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○医薬品の光安全性評価ガイドラインについて

(平成26年5月21日)

(薬食審査発0521第1号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)

(公印省略)

日米EU医薬品規制調和国際会議(以下「ICH」という。)が組織され、品質、安全性及び有効性の各分野で、ハーモナイゼーションの促進を図るための活動が行われているところである。

今般、医薬品の製造販売承認に際して添付すべき非臨床における安全性試験の資料に関し、ICHにおける三極の合意事項として、新たに「医薬品の光安全性評価ガイドライン」を別添のとおり定めましたので、下記事項を御了知の上、貴管内関係業者等に対し周知方御配慮願います。

1.本ガイドラインの要点

(1) 本ガイドラインは、医薬品の光毒性及び光アレルギー検出のために行われる安全性評価の望ましい実施方法を示すものであり、従来の非臨床試験に係るガイドラインを補完するものである。

(2) 本ガイドラインは、新規医薬品有効成分、新規添加剤、経皮投与用臨床製剤(皮膚貼付剤等)、及び光線力学療法用製剤に適用される。

(3) 本ガイドラインで取り扱う内容は、光毒性(光刺激性)及び光アレルギーであり、光遺伝毒性及び光がん原性については取り扱われない。

(4) 光安全性評価の実施については、薬剤開発者に委ねられているが、外来での臨床試験を行う前に、光毒性の初期評価(UV~可視光領域の吸収スペクトルの評価等)の実施が提案・推奨されるほか、必要に応じ、実験的評価(in vitro又はin vivo試験)を実施すべきとされている。

(5) 光安全性評価の方法はフレキシブルであり、様々なアプローチが選択し得る。

別添

医薬品の光安全性評価ガイドライン

目次

1.緒言

1.1 ガイドラインの目的

1.2 背景

1.3 適用範囲

1.4 一般原則

2.光安全性評価において考慮すべき要因

2.1 光化学的特性

2.2 組織分布/ファーマコキネティクス

2.3 代謝物に関して

2.4 薬理学的特性

3.非臨床光安全性試験

3.1 一般的概念

3.2 化学的試験法を用いた光反応性試験

3.3 In vitro試験法を用いた光毒性試験

3.4 全身適用薬のin vivo光安全性試験

3.5 経皮適用薬のin vivo光安全性試験

4.臨床における光安全性評価

5.評価手法

5.1 全身適用薬に推奨される評価手法

5.2 経皮適用薬に推奨される評価手法

6.注釈

7.用語の解説

8.参考文献

1.緒言

1.1 ガイドラインの目的

本ガイドラインの目的は、光安全性評価についての国際的な基準を勧告し、ヒト臨床試験や医薬品の製造販売承認申請に必要とされるこれらの評価の国際的調和をはかることである。本ガイドラインには、光安全性を評価するにあたり考慮すべき要因や追加の評価が必要な場合についても述べており、ICH M3(R2)ガイドライン第14章の「光安全性試験(文献1)」とあわせて読む必要がある。本ガイドラインにより地域間で勧告される光安全性評価に本質的な相違が生じる可能性は少なくなるであろう。

本ガイドラインはいくつかの章に分かれている。第2章では光安全性評価において考慮すべき要因について論じる。第3章では既存の非臨床光安全性試験について説明するが、この章では特定の試験方法について説明しない。第4章では、臨床での光安全性評価について言及する。第5章では、全身曝露を意図して投与する、あるいは経皮投与する医薬品の光安全性を評価する方法を決定するための手法について、第2章、第3章、および第4章で説明した考え方と試験を用いて提示する。

3R(代替法の利用/使用動物数の削減/苦痛の軽減)の原則に従って使用動物数を削減するために、動物を使わない方法あるいは臨床データの活用による光安全性評価を考慮すべきである。

1.2 背景

ICH M3(R2)ガイドラインには、臨床開発に係る光安全性評価の実施時期についての情報が記載されている。当該ガイドラインでは、光毒性の可能性に関する初期評価を行い、必要に応じて、多数の被験者への投与(第Ⅲ相試験)が行われる前に、実験的評価を行うことが推奨されている。同様に、ICH S9 ガイドライン(文献2)には、抗悪性腫瘍薬に関する光安全性試験の実施時期に関する記載がある。しかしながら、ICH M3(R2)ガイドラインおよびICH S9 ガイドラインのいずれにも、具体的な評価手法は述べられていない。本ガイドラインでは、光安全性試験が必要とされる場合および可能な評価手法の詳細を概説する。

1.3 適用範囲

本ガイドラインは、新規医薬品有効成分(API)、新規添加剤、経皮投与用臨床製剤(皮膚貼付剤など)、および光線力学療法用製剤に適用される。

眼に投与される医薬品については、眼の光毒性を予測するin vitro評価手法の信頼性が不明であり、標準化されたin vivo評価手法がないことから、具体的なガイダンスを提供しない(注1を参照のこと)。

光線力学療法に用いられる医薬品については、意図する薬理作用に元来付随する光化学的な活性をもって開発されており、通常、これらについて追加的な光毒性の検討を行う必要がない。しかしながら、光線力学療法に用いられる医薬品においても、患者における適切なリスク管理のために、トキシコキネティクスや組織分布の検討を行うべきである。

本ガイドラインは、一般的に、ペプチド、蛋白質、抗体薬物複合体あるいはオリゴヌクレオチドに適用されない。さらに、すでに市販された成分について、APIあるいは添加剤に新たな懸念要因(錠剤から局所用クリームへの剤型変更など)がなければ、本ガイドラインは適用されない。

1.4 一般原則

医薬品の光安全性評価は、光化学的特性、非臨床試験のデータおよび臨床安全性情報をふまえた統合的なプロセスである。光安全性評価は、ヒトでの有害事象の発生を防ぐために、リスクを最小化する方策が必要とされるかどうかを決定することを目的とする。

光安全性試験との関連で、従来から4つの異なる作用(光毒性、光アレルギー、光遺伝毒性、光がん原性)が議論されてきた。光遺伝毒性(注2を参照のこと)および光がん原性(ICH M3(R2)ガイドラインの注6)の試験については、ヒトの医薬品に関して、現状で有用でないと考えられている。本ガイドラインでは、以下に定義する光毒性と光アレルギーの作用のみを扱う。

・ 光毒性(光刺激性):光照射によって産生される光反応性物質に対する急性の組織反応。

・ 光アレルギー:光化学反応によって蛋白質付加体などの光反応生成物を形成し、それにより引き起こされる免疫を介した反応。

光感作性とは、光照射により惹起される組織反応に対し、時折使用される一般用語である。しかしながら、本ガイドラインでは、光毒性と光アレルギーを明確に区別するために、光感作性という用語を用いないこととする。

化学物質が光毒性や光アレルギーを示すためには、以下の性質が重要である。

・ 太陽光の波長内(290―700nm)に光の吸収帯が存在する。

・ UVあるいは可視光の吸収により、反応性に富んだ分子種を形成する。

・ 光に曝露される組織(皮膚や眼)に十分な量が分布する。

これらの条件の一つでも当てはまらない場合には、通常その化合物は光毒性の懸念を直接呈することがないと考えられる。しかし、光に対する皮膚の感受性亢進が間接的メカニズムにより起きることもある。本ガイドラインで概説する試験は、一般的にそのようなメカニズムに対応していない(第2.4項も参照すること)。

2.光安全性評価において考慮すべき要因

2.1 光化学的特性

光反応性を評価するためには、まず、化合物が290から700nmの間の波長で光を吸収するか否かについて考慮する。290から700nmの波長においてモル吸光係数(MEC)が1000L mol-1cm-1を上回らない化合物(文献3)については、直接的光毒性を引き起こすほどの光反応性がないと考えられる(詳細については注3を参照のこと)。

光による分子の励起は、エネルギー転移メカニズムにより、スーパーオキシドアニオンや一重項酸素を含む活性酸素種(ROS)を生成する。光反応性により別の分子(光付加体や細胞毒性を持つ光反応物質の形成など)を生じることもあるが、その場合であっても、通常は、同様にROSが生成されると考えられる。このため光(UV~可視領域)の照射によるROS生成は、光毒性の指標となりうる。

光安定性試験(文献4)も光反応性を示唆しうる。しかしながら、これらの条件下ですべての光反応性物質を検出することはできず、光により分解することがそのままその薬剤の光毒性を示唆するわけではない。このため、光安定性試験だけでは、さらなる光安全性評価を必要とするかどうかを決めるべきでない。

光化学的特性の評価は、データの収集記録を容易に確認できる、科学的に質の高い基準で実施されるか、またはGLP/GMPに準拠して実施されるべきである。

2.2 組織分布/ファーマコキネティクス

光照射時に組織に分布する光反応性物質の濃度は、光毒性反応が生じるか否かを決定する非常に重要な薬物動態学的パラメータである。この濃度は、化学物質の血漿中濃度や、組織内の血流、血管から間質および細胞への分配、さらに組織内での結合、貯留および蓄積などの様々な要因に依存している。曝露期間は、血漿や組織内半減期に反映されるクリアランス速度に依存する。全体として、これらのパラメータによって光反応性物質の組織内における平均滞留時間が決まる。

化合物の組織内での結合、貯留あるいは蓄積は、光毒性反応にとって決定的なものでない。光反応性が十分に高い分子であれば、血漿中あるいは細胞間質液中で到達する濃度において光毒性反応を生じる可能性がある。しかしながら、血漿中半減期が長い化合物や日光に曝される組織に長時間滞留する化合物、あるいは組織/血漿濃度比が高い化合物は、半減期や滞留時間が短い、あるいは組織/血漿濃度比が低い化合物よりも光毒性反応を引き起こしやすい。さらに、光化学反応が生じるのに必要な化合物濃度を超えている時間が長ければ長いほど、ヒトは、より長く光毒性のリスクに曝される。

光毒性反応のリスクを無視できるという組織濃度の閾値は、科学的に存在し得るが、現在のところ、すべての化合物に適用できる一般的な閾値を設定し得るだけのデータがない。しかしながら、ヒトにおける実際の、あるいは予想される組織内濃度に基づき、また、上述の要因を考察することによって、さらなる光安全性評価を必要としないと判断することは、ケースバイケースで可能である。その例としては、1)全身の総曝露量が非常に低い薬剤、あるいは2)血漿中半減期や組織滞留時間が非常に短い薬剤などが挙げられよう。

化合物の組織構成要素(たとえば、メラニンやケラチン)への結合は、組織での貯留や蓄積が生じるメカニズムの一つである。メラニンとの結合により組織での化合物濃度は増加するが、メラニン結合性のある薬剤に関するこれまでの経験から、メラニン結合性のみでは光安全性に対する懸念にならないことが示唆されている。

単回投与による組織分布試験において、投与後の複数の時点で動物を調べることにより、一般的には、組織/血漿濃度比、組織滞留時間、滞留と蓄積のポテンシャルについて適切な評価が可能になる。そのような試験において血漿中あるいは組織中薬物濃度の消失半減期を明らかにするためには、評価のタイムポイントを適切な間隔で設定すべきである。

可視光により活性化され、内部組織における消失半減期の長い化合物に関しては、医学的処置中に強い光の照射を受けてこれらの組織に損傷を生じる場合があることが知られている。従って、光線力学療法に用いる医薬品のように、可視光で活性化されin vivoで強い光毒性を有する化合物や、あるいは作用機序に基づいて光毒性を有することが知られている化合物では、内部組織における分布を測定し、組織特異的半減期を推定すべきである。UV領域にのみ吸収を有する薬物や組織からの消失半減期が短い薬物については、光反応性を有することが知られていても内部組織におけるリスクを惹起することがないであろう。

2.3 代謝物に関して

代謝により親化合物と大幅に異なるクロモフォアが生じることは通常ないことから、一般的に代謝物について別途光安全性評価を行う必要はない。

2.4 薬理学的特性

多くの場合、薬物誘発性の光毒性は、化学構造に起因するものであり、薬理作用によるものでない。しかしながら、ある種の薬理学的特性(たとえば、免疫抑制作用、ヘム代謝の撹乱作用)を持つ場合は、皮膚刺激やUV誘発性皮膚腫瘍形成など、光誘発性作用に対する感受性を増幅する可能性がある。本ガイドラインに概説されている試験手法は、このようなタイプの間接的なメカニズムを検出するものでない。これらの間接的なメカニズムの中には、他の非臨床の薬理/毒性試験により確認され、評価できるものがある。しかしながら、間接的メカニズムに関連した光毒性には、その他に、ヒトでの使用経験の中で初めて明らかになるものもある。

3.非臨床光安全性試験

3.1 一般的概念

非臨床光安全性試験に関しては、モデルシステムと適切な照射スペクトルの両方を考慮した試験条件を慎重に選択することが重要である。理想的に、非臨床試験法は、高い感度と特異度の両方(すなわち、低い偽陰性率と偽陽性率)を有していることが望ましい。しかしながら、本ガイドラインに述べられている評価を行うために最も重要なことは、非臨床光安全性試験が、偽陰性の頻度が低くなるような高い感度(すなわち、高い陰性予測率)を有していることである。なぜなら、陰性結果の場合、通常さらなる光安全性評価を求められないからである。現在利用可能な非臨床試験法はin vitroおよびin vivo共に、主に潜在的な光毒性を検出することに重点を置いているものであり、臨床的な光毒性に、必ずしもそのまま外挿できるとは限らない。

照射条件の選択は、in vitroおよびin vivo試験法のいずれにおいても重要である。我々が通常曝露されている太陽光は、非常に幅広いスペクトルを有している。しかしながら、太陽光は、明確に定義されたものでなく、緯度、標高、季節、時刻、天候などの様々な要因によって変化し得る。さらに太陽光に対するヒトの皮膚の感受性も、様々な要因(たとえば、スキンタイプ、解剖学的部位、日焼けの度合い)によって変化し得る。

標準的な太陽光の照射条件については、様々な機関において定義されてきた。ソーラーシミュレータの光源の適切性を評価するためには、そのような標準規格(たとえば文献5)を参照すべきであり、照度と照射量を照射スペクトルのUVA領域に基づいて標準化すべきである。現行のin vitroおよびin vivoの光毒性試験法では、UVAで5~20J/cm2の範囲の照射量が用いられている。このUVA照射量は、夏の昼間に、温帯地域の海抜ゼロ地点で長時間の屋外活動を行った場合に相当する。通常、ヒトでは、UVBで生じる日焼け反応により全体的な光照射量が制限されている。しかしながら、非臨床光毒性試験法では、UVB照射量によって全体の照射量が制限されるべきでなく、試験法の感度を下げずに十分なUVA照射量での試験を行うために(部分的にフィルターをかけることにより)UVB量を減少させることもある。ヒト皮膚におけるUVBの曝露は表皮に限定されるのに対し、UVAは毛細血管中の血液にまで到達する。それゆえに、全身適用される医薬品においては、UVAに比べUVBによる光化学的な活性化が臨床上重要でないと考えられている。しかしながら、光曝露を受ける組織に塗布される局所適用製剤の場合には、UVB照射にも考慮する必要がある。

適切な光源(スペクトル分布、照度、および照射量)の選択とモニタリング、および用いる手順については、試験方法に明確に記載されていなければならない(例、文献6)。

3.2 化学的試験法を用いた光反応性試験

医薬品開発者が光反応性評価の実施を選択した場合には、試験法の感度が適切であることを医薬品を用いて検証するべきである。そのような試験法の一つが、たとえば文献7に記載されているROSアッセイである。データからは、この試験法はin vivoにおける直接的な光毒性物質を予見する上での感度が高いことが示されている。しかし、偽陽性結果の割合が高いことから、特異度は低い。200μMの試験濃度で、適切な条件下で実施された場合、この試験法での陰性結果は光毒性の懸念が非常に低いことを示すが、陽性結果は(どの濃度であっても)追加的評価を考慮すべき指標と考える。

3.3 In vitro試験法を用いた光毒性試験

化学物質の光毒性誘発能を評価するために、多くのin vitro試験法が開発されてきた。これらの試験法の一部は、医薬品の評価に用いるための検証が行われていない。ある試験法は評価化合物を培養液に溶解して用いる試験法であり、このような方法の適格性は化合物の溶解性に依存するが、薬物中の有効成分や添加物の評価に適することが多い。その他に、組織表面へ直接適用される試験法もあり、これらは、局所投与を意図した製剤全体としての評価に適切であろう。

最も広く用いられているin vitroの光毒性試験法は3T3ニュートラルレッド取り込み光毒性試験(3T3 NRU PT)であり、これに関しては該当するOECDガイドライン(文献6)がある。この手法は、水溶性物質に関して現在もっとも適切なin vitroスクリーニング手法であると考えられている。

この試験法に関してECVAMの実施した正式のバリデーションでは高い感度(93%)と高い特異度(84%)が示されたが、企業体は経験的に特異度についてより低いものと考えている。OECDガイドラインは、特に医薬品に関して検証されたものでない。医薬品の低い特異度に対処するためには、OECDガイドラインを一部改変することが提唱されている(注4を参照のこと)。提唱されたこれらの改変は、医薬品の試験として適切である。3T3 NRU PTの感度は高く、この試験法で陰性結果が得られた化合物についてはヒトで光毒性を生じる懸念が非常に低いと考えられる。しかしながら、3T3 NRU PTで陽性結果が得られた場合は、臨床的な光毒性を必ずしも示唆するものでないが、追加的評価を考慮すべき指標と考えるべきである。

BALB/c 3T3細胞はUVBによる傷害を受けやすいため、光照射にあたっては320nm以下の光を減衰するフィルターの使用が当初推奨されていた(文献6)。しかしながら、用いられる光源とフィルターを適切に設定することによって、UVB対UVAの比率を調整し、UVBによる光毒性の評価を可能とすることができる。UVBはほとんど表皮より下に到達しないことから、UVBによる光毒性は全身適用される医薬品においてほとんど問題とならない。しかしながら、UVBによる光毒性は、局所適用される製剤に関係してくる。UVB域の波長を主に吸収する局所製剤でin vitroの評価を必要とする場合には、改変した照射条件(上記参照)で3T3 NRU PTを実施しても良い。あるいは、UVB耐性のより高いin vitroの皮膚モデルを用いても良い。

角質層を有するヒト皮膚の再構築モデルを用いれば、原薬から最終的な臨床製剤に至るまでの様々な局所適用物質の試験が可能となる。再構築ヒト皮膚を用いてこれまでに開発された試験法は、照射の有無により細胞の生死を測定するものである。そのような試験法では、ヒト皮膚に対する既知の急性光毒性物質を検出することが可能であると考えられる。しかし、in vivoのヒト皮膚よりも感受性が低く、陽性反応を生じる最低用量が高い試験法もある。したがって、使用する試験法の感度を理解し、より高濃度の製剤の使用や照射時間の延長など、妥当かつ可能な試験法の条件を適宜調整することが重要である。

投与経路によらず、眼における光毒性を特異的に評価できるin vitroモデルは存在しない。3T3 NRU PTやヒト皮膚再構築試験法で陰性結果が得られれば、リスクが低いことを示唆できるかもしれないが、眼の光毒性に対するこれらの試験法の予測性は不明である。

3.4 全身適用薬のin vivo光安全性試験

全身適用薬の光毒性試験は、モルモット、マウス、ラット等の様々な動物種で実施されている。標準的試験デザインは確立されていないため、以下に述べる要素を現時点で最良の方法として使用しても差し支えない。

動物種の選択にあたっては、照射に対する感受性(最小紅斑量)、熱に対する忍容性、対照物質における成績を考慮すべきである。有色およびアルビノのいずれの動物モデルも利用可能である。光毒性の検出のためには、アルビノのほうが有色動物よりも感受性が高い傾向があるが、標的組織に十分な曝露が行えない場合、メラニンに著しく結合するAPI(第2.2項を参照のこと)に対して有色動物の使用を考慮すべきである。

In vivoの光毒性試験を実施する場合には、試験をデザインする前に、化合物の薬物動態学的プロファイルに関する情報を得ておくことが望ましい。これは、動物への照射をTmax付近にて確実に行い、意図する臨床曝露に対応して適切な試験期間を選択できるようにするためである。関連する薬物動態学的データをまだ入手していない場合には、in vivo光毒性試験の一環として収集すべきである。

光毒性は、通常、急性反応であるが、in vivoの試験法の試験期間について慎重に考えるべきである。光に曝露される組織における反復投与後の化合物の蓄積は、光毒性反応を増大させる可能性がある。同様に、各投与後の反復照射も、損傷の蓄積により光毒性反応を増大させる可能性がある。一般に、可能であれば臨床で用いられる投与経路を使い、試験の投与期間は1日あるいは数日間までとするので十分である。投与後(Tmax付近で)の照射については、単回あるいは連日反復実施のいずれを選択してもよい。

全身適用薬の非臨床in vivo光毒性試験における投与量を選択する際には、ヒトでのリスクアセスメントに資するものとすべきである。これらの試験における最高投与量は、ICH M3(R2)ガイドライン第1.5項に示されている一般毒性試験で推奨される投与量の規定に準じて決定することが適切と考える。最大投与量において陰性結果が得られる場合、通常、低用量での検討は必要でない。しかしながら、陽性結果が予測される場合は、追加的用量群を設定することにより、Cmaxの比較を考慮しつつ、無毒性量に基づくリスクアセスメントを行うことが可能となる。溶媒対照群および非照射投与群の設定により、化合物に関連した光毒性を特定し、照射によらず誘導される有害事象と照射により誘導される有害事象を識別することができる。動物で設定可能な最大全身曝露量が臨床曝露量を下回る場合は、陰性結果が得られたとしても、ヒトでのリスクを予測する上で信頼性に疑問が残る。

通常、紅斑発現照射量の閾値未満の照射において、化合物により誘導されるもっとも鋭敏な光毒性の初期徴候は、紅斑とその後に発現する浮腫である。反応の種類は、化合物により異なる可能性がある。光毒性反応が確認された場合は、それぞれにつき用量および時間依存性の評価を行い、可能であれば、無毒性量を決定すべきである。追加的エンドポイント(皮膚の初期炎症マーカー、急性の刺激性を示唆するリンパ節の反応など)を設定することにより、ハザードの特定が可能になるかもしれない。

400nm超の光を吸収する全身適用薬に関して、動物で光毒性試験を行う場合に、網膜の光毒性は、詳細な病理組織学的評価を用いて検討すべきである。400nm未満の光しか吸収しない化合物に関しては、そのような光の角膜、水晶体および硝子体での透過が限定的であり、成人の網膜に到達しないことから、網膜における評価を通常必要としない。

In vivo光毒性試験は、正式に検証されていないため、医薬品を含む適当な陽性対照物質を用いることにより、適切に使用できることを示す必要がある。試験法の適切性を確立するためには、ヒトにおいて光毒性を示し、複数の化学的分類および光毒性発現機序からなる化合物を含めて検証すべきである。網膜光毒性に関する陽性対照物質としては、可視光領域(400nm超)に吸収を有するものが推奨される。あるin vivo試験法が正式に検証されるか、あるいは一般に受け入れられ、試験実施施設で確立されている場合には、各試験における陽性対照物質の同時使用を必要としない。

全身適用薬についての光アレルギー試験は推奨されない。全身適用後のヒトにおける光アレルギー反応はまれであり、全身適用薬に関する非臨床光アレルギー試験法は確立されていない。

3.5 経皮適用薬のin vivo光安全性試験

動物種の選択や、試験期間、照射条件など、全身投与における評価の場合に推奨される内容が、経皮投与の場合においても適用される。経皮適用薬では、一般的に臨床製剤を用いた試験を行うべきである。可能な限り、予定される臨床投与条件を採用する。

曝露部位への照射は投与後、特定の時間に行うべきであり、投与から照射までの間隔は製剤の特性に基づいて決定すべきである。光毒性の兆候は、適切なエンドポイントに基づいて評価すべきである(第3.4項を参照のこと)。試験法の感度については、適切な陽性対照物質を用いて示すべきである。経皮適用薬の光毒性試験において、全身的な薬物濃度の評価は一般的に必要ない。

経皮投与の医薬品の場合、接触光アレルギーについては急性光毒性(光刺激性)と共に、非臨床試験で評価されてきた。しかし、このような試験法の正式なバリデーションは行われていない。これらの試験で観察される急性光刺激はヒトにも関係すると考えられるが、ヒトの光アレルギーに対して、これらの試験の予測性は不明である。製造販売承認申請のためには、非臨床光アレルギー試験が一般的に推奨されない。

4.臨床における光安全性評価

ヒトでのデータ収集が必要とされる場合には、臨床試験での標準的な有害事象報告から、光安全性に目的を絞った臨床試験にわたる多くのオプションが存在する。詳細な方法についてはケースバイケースで決定される。

5.評価手法

光安全性評価の方法の選択は、薬剤開発者に委ねられている。ICH M3(R2)ガイドラインでは、外来での臨床試験に先立ち、光化学的性質および薬理学的/化学的分類に基づく光毒性の初期評価を行うよう提案している。UV~可視光領域の吸収スペクトルの評価は、これを行えばさらなる光安全性評価を行う必要がなくなる場合もあることから、初期評価の手法として推奨される。さらに、ヒトへのリスクおよび追加的試験の必要性に関してさらに多くの情報を得るためには、皮膚および眼への分布を評価してもよい。その後、必要ならば、光毒性の実験的評価(in vitro、in vivo試験あるいは臨床的な評価)を多数の被験者への曝露(第Ⅲ相試験)を行う前に行うべきである。

図1に光毒性評価方法の概要を示す。図は、本ガイドラインの本文で概説された評価方法に基づく。評価方法はフレキシブルである。特定の状況において、評価の一部は任意であり、行う必要がない場合もある。

図1 全身および皮膚経路で投与される医薬品に関して考えられる光毒性評価方法の概要

 データにより光毒性の懸念が小さいことが立証されない、あるいはデータがない(試験法/試験/評価が行われない)場合を指す。

 適切に行われたin vivo光毒性試験における“陰性”の結果は、in vitroでの陽性結果に優先する。適切に実施された臨床光安全性評価で懸念が示されなかった場合は、非臨床での陽性結果に優先する。In vitro光毒性試験における陽性結果は、組織分布データにより、有効性を失う場合がある(本文参照)。米国では、皮膚適用される製品に関しては、市販予定製剤を用いた光安全性の臨床評価が必要になる場合がある。

 臨床試験での一般的有害事象報告から、光安全性評価のための臨床試験まで及ぶ。

§ 組織分布は皮膚適用する医薬品の光毒性のための考慮事項でない。

5.1 全身適用薬に推奨される評価手法

5.1.1 光毒性ポテンシャルの評価

その物質のMECが1000L mol-1cm-1(290―700nm)を超えない場合、光安全性試験の実施は推奨されず、ヒトにおいて直接的光毒性は発現しないものと考えられる。しかしながら、まれではあるが、間接的メカニズムによる光毒性(偽ポルフィリン症やポルフィリン症など)が起きる可能性が排除できないことに注意すべきである。MECが1000L mol-1cm-1以上である化合物に関しては、薬剤開発者が光反応性試験の実施を選択する場合、陰性結果によってそれ以上の光安全性評価を不要とする判断を支持することができる(第3.2項を参照のこと)。それ以外の場合には、その物質の非臨床/臨床光安全性評価を実施すべきである。化学的分類上関連する化合物の光毒性に関して入手可能なデータについては、取るべきアプローチに関する情報がそこから得られる可能性があるので、評価すべきである。

5.1.2 光毒性の実験的評価

3Rの原則に従って動物の使用を減らすために、動物試験を行う前に、一般的には検証されたin vitroの評価法を考慮すべきである(たとえばDirective 2010/63/EUを参照のこと)。薬剤開発者がin vitroのアプローチを選択する場合、現在のところ、3T3 NRU PTが最も広く用いられている試験法であり、多くの場合、最初の光毒性試験として考慮される。感度の高い3T3 NRU PTは陰性結果の予測性に優れていることから、陰性結果はその化合物に光毒性がないとする十分な証拠として一般に受け入れられている。この場合、さらなる試験の実施は必要なく、ヒトへの直接的な光毒性は発現しないものと考えられる。

いくつかの条件下(たとえば難水溶性化合物)では、光毒性の初期評価としてin vitroの試験法を用いるのが適切でない場合がある。この場合には、動物またはヒトを用いた評価が考慮される。あるいは、薬剤の分布データが入手できる場合には、ケースバイケースであるものの、それ以上の光安全性評価を不要とする判断を支持することができる(第2.2項を参照のこと)。

In vitroの光毒性評価法にて陽性結果が得られた場合、in vitroで検出された光毒性のin vivoにおける反応との関連性を評価するために、動物を用いた光毒性試験を実施することが可能である。あるいは、薬剤の分布データにより、in vivoにおける光毒性のリスクが非常に低いと判断される場合には、それ以上の光安全性評価を不要とする判断を支持することができる(第2.2項を参照のこと)。又は、別の選択肢として、光安全性リスクを臨床において評価したり、光防御手段を利用して管理することも可能である。

適切に実施された動物あるいはヒトにおける光毒性試験の陰性結果は、in vitroの陽性結果よりも優先される。そのような場合、さらなる試験実施は必要なく、ヒトにおいて直接的光毒性は発現しないものと考えられる。動物試験において陽性結果が得られた場合でも、Cmaxの比較を考慮した無毒性量に基づくリスク評価により、ヒトでの直接的光毒性が発現する懸念が少ないと判断できることもある。それ以外の場合には、臨床評価が必要とされる。いずれの場合においても、適切に実施された臨床光毒性評価で問題がないことが示された場合は、非臨床での陽性結果よりも優先される。In vitroの光毒性試験における陽性結果は、その後に化学的光反応性試験(ROSアッセイなど)で陰性結果を得たとしても覆されない。

動物を用いた光毒性試験あるいは臨床光毒性試験がすでに実施されている場合は、その後に化学的光反応性試験あるいはin vitro光毒性試験を実施する必要がない。

5.2 経皮適用薬に推奨される評価手法

5.2.1 光毒性ポテンシャルの評価

有効成分および添加剤のMECが1000L mol-1cm-1(290―700nm)を超えない場合は、さらなる光安全性試験の実施が推奨されず、ヒトにおいて光毒性が発現しないものと考えられる。MECが1000L mol-1cm-1以上の化合物についても、光反応性試験(ROSアッセイなど)で陰性結果が得られた場合、さらなる光安全性評価を必要としない場合がある(例外については注5を参照のこと)。それ以外の場合には、その物質の非臨床/臨床光安全性評価を実施すべきである。化学的分類上関連する化合物の光毒性に関して入手可能なデータについては、取るべきアプローチに関する情報がそこから得られる可能性があるので、評価すべきである。

経皮投与製剤の光毒性に関して、組織分布は、考慮すべき要因とならない。経皮投与製剤は、皮膚に直接適用されることから、塗布される部位が通常光に曝露されない場合を除き、光に曝露される組織に分布すると見なされる。

5.2.2 光毒性および光アレルギーの実験的評価

適切な試験条件(たとえば、溶解性の低さに起因する濃度制限がないこと、適切なUVB照射量が確保できること)が得られるのであれば、3T3 NRU PTをAPIおよび新規添加剤、それぞれの光毒性評価に用いることができる。光毒性のある成分がin vitroで特定されなかった場合には、その臨床製剤における光毒性ポテンシャルが全体として低いものと考えて差し支えない。

臨床製剤において光毒性反応に影響を与えるような性質(たとえば皮膚透過性や細胞内への取り込み)の一部は、3T3 NRU PTのみで評価することができない。したがって、臨床製剤を用いた評価や、臨床試験のモニタリング結果により、総合的な陰性結果の確認が必要である。

再構築されたヒト皮膚モデルは、臨床製剤の光毒性の評価に使用可能である。再構築されたヒト皮膚試験法で適切な条件下(第3.3項を参照のこと)において陰性結果が得られた場合には、その製剤の直接的光毒性ポテンシャルが低いとみなすことができる。この場合、一般にさらなる試験実施は必要ない(例外については注5を参照のこと)。

適切なin vitro試験法がない場合には、初期評価から臨床製剤を用いてin vivoの光毒性試験を実施してもよい。適切に実施されたin vivo動物試験で陰性結果が得られた場合には、当該製剤が直接的光毒性を有さないと判断して差し支えなく、さらなる光毒性試験を実施する必要がない(例外については注5を参照のこと)。あるいは、光毒性ポテンシャルを臨床的に評価しても差し支えない。

290から700nmの間のどの波長でもMECが1000L mol-1cm-1を上回るAPIあるいは新規添加剤を含む経皮投与製剤については、光毒性に加え、光アレルギーの評価が一般的に必要とされる。非臨床光アレルギー試験の予測性は不明であるため、一般的には市販予定製剤を用いた臨床評価として、第Ⅲ相試験の中で実施される。

局所曝露を目的に皮膚貼付剤として適用される臨床製剤の光安全性評価は、上記の経皮投与される臨床製剤に関する原則に従って行う。全身曝露を目的とした皮膚貼付剤に関しては、皮膚適用薬と全身適用薬の両者に関する原則を適用する。さらに、全体的リスク評価においては、意図する臨床における用法(使用時に奨励される皮膚領域、適用期間など)や貼付剤基剤の特性(UVと可視光を通さないなど)を考慮する。

6.注釈

注1:該当する波長を吸収し、MECが1000L mol-1cm-1を超える眼に投与される化合物(点眼薬、眼内投与される薬剤など)については、光毒性ポテンシャルの評価を、光毒性評価の一般原則に従って行うべきである。眼における薬剤の分布および眼の光学的特性も考慮すべきである。化合物あるいは化学的分類上関連する化合物に関して入手できるすべてのデータは、総合的評価の中で考慮すべきである。

400nm未満の波長の光だけを吸収し、水晶体よりも後方(硝子体など)に眼内投与される化合物に関しては、成人の後眼部に到達する光が400nm以上に限られることから、網膜光毒性に関する懸念が少ない。しかしながら、およそ10歳未満の小児の水晶体は400nm未満の波長の光を完全には防御しない。

注2:光遺伝毒性試験を標準的な光毒性試験プログラムの一部として実施することは推奨されない。過去にいくつかの地域的なガイドライン(たとえばCPMP/SWP/398/01)では、特にin vitroのほ乳類細胞を用いた光染色体異常誘発性試験(染色体異常試験あるいは小核試験)の実施を推奨していた。しかしながら、CPMP/SWPガイドラインが発行されて以降のこれらのモデルにおける経験より、これらの試験は感度が過剰に高く、光染色体異常の偽陽性結果が生じることが報告されてきた(文献8)。さらに、光遺伝毒性試験データの解釈、すなわち臨床的に関連性のあるUV依存性の皮膚がん増加に対する意義は不明瞭である。

注3:MEC測定のための標準化された条件は非常に重要である。適切な溶媒の選択について、分析に必要な条件(たとえば溶解性やUV~可視領域の光の透過性)と生理学的な妥当性(たとえばpH7.4の緩衝液)の両面から決定すべきある。メタノールは望ましい溶媒として推奨されており、MECの閾値を1000L mol-1cm-1とする際に用いられた(文献3)。UV~可視領域の光のスペクトルを測定する際には、潜在的な限界(たとえば、高濃度あるいは低溶解性に起因するアーティファクト)について考慮すべきである。もし、分子中のクロモフォアがpH感受性を有すると考えられる場合(たとえば、フェノール構造や芳香族アミン/カルボン酸など)には、水性のpH7.4の緩衝条件下で追加的スペクトル測定を行うことにより、吸光スペクトルやMECの差異に関する有益な情報が得られる。メタノール中での測定とpH調整条件での測定の間に有意な差が認められた場合には、1000L mol-1cm-1というMECの閾値を用いることはできない。

注4:製薬企業体が実施した調査では、OECD TG 432に述べられている3T3 NRU PTにおいて高い割合(約50%)で陽性結果が得られ、その大部分が動物やヒトでの反応と関連しないことが示されている(文献9)。医薬品のデータの遡及的調査を受けて、試験の最高濃度を1000から100μg/mLに下げることが適切とされた(文献10)。光照射条件下でこの濃度まで細胞毒性を示さない化合物は光毒性を有さないと考えて差し支えない。さらに、全身適用薬では、OECD TG 432で「光毒性の可能性あり」とされるカテゴリー(すなわちphoto irritation factor(PIF)値が2~5の間、あるいはmean photo effect(MPE)値が0.10~0.15の間)の場合、毒性学的関連性が疑わしい。このカテゴリーに含まれる化合物に関しては、一般的に光安全性評価をさらに行う必要がない。PIF値が2~5の化合物で照射なしでIC50を測定することができない場合には、MPEの計算で陽性に分類されないこと、すなわちMPEが0.15未満であることを確認することが重要である。

光に当たるヒト組織で到達すると考えられる濃度よりもかけ離れて高いin vitro濃度のみで3T3 NRU PTが陽性となった全身適用薬に関しては、ケースバイケースで、また規制当局との協議の上、追加のin vivo試験を行わずに、ヒトでの光毒性に関して「低リスク」であると考えることができる場合もある。

注5:米国では皮膚適用される製品に関しては、製品認可に必要な市販予定製剤(APIおよびすべての添加剤)を用いた光毒性(光刺激性)臨床試験が必要となる場合がある。

7.用語の解説

3T3 NRU PT:In vitro 3T3 Neutral Red Uptake Phototoxicity Test(3T3ニュートラルレッド取り込み光毒性試験)。

評価:本ガイドライン内の意味としては、入手できるすべての情報を用いて判断を行うことであり、必ずしも追加試験を実施することを意味するわけでない。

クロモフォア:可視光あるいはUVを吸収する分子の部分構造。

経皮適用薬:皮膚に局所適用される医薬品。

直接的光毒性:医薬品あるいは添加剤が光を吸収することにより引き起こされる光毒性。

間接的光毒性:医薬品あるいは添加剤により引き起こされる細胞学的、生化学的、生理学的変化による光毒性であるが、医薬品あるいは添加剤の光化学的反応に関連しないもの(ヘム代謝の撹乱など)。

照度:照射されるUVあるいは可視光の単位面積当たりの強度であり、W/m2あるいはmW/cm2で表される。

照射:ある物体がUVあるいは可視光に曝露される過程。

MEC:Molar Extinction Coefficient(モル吸光係数)は、ある特定の波長において分子が光子を吸収できる効率を反映し(通常L mol-1cm-1で表される)、溶媒などいくつかの要素による影響を受ける。

MPE:Mean Photo Effectは、3T3 NRU PTの結果から算出される。MPEは完全な濃度反応曲線との比較に基づく(OECD TG 432を参照)。

NOAEL:No Observed Adverse Effect Level(無毒性量)。

OECD TG:経済協力開発機構試験法ガイドライン。

外来での臨床試験:患者が臨床試験実施施設に拘束されない臨床試験。

光反応生成物:光化学反応の結果として生じる新規化合物/構造。

光反応性:光の吸収の結果として他の分子と反応する化学物質の性質。

PIF:Photo Irritation Factorは3T3 NRU PTの結果から算出される照射時および非照射時のIC50値の比。

ROS:Reactive Oxygen Speciesはスーパーオキシドアニオンや一重項酸素などを含む活性酸素種。

全身適用薬:全身曝露を意図して投与される医薬品。

UVA:紫外線A(波長320―400nm)。

UVB:紫外線B(波長280―320nm;地上に到達する太陽光の一部としては波長290―320nm)。

8.参考文献

1.ICH M3(R2) Guideline:Guidance on Nonclinical Safety Studies for the Conduct of Human Clinical Trials and Marketing Authorization for Pharmaceuticals;June 2009.

2.ICH S9 Guideline:Nonclinical Evaluation for Anticancer Pharmaceuticals;Oct.2009.

3.Bauer D,Averett LA,De Smedt A,Kleinman MH,Muster W,Pettersen BA,Robles C.Standardized UV-vis spectra as the foundation for a threshold-based,integrated photosafety evaluation.Regul Toxicol Pharmacol 2014;68(1):70-5.

4.ICH Q1B Guideline:Stability Testing:Photostability Testing of New Drug Substances and Products;Nov.1996.

5.CIE-85-1989:Solar Spectral Irradiance;Jan.1989.

6.OECD(2004),Test No.432:In vitro 3T3 NRU Phototoxicity Test,OECD Guidelines for the Testing of Chemicals,Section 4,OECD Publishing.

7.Onoue S,Igarashi N,Yamada S,Tsuda Y.High-throughput reactive oxygen species(ROS)assay:An enabling technology for screening the phototoxic potential of pharmaceutical substances.J Pharm Biomed Anal 2008;46(1):187-193.

8.Lynch AM,Robinson SA,Wilcox P,Smith MD,Kleinman M,Jiang K,Rees RW.Cycloheximide and disulfoton are positive in the photoclastogenicity assay but do not absorb UV irradiation:another example of pseudophotoclastogenicity? Mutagenesis 2008;23(2):111-118.

9.Lynch,AM,Wilcox,P.Review of the performance of the 3T3 NRU in vitro phototoxicity assay in the pharmaceutical industry.Exp Toxicol Pathol 2011;63(3):209-214.

10.Ceridono M,et al.Workshop Report:The 3T3 neutral red uptake phototoxicity test:Practical experience and implications for phototoxicity testing-The report of an ECVAM-EFPIA workshop.Regul Toxicol Pharmacol 2012;63(3):480-488.