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○生活保護法の一部改正による生活保護法第29条第2項の創設に伴う同条第1項に規定する関係先への調査実施に関する留意事項について

(平成26年6月30日)

(社援保発0630第1号)

(各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長あて厚生労働省社会・援護局保護課長通知)

(公印省略)

今般、生活保護法の一部を改正する法律(平成25年法律第104号。以下「改正法」という。)が平成25年12月13日に公布され、平成26年7月1日から施行することとしている。

これにより、生活保護法(昭和25年法律第144号)第29条が改正され、新たに生活保護法第29条第2項を創設して官公署等に回答義務を設けるなど、保護の決定又は実施等に当たって行う要保護者の資産や収入などを確認するための調査について、一層の適切な実施を図るために調査権限の強化を図ったところである。

これに伴い、今般、生活保護法別表第一に規定する厚生労働省令で定める情報を定める省令(平成26年厚生労働省令第72号。以下「情報省令」という。)を制定し、回答義務の範囲について示したところであるが、下記のとおり、本通知により、回答義務の範囲を更に詳細に整理するとともに、今般の改正法による改正後の生活保護法(以下「新法」という。)第29条による調査の実施に当たって留意事項を整理したので、管内実施機関に対し周知方お願いしたい。

また、回答義務の範囲については、新法別表第一の備考に定めるところにより、情報省令の制定に当たって関係府省と協議を行っており、その際、併せて本通知の別紙についても協議を行っているので、念のため申し添える。

第1 改正の趣旨

従前より、保護の実施機関及び福祉事務所長(以下「保護の実施機関等」という。)は保護の決定又は実施のため必要があるときは、要保護者から必要な書類を的確に提出させるとともに、必要がある場合は要保護者の状況について、官公署に対し調査を嘱託し、又は関係人に対し報告を求めることができる旨規定した改正法による改正前の生活保護法(以下「旧法」という。)第29条に基づき調査を実施いただいているところである。

今回、生活保護の不正事案に厳正に対処するとともに、国民の信頼を確保するためにも適正な保護の実施が必要であることから、保護の実施機関等が保護の決定若しくは実施又は新法第77条若しくは第78条の規定の施行(以下「保護の決定又は実施等」という。)のために行う調査権限の拡大を図ることとしたものである。

なお、今回の改正では、保護の決定又は実施のために行う場合だけでなく、扶養義務者に対する費用の徴収や不正受給の費用徴収を行う場合又はそれらを検討する場合にも調査を実施できることを明示したこと、また、近年の他の社会保障関係法における同様の調査規定との関係等も踏まえ、他の行政機関等に「調査を嘱託」を、「必要な書類の閲覧若しくは資料の提供を求め」ると文言を改めているが、特段これまでの事務の変更を意図したものではないので、念のため申し添える。

第2 改正の概要

1 調査の対象者について、旧法では、要保護者又はその扶養義務者と定められていたが、被保護者であった者(保護が廃止された者)及びその扶養義務者を追加したこと。

2 調査事項について、資産及び収入の状況に加えて、就労又は求職活動の状況、健康状態、支出の状況等の事項を追加したこと。

3 官公署、日本年金機構又は国民年金法(昭和34年法律第141号)第3条第2項に規定する共済組合等(以下「官公署等」という。)に対し、新法及び情報省令で定める範囲の情報について、資料の閲覧又は資料の提供を求めた場合に回答を義務づけたこと。

第3 関係先調査の実施に関する留意事項

1 新法第29条による調査については、適正な保護の決定又は実施等に当たって、第4の表の範囲において実施が認められるものであることから、保護の実施機関等にあっては、第1の改正の趣旨を踏まえ、効果的・効率的な調査を行うよう努めること。

2 関係先調査の実施に当たっては、従前と同様に、原則として、申請時又は申請後直ちに保護の実施機関等が行う資産、収入の状況等に関する関係先調査に同意する旨を記した書面(同意書)に、署名捺印をさせ申請者から提出させること。

なお、今般の法改正により調査範囲等が変更されたこと等に伴い、別途「生活保護法施行細則準則について」(平成12年3月31日社援発第871号。以下「施行細則準則」という。)様式第12号別添3に定める同意書様式を改正したので、現に保護を受けている者についても、適宜、様式変更後の同意書の提出を求めること。

第4 関係先調査の範囲

新法第29条では、保護の決定又は実施等のため必要があると認めるときに行う調査の範囲について、下表のとおり調査対象者、調査事項を定めている。

下表中、過去に被保護者であった者の調査の実施は、保護の実施機関等が保護の決定又は実施等のために必要があると認める場合の年限に制限はないが、保護決定調書等の保存期間を踏まえ5年を標準とすること。ただし、当該情報を所有する官公署等及び関係人においては、当該情報に係る文書等の保存期間内であって管理している範囲において回答が可能であることに留意すること。

また、過去に被保護者であった者の※印の事項に係る調査の実施は、保護を受けていた期間に限るものであること。

【表】

(A)

調査対象者(B)

調査事項(C)

1

・要保護者

・過去に被保護者であった者

(法第29条第1項第1号関係)

・氏名

・住所又は居所

・資産の状況(※)

・収入の状況(※)

・生業若しくは就労又は求職活動の状況(※)

・扶養義務者の扶養の状況(※)

・他の法律に定める扶助の状況(※)

・健康状態

・他の保護の実施機関における保護の決定及び実施の状況

・支出の状況(※)

2

・要保護者の扶養義務者

・過去に被保護者であった者の扶養義務者

(法第29条第1項第2号関係)

・氏名

・住所又は居所

・資産の状況(※)

・収入の状況(※)

第5 新法第29条第2項の創設により回答義務の対象となる情報に係る調査の実施

適正な保護の決定又は実施等に当たっては、当該要保護者に対する保護の実施責任を負う保護の実施機関等以外の関係先の保有する情報の提供を受けることが必要不可欠である。そのため、新法第29条第2項において、上記表(A)欄の1に定める調査対象者、調査事項であって、かつ新法別表第一に掲げる情報にあっては、保護の実施機関等が官公署等に行う情報提供の求めに対して、回答を義務付けたところである。

回答義務の対象となる情報を当該官公署等に求める場合の留意事項は以下のとおりである。

なお、回答義務の対象となる情報以外の情報については、相手方に情報提供を義務付けるものではないが、法第29条に基づく関係先調査は、個人情報保護法第23条第1号等の「法令に基づく場合」に当たるものと解されていることに鑑み協力が得られるよう調整を行うこと。

1 回答義務の範囲等

回答義務の対象となる情報に係る調査の実施について、保護の実施機関等が官公署等に提供する情報、官公署等から保護の実施機関に提供される回答義務の対象となる情報及び調査先等は別紙のとおりであること。

2 調査方法

保護の実施機関等が、回答義務の対象となる情報にかかる調査を行う際は、調査対象者を特定した上で施行細則準則様式第21号に定める調査依頼書に、別紙に定める「保護の実施機関が提供する情報」を記載すること。その上で、別紙に定める調査先ごとの回答義務の対象となる情報を記載した任意の調査票を作成し、施行細則準則様式第21号に定める調査依頼書に添付の上、郵送等確実に調査先に到達する方法により行うこと。

なお、調査先との関係で「資料の閲覧」により行う場合にあっては、上記の取扱いに準じ、当該調査先と調整の上で行うこと。

また、この調査は、回答を義務化しているため、同意書を添付する必要はない。ただし、調査に回答義務の対象とならない情報が含まれる場合には、当然に同意書の添付を要することとなるので留意すること。

3 調査先からの回答

保護の実施機関等から上記2により調査が行われた場合、調査先は、別紙に定める回答義務の対象となる情報について調査し、回答することとなる。

なお、調査先による回答は、保護の実施機関等が作成した調査票によるほか調査先の内部帳票等により行われることもある。

また、回答義務の対象となっている情報であっても、調査先で現に保有していない場合には当該情報が得られないこととなるので留意すること。

4 調査の留意点

調査依頼時点ですでに調査対象者(世帯)に係る回答義務の対象となる情報が判明している場合には、その内容を調査票に可能な範囲で記入するなど、円滑かつ効率的に必要な回答が得られるよう配慮した上で調査すること。

なお、新法第29条第2項の創設により、資料の閲覧又は資料の提供を求めた場合において、一部の範囲の情報に係る回答を義務付けたものであるが、改正法によって回答義務の対象となった情報について、すべからく調査を行う必要があるということではないこと。今回の改正を契機に、いたずらに調査を行うことは、調査先に過度な負担を生じさせ、かえって回答が著しく遅滞するなどの事態もあり得るものであることから、真に調査が必要か否か検討をした上で、適切に調査依頼を行うべきであることに改めて留意すること。

【別紙】

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【別添】

○ 回答義務の対象となる国税情報について、調査先から提供されるものは、以下のとおりとする。

○ 回答義務の対象となる地方税情報について、主な事項は以下のとおりであるが、具体的な事項については、従前の取扱いを参考としつつ、調査先と調整の上で実施すること。

○ なお、税情報については、要保護者に関するもののみ対象となるので、留意すること。

【国税情報】

1.相続税関係情報(要保護者に限る。)

(1) 納付税額

(2) 還付税額

(3) 相続税の課税財産のうち、土地の価額

(4) 相続税の課税財産のうち、家屋・構築物の価額

(5) 相続税の課税財産のうち、事業(農業)用財産の価額

(6) 相続税の課税財産のうち、有価証券の価額

(7) 相続税の課税財産のうち、現金、預貯金等の価額

(8) 相続税の課税財産のうち、家庭用財産の価額

(9) 相続税の課税財産のうち、(3)から(8)まで以外の財産の価額

(10) 相続時精算課税適用財産の価額

(11) 債務等の金額

(12) 純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額

2.贈与税関係情報(要保護者に限る。)

(1) 納付税額

(2) 暦年課税に係る贈与税の課税財産の種類と価額

(3) 住宅取得等資金のうち非課税の適用を受ける金額

(4) 相続時精算課税に係る贈与税の課税財産の種類と価額

3.所得税関係情報(要保護者に限る。)

所得税青色申告決算書に記載のある月別売上(収入)金額及び仕入金額に関する情報

【地方税情報】

1.市町村民税/道府県民税関係情報

(1) 市町村民税道府県民税申告書中下記の事項

・収入金額等(各区分ごと)

・所得金額(各区分ごと)

・生命保険料控除

・地震保険料控除

・扶養控除

・16歳未満の扶養親族

・給与所得の内訳

・事業・不動産所得に関する事項

・配当所得に関する事項

・雑所得(公的年金等以外)に関する事項

・総合譲渡・一時所得の所得金額に関する事項

・別居の扶養親族等に関する事項

(2) 給与支払報告書中下記の事項

・支払金額

・生命保険料の控除額

・地震保険料の控除額

2.自動車取得税/自動車税/軽自動車税関係情報

(1) 自動車取得税・自動車税申告(報告)書/軽自動車税申告(報告)書中下記の事項

・登録(取得)年月日

・車体の形状

・車名(通称名)

・型式

・車台番号

・主たる定置場

・所有形態

・申告区分

・取得原因

(2) 軽自動車税申告(報告)書(原動機付自動車・小型特殊自動車)中下記の事項

・申告の理由

・種別

・車名(通称名)

・型式及び年式

・車体番号

・主たる定置場

・販売/譲渡証明年月日

・所有形態

3.固定資産税関係情報

(1) 課税明細書中下記の事項

・資産

・土地又は家屋の所在

・前年度分の課税標準額

・当該年度価格

・当該年度課税標準額

(2) 土地名寄帳中下記の事項

・土地の所在

・地目

・地積

・価格

・課税標準額

(3) 家屋名寄帳中下記の事項

・家屋の所在

・家屋番号

・床面積

・価格

(4) 償却資産申告書(償却資産課税台帳)中下記の事項

・事業種目

・事業開始年月

・取得価額(資産の種類ごと)

・評価額(資産の種類ごと)

・決定価格(資産の種類ごと)

・課税標準額(資産の種類ごと)

・事業所等資産の所在地