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○最終的に宿主に導入されたDNAが、当該宿主と分類学上同一の種に属する微生物のDNAのみである場合又は組換え体が自然界に存在する微生物と同等の遺伝子構成である場合のいずれかに該当することが明らかであると判断する基準に係る留意事項について

(平成26年6月27日)

(食安基発0627第1号)

(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課長通知)

(公印省略)

食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)及び組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査の手続(平成12年厚生省告示第233号)の改正については、平成26年6月27日付け食安発0627第4号により通知されたところであるが、同通知中別添1「最終的に宿主に導入されたDNAが、当該宿主と分類学上同一の種に属する微生物のDNAのみである場合又は組換え体が自然界に存在する微生物と同等の遺伝子構成である場合のいずれかに該当することが明らかであると判断する基準」の取扱いについて、別添のとおり留意事項を作成したので、業務の参考として関係者への周知方よろしくお願いする。

(別添)

最終的に宿主に導入されたDNAが、当該宿主と分類学上同一の種に属する微生物のDNAのみである場合又は組換え体が自然界に存在する微生物と同等の遺伝子構成である場合のいずれかに該当することが明らかであると判断する基準に係る留意事項

「最終的に宿主に導入されたDNAが、当該宿主と分類学上同一の種に属する微生物のDNAのみである場合又は組換え体が自然界に存在する微生物と同等の遺伝子構成である場合のいずれかに該当することが明らかであると判断する基準」(以下「本判断基準」という。)に基づき、最終的に宿主に導入されたDNAが、当該宿主と分類学上同一の種に属する微生物のDNAのみである場合(以下「セルフクローニング」という。)又は組換え体が自然界に存在する微生物と同等の遺伝子構成である場合(以下「ナチュラルオカレンス」という。)のいずれかに該当することを判断する際には、以下に留意すること。

1 本判断基準は、微生物を用いて製造された食品又は添加物であり、使用形態や摂取量を含め、これまでの食経験の範囲内のものである場合が対象であること。したがって、確認しようとするものが、微生物を用いて製造された食品又は添加物でない場合や、微生物を用いて製造された食品又は添加物であっても、使用形態や摂取量を含め、これまでの食経験の範囲内のものでない場合には、本判断基準の対象とはならないこと。なお、添加物製造に用いられた実績がある微生物を食品の製造に用いる場合には、本判断基準の対象とはならないこと。

2 本判断基準の各項目の判断にあたっては、文献、データ等の根拠となる資料の確認により行い、これらを保管すること。詳細については、各項目を参照すること。

3 セルフクローニングと判断するためには、本判断基準の項目1、2、3(1)、4、5(1)及び6の全てに該当することが明らかであること。

4 ナチュラルオカレンスと判断するためには、本判断基準の項目1、2、3(2)、4、5(2)及び6の全てに該当することが明らかであること。

5 上記3及び4について、食品又は添加物の製造に用いる微生物において、発現プラスミドの形で目的遺伝子を導入しない場合には、項目5は必要ないこと。また、食品又は添加物の製造に用いる微生物の構築段階で異種由来ベクターを使用しない場合には、項目6は必要ないこと。

6 本判断基準に該当すると判断した場合にあっても、定期的に新たな知見の有無を確認するなど判断の妥当性を確認すること。

7 本判断基準の各項目に係る留意事項は以下のとおりであること。

(項目1)

1.宿主が、従来から食経験又は食品若しくは添加物製造に用いられた実績がある微生物であり、病原性及び毒素産生性を有しないこと。

○「食経験又は食品若しくは添加物製造に用いられた実績がある微生物」は、食品製造における生産菌として利用経験があることや、食品製造に安全に使用されている実績があること、既存添加物名簿収載品目リスト(「食品衛生法に基づく添加物の表示等について」(平成22年10月20日消食表第377号消費者庁次長通知)別添1)に記載されていること等により確認できること。なお、最終産物である食品及び添加物は使用形態や摂取量を含め、これまでの食経験の範囲内のものであること。

○「病原性及び毒素産生性を有しないこと」は、国立感染症研究所病原体等安全管理規程(平成22年6月 国立感染症研究所)におけるバイオセーフティレベル1に該当すること等で確認できること。なお、大腸菌(E.coli)のように病原性がある株が知られている場合、病原性がない株であることが明らかであること。

(項目2)

2.挿入DNA産物が、従来から食経験又は食品若しくは添加物製造に用いられた実績があるものであり、病原性及び毒素産生性を有しないこと。また、挿入DNAの供与体が病原性及び毒素産生性を有しないこと。

○本項目の確認にあたっては、項目1を参照すること。

(項目3)

3.食品又は添加物の製造に用いる微生物について、その遺伝子構成を有する微生物が自然界に存在すると認められる科学的な根拠があること。具体的には、次の(1)又は(2)に該当することが、①から③のいずれかにより確認されること。

(1) 挿入DNAの供与体及び宿主が同一の種に属する場合。

(2) 挿入DNAの供与体及び宿主が別種と分類されている微生物である場合であって、学術論文等により自然界において両者の間で遺伝子交換が起きていることが明らかになっており、製造に用いる微生物における挿入DNAの供与体と宿主がこの両種に属する場合。

① 査読のある論文に公表されている

② 学会のポジションペーパー等、複数の専門家により根拠のあるものとして紙面にまとめられている

③ 関連する国の審議会、検討会等において、コンセンサスが得られている

*なお、現時点では、判断事例が少ないため、(2)にあっては、挿入DNAの供与体が属する種及び宿主が属する種の組合せについては、これまでに食品安全委員会において組換え体と同等の遺伝子構成を持つ細胞が自然界に存在する場合に該当すると判断したものであること。

○(2)については、なお書きにより確認することとしているが、「これまでに食品安全委員会において組換え体と同等の遺伝子構成を持つ細胞が自然界に存在する場合に該当すると判断したもの」とは、以下の事例をいうこと(平成26年6月現在)。したがって、この組合せ以外の挿入DNAの供与体及び宿主の組合せの場合は、本項目に該当しないこと。この場合、①から③の確認は不要であること。

・Streptomyces violaceoruber、Streptomyces cinnamoneus、

Streptomyces avermitilis 及びStreptomyces azureus

・Bacillus subtilis 及びBacillus amyloliquefaciens

○(1)又は(2)に該当することが確認された後に、微生物の分類学上の変更が生じた場合にも、当該判断は有効であること。

○①の「査読のある論文」には、公開データベース等の塩基配列情報を含むこと。

(項目4)

4.挿入DNA産物と、食経験又は食品若しくは添加物製造に用いられた実績を有するタンパク質とを比較して、アミノ酸配列の変更を伴う塩基置換や塩基配列の付加又は欠失がないこと。

○「食経験又は食品若しくは添加物製造に用いられた実績を有するタンパク質」は、食品製造において利用経験があることや、食品製造に安全に使用されている実績があること、既存添加物名簿(平成8年厚生省告示第120号)に収載されていること等により確認できること。

○「アミノ酸配列の変更」とは、タンパク質のアミノ酸配列におけるアミノ酸の置換、付加又は欠失をいうこと。

○タンパク質の機能を欠失させるために、タンパク質自体が作られないよう塩基配列を欠失させた場合は、比較するタンパク質がそもそも存在しないため、「アミノ酸配列の変更を伴う塩基置換や塩基配列の付加又は欠失がない」と判断できること。

○宿主におけるコドン利用率の最適化などアミノ酸配列の変更を伴わずに塩基配列を変更する場合についても、「アミノ酸配列の変更を伴う塩基置換や塩基配列の付加又は欠失がない」と判断できること。

(項目5)

5.発現プラスミドの形で目的遺伝子を導入する場合においては、その遺伝子構成を有する微生物が自然界に存在すると認められる科学的な根拠があること。具体的には、次の(1)又は(2)に該当することが、①から③のいずれかにより確認されること。

(1) 挿入DNAの供与体、宿主及び発現プラスミドが由来する微生物が同一の種に属する場合。

(2) 挿入DNAの供与体、宿主及び発現プラスミドが由来する微生物が別種と分類されている微生物である場合であって、学術論文等により自然界においてこれらの間で遺伝子交換が起きていることが明らかになっており、製造に用いる微生物における挿入DNAの供与体、宿主及び発現プラスミドが由来する微生物がこれらの種に属する場合。

① 査読のある論文に公表されている

② 学会のポジションペーパー等、複数の専門家により根拠のあるものとして紙面にまとめられている

③ 関連する国の審議会、検討会等において、コンセンサスが得られている

*なお、現時点では、判断事例が少ないため、(2)にあっては、挿入DNAの供与体が属する種、宿主が属する種及び発現プラスミドが由来する微生物が属する種の組合せについて、これまでに食品安全委員会において組換え体と同等の遺伝子構成を持つ細胞が自然界に存在する場合に該当すると判断したものであること。

○「発現プラスミド」とは、新たな性質を付与するために構築された挿入DNAを含むDNA配列であって、宿主のゲノムDNAに組み込まれず、宿主のゲノムDNAと独立に、しかし協調しつつ複製して分裂の際に組換え体に伝達されていくものをいうこと。

○(2)については、なお書きにより確認することとしているが、「これまでに食品安全委員会において組換え体と同等の遺伝子構成を持つ細胞が自然界に存在する場合に該当すると判断したもの」とは、以下の事例をいうこと(平成26年6月現在)。したがって、この組合せ以外の挿入DNAの供与体、宿主及び発現プラスミドの組合せの場合は、本項目に該当しないこと。この場合、①から③の確認は不要であること。

・Streptomyces violaceoruber、Streptomyces cinnamoneus、

Streptomyces avermitilis 及びStreptomyces azureus

・Bacillus subtilis 及びBacillus amyloliquefaciens

○本項目の確認にあたっては、項目3も参照すること。

(項目6)

6.食品又は添加物の製造に用いる微生物の構築段階で異種由来ベクターを使用した場合においては、(1)又は(2)に該当することが確認できること。

(1) 最終的にベクター由来配列が除かれていること。

(2) リンカー配列等としてDNA配列が残存する場合、これを含む領域が転写されないこと。

○「異種由来ベクター」とは、挿入DNAの供与体、宿主及び発現プラスミドが由来する微生物のいずれにも該当しない種に属する微生物に由来するベクターをいうこと。

○「リンカー配列等としてDNA配列が残存する場合」とは、マルチクローニングサイトや制限酵素認識部位等を含む異種由来ベクターに存在するDNA配列が組換え体のゲノムDNAや発現プラスミドに存在する場合をいうこと。

○「ベクター由来配列が除かれていること」や「リンカー配列等としてDNA配列が残存する」ことは、サザンブロット分析やDNA配列解析等により確認できること。

○「これを含む領域が転写されない」ことは、転写産物が検出されないことをノーザンブロット分析やRT―PCR等により確認できること。