○地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等及び経過措置に関する政令等の施行に伴う留意事項について
(平成27年3月31日)
(老介発0331第1号)
(各都道府県介護保険主管部(局)長あて厚生労働省老健局介護保険計画課長通知)
(公印省略)
介護保険制度の円滑な運営につきましては、平素より格別の御高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
今般、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(平成26年法律第83号)による介護保険法(平成9年法律第123号)の改正の一部の施行に伴い、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等及び経過措置に関する政令(平成27年政令第138号。以下「整備政令」という。)」、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令(平成27年厚生労働省令第57号。以下「整備省令」という。)」及び「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係告示の整備等に関する告示(平成27年厚生労働省告示第195号。以下「整備告示」という。)」が本日公布され、平成27年4月1日(一部の規定は平成27年8月1日)から施行することとされました。
整備政令、整備省令及び整備告示のあらましは、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等及び経過措置に関する政令等の公布について(平成27年3月31日付け老発0331第11号)」により示されているところですが、これらの改正のうち、費用負担の見直し関係の留意事項は下記のとおりですので、貴職におかれましては、これを御了知いただくとともに、管内市町村等に周知をお願いいたします。
記
第1 一定以上所得者の利用者負担の見直し(平成27年8月1日施行)
1 2割負担となる一定以上所得者の基準
(1) 趣旨
高齢化の進展に伴う介護費用の増大の中で、保険料の上昇を可能な限り抑えつつ、制度の持続可能性を高めるため、これまで一律1割に据え置いている利用者負担について、相対的に負担能力のある一定以上所得者の負担割合を2割とすることとされた。具体的には、介護保険法第49条の2又は第59条の2の規定により、政令で定めるところにより算定した所得の額が政令で定める額以上である第一号被保険者については、居宅介護サービス費等の保険給付の給付率を8割とすることが定められたところである。
これを受け、今般、当該政令で定める算定方法及び政令で定める額を規定するものである。
(2) 基準の概要
① 合計所得金額による判定
政令で定めるところにより算定する所得は、サービスのあった日の属する年の前年(その日の属する月が1月から7月までの場合にあっては、前々年)の合計所得金額とし、政令で定める額は、160万円と定めること。(介護保険法施行令(平成10年政令第412号。以下「令」という。)第22条の2第1項及び第2項並びに第29条の2第1項及び第2項関係)
② 公的年金等収入金額及び合計所得金額(公的年金等に係る雑所得を除く。)の合計額による判定
合計所得金額が160万円以上であっても、年金収入以外の収入を生計の中心にしているなどにより、税法上の控除額の関係で実質的な所得が280万円に満たない場合や、第一号被保険者が2人以上いる世帯であって世帯単位では負担能力が必ずしも十分でない場合も想定されるところである。このような場合に配慮するため、サービスのあった日の属する年の前年(その日の属する月が1月から7月までの場合にあっては、前々年)の世帯内の第一号被保険者に係る公的年金等収入金額及び合計所得金額(公的年金等に係る雑所得を除く。)の合計額が346万円(世帯内に他の第一号被保険者がいない場合にあっては、280万円)に満たない場合には、一定以上所得者に該当しないものとすること。(令第22条の2第3項第1号及び第29条の2第3項第1号関係)
③ その他の例外
受給者本人が市町村民税非課税である場合(条例により市町村民税を免除された者である場合を含む。)又は生活保護法(昭和25年法律第144号)に規定する被保護者(中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律(平成6年法律第30号)による支援給付を受けている者を含む。)である場合には、所得にかかわらず1割負担とすること。(令第22条の2第3項第2号及び第3号並びに第29条の2第3項第2号及び第3号並びに中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律施行令(平成8年政令第18号)第22条第21号イ関係)
2 負担割合証の創設
(1) 趣旨
一定以上所得者の2割負担導入により、受給者の中に1割負担対象者と2割負担対象者が混在することとなるため、受給者に自身の負担割合を適切に知らせるとともに、サービス事業所窓口での利用者負担徴収の際にいずれの負担割合で徴収すれば良いかを判別できるようにする必要がある。このため、市町村が負担割合証を交付することを定めるとともに、関連する手続を定めるものである。
(2) 交付、返還、検認及び更新並びに再交付
市町村は、要介護被保険者又は居宅要支援被保険者に対して、有効期限を定めて負担割合証を交付しなければならないものとすること。また、その標準様式を定めること。(介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号。以下「規則」という。)第28条の2第1項及び様式第1号の2関係)
要介護被保険者又は居宅要支援被保険者は、所得更正等の理由により利用者負担の割合が変更されたときや、負担割合証の有効期限に至ったときは、遅滞なく負担割合証を市町村に返還するものとすること。(規則第28条の2第2項関係)
市町村は、期日を定めて負担割合証の検認及び更新をすることができるものとし、その場合に検認又は更新を受けない負担割合証は無効とすること。(規則第28条の2第3項関係)
要介護被保険者又は居宅要支援被保険者が負担割合証を破り、汚し、又は失ったときは、市町村に再交付申請をしなければならないものとし、当該破り、汚し、又は失った負担割合証を返還しなければならない(再交付後に失った負担割合証を発見した場合には、発見したものを返還しなければならない)ものとすること。(規則第28条の2第4項から第6項まで関係)
(3) サービス事業者への提示
要介護被保険者又は居宅要支援被保険者がサービス事業者からサービスを受けるときには、被保険者証を提示する際に、負担割合証を添えるものとすること。(規則第28条の3関係)
第2 高額介護(予防)サービス費の負担限度額の見直し(平成27年8月1日施行)
1 現役並み所得者に相当する者に係る負担限度額の見直し
(1) 趣旨
第1に掲げる一定以上所得者の利用者負担の見直しとともに、制度の持続可能性を高めるため、現行制度では低所得者を除き37,200円とされている一ヶ月の負担限度額について、一定の所得を有する者の負担限度額を44,400円に見直すものである。
その際、通常、要介護状態が長期に渡り継続することを踏まえ、負担限度額の見直しは特に所得の高い者に限って行うこととし、高齢者医療制度の現役並み所得に相当する基準を定めるものである。
(2) 基準の概要
① 課税所得による判定(令第22条の2の2第5項及び第29条の2の2第5項関係)
要介護被保険者又は居宅要支援被保険者の属する世帯に属する第一号被保険者(第一号被保険者である要介護被保険者又は居宅要支援被保険者本人を含む。)のいずれかが、課税所得145万円以上である場合に、負担限度額を44,400円とすること。
課税所得の範囲は、サービスを受けた月の属する年の前年(その月が1月から7月までの場合にあっては、前々年)の所得を用いるものとし、当該所得が生じた年の翌年の4月1日の属する年度分の地方税法(昭和25年法律第226号)の規定による市町村民税に係る所得の金額によるものとすること。
具体的な課税所得の算定方法は、市町村民税に係る地方税法第314条の2第1項に規定する総所得金額及び山林所得金額並びに他の所得と区分して計算される所得の金額の合計額から、同項各号及び同条第2項の規定による控除をした後の金額とすること。
また、平成22年度税制改正による年少扶養控除見直しを踏まえた調整措置として、サービスを受けた月の属する年の前年(その月が1月から7月までの場合にあっては、前々年)の12月31日において世帯主であって、同日において同一の世帯に19歳未満で合計所得金額が38万円以下である者(控除対象者)がいる者にあっては、上記により算定した課税所得から次に掲げる額の合計額を控除して判定すること。
・16歳未満の控除対象者の数を33万円に乗じて得た額
・16歳以上19歳未満の控除対象者の数を12万円に乗じて得た額
② 収入による判定(令第22条の2の2第6項及び第29条の2の2第6項並びに規則第83条の2の2及び第97条の2関係)
①に該当する場合であっても、要介護被保険者又は居宅要支援被保険者の属する世帯に属する全ての第一号被保険者(第一号被保険者である要介護被保険者又は居宅要支援被保険者本人を含む。)について、収入の合計額が520万円(世帯に属する第一号被保険者が一人である場合にあっては、383万円)に満たない場合には、負担限度額を37,200円とすること。
収入の範囲は、サービスを受けた月の属する年の前年(その月が1月から7月までの場合にあっては、前々年)の収入を用いるものとすること。
収入は、所得税法(昭和40年法律第33号)第36条第1項に規定する各種所得の金額(退職所得の金額を除く。)の計算上収入金額とすべき金額及び総収入金額に算入すべき金額によるものとすること。具体的な算定方法は、地方税法第314条の2第1項に規定する総所得金額及び山林所得金額並びに他の所得と区分して計算される所得の金額の計算上用いられる所得税法第2編第2章第2節第1款に規定する利子所得、配当所得、給与所得及び雑所得(公的年金等に係るものに限る。)に係る収入金額並びに不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得、一時所得及び雑所得(公的年金等に係るものを除く。)に係る総収入金額を合算した額とすること。
(3) 収入額の申請
(2)②に掲げる収入による判定は、要介護被保険者又は居宅要支援被保険者から、収入額が(2)②に掲げる金額未満である旨の申請書の提出があった場合に行うものとすること。この場合、申請書には氏名及び生年月日、収入判定の対象となる者の収入額及び被保険者証の番号を記載するものとすること。(規則第83条の2の3及び第97条の2の2関係)
申請書の様式例は、別紙様式1を参照のこと。
2 判定期間の見直し(平成27年4月1日施行)
1に掲げる改正は平成27年8月1日施行であり、以後、毎年8月1日を基準日として所得判定を切り替えることとしている。
これを受け、現行制度で毎年7月1日を基準日として所得判定を切り替えている低所得者に係る利用者負担段階の判定についても、基準日を毎年8月1日に改めること。すなわち、サービスを受けた月の属する年度(その月が4月から7月までの場合にあっては、前年度)分の市町村民税の課税状況及びサービスを受けた月の属する年の前年(その月が1月から7月までの場合にあっては、前々年)の公的年金等収入金額及び合計所得金額の合計額に基づいて、利用者負担第1段階~第3段階の判定を行うものとすること。なお、この見直しは平成27年4月1日施行としており、本年の判定切り替えから適用されること。したがって、現在既に行われている所得段階の判定については、基本的に本年7月サービス分の負担限度額まで継続するものであること。(令第22条の2の2第7項及び第9項並びに第29条の2の2第7項及び第9項関係)
第3 特定入所者介護(予防)サービス費の支給要件の見直し(平成27年8月1日施行)
1 配偶者の所得及び資産の勘案
(1) 趣旨
特定入所者介護(予防)サービス費については、その福祉的な性格や経過的な性格を踏まえ、真に必要な者に給付を重点化する観点から、医療介護総合確保推進法による介護保険法第51条の3第1項及び第61条の3第1項の改正により、支給要件として資産をしん酌する改正が行われたところである。
これを受け、今般、新たな支給要件を省令に定めるものである。
(2) 新たな支給要件の概要
次のいずれにも該当するものであること。(規則第83条の5第1号及び第97条の3第1号関係)
① 現在、規則に定める基本的な支給要件は、世帯の全員が市町村民税非課税(条例により市町村民税を免除された者である場合を含む。)であることだが、これに加えて、要介護被保険者又は居宅要支援被保険者と同一の世帯に属しない配偶者についても、市町村民税非課税であることを加えること。この場合の配偶者は、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとし、一方で、配偶者が行方不明となった場合、要介護被保険者又は居宅要支援被保険者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第1項に規定する配偶者からの暴力を受けた場合その他これらに準ずる場合を除くものとすること。
② 要介護被保険者又は居宅要支援被保険者及び配偶者が所有する現金、預貯金、合同運用信託、公募公社債等運用投資信託及び有価証券その他これらに類する資産の合計額が2,000万円(配偶者がない場合にあっては、1,000万円)以下であること。その他これらに類する資産としては、純金積立購入等、口座残高等により時価評価額が容易に把握できる貴金属等が含まれること。また、運用上、負債を有する場合には、上記合計額から負債額を控除する取扱いとすること。
また、現行制度では、世帯の構成員の数が2以上であり、かつ、一定の所得、資産等の要件を満たす場合には、市町村民税非課税世帯に該当しなくても特例的に特定入所者介護サービス費を支給する仕組み(課税層に対する特例減額措置)が設けられているところ。これについて、①に掲げる配偶者の所得勘案を踏まえ、同一の世帯に属しない配偶者がある場合にも課税層に対する特例減額措置が適用できるように要件の見直しを行うこと。(規則第83条の5第4号関係)
(3) 申請手続
特定入所者介護(予防)サービス費の支給を受けようとするときには、必要な事項を記載した申請書を市町村に提出しなければならないこととなっている。今般、(2)②に掲げる預貯金等の要件が創設されたことを踏まえ、原則として、預貯金等の額が確認できる書類を申請書に添付しなければならないものとすること。また、市町村が預貯金等の額を適切に把握すべく、必要に応じて銀行等の金融機関への調査を行うことを想定しているため、市町村が当該調査を実施することの同意書を申請書に添付しなければならないものとすること。(規則第83条の6第2項関係)
(2)に掲げる要件の見直しを踏まえた申請書の様式例は別紙様式2―1を、同意書の様式例は別紙様式2―2を参照のこと。
(4) 要介護旧措置入所者の取扱い
介護保険法施行法(平成9年法律第124号)第13条第3項に規定する要介護旧措置入所者については、同法の改正を行っておらず、新たな支給要件の適用対象外としていることから、(2)及び(3)の改正を適用しないものとする規定の整備を行うこと。(規則第172条の2関係)
2 判定期間の見直し
1に掲げる改正は平成27年8月1日施行としている。
これを受け、現行制度では毎年7月1日を基準日として判定を切り替えているが、基準日を毎年8月1日に改めること。すなわち、サービスを受けた日の属する年度(その日の属する月が4月から7月までの場合にあっては、前年度)分の市町村民税の課税状況及びサービスを受けた日の属する年の前年(その日の属する月が1月から7月までの場合にあっては、前々年)の公的年金等収入金額及び合計所得金額の合計額に基づいて、特定入所者介護(予防)サービス費の支給要件の判定を行うものとすること。(規則第83条の5第1号及び第4号並びに第97条の3第1号関係)
また、これに併せて、整備告示により次に掲げる告示を改正し、食費・居住費(滞在費)の標準負担額等に係る所得段階の判定についても、基準日を毎年8月1日に改めること。
・厚生労働大臣が定める旧措置入所者の所得の区分及び割合(平成17年厚生労働省告示第409号)
・介護保険法第51条の3第2項第1号及び第61条の3第2項第1号に規定する食費の負担限度額(平成17年厚生労働省告示第413号)
・介護保険法第51条の3第2項第2号に規定する居住費の負担限度額及び同法第61条の3第2項第2号に規定する滞在費の負担限度額(平成17年厚生労働省告示第414号)
・介護保険法施行法第13条第5項第1号に規定する食費の特定負担限度額(平成17年厚生労働省告示第417号)
・介護保険法施行法第13条第5項第2号に規定する居住費の特定負担限度額(平成17年厚生労働省告示第418号)
なお、これらの規定の改正は平成27年8月1日施行とされているが、既に平成26年6月25日付けで公布された「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令」(平成26年厚生労働省令第71号)及び「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う厚生労働省関係告示の整備等に関する告示」(平成26年厚生労働省告示第266号)により、平成27年7月サービス分については前年度分の市町村民税の課税状況及び前々年の公的年金等収入金額及び合計所得金額の合計額に基づいて判定するものとする措置が講じられていることから、本年の判定切り替えから適用されること。
第4 その他の留意事項
1 低所得者に対する保険料軽減強化(平成27年4月1日施行)
低所得者に対する保険料軽減強化については、政省令の公布が国の平成27年度予算成立を前提とするものであることから、追って予算成立後に政省令を公布する予定であること。
2 サービス付き高齢者向け住宅への住所地特例の適用(平成27年4月1日施行)
整備政令、整備省令及び整備告示における改正事項はないが、有料老人ホームに該当するサービス付き高齢者向け住宅については、医療介護総合確保推進法による改正後の介護保険法第13条の規定により、平成27年4月1日から住所地特例の対象施設として取り扱われることとなる。
これを踏まえ、住所地特例の対象施設を保険者が適切に把握するための有料老人ホーム一覧表の作成・公表及び住宅への周知については、その詳細を「有料老人ホームの一覧表の作成・公表及びサービス付き高齢者向け住宅に対する住所地特例に係る事務の周知について(協力依頼)(平成27年2月26日付け老介発0226第2号・老高発0226第2号・国住心第188号)」でお示ししたところであるので、同通知に沿った運用及び周知を適切に行っていただくよう、改めてお願いする。
[別紙様式1]
[別紙様式2―1]
[別紙様式2―2]