添付一覧
○生物由来原料基準の運用について
(平成26年10月2日)
(/薬食審査発1002第1号/薬食機参発1002第5号/)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局審査管理課長、厚生労働省大臣官房参事官(医療機器・再生医療等製品審査管理担当)通知)
(公印省略)
生物由来原料基準(平成15年厚生労働省告示第210号)については、薬事法等の一部を改正する法律(平成25年法律第84号)において、再生医療等製品の安全性を確保しつつ迅速に実用化するための制度が創設されたことを踏まえ、医薬品、医療機器医、再生医療等製品等に用いるヒト又は動物に由来する原料が満たすべき基準について、最新の科学的知見に照らしてそのあり方を検討し、「生物由来原料基準の一部を改正する件」(平成26年厚生労働省告示第375号)により改正することとしたところである。
今般、改正後の生物由来原料基準について、その運用について別紙のとおり定めたので、御了知の上、貴管下関係業者に対する周知方御配慮願いたい。
なお、この通知は、平成26年11月25日から適用することとし、「ヒト又は動物由来成分を原料として製造される医薬品等の品質及び安全確保に係る一部変更承認申請の取扱いについて」(平成13年7月10日医薬審発第1046号)、「ヒト又は動物由来成分を原料として製造される医薬品、医療用具等の品質及び安全性確保のための一部変更承認申請に係るウイルス確認等の取扱いについて」(平成13年11月26日医薬審発第1552号)、「薬事法施行規則の一部改正等に伴う事務取扱い等について」(平成15年5月20日医薬審発第0520001号・医薬安発0520001号・医薬監麻発第0520001号・医薬血発0520001号)、「生物由来原料基準に規定する原材料の取扱いについて」(平成21年3月27日付け審査管理課事務連絡)、「ブラジル産のウシ等由来物を原材料として製造される医薬品、医療機器等の自主点検について」(平成24年12月11日付け薬食発1211第8号)及び「ブラジル産のウシ等由来物を原材料として製造される医薬品、医療機器等の自主点検についてのQ&Aについて」(平成24年12月27日付け審査管理課事務連絡)については、その日をもって廃止する。
生物由来原料基準の運用について
1 第1通則関係
(1) 生物由来原料基準に規定する「原材料」とは、具体的にはヒト又は動物から採取された組織、体液若しくは組織等の抽出物又はそのプールしたものをいい、それらを出発原材料として医薬品、医療機器、再生医療等製品等の製造に用いる原料又は材料を製するものをいうこと。
(2) 原料又は材料の製造工程に用いられる原材料のうち、次に掲げる例又はそれに準ずるものは、医薬品等の原料等と同様に取扱うことが妥当とまでは言えないこと等から当該基準に規定されている原材料には該当しないこと。
例1:細胞培養工程の培地成分として使用されるヒトインスリン(遺伝子組換え)を産生する細胞(大腸菌等)のセルバンクの構築にのみ用いられた原材料
例2:細胞培養工程の培地成分として使用されるヒトインスリン(遺伝子組換え)の製造工程において、部分分解に使用される菌由来成分(ペプチダーゼ)の製造に使用された原材料
例3:抗体医薬品等の精製工程に使用されているプロテインAアフィニティークロマトグラフィー担体を構成するプロテインA(菌由来)を精製するために使用された人免疫グロブリンG
例4:遺伝子組換え医薬品のマスターセルバンク樹立過程で種細胞の選択培地に使用された原材料
例5:病原体に関する十分な特性解析及び病原体による汚染の否定がされた医薬品等の製造に用いるマスターセルバンク又はマスターシードであって、その樹立過程で使用された原材料。ただし、基準に規定される原材料への該当性が承認審査において確認されたものに限る。
(3) 通則10の「適切に用いられている場合」とは、例えば、医薬品等の原料等として用いる場合に、投与される量として、承認された用法・用量を大幅に超えるような使用の方法をしないことをいうこと。
(4) 通則10の適用に際して、既承認医薬品等であっても、製品のリスクベネフィットを勘案して生物由来原料基準に適合しない原料等の使用が認められている医薬品等を、他の医薬品等の原料等として使用する場合は、使用する製品について新たにリスクベネフィットの評価を行い原料等としての使用の可否を判断する必要があること。
2 第2血液製剤総則関係
(1) 血液に由来する成分を医薬品等(血液製剤を除く。)の製造工程において添加剤、培地等として用いる場合は、ヒト由来原料基準が適用されるものであること。
3 第3ヒト由来原料総則1ヒト細胞組織原料基準関係
(1) 「ヒト細胞組織原料等」は、医薬品等を構成する細胞及び組織の原料等であって、ヒトに由来するものとして定義したこと。また、当該原料等には、iPS(様)細胞由来細胞など、当該細胞及び組織が、分化や遺伝子操作等の加工を受けたものである場合は、当該加工を受ける前の細胞及び組織を含むものであること。
(2) ヒト細胞組織原料基準(2)イの「必要に応じて」とは、自己由来のヒト細胞組織原料等は、原則として不要とするものであること。ただし、自己由来のヒト細胞組織原料等であっても、製品の培養工程においてウイルスの増殖等の懸念がある場合には、製品の安全性の確保のために採取段階等の適切な時期においてウイルス感染を確認する必要があること。
(3) ヒト細胞組織原料基準(3)ア「細菌、真菌、ウイルス等の感染が否定されていること」については、製造工程において、細菌、真菌、ウイルス等を不活化又は除去する処理を行うことができない製品にあっては、ドナーの適格性の確認に加え、製造工程での無菌性の担保、ウイルス感染リスクの検証その他の必要な事項が行われていることを確認すること。
(4) ヒト細胞組織原料基準(3)ウの「再検査」については、ヒト細胞組織原料等として臍帯血の提供を受ける場合であって、当該臍帯血の供給方法が、移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律(平成24年法律第90号)第32条の規定に基づき厚生労働省令で定める基準に適合する場合及び臍帯血以外の細胞において当該基準と同等の管理ができている場合においては必ずしも再検査を必要としないこと。
(5) ヒト細胞組織原料基準(3)エの「必要な疾病等」とは、次に掲げるものが含まれるものであること。
ア 梅毒トレポネーマ、クラミジア、淋菌、結核菌等の細菌による感染症
イ 敗血症及びその疑い
ウ 悪性腫瘍
エ 重篤な代謝及び内分泌疾患
オ 膠原病及び血液疾患
カ 肝疾患
キ 伝達性海綿状脳症及びその疑い並びにその他の認知症
(6) ヒト細胞組織原料基準(4)イのドナーの同意については、既に提供を受けたヒト細胞組織原料等について、採取の際に行った説明とは別に、製造販売業者等が医薬品等の原料等として提供を受ける際に再度説明をし、同意を得る場合についても、適用されるものであること。ただし、ヒト胚性幹細胞については、別途規定される指針に従うこと。
(7) ヒト細胞組織原料基準(4)ウのドナーの代諾者の同意を得る場合は、次に掲げる要件を満たしていることが望ましいこと。
ア ドナー本人が説明を受け同意を与えることが困難であること又は単独で完全な同意を与える能力を欠いていること
イ 当該ドナーからのヒト細胞組織原料等の採取が医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保の観点等から必要とされる合理的理由があること
ウ 代諾者がドナーの意思及び利益を最もよく代弁できると判断される者であること
エ ヒト細胞組織原料等を採取する者は可能な限りドナーにその理解力に応じた説明を行うとともに、ドナー本人からも同意を得るように努めること
オ 採取を行う施設の倫理委員会等において、当該ドナーからのヒト細胞組織原料等の採取の科学的及び倫理的妥当性が審査され、了承されていること
(8) ドナーの個人情報の匿名化の方法等の取扱いについては、別途定める指針等に従うこととするが、連結可能とすることが望ましいこと。
(9) ヒト細胞組織原料基準(5)エの「ヒト細胞組織原料等を採取する作業」とは、ヒト細胞組織原料基準(2)アに示す病原微生物その他疾病の原因となるものによる汚染を防止するために講じた措置等を指すこと。
(10) ヒト細胞組織原料基準(5)オの「倫理委員会等の審議結果」については、倫理委員会等における審議を行った場合に、該当するものであること。
4 第3ヒト由来原料総則3ヒト由来原料基準関係
(1) ヒト由来原料等には、たん白質、ホルモン、核酸等の細胞由来抽出物を含むこと。また、ヒト由来原料基準(1)の「ヒトに由来するものの由来となる細胞又は組織」には、上記2の(1)に該当する成分の由来となるヒト血液等も含むこと。さらに、ヒトの毛髪を原材料とするアミノ酸については、細菌、真菌、ウイルス等の不活化の観点からみて過酷な精製工程を経ていると考えられることから、ヒト由来原料基準が適用されるものではないこと。
(2) ヒト由来原料基準(1)の「適切な段階」とは、未加工又は未精製バルク(ヒト血液にあっては採血時等)の段階、セルバンクを構築するものにあってはセルバンクの段階を含むものであること。ただし、原料等又は製品の製造の工程をごく一部進めることによってウイルスを検出する試験がより的確に行えることとなる場合には、この限りではないこと。
(3) ヒト由来原料基準(1)のウイルス試験の実施にあたっては、少なくともB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス及びヒト免疫不全ウイルスに対する核酸増幅検査を行わなければならないものであること。また、ヒト血液由来成分を用いる場合にあっては、血液製剤総則を参考に、少なくともB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス及びヒト免疫不全ウイルスに対する血清学的検査及び核酸増幅検査を行わなければならないものであること。
(4) ヒト由来原料基準(3)については、ヒト由来原料等は、原則として、細胞・組織ではなく、病原体の不活化又は除去に係る工程を実施可能であると考えられるため、原則として、実施するべきものとしたもの。ただし、「当該処理を行わない合理的な理由がある場合」として、自己由来のヒト細胞組織原料等の培養工程に用いるヒト自己血清等については、必ずしも不活化又は除去工程を実施する必要はないこと。なお、この場合であっても、製品の製造工程のいずれかの段階で病原体の不活化又は除去を行い、又は病原体感染、培養工程における増殖等に関するリスクを適切に管理すること。
(5) ヒト由来原料基準(3)の不活化又は除去する処理の工程の評価にあたってはICH―Q5Aを参考にすること。
(6) ヒト由来原料基準(4)ウの「ヒト由来原料等の検査等」とは、ヒト由来原料基準(1)及び(2)に示す検査等を指す。
5 第4動物由来原料総則1反芻動物由来原料基準
(1) 反芻動物由来原料基準(1)の「反芻動物」とは、ウシ、ヒツジ、ヤギ、水牛、シカ、カモシカ等をいう。
(2) 反芻動物由来原料基準(1)の「高温及びアルカリ処理により製する原料等その他の適切な処理により製するもの」には、次に掲げるものが含まれること。
ア 脂肪酸、グリセリン、脂肪酸エステル、アミノ酸、合成オリゴペプチド等であって別添2に掲げるもの(ただし、牛脂、牛脂硬化油、コハク化ゼラチン、コハク酸ゼラチン、ゼラチン、ゼラチン加水分解物、ハードファット、ヨークレシチン、脂肪酸(牛脂由来)、水素添加卵黄レシチン、精製卵黄レシチン及び卵黄レシチンを除く。)
イ 骨炭
ウ 原料等の製造工程での希釈率や精製工程におけるプリオンの低減率のシミュレーションに基づき算出した、原料等に混入する可能性のあるプリオンのクリアランス値から、製品の安全性が確保されていると評価できるもの
エ 次に掲げる方法又はこれと同等の方法により処理されたもの
① 加圧下で、200℃以上最低20分間のエステル交換反応又は加水分解を行うもの
② 12mol/L水酸化ナトリウムを用いて、次の工程を行うもの
・バッチプロセスとして、95℃で3時間以上の工程
・継続プロセスとして、加圧下140℃以上8分以上、又はそれと同等の工程
③ 高圧蒸気滅菌、化学的方法(耐熱性のもの)として、次に掲げる方法のいずれか
・1mol/L水酸化ナトリウム溶液中で121℃30分間の高圧蒸気滅菌後、洗浄、水洗し、通常滅菌
・水酸化ナトリウム溶液又は次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度2%)中で1時間の処理を行い、121℃1時間の高圧蒸気滅菌後、洗浄し、通常滅菌
・水酸化ナトリウム溶液又は次亜塩素酸ナトリウム溶液中で1時間の処理を行い、水洗し、121℃(重量加圧脱気式高圧蒸気滅菌器の場合)又は134℃(真空脱気式高圧蒸気滅菌器の場合)1時間高圧蒸気滅菌後、洗浄し、通常滅菌
・水酸化ナトリウム溶液中、大気圧下で10分間煮沸処理後、洗浄、水洗し、通常滅菌
・次亜塩素酸ナトリウム溶液(こちらを優先)又は水酸化ナトリウム溶液中、室温で1時間処理後、洗浄、水洗し、通常滅菌
・134℃18分間の高圧蒸気滅菌(脳組織が表面に焦げ付いているような場合は、感染性の大部分は消失しているが、完全では無いことに留意すること)
④ 化学的方法(非耐熱性のもの)として、次に掲げる方法
・2mol/L水酸化ナトリウム又は次亜塩素酸ナトリウム原液をかけて、1時間放置後、水洗い
⑤ 乾燥物に対する高圧蒸気殺菌及び化学的方法として、次に掲げる方法のいずれか
・水酸化ナトリウム溶液又は次亜塩素酸ナトリウム溶液中で処理後、真空脱気式高圧蒸気滅菌器で121℃以上1時間高圧蒸気滅菌(水酸化ナトリウム又は次亜塩素酸ナトリウムに抵抗性のある小さい乾燥物)
・真空脱気式高圧蒸気滅菌器で134℃1時間の高圧蒸気滅菌(水酸化ナトリウム又は次亜塩素酸ナトリウムに抵抗性のない嵩高い又はあらゆる大きさの乾燥物の場合)
※ ①及び②については、「人用及び動物用医薬品を介した伝達性海面状脳症の伝播リスクを最小限とするためのガイダンス」(2001年5月欧州医薬品庁発行)、③から⑤までについては、「WHO Infection Control Guidelines For Transmissible Spongiform Encephalopathies,Report of a WHO Consultation(2000.3)AnnexⅢ」から引用したもの。
(3) 反芻動物由来原料等の由来となるウシの月齢等の制限については原産国ごとに次に留意することが望ましいこと。
① 日本を原産国とするウシ原材料の採取にあっては、厚生労働省関係牛海綿状脳症対策特別措置法施行規則(平成14年厚生労働省令第89号)及びと畜場法施行規則(昭和28年厚生省令第44号)
② 米国を原産国とするウシ原材料の採取にあっては、「米国から輸入される牛肉等の取扱いについて」(平成25年2月1日付け食安監発0201第3号厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知)
③ オランダを原産国とするウシ原材料の採取にあっては、「オランダから輸入される牛肉等の取扱いについて」(平成25年2月1日付け食安監発0201第6号厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知)
(4) 反芻動物原料基準(2)の「国際獣疫事務局において、当該国における牛海綿状脳症の病原体の伝播のリスクが無視できることとされた国」は、現時点においては、次に掲げる国であること。
認定公表日 |
国 |
2007年5月25日 |
オーストラリア、アルゼンチン、ニュージーランド、シンガポール、ウルグアイ |
2008年5月30日 |
フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、パラグアイ |
2009年5月29日 |
チリ |
2010年5月26日 |
インド、ペルー |
2011年5月27日 |
デンマーク、パナマ |
2012年5月25日 |
オーストリア、ベルギー、ブラジル、コロンビア |
2013年5月29日 |
イスラエル、イタリア、日本、オランダ、スロベニア、米国 |
2014年5月30日 |
ブルガリア、クロアチア、エストニア、ハンガリー、ラトビア、ルクセンブルク、マルタ、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、韓国、中国(香港及びマカオを除く) |
なお、ここに掲げる国については、国際獣疫事務局のウェブサイト(http://www.oie.int/animal-health-in-the-world/official-disease-status/bse/list-of-bse-risk-status/)等により、適時更新するものであること。
(5) 今後、国際獣疫事務局において、新たに「無視できるBSEリスク」の国が認定された場合、本基準において使用可能な原産国として扱うことができる時点は、本通知の改正の有無にかかわらず、原則として、その認定の可否が検討された国際獣疫事務局総会の結果が公表された日とすること。なお、当該国の反芻動物由来原料等について、使用可能となるのは、既に(3)に掲げられている国を含め、上記の日以降に採取されたものであることに留意すること。
(6) 反芻動物由来原料基準(2)の「羊毛」及び「乳」には、それぞれ羊毛由来の原料等及び乳由来の原料等を含むこと。
(7) 反芻動物由来原料基準(3)ウ及びエの「反芻動物の飼育又はと畜の状況」及び「伝達性海綿状脳症を防止するための処理及び作業の経過」については、原産国の法令等において当該事項が規制されているのであればその法令等の該当箇所の引用と遵守の宣言をもって記録に替えることは可能であること。
(8) 反芻動物由来原料基準(4)の「その他必要な場合」とは、原料等の入手先が限定されている場合を含むものであること。
6 第4動物由来原料総則2動物細胞組織原料基準
(1) 動物細胞組織原料等には、生体弁、心膜パッチに用いる動物由来の細胞又は組織を含むものであること。
(2) 動物細胞組織原料基準(3)の「十分な適格性」とは、次のいずれにも該当するものであること。
ア ドナー動物を選択するに当たっては、動物種ごとの微生物学的特性が考慮されていること。
イ ドナー動物の受入れ時及び受入れ後の試験検査が、当該試験検査の項目及び当該試験検査の結果を評価する基準をあらかじめ設定した上で行われていること。特に、感染症等に関する試験検査については、動物種ごとに検査すべき項目が異なる点に留意すること。
ウ ドナー動物の受入れに際して、感染症等の伝播を防止するための措置が適切に行われていること。
エ ドナー動物の飼育管理に関する実施方法及び手順を記載した標準操作手順書が作成されていること。
オ 感染症等の伝播を防止するため、ドナー動物の飼育管理が封じ込めの設備その他の適切な設備を有する施設で行われていること。
カ ドナー動物が動物福祉の精神に基づいて取り扱われていること。
(3) 動物細胞組織原料基準(3)のただし書中「材料」とは、フィーダー細胞など、医薬品等の有効成分や主たる構成細胞として用いられるものではなく、製造段階でのみ用いられ、最終製品では工程由来不純物として残留する程度のものなどをいうこと。
(4) 動物細胞組織原料基準(3)のただし書中「使用実績」とは、薬事承認を受けた医薬品等における使用や、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(平成25年法律第85号)に基づく再生医療等での使用実績を含むものであること。
(5) 動物細胞組織原料基準(4)については、動物の生きた細胞又は組織を用いる場合にあっては、ウイルス感染リスクの検証を行わなければならないこと。それ以外の場合にあっては、無菌性の担保及びウイルス感染リスクの検証を行わなければならないこと。
(6) 動物細胞組織原料基準(4)の「ウイルス感染リスクの検証」について、動物の生きた細胞又は組織を用いる場合にあっては、令和7年1月17日付け医政研発0117第1号・感感発0117第7号厚生労働省医政局研究開発政策課長、健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課長通知「再生医療等の安全性の確保等に関する法律の下で実施する異種移植の実施について」における別添「異種移植の実施に伴う異種移植片由来感染症のリスク管理に関するガイドライン」を参照すること。
(7) 動物細胞組織原料基準(4)の「ウイルス感染リスクの検証」については、別添1の例示を参考とし、対象となる成分の特性に応じて例示の条件又はそれ以上の過酷な条件によるウイルス不活化に係る加熱処理が、製造工程中の適切な時点で実施されている場合には、必要ないこと。
(8) 動物細胞組織原料基準(5)ウの「ドナー動物の受入れの状況」の記録とは、飼育施設及びと畜する施設における受入れ時に設定している上記(2)ウの措置内容とその実施記録を指すこと。
7 第4動物由来原料総則3動物由来原料基準
(1) 動物由来原料基準(1)の「科学的に公知のもの」とは、半合成及び高度精製がなされた動物由来原料等であって、細菌、真菌、ウイルス等の不活化の観点からみて過酷な精製工程を経ていると考えられる別添2に示した動物由来原料等の他、ほ乳類、鳥類、は虫類、両生類以外の動物を基原とした原材料から製する動物由来原料等であること。ただし、プリオン伝播のリスクについては、単に化学処理等によっても消滅しない可能性が否定できないものであり、動物由来原料基準の適応となっていない別添2の動物由来原料等であっても、上記5(2)に掲げられていない反芻動物由来原料等については反芻動物由来原料基準が適用されるべきであること。
(2) 動物由来原料基準(1)の「健康な動物」とは、第十六改正日本薬局方参考情報18.日局生物薬品のウイルス安全性確保の基本要件4の4.1に規定するものであり、「食用基準」を満たしているとは、次のいずれかを満たしている又はその同等であることをいうものであること。
① 「と畜場法」(昭和28年法律第114号)第14条に規定する検査を受けたもの
② 「食鳥処理の事業の規則及び食鳥検査に関する法律」(平成2年法律第70号)第15条に規定する検査を受けたもの
③ 「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(昭和26年厚生省令第52号)第3条の基準に適合するもの
④ 外国において、食用に供すること等に関する認証を受けているもの
(3) (2)に加えて、「健康な動物」が確認できない野生動物にあっては、Codex(FAO/WHO合同食品規格計画)が発行した「Recommended International Code of Hygienic Practice for Game CAC/RCP 29―1983.Rev.1(1993)」に規定する以下の要件を満たすものであること。なお、野生動物由来の原料等については、食品、添加物等の規格基準(平成5年3月17日衛乳第54号厚生省生活衛生局乳肉衛生課長通知等)を参考に耐熱性菌の検体検査を行うことが望ましいこと。
① 動物のと殺及び原料等の部位の採取に当たっては、原料等の部位が汚染されないように適切な方法をとること。
② 動物のと殺に当たっては、確実に即死する方法を選ぶこと。
③ 動物の捕獲に当たっては、捕獲禁止区域では行わないこと。
(4) 動物由来原料基準(1)の「無菌性の担保、ウイルス感染リスクの検証その他の必要な事項」とは、当該動物由来原料等が十分に特性解析されたセルバンクを出発基材としない場合においては、無菌性の担保、ウイルス感染リスクの検証を工程の適切な段階(原料等又は製品の工程を含む。)において実施するとともに、動物の原産地及び使用部位の確認並びに原材料として細胞又は組織が使用される場合にあってはその入手方法の確認が行われていることを指すこと。
(5) 動物由来原料基準(2)の「適切な段階」とは、セルバンク又はシードロットを構築するものにあってはセルバンク又はシードロット、未加工又は未精製バルクの段階、また、原料等又は製品の製造の工程をごく一部進めることによってウイルスを検出する試験がより的確に行えることとなる場合を含むものであること。
(6) 動物由来原料基準(3)の「当該処理を行わない合理的な理由がある場合」とは、例えば現在の知見では不活化又は除去処理により原料等として目的とする特性が失われ、他の原料等への変更ができないこと等であること。なお、その場合にあっては由来する動物が健康であることを確認した上で、無菌性の担保、ウイルス感染リスクの検証を工程の適切な時点において実施するとともに、動物の原産地及び使用部位の確認並びに原材料として細胞又は組織が使用される場合にあってはその入手方法の確認が行われていること。
8 その他
(1) 承認書等において、「生物学的製剤基準血液製剤総則」と記載されているものは、生物由来原料基準血液製剤総則の該当する記載とみなすこと。
(2) 反芻動物由来原料等の品質及び安全確保に関して、承認書において、「平成12年12月12日医薬発第1226号医薬安全局長通知」及び「平成13年10月2日医薬発第1069号医薬局長通知」と記載されているものについては、反芻動物由来原料基準の該当する記載とみなすこと。
(3) 記録の保存については、定型の記録文書の保存ではなく、必要な情報が確認できる資料(例えばCertificate等)の写し等による保存でも本来の目的であるトレーサビリティが確認できるのであればそれで差し支えないこと。
(4) 生物由来原料基準に規定する記録の保管については、原則、製造業者等が保管するべきものであるが、製造業者等は原料等を製造する者(以下「原料等業者」という。)との契約により、当該原料等業者に保管を行わせることができるものであること。ただし、その場合にあっては、製造業者等は、当該原料等業者が保管する記録について必要な情報を速やかに入手できるよう管理されていること。
(5) 製造販売承認申請書の記載は別添3を参考とすること。
別添1 ウイルス不活化の検証がなされた加熱条件
加熱条件 |
該当する成分例 |
71℃3時間、121℃15秒及び101℃30秒 |
トリプトン |
71℃最低3時間及び101℃最低30秒 |
ラクトアルブミン |
92℃1時間及び125±2℃3~4秒 |
コンドロイチン硫酸ナトリウム |
100℃30分 |
チキンエキス |
100℃30分3回間欠滅菌 |
スキムミルク |
120℃15分以上 |
トリプトン、ポリペプトン、カザミノ酸 |
122℃30分 |
トリプチケースソイブロス |
122℃55分 |
ペプトン |
30分間煮沸、オーブン(180~190℃)で16~48時間乾燥、121℃60分 |
ペプトン |
123℃20分 |
牛肝臓、牛心臓、牛肉 |
200℃、40bar、20分 |
牛脂 |
高圧蒸気滅菌 |
ラクトアルブミン水和物、カザミノ酸、カシトン、ハートエキス、バクトトリプトン、肝臓エキス、牛肝臓 |
スプレードライ(150℃) |
ヨークレシチン |
別添2 細菌、真菌、ウイルス等の不活化の観点からみて過酷な精製工程を経ていると考えられるもの
DL―セリン |
コハク酸ゼラチン |
ポリエチレングリコール脂肪酸エステル |
L―アスパラギン酸及びその塩類 |
コハク酸プレドニゾロン |
ポリオキシエチレンオレイルエーテル |
L―アラニン |
コレカルシフェロール |
ポリオキシエチレンコレスタノール |
L―アルギニン |
コレステロール |
ポリオキシエチレンセチルエーテル |
L―イソロイシン |
コレステロールラノリン脂肪酸エステル |
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート |
L―カルボシステイン |
シアノコバラミン |
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル |
L―カルボシステイン |
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン |
ポリオキシエチレンラノリン |
L―シスチン |
ジステアリン酸 |
ポリエチレングリコール6000ポリソルベート |
L―シスチン |
ジプロピオン酸ベタメタゾン |
マクロゴール400 |
L―システイン |
ショ糖脂肪酸エステル |
モノオレイン酸ポリエチレングリコール |
L―システイン |
ショ糖脂肪酸エステル―S |
モノオレイン酸ソルビタン |
L―システィン塩酸塩 |
ステアリルアルコール |
モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン |
L―セリン |
ステアリン酸及びその塩類 |
モノオレイン酸ポリグリセリル |
L―チロシン |
ステアリン酸ポリオキシル類 |
モノステアリン酸グリセリン |
L―チロジン |
セスキオレイン酸ソルビタン |
モノステアリン酸ソルビタン |
L―トリプトファン |
セタノール |
モノステアリン酸プロピレングリコール |
L―トレオニン |
ゼラチン |
モノステアリン酸ポリエチレングリコール |
L―バリン |
ゼラチン加水分解物 |
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン |
L―ヒドロキシプロリン |
ソルビタン脂肪酸エステル |
モノラウリン酸ソルビタン |
L―フェニルアラニン |
タンニン酸アルブミン |
ヤシ油脂肪酸加水分解コラーゲントリエタノールアミン |
L―プロリン |
デオキシコール酸ナトリウム |
ヨークレシチン |
L―ロイシン |
デキサメサゾン・ソジウムメタスルホベンツアート |
ラウリルアルコール |
L―塩酸システイン |
デキサメタゾン |
ラウリル硫酸ナトリウム |
N―アセチル―L―システイン |
デスオキシコール酸ナトリウム |
ラクツロース |
N―アセチル―L―システイン |
デヒドロコール酸及びその塩類 |
ラクトビオン酸 |
N―ステアロイル―L―グルタミン酸ナトリウム |
トリアセチン |
ラクトビオン酸エリスロマイシン |
N―ヤシ油脂肪酸/硬化牛脂脂肪酸アシル―L―グルタミン酸ナトリウム |
トリアムシノロンアセトニド |
ラノリン |
N―ラウロイル―L―グルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル) |
トリオレイン酸ソルビタン |
ラノリンアルコール |
αモノイソステアリルグリセリルエーテル |
トリステアリン酸ソルビタン |
ラノリン脂肪酸コレステロールエステル |
アセチルしょ糖変性アルコール95vol% |
トリ牛脂脂肪酸グリセリル |
リンゴ酸システイン |
アマコールCAB |
乳糖 |
リンゴ酸システイン |
アルファカルシドール |
ハイドロキシアパタイト |
リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム |
イソステアリン酸 |
ハードファット |
リン酸ベタメタゾン及びその塩類 |
ウルソデオキシコール酸 |
パナセート810 |
リン酸リボフラビンナトリウム |
ウルソデスオキシコール酸 |
パルミチン酸イソプロピル |
レシチン |
エタノール・無水エタノール |
パルミチン酸セチル |
塩酸L―エチルシステイン |
エピジヒドロコレステリン |
ヒオデオキシコール酸メチル |
塩酸L―メチルシステイン |
オレイルアルコール |
ビタミンA+D2末 |
還元ラノリン |
オレイン酸 |
ビタミンB12 |
吉草酸ベタメタゾン |
オレイン酸デシル |
ビタミンD |
吉草酸酢酸プレドニゾロン |
カプリル酸、カプリン酸 |
ビタミンD2 |
脂肪酸(牛脂由来) |
ガラクトース |
ビタミンD3 |
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン |
カルシトリオール |
ヒドロキシステアリン酸コレステリル |
親油型モノステアリン酸グリセリン |
牛脂 |
ヒドロコルチゾン |
酢酸ゴナドレリン |
牛脂硬化油 |
ファルネシル酸プレドニゾロン |
酢酸デキサメタゾン |
グリセリルトリアセチン |
フェニルエチルアルコール変性アルコール95vol% |
酢酸パラメタゾン |
グリセリン |
フランカルボン酸モメタゾン |
酢酸ヒドロコルチゾン |
グリセリンオレイン酸エステル |
フルオシノニド |
酢酸ブセレリン |
グリセリン脂肪酸エステル |
フルオシノロンアセトニド |
酢酸プレドニゾロン |
ケノデオキシコール酸 |
プレドニゾロン |
水素添加卵黄レシチン |
ケノ酸 |
プロチレリン |
精製卵黄レシチン |
ゲラニオール変性アルコール95vol% |
ベタメタゾン |
中鎖脂肪酸トリグリセリド |
コール酸 |
ペンタオレイン酸デカグリセリル |
乳酸カルシウム |
コハク化ゼラチン |
ペンタステアリン酸デカグリセリン |
卵黄レシチン |
注)上記のリストに収載されているものと同等の成分(例えば、アルキル基の異なるエステル、側鎖の長さ等が異なるのみの脂肪酸、界面活性剤、重合度が異なる脂肪酸エステル等)については、客観的に上記のリストに収載されているものと同様とみなすことができる。
別添3 製造販売承認申請書の記載例
1 ウシ等由来原料について
(成分名○○○)は、(ウシ等の動物名)(原産国)の(使用部位△△△)に由来する。製造方法は別紙規格○○(又は公定書規格)によるほか、健康な動物に由来する原料を使用し、BSEに感染している動物由来の原料及び生物由来原料基準反芻動物由来原料基準に定める使用してはならない部位が製造工程中で混入しないよう、採取した△△△を原料として製する。(なお、本原料については、同基準の第4項の規定に基づき、平成13年10月2日付け医薬発第1069号医薬局長通知の記の2の(1)の②の条件に適合するものである。)
(成分名○○○)は、(ウシ等の動物名)の(使用部位△△△)に由来し、BSEに感染している動物由来の原料及び生物由来原料基準反芻動物由来原料基準に定める使用してはならない部位が製造工程中で混入しないよう管理された低リスク原料等に該当するものである。
2 ヒト動物等由来原料について
(成分名○○○)は、ヒト(動物の場合は動物名)の(使用部位)に由来する。当該成分は、原材料を提供するヒト(動物の場合は動物名)に対してドナースクリーニング(実施した検査項目、検査方法を記載)を実施して適格性が確認されており、○○○○の方法により病原体の不活化/除去処理を行ったものである。
(成分名○○○)は、ヒト(動物の場合は動物名)の(使用部位)に由来する。当該成分は、健康なヒト(又は動物)に由来し、○○○(原材料又は工程の別を記載)に対して検査(実施した検査項目、検査方法を記載)を行い、○○○○の方法により病原体の不活化/除去処理を行ったものである。
3 血液製剤等について
(成分名○○○)は、(採血国)で採血された血液に由来する。次に掲げる採血国及び採血所で採血された血液は、平成15年5月15日付け医薬発第0515020号医薬局長通知に示す献血の定義に該当するものである。(可能性のある採血国及び採血所名を列記する。)