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○子どもによる医薬品誤飲事故の防止対策の徹底について(医療機関及び薬局への注意喚起及び周知徹底依頼)

(平成26年12月24日)

(/医政総発1224第3号/薬食総発1224第1号/薬食安発1224第2号/)

(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医政局総務課長・厚生労働省医薬食品局総務課長・厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知)

(公印省略)

医薬品等の誤飲防止対策については、平成25年1月4日付け医政総発0104第1号・薬食総発0104第2号・薬食安発0104第1号厚生労働省医政局総務課長・医薬食品局総務課長・安全対策課長連名通知「医薬品等の誤飲防止対策の徹底について(医療機関及び薬局への注意喚起及び周知徹底依頼)」により、医療機関及び薬局への周知徹底をお願いしているところです。

今般、消費者安全調査委員会より「消費者安全法第31条第3項に基づく経過報告「子どもによる医薬品誤飲事故」」(平成26年12月19日付け消費者安全調査委員会報告書。以下「報告書」という。)が別添1のとおりとりまとめられ、消費者安全調査委員会委員長から厚生労働大臣に対し別添2のとおり意見が提出されたところです。

報告書では、事故等原因調査の結果、子どもによる大人用医薬品の誤飲が多く発生し、入院に至るような重い中毒症状を呈すると考えられる向精神薬等の誤飲の発生も認められています。また、保護者へのアンケート調査から、保護者に誤飲事故について十分に認知されていないことや、誤飲事故が発生した際の対処方法を知らない保護者が多いことが報告されています。

つきましては、子どもによる医薬品誤飲事故を防ぐため、下記について貴管下の医療機関及び薬局への周知方よろしくお願いします。

子どもが誤飲して、重い中毒症状を呈するリスクが高く特に注意を要する医薬品(向精神薬、気管支拡張剤、血圧降下剤及び血糖降下剤)を中心に、医薬品の処方又は調剤に当たっては、報告書の「子どもの行動特性からみる医薬品誤飲事故」を参考に、家庭における保管について、情報の掲示等により保護者等に注意喚起すること。

また、薬袋等に子どもによる誤飲に関する注意点を記載する等の対策を講じること。

さらに、医薬品の処方又は調剤に当たっては、誤飲事故が発生した場合の対処方法として、報告書の「(参考)子どもによる医薬品を誤飲した際の相談機関及び相談に必要な情報例」(64頁)について情報の掲示等により保護者等に情報提供すること。

なお、情報の掲示物の例としては別紙のとおりであり参考にされたい。

(参考)

本通知を含め、医薬品・医療機器の安全性に関する特に重要な情報が発出された時に、その情報をメールによって配信する「医薬品医療機器情報配信サービス」(PMDAメディナビ)が、独立行政法人医薬品医療機器総合機構において運営されております。以下のURLから登録できますので、御活用ください。

医薬品医療機器情報配信サービス

http://www.info.pmda.go.jp/info/idx-push.html

また、公益財団法人日本医療機能評価機構が、医療事故情報収集等事業において収集された情報に基づき、医療事故の発生予防、再発防止を促進するために特に周知すべき情報を医療安全情報として下記ホームページに掲載していますので、御活用ください。

日本医療機能評価機構医療安全情報ホームページ

http://www.med-safe.jp/contents/info/index.html

○子どもによる医薬品誤飲事故の防止対策の徹底について(医療機関及び薬局への注意喚起及び周知徹底依頼)

(平成26年12月24日)

(/医政総発1224第4号/薬食総発1224第2号/薬食安発1224第3号/)

((別記)あて厚生労働省医政局総務課長・厚生労働省医薬食品局総務課長・厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知)

標記について、別添写しのとおり、各都道府県衛生主管部(局)長等あてに通知しましたので、御了知いただくと共に、関係者への周知方よろしくお願いします。

(別記)

公益社団法人 日本医師会長

公益社団法人 日本歯科医師会 会長

公益社団法人 日本薬剤師会 会長

一般社団法人 日本病院薬剤師会 会長

公益社団法人 日本看護協会 会長

公益社団法人 日本助産師会 会長

公益社団法人 日本小児科学会 会長

一般社団法人 日本医療法人協会 会長

公益社団法人 全日本病院協会 会長

公益社団法人 全国自治体病院協議会 会長

公益社団法人 日本精神科病院協会 会長

一般社団法人 日本病院会 会長

独立行政法人 国立病院機構 理事長

独立行政法人 労働者健康福祉機構 理事長

公益社団法人 全国国民健康保険診療施設協議会 会長

一般社団法人 全国公私病院連盟 会長

社会福祉法人 恩賜財団済生会 会長

日本赤十字社 社長

国家公務員共済組合連合会 理事長

社会福祉法人 北海道社会事業協会 会長

一般社団法人 地方公務員共済組合協議会 会長

全国厚生農業協同組合連合会 会長

健康保険組合連合会 会長

独立行政法人 地域医療機能推進機構 理事長

宮内庁長官官房秘書課長

法務省矯正局矯正医療管理官

文部科学省高等教育局医学教育課長

防衛省人事教育局衛生官

独立行政法人 国立国際医療研究センター 理事長

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 理事長

独立行政法人 国立がん研究センター 理事長

独立行政法人 国立長寿医療研究センター 理事長

独立行政法人 国立成育医療研究センター 理事長

独立行政法人 国立循環器病研究センター 理事長

公益財団法人 日本医療機能評価機構 理事長

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 理事長

(以上)

(別紙)情報の掲示物の例

別添1

消費者安全法第31条第3項に基づく経過報告

子どもによる医薬品誤飲事故

平成26年12月19日

消費者安全調査委員会

≪参考≫

経過報告本文中に用いる用語の取扱いについて

本経過報告の本文中における記述に用いる用語の使い方は、次のとおりとする。

① 断定できる場合

・・・「認められる」

② 断定できないが、ほぼ間違いない場合

・・・「推定される」

③ 可能性が高い場合

・・・「考えられる」

④ 可能性がある場合

・・・「可能性が考えられる」

・・・「可能性があると考えられる」

目次

要旨

1 子どもによる医薬品誤飲事故の現状

1.1 子どもによる医薬品誤飲事故の発生状況

1.2 子どもによる医薬品誤飲事故の事例

1.3 子どもによる医薬品等の誤飲防止に関する主な取組について

1.4 誤飲防止のための包装容器について

2 事故等原因調査の経過

2.1 事故等原因調査を行うこととした理由

2.2 調査体制

2.3 調査の実施経過

2.4 調査の視点

3 分析

3.1 中毒情報センターからの情報収集及び分析

3.1.1 調査方法

3.1.2 調査結果

3.1.3 考察

3.2 保護者への意識調査アンケート

3.2.1 調査目的

3.2.2 調査方法

3.2.3 調査結果

3.2.4 考察

3.3 保護者への聞取り調査

3.3.1 事例1:子どもが足場を使って医薬品を手に取った誤飲未遂

3.3.2 事例2:子どもが足場を持ってきて手に取った医薬品を誤飲したと推定される事故

3.3.3 事例3:片付け忘れた医薬品の誤飲事故

3.3.4 事例4:置き忘れた医薬品を誤飲した事故

3.3.5 事例5:兄の治療中に弟が医薬品を誤飲した事故

3.3.6 事例6:甘い味のするシロップ薬を多量に誤飲した事故

3.3.7 事例7:子どもの目や手の届かない場所に保管していた医薬品の誤飲事故

3.3.8 事例8:収納し忘れた医薬品を菓子と間違えて誤飲した事故

3.3.9 8事例から確認された子どもによる医薬品誤飲の傾向

3.4 小児科医からの誤飲事故の情報収集

3.4.1 追跡調査を行った誤飲事故事例概要

3.4.2 誤飲すると重い中毒症状を呈するリスクが高い医薬品

3.5 子どもによる医薬品等の誤飲に関する保護者への情報提供及び注意喚起について

3.5.1 具体的な注意喚起等の内容

3.5.2 考察

4 分析のまとめ

4.1 誤飲発生時の医薬品の管理状況

4.2 子どもの行動特性からみる医薬品誤飲事故

4.3 特に注意を要する医薬品の種類

4.4 子どもによる医薬品誤飲に関する注意喚起

5 再発防止策

5.1 保護者に対する周知

5.1.1 リスクの周知

5.1.2 誤飲発生後の重症化リスクの低減

5.2 包装容器改良面での対策(今後、調査委員会で更に検討)

6 意見

6.1 厚生労働大臣への意見

6.2 消費者庁長官への意見

要旨

公益財団法人日本中毒情報センター(以下「中毒情報センター」という。)が収集した情報によると、5歳以下の子どもの医薬品等の誤飲事故情報の件数は、平成18年以降増加傾向にある。特に、一般用医薬品等に比べて、医療用医薬品の誤飲が増加する傾向がある。

また、厚生労働省が実施している「家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」によると、小児による医薬品・医薬部外品(以下「医薬品等」という。)の誤飲事故の件数は、たばこに次いで多い。

消費者安全調査委員会(以下「調査委員会」という。)は、このような状況を踏まえて、子どもによる医薬品誤飲の原因を解明し、再発防止が必要であると判断し、調査を行うこととした。

<分析のまとめ>

保護者へのアンケート調査及び誤飲事故が発生した家庭での現地調査や聞取り調査から、子どもによる医薬品の誤飲については、①医薬品の置き忘れや一時保管していた場所から子どもが医薬品を手に取って誤飲する事故や、②手が届かない、目に触れないはずの保管場所から子どもが取り出し誤飲する事故が確認された。後者には、保護者が想像し難いような行動により取り出した事例もあった。

これらの事故には、子どもの成長に応じて「身近にあるものを何でも口に運ぶ」、「周囲への興味や関心が高まり人の模倣をする」、「興味を持って好んで取る」など、子どもの年齢や発達段階によって変化する行動特性が影響していると考えられる。

また、保護者へのアンケート調査から、保護者にこのような誤飲事故について十分に認知されていないことが事故発生の背景要因となっていると考えられる。

子どもが誤飲する医薬品の種類は多岐にわたったが、特に注意を要するものとして、向精神薬、気管支拡張剤、血圧降下剤及び血糖降下剤が考えられる。

子どもの行動特性や、保護者の体調等によっては注意力が散漫になりがちな場合があることなどに鑑み、仮に子どもが医薬品を手に取ったとしても容易に開封することができない容器の開発・普及などの対策が必要であると考えられる。

さらに、様々な機会、媒体を活用しつつ、注意喚起や啓発の取組を継続して行っていくことが重要である。その際、事故事例を紹介するなどにより、子どもの成長に応じた事故の特徴、注意すべきポイント、特に注意を要する医薬品の種類などをできるだけ具体的に示すことがより効果的と考えられる。

<意見>

調査委員会は、医薬品包装容器等の製品面の課題を中心に、子どもによる誤飲事故の防止に向けた調査を引き続き行うが、現時点までに行った調査の結果に基づき、消費者へのリスク等の周知に関する点について、以下のとおり意見を述べる。

厚生労働大臣への意見

厚生労働省は、子どもによる医薬品の誤飲防止のため、次の(1)、(2)及び(3)の取組を行うよう地方公共団体及び関係団体に求めるべきである。

(1) 子どもによる医薬品の誤飲事故の発生自体を認識していない保護者も少なくないことから、医薬品の誤飲のリスクについて、子どもの年齢や発達段階によって変化する行動特性や、子どもによる大人用医薬品の誤飲が多く発生し、入院に至るような重い中毒症状を呈すると考えられる向精神薬等の誤飲も発生していること等も踏まえ、できるだけ具体的なポイントを示しつつ、保護者に対して広く周知し、家庭での適切な管理を促すこと。

(2) 子どもが誤飲して、重い中毒症状を呈するリスクが高い医薬品を中心に、医薬品を処方及び調剤する際に、子どもによる誤飲について保護者に伝わる注意喚起を行うこと。

(3) 子どもによる医薬品の誤飲に対する対処方法を知らない保護者が多いという実態に鑑み、保護者に対して、子どもによる医薬品の誤飲事故が発生した場合に的確な対処方法の相談や指示ができる機関に関する情報提供の徹底を図ること。

消費者庁長官への意見

消費者庁は、子どもによる医薬品の誤飲防止のため、保護者等に対して、上記(1)及び(3)を内容とする注意喚起を行うべきである。

1 子どもによる医薬品誤飲事故の現状

1.1 子ども1による医薬品誤飲2事故の発生状況

中毒情報センターが収集した情報によると、5歳以下の子どもの医薬品等の誤飲事故情報の件数は、平成18年以降増加傾向にある。特に、一般用医薬品等3に比べて、医療用医薬品4の誤飲が増加する傾向がある(図1参照)。平成24年1月~12月に中毒情報センターが収集した5歳以下の子どもの医薬品等誤飲事故情報8,388件のうち、症状を有した5ものは869件あった。

図1 5歳以下の子どもの誤飲事故件数

(中毒情報センターが収集した情報より調査委員会が作成)

厚生労働省が実施している「家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」によると、小児による医薬品等の誤飲事故の件数は、たばこに次いで多い。最新の報告(平成24年度)では、小児の誤飲事故全事例385件のうち、たばこの誤飲が99件(25.7%)、医薬品等の誤飲が57件(14.8%)であった(いずれも延べ件数)(図2参照)。

図2 子どもの家庭用品等の誤飲事故件数

(厚生労働省「家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」6より調査委員会が作成)

また、東京消防庁によると、平成24年に5歳以下の子どもが医薬品を誤飲したことにより救急搬送された事故は41件あった。

1.2 子どもによる医薬品誤飲事故の事例

ここでは、調査委員会が、聞取り調査を行った子どもによる医薬品の誤飲事故又は誤飲未遂のうち、代表的な4事例を以下に記載する。

(1) 子どもが足場を持ってきて手に取った医薬品を誤飲したと推定される事故(3.3.2の事例2)

親が目を覚ますと、医薬品を保管していた居間の棚の近くに、噛み跡のあるPTP包装7が落ちているのを発見した。子ども(年齢1歳7か月、身長79cm)は、大人用の胃炎・胃潰瘍治療薬を4~5錠誤飲していた。この家庭では、子どもの目や手の届かない棚(床面から136cm)に医薬品を保管していたが、子どもは座椅子2台と子ども用の椅子を足場にして当該医薬品を手にしたと考えられる(図3参照)。

図3 (1)において医薬品を置いていた場所及びその付近の状況

(2) 置き忘れた医薬品を誤飲した事故(3.3.4の事例4)

親は、子ども(年齢2歳5か月、身長85cm)と一緒に昼寝をしようと考え、自身が寝つきをよくするために普段服用している精神安定剤を3~4錠(PTP包装)携行し、子どもと一緒に寝室へ入った。親はこれまで寝室に医薬品を持ち込んだことはなかったが、事故発生当日は、当該医薬品を1錠服用し、残りの2~3錠を同室のベッドのサイドテーブルの上に置いたまま、子どもより先に寝てしまった。子どもは、サイドテーブル上の医薬品を手に取り誤飲した(図4参照)。

図4 (2)において医薬品を置いていた場所及びその付近の状況

(3) 兄の治療中に弟が医薬品を誤飲した事故(3.3.5の事例5)

親が居間の床の上に薬箱を置いて子ども(兄)の怪我の手当てをしていたとき、子ども(弟、年齢2歳6か月、身長80cm)が薬箱から乗物酔防止薬を取り出し、5錠程度誤飲した。誤飲した医薬品は、弟が数日前まで食べていたタブレット菓子と外観が類似していた(図5参照)。

図5 (3)において医薬品を置いていた場所及びその付近の状況

(4) 甘い味のするシロップ薬を多量に誤飲した事故(3.3.6の事例6)

両親が見ていない間に、子ども(弟、年齢2歳10か月、身長92cm)が台所で瓶に入ったシロップ薬を1本全量誤飲した。誤飲した医薬品は、台所の調理台の奥に、一時的に置いていた(図6参照)。弟の身長では手の届かない場所に医薬品があったため、弟は、踏み台を使用したか、兄と協力して手にした可能性がある。誤飲したのは、いちご風味のシロップ薬であり、甘くて飲みやすい特徴を有していた。

図6 (4)において医薬品を置いていた場所及びその付近の状況

1.3 子どもによる医薬品等の誤飲防止に関する主な取組について

子どもによる医薬品等の誤飲事故防止に関しては、これまでに厚生労働省、消費者庁、地方自治体及び医療関連団体等において、以下の情報提供及び注意喚起等が行われている。詳細については、3.5.1に記載している。

(1) 「家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」(厚生労働省)

(2) 「医薬品等の誤飲防止対策の徹底について」(厚生労働省)

(3) 「母子保健事業のための事故防止指導マニュアル」(厚生労働省)

(4) 「子ども安全メール」(消費者庁)

(5) 「知っておきたい薬の知識」(厚生労働省、日本薬剤師会)

(6) リーフレット「大変危険です。子どもの誤飲!!」(中毒情報センター)

(7) 「子供用水薬を中心とした医薬品容器の安全対策報告書」(東京都商品等安全対策協議会8)

1.4 誤飲防止のための包装容器について

日本国内で使われている主な医薬品包装容器を表1に示す。子どもによる医薬品の誤飲を防止する手段として、子どもには開けにくく、大人には開けにくくないように工夫された容器であるチャイルドレジスタンス包装容器9(以下「CR包装容器」という。)がある。欧米諸国では、法令によりその使用が義務化され、普及が進んでいる例がみられるが、日本では法令での義務化はされておらず、個々の企業の判断によりCR包装容器が水薬を中心に使用されている。

表1 日本国内の医薬品の包装容器10

包装の種類

包装形態

PTP包装

(再封不可能)

錠剤やカプセルなどを押し出す包装

画像8 (15KB)別ウィンドウが開きます

瓶・ボトル

(再封可能)

錠剤や内服液剤等に使用する包装

画像9 (6KB)別ウィンドウが開きます

(再封不可能)

散剤や顆粒剤の分包に使用する包装

画像10 (3KB)別ウィンドウが開きます

チューブ包装

(再封可能)

外用薬等に使用する包装

画像11 (4KB)別ウィンドウが開きます

(1) 日本国内の医薬品の安全包装に係る取組

① PTP包装の誤飲事故防止対策

高齢者が、PTP包装の医薬品を1錠単位で切り離し、錠剤と一緒にPTP包装ごと飲み込み、喉や食道などを傷つける事故が頻発した11ため、厚生労働省から平成22年9月15日に通知「PTP包装シート誤飲防止対策について」(医政総発0915第2号・薬食総発0915第5号・薬食安発0915第3号)が発出された。これを受けて、日本製薬団体連合会12等により、1錠ごとに切り離せないようにPTP包装のミシン目の工夫等の検討が進められている。

② CR包装容器の検討

「子供用水薬を中心とした医薬品容器の安全対策報告書」(平成23年4月)では、子どもの誤飲事故の発生状況、医薬品誤飲事故を防止するための安全対策の現状、水薬誤飲事故の事例等が取りまとめられている。さらに、誤飲防止策の1つとして、医療機関及び薬局における子ども用水薬のCR包装容器の使用及びCR包装容器の普及への取組等についての提言がされた。医薬品包装容器の多くを占めるPTP包装での誤飲事故については、この調査では言及されていない。

また、厚生労働省は、平成25年1月4日に通知「医薬品等の誤飲防止対策の徹底について」(薬食総発0104第4号・薬食安発0104第3号)を発出し、関連団体に対して、CR包装容器の採用をはじめ、小児による医薬品等の誤飲防止等、医薬品の安全性の向上のための検討を求めている。

(2) 海外でのCR包装容器普及状況

米国では、各年齢層の死因に関する統計データベースを調査した結果、1962年に年間450人に上る5歳以下の子どもが中毒13で死亡していることが分かった14。これらの死亡事故は、洗剤や庭用農薬、医薬品といった家庭用製品により引き起こされていた。中毒事故の未然防止のために包装容器の改良が検討され、結果として、1970年にPoison Preventive Packaging Act(毒物予防包装法)が連邦議会を通過し、1972年に施行された。この法律によって、医薬品を含む特定の家庭用製品の包装容器は、CR包装容器にすることが義務化された。

欧州連合(以下「EU」15という。)では、2003年にCR包装容器についてEN規格16を設定したが、CR包装容器は、必ずしもEU加盟各国において要求されているわけではない。EU加盟各国は自国における製品要件を定め、要件を施行するための制度を導入する権利がある17。例として、英国では、医薬品の中でも固形アスピリン(アセチルサリチル酸)、液状アセトアミノフェン(パラセタモール)、24mg超の元素鉄を含む医薬品に対してCR包装容器を義務化している。一方、仏国では、行政命令で定めた危険物質の中に医薬品は含まれておらず、医薬品に対してCR包装容器を義務化していない。

――――――――――

1 本経過報告において、特記事項として支障のない限り、「子ども」とは6歳以下の者を意味する。

2 本経過報告において、「誤飲」とは、飲み込み等による経口摂取のほか、目・皮膚等からの摂取をする場合も含む。

3 本経過報告において、「一般用医薬品等」とは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第4条第5項第4号の要指導医薬品及び同項第5号の一般用医薬品をいう。

4 本経過報告において、「医療用医薬品」とは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第4条第5項第3号の薬局用医薬品をいう。

5 「症状を有した」とは、医薬品の誤飲後、医療機関受診前に家庭等でみられた症状(主訴)、受診した際の症状(現症)及び受診後に認められた症状や検査値の異常などがあったことをいう。

6 「家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」(厚生労働省)平成22年度(平成23年12月27日)及び平成24年度(平成26年3月31日)

7 「PTP包装」とは、「Press Through Package」の略で、医薬品等をアルミなどの薄いシートとプラスチックで、1錠ずつ分けて包装したものをいう。

8 東京都の委嘱を受けた消費者、事業者及び学識経験者等により構成され、商品等による危害や危険から都民を守るため、東京都が選定したテーマについて検討・協議を行い、安全対策について提言している。

9 チャイルドレジスタンス包装容器(Child-resistant package)について、ISO8317:2003 (E)では次のように定義されている。“package consisting of a container and appropriate closure which is difficult for young children under the age of fifty-two months to open (or gain access to the contents), but which is not difficult for adults to use properly when tested and approved in accordance with the requirements of this International Standard”

10 東京都商品等安全対策協議会「子供用水薬を中心とした医薬品容器の安全対策」(平成23年4月)より作成。

11 平成12年度から平成21年度まで危害情報システムに寄せられたPTP包装などの包装容器ごと誤飲した86相談事例のうち、8割以上が60歳代以上の高齢者で占められ、3歳未満の子どもは5%以下であった。

12 医薬品製造業者を会員とする地域別団体(東京、大阪等各都道府県に所在する17団体)及び業態別団体(医療用、一般用等各業態別による14団体)により、構成される連合会。

13 「中毒」とは、飲食物または内用・外用の薬物などの毒性によって生体の組織や機能が障害されること。(出典:広辞苑)

14 チャイルドレジスタンス包装容器 第1回 世界の最新動向 効果が実証された傷害防止ストラテジー(前編)PHARM TECH JAPAN Vol.30 No.2(2014)27

15 European Unionの略称。

16 European Norm(European Standards:欧州規格)の略称。ENはEU加盟国間の貿易円滑化と同時に産業水準統一化のための「地域規格」として制定されている。

17 PHARM TECH JAPAN Vol.30 No.2(2014)32

2 事故等原因調査の経過

2.1 事故等原因調査を行うこととした理由

調査委員会は、子どもによる医薬品誤飲事故の発生状況を踏まえ、平成25年12月20日に開催された第15回調査委員会において、「事故等原因調査等の対象の選定指針」(平成24年10月3日消費者安全調査委員会決定)のうち、次の要素を重視し、子どもによる医薬品誤飲事故を事故等原因調査を行う事故として選定した。

(a) 広く消費者の利用に供されていて「公共性」が高いこと

(b) 「多発性」があること

(c) 「消費者(子ども)自身による回避可能性」が低いこと

2.2 調査体制

調査委員会は、急性薬物中毒の分野を専門とする黒木由美子専門委員(中毒情報センター理事)及び人間工学を専門とする多田充徳専門委員(独立行政法人産業技術総合研究所デジタルヒューマン工学研究センター研究チーム長)の2名を指名し、食品・化学・医学等調査部会及び調査委員会で審議を行った。

2.3 調査の実施経過

平成25年

12月20日 第15回調査委員会で、子どもによる医薬品誤飲事故を事故等原因調査を行う事故として選定

平成26年

2月13日 調査委員会第6回食品・化学・医学等事故調査部会で調査計画を審議

4月10日 調査委員会第7回食品・化学・医学等事故調査部会で調査経過の報告及び今後の調査方針を審議

5月8日 調査委員会第8回食品・化学・医学等事故調査部会で調査経過を報告

6月12日 調査委員会第9回食品・化学・医学等事故調査部会で調査経過を報告

8月8日 調査委員会第10回食品・化学・医学等事故調査部会で調査経過を報告

8月29日 第23回調査委員会で調査経過と進捗状況を報告

9月11日 調査委員会第11回食品・化学・医学等事故調査部会で経過報告(素案)を審議

9月26日 第24回調査委員会で経過報告(素案)を審議

11月11日 調査委員会第12回食品・化学・医学等事故調査部会で経過報告(素案)を審議

11月21日 第26回調査委員会で経過報告(素案)を審議

12月5日 調査委員会第13回食品・化学・医学等事故調査部会で経過報告(案)を審議

12月19日 第27回調査委員会で経過報告(案)を審議・決定

2.4 調査の視点

調査委員会では、医薬品の包装容器等の製品面の課題、処方及び購入の段階、保護者等が医薬品を使用する段階(家庭)及び重症化リスクの低減のための誤飲事故後の対応といった点に着目し調査を行った。

本経過報告においては、これまでに実施した中毒情報センター等からの情報分析、保護者へのアンケート調査、保護者と小児科医への聞取り調査に基づき、誤飲事故発生の原因や背景要因を分析した結果を中心に記載した。また、分析から得られた、誤飲についての保護者の意識、家庭での医薬品等の取扱い、誤飲事故発生環境・状況、誤飲事故発生後の保護者や医療機関の対応、誤飲した医薬品の種類、子どもの行動特性などを踏まえて、誤飲事故の再発防止策を記載した。

医薬品の包装容器等製品面からの誤飲防止については、海外でみられるCR包装容器に着目して調査している。本経過報告では、医薬品の包装容器面での日本での現状や海外の対策の実態等について記載するにとどめ、具体的な調査結果及び再発防止策については、調査を引き続き行い、今後取りまとめる。

3 分析

3.1 中毒情報センターからの情報収集及び分析

中毒情報センターは中毒110番18という電話相談窓口を設置している。中毒情報センターに寄せられた、子どもによる医薬品等の誤飲事故に関する相談情報を基に、誤飲発生状況を詳細に分析した。

3.1.1 調査方法

平成24年1月~12月に中毒情報センターが収集した5歳以下の子どもの医薬品等誤飲事故情報8,388件のうち、症状を有した869件をデータ分析対象とした。分析に当たっては、子ども本人による誤飲事故764件(87.9%)と大人の与え間違い(医薬品等の取り違え19、医薬品等の飲ませ間違い20及び使用時のアクシデント等)による誤飲事故105件(12.1%)は発生の原因に相違があると考えられることから2つに分けて、詳細を分析した(図7参照)。

また、医療機関からの連絡のあった(171件)に対して行われた追跡調査によって回答を得た112件の情報についても中毒情報センターから提供を受け、調査委員会で分析を行った。

図7 子どもの医薬品等誤飲事故

3.1.2 調査結果

(1) 子ども本人による医薬品等誤飲事故

子ども本人による医薬品等誤飲事故764件のうち、家族からの連絡は、608件(79.6%)であり、残りの連絡は、医療機関等(病院、診療所、薬局)と保育所からであった。

① 誤飲事故の発生場所及び時刻

発生場所は、自宅が737件(96.5%)と多数を占め(図8参照)、発生時刻は、7時~21時頃までの時間帯に多発し、特に18時~19時に集中していた(図9参照)。

図8 子ども本人による医薬品等誤飲事故の発生場所

図9 子ども本人による医薬品等誤飲事故の発生時刻

② 誤飲した子どもの年齢等

誤飲した子どもの年齢は1~2歳が549件(71.9%)を占め(図10参照)、3歳未満の子どもを月齢別にみると、6か月~1歳5か月と1歳6か月~2歳5か月に二峰性が認められた(図11参照)。

図10 子ども本人による医薬品等誤飲事故における子どもの年齢(0―5歳)

図11 子ども本人による医薬品等誤飲事故における子どもの月齢(3歳未満)

③ 誤飲した医薬品等の種類

子ども本人による医薬品等誤飲事故764件において、誤飲した医薬品等延べ871剤の区分(複数摂取事例については医薬品等の製剤ごとに数え、合剤は1剤として数えた。)は、医療用医薬品563剤(64.6%)、一般用医薬品等256剤(29.4%)、指定医薬部外品42剤(4.8%)及びその他10剤(1.2%)であった。その他10剤には、海外の薬3剤及び動物用医薬品2剤が含まれる(図12参照)。

図12 子ども本人による誤飲事故における医薬品等の区分

また、誤飲した医薬品等422剤について、本来の対象者を確認したところ、大人用が275剤(65.2%)、子ども用が145剤(34.4%)及び動物用が2剤(0.5%)であった。

大人用医薬品等の誤飲年齢の中央値は1歳9か月であり、子ども用医薬品等の誤飲年齢の中央値は2歳2か月であった。また、1歳では大人用医薬品等の誤飲件数が多かった。2歳になると子ども用医薬品等と同数近くになり、3歳以上では、子ども用医薬品等の誤飲件数が多かった(図13参照)。このように、年齢によって誤飲した医薬品等の区分が異なることが認められた。

図13 子ども本人による誤飲事故における対象者別の医薬品等の内訳

誤飲した医薬品等の剤形は、飲み薬591剤(67.9%)、塗り薬196剤(22.5%)の順に多く、飲み薬の内訳は、錠剤442剤(50.7%)、水薬88剤(10.1%)及びその他61剤(7.1%)であった(図14参照)。なお、錠剤は大人用医薬品等、水薬は子ども用医薬品等が多いと考えられる。

図14 子ども本人による誤飲事故における医薬品等の剤形

誤飲した子どもの年齢分布を医薬品等の剤形別にみると、塗り薬196件の誤飲年齢の中央値は1歳1か月であり、0歳、1歳で多く、2歳以上で顕著に減少した。錠剤442件の誤飲年齢の中央値は1歳10か月、水薬88件の誤飲年齢の中央値は2歳7か月であった(図15参照)。このように、誤飲した医薬品等の剤形は子どもの年齢によって異なる傾向が認められた。

図15 子ども本人による誤飲事故における医薬品等の剤形と子どもの年齢

誤飲した延べ871剤の医薬品等の包装容器の種類について、確認できた558剤(64.1%)について、その内訳をみると、PTP包装133剤(15.3%)、チューブ95剤(10.9%)、ボトル94剤(10.8%)、医療用のシロップ容器75剤(8.6%)、塗布ボトル53剤(6.1%)、袋31剤(3.6%)及びその他77剤(8.8%)であり、PTP包装が一番多かった(図16参照)。

図16 子ども本人による誤飲事故における医薬品等の包装容器

誤飲した医薬品等延べ992剤(複数摂取事例については、合剤も含め、全ての医薬品等を個々に数えた。)について薬効を示した医薬品等を確認した。

その薬効は、医療用医薬品では、一般に子どもには処方されない催眠鎮静剤・抗不安剤77剤、精神神経用剤68剤の誤飲が多く、子ども本人にも処方される機会のある去たん剤61剤、抗ヒスタミン剤55剤などが続いた。一般用医薬品等では、子どもも使用する外用の鎮痛・鎮痒ちんよう収斂しゅうれん・消炎剤が82剤と多かったが、大人用と思われる風邪薬38剤、瀉下しゃげ薬(下剤)22剤などもみられた(図17参照)。

図17 子ども本人による誤飲事故における医薬品等の薬効上位10品目

(2) 医薬品等与え間違いによる子どもの誤飲事故

医薬品等与え間違いによる子どもの誤飲事故は105件で、連絡は、家族から86件(81.9%)、病院から13件(12.4%)、診療所から5件(4.8%)及び保育所から1件(1.0%)であった。

① 誤飲事故の発生場所及び時刻

医薬品等与え間違いによる子どもの誤飲事故の発生場所は、大部分が自宅で、93件(88.6%)であった(図18参照)。発生時刻では、19時、8時、12時の順に多くみられた(図19参照)。これらの時間帯は、食事前後の服用時間帯に一致すると推定される。

図18 与え間違いによる子どもの誤飲事故の発生場所

図19 与え間違いによる子どもの誤飲事故の発生時刻

医薬品等の摂取経路は、経口76件(72.4%)、眼13件(12.4%)、直腸10件(9.5%)、経皮2件(1.9%)及びその他・不明(3.8%)であった(図20参照)。

図20 与え間違いによる子どもの誤飲事故における医薬品等の摂取経路

② 誤飲した医薬品等の種類

誤飲した医薬品等延べ125剤(複数摂取事例については医薬品等の製剤ごとに数え、合剤は1剤として数えた。)の区分は、医療用医薬品100剤(80.0%)、一般用医薬品等18剤(14.4%)、指定医薬部外品6剤(4.8%)及び医薬品類以外1剤(0.8%)であった(図21参照)。

また、誤飲した医薬品等は、子ども用医薬品等が85剤(本人用の薬61剤、兄弟姉妹用の薬24剤)、大人用医薬品等が16剤及び不明が24剤であり、子ども用医薬品等の誤飲は、大人用医薬品等の誤飲の5倍以上であった(図22参照)。

図21 与え間違いによる子どもの誤飲事故における医薬品等の区分

図22 与え間違いによる子どもの誤飲事故における対象者別の医薬品等の内訳

医薬品等与え間違いによる子どもの誤飲事故において、誤飲した医薬品等の剤形は、飲み薬である粉薬55剤(44.0%)、水薬21剤(16.8%)、錠剤7剤(5.6%)が多く、塗り薬13剤(10.4%)、消毒薬11剤(8.8%)であった(図23参照)。

図23 与え間違いによる子どもの誤飲事故の医薬品等剤形

大人による医薬品等の与え間違え105件の状況の内訳は、取り違え36件(34.3%)、飲ませ間違い34件(32.4%)、使用時のアクシデント28件(26.7%)、その他6件(5.7%)及び不明1件(1.0%)であった(図24参照)。

図24 与え間違いによる子どもの誤飲事故の状況

取り違えでは、長子と次子の薬を取り違えた、大人の座薬を子どもに使用した、間違えて点眼したなどの事故があった。飲ませ間違いでは、回数を多く飲ませた、シロップ剤を量り間違えたなどの事故があった。服用時のアクシデントでは、飛び散った薬剤が眼に入った、付着した手で眼をこすったなどがあった。入院した事例は6件あったが、死亡例はなかった。

(3) 医療機関から提供された情報

医療機関(病院、診療所)から連絡があった誤飲事故171件について、事故の原因となった医薬品等数を調査したところ、1剤が136件(79.5%)、2剤が20件、3剤以上が15件であった。

誤飲事故171件のうち112件について、誤飲した医薬品の薬効、症状、入院日数等を追跡調査することができた。誤飲した医薬品数延べ235剤の薬効は多岐にわたり、医療用医薬品181剤では精神神経用剤24剤、催眠鎮静剤・抗不安剤23剤、抗ヒスタミン剤18剤、去たん剤13剤、気管支拡張剤10剤、解熱鎮痛消炎剤10剤の順に多く、一般用医薬品等(48件)では下剤12剤、風邪薬8剤、乗物酔防止薬等6剤の順であった。

受診時の主訴及び経過中に認めた症状は、眠気・傾眠52件、おう吐34件、ふらつき・座位不能・立位不能25件、動悸・頻脈19件、興奮15件、顔面紅潮13件、不機嫌10件、下痢・軟便10件などであった。

入院が判明した事例は46件で、入院日数は2日が26件、3日が11件、4日以上が9件であり、死亡や後遺症を残した事例はなかった。

3.1.3 考察

(1) 子ども本人による医薬品等誤飲事故について

子ども本人による医薬品等誤飲事故は、生後6か月頃から目立ち始め、誤飲件数は、9か月まで急速に増え、その後減少に向かうが、1歳6か月頃に再び増え、2歳頃まで高い件数が確認された(図11参照)。

① おおむね6か月から1歳3か月未満

この時期には、口に入れることを想定していない塗り薬による誤飲事故が多かった。

② おおむね1歳3か月から2歳未満

この時期には塗り薬の誤飲が減り、錠剤の誤飲件数のほうが多かった。また、錠剤の誤飲のピークは1歳であり、2歳まで多発していた。

③ おおむね2歳

おおむね2歳になると、甘いシロップ剤を開封するといった水薬の事故が多くなっている。

(2) 与え間違いによる子どもの医薬品等誤飲事故について

大人の与え間違いによる子どもの医薬品等誤飲事故は、事故発生時刻は食事前後の時間帯に多いことから、内服薬の与え間違いが多いと考えられる。与え間違えた医薬品等は、子ども用が大人用の5倍以上であった。医療用においても、子ども本人に処方される可能性のある医薬品がほとんどであり、一般用においても、子ども本人も使用する外用薬や殺菌消毒薬が多かった。

紛らわしい医薬品は近くに置かない、医薬品を使用する前には薬袋や医薬品名をよく確認するなど、保護者等が十分に注意を払うことが、誤飲事故の減少につながると考えられる。

(3) 医療機関から提供された情報

医療機関への追跡調査で詳細情報が得られた事例では、誤飲した医薬品等の薬効は多岐にわたったが、精神神経用剤、催眠鎮静剤・抗不安剤及び抗ヒスタミン剤が上位3位を占めた。それらの薬効により、受診時の主訴及び経過中に認められた症状は、眠気・傾眠、おう吐、ふらつき・座位不能・起立不能が上位を占めた。成分によっては錠剤1錠程度の誤飲であっても医療機関での加療や経過観察を必要とした事例が散見された。

精神神経用剤、催眠鎮静剤・抗不安剤のような向精神薬は、誤飲すると重い中毒症状を呈するリスクが高いと考えられ、医薬品の誤飲防止について、特に注意が必要と考えられる。

3.2 保護者への意識調査アンケート

3.2.1 調査目的

医薬品の誤飲事故及び誤飲未遂時の背景を明らかにすることを目的とし、子どもによる医薬品誤飲について、保護者はどのような意識を持ち、対応しているかを調査するため、保護者への意識調査アンケートを実施した。

3.2.2 調査方法

過去1年間に6歳以下の子どもによる医薬品の誤飲事故又は誤飲未遂の経験を有する保護者の有効回答数が500得られるよう調査会社の登録モニターに対し、インターネットによるアンケート調査を実施した。

3.2.3 調査結果

アンケートに回答した5,830人のうち、子どもによる医薬品の誤飲事故又は誤飲未遂を経験したと回答した保護者は501人(8.6%)であった。この501人の保護者を調査対象として、医薬品の誤飲に関する意識、並びに医薬品の誤飲事故及び誤飲未遂の状況を取りまとめた。なお、501人の中で、過去1年間に子どもが医薬品の誤飲をしたと回答した保護者は延べ153人、誤飲未遂をしたと回答した保護者は延べ383人であった。

(1) 子どもによる医薬品誤飲に関する保護者の認識

子どもによる医薬品誤飲事故又は誤飲未遂を経験した保護者501人のうち、誤飲事故又は誤飲未遂発生前に、子どもによる医薬品誤飲事故が発生していることを「知っていた」との回答は325人(64.9%)、「知らなかった」との回答は176人(35.1%)で、回答者の3分の1は子どもが医薬品を誤飲する可能性を知らなかったことになる。

また、子どもによる医薬品の誤飲を経験した保護者153人に、誤飲時の対処方法を知っていたかを確認したところ、54人(35.3%)の保護者が対処方法を「知っていた」と回答し、153人(64.7%)の保護者は「知らなかった」と回答した。子どもによる医薬品の誤飲に対して注意喚起を受けた経験は、59.5%の保護者が「ない」又は「覚えていない・分からない」であった。注意喚起を受けた経験のある保護者203人(40.5%)では、「子どもの検診時」が89人、「病院で子どもの医薬品を処方される際」が56人、「薬局で子ども用医薬品を購入する際」が55人であった。また、大人用医薬品購入時の注意喚起は、40人が薬局で、39人が病院で受けた(図25参照)。

子どもによる医薬品誤飲事故では大人用医薬品を誤飲することが多かったが、購入時に病院又は薬局で注意喚起を受けた件数は、大人用医薬品の方が子ども用医薬品よりも少ないことが分かった。

図25 子どもの医薬品誤飲に対する注意喚起を受けた経験

医薬品誤飲事故又は誤飲未遂を経験したときの子どもの年齢(複数経験している場合は直近の事例)は、1歳が228人(45.5%)と最も多く、次いで2歳が90人、0歳が67人であり、3~6歳は116人であった。

医薬品の保管に関して心掛けていることを確認したところ、「子どもの手の届かない高さに保管する」という者が357人(71.3%)と最も多く、「子どもの見えないところに保管する」という者が233人(46.5%)と次に多かった(図26参照)。子どもの年齢が3歳以上では手の届かない高さに保管する者は減少し、特に心掛けていることはないが増加した。鍵がかかる容器や場所に保管するは0歳で多くみられた。

図26 医薬品の保管に関して心掛けていること(複数回答)

子どもが医薬品を誤飲したときの対応について確認したところ、医療機関に聞いた・受診した・医療関係者に聞いた人が63人、家庭内で対処した人が38人、特に何もしていない人が32人であった。誤飲したときの対処方法を知っていたと回答した保護者は、家庭内で対処した割合が高く、家庭内で対処した保護者と特に何もしていない保護者を合わせると31人で、半数を超えた。知らなかったと回答した保護者は、知っていたと回答した保護者よりも事故発生後に医療機関を受診する傾向にあった(図27参照)。

図27 医薬品誤飲時の対応及び対処方法を事前に知っていたかどうか(複数回答)

(2) 子どもによる医薬品誤飲事故又は誤飲未遂の場所

子どもによる医薬品誤飲事故又は誤飲未遂の発生場所は、自宅が92.3%を占め、特に居間と台所での事故が多く、家庭内で医薬品を使用する場所に対応していると考えられる(図28参照)。

図28 医薬品誤飲事故又は誤飲未遂の発生場所

誤飲事故又は誤飲未遂発生時の医薬品の置き場所は、テーブル・台・棚の上が378人と多かった(図29参照)。また、発生した場所に置いた主な理由については、「服用のため」が212人、「保管・保存場所への戻し忘れ」が158人、「保管・保存のため」が116人であった(図30参照)。「その他」の回答には、医薬品を落としたことに気付かずに誤飲事故又は誤飲未遂が発生した事例5件が含まれる。

図29 誤飲事故又は誤飲未遂発生時の医薬品の置き場所(複数回答)

図30 医薬品をその場所に置いた理由(複数回答)

誤飲事故又は誤飲未遂発生時に子どもが手に取った医薬品について、床からの高さを聞いたところ、足場がない場合は、0歳から6歳までで、40~50cm(中央値)であった。足場がある場合、成長するに従って高い位置にある医薬品に手が届く傾向がみられた。さらに、子どもが自ら足場を持ってきた場合は、足場がある場合と比較して、より高い位置にある医薬品を取ることができ、100cm以上の高さに届いている事例も多かった。子どもが0歳の時には、足場を使わない場合が多かったが、1歳を越えると、その場にある足場を利用するか足場を持ってきて医薬品を取ることが多かった(表2参照)。

表2 誤飲事故又は誤飲未遂の発生時の年齢と医薬品の床からの高さ

 

年齢

事例数

中央値

(cm)

四分位範囲21

(cm)

最高到達点

(cm)

足場なし

0歳

38

50

50~55

100

1歳

95

40

30~95

140

2歳

30

50

30~75

100

3歳~6歳

42

50

45~75

140

足場あり

(椅子の上を含む。)

0歳

14

50

30~70

150

1歳

91

70

50~100

210

2歳

37

90

60~100

150

3歳~6歳

52

80

70~100

150

足場持参

0歳

5

90

80~92.5

100

1歳

20

100

87.5~100

130

2歳

17

100

100~132.5

150

3歳~6歳

15

100

100~120

160