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○生活保護制度における第三者行為求償事務について

(平成26年4月18日)

(社援発0418第354号)

(各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長あて厚生労働省社会・援護局長通知)

(公印省略)

生活保護法の一部を改正する法律(平成25年法律第104号)の施行に伴い、今後、第三者行為を原因とする負傷等に対して医療扶助又は介護扶助の給付があった場合には、生活保護法(昭和25年法律第144号)第76条の2の規定に基づき、当該給付に係る費用の限度において生活保護受給者が有する損害賠償請求権を代位取得することとなり、その加害者及び当該者が加入する損害保険会社等に対し、求償を行うことができることとなる。

これを踏まえ、当該求償事務処理の例として、別添「生活保護制度における第三者行為求償事務の取扱要領」を策定したので、これについて御了知の上、管内市町村に対し、その周知を図るとともに、当該要領を参照の上、その運用に遺漏のないようにされたい。

なお、当該求償事務に関しては、更にその事務処理の詳細について、別途示すこととするので御了知願いたい。

(別添)

生活保護制度における第三者行為求償事務の取扱要領

第1 趣旨

自動車による交通事故等の第三者行為に関し、地方自治体が生活保護法第76条の2の規定に基づき、生活保護受給者が加害者又は当該者が加入する損害保険会社等(以下「第三者」という。)に対して有する損害賠償請求権を取得した場合において、地方自治体と加害者又は自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号)に基づく自動車損害賠償責任保険若しくは自動車損害賠償責任共済(以下「自賠責保険等」という。)若しくは任意の対人賠償保険(以下「任意保険」という。)の損害保険会社等との間の損害賠償額等についての照会、回答の方途の一例を示し、地方自治体における求償事務の円滑な処理を図ろうとするものである。

第2 生活保護法第76条の2の規定の効果

生活保護受給者が第三者行為被害に遭った場合には、第一義的には、当該生活保護受給者が第三者から損害賠償金の支払いを受け、これをもって必要な医療又は介護サービスを受けるべきものである。しかしながら、損害賠償金の額の確定や支払が行われるまでに相当程度時間を要すること等の事情から医療扶助又は介護扶助(以下「医療扶助等」という。)を適用する場合があり、その場合、地方自治体が、当該第三者行為により生じた被害のために支弁した医療扶助等の費用の限度において、生活保護受給者が当該第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得できるよう生活保護法第76条の2が規定されたものである。

これにより、以下の1から3までの条件を満たす場合、地方自治体は第三者行為により被害の遭った生活保護受給者が加害者に対して有する損害賠償請求権を法律上当然に取得することとなり、これを行使し、かつ賠償金を受領することができるものである。

1 医療扶助等の給付事由が第三者の不法行為等により生じたものであること。

2 地方自治体がその事故に対してすでに医療扶助等の給付を行ったこと。

3 生活保護受給者の第三者に対する損害賠償請求権が現に存在すること。

第3 事務処理の概要

地方自治体における求償事務の処理は、以下の手順により行う。

1 第三者行為被害の届出の受付等

生活保護受給者が自動車による交通事故等の被害に遭い、これを原因とする負傷等について医療又は介護サービスを要する場合には、生活保護受給者に、負傷等の状況、診療等の状況、加害者の情報、損害賠償金の支払状況、示談の有無等の届出(以下「第三者行為被害届」という。)を提出させた上で、医療扶助等を受けさせる。

併せて、交通事故証明書、事故発生状況報告書、損害賠償請求権の代位取得についての念書等、必要な書類の提出も求める。

なお、負傷等のため、生活保護受給者本人によりこれらの書類の用意が困難な場合には、福祉事務所職員が必要事項を聴取り代筆を行う等必要な支援を行う。

そのほか、当該負傷等の状況にかんがみて緊急に医療又は介護サービスを受けた場合にあっても、第三者行為被害届を速やかに提出するよう、生活保護受給者に対し指導する。

2―A 第三者行為被害に関する損害保険会社等への照会【加害者が自賠責保険等や任意保険に加入している場合】

自賠責保険等や任意保険の適用対象となる事案については、第三者行為による被害を受けた生活保護受給者に対する重複払いを防止する等の観点から、損害保険会社等に対して、回答書式を同封の上、加害者の情報、事故発生状況、損害賠償金の支払状況、過失割合に関する意見、示談の有無等を照会する。

なお、損害保険会社等からの回答が設定した回答期限までに到着せず遅延した場合には、督促状を送る等、適宜督促を行うこととし、それでもなお回答がない場合には、迅速に事務処理を進めるという観点から、回答を待つことなく求償に係る事務処理を進めることとする。

2―B 第三者行為に関する加害者への照会【加害者が自賠責保険等や任意保険に加入していない場合】

自賠責保険等や任意保険の適用対象とならず求償先が加害者本人になる事案については、加害者本人に対して、回答書式を同封の上、当該加害者の情報、事故発生状況、損害賠償金の支払状況、過失割合に関する意見、示談の有無等を照会する。

なお、加害者からの回答が設定した回答期限までに到着せず遅延した場合には、督促状を送る等、適宜督促を行うこととし、それでもなお回答がない場合には、迅速に事務処理を進めるという観点から、回答を待つことなく求償に係る事務処理を進めることとする。

3 第三者行為被害に関する調査(必要に応じて実施)

1及び2による資料等を総合的に検討してなお、事実関係の把握等に不備、不審等があると認められる場合又は1及び2による資料等が未提出のため事実関係の把握が困難な場合には、必要に応じて、福祉事務所の職員により実地調査や関係者への電話照会等を行う。

4 損害賠償請求額の決定・支払請求

第三者行為を原因とする負傷等に対する医療扶助等がなされた場合、これに係る費用を把握し、1から3までの資料等を踏まえ過失割合等を考慮した上で、損害賠償請求額を決定する。

その上で、当該損害賠償請求額の支払請求書を、交通事故証明書や事故発生状況報告書、診療報酬明細書等の請求に必要な書類とともに、加害者又は損害保険会社等に対して通知し、支払請求する。

第4 留意事項

福祉事務所は、管内の生活保護受給者に対し、第三者行為被害があった場合には第三者行為被害届を提出するよう保護開始時や医療券交付時等に、周知・徹底することとする。

また、生活保護受給者の第三者行為を原因とする医療扶助の給付の状況について、福祉事務所は、診療報酬明細書の点検において、診療報酬明細書の特記事項欄の第三者行為であることの記載の有無や、一般的に第三者行為を原因として生じたと考えられる外科、整形外科、脳神経外科、救命救急に係る外傷性疾患(外傷性くも膜下出血、頭部挫傷、頭部打撲、頸部挫傷、頸椎部挫傷、胸部挫傷、鎖骨骨折、顔面挫傷、腰部捻挫等)の有無を確認する等により把握するよう努めるものとする。

そのほか、福祉事務所は、日頃から近隣の救急病院、外科病院、整形外科病院等と連絡関係を構築するよう努めるものとする。例えば、第三者行為を原因とする医療扶助の給付を行う場合には、病院等の窓口において、当該医療扶助の給付を受ける患者が事前に福祉事務所へ第三者行為被害届の提出を行っているか確認等がなされることが望ましい。

(参考)