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○生物由来製品及び特定生物由来製品並びに指定再生医療等製品の指定に関する考え方について

(平成26年11月5日)

(/薬食審査発1105第1号/薬食機参発1105第2号/)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局審査管理課長、厚生労働省大臣官房参事官(医療機器・再生医療等製品審査管理担当)通知)

(公印省略)

医薬品、医療機器、医薬部外品及び化粧品(以下「医薬品、医療機器等」という。)を生物由来製品又は特定生物由来製品に指定するかどうか審査するにあたっては、承認審査の過程において、必要に応じて個別に指定審査のために要する資料の提出をお願いしているところです。また、薬事法等の一部を改正する法律(平成25年法律第84号)の施行に伴い、平成26年11月25日以降、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「医薬品医療機器等法」という。)において、医薬品、医療機器等とは別に、新たに再生医療等製品の定義を設けるとともに、同法第68条の7第3項の規定により厚生労働大臣の指定する再生医療等製品(以下「指定再生医療等製品」という。)については、指定再生医療等製品を取り扱う医療関係者に対して使用の対象者に関する記録と保存を求める等の安全対策を講じることとしています。

今般、生物由来製品及び特定生物由来製品並びに指定再生医療等製品の指定審査の効率化のために、これまでの審査経験等を踏まえて、それらの指定に関する考え方等について下記のとおりとりまとめましたので、御了知の上、貴管下関係業者に対し、周知方御配慮お願いいたします。

第1 生物由来製品及び特定生物由来製品並びに指定再生医療等製品の指定に係る考え方について

1 生物由来製品及び特定生物由来製品並びに指定再生医療等製品の指定の基本的な考え方は、製品の感染症の発症リスクに着目して、概ね以下のとおりとする。ただし、この考え方は、現在想定される感染症に関する知見に基づくものであり、未知の病原体等、感染症に関する新たな知見が得られた場合には、適宜見直しを行う必要がある。

(1) 特定生物由来製品は、次に掲げるものとする。

① ヒト血液を原料及び材料並びにそれらの原材料(以下「原料等」という。)として用いる医薬品、医療機器等(培地成分、添加物等としてのみ使用され、又は極めて高度な処理を受けていることにより、十分なクリアランスが確保され、感染症の発症リスクが極めて低いものを除く。)

例:輸血用血液製剤、ヒト血漿分画製剤

② ヒト又は動物に由来する原料等を用いる医薬品、医療機器等であって、病原体に対する不活化・除去処理を行うことが困難であるもの又は一定の病原体の不活化・除去等が行われているが、感染性因子を内在するリスクがあるもの

例:ヒト臓器抽出医薬品

(2) 生物由来製品は、ヒト又は動物に由来する原料等を用いる医薬品、医療機器等であって、次に掲げるもの以外のものとする。

① 製造工程による管理の内容(強アルカリ、高温等の過酷な処理条件)又は投与経路(経口・経皮等)からみて、明らかに感染症の発症リスクが低いもの

例:ゼラチン、漢方生薬に使用される牛黄

② 病原性微生物を使用せず、明らかに感染症の発症リスクが低いもの

例:乳酸菌、インスリン等の大腸菌由来の遺伝子組換えタンパク質、抗生物質

③ 人獣共通感染症の原因となる蓋然性の低い動物種を原料等としたもの

例:カイコの糸を使用した医療機器、魚類に由来するコンドロイチン硫酸

(3) 指定再生医療等製品は、次に掲げるものとする。

① 同種若しくは異種に由来する細胞又はヒト血液を原料等として用いる再生医療等製品(培地成分、添加物等としてのみ使用され、又は極めて高度な処理を受けていることにより、十分なクリアランスが確保され、感染症の発症リスクが極めて低いものを除く。)

② ヒト又は動物に由来する原料等を用いる再生医療等製品であって、病原体に対する不活化若しくは除去処理を行うことが困難であるもの又は一定の病原体の不活化若しくは除去等が行われているが、感染性因子を内在するリスクがあるもの

2 以下の事例については、個別の製品の内容に照らし、指定の区分について検討する。

(1) ヒト血液成分を製造工程中で使用する場合(例:遺伝子組換え製剤、再生医療等製品の安定剤又は遺伝子組換え製剤を産生する細胞の培地)は、ヒト血液成分の使用量、由来するドナー数等の観点からリスクを推定する。

当該医薬品等の製造工程中で使用されているヒト血液成分が、ヒト血清アルブミン等本邦において医薬品等として承認されている有効成分と同等とみなせる成分である場合、その成分が医薬品等として使用される場合の標準的な使用量、その成分が当該医薬品等を介して患者に投与される累積量等を勘案して生物由来製品、特定生物由来製品又は指定再生医療等製品の指定を検討する。

(2) 同一成分かつ同効の他の製剤が特定生物由来製品又は指定再生医療等製品である場合には、製品管理等の観点も踏まえ、区分を検討する。

(3) 細菌・ウイルスに対する遺伝子組換え操作により、本来の細菌・ウイルスと異なる特性をもつ細菌・ウイルスである場合は、開放系で使用される場合の感染伝播のリスクについて考慮する。

例:遺伝子組換え生ワクチン

第2 指定プロセスについて

1 生物由来製品及び特定生物由来製品の指定へのプロセスは、以下のとおりとする。

(1) 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「機構」という。)における承認審査において、原料等、製造工程での病原体の除去・不活化能等の品質に関する情報及び予想される臨床使用状況等を考慮してヒトに対する感染症の発症リスクの大きさを評価し、指定の要否を検討する。原則として、申請直後に機構において実施する面談の際に、指定の方向性を申請者に対して示すこととする。

(2) 医薬品、医療機器等については、機構における審査において、生物由来製品若しくは特定生物由来製品への指定が必要と判断された場合又は指定の要否について審議が必要と判断された場合には、申請者は、「生物由来製品・特定生物由来製品の指定審査資料のまとめ」(以下「指定審査資料」という。)を作成する。薬事・食品衛生審議会での審議に際しては、指定審査資料を審議資料に添付するとともに、添付文書(案)等への所定事項の記載を整備する。薬事・食品衛生審議会の意見を踏まえ、指定される。

2 指定再生医療等製品の指定へのプロセスは、以下のとおりとする。

(1) 機構における承認審査において、原料等、製造工程での病原体の除去・不活化能等の品質に関する情報及び予想される臨床使用状況等を考慮してヒトに対する感染症の発症リスクの大きさを評価し、指定の要否を検討する。原則として、申請直後に機構において実施する面談の際に、指定の方向性を申請者に対して示すこととする。

(2) 再生医療等製品については、機構における審査において、指定再生医療等製品への指定の要否が検討され、審査報告書にその評価の内容が記載され、報告されるとともに、指定再生医療等製品への指定が必要と判断された場合は、添付文書(案)等への所定事項の記載を整備する。

第3 指定審査資料の作成要領について

医薬品、医療機器等の承認審査において生物由来製品又は特定生物由来製品に係る指定審査資料の提出が求められた場合には、別紙様式1及び別紙様式2に従って作成すること。なお、申請時点で生物由来製品又は特定生物由来製品に相当すると考えられる品目については、申請時に指定審査資料の案を作成し、承認申請資料に添付しても差し支えない。その場合にあっては、必要に応じて薬事・食品衛生審議会における審議までに資料の改訂を行うこと。

別紙様式1

別紙様式2

(参考)

生物由来製品又は指定再生医療等製品の指定に関する品質管理・安全性評価について

基本的な考え方

理論的リスクの算定方法(万が一、感染因子を含む原料等を使用していた場合、最終製品中での残存量、不活化処理、投与経路から理論的に計算されるリスク)

[最終製品のリスク]

画像3 (24KB)別ウィンドウが開きます

[原料等自体のリスク]又は/及び「製造時の混入リスク」

以下の(1)又は(2)のリスクのうち、大きいもの

(1) 生物由来原料等自体の感染因子のリスク

(2) 製造工程中での生物由来原料等に由来する汚染リスク

*「原料等」とは、製品の有効成分のみならず、製品の製造工程中で使用される生物由来の成分、添加剤として用いられる成分をいうものとする。

[リスク低減措置]

(1) ドナースクリーニング等の検査を行うことによるリスクの低減

(2) 不活化処理及び病原体除去工程によるリスクの低減

※ ドナースクリーニング等の対策は、法第42条基準並びに製造管理及び品質管理の基準により担保する。

「投与経路安全性」

投与経路による安全性への影響(例:注射の方が、経口よりもリスクが高い。)

投与量・使用期間による安全性への影響(例:一生涯の使用等相当長期の使用は、リスクが高い。)

「最終製品のリスク」

上記の考え方に基づき、製剤の有効成分、非有効成分(添加剤、製造中に使用される材料)等のあらゆる成分について検討し、製品としてのリスクを評価する。

(1) 理論的なリスクが比較的高い物(血液製剤を基準)は、特定生物由来製品又は指定再生医療等製品

(2) 理論的なリスクが比較的低い物(化学合成品レベル)は、指定せず。

(3) (1)、(2)以外は、生物由来製品

参考

原料等自体の感染リスクの相対的な比較

カテゴリー

原料等※の類型

原料リスクの主たる特徴

感染リスクの要因

相対的リスク

ヒト由来

病原体自体

動物由来の未知因子の影響

病原体増殖

不特定多数

1

ヒト又は動物由来細胞・組織及びヒト由来成分を使用した製品(血液製剤等)

・ヒト対ヒトの感染リスク(ヒト由来原料)かつ不特定多数からの原料に由来するリスク(ヒト由来原料)

・未知の感染症のリスク(動物細胞組織原料)

 

 

2

ウイルスを使用した製品(ワクチン、遺伝子治療用製品等)

病原体そのものである。

 

 

 

 

3

病原菌を利用した製品(ワクチン)

病原体そのものである。

 

 

 

 

4

株化したヒト又は動物の細胞を培養し、抽出した成分、又は管理された動物個体(遺伝子組換え)の生産物より抽出した成分を含む製品(遺伝子組換え医薬品等)

不特定多数からの原料ではなくとも、生きた細胞の使用による病原体の増幅のリスク

 

 

5

動物由来成分を含む製品(ヘパリン等)

不特定多数の動物からの原料に由来するリスク

 

 

 

6

非病原菌を利用した製品(インスリン等)

菌自体よりも製造工程中で使用する材料からのリスク

 

 

 

※:「原料等」とは、製品の有効成分のみならず、製品の製造工程中で使用される生物由来の成分、添加剤として用いられる成分をいうものとする。

注:ヒト血液成分等を製造工程、添加剤で使用している物は別途カテゴリー1と同様に考慮

△:影響は少ないが考慮する必要があるもの