添付一覧
○医療機器の使用上の注意の記載要領について
(平成26年10月2日)
(薬食安発1002第5号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知)
(公印省略)
医療機器の添付文書については、平成26年10月2日付け薬食発1002第8号医薬食品局長通知により、従前の「医療機器の添付文書の記載要領」を改めるとともに、その細則について同日付け薬食安発1002第1号医薬食品局安全対策課長通知により示したところですが、これに伴い、医療機器の使用上の注意についても、「医療機器の添付文書の使用上の注意記載要領について」(平成17年3月10日付け薬食安発第0310004号厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知、以下「課長通知」という。)を別紙のとおり改めたので、貴管下関係業者、団体等に対し周知徹底を図るとともに、医療機器の添付文書に関する指導につき格段の御配慮をお願いします。
この通知は、平成26年11月25日から適用します。なお、本通知の施行に伴い、課長通知を廃止します。
(別紙)
医療機器の使用上の注意の記載要領
1.「使用上の注意」の原則
(1)医療機器の「使用上の注意」は、薬事法等の一部を改正する法律(平成25年法律第84号。)による改正後の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第63条の2第1項第1号の規定に基づき医療機器の適用を受ける患者及び使用者(医療従事者)の安全を確保し、適正使用を図るために、医師、歯科医師及び薬剤師等の医療従事者に代表される使用者に対して必要な情報を提供する目的で、当該医療機器の製造販売業者が添付文書等に記載するものであること。
(2)「使用上の注意」に記載すべき内容は、原則として当該医療機器が製造販売承認、製造販売認証又は製造販売届出された使用目的又は効果、使用方法等(用法・用量を含む)の範囲で用いられる場合に必要とされる事項とすること。ただし、その場合以外であっても重大な不具合(本通知において「不具合」とは「医療機器の不具合」を指し、以下単に「不具合」という。)・有害事象等特に必要と認められる注意事項は記載すること。また、評価の確立していない不具合・有害事象であっても重篤なものは必要に応じて記載すること。これらの事項の選択収録に当たっては、広範に収集した国内外の情報を評価して記載すること。なお、医療機器による感染症に関する注意についても不具合に準じて記載するものであること。
(3)記載順序は、原則として「2.「使用上の注意」の記載項目及び記載順序」に掲げるものに従うほか、次によること。
1)内容からみて重要と考えられる事項については記載順序として前の方に配列すること。
2)「使用目的又は効果」又は「使用方法等」によって注意事項や不具合・有害事象が著しく異なる場合は分けて記載すること。
(4)原則として、記載内容が二項目以上にわたる重複記載は避けること。ただし、重大な不具合又は有害事象の発生を防止するために複数の項目に注意事項を記載する場合にあっては、その限りでないこと。この場合、「1)警告」、「2)禁忌・禁止」の項目等において、記載すべき注意事項を簡潔に記載の上、その後ろに「○○の項参照」等と記載し、対応する項目(○○の項)に具体的な内容を記載して差し支えないこと。
(5)既に記載している注意事項の削除又は変更は、十分な根拠に基づいて行うこと。
(6)記載に当たって、データが無い又は不十分な場合には、その記載が数量的でなく包括的な記載(例えば、慎重に、定期的に、頻回に、適宜など)であっても差し支えないこと。
(7)個別の医療機器によらず医療従事者として医療を実施するにあたり既に注意されていると考えられる事項の記載は行わないこと。
2.「使用上の注意」の記載項目及び記載順序
(1) 警告
(2) 禁忌・禁止
(3) 使用注意(次の患者には慎重に適用すること)
(4) 重要な基本的注意
(5) 相互作用(他の医薬品・医療機器等との併用に関すること)
1) 併用禁忌(併用しないこと)
2) 併用注意(併用に注意すること)
(6) 不具合・有害事象
1) 重大な不具合・有害事象
2) その他の不具合・有害事象
(7) 高齢者への適用
(8) 妊婦、産婦、授乳婦及び小児等への適用
(9) 臨床検査結果に及ぼす影響
(10) 過剰使用
(11) その他の注意
3.記載要領
(1)警告
1)本文冒頭に記載すること。
2)記載事項は、赤枠内に項目名を含めて赤字で記載すること。
3)適切に使用されたとしても、致死的又は極めて重篤かつ非可逆的な有害事象が発現する場合、又は不具合が発現する結果極めて重大な有害事象につながる可能性があって、特に注意を喚起する必要がある場合に記載すること。
4)警告に設定した過敏症以外の項目については、その根拠又は設定理由を[ ]内に必ず記載すること。
5)使用に際して発生した不具合又は有害事象に対し特別の注意、応急対処法があれば簡潔に記載すること。
6)承認条件により使用に際しての実施施設や使用する医療従事者の基準等が求められている場合には、その旨を記載すること。
(2)禁忌・禁止
1)原則として、警告に続けて記載することとし、警告がない場合は本文冒頭に記載すること。
2)記載事項は、赤枠内に項目名を含めて記載するが、文字は赤色を使用しないこと。
3)併用禁忌及び操作方法又は使用方法等に係る記載事項は、赤枠の表内に記載するが、文字は赤色を使用しないこと。
4)患者の症状、原疾患、合併症、既往歴、家族歴、体質等からみて適用すべきでない患者を記載すること。なお、適用してはならない理由が異なる場合は、項を分けて記載すること。
5)禁忌・禁止に設定した過敏症以外の項目については、その根拠又は設定理由を[ ]内に必ず記載すること。
6)使用者に誤解を与えないよう、原則として承認、認証又は届出された「使用目的又は効果」と整合する必要があること。
(3) 使用注意(次の患者には慎重に適用すること)
1)患者の症状、原疾患、合併症、既往歴、家族歴、体質等からみて、他の患者よりも不具合又は有害事象による危険性が高いため、適用の可否の判断、使用方法の決定等に特に注意が必要である場合、又は、臨床検査の実施や患者に対する細かい観察が必要とされる場合に記載すること。他の患者と比較して危険性が高い場合として、次のものが考えられる。
①不具合又は有害事象が早く発現する場合
②不具合又は有害事象の発現率が高い場合
③より重篤な不具合又は有害事象が現れる場合
④非可逆性の不具合又は有害事象が現れる場合
⑤蓄積する又は長期使用の結果、不具合又は有害事象が現れる場合
⑥その他
2)過敏症以外の項目については、原則としてその根拠又は設定理由を[ ]内に簡潔に記載すること。
(4) 重要な基本的注意
重大な不具合及び有害事象の発生を防止する上で、効能又は効果等、適用期間、適用すべき患者の選択、検査の実施・電磁干渉等に関する重要な基本的注意事項があれば内容を具体的に記載すること。
(5) 相互作用(他の医薬品・医療機器等との併用に関すること)
1)他の医薬品・医療機器等を併用することにより、当該医療機器又は併用医療機器の効果等の増強又は減弱、不具合及び有害事象の増強、新しい不具合及び有害事象の出現又は原疾患の増悪等が生じる場合で、臨床上注意を要する組合せを記載すること。これには他の医療機器との接続具合(相性)のうちの重要なものを含むものであること。
2)内容により措置概略として、「併用禁忌(併用しないこと)」と「併用注意(併用に注意すること)」に分けて記載すること(併用禁忌は「2)禁忌・禁止」の項にも簡潔に記載し、「相互作用の項参照」と記載すること。)。
3)記載に当たっては、まず相互作用を生じる医薬品・医療機器等の名を挙げ、次いで相互作用の内容(臨床症状・措置方法・機序・危険因子等)を簡潔に記載すること。また、相互作用の種類(機序等)が異なる場合には項を分けて記載すること。
4)併用禁忌の記載は一般的名称と販売名を併記すること。
5)記載様式は可能な限り表形式等にして分かりやすくすること。併用注意では、場合により記述方式で記載しても差し支えないこと。
〈記載例〉
[併用禁忌](併用しないこと)
医薬品・医療機器の名称等 |
臨床症状・措置方法 |
機序・危険因子 |
(一般的名称/一般名・販売名) |
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[併用注意](併用に注意すること)
医薬品・医療機器の名称等 |
臨床症状・措置方法 |
機序・危険因子 |
(一般的名称・一般名) |
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(6) 不具合・有害事象
1)医療機器の具合が悪くなる「不具合」と患者又は医療従事者等の使用者に健康被害を与える「有害事象」について、それぞれ小項目を挙げて記載すること。前段に「不具合」及び「有害事象」の発生状況の概要を記載すること。次いで医療機器の使用に伴って生じる不具合等を「重大な不具合」及び「重大な有害事象」と「その他の不具合」及び「その他の有害事象」に区分して記載すること。
2)不具合及び有害事象等の発生状況の記載に当たっては調査症例数、調査の情報源、記載時期(承認又は認証時、再審査終了時、再評価結果等)を明記すること。また、発現頻度については調査症例数が明確な調査結果に基づいて記載すること。
3)「重大な不具合」及び「重大な有害事象」の記載に当たっては次の点に注意すること。
①当該医療機器の不具合及び有害事象にとって特に注意する必要があるものを記載すること。
②不具合及び有害事象の発現機序、発生までの期間、具体的防止策、処置方法等が判明している場合には、必要に応じて括弧書きで、具体的な記載を行うことが望ましい。
③初期症状(臨床検査値の異常を含む。)又は前兆(アラーム等の表示を含む)があり、その状況が認められた時点で使用を中止する等の措置をとることにより不具合又は有害事象の進展を防止できることが判明している場合には、その初期症状又は前兆を括弧書きすること。
④海外のみで知られている重大な不具合及び有害事象については、原則として、国内の不具合及び有害事象に準じて記載すること。
⑤類似の医療機器で知られている重大な不具合及び有害事象については、必要に応じ本項に記載すること。
4)「その他の不具合」及び「その他の有害事象」の記載に当たっては次の点に注意すること。
①「重大な不具合」又は「重大な有害事象」以外の不具合及び有害事象については発現部位別、使用目的別、作用機序又は発現機序別等に分類し、発現頻度を設定して表形式にする等分かりやすく記載すること。
②海外のみで知られているその他の不具合及び有害事象についても、原則として、国内の不具合及び有害事象に準じて記載すること。
(7) 高齢者への適用
1)高齢者は腎機能、肝機能等の生理機能が低下していることが多く、医療機器の使用において危険性が増加するおそれがあり、一般的に、医療機器の適用に当たっては常に十分な注意が必要である。使用方法、使用目的等から高齢者に用いられる可能性のある医療機器であって、他の患者と比べて高齢者で特に注意する必要がある場合には、「高齢者への適用」の項を設け、必要な注意を記載すること。また、高齢者に適用してはならない場合は「2)禁忌・禁止」の項にも記載すること。
2)記載の内容
①臨床試験、市販後調査等の具体的なデータから高齢者に適用した場合の問題が示唆される場合はその内容を簡潔に記載すること。
②類似の医療機器等の臨床での使用経験から高齢者に適用する場合に注意すべき問題が示唆される場合はその内容を簡潔に記載すること。
3)具体的な記載表現
前記2)の具体的な記載表現は、当該医療機器の特徴、高齢者の特徴、当該医療機器を高齢者に適用した場合の問題点、必要な注意・処置の内容を簡潔かつ適切に記載すること。
(8)妊婦、産婦、授乳婦及び小児等への適用
1)使用方法、使用目的等から妊婦、産婦、授乳婦又は小児等の患者に用いられる可能性があって、他の患者と比べて、特に注意する必要がある場合や、適正使用に関する情報がある場合には、必要な注意を記載すること。また、適用してはならない場合は「(2)禁忌・禁止」の項にも記載すること。
2)動物実験、臨床使用経験、疫学的調査等で得られている情報に基づき、必要な事項を記載すること。
3)特に記載すべき情報としては次のものが該当すること。
・成人と代謝が異なる場合の情報(例えば、排泄機能が未発達であるために生ずる血中からの消失の遅延等)
・妊婦、産婦、授乳婦及び小児等、身体の構造上の特徴により不具合の発生が予想される場合の情報
(9) 臨床検査結果に及ぼす影響
医療機器を使用することによって、臨床検査値が見かけ上変動し、しかも明らかに器質障害又は機能障害と結びつかない場合に記載すること(器質障害又は機能障害との関係が否定できない場合には、「(6)不具合・有害事象」の項に記載すること。)。
(10) 過剰使用
1)過剰使用の例があれば記載すること。
2)過剰使用時(自殺企図、誤用を含む)に出現する傷害・中毒症状等を記載し、適切な処置方法があれば併せて記載すること。
(11) その他の注意
1)評価の確立していない文献、報告であっても重要な情報はこれを正確に要約して、「…との報告がある。」と記載すること。
2)上記(1)~(10)のいずれにも属さないが、必要な注意(例えば、動物実験の毒性に関する記載等の必要事項)はこの項に記載すること。