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○労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について

(平成27年2月13日)

(労災発0213第2号)

(都道府県労働局長あて厚生労働省大臣官房審議官(労災担当)通知)

(公印省略)

[5年保存]

平成27年度における労災補償業務の運営に当たっては、特に下記に示したところに留意の上、実効ある行政の展開に遺憾なきを期されたい。

第1 労災補償行政を巡る状況への対応

労災補償行政を巡る状況をみると、精神障害事案に係る請求件数は過去最多を更新し、脳・心臓疾患事案に係る請求件数及び認定件数は高止まりの状態となっている。また、石綿関連疾患事案に係る請求件数及び認定件数についても高水準で推移している。

厳しい定員事情や行政経費に係る予算の縮減が求められている中で、都道府県労働局(以下「局」という。)においては、労災請求事案への的確な対応、組織的な取組による長期未決事案の早期解消等に着実に取り組んでいるが、第186回国会において「過労死等防止対策推進法」が成立し、施行されたことに関連して、脳・心臓疾患事案及び精神障害事案に係る労災補償状況がマスコミ等で繰り返し報道されるなど、労災補償行政に関する国民の関心がより一層高まっており、このような状況に対応した業務運営を行う必要がある。

このため、平成27年度においては、特に次の事項を重点的に推進する。

① 脳・心臓疾患及び精神障害事案の長期未決事案の削減

② 石綿関連疾患の更なる請求勧奨の実施

③ 業務上疾病等に係る的確な労災認定

また、引き続き、局と労働基準監督署(以下「署」という。)が連携して効率的な業務運営に努めるとともに、計画的・体系的な研修の実施により、人材育成を図ることが重要である。

第2 脳・心臓疾患及び精神障害事案の長期未決事案の削減

長期未決事案は、その解消に向けた積極的な取組により経年的には減少傾向にあるところ、近年の主な減少要因は第三者行為災害事案であり、脳・心臓疾患及び精神障害事案については、長期未決事案の減少は鈍化傾向にある。

精神障害事案に係る労災請求件数は年々増加しており、また、脳・心臓疾患事案の労災請求件数も高止まりの状況にあることから、脳・心臓疾患及び精神障害事案については、従前の取組に加え、以下の点に留意し、一層の迅速処理を期すること。

1 迅速処理に向けた的確な進行管理の徹底

(1) 迅速な初動調査の指示

労災請求に係る事務処理においては、請求書受付後6か月経過した事案については署長管理事案とし、また、3か月経過した事案については、署管理者において、署長管理事案に準じた手法により事案管理を行うこととしている。

しかしながら、処理に長期間を要している事案の処理状況をみると、特に精神障害事案において、請求書受付後3か月経過するまでの間に調査がほとんど進展しなかったことが原因と考えられるものが少なからず認められることから、事案の進行管理に当たっては、請求書受付直後から遅滞のない初動調査を徹底するほか、請求書受付後1か月を経過した時点で、調査の進展状況を確認し、初動の遅れが認められる場合には具体的な指示を行うこと。

(2) 署管理者の期限を付した指示

平成26年度中央労災補償業務監察結果(以下「中央監察」という。)において、署管理者の指示について、事案検討会等の際に、具体的な指示が行われていないとの指摘がなされており、また、漫然と同じ指示を繰り返している結果処理が進展しない事案が依然として見受けられることから、期限を付した具体的な指示を行うことはもとより、特段の理由なく処理が遅延しているものについては、事案検討会の日を待たずに、指示した期限までに必要な処理が行われているか確認するなど迅速処理に徹した進行管理を行うこと。

(3) 局管理事案における指示

請求書受付後9か月経過した局管理事案について、局の指示が処理経過簿に記載されておらず、局における具体的な指示や指示後の確認が行われているか判然としない事案もみられるので、局においては、署に対して、迅速処理の観点から、局指示に関する処理経過簿への記載を確実に行わせるとともに、指示を踏まえた処理を徹底させること。

2 迅速処理に向けた調査上の留意点

(1) 脳・心臓疾患事案における労働時間の把握が困難な事案への対応

脳・心臓疾患事案において、タイムカード等労働時間が把握できる客観的な資料がないなどにより労働時間の把握が困難な事案については、監督担当部署と協議しつつ、事業場建物への入退館記録、パソコンによる作業履歴等の分析を行う等、労働時間の迅速・適正な把握を行うこと。

(2) 精神障害事案の医学的意見の聴取

認定基準に基づき主治医意見又は専門医意見により決定することとされている事案について、精神障害専門部会(以下「専門部会」という。)の意見を求めた結果、処理が遅延した事案が認められることから、署管理者は、医学的意見の聴取に当たり、専門部会の意見を求めるべき事案であるか否かを確認し、的確に判断すること。

また、局は、専門部会の意見聴取の要否など医学的意見を求める方法について署に対し適切に指示を行うこと。

なお、精神障害事案の迅速・適正な決定のため、必要に応じ、労災医員に対し事案の説明を行い、調査上の留意点について助言を得る等により効率的な事案処理を行うこと。

第3 石綿関連疾患の更なる請求勧奨の実施等

1 石綿関連疾患に関する労災補償制度等の周知

(1) がん診療連携拠点病院等への請求勧奨依頼の徹底

がん診療連携拠点病院等への石綿関連疾患に関する労災保険給付の請求勧奨依頼については、平成24年8月30日付け基労補発0830第1号「「石綿による疾病の認定基準」の周知等について」により指示されているところであるが、がん診療連携拠点病院等への請求勧奨依頼をいまだ行っていない局が一部認められたところである。

ついては、平成26年度現在のがん診療連携拠点病院等について、改めて情報提供するので、勧奨依頼の徹底を図ること。

(2) 石綿疾患労災請求指導料の請求の促進と労災請求勧奨依頼の徹底

石綿疾患労災請求指導料(以下「指導料」という。)の請求については、いまだその請求の促進が十分図られていない状況がみられることから、今後、①石綿関連疾患に係る療養補償給付請求に対して労災認定を行った署は、その旨を当該療養補償給付請求に係る診療費の審査を担当する局に連絡する、②連絡を受けた局は、指導料の請求の有無を確認し、請求がない場合においては、当該医療機関に対して、(i)被災労働者に対する職歴の問診、(ii)石綿ばく露が疑われる場合における労災請求の勧奨、等の算定要件の説明を行い、これらの要件を満たす場合には指導料の請求を促し、要件を満たさない場合には石綿ばく露歴等チェック表の活用と労災請求の勧奨の依頼を行うとともに、今後における指導料の請求を促す、といった取組を確実に実施すること。

(3) 労災認定等事業場に対する退職労働者等への周知依頼

石綿関連疾患に関する労災補償制度等の周知については、本省において、平成26年12月24日付けで労災認定等事業場を対象とした退職労働者等への周知依頼を行うとともに、退職労働者等への周知の取組状況に係る調査票を併せて送付し、回答を求めているところである。

今後、周知依頼した労災認定等事業場からの回答状況について各局に連絡するので、別途指示するところにより労災認定等事業場に対して指導すること。

(4) 地方公共団体への周知依頼

石綿関連疾患に関する労災補償制度等の市区町村への周知依頼については、本省で実施している石綿認定等事業場の公表時期に合わせて、市町村広報紙・誌等への掲載を依頼するとともに、受付窓口におけるリーフレット等の配布による周知を依頼すること。

2 石綿労災認定等事業場の公表

石綿労災認定等事業場については、局からの報告を取りまとめて公表しているところであるが、依然として、記載漏れや誤入力などの問題が多数あり、組織的な確認が十分に行われていない状況が認められる。

平成27年度においては、別途指示するところに従い、複数名での確認体制を整備した上で、調査結果復命書との突合等による漏れのない事実確認に基づく正確な資料作成を行うとともに、本省への報告は、局管理者の指揮の下、組織的に確認を行った上で提出すること。

第4 業務上疾病等に係る的確な労災認定

1 新しい疾病に係る労災請求事案の本省報告等の徹底

新しい疾病に係る労災請求事案が発生した場合には、補504により本省へ速やかに報告するとともに、昭和53年3月30日付け基発第186号「労働基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行について」において、認定基準等により本省りん伺の対象となっている事案だけでなく、業務起因性の判断が困難である事案についても本省にりん伺することを指示しているところである。

平成26年度において、労働基準法施行規則別表第1の2に例示列挙されていない新しい疾病について労災請求が行われたが、当該局から、補504による報告や本省りん伺の協議も一切なく業務上外の決定を行った事例が認められた。

今後、新しい疾病の労災請求について同様の処理を発生させないため、署管理者は、新しい疾病に係る労災請求事案があった場合には、請求書受付後、速やかに、補504により漏れなく報告するとともに、本省りん伺の協議を行うことを徹底すること。また、本省りん伺を行った事案の保険給付の決定を行う際には、本省に連絡すること。

なお、本省りん伺の対象となる事案か否かの確認に当たっては、「業務上疾病の認定基準及び関連通達集」に掲載している「本省にりん伺等すべき事案一覧表」を活用すること。

2 障害認定の労働能力の評価

障害認定における「労働能力」とは、一般的な平均的労働能力をいうのであって、被災労働者の年齢、職種、利き腕、知識、経験等の職業能力的諸条件については、障害の程度を決定する要素とはなっていない(昭和50年9月30日付け基発第565号「障害等級認定基準について」)。

高次脳機能障害の障害認定は、意思疎通能力等4能力に係る喪失の程度に応じた認定基準に従って行うものであるが、高次脳機能障害に係る労働能力の評価に当たっては、平成15年8月8日付け基発第0808002号「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」別添2の別紙「高次脳機能障害整理表」において、障害の程度別に一般的な平均的労働能力の喪失の例が示されているので、これを参考として活用すること。

3 法人役員の労働者性

法人役員の労働者性については、昭和34年1月26日付け基発第48号において、法令、定款、取締役会規則その他内部規定等に基づき業務執行権を有すると認められる者については、労働者に該当しないものとし、これらの者以外で、事実上、業務執行権を有する取締役等の指揮、監督を受けて労働に従事し、その対償として賃金を受けている者については、原則として労働者として取り扱うこととしている。

労働者性が争点となっている審査請求事案について、原処分庁の復命書を確認したところ、定款等の確認を行うことなく、報酬の計算方法や金額、勤怠管理の有無などの勤務実態のみを根拠に労働者性を判断しているものが相当数みられたことから、その判断に当たっては、まずは商業登記簿により役員の選任状況や取締役会の設置状況の有無を把握した上で、定款や取締役会の決議、取締役会規則その他の内部規定等から請求人が業務執行権を有するか否かを確認すること。

4 石綿関連疾患の適正な診断等

石綿関連疾患については、中皮腫など認定基準に定められた疾病に該当するか否かに関する適正な診断が重要であることから、良性石綿胸水を除き、労災医員等の意見を必ず徴すること。また、労災医員等において疑義が示されたものなどについては、必ず確定診断の依頼を行うこと。

なお、良性石綿胸水の事案については、全数確定診断の依頼対象としていることから、労災医員等の意見を徴することなく、速やかに確定診断の依頼を行うこと。

5 石綿ばく露作業従事歴の的確な把握

石綿ばく露作業従事歴は、石綿関連疾患の確定した診断名及び胸膜プラーク等の医学的所見の有無とともに労災認定を行う上で最重要事項の一つであることから、請求人又は遺族から聴取した内容を踏まえ、事業場関係者や同僚労働者から必要な聴取を行うことなどにより、可能な限り詳細に把握すること。

また、石綿ばく露作業に最後に従事した事業場の名称は、公表の対象となることを踏まえ、最終石綿ばく露事業場の確認は慎重に行うこと。

6 精神障害事案の適正な処理

(1) 労災認定実務要領の一部改訂

精神障害の認定基準の運用状況を踏まえ、実務要領の一部改訂を行うことを予定しているので、同要領に基づいた適正な事案処理を行うこと。

(2) 労災精神障害専門調査員の活用

労災精神障害専門調査員(以下「調査員」という。)については、セクシュアルハラスメント事案に限ることなく、精神障害事案全般の相談や聴取時に積極的に活用すること。

なお、調査員の効果的な活用事例を、別途示すこととしているので、これを参考に一層の活用促進を図ること。

第5 第三者行為災害

1 第三者行為災害に係る求償事務の的確な実施

第三者行為災害に係る求償事案については、納入告知を行わずに当該債権を時効により消滅させることがないよう、次の事項を徹底し、組織的に進行管理を行い、的確に求償事務を行うこと。

(1) 納入告知書の送付の徹底

徴収すべき債権の時効を完成させないよう的確に請求するためには、災害発生から3年以内に納入告知を行う必要がある。自賠責保険等又は自動車保険等に請求する事案にあっては、保険会社等から係争中であって履行期が確定していない等を理由に納入告知書の発行を留保してほしい旨の主張がなされたとしても、平成26年3月31日付け基労管発0331第1号・基労補発0331第1号「第三者行為災害における自賠責保険等又は自動車保険等に対する求償の取扱いについて」に基づき、全ての事案について災害発生から3年以内に納入告知を行うことを徹底すること。

(2) 求償事案の組織的管理

ア 署における管理

第三者行為災害に係る事案について労災先行で保険給付を行ったときは、債権発生通知書を遅滞なく局に送付すること。

また、報告の遅滞や失念は局における求償事務に支障を来すことから、災害発生から3年を経過するまで又は当該保険給付が完了するまでの間、事案の管理を組織的に行うこと。

イ 局における管理

署から報告のあった債権については、災害発生日、求償期限、徴収決定の有無、納入告知の有無等を一覧できるリストを作成し、その進捗状況を組織的に管理すること。

なお、管理者は当該リストを定期的に決裁することにより、担当者に必要な事項を指示し、確実に納入告知を行わせること。

(3) 的確な徴収決定

求償額の算出に当たっては、第三者行為災害事務取扱手引に基づき、第一当事者等の損害額調査及び過失割合等を十分調査し、その判断を的確に行うこと。

第二当事者が無資力である等求償差し控え該当事案についても、その判断は調査結果に基づき、的確に行うこと。

2 未収納債権に対する定期的な納入督励の実施及び組織的な進捗管理

徴収決定した債権であって納入期限までに完納されないものについては、求償事務と同様、漫然と時間を経過させ時効を迎えることがないよう、次の事項を徹底し、定期的な納入督励の実施等、必要な措置を講じること。

(1) 債権回収計画の策定及び事案の定期的な決裁等

局が管理する未収納債権については、毎年度債権ごとに、その回収方法、納入督励手法、講ずべき時効中断措置、これらを実施する予定時期等を明確にした債権回収計画を策定すること。また、当該計画には債権ごとの収納状況や納入督励の実施状況等が確認できるリストを添付し、当該リストについては、局管理者が定期的に決裁し、時効が迫っている事案については的確な対応を行うこと。

(2) 委託事業の積極的活用

第三者行為災害に係る債権の納入督励業務の外部委託事業については、特に、300万円以上の高額な債権は、受託事業者へ年2回以上委託を行う等、引き続き積極的に活用すること。

また、求償債権の回収業務の弁護士への委託についても、別途送付を予定している活用事例も参考にしながら積極的に活用を検討することにより、効果的かつ効率的に業務を実施すること。

3 第三者行為災害に係る労災保険請求事案の進行管理

第三者行為災害事案については、原則として自賠責保険等の支払を労災保険給付に先行させる(以下「自賠先行」という。)取扱いとしているが、請求時に自賠先行の取扱いを希望した請求人に係る事案であっても、①労災保険の支給決定に係る調査結果が取りまとまった時点、②自賠責保険等の支払に係る訴訟等が提起される可能性を把握した時点、③求償権を行使し得る災害発生から3年を経過する前の時点などにおいて、請求人の意向を適宜確認の上、労災保険給付の決定を先行し、長期未決の状態にならないようにすることを徹底すること。

4 休業(補償)給付の特支金コードの確実な入力

第三者行為災害の控除事案について、休業(補償)給付の決議処理における特支金コードの入力漏れにより、休業(補償)給付の過誤払いが生じた事案が発生しており、このような事案においては、確実に特支金コードを入力すること。

第6 労災補償業務の的確な事務処理等

1 治ゆ後における適正な事務処理

通勤災害とされた負傷が治ゆとなった後、当該負傷部位に生じた疾病に係る労災診療費請求が行われた事案において、本来であれば、局が署の調査を基に当該診療費の査定を行えば足りるところ、通勤災害として支給決定した療養給付について、局の査定に加え、署が不支給決定を行うという事例がみられた。

今後、治ゆ後の労災診療費の請求の処理に当たっては、労災診療費の審査・支払に関する基本的な事務処理を踏まえ、適切に対応すること。

2 給付基礎日額の算定に当たっての留意点

給付基礎日額の算定については、審査請求において原処分が取消となる事案が多数に及んでおり、その内容として、①実際に支払われた割増賃金のみが賃金総額に算入され、認定した時間外労働時間に基づき計算された割増賃金が算入されていないもの、②割増賃金の計算基礎に算入すべき手当が算入されていないもの等が認められるところである。

給付基礎日額の算定について賃金総額に算入すべき賃金は、実際に支払われていないものであっても賃金債権として認定すべきものは含むこととしていることから、これを踏まえた給付基礎日額の算定が行われているかについて、確実に確認すること。

また、労働基準法上の管理監督者に当たるか否かの判断の誤りも少なからず認められることから、管理監督者性の判断に当たっては、労働者の職務内容、責任と権限、勤務態様等、必要な事実関係を特定した上で、監督担当部署と協議しつつ慎重に判断すること。

3 障害補償年金等に移行した時点及び移行後の再発事案で休業補償を給付する時点における併給調整の確認

平成26年度会計実地検査において、障害(補償)給付の移行時に障害厚生年金等の受給を把握していたにもかかわらず、既に支給した休業(補償)給付や年金移行後に再発し支給した休業(補償)給付について、併給調整が行われていなかったことが指摘されたため、年金移行前のみならず移行後の休業(補償)給付についても、併給調整の必要性について確認を徹底すること。

4 請求人等への懇切・丁寧な対応

中央監察において、請求書受付後3か月経過した事案について、その後概ね月1回定期的に請求人に連絡するとの取扱いが徹底されていない指摘がなされていることから、改めて当該取扱いを徹底すること。

5 受診命令の適正な実施

労働者災害補償保険法第47条の2に基づく受診命令は、業務上外の認定に必要な医学的判断資料が得られている事案について行うことのないよう、その必要性について十分な検討を行うとともに、受診命令を発出する際は、必ず請求人に対して受診命令の趣旨を明確に説明し、理解を求めること。

また、受診命令の実施の決定に関与した医師が当該受診命令による検査・診断等を行うことにより、請求人に不信感を生じさせることのないよう留意すること。

6 労災年金関係業務の適正な事務処理

(1) 被用者年金一元化法の施行等を踏まえた的確な厚生年金等との併給調整

労災年金と共済年金の併給調整については、従来共済年金側で行っていたところであるが、平成27年10月の被用者年金一元化法の施行後は、原則として労災年金側で行うこととなり、統合後の厚生年金等の支給管理は日本年金機構ではなく改正後の厚生年金保険法第2条の5第1項第2号から第4号に定める各実施機関(従前の各共済組合等)で行われることから、追って指示するところにより、必要に応じ各実施機関等に対して厚生年金等の受給情報についての文書照会を的確に行うことにより、統合後の厚生年金等との適正な併給調整事務の実施を確保すること。

また、日本年金機構との併給調整事務については、遡及して厚生年金等の決定を受けたが併給調整を行っていない事案や、併給調整誤りによる債権発生事案が引き続き見受けられることから、これを防止するため「厚年情報照合リスト」を的確に活用するとともに、定期報告書審査時等に提出された厚生年金等の改定通知書等の添付書類の内容を精査し、疑義が生じた事案については、年金受給者本人又は年金事務所への照会等を迅速に行い、適正な併給調整事務を促進すること。

(2) 基本権取消事案の発生の防止

当初決定した年金の基本情報に誤入力等があったためシステム上の基本権を取り消す処理を行う必要が生じた事案がみられることから、この発生を防止するため、支給決定時及び支給決定決議入力時等において職員相互のチェック体制及び署管理者の審査・確認体制を確実なものとし、決裁時における適正な事務処理を徹底すること。

7 労災かくしの排除に係る対策の一層の推進

全国健康保険協会(協会けんぽ)各都道府県支部から、業務上又は通勤による負傷に当たるとして、健康保険法の保険給付について不支給(返還)決定を受けた者の情報を局が受け、それらの者に対して労災請求の勧奨を行う取組については、引き続き推進すること。

また、労災保険給付に係る審査又は調査において、労災かくしが疑われる場合には、速やかに監督・安全衛生担当部署に情報を提供するなど、引き続き関係部署との連携を図ること。

なお、新規の休業補償給付支給請求書の受付に際し、労働者死傷病報告の提出年月日の記載がない場合には、監督・安全衛生担当部署への情報提供を徹底すること。

8 労災請求事案等に関する監督・安全衛生担当部署との連携

(1) 監督・安全衛生担当部署への情報提供

脳・心臓疾患事案及び精神障害事案に係る労災請求については、引き続き、労災請求がなされた段階において、監督・安全衛生担当部署へ情報提供を行うこととし、特に精神障害事案については、認定した段階においても、すべての認定事案について、安全衛生担当部署への情報提供を行うこと。

また、新しい疾病に関する請求事案等であって、補504により本省への速報が必要なものについては、引き続き、監督・安全衛生担当部署にも情報提供を必ず行うよう徹底すること

(2) 効果的な労災補償制度の周知及び請求勧奨の取組

ア 技能実習生に対する労災補償制度の周知及び請求勧奨の取組

技能実習生については、我が国の労災補償制度についての知識が十分ではない場合が多いことから、引き続き、機会をとらえて労災補償制度の周知等を行うとともに、監督・安全衛生担当部署や公益財団法人国際研修協力機構(JITCO)からの情報等により、労災保険給付の支給対象となり得る者を把握したときは、労災保険給付の請求勧奨を実施すること。

イ 集団指導等の機会をとらえた認定基準の周知の取組

脳・心臓疾患及び精神障害の認定基準については、引き続き、監督・安全衛生担当部署が行うメンタルヘルスに関する集団指導等の機会をとらえ、これらの部署と連携を図り、その対象に応じた周知を行うこと。

第7 個人情報の厳正な管理

個人情報の厳正な管理については、平成26年度においても、情報漏えい事案が相当数生じており、その大半が誤送付及び紛失であることから、次の事項に留意し、引き続き個人情報の厳正な管理を徹底すること。

1 誤送付の防止

誤送付事案は、医療機関に対する意見依頼文書等の宛先や個人情報の誤記による事例が多く、例えば、個人情報等が残っている電子媒体を利用したことにより、従前の被災者の氏名が修正されないまま送付された事例、従前の医療機関名が修正されないまま別の医療機関に誤送付された事例がみられることから、文書を作成する際には、個人情報等が記載されていない電子媒体を利用することを徹底すること。

また、文書送付の際には、平成22年11月30日付け地発1130号第2号「都道府県労働局における保有個人情報管理の徹底等について」及び平成25年2月28日付け地発0228第3号「都道府県労働局における保有個人情報の管理の徹底等について」に基づき、送付状だけでなく送付文書のすべてについて、他の個人情報が紛れていないか等について複数名で確認することを徹底すること。

2 請求書等の紛失の防止

紛失事案は、請求書等を机上に放置したことにより他の文書に紛れ込み、その後誤って文書を破棄した事例が多いことから、平成25年2月28日付け地発0228第3号「都道府県労働局における保有個人情報の管理の徹底等について」を踏まえ、クリアファイル等を利用して書類の散逸を防ぎ、机上に請求書等を放置することは厳に慎むとともに、不要書類をシュレッダーで廃棄するときは、原本等の紛れ込みがないか複数名により1枚1枚確認し、誤廃棄が疑われる場合には担当者等に確認することを徹底すること。

3 外部電磁的記録媒体の貸出の管理

中央監察において、外部電磁的記録媒体の取扱いについて、貸出の管理簿に記載していない等の不適切な事例が多数指摘されていることから、引き続き、管理簿による管理を徹底するとともに、持ち出し時点では個人情報が保存されていない媒体であっても、聴取書作成等の個人情報を記録する目的での庁舎外への持ち出しは行わないこと。

第8 社会復帰促進等事業の的確な実施

1 社会復帰促進等事業の処分性について

社会復帰促進等事業として行われる事業に係る支給及び不支給決定(承認及び不承認を含む。)については、平成26年7月10日付け基発0710第5号により、新たに「頭頸部外傷性症候群等に対する職能回復援護の承認又は不承認」、「休業補償特別援護金の支給又は不支給」、「長期家族介護者に対する援護金の支給又は不支給」、「振動障害者社会復帰援護金の支給又は不支給」及び「労災療養援護金の認定又は不認定」について、行政処分として取り扱うこととしたところである。

このため、これらについて支給決定等の処分を行うに当たっては、その相手方に対し、不服申立て等ができる旨を書面で教示するなど、労災保険給付と同様に適切に事務処理を行うこと。

2 アフターケア等に係る適切な事務処理

(1) アフターケアに係る適切な事務処理

アフターケア健康管理手帳の交付・不交付決定については、平成22年12月から行政処分と取り扱われているところであるが、申請書の対象傷病コード欄が未記入である等の不備があるにもかかわらず、申請者に対する補正を求めずに処理するなど、行政処分であることの認識が希薄であると思われる事例がみられることから、行政処分に係る事務処理の重要性を認識し、行政手続法に定められた事務処理を行うこと。

また、アフターケア健康管理手帳の交付・不交付決定に当たっては、障害等級認定調査復命書により交付申請者の傷病に関する障害の状態及び障害等級を確認した上で、アフターケア実施要領に定める交付要件に該当するか否かを確認する等により、適切な事務処理を徹底すること。

(2) 長期家族介護者に対する援護経費に係る適切な事務処理

長期家族介護者に対する援護経費については、平成25年度においては、申請のあったものについて一部、迅速・適正に処理することができなかった事案もあったため、引き続き、1か月以内に処理できるよう迅速・適正な処理に努めること。

また、申請書受付日から支給決定日まで1か月を経過した事案については、担当者から処理状況等を申請人に連絡の上、迅速・適正な処理に努めること。

3 労災就学等援護費に係る適切な事務処理

(1) 申請書の即日又は翌日入力

労災就学等援護費申請書については、申請書の即日又は翌日入力を徹底すること。

(2) 年金受給権者に変更があった場合等の申請の勧奨

労災就学等援護費については、孫又は兄弟姉妹が新たに年金受給権者になったことや、遺族補償年金の請求当時は未就学であった年金受給権者又は被災労働者の子がその後就学等したことにより、支給要件を満たしたにもかかわらず、年金受給権者にその認識がないため申請が行われない事案が、いまだ認められるところである。

署においては、「労災就学援護費未支給者リスト」(年3回配信)を活用して、労災就学等援護費の支給要件を満たすと考えられるにもかかわらず申請が行われていない場合には、申請漏れの有無を確認し、申請を勧奨すること。

第9 費用徴収

1 定期的な納入督励の確実な実施及び組織的な進捗管理

中央監察において、費用徴収に係る債権管理について、時効中断措置等を講じないまま時効消滅に至った事例が指摘されていることから、局管理者は収納状況等を定期的に決裁の上、債権管理計画に基づき処理の遅れや時効中断措置の漏れがないよう徹底すること。

2 第3号事案の適切な処理

労働者災害補償保険法第31条第1項第3号に基づく費用徴収については、平成24年3月29日付け基労補発0329第2号「労働者災害補償保険法第31条第1項第3号に基づく費用徴収の適正な取扱いについて」を踏まえて費用徴収に該当するか否か判断しているところであるが、本通達の趣旨を十分に理解せず誤った判断を行っている事案が散見されることから、当面の間、第3号事案について費用徴収決定を行う場合には、事前に本省あて報告すること。

第10 特別加入制度

1 建設業の一人親方等に対する特別加入制度の周知等

建設業の一人親方等の特別加入制度については、引き続き、安全衛生担当部署と連携の上、建設業の事業者団体等を通じ、あらゆる機会をとらえて周知すること。

また、周知に際しては、特別加入制度は労働者以外の者のための制度であること等、制度の趣旨を丁寧に説明し、十分な理解の上で加入申請が行われるよう留意すること。

2 労働者災害補償保険法施行規則の一部改正に伴う特別加入要件の改正

平成26年10月31日付け基発1031第1号により示したとおり、労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令(平成26年厚生労働省令第118号)により、平成26年11月1日以降、家内労働者の特別加入の範囲及び特別加入の加入時健康診断の対象者が見直されたところである。

特別加入制度に関するリーフレット(特別加入制度のしおり)の発行を平成27年4月に予定しており、あらゆる機会をとらえて、当該見直し事項について周知を図ること。

第11 行政上の争訟に当たっての的確な対応

1 行政事件訴訟の的確な追行

平成26年度の訴訟追行状況については、医学的証拠を提出しなかったため、疾病の発症機序やリスクファクターの主張が十分でなく、敗訴した例も認められたところである。

このため、訴訟追行に当たっては、法務当局及び本省補償課労災保険審理室と緊密に連携し、脳・心臓疾患及び精神障害等の新件協議において指示された事項を的確に実施するとともに、関係者からの聴取や専門医からの意見書の収集などの補充調査等を確実に実施すること。

2 審査請求事案の迅速・適正な処理

審査請求受理後6か月以上経過した長期未決事案については、年々減少している状況にあるが、審査請求事案の処理に当たっては、局課長は、引き続き事案ごとに審理状況を把握するなど、進行管理を的確に行うとともに、審査官に対して具体的な助言等を速やかに講じること。

第12 地方監察の的確な実施

地方監察は、関係法令、通達等に基づく事務処理の適正かつ斉一的な実施に不可欠なものであることに配意し、地方労災補償監察官監察指針を踏まえ効果的に実施すること。

特に、是正改善を要する事項は、単に問題点として提起するのみならず、当該問題の生じた背景、原因を明らかにし、是正改善策について具体的に指導、助言するとともに、是正改善措置が継続的に実施され適正な事務処理が確保されているかの検証を的確に行うこと。

また、地方監察結果と併せ、平成26年度中央労災補償業務監察結果報告書の内容と局署の事務処理とを照らし合わせて自局の問題点等について検証の上、改善すべき事項や事務処理の留意点等を各種会議、研修等のあらゆる機会を通じ、すべての労災担当職員に周知・徹底すること。

第13 労災補償業務の効率化と人材育成

1 初任者に対する研修の実施

平成27年度から、任官後に初めて労災補償業務に従事する者に対して都道府県労働局のブロック・キー局において実施すべき研修コースとして、追って発出される予定の大臣官房地方課長通知「平成27年度地方労働行政職員研修計画について」(以下「地方課通知」という。)により、新たに「労災補償業務担当者コース」を示す予定である。研修資料については本省で作成し、追って大臣官房地方課経由で電子媒体で提供することとしているので、当該資料に基づき効果的な研修を実施すること。

また、新任の労働基準監督官等に対する労災補償業務に係る実地訓練の進め方については、平成23年2月25日付け基労発0225第1号「労災業務OJTマニュアルについて」により指示されているところであるが、当該実地訓練については、労働基準監督官のみならず任官後に初めて労災補償業務に従事する事務官も全員対象として実施すること。

2 業務遂行能力の向上を図る研修の実施

各都道府県労働局においては、地方課通知に定める「地方研修計画要綱」別添地方研修概要一覧に示すところにより、労災補償業務に従事する者に対し、専門的知識を習得させ、業務遂行能力の向上を図るための研修を各局の実情に応じてテーマを設定して実施すること。実施に当たっては、外部有識者や、必要に応じてベテランの労災補償担当職員を講師として有効に活用すること。

3 業務の効率的な推進に資する参考資料の活用

本省において、効率的な業務の推進に資するものとして、平成27年度中に業務上外の決定に際しての調査のポイントや調査結果復命書例等を示した労災認定事例集(仮称)を作成することとしているので、局署において、業務の参考資料として活用すること。

第14 その他

1 労災レセプト電算処理システムの普及促進

労災レセプト電算処理システムの普及促進については、労災診療費の支払の適正化及び審査事務の効率化等の観点から重要であることから、平成26年1月24日付け基労発0124第1号「労災レセプト電算処理システムの普及促進に向けた取組について」に基づき、平成28年度までの間を普及促進期間として、引き続き、労災保険指定医療機関等への利用勧奨を確実に行うこと。

2 社会保障・税番号制度の施行に向けた労災保険給付事務の一部改正

労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)による年金給付に係る厚生年金保険の障害厚生年金等との併給調整等の事務処理のため、社会保障・税番号制度の施行に向け、平成26年度中に労働者災害補償保険法施行規則等の必要な改正を行うことを予定しているところである。

ついては、平成27年度に具体的な改正内容・事務の詳細を、別途指示するので、その内容に十分に留意すること。