添付一覧
」
③ 勤務地を通勤圏内に限定する雇用区分の例
規定例)
「地域限定正社員の勤務地は、採用時の居住地から通勤可能な事業所とする。」
「地域限定正社員は、本人の同意なく転居を伴う異動を行わないものとする。」
「地域限定正社員は、自宅から通勤可能なエリア内で勤務するものとする。」
* 企業ヒアリングにおいて、通勤圏内を概ね通勤時間1時間30分以内とする例があった。
④ 勤務地を特定の事業所に固定する雇用区分の例
規定例)
「地域限定正社員の勤務場所は、1事業所のみとし、事業場の変更を伴う異動は行わないものとする。」
「地域限定正社員の勤務場所は、労働契約書に定める事業所とする。」
【2 職務の限定】
① 職務限定のない雇用区分の例
規定例)
「総合職は、職務区分に限定がなく、経営組織上の基幹的業務に従事する。」
「総合職は、企画立案、折衝調整、営業、管理業務にわたる総合的な業務を行う。」
② 職務の範囲を①より限定する雇用区分の例
規定例)
「職務限定正社員は、限定分野の定常的な基幹業務を行う。」
「職務限定正社員は、限定分野の定常業務を行う。」
③ 特定された職務に限定する雇用区分の例
規定例)
「職務限定正社員は、一定の職務区分において、その職務区分ごとに必要とされる業務に従事する。」
「職務限定正社員は、法人顧客を対象とした営業業務に従事する。」
「職務限定正社員は、販売職として、商品の販売業務に従事する。」
【3 勤務時間の限定】
① 所定労働時間を限定する雇用区分の例
規定例)
「短時間正社員は、1年間の所定労働日数を150日以上250日以内、所定労働時間数を1,000時間以上1,700時間以内の範囲で雇用契約により定めるものとする。」
「短時間正社員の労働時間は、1日6時間とする。各勤務日の始業・終業時刻は前月20日までにシフト表により定めるものとする。
始業時刻 |
終業時刻 |
休憩時間 |
午前9時00分 |
午後16時00分 |
12時00分から13時00分まで |
午前11時00分 |
午後18時00分 |
14時00分から15時00分まで |
」
* 企業ヒアリング等において、1日の所定労働時間を労働契約書で定め、変形労働時間制を採用している事例があった。
② 時間外労働を行わない雇用区分の例
規定例)
「勤務時間限定正社員は、1日の労働時間を8時間とし、所定労働時間を超える勤務を行わないものとする。」
「会社は、勤務時間限定正社員の所定労働時間を延長して勤務することを命じないものとする。」
[◎ 処遇(賃金水準の設定)]
① 賃金係数を設定する例
地域別の規定例)
「
1.全国をⅠ~Ⅲ地域に区分し、各地域に次の賃金係数を設定する。
Ⅰ地域100、Ⅱ地域95、Ⅲ地域90
2.勤務地限定のない総合職は、賃金係数100を適用する。
勤務地が限定された地域限定正社員の基本給、職務手当は、前項の地域区分及び賃金係数を適用する。 」
コース別の規定例)
「異動手当は、基本給、職務手当等の合計額に、異動コース別の賃金係数を乗じた額を支給する。
全国異動コース100、エリア異動コース95、転居転勤なしコース85 」
* 企業ヒアリングにおいて、いわゆる正社員と職務の範囲に差がない多様な正社員について、概ね上記の水準としていた事例があった。
* 39頁にもあるとおり、上記はあくまで例示であり、個々の区分の賃金係数等は雇用管理の実態等に応じて労使の話合いの下、決定されるものである。
② 全国異動者に転勤プレミアムを支給する例
規定例)
「勤務地限定のない総合職には、基本給等月例給の5%~10%の範囲で転勤手当を支給する。」
* 企業ヒアリングにおいて、多様な正社員と同じ賃金テーブルを適用し、別途手当を支給する事例があった。
[◎ 雇用区分の転換]
【1 非正規雇用の労働者→多様な正社員への転換】
規定例)
「
1.契約社員(有期契約)から地域限定正社員への転換を希望する者は、12月31日までに所定の申請書を会社に提出しなければならない。
2.前項の契約社員は、勤続3年以上であること。
3.会社は、地域限定正社員への転換を希望する契約社員の中から、選考試験に合格した者を4月1日付けで地域限定正社員に登用する。 」
【2 多様な正社員→いわゆる正社員への転換】
① 転換の回数、役職・年齢等を制限する例
規定例)
「
1.地域限定正社員から総合職への転換を希望する者は、12月31日までに所定の申請書を会社に提出しなければならない。
2.前項の地域限定正社員は、係長級以上であって資格等級2級に2年以上在任したものであること。
3.会社は、登用試験、人事面接等の結果転換を認める場合、合格した者を4月1日付けで総合職に認定し、人事通知書により通知するものとする。
4.前項の総合職から地域限定正社員への転換については、転換後3年以内は行わない。また、相互転換の回数は2回までとする。 」
* 企業ヒアリングにおいて、年齢や上司の推薦等を要件とする事例もあった。
② 転換の回数、役職・年齢等を制限しない例
規定例)
「
1.地域限定正社員から総合職への転換を希望する者は、12月31日までに所定の申請書を会社に提出しなければならない。
2.会社は、登用試験、人事面接等の結果転換を認める場合、合格した者を4月1日付けで総合職に認定し、人事通知書により通知するものとする。 」
③ 会社都合により転換する例
規定例)
「
1.会社は、やむを得ない業務上の都合により、地域限定正社員に対し本人の同意を得て、期間を定め総合職として勤務を命ずることがある。
2.前項の場合、総合職として勤務する期間は、総合職としての処遇を受けるものとする。 」
【3 いわゆる正社員→多様な正社員への転換】
① 転換の随時申請を認める例
転換の理由を問わない場合の規定例)
「
1.総合職から職務限定正社員への転換を希望する者は、3か月前までに所定の申請書を会社に提出しなければならない。
2.会社は、人事面接等を行った結果転換を認める場合、職務限定正社員に認定し、人事通知書により通知するものとする。 」
介護等特別の事由による場合の規定例)
「
1.次のいずれかに該当する場合に、総合職から地域限定正社員への転換を希望する者は、原則としてその事由が発生する3か月以内に、所定の申請書を会社に提出しなければならない。
ア 扶養する2親等内の親族の介護等が必要なとき
イ 本人の傷病等により、転居を伴う異動が困難となったとき
ウ その他転居を伴う異動を行うことが困難な特別の事情があるとき
2.会社は、人事面接等を行った結果転換を認める場合、地域限定正社員に認定し、人事通知書により通知するものとする。
3.会社は、1項の事由がなくなったときは、本人の申出により総合職への転換を行うものとする。 」
② 転換の回数、役職・年齢等を制限する例
規定例)
「
1.総合職から地域限定正社員への転換を希望する者は、12月31日までに所定の申請書を会社に提出しなければならない。
2.前項の総合職は、係長級以上であって資格等級3級に2年以上在任したものであること。
3.会社は、人事面接等の結果転換を認める場合、4月1日付けで地域限定正社員に認定し、人事通知書により通知するものとする。
4.前項の地域限定正社員から総合職への転換については、転換後3年以内は行わない。また、相互転換の回数は2回までとする。 」
* 企業ヒアリングにおいて、年齢等を要件とする事例もあった。
③ 転換の回数、役職・年齢等を制限しない例
人事面接等により判断する場合の規定例)
「
1.総合職から地域限定正社員への転換を希望する者は、12月31日までに所定の申請書を会社に提出しなければならない。
2.会社は、人事面接等の結果転換を認める場合、4月1日付けで地域限定正社員に認定し、人事通知書により通知するものとする。 」
本人の希望のみにより転換する場合の規定例)
「
1.総合職から地域限定正社員への転換を希望する者は、12月31日までに所定の申請書を会社に提出しなければならない。
2.会社は、特別の事情がない限り、4月1日付けで地域限定正社員に認定し、人事通知書により通知するものとする。 」
[◎ 経営上の理由等により事業所閉鎖等を行う場合の人事上の取扱(解雇事由)]
規定例)
「労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。
・ 事業の運営上又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事由により、事業の縮小又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ、かつ他の職務への転換が困難なとき 」
「労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。
・ 事業の縮小、事業の閉鎖等を行う必要が生じたときであって、通勤可能な範囲に他の事業所がなく、かつ本人の事情により異動ができない場合で、継続雇用が困難なとき 」
Ⅱ 労働契約書の規定例
* 「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会における企業ヒアリング等における事例を基に作成したものであり、時間等については、あくまで例示であり、この水準にすべきというものではない。また、雇用区分(社員区分)の名称等についても同じく例示である。
① 労働契約書(労働条件通知書)で勤務地を限定する例
規定例)
「勤務地:首都圏の各営業所に限る
従事する業務内容:住宅事業の販売・広告戦略に関する企画・立案 」
② 就業規則に社員区分を定義し、労働契約書で勤務地や職務を限定する例
規定例)
「社員区分:地域限定正社員
就業の場所:横浜事業所
従事すべき業務の内容:研究会の準備・運営、データ分析・処置等 」
* 就業規則の規定例
「地域限定正社員とは、特定の事業所で、労働契約書に明示された業務に従事する事業所間異動のない社員をいう。」
③ 就業規則に社員区分を定義し、労働契約書で勤務時間を限定する例
規定例)
「社員区分:短時間正社員
所定労働日数:1か月20日
所定労働時間:1日 7時間(年間1680時間)
ただし、各勤務日及び始業・終業時刻は前月20日までにシフト表により定める。 」
* 就業規則の規定例
「短時間正社員とは、期間の定めのない雇用契約であって、1年間の所定労働時間数を1,000時間以上1,700時間以内の範囲で労働契約書により定めたものとする。」
* 企業ヒアリング等において、1日の所定労働時間を労働契約書で定め、変形労働時間制を採用している事例があった。
(参考)
○毎年定期に交付する職務等級の通知書で社員区分や勤務地限定を明示する例
記載例)
下表の「勤務地コース」において、社員区分が総合職Bコースであって、勤務地が関東ブロック内で、転居を伴う異動があることを示すもの
* 採用時又は転換時に、社員区分を記載した労働契約書を作成
* 社員区分は就業規則に定義
「総合職Nコース:勤務地の限定がないもの
総合職Bコース:一定のエリア内で転居を伴う異動があるもの
総合職Aコース:転居を伴う異動がないもの 」
* このほか、採用時や転換時に辞令で通知するほか、労働者本人から同意書の提出を求める事例があった。
(参考) 高度専門職のキャリア形成の事例
産業分野、企業 |
金融業、情報サービス業における外資系企業、グローバル企業 |
従事する職務 |
○金融業:投資部門において資金調達業務やM&Aアドバイザリー業務などに従事する専門職、証券アナリスト ○情報サービス業:ビッグデータの分析活用に関する技術開発を行うデータサイエンティスト、1人で巨額の受注を扱う営業職のエキスパート |
採用目的 |
新たな知見が必要、社員を育成する土壌が整っていない等、企業内部の人材では対応できない場合 |
採用方法 |
○エージェントを通してヘッドハンティング ○自社HPでジョブ・ディスクリプション等により職務を明確にして募集 |
雇用形態 |
○専門的な正社員(専門職)として採用 ○契約社員として採用 |
労働条件の明示 |
○正社員の場合、ジョブ・ディスクリプションやオファーレターにおいて、労働条件を明示 ○契約社員の場合、契約社員のフォーマット(労働条件通知書等)において、労働条件を明示 |
処遇 |
年収 1千万円~数千万円 |
キャリア・アップ |
○より好条件の会社への転職(企業内JOBローテーションではない) ○長期雇用を前提としておらず、能力開発は自ら行う |
[(参考)]
「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会 開催要綱
1 趣旨・目的
雇用が安定し処遇も高いが、働き方の拘束性が高く長時間労働等の課題がある正社員と、雇用が不安定で処遇が低く、能力開発の機会が少ないといった課題がある非正規雇用の労働者という働き方の二極化が課題として指摘されている。
働き方の二極化を解消し、雇用形態にかかわらず、安心して生活できる多様な働き方が提供される環境を整備することが重要であり、平成25年6月14日に閣議決定された「日本再興戦略」においては、「職務等に着目した『多様な正社員』モデルの普及・促進を図るため、成功事例の収集、周知・啓発を行うとともに、有識者懇談会を今年度中に立ち上げ、労働条件の明示等、雇用管理上の留意点について来年度中のできるだけ早期にとりまとめ、速やかに周知を図る」こととされている。
このため、多様な正社員の活用に当たっての雇用管理上の留意点の整理を行うことを目的として、「多様な正社員の普及・拡大のための有識者懇談会」を開催する。
2 検討事項
本懇談会においては、多様な正社員に関する次に掲げる事項を中心とした雇用管理上の留意点等について調査・検討を行う。
(1) 制度導入のプロセス
(2) 労働契約締結・変更時の労働条件明示の在り方
(3) 労働条件の在り方、いわゆる正社員との均衡の在り方
(4) 相互転換制度を含むキャリアパス
(5) その他雇用管理に関する事項
3 参集者
別紙のとおり
4 スケジュール
平成25年9月から検討を開始し、平成26年中を目途にとりまとめ
5 運営
(1) 本懇談会は、厚生労働省労働基準局長が関係部局の協力の下、学識経験者の参集を求めて開催する。
(2) 本懇談会においては、必要に応じ、実務経験者等の出席を求めることがある。
(3) 本懇談会の議事については、別に本懇談会において申し合わせた場合を除き、公開とする。
(4) 本懇談会の座長は、参加者の互選により選出する。
(5) 本懇談会の庶務は、厚生労働省労働基準局労働条件政策課において行う。
(別紙)
◎ 今野浩一郎 学習院大学経済学部経営学科教授
神林龍 一橋大学経済研究所准教授
黒田祥子 早稲田大学教育・総合科学学術院准教授
黒澤昌子 政策研究大学院大学教授
櫻庭涼子 神戸大学大学院法学研究科教授
佐藤博樹 東京大学社会科学研究所
社会調査・データアーカイブ研究センター教授
竹内(奥野)寿 早稲田大学法学学術院准教授
野田知彦 大阪府立大学経済学部教授
水町勇一郎 東京大学社会科学研究所教授
山川隆一 東京大学大学院法学政治学研究科教授
◎ 座長
「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会 開催状況
第1回 (平成25年9月10日) 懇談会の進め方等について
第2回 (平成25年10月18日) 企業ヒアリング(製造業、保険業、建設業)
第3回 (平成25年10月30日) 企業ヒアリング(小売業、金融業、旅行業)
第4回 (平成25年11月15日) 企業ヒアリング(飲食業、小売業)
第5回 (平成25年12月6日) 労使団体ヒアリング(労使各1団体)
第6回 (平成26年1月30日) 多様な正社員の導入、処遇について
第7回 (平成26年2月13日) 転換制度について
第8回 (平成26年3月11日) 労働条件の明示、労使コミュニケーションについて
第9回 (平成26年4月18日) 労働条件の明示、職業能力評価制度等について
第10回 (平成26年4月30日) 独立行政法人日本労働政策・研修機構(JILPT)から、「多様な正社員に関する裁判例の分析」についてのヒアリング、雇用保障について
第11回 (平成26年5月16日) 労働条件の明示等について
第12回 (平成26年5月30日) 転換制度と均衡処遇について
第13回 (平成26年6月13日) 懇談会報告書(骨子案)について
第14回 (平成26年7月11日) 懇談会報告書(案)について