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○滅菌バリデーション基準の制定について

(平成26年12月18日)

(薬食監麻発1218第4号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長通知)

(公印省略)

「医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(平成16年厚生労働省令第169号。以下「QMS省令」という。)第45条及び第46条に基づく滅菌工程のバリデーションの基準については、平成17年3月30日付け薬食監麻発0330001号「薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律の施行に伴う医薬品、医療機器等の製造管理及び品質管理(GMP/QMS)に係る省令及び告示の制定及び改廃について」の第4章の第4「滅菌バリデーション基準」(以下「旧基準」という。)に示していたところです。

今般、QMS省令並びに旧基準において引用している国際規格及び日本工業規格の改正に伴い、滅菌バリデーション基準(以下「新基準」という。)を別紙のとおり制定することとし、下記のとおり旧基準を廃止することとしましたので、貴管下関係業者に対して周知徹底を図られるようお願いします。

なお、本通知の写しを各地方厚生局長、独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事長、一般社団法人医療機器産業連合会会長、日本製薬団体連合会会長、一般社団法人日本臨床検査薬協会会長、米国医療機器・IVD工業会会長、欧州ビジネス協会医療機器委員会委員長、欧州ビジネス協会臨床検査機器・試薬(体外診断)委員会委員長及び医薬品医療機器等法登録認証機関協議会代表幹事宛て送付することとしています。

1 適用日

新基準は本通知の発出日から適用すること。

2 旧基準の廃止及び経過措置について

本通知の施行に伴い、旧基準を廃止すること。なお、平成27年11月24日までの間は従前の例によることができること。

3 既存の通知等の取扱いについて

既存の通知等については、別途の通知等が発出されない限り旧基準を新基準と読み替えるなど、必要な読替えを行った上で、引き続き適用されるものであること。

(別紙)

滅菌バリデーション基準

1 目的及び適用範囲

(1) 目的

この基準は、製造販売業者等又は製造業者による滅菌バリデーション(製造所の滅菌に係る構造設備並びに手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法が無菌性を保証することを検証し、これを文書とすることによって、要求事項に適合する製品の無菌性を恒常的に保証できるようにすることをいう。以下同じ。)が適切に実施されることを通じ、QMS省令に基づく滅菌医療機器の適切な製造管理及び品質管理の実施を図ることを目的とする。

(2) 適用範囲

この基準は、QMS省令の規定に基づき、滅菌医療機器の滅菌プロセスの開発、バリデーション及び日常管理の業務を実施する場合に適用する。

2 規格との関係

この基準に基づき、滅菌プロセスの開発、バリデーション及び日常管理を実施する場合は、滅菌方法ごとに、以下のJIS規格又はこれと同等以上の規格・基準によること。なお、これら規格の要求事項の概要等について、この基準3以降に記載したので、参考とすること。

(1) エチレンオキサイド滅菌

・JIS T 0801:2016(ISO 11135:2014)

ヘルスケア製品の滅菌―エチレンオキサイド―医療機器の滅菌プロセスの開発、バリデーション及び日常管理の要求事項

(2) 放射線滅菌

・JIS T 0806-1:2015(ISO 11137-1:2006,Amd.1:2013)

ヘルスケア製品の滅菌―放射線―第1部:医療機器の滅菌プロセスの開発、バリデーション及び日常管理の要求事項

・JIS T 0806-2:2014(ISO 11137-2:2013及びISO/TS 13004:2013)

ヘルスケア製品の滅菌―放射線―第2部:滅菌線量の確立

(3) 湿熱滅菌

・JIS T 0816-1:2010(ISO 17665-1:2006)

ヘルスケア製品の滅菌―湿熱―第1部:医療機器の滅菌プロセスの開発、バリデーション及び日常管理の要求事項

3 定義

(1) この基準で「滅菌」とは、製品を生育可能な微生物が存在しない状態にするために用いる、バリデートされたプロセスのことをいう。

(2) この基準で「滅菌プロセス」とは、あらかじめ定めた無菌性についての要求事項を達成するための一連の活動又は操作のことをいう。なお、この一連の活動又は操作には、前処理、あらかじめ定めた条件下での滅菌剤への暴露及び必要な後処理の全てを含むが、滅菌プロセスに先立つ清浄化、消毒又は包装などの操作は含まない。

(3) この基準で「無菌性保証水準(SAL: Sterility Assurance Level)」とは、滅菌後に、生育可能な1個の微生物が製品上に存在する確率のことをいい、通常10-nで表される。

(4) この基準で「無菌性の保証」とは、目的とする製品を製造するため、滅菌プロセスが、具体的かつ検証可能な原則10-6以下の無菌性保証水準を達成することをいう。

(5) この基準で「据付適格性の確認(IQ: Installation Qualification)」とは、装置がその要求仕様に適合して提供され、かつ、据え付けられたことの証拠を取得し、文書化することをいう。

(6) この基準で「運転適格性の確認(OQ: Operational Qualification)」とは、据え付けられた装置をその操作手順に従って用いたとき、あらかじめ定めた限度内で作動する証拠を取得し、文書化することをいう。

(7) この基準で「稼働性能適格性の確認(PQ: Performance Qualification)」とは、操作手順に従って据え付けられ、運転されている装置が、あらかじめ定めた判断基準に恒常的に適合して稼働し、その結果仕様に適合する製品を生産することができるという証拠を取得し、文書化することをいう。

(8) この基準で「適格性の再確認」とは、定めた滅菌プロセスが引き続き許容できるものであることを確認するために、滅菌バリデーションの一部分を反復実施するバリデーションをいう。

(9) この基準で「バイオバーデン」とは、製品及び/又は無菌バリアシステムの上又は内部に存在する生育可能な微生物群のことをいう。

(10) この基準で「滅菌剤」とは、あらかじめ定めた条件下で、無菌性を達成するために十分な殺菌作用をもつ物理的若しくは化学的媒体(例えば、エチレンオキサイド、放射線、湿熱等)又はその組合せのことをいう。

(11) この基準で「プロセス変数」とは、滅菌プロセスの条件で、その変化が微生物の殺滅効果に変動を与えるような条件(例えば、時間、温度、圧力、濃度、湿度等)のことをいう。

(12) この基準で「プロセスパラメータ」とは、あらかじめ定めたプロセス変数の値のことをいう。

(13) この基準で「校正」とは計器若しくは測定系の示す値、又は実量器若しくは標準物質の表す値と、標準によって実現される値との間の関係を確定する一連の作業のことをいう。

(14) この基準で「載荷形態」とは、滅菌装置又は照射容器への被滅菌物の幾何学的積載方法及び形態のことをいう。

(15) この基準で「パラメトリックリリース」とは、製品サンプルの無菌試験結果によらず、プロセスパラメータがあらかじめ定められた許容範囲内に与えられたことを証明する記録に基づいて製品の無菌性を保証することをいう。

(16) この基準で「バイオロジカルインジケータ」とは、ある特定の滅菌プロセスに対して、一定の抵抗性を示す生育可能な微生物を含む試験システム及び当該微生物をいう。

4 品質管理監督システム

(1) 文書化

滅菌プロセスの開発、バリデーション及び日常管理並びに滅菌からの製品リリースの手順を定め、文書化すること。

(2) 管理監督者の関与

ア この基準の実施に必要な業務運営のための責任及び権限をあらかじめ定め、当該責任を力量ある職員に割り当て、これを文書化すること。

イ この基準による滅菌バリデーションに係る業務を、他の組織によって実行する場合は、当該組織の責任及び権限をあらかじめ定め、文書化すること。

(3) 滅菌バリデーションに係る責任者の業務

滅菌バリデーションに係る責任者が滅菌バリデーションの手順書に基づき行う業務の例として、次の各号に掲げるようなものが挙げられる。ただし、これに限定されるものではない。なお、これらの業務を単一の責任者が行うことを求めるものではない。

ア 滅菌バリデーションの手順書に基づき製造しようとする製品についての滅菌バリデーションの実施計画書(以下「計画書」という。)の作成

イ 計画書に従い実施する次の滅菌バリデーション

(ア) 製造販売承認(認証)を受けるとき及び「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(昭和35年法律第145号。以下「法」という。)第80条第2項に規定する輸出用医療機器を製造しようとするときに受けなければならない適合性調査に当たって実施するこの基準9による滅菌バリデーション

(イ) 製造販売承認(認証)取得後及び法第80条第2項に規定する輸出用医療機器の製造開始後5年ごとに受けなければならない適合性調査に当たっては、次の滅菌バリデーション

① この基準9による滅菌バリデーション

② この基準12による適格性の再確認

ウ 滅菌バリデーションの結果の判定及び無菌性を保証していることの確認

エ 滅菌バリデーションの記録の作成及び保管

オ 日常の滅菌プロセスの管理の実施

(4) 製品実現

ア 滅菌プロセスに関連する購買の手順を定め、管理運用すること。

イ 製品の識別及びトレーサビリティの手順を定め、管理運用すること。

ウ この基準の運用のための、試験用の計器を含む全ての機器の校正について手順を定め、管理運用すること。

(5) 測定、分析及び改善―不適合製品の管理

不適合と判定された製品の管理、修正、是正措置及び予防措置の手順を文書化すること。

5 滅菌剤の特性

(1) 滅菌剤

滅菌プロセスで使用する滅菌剤を特定し、文書化すること。

(2) 微生物殺滅効果の有効性

滅菌剤について広く理解されている微生物殺滅の条件以外で滅菌剤を使用する場合は、微生物殺滅効果の有効性を確立し、文書化すること。

(3) 材料への影響

滅菌剤の材料に及ぼす影響について評価し、文書化すること。

(4) 環境への配慮

滅菌剤の環境に及ぼす影響を評価し、必要な措置を文書化すること。

6 プロセス及び装置の特性

(1) プロセス変数を特定し、これらを管理及び監視する方法を定めること。

(2) 滅菌プロセスに使用する装置の仕様を文書化すること。

7 製品の定義

(1) 滅菌する製品を定め、文書化すること。

(2) 同一の滅菌プロセスで処理する製品群の判断基準を定め、文書化すること。また、それぞれの製品について、その製品群に含める根拠を文書化すること。

(3) 滅菌後の製品の安全性及び性能について、製品要求事項に適合していることを確認し、文書化すること。

(4) 滅菌プロセスの有効性が損なわれないように、必要に応じて滅菌しようとする製品のバイオバーデンが管理されていることを保証する事項を定め実施しなければならない。これらにはバイオバーデンと無菌性保証水準の関係及びバイオバーデンの管理水準等を含めるのが望ましい。

8 プロセスの定義

(1) 製品の無菌性保証水準を定め文書化すること。

(2) プロセスの監視及び管理に必要なプロセスパラメータについて、その許容範囲を定め文書化すること。

9 バリデーション

(1) 滅菌バリデーションは文書化された手順書に従って実施すること。滅菌バリデーションの手順書に定められる事項の例として、次に掲げるようなものが挙げられる。ただし、これに限定されるものではない。

ア 滅菌バリデーションに係る各業務の責任者の業務範囲及び権限に関する事項

イ 滅菌バリデーションの実施時期に関する事項

ウ 計画書の作成、変更及び承認等に関する事項

エ 滅菌バリデーション実施結果の報告、評価及び承認に関する事項(記録方法も含む。)

オ 滅菌バリデーションに関する文書の保管に関する事項

カ この基準に定める日常の滅菌プロセスの管理に関する事項(ただし、製品標準書(作業手順書を含む。以下同じ。)に明確に規定されており、かつ滅菌バリデーションの手順書に製品標準書の規定に基づき実施する旨記載されている場合を除く。)

キ その他必要な事項

(2) 滅菌バリデーションは、その対象とする製品群ごとに、判定基準を含む計画を作成し、これに基づき実施すること。計画書に定める事項の例として、次に掲げるものが挙げられる。ただし、これに限定されるものではない。

ア 対象製品名

イ 当該滅菌バリデーションの目的

ウ 期待される結果

エ 検証の方法(検証結果の評価方法を含む。)

オ 検証の実施時期

カ 滅菌バリデーションを行う者(担当者)の氏名

キ 滅菌バリデーションの照査及び承認に関する事項

ク 計画書の作成者及び作成年月日並びに改訂した場合においては改訂した者、改訂の年月日、内容及び理由

ケ 当該滅菌バリデーションに関する技術的条件

コ その他必要な事項

(3) 滅菌バリデーションで用いる測定器等は校正を行うこと。

(4) 据付適格性の確認(IQ)

ア 装置及び附属設備が予定したとおり据え付けられたことを確認し、文書化すること。

イ 装置及び附属設備に関する文書(図面、取扱説明書、据付記録等)を確認し、保管すること。

(5) 運転適格性の確認(OQ)

装置がこの基準8で定めたプロセスを運用できることを、負荷のない状態での運転又は試験負荷を用いて確認し、文書化すること。

(6) 稼働性能適格性の確認(PQ)

ア 稼働性能適格性の確認はIQ及びOQが完了し、その結果を責任者が確認した後に実施すること。

イ PQによって、日常の滅菌に用いる装置を用い、この基準8で定めたプロセスによって、製品があらかじめ定めた滅菌プロセスを実現できる能力があることを立証すること。

ウ PQで確認を行う製品は、製品群を代表するもの(最も滅菌が困難なもの)で実施して差し支えない。その場合は、その根拠を文書化すること。

(7) 滅菌バリデーションの照査及び承認

ア 滅菌バリデーションの結果は文書化し、IQ、OQ及びPQそれぞれについて責任者がその内容について照査し、承認すること。

イ 滅菌バリデーションの結果及びこれに対する考察に基づき、日常の滅菌プロセスの管理及び監視に必要な事項を定めること。

10 日常監視及び管理

滅菌プロセスの日常監視及び管理の実施に当たっては、この基準8及び9で定めたプロセスの運用基準に従い運用すること。

11 滅菌からの製品リリース

(1) 製品の滅菌プロセスでの運用結果についての記録の照査の手順を定めること。

(2) 滅菌プロセスで処理した製品の無菌性の保証についての判定基準及びその方法を定めること。これには、プロセスの定義及び滅菌バリデーションの照査及び承認の項において必要とした事項を含めること。

(3) 日常の滅菌プロセスで処理した製品の無菌性の保証についての判定方法は、滅菌バリデーション及び日常の滅菌プロセスの管理の程度により次に分類される方法によること。

ア パラメトリックリリース

イ バイオロジカルインジケータの培養試験結果及び滅菌バリデーションの結果に基づき定めたパラメータの管理結果による判定

12 プロセス有効性の維持

(1) 滅菌プロセス及びこれによって滅菌を行う製品について、滅菌バリデーションによって確認された状態を維持すること。

(2) 変更管理

以下のような変更を行う場合、その影響を評価し、必要な場合、適格性の再確認を含む必要な措置をとること。

ア 滅菌装置の変更

イ 滅菌プロセス(手順を含む。)の変更

ウ 製品の変更(設計、原材料又は包装等)

エ 載荷形態の変更

オ バイオバーデンに影響を与える可能性のある変更

(3) 再校正

装置の監視及び管理に用いる測定機器の正確さ及び精度の確認について、手順を定め、実施すること。

(4) 装置の保守業務

ア 保守業務を計画し、実施すること。この記録は保管すること。

イ 保守業務の計画、手順及び記録は、あらかじめ定めた間隔で責任者によって照査し、その結果を文書化すること。

(5) 適格性の再確認

ア 適格性の再確認の範囲及びその程度を含む実施基準を文書化すること。

イ 適格性の再確認の手順をあらかじめ定め、適格性の再確認の記録を保管すること。

ウ 適格性の再確認の結果は、あらかじめ定めた判定基準に基づき照査し、承認すること。適格性の再確認の記録は保管すること。