) 胸部大動脈瘤には、胸腹部大動脈瘤も含まれる。

(注4) 難治性高血圧とは、塩分制限などの生活習慣の修正を行った上で、適切な薬剤3薬以上の降圧薬を適切な用量で継続投与しても、なお、収縮期血圧が140mmHg以上又は拡張期血圧が90mmHg以上のもの。

(注5) 大動脈疾患では、特殊な例を除いて心不全を呈することはなく、また最近の医学の進歩はあるが、完全治癒を望める疾患ではない。従って、一般的には1・2級には該当しないが、本傷病に関連した合併症(周辺臓器への圧迫症状など)の程度や手術の後遺症によっては、さらに上位等級に認定する。

・大動脈瘤の定義:嚢状のものは大きさを問わず、紡錘状のものは、正常時(2.5~3cm)の1.5倍以上のものをいう。(2倍以上は手術が必要。)

・人工血管にはステントグラフトも含まれる。

⑥ 先天性心疾患

障害の程度

障害の状態

1級

病状(障害)が重篤で安静時においても、常時心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

1 異常検査所見が2つ以上及び病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

2 Eisenmenger化(手術不可能な逆流状況が発生)を起こしているもので、かつ、一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級

1 異常検査所見のC、D、Eのうち1つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

2 肺体血流比1.5以上の左右短絡、平均肺動脈収縮期圧50mmHg以上のもので、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

⑦ 重症心不全

心臓移植や人工心臓等を装着した場合の障害等級は、次のとおりとする。ただし、術後は次の障害等級に認定するが、1~2年程度経過観察したうえで症状が安定しているときは、臨床症状、検査成績、一般状態区分表を勘案し、障害等級を再認定する。

・心臓移植 1級

・人工心臓 1級

・CRT(心臓再同期医療機器)、CRT―D(除細動器機能付き心臓再同期医療機器) 2級

(10) 心臓ペースメーカー、又はICD(植込み型除細動器)、又は人工弁を装着した場合の障害の程度を認定すべき日は、それらを装着した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

(11) 各疾患によって、用いられる検査が異なっており、また、特殊検査も多いため、診断書上に適切に症状をあらわしていると思われる検査成績が記載されているときは、その検査成績も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

第12節/腎疾患による障害

腎疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

腎疾患による障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令別表第1

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

腎疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び病状の経過、人工透析療法の実施状況、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) 腎疾患による障害の認定の対象はそのほとんどが、慢性腎不全に対する認定である。慢性腎不全とは、慢性腎疾患によって腎機能障害が持続的に徐々に進行し、生体が正常に維持できなくなった状態をいう。

すべての腎疾患は、長期に経過すれば腎不全に至る可能性がある。腎疾患で最も多いものは、糖尿病性腎症、慢性腎炎(ネフローゼ症候群を含む。)、腎硬化症であるが、他にも、多発性嚢胞腎、急速進行性腎炎、腎盂腎炎、膠原病、アミロイドーシス等がある。

(2) 腎疾患の主要症状としては、悪心、嘔吐、食欲不振、頭痛等の自覚症状、浮腫、貧血、アシドーシス等の他覚所見がある。

(3) 検査としては、尿検査、血球算定検査、血液生化学検査(血清尿素窒素、血清クレアチニン、血清電解質等)、動脈血ガス分析、腎生検等がある。

(4) 病態別に検査項目及び異常値の一部を示すと次のとおりである。

① 慢性腎不全

区分

検査項目

単位

軽度異常

中等度異常

高度異常

内因性クレアチニン

クリアランス

ml/分

20以上30未満

10以上20未満

10未満

血清クレアチニン

mg/dl

3以上5未満

5以上8未満

8以上

(注) eGFR(推算糸球体濾過量)が記載されていれば、血清クレアチニンの異常に替えて、eGFR(単位はml/分/1.73m2)が10以上20未満のときは軽度異常、10未満のときは中等度異常と取り扱うことも可能とする。

② ネフローゼ症候群

区分

検査項目

単位

異常

尿蛋白量

(1日尿蛋白量又は尿蛋白/尿クレアチニン比)

g/日又はg/gCr

3.5以上を持続する

血清アルブミン(BCG法)

g/dl

3.0以下

血清総蛋白

g/d

6.0以下

(5) 腎疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(6) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

前記(4)①の検査成績が高度異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの

2級

1 前記(4)①の検査成績が中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの

2 人工透析療法施行中のもの

3級

1 前記(4)①の検査成績が軽度、中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

2 前記(4)②の検査成績のうちアが異常を示し、かつ、イ又はウのいずれかが異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

(7) 人工透析療法施行中のものについては、原則として次により取り扱う。

ア 人工透析療法施行中のものは2級と認定する。

なお、主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、長期透析による合併症の有無とその程度、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

イ 障害の程度を認定する時期は、人工透析療法を初めて受けた日から起算して3月を経過した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

(8) 検査成績は、その性質上変動しやすいものであるので、腎疾患の経過中において最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて認定を行うものとする。

(9) 糸球体腎炎(ネフローゼ症候群を含む。)、腎硬化症、多発性嚢胞腎、腎盂腎炎に罹患し、その後慢性腎不全を生じたものは、両者の期間が長いものであっても、相当因果関係があるものと認められる。

(10) 腎疾患は、その原因疾患が多岐にわたり、それによって生じる臨床所見、検査所見も、また様々なので、前記(4)の検査成績によるほか、合併症の有無とその程度、他の一般検査及び特殊検査の検査成績、治療及び病状の経過等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して総合的に認定する。

(11) 腎臓移植の取扱い

ア 腎臓移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定する。

イ 障害年金を支給されている者が腎臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする。

第18節/その他の疾患による障害

その他の疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

その他の疾患による障害については、次のとおりである。

令別表

障害の程度

障害の状態

国年令別表

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

厚年令別表第1

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

その他の疾患による障害の程度は、全身状態、栄養状態、年齢、術後の経過、予後、原疾患の性質、進行状況等、具体的な日常生活状況等を考慮し、総合的に認定するものとし、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状があり、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) その他の疾患による障害は、本章「第1節 眼の障害」から「第17節 高血圧症による障害」において取り扱われていない疾患を指すものであるが、本節においては、腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症及びいわゆる難病並びに臓器移植の取扱いを定める。

(2) 腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症

ア 腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症とは、胃切除によるダンピング症候群等、短絡的腸吻合術による盲管症候群、虫垂切除等による癒着性腸閉塞又は癒着性腹膜炎、腸ろう等をいう。

イ 腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症の障害の程度は、全身状態、栄養状態、年齢、術後の経過、予後、原疾患の性質、進行状況、具体的な日常生活状況等を考慮し、総合的に認定するものとする。

(3) 人工肛門、新膀胱

ア 人工肛門又は新膀胱を造設したもの若しくは尿路変更術を施したものは、3級と認定する。

なお、次のものは、2級と認定する。

(ア) 人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設したもの又は尿路変更術を施したもの

(イ) 人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害(カテーテル留置又は自己導尿の常時施行を必要とする)状態にあるもの

なお、全身状態、術後の経過及び予後、原疾患の性質、進行状況等により総合的に判断し、さらに上位等級に認定する。

イ 障害の程度を認定する時期は、次により取り扱う。

人工肛門を造設し又は尿路変更術を施した場合はそれらを行った日から起算して6月を経過した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とし、新膀胱を造設した場合はその日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

なお、(3)ア(ア)及び(イ)の場合に障害の程度を認定する時期は、次により取り扱う。

(ア) 人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設した場合は、人工肛門を造設した日から起算して6月を経過した日又は新膀胱を造設した日のいずれか遅い日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

(イ) 人工肛門を造設し、かつ、尿路変更術を施した場合は、それらを行った日のいずれか遅い日から起算して6月を経過した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

(ウ) 人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害状態にある場合は、人工肛門を造設した日又は完全排尿障害状態に至った日のいずれか遅い日から起算して6月を経過した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

(4) 遷延性植物状態については、次により取り扱う。

ア 遷延性植物状態については、日常生活の用を弁ずることができない状態であると認められるため、1級と認定する。

イ 障害の程度を認定する時期は、その障害の状態に至った日から起算して3月を経過した日以後に、医学的観点から、機能回復がほとんど望めないと認められるとき(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

(5) いわゆる難病については、その発病の時期が不定、不詳であり、かつ、発病は緩徐であり、ほとんどの疾患は、臨床症状が複雑多岐にわたっているため、その認定に当たっては、客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を十分考慮して総合的に認定するものとする。

なお、厚生労働省研究班や関係学会で定めた診断基準、治療基準があり、それに該当するものは、病状の経過、治療効果等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

(6) 臓器移植の取扱い

ア 臓器移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過及び検査成績等を十分に考慮して総合的に認定する。

イ 障害等級に該当するものが、臓器移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間、少なくとも1年間は従前の等級とする。

なお、障害等級が3級の場合は、2年間の経過観察を行う。

(7) 障害の程度は、一般状態が次表の一般状態区分表のオに該当するものは1級に、同表のエ又はウに該当するものは2級に、同表のウ又はイに該当するものは3級におおむね相当するので、認定に当たっては、参考とする。

一般状態区分表

区分

一般状態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(8) 本章「第1節 眼の障害」から「第17節 高血圧症による障害」及び本節に示されていない障害及び障害の程度については、その障害によって生じる障害の程度を医学的に判断し、最も近似している認定基準の障害の程度に準じて認定する。